検索

検索

×閉じる

法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年9月7日(火)

 今朝の閣議において,法務省案件はございませんでした。
 続きまして,私から1件報告がございます。
 氏名の読み仮名の法制化に関する法制審議会への諮問についてです。
 今月16日に開催される法制審議会総会において,個人の氏名を平仮名又は片仮名で表記したものを戸籍の記載事項とする規定の整備など,戸籍法制の見直しに関する諮問をすることといたしました。
 現行戸籍法においては,氏名の読み仮名に係る規定はございません。
 氏名の読み仮名の法制化については,昭和50年及び56年の民事行政審議会,平成29年に省内に設置された戸籍制度に関する研究会においても検討されましたが,様々な問題や課題があるとして,見送られた経緯があります。
 しかし,昨年12月25日に閣議決定されたデジタル・ガバメント実行計画において,マイナンバーカードに氏名をローマ字表記できるよう,迅速に戸籍における読み仮名の法制化を図ることとされたところです。
 また,本年5月に公布されたデジタル社会形成整備法の附則におきましても,行政手続において,読み仮名によって個人を識別することができるよう,個人の氏名の読み仮名を戸籍の記載事項とするよう求められたところです。
 これらを踏まえ,本年1月に設置された民間の研究会に法務省の担当者も委員として参加し,戸籍における氏名の読み仮名の法制化を図るための論点や考え方を検討してまいりました。
 本年8月に公表された研究会の論点整理では,読み仮名を戸籍法における氏名の一部とするかどうか,漢字の音訓や文字の意味との関連性を要求するかどうか,読み仮名を変更する手続の方法をどうするかなどの論点が示されました。
 この論点整理の成果も踏まえて,戸籍法制の見直しに向けた更なる具体的な検討を行っていただくため,この度,法制審議会に諮問することとした次第です。
 法制審議会で,充実した調査審議がされることを期待しております。

共生社会の実現に向けた取組に関する質疑について

【記者】
 東京パラリンピックが9月5日に閉幕しました。大会ビジョンの「多様性と調和」について,日本社会の現状をどうお考えになりますか。また,大会を通じての御所感,共生社会の実現に向けて今後必要な取組がありましたら教えてください。

【大臣】
 法務省は,これまでも,共生社会の実現を目指し,障害者スポーツ体験やパラリンピアンの方による講話等の様々な人権啓発活動を実施し,こうした活動を通じて,「心のバリアフリー」を推進してきたところです。
 そして,今回の2020年東京大会を通じて,国内外を問わず,多くの方々に,互いの違いを認め合い,自然に受け入れるといった「多様性と調和」の重要性を実感していただけたのではないかと考えております。
 その一方で,オリンピック選手に対するインターネット上での誹謗中傷があったとの報道がされているところであり,「多様性と調和」という大きな方向性を現実の社会の中で実現していくには,更なる大きな努力が必要であると考えています。
 法務省としては,多様性が尊重され,全ての人がお互いの人権や尊厳を大切にし,生き生きとした人生を享受することのできる共生社会の実現に向けて,引き続き,人権啓発活動,人権相談,調査救済活動にしっかりと取り組んでまいりたいと考えています。
 また,これらの取組に加え,外国人の方々との共生社会の実現の観点から,「外国人との共生社会の実現のための有識者会議」を開催しているところであり,更なる施策の充実に努めてまいりたいと考えています。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について

【記者】
 今度の9月10日(金曜日)ですけれども,名古屋入管で死亡したスリランカ人女性の御遺族が,前回に引き続き,監視カメラ動画を法務省で視聴すると聞いています。今回は,スリランカ人女性の死亡直前,あるいは死亡時の3月6日前後の動画も含まれていると思うのですが,遺族が再三求めてきた遺族代理人の同席を認めない状態では,精神的なダメージは非常に大きいものがあると思います。
 この動画の開示についてですが,以前8月20日に,「難民問題を考える議員懇談会」という場で,出入国管理部長と警備課長が,2週間分の全ての映像を御覧になったとおっしゃっていました。
 一方で遺族は,2時間に編集したものしか見ることはできない,しかも1回限りということで,代理人の弁護士の同席も許可されないということで,遺族に対する配慮が非常に欠けているのではないかと思うのですが,改めて大臣,弁護士同席の上で遺族に見ていただくということは考えていらっしゃらないのか。直前なので,改めてお考えを,大臣の指示というものは何か考えていらっしゃるのかどうかを教えてください。

【大臣】
 今回の事案に係る文書開示請求については,情報公開法にのっとって対応したところです。
 今回のビデオ映像については,これまで繰り返し御質問があり,御説明をしているところですが,御遺族の心情に配慮した人道上の特別の対応として,御遺族に御覧いただくこととしたものです。
 御遺族に対しては,保安上の支障をマスキング等により軽減させる処置をした上で,通訳を介した説明を行いながら,亡くなられた方の日常の様子,調査報告書で不十分・不適切な対応等があったと指摘されている場面とともに,亡くなられた方の体調に外観上顕著な変化が生じた状況を含め,御遺族に御覧いただくべきとの国会質疑での御指摘のあった3月4日以降の様子等について,幅広に御覧いただくこととしています。
 これらにより,亡くなられた方の様子や状況の推移を,時系列的に御確認いただけるものと考えています。
 今回のビデオ映像については,保安上の問題に加え,亡くなられた方の名誉・尊厳の観点からの問題もあり,代理人を含め,御遺族でない方に閲覧していただくことは適当でないと考えております。
 なお,ビデオ映像を御遺族に御覧いただく際には,1回目の閲覧の際に心理的負担についての御指摘がありましたので,心理的負担の軽減にしっかりと対応するため,事前に心理の専門家の助言も得るなどして,より一層の配慮を行ってまいりたいと考えております。

【記者】
 引き続きスリランカ人女性の件です。ビデオについて,大臣自身は御覧になられたのか。イエスかノーかでお答えいただきたいです。答えを差し控えるという回答ならば,御覧になられていないというふうに受け止めます。
 加えて,ビデオを見た印象で,スリランカ人女性の御遺族と入管職員の方々の印象が非常に異なるようです。ここで非常にそごが大きいということは,8月に公表された報告書の内容の信頼性に関わってくるのではないかと思います。先ほどから保安上の理由ということをおっしゃられているわけなのですけれども,これまで裁判でビデオ開示されたケースもありますし,必要なら映像をマスキングするという方法もあるわけです。
 保安上の理由というのは開示を拒む理由としては当たらないのではないかという点と,スリランカ人女性の尊厳のためという口実も,彼女を死なせてしまった法務省・入管が語ること自体がおこがましいのではないのか,むしろなぜそのような無神経なことを平気で言えるのか,お聞きしたいぐらいです。実際お聞きしたいと思います。
 御遺族も真相究明こそ最も強い望みであり,代理人が共にビデオを見ることを求めているわけです。人道というのであれば,御遺族の希望に沿うべきではないでしょうか。
 結局,入管にとって都合の悪いことは口実を並べて隠す,それで入管の改革ができるのか,世間から信頼されると思っているのであれば,それは大きな間違いではないか。人を死なせてしまっているのに,飽くまで入管側の組織防衛を優先させるのか,それとも大臣としての英断を示されるのか,これまでと同じようなお答えの仕方では到底納得できないので,是非,大臣自身のお言葉でお答えをいただきたいです。

【大臣】
 まず,ビデオ映像に関する御質問ですが,調査報告書の公表に先立ち,私自身,ビデオ映像を閲覧しました。
 今回の調査報告書については,外部有識者の方々に全てのビデオ映像を御覧いただき,客観的かつ公正な立場から,幅広く御意見・御指摘をいただいた上で取りまとめられたものです。
 この報告書に基づく改善点については,極めて難しい意識改革も含めて,全ての項目を実施するという方向の中で,現在,改革PTを立ち上げて対応しているところです。
 ビデオ映像については,御遺族の心情に配慮した人道上の特別の対応として,今回,御遺族に御覧いただくこととした次第です。
 前回8月12日に御遺族にビデオ映像を御覧いただきましたが,そのときには用意した映像の全てを閲覧していただけなかったため,再度,閲覧をしていただくこととしています。
 御遺族の心理的負担を強く感じており,ケアをしっかりとしていくことが大事であると思っていますので,事前に心理の専門家の助言をしっかり得た上で,より一層の配慮をしながら御覧いただくことができるよう,対応してまいりたいと考えています。

【記者】
 心理の専門家の助言を得ると言っていますけど,やはり遺族にとって一番そばにいてほしい人たちが,遺族代理人でございます。
 今回やろうとしていることは,正に弁護士制度そのものの根幹を否定するようなことを,法務省・入管庁としてやろうとしているのではないでしょうか。これまでなぜ見せられないのか答弁をさんざん繰り返されてきたので,それはいいのですが,遺族側代理人は,もし,「選択」が指摘しているように,髙嶋現事務次官が後ろ向きな姿勢であるために,立会い及び動画の公開にも,このように制約をかけているのならば,髙嶋さんに直接説明してほしいと言っています。
 大臣として,髙嶋さんに,遺族側に説明させるつもりはあるのか,お答えください。

【大臣】
 今回御遺族の方に御覧いただくビデオ映像は,通常であれば,情報公開法上,開示の対象にならないものですが,人道上の配慮,御遺族が実際にお姉様の御遺体に向かい合われたときに,その背景を知りたいという思いが極めて切実だろうと考え,今回,御遺族に御覧いただくという決断をしたところです。
 また,閲覧の際には,通訳もしっかりと対応しますが,更に心情に照らし,極めて大きなストレスが生じますので,その意味で,専門家にしっかりとケアすることができる体制について助言を受け,次回の日程も固まってきていると伺っていますが,しっかりと対応してまいりたいと思っています。

【記者】
 カウンセラーを同席させるということですか。助言を得て職員がその場にいるだけでは何の解決にもならないと思うのですが,専門家をその場に同席させるおつもりですか。

【大臣】
 事前にどのように対応したらいいかということについて助言を受けるということですので,その意味では,その限りです。

【記者】
 髙嶋さんへの説明を求めておりますが,その点はいかがですか。

【大臣】
 適切な者がしっかりと説明するということが極めて大事であると思っています。出入国在留管理庁の中で,しっかりと適切な者が説明をしていくということに尽きるのではないかと思っています。
(以上)