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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年9月10日(金)

 今朝の閣議において,法務省案件はございませんでした。
 続きまして,私から2件報告がございます。
 1件目は,性犯罪規定の法制審議会への諮問についてです。
 性犯罪については,平成29年の刑法一部改正法によりその罰則の改正が行われましたが,附則において,性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加えることとされました。
 法務省では,平成30年4月から「性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループ」を設置し,ヒアリング等により実態を把握するとともに,令和2年6月から,「性犯罪に関する刑事法検討会」を開催し,様々な観点から精力的に議論を行っていただき,本年5月に,その検討結果が報告書としてまとめられました。
 この報告書を踏まえて検討し,9月16日(木曜日)に開催予定の法制審議会に諮問することといたしました。
 その内容は,配布した資料に記載されている事項を始めとして,性犯罪に適切に対処するための法整備の在り方について御意見を承りたいというものです。
 性犯罪への適切な対処は喫緊の課題であり,法制審議会において,充実した御議論が行われることを期待しております。
 2件目は,法務省関連の新型コロナウイルス感染症の感染状況についてです。
 9月3日(金曜日)から昨日までの間,職員については18の官署・施設で計23名の,被収容者については4つの施設で計22名の感染が判明しました。
 詳細は既に公表されているとおりです。
 法務省においては,引き続き,高い緊張感を持って,各種感染症対策を徹底してまいります。

性犯罪規定の法制審議会への諮問に関する質疑について

【記者】
 性犯罪に対処するための法整備に関して,法整備に当たっての課題,性被害の実態に即した内容になるために刑法がどうあるべきか,大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】
 性犯罪の被害は非常に深刻で根深いものであって,被害に遭われた方々に長期にわたる傷跡を残すものです。
 私としては,こうした認識を共有した上で,性犯罪の事案の実態をしっかりと把握し,これに即した施策の在り方を検討することが重要であると考えています。
 諮問する立場ですので,法整備の内容について具体的に言及することは差し控えさせていただきますが,一般に,刑罰の在り方の検討には,処罰されるべき行為が漏れなく捕捉されるようにすべきとの要請と,処罰されるべきでない行為が処罰範囲に取り込まれてはならないといった処罰範囲の明確性等の刑事法の諸原則との調和をどのように実現するかという課題があり,性犯罪に対処するための法整備についても,同様であると認識しています。
 また,国民の意識や時代・社会の変化を踏まえて,その時代や社会に適合した刑法の在り方が模索されるべきであると考えています。
 いずれにしても,このような課題に取り組むに当たっては,様々な立場から御意見を示していただき,率直かつ活発な議論を積み上げていくことが極めて重要であると認識しており,法制審議会において,スピード感を持って充実した御議論が行われることを期待しています。

【記者】
 先ほどの質問と重なる部分もありますが,性犯罪規定の諮問についてお尋ねします。
 この間,性犯罪の被害当事者の方が声を上げて,改正の必要性を自らの御経験をもとにお話しされるようになりました。一方で,5月にまとめられた報告書では,多くの論点で賛否が分かれて両論が併記された状態です。今後,法制審でも様々な意見が出ると思われますが,被害者の声も踏まえて,どのような議論を期待されるかお聞かせください。
 また,性犯罪は構造的に女性の被害者が多いと思われます。今後の部会審議ではジェンダーバランスにも配慮する必要もあるのではないかと感じますが,部会の委員の選定に際しての考えも併せてお聞かせください。

【大臣】
 先ほども申し上げたとおり,性犯罪の被害は非常に深刻で根深いものです。被害に遭われた方々に勇気を持って声を上げていただいたことが,この問題に対する幅広い関心にもつながっていったと思っており,その方々の声も聴くと,長期にわたって被害が潜在化しているということも深刻であると思っています。
 私自身,こうした認識の下,信念を持って,真正面から様々な課題に取り組み,これまで進めてきたところです。
 令和3年5月,法務大臣として,「性犯罪に関する刑事法検討会」における審議結果を取りまとめた報告書を,座長である井田良教授から受領しました。
 御指摘のように,報告書で両論が併記された点があることについては,性犯罪被害当事者を始めとした様々な立場の委員の皆様により,率直かつ活発な御議論がなされたことの証左であり,法改正に向けた検討をするに当たっての具体的な視点,論点,留意点等をお示しいただいたと認識しています。
 この報告書を踏まえて検討し,今般,法制審議会に諮問することとしましたが,性犯罪への適切な対処は喫緊の課題であり,スピード感を持って充実した御議論が行われることを期待しています。
 2点目の御質問については,法制審議会の部会に属する委員等については,審議会の承認を経て,会長が指名することとされています。
 部会が設置されることになった場合には,ジェンダーバランスに配慮されることはもとより,様々な専門的見地から,性犯罪に係る事案の実態に即した法整備の在り方についての検討をしっかりと行っていただくのにふさわしい構成となることが望ましいと考えています。

【記者】
 性犯罪に関する諮問についてですけれども,先ほどの質問にもあったように検討会の報告書に両論併記されたということは,意見の対立があるということだと思うのですが,この点に関して,大臣はどのようにお考えになっているのかということ。
 また,こうした両者の意見の対立を解消して,あるべき刑事法の整備に向けてどのようなことが必要かという点について,お答えをお願いいたします。

【大臣】
 これまで,様々なプラットフォームで,様々な形で議論を尽くしていただきながら検討が進められてきたところです。
 意見は様々であり,社会も様々な形で変化していますので,報告書は,意見をしっかりと戦わせていただきながら,取りまとめていただいたものと思っております。
 両論併記となっていることも,議論が積み上げられてきた過程の中で,問題点,論点を積極的に指摘していただいたものと,私は,むしろ前向きに捉えています。
 法制審議会は,専門家の方々のプラットフォームであり,その意味での充実した審議をしっかりと尽くしていただくことを,この先も期待してまいりたいと思っています。
 また,先ほども申し上げましたが,様々な論点がある中で,法制審議会の議論においては,処罰されるべき行為が漏れなく補捉されるようにすべきとの要請と,処罰されるべきでない行為が処罰範囲に取り込まれてはならないといった処罰範囲の明確性等の刑事法の諸原則との調和をどのように図るかという課題があり,このことにどう対処していくかという大きな枠組みの中で,議論が積極的に進められるものと思っています。

令和3年司法試験の結果に関する質疑について

【記者】
 9月7日に今年の司法試験の合格者が発表されました。2006年以降で受験者数,合格者数がともに最少を更新しましたけれども,それについての受け止めと,今後法曹を増やすための課題について,大臣としてどのようにお考えかお聞かせいただければと思います。

【大臣】
 近年の法曹志望者数の減少については大変重く受け止めており,その回復は重要な課題であると認識しています。
 とりわけ,近年は,社会経済のデジタル化,ボーダレス化の傾向が顕著になり,さらに,価値の多様化という状況もあって,これまで想定していなかった様々な法的紛争が実際に発生している状況です。
 社会経済活動や社会的弱者等への法的支援の必要性が高まっているとともに,企業内弁護士や国の機関等に勤務する弁護士へのニーズも増加しているなど,社会の様々な分野で法曹へのニーズが高まっていることも事実です。
 法務省でも,関係機関と連携しながら,法曹の活動領域の拡大を推進してきたところであり,例えば,先ほど申し上げた企業内弁護士の数字を見ても,この10年間で,約400人から2,600人以上に増加しているところです。
 こうしたニーズに応え,国民の皆様にとって身近で頼りがいのある司法を実現する上で,多くの有為な人材に法曹を志望していただくことが重要であると考えています。
 令和元年の6月に成立した法曹養成制度改革法の段階的な施行により,法曹資格取得までの予測可能性の高い養成制度を実現し,多くの方々に法曹を志望していただきやすい環境の整備を進めております。
 さらに,法教育の機会等も活用しながら,法曹の魅力や,先ほど申し上げたような幅広い活躍の場についてしっかりとイメージを持っていただけるよう,積極的に広報してきたところですが,そうした取組の推進により,より多くの有為な人材にチャレンジしていただけるよう,働き掛けていきたいと考えています。
(以上)