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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年10月1日(金)

 今朝の閣議において,法務省案件はございませんでした。
 続いて,私から5件報告がございます。
 1件目は,「法の日」特設ページの開設についてです。
 毎年10月1日は「法の日」であり,10月1日から7日は「法の日」週間とされています。
 これは,法の役割や重要性について考えていただくきっかけとなるよう設けられたものであり,例年,法務省では,この週間に合わせて,イベントを開催してきました。
 第62回となる今年は,昨年度に引き続き,新型コロナウイルス感染症対策の観点から,オンラインを活用した取組を行うこととし,法務省ホームページに,「法の日」にちなんだ特設ページを開設しました。
 この特設ページでは,SNSを題材とした法教育のアニメ動画や,少年院のバーチャル見学ツアー動画,公安調査庁のオンライン講演会など,法務省の施策についての様々なコンテンツを紹介しています。
 この特設ページは,「法の日」週間が終わった後も掲載を続けますので,是非,多くの皆様に御覧いただき,法の役割や重要性について考え,法務行政を身近に感じていただければと考えております。
 2件目は,公証人による定款の認証手数料の見直しについてです。
 会社の設立手続においては,会社制度に対する信頼確保等の観点から,その会社の目的,組織,活動に関する基本的な規則である定款を作成し,それについて公証人の認証を受けることとされています。
 この公証人の行う定款の認証手数料は,政令により,会社の規模にかかわらず一律5万円と定められていますが,かねてよりその負担を軽減するよう要望が多く寄せられており,私からも,定款の認証手数料を見直すよう指示していたところです。
 また,本年6月18日に閣議決定がされました「規制改革実施計画」においても,「起業促進の観点からその引下げを検討し,必要な措置を講ずる。」とされたところです。
 今般,この引下げのための政令案をまとめましたので,本日(令和3年10月1日)から(同年)11月1日までの間,国民の皆様の御意見を承るべく,パブリックコメントの手続を実施いたします。
 政令案の内容は,設立時の会社の経済的規模に応じ,資本金の額が100万円未満のものは3万円に,当該額が100万円以上300万円未満のものは4万円に手数料を引き下げるなどとするものです。
 国民の皆様からの御意見も踏まえ,定款の認証手数料の引下げについて,着実に準備を進めてまいります。
 3件目は,在留外国人への新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を支援する新たな取組についてです。
 出入国在留管理庁では,在留外国人を対象とした新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を支援する新たな取組の準備を進めています。
 これまで,在留外国人のうち,中長期在留者の方々については,日本人と同様にワクチン接種券が発行され,接種を受けることができることとなっていました。
 しかし,出入国在留管理庁には,言語・意思疎通の問題から接種予約ができず,接種が受けられないなどの声も寄せられていました。
 また,中長期在留者以外の方々からは,ワクチン接種券が発行されず,ワクチン接種が受けられないとの声が寄せられていました。
 こうした状況を踏まえ,出入国在留管理庁では,厚生労働省と連携し,市区町村などの協力を得て,中長期在留者以外の方々を含め,ワクチン接種を支援する体制を整え,10月半ばを目途に,その運用を開始することとしました。
 具体的には,東京,名古屋,大阪の地方出入国在留管理局近隣の医療機関での接種枠を確保した上で,外国人在留支援センター(FRESC)において,ワクチン接種券の発行手続に関する相談・支援,専用電話回線による接種予約の受付,接種場所での問診等の際の多言語による支援などを行うことにしています。
 具体的な接種予約の方法などについては,出入国在留管理庁のホームページなどで案内することとしていますので,詳細は,出入国在留管理庁にお問い合わせください。
 4件目は,刑事参考記録の指定の在り方についてです。
 本年2月,刑事参考記録の指定の在り方について,見直しの方針を定めたことを,この会見の場で御報告しました。
 その際,刑事参考記録として指定されるべき事件が漏れなく指定されるようにするための取組の一つとして,研究者や弁護士の方々など,外部の方から刑事参考記録の指定の要望を受け付ける仕組みについて,改めて周知を図るとともに,その要望について判断するに当たり,有識者の御意見を聴く仕組みを設けたことをお話しいたしました。
 そして,有識者の方については,国立公文書館のアーキビストの方にも御協力をいただくこととしていたところ,事務方から,現在,人選の最終段階に至っているとの報告がありましたので,お伝えさせていただきます。
 5件目は,法務省関連の新型コロナウイルス感染症の感染状況についてです。
 9月24日(金曜日)から昨日までの間,職員については3つの施設で計7名の感染が判明しました。
 また,被収容者については,福井刑務所で7名の感染が判明しております。
 詳細は既に公表されたとおりです。

「法の支配」と「誰一人取り残さない」社会の実現に関する質疑について

【記者】
 本日,任期内最後の記者会見ということで,大変お疲れ様でございました。これまでの総括について2点お尋ねいたします。
 まず1点目ですが,上川大臣は三度の法務大臣在任期間を通じて,大きなテーマとして,「法の支配」と「誰一人取り残さない」社会の実現を掲げて取り組まれてきました。これまでを振り返られて,その意義と成果についてお聞かせください。

【大臣】
 私は,昨年9月16日に三度目の法務大臣職を拝命し,この1年間を,最初に法務大臣職を拝命した7年前からの法務行政への関わりの集大成とするという覚悟を持って,全力で職務に取り組んできました。
 私は,過去二度の法務大臣在任時から,一貫して,「法の支配」が貫徹された社会の実現と,SDGs(持続可能な開発目標)に掲げられた「誰一人取り残さない」社会の実現を大きな目標として掲げてきました。
 法務省の仕事は,国民一人一人が,生涯,生き生きと活躍する基盤として,安全・安心な社会を「法の支配」を貫徹することによって実現していくという重要な役割を担っており,私は,法務行政における個々の課題への対応についても,「法の支配」と「誰一人取り残さない」社会の実現という揺るぎない目標を常に念頭に置いてきました。
 このような考えの下,様々な困難を抱える方々が勇気を持って発した声を受け止め,寄り添い,一つずつ迅速に答えを出すことを,私の大きな方針としてきました。
 政治家としてのライフワークとしても取り組んできた犯罪被害者の問題に関しては,喫緊の課題である性犯罪に係る刑事法の在り方や,近時問題となっているインターネット上の誹謗中傷の問題について,着実に検討を進め,先月,法制審議会に諮問をするに至りました。
 児童虐待・いじめ等の問題については,法務省の人権擁護機関等における取組を,なお一層,注意深く推進するとともに,特に,関係機関等と連携したセーフティネットの構築にも取り組んできました。
 父母の離婚を経験した子どもたちを巡る養育費の不払いや面会交流等の問題は,子どもの利益を守る,「チルドレン・ファースト」の観点から極めて重要な課題であり,今年2月の法制審議会への諮問と並行して,養育費の取決めを促進する広報活動の推進等,可能なものから直ちに取組を開始しました。
 無戸籍・無国籍問題は,その方のアイデンティティに関わる重要な問題であり,速やかな実態把握と原因分析を徹底して行い,解消に向けた取組を始動させました。
 罪を犯した者の立ち直り支援,再犯防止の分野では,今年8月,民間のノウハウ・資金を活用した「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)による非行少年への学習支援事業」という極めて先駆的な取組を開始したところです。
 法務行政には多くの課題があり,今申し上げた取組はその一部に過ぎませんが,私としては,少しずつではあったとしても,着実に前進させることができたのではないかと考えています。
 様々な困難を抱える方々の「声なき声」をしっかりと汲み上げ,様々なステークホルダーと連携して寄り添っていく,そのためには,「法の支配」と「誰一人取り残さない」社会の実現という揺るぎない目標・信念を,法務行政の根幹として,しっかりと持ち続けていくことが不可欠です。
 法務省の職員には,私がこれまで掲げてきたこのメッセージをしっかりと受け止めてもらい,これからも,オール法務省で,取組を更に進めてもらいたいと考えています。

適正な在留管理と多文化共生の実現に関する質疑について

【記者】
 2点目として,入管行政について伺います。大臣はかねて適正な在留管理と多文化共生の実現を掲げてこられましたが,その中で,今年3月には名古屋入管で収容中のスリランカ人女性の命が失われるという事案が発生しました。改めて所感をお聞かせください。

【大臣】
 社会経済の国際化,その進展は極めて著しいものがあります。専門的・技術的分野の外国人材の積極的な受入れを行うという政府方針の下,我が国に在留する外国人の方々の人数も大きく増加しています。
 私自身,若い頃,アメリカへの留学時のことでしたが,多民族国家における少数者の立場を実際に体験しており,かねてより,在留資格を有する全ての外国人の方々を,孤立させることなく,地域のコミュニティの一員として受け入れ,日本人と外国人が共に安全・安心に暮らしていける共生社会の実現は,極めて重要であると認識し,その実現に向けて力を注いできました。
 その実現を担う中核として,平成31年4月に,出入国在留管理庁を発足させ,従来から一歩進んだ政策官庁としての役割を明確にしました。
 令和2年7月には,「外国人在留支援センター」,通称「FRESC」を開所し,在留支援を行う様々な機関を一箇所に集約し,ワンストップでの支援を実現するなど,横のつながりを意識し,横串を通した施策をしっかりとお届けする様々な取組を進めてきました。
 具体的には,コロナ禍で帰国が困難な外国人等への雇用の支援や,言語の問題が非常に大きいことを踏まえた「やさしい日本語」による情報提供などを進めてきました。また,冒頭に私から発言したとおり,在留外国人を対象とした新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の支援などの新たな取組に向けた準備も進めているところです。
 また,適正な出入国管理を確保する上で喫緊の課題である送還忌避や入管収容施設における収容の長期化の問題についても検討を進めてきました。
 そうした中で,本年3月に,名古屋出入国在留管理局において収容中の女性が亡くなるという痛ましい事案が発生しました。
 この事案については,私自身,外部有識者の御意見・御指摘をしっかりと踏まえた客観的・公正な調査と原因の究明,更には改善策の検討を指示し,その結果,出入国在留管理庁において医療的対応のための体制整備や運用が十分でなかったこと,そして,職員の意識についても問題があったことなどについて,御指摘を承りました。
 こうした御指摘に対しては,改善につなげていくことが,何よりも大事であると率直に考えています。
 私は,出入国在留管理庁長官に対して,今回の事案を職員一人一人が自らの問題として捉え,日頃の行動の中で自分の行動を見直し,さらには,チームとして,それを束ねながら改革に向かって進め,その意識・風土をしっかりと根付かせるように指示しました。出入国在留管理庁では,「出入国在留管理庁改革推進プロジェクトチーム」を発足させ,改革に着手したところです。
 出入国在留管理行政を今日の行政手続としてあるべき姿に,そして内外から信頼されるものとするため,地方公共団体,UNHCR,医療機関等のマルチステークホルダーとしっかり連携しながら,今後,組織改革・意識改革が,速やかに,かつ,着実に進められるものと考えています。

菅内閣の総辞職及び自民党総裁選の結果に関する質疑について

【記者】
 先ほど大臣からも1年間の振り返りがありましたが,週明け4日には菅内閣総辞職という見込みになっております。これについての受け止めと,大臣も会見の中で支持を表明されました岸田文雄さんが新総裁になりましたが,期待することと受け止めについて教えていただけますでしょうか。

【大臣】
 9月3日の記者会見でも申し上げましたが,今回,菅総理が自民党の総裁選挙への出馬を断念されたのは,新型コロナウイルス感染症対策に専念をする必要から,大変重い決断をされたものと思っています。
 菅総理の下,国民の皆様の御協力によって,ワクチン接種は大きく進み,昨日(9月30日)をもって,19都道府県に発出されていた緊急事態宣言も解除されるに至ったところです。
 菅総理の強いリーダーシップにより,やるべきことをやり遂げて次の政権にバトンを渡すという重い責任を,しっかりと果たした上での総辞職であると受け止めています。
 私と同じ政策集団である「宏池会」で,自由闊達に議論し,切磋琢磨してきた同志である岸田候補が新総裁に選出されました。
 岸田候補の政策や人柄を党員・党友の方々や議員の皆様に御理解いただいた結果として,総裁に選出されたところであり,心から感謝を申し上げたいと思っています。私自身,「宏池会」のメンバーですので,大変身の引き締まる思いです。
 今回の総裁選挙の過程の中で岸田候補が主張してきたことは,「国民の皆様の声にしっかりと耳を傾ける」ことであり,これを徹底して,この1年間,努力されてきました。
 対話することの大切さ,話を交わしていくことの中から様々な気付きがあることは,私自身も,政治活動の中で非常に大事にしてきたことです。そこから,今,何が重要なのかを汲み上げ,しっかりと政策につなげ,そしてお届けしていくという一連の流れがあります。
 政策立案のプロセス,更に立案をした上で決定し,しっかりと現場に届ける,そして職員に理解してもらう,そのために説明をしっかりとしていくことも,つまりは対話を大事にしていくということです。
 岸田総裁は,国民の声をしっかりと聴く,対話を重ねるという政治姿勢を総裁選挙でも貫かれてきましたが,これからもこの姿勢を貫かれていくものと確信しています。私は,この姿勢が岸田総裁の大きな強みであると考えており,これを最大限発揮し,国民の皆様との対話を広げていただきたいと思っています。
 同時に,国際分野における様々な課題について,これはもう待ったなしの状況ですので,外務大臣を務めた経験をしっかりといかし,諸外国と「対話」をしていく我が国の「顔」として,力を発揮していただけるものと確信をしています。

司法外交の成果に関する質疑について

【記者】
 先ほどから様々な成果を振り返っていただいておりますが,この1年間,「司法外交」の推進にもかなり力を入れてこられたと思います。自身も招致に関わられた京都コングレスの開催や,各国とのMOCの交換など様々ございましたが,「司法外交」の成果について,所感があればお願いします。

【大臣】
 私は,国際社会における法の支配などの普遍的な価値の確立を目指すいわゆる「司法外交」の積極的な推進に取り組んできました。
 これは,私自身,法務省に一度目に大臣として関わった中で,特に二つの大きな活動の推進を高く評価させていただき,その大事な基盤を更に発展させていくことが,これから先の国際社会の中で,日本の果たすべき役割ではないかという問題意識に基づくものです。
 一つ目の柱は,50年以上にわたり,国連アジア極東犯罪防止研究所(UNAFEI)において,世界中の開発途上国の刑事司法実務家を対象とする国際研修・セミナー等を実施しています。また,もう一つの柱として,これは20年以上にわたり,ASEAN地域を中心とした法制度整備支援をしてきたという大きな資産があります。これを強みとして生かしていくために,法務行政の中に,この大きなミッションを入れる必要があると考えたところです。
 平成28年には,自由民主党の司法制度調査会長として提言を取りまとめ,「司法外交」という考え方を初めて世に送り出し,京都コングレスに向けて,準備を本格化させたところです。
 二度目の法務大臣在任期間中の平成30年4月には,新たに大臣官房国際課を設置し,司法外交の司令塔と位置付けました。
 そして昨年9月,みたび法務大臣に就任することになり,今年の3月に京都コングレスの議長という大変な重責を担うこととなりました。
 今回はコロナ禍により1年遅れでの開催となりましたが,関係各位の御尽力・御努力により,オンライン参加を併用したハイブリッド方式で開催することにより,過去最大規模の御参加を得ることができ,「京都宣言」を採択し,国際社会から,法の支配と国際協力の推進に対する力強いコミットメントが得られたことは,大変感慨深いものがあります。
 また,サイドイベントの「世界保護司会議」では,100年以上の歴史があり,保護司を始め民間ボランティアに支えられてきた我が国の更生保護制度を世界に発信し,さらに,京都コングレスに先立って開催されたユースフォーラムでは,私も心を注いで開催に向けた努力をしてきましたが,未来を担う世界の若者の声が「勧告」として採択され,京都コングレスに提出されたところです。
 京都コングレスの成功を新たな出発点とし,「司法外交」の更なる発展につなげ,我が国が,いわば「フロントランナー」として国際社会でリーダーシップを発揮するため,法務省では,再犯防止に関する国連準則の策定,ユースフォーラムの定期開催,刑事実務家からの情報共有プラットフォームの構築など,京都コングレスの成果の展開に集中的に取り組んでいるところです。
 私は,京都コングレスにおいて,各国の閣僚との実質的な対話も重ねてまいりました。司法分野での具体的な連携強化について,マルチ又はバイの場でしっかりと意思疎通・情報交換をしていくことの重要性を改めて認識し,法務大臣として,法務行政のトップ外交をその後も進めてきました。
 具体的な取組として,直近では,シンガポール法務省と国際仲裁に関する取組を中心とした協力覚書(MOC)を交換し,また,英国とは,オンラインでしたが,司法大臣,内務大臣と,直接,実務的な意見交換をさせていただきました。そして,その中から,連携強化すべき具体的な協力分野,アジェンダを特定しました。さらに,令和5年の日ASEAN友好協力50周年の特別法務大臣会合の開催など,ASEAN諸国との関係を更に深化させるべく取り組んでいます。
 基本的価値を共有する各国と連携強化し,「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の実現,ひいては,国際社会の安定・平和に寄与することを心から期待しています。
 引き続き,法務省の強み,それを支える有為な国際法務人材の着実な育成により,司法外交を通じた「ルールに基づく国際秩序」の実現に貢献していただきたいと考えています。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案等に関する質疑について

【記者】
 入管法改正法案が見送りになった大きなきっかけになったスリランカ人女性死亡事案の関係ですが,いずれにせよ公開されるはずの2週間分の全ての動画を公開せず,立会いを認めず,2時間だけの編集したものを見せようとしたということで,遺族の方は,二重三重の苦しみを与えられ,傷つけられてしまったと感じました。御遺族の1人は深い失望の中で帰国されています。
 これに対する大臣の率直な思い,「誰一人取り残さない」というお話をされていましたが,殺されてしまった遺族の訴えにさえ,きちんと耳を傾けることができなかったことへの大臣の思い,そして大臣が言っていた人の命を預かる施設であるという理解が決定的に入管庁全体に欠けていたと感じます。
 もっと早い段階で,全件収容主義から決別できていれば,あのような痛ましい事件は起きなかったと思います。スリランカ人女性の死を無駄にしないためにも,今後,次の大臣,もしかしたら上川さんが続投されるかもしれませんが,どういう入管行政,制度を目指していきたいか,その2点をお願いいたします。

【大臣】
 全ての法務行政は法律・ルールに基づいて,客観的・公正に行うということが大前提だと思います。
 そのために,法治国家としての矜持を持たなければならず,また,それに必要な法整備についても,問題や課題をしっかりと把握し,先ほど申し上げた長期収容の問題に至るプロセスの中で,どこに何の問題があるのか,様々な御指摘をいただきましたので,それを踏まえて,法制度を整備していくことも喫緊の課題であると,私自身,認識しておりました。
 全ての活動は,ルールに基づき,公明・公正に対応することが必要であると思っています。今,ビデオ映像について御質問がありましたが,これまでに御説明しているとおり,今回のビデオ映像については,収容施設内や被収容者等の具体的状況の記録であり,情報公開請求に対しても,法に基づき,基本的に不開示情報として取り扱っているものです。その意味で,ビデオ映像を公開することは,適当ではないとの考えの下で,これまで取り組んできたところです。
 今,御質問の中に,「殺された」という御発言がありましたが,この発言については,私は,「亡くなられた」という認識です。どうして亡くなられたのかの調査が極めて大事であり,客観的・公正な調査を通じて,その背景についても様々な御指摘をいただくことが,改善につなげる上で極めて重要なことであると認識しています。
 その意味で,調査チームでは,医師や弁護士の御協力もいただき,ビデオ映像も全部御覧いただく,その中で,結論を取りまとめていただきました。
 その結果に基づく改善的な措置については,先ほど申し上げましたとおり,職員一人一人の意識をしっかりと改革していかなければ行動につながらないため,これから改革チームで,改革に向けて全力を尽くしてもらいたいと思っています。

【記者】
 今の質問に関連してですが,これまでもお伝えしてきましたが,遺族は,ビデオの全面開示に応じられないことも含めて,入管や法務省の対応については,スリランカ人女性の命が軽んじられた,遺族の思いが見下されている,それはスリランカから来たからだと,それはつまり,私たちは差別をされているんだと受け止めているわけです。
 ビデオの開示について情報公開制度のことをおっしゃいましたけれども,一部を開示していることについては,行政の裁量の中でやっているわけで,その裁量を広げれば,遺族の思いに応えて全面開示もできるわけです。それをやらない,しようとしないというのは,やはり,見下している,軽んじている,差別をしているというふうなことをお認めになるということでよろしいのでしょうか。
 先ほど大臣は,集大成として,「誰一人取り残さない」とか多文化共生とかおっしゃっていますが,大臣自らが差別をしているというふうに映っているようでは,多文化共生など到底できることではないと思います。
 任期まであと数日残っているわけですが,ビデオの開示,遺族の思いに応えるつもりはこのままないのか,その辺を答えてください。

【大臣】
 私自身,法務大臣として,極めて重要な指針にしてきたことは,しっかりと法律に基づいて,それを適正に運用していくということです。
 法治国家ですので,しっかりと法律の体系の中で動くということを,先ほど冒頭で申し上げたところです。
 これは差別ではありません。
 全て法やルールに基づいて適切に対応していく,その一連の中でのことであり,先ほど申し上げたとおりです。
 全く差別ではなく,それはどなたに対しても,同様に適用されるというのが,法治国家の大原則だと思います。

【記者】
 今の質問の関連ですが,「法の支配」とか「誰一人取り残さない」社会なども,繰り返し大臣おっしゃいましたけれども,逆にこういったものから一番遠いところにあるのが法務省の入管行政ではないでしょうか。正に自由裁量が非常に大きいわけで,送還するまで収容できるという立て付けの下で,退去強制手続も1951年からほとんど法律が変わっていないわけです。
 その中でこういった入管職員の事件が起きて,スリランカ人女性が亡くなる,これもスリランカ人女性で始まったことではなく,もう何回もお聞きになっているように,20数人の方が亡くなっていらっしゃるという。分かっているだけでもそれだけの方が亡くなっているという実態があるわけです。
 そういうわけで,やはり入管行政に丸投げするのではなく,先ほど調査のことをおっしゃいましたが,亡くなってから調査報告で外部の人が入ったところであまり意味がありません。日常的にきちんと監視する視察委員会ですとか,それから,国内人権機関が日本には存在しません。そういったしっかりと外部チェック,それから司法の審査,そういったものがきちんと入らないと,真っ当な入管行政はできないと思います。
 そういうことに対して,非常に大きな課題を背負ったことで,大臣を辞めるか続投するか分かりませんが,非常に大きな課題を,今回スリランカ人女性の事件などが突きつけているわけですけれども,そういった入管行政の在り方について,それから移民とか難民の問題についてきちんと向き合う,そういう姿勢が必要ではないかと思いますが,大臣の大局的な,この間感じたこと,これから日本社会がしなくてはいけないこと,何か伺えることがありましたらお答えください。

【大臣】
 私は,先ほども申し上げたところですが,外国人の方々にルールに基づいて在留資格を持って日本に来ていただく,その方々に対して適正・適法にしっかりと対応していくことができるかどうかが,法治国家として問われていると思っていました。
 長期収容という言葉に代表される様々な課題や問題については,様々な研究会や調査会において提言が出されており,そうした問題の解決によって,在留管理も含め,外国人の方々が,日本社会の中で,共に支え合う,暮らし合うという社会が実現できるものと考えています。
 その意味で,現在の制度そのものには,まだ様々な課題がありますし,在留資格や難民の問題を取り巻く国際環境も変わってきています。そうした中で,しっかりと対応を考え,法治国家として取り組んでいく必要があると思い,取り組んできたところです。
 この長期収容の問題については,その解決に向けて一歩でも二歩でも前進できるよう,法案を提出させていただいたところでしたが,こうした法律の整備も含めて,次の大臣がその任に当たられることになると思いますので,引き続き,しっかりと問題に向き合っていただきたいと思っています。
 外国人の方々との共生社会の在り方については,私自身が2年間の留学で体験したことがたくさんあります。そして,その中で感じたことについて,日本の社会はまだ,いわばエマージングという状況でした。
 これからの国際的情勢,国境を越えて人が移動する時代の中でのイノベーションとして,出入国在留管理制度そのものも,絶えずイノベートしていかなければならないと認識しています。
 今回,収容中の女性が亡くなられるという大変痛ましい事案が起きたところです。そのことにしっかりと向き合うために,第三者の目を入れて徹底して調査するようにと指示をしたところです。
 この調査について,私自身がどう考えているのかという御質問も頂きましたが,むしろ,私自身の考えを述べることによって,調査がねじ曲げられるようなことになっては,正に客観性・公正性を毀損することにつながりますので,私自身は,極めて抑制的に動いてきたところです。
 第三者の関与については,収容施設そのものを具体的に視察していただき,それに基づき御意見をいただくという仕組みがあります。施設中のことについて改善・努力すべきとの御意見については,客観的な目によるものとして,しっかりと受け止め,そして改善を実現していく必要があろうと思っています。今回の調査についても,そのような姿勢を徹底してきたことは,再三申し上げてきたところです。
 また,第三者の目を入れることについて,私自身,非常に力を入れていくべきだという思いに至ったのは,一度目の法務大臣在任中から,UNHCRの皆さんと面談し,意見交換もさせていただく機会がありました。UNHCRの知見を積極的に御指導いただくことの重要性を強く感じておりましたので,時間は掛かるわけですが,これを一歩進め,そしてUNHCRとの協定を結ぶところまで至りました。
 どのような形で協力関係を結ぶのかについても,具体的に,プラクティカルに進めていただきたいと思っており,これから第三者の目に基づき,日本の制度をより良いものに改善するため,最大限の努力をしていくことが必要ではないかと感じております。

少年法改正法案の成立に関する質疑について

【記者】
 少年法が半年後の来年4月に施行されます。上川大臣は,今回の就任以前から制度の検討に深く携わられてきましたが,改正法案が成立して施行されることについて,受け止めをお願いいたします。

【大臣】
 私は,今回の法務大臣就任前,自民党・司法制度調査会長を務め,また,与党・少年法検討PTの座長を務めさせていただき,少年法の在り方,これは民法の成年年齢が引き下げられることに伴い,どのように少年を扱うのかという大きな課題でしたが,この点について検討してきました。
 少年法の在り方は,選挙権を有し,民法上の成年となる一方で,未だ成長途上にあり,可塑性を有する18歳及び19歳の若者を,刑事司法上,どのように取り扱うべきかという大変難しい問題でした。
 司法制度調査会においては,様々なステークホルダーの皆様からのヒアリングを徹底して行わせていただきました。また,与党PTにおいても,多岐にわたる重要な論点について,一つ一つ丁寧に議論を戦わせながら,検討を積み重ねた結果,昨年7月,これは大臣就任前ですが,与党PT合意を取りまとめるに至ったものです。
 三度目の法務大臣に就任し,昨年10月に法制審議会からの答申をいただき,本年5月21日に少年法等の一部を改正する法律が国会で成立するに至ったところです。
 既に御案内のとおり,改正法の内容については,18歳及び19歳の者を「特定少年」と呼称し,少年法の適用対象として,全事件を家庭裁判所に送致する仕組みを維持しつつ,いわゆる原則逆送対象事件を拡大する,公判請求された場合には,推知報道の禁止を解除することなど,社会情勢の変化に対応しつつ,少年の非行防止と立ち直りにも十分に意が尽くされたものとなったと考えています。
 少年法の在り方について検討に関わった経験は,私自身が,18歳及び19歳を含む若者たちを社会の中でどのように位置付けていくべきかについて,改めて深く考えるきっかけとなりました。
 国際化・デジタル化の更なる進展により大きく社会が変容していく時代の中で,しっかりと自分の意思を持ち,そしてしっかりと他者への思いやりを持って活動していく,そういうユースの存在は,国境にとらわれない地球規模の環境下において,極めて重要な役割を,未来を担っていくことになると思います。
 彼らに,多様性を認め合い,相互に理解し合い,尊重し合うための不可欠の基盤である「法の支配」や「法の役割」について考える様々なチャンス,機会を提供することは,我々の重要な責務ではないかと思います。
 私は,特に,若者たちへの教育の重要性,法の役割についての法教育活動を,絶えず注視し,応援してきました。文部科学省や学校現場とも連携して取り組むべき事柄であり,極めて重要なものです。
 中学校での模擬裁判を視察に行き,その中で,堂々と御自分の意見を話す若い人たちを,また,立場を変えてロールプレイをすることによって社会の仕組みを理解し,相手の主張をしっかりと聞く,しっかりと自分の主張をするなどの立派な模擬裁判をいくつも拝見しました。
 そうした中で,先ほど申し上げた京都コングレスにユースフォーラムを入れようと旗を振ってきて,実現に至りました。1回限りでは,教育の効果についても,プラットフォームの重要性についても,御認識いただけないので,これを定例化するために,「法遵守の文化のためのグローバルユースフォーラム」を,新たに日本で主催し,国連薬物・犯罪事務所(UNODC)のしっかりとした協力を得ながら,国際的なユースフォーラムを継続して実施していく,今年,正にそれが実行されるわけです。
 こうした取組を通じて,若者たちの声がしっかりと受け止められる,また,若者たちがより積極的な役割を担う社会が構築されていくよう,私自身,法務大臣の立場は終わるわけですが,どのような立場にあっても,コミットしていく責任があると思っています。
 人を大事にしながら,人の具体的な行動の中に,法の支配,「ルール オブ ロー」という大きなコンセプトがしっかりと根付いていくよう,これからも力を入れてまいりたいと思っています。
(以上)