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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和4年1月14日(金)

 今朝の閣議において,法務省案件はありませんでした。
 続いて,私から3件報告があります。
 1件目は,特定技能制度・技能実習制度に係る法務大臣勉強会の設置についてです。
 特定技能制度及び技能実習制度の在り方については,入管法や技能実習法の附則において,検討が求められているところ,まさに検討時期に差し掛かっています。
 これらの制度については,様々な立場から,賛否を含め,様々な御意見・御指摘があるものと承知しています。
 私としては,両制度の在り方について,先入観にとらわれることなく,御意見・御指摘を様々な関係者から幅広く伺っていきたいと考えており,そのため,「特定技能制度・技能実習制度に係る法務大臣勉強会」を設置することとしました。
 また,同時に,両制度の実施状況についての情報収集・分析を進めるよう,出入国在留管理庁に対して指示しており,順次報告を受ける予定としています。
 今後,改めるべきは改めるという誠実さを旨として,両制度の在り方について,多角的観点から検討を進めていきたいと考えています。
 2件目は,マネー・ローンダリング罪の法定刑についてです。
 昨年8月,マネー・ローンダリング対策等を推進する国際的な枠組みであるFATF(金融活動作業部会)から,第4次審査報告書が公表されました。この報告書では,我が国における対策が不十分であり,強化すべき旨の勧告がなされ,その一つとして,マネー・ローンダリングを処罰する罪の法定刑を引き上げるべきとの指摘がなされました。
 国際的協調の下,不正な資金移動を一層効果的に防止・抑止することは政府の重要な課題です。
 そこで,このような国際的動向等に鑑み,早急にマネー・ローンダリング罪の法定刑を改正する必要があると思われることから,1月17日に開催予定の法制審議会に諮問することとしました。
 法制審議会において,充実した議論が行われることを期待しています。
 3件目は,法務省新型コロナウイルス対策本部の開催についてです。
 昨日(13日(木)),法務省新型コロナウイルス感染症対策本部を開催しました。
 私からは,オミクロン株の流行も踏まえ,感染予防と業務継続に関する各種対策について,改めて必要な見直しや徹底を図るよう指示しました。
 法務省は,国民生活の安全・安心を守る法的基盤の維持等の重大な使命を担っており,業務の停滞は許されません。
 これまでの経験も生かしながら,より一層の緊張感を持って臨んでまいります。

マネー・ローンダリング罪の法定刑等に関する質疑について

【記者】
 マネー・ローンダリング罪の法定刑について,大臣から御発言がありました。
 マネロン対策をめぐっては,FATF(金融活動作業部会)が日本に実質不合格の判定を出し,法務省の所管する法令についても見直しが求められていたところです。政府は行動計画を見直して関連法令を厳罰化するなどの方針を示しました。
 大臣には,政府がマネロン対策を進める中での同罪の諮問の意義についての受け止め,行動計画に盛り込まれた他の法務省に関連する取組の進捗状況についての2点を伺います。
 また,海部俊樹元首相の死去についての受け止めもお願いできればと思います。

【大臣】
 まず,法制審議会への諮問の意義についてですが,マネー・ロ-ンダリングに対しては,国際社会と協調しながら,より強力に抑制を図るべき重要性が高まっており,政府としても,国際的協調の下,マネー・ローンダリング等の不正な資金移動を一層効果的に防止・抑止することは重要な課題と位置付けているところです。
 今般諮問する法改正も,その取組の一環として行うものであり,重要な意義を有すると考えています。
 2点目ですが,今般のFATFの審査報告書の公表を契機として,政府が一体となって取組を進めるべく,「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議」が設置されるとともに,今後3年間の行動計画が策定・公表されました。
 その中で法務省に関するものとしては,今般諮問する法改正以外に,実質的支配者情報の透明性向上,マネー・ローンダリング罪の捜査・訴追の強化,テロ資金等提供罪の捜査・訴追の強化等が明記されており,関係府省庁等と連携しつつ,鋭意取組を進めているところです。
 3点目の御質問ですが,海部元総理が亡くなられたという訃報がありました。海部元総理は,総理という職責を始めとして,我が国の国政においても大変重要な役割を果たされ,実績を残された方だと思っています。
 謹んでお悔やみを申し上げるとともに,哀悼の意を表したいと思います。

【記者】
 マネロンの諮問に関してお尋ねします。
 今回FATFの指摘を受けた諮問ということで,先ほど国際協調の下で重要な課題だというお話もあったのですけれども,もう少し積極的な意味で,例えば抑止力への期待とかを含めて,今回の法定刑引上げの効果についての大臣の御見解を教えてください。

【大臣】
 先ほども申し上げましたが,今回の諮問は,FATFの指摘を始めとする近時の動向を踏まえ,マネー・ローンダリング罪について,これまで以上に厳正に対処すべき犯罪であるということを明確に示すことにより,マネー・ローンダリングを一層強く抑止するため,法定刑を引き上げるというものです。
 御質問の法定刑引上げの効果ということについても,法制審議会で御議論をいただくことになると考えています。

特定技能制度・技能実習制度に係る法務大臣勉強会等に関する質疑について

【記者】
 冒頭御発言の法務大臣勉強会についてお伺いします。大臣として,様々な有識者の方からお話を聞かれる中で,特にどういった分野の方からお話を聞かれたいかという点と,いつ頃までをめどに,この勉強会の結論と言いますか,方針を示されるのか,もしお考えがあればお願いします。

【大臣】
 勉強会については,特定技能制度も技能実習制度も法律の附則にある見直しの時期を迎えていることから,見直しに向けて開始するものであって,現時点で具体的に見直しの方向性や終了時期をあらかじめ予断を持って定めて始めるという性質のものではありません。
 制度の在り方について,賛否を含めて様々な御意見・御指摘があることは承知しています。
 私としては,先入観にとらわれることなく,様々な関係者から幅広く御意見を伺った上で,改めるべきは改めていくという姿勢の下,虚心坦懐に勉強会に臨みたいと考えています。

【記者】
 入管法改正と,国際人権条約の関係について質問させていただきます。
 昨日,2016年から2020年にかけて,延べ1,400日近く入管に長期収容されていたクルド人の難民申請者と,イラン人の難民申請者の2人が,現在の入管収容が国際法違反である,日本の入管難民法そのものが国連の自由権規約違反であるということで,損害賠償請求訴訟を提起しました。
 この2人は国連恣意的拘禁作業部会に通報し,この作業部会が入管の長期無期限収容は国際法違反であると認定したという内容に基づいています。
 訴訟内容はまだ確認されていないと思いますが,この間,入管長期収容問題に関しては,この他にも国連の拷問等禁止条約や人種差別撤廃条約を始め複数の条約委員会から,国際法違反であると日本政府に対しても是正勧告が出されています。
 恣意的拘禁作業部会は,日本も理事国であるわけですが,国連人権理事会の作業部会の一つです。しかし,日本政府はこれらの是正勧告に対して,今の入管法が国際人権法違反であるということを認めない状態で,今入管法改正を進めている状況だと思います。
 大臣は常々,「出入国在留管理は,外国人の人権に配慮しながら,ルールにのっとって外国人を受け入れて適切な支援を行っていくこと,そしてルールに違反する者に対しては,厳正に対応することが大原則,大前提です。」とおっしゃっているのですけれども,現在の入管法が,国際人権法のルールに違反していることは,なぜ認めようとしないのかということを伺いたいと思います。
 昨年末にも,難民不認定直後の強制送還は,裁判を受ける権利を侵害するとして,違憲判決が東京高裁で出たわけですが,日本政府も上告せずに判決が確定しました。
 このように国際条約違反ですとか,憲法違反の状態である現在の入管法の制度運用の迅速な検証や改善なしに,入管法自体の改正は有り得ないと思うのですけれども,大臣はいかがお考えでしょうか。
 国会に今回入管法改正案の提出をしないという政府・与党側の対応が報道されていますけれども,そういった提出に関係なく,国会できちんと審議する必要があるのではないかと思いますが,それについて大臣はどのようにお考えでしょうか。

【大臣】
 日本人と外国人がお互いに尊重し合い,安全・安心な共生社会を作っていくためには,外国人の人権に配慮しながらも,ルールにのっとって外国人を受け入れ,適切な支援を行うということ,ルールに違反する者に対しては厳正に対応するということが,大原則,大前提だということは,かねてから申し上げているとおりです。
 御指摘がありました我が国の入管制度は,入管法に基づいて適切に運用されており,我が国が締結している人権諸条約に違反するものとは考えていません。
 送還忌避・長期収容の問題は,これもまた,かねてから申し上げているとおり,早期に解決をしなければならない喫緊の課題だと考えており,この問題を解決するため,多様な関係者の意見に耳を傾けながら,必要な法整備をしっかりと進めていくという考え方に変わりはありません。

【記者】
 技能実習生,それから特定技能制度の勉強会を開くとおっしゃっていましたが,これもきちんとした受入れのための法制度に非常に問題点があり,実際に人権侵害が現場で起こっていますし,今入管に収容されている人の中にも,元技能実習生がたくさんいる状態です。また,難民申請者の難民認定率が非常に低いという現状があるわけです。
 ですから,まず外国人がルール違反をするという前に,今の入管法そのものが現場に全然則していないのではないかと,まず入管法の運用を改善するという側面から取り組まないと,現場の状況は全然改善されないと思うのですけれども,そういう視点を持って技能実習制度の勉強会等をやられるのかどうかという点と,やはり入管法全体の中での位置付けが必要だと思うのですけれども,その考えについてお聞かせください。

【大臣】
 先ほどもお答えしましたとおり,この勉強会は,両制度の見直し規定があり,ちょうどその時期を迎えているということもあって,虚心坦懐に勉強会を進めていきたいということです。
 あらかじめ予断を持って,このような方向性であるとか,こういう論点でということを決め打ちして始めるというものではありません。
 この制度の在り方に関して,賛成,反対の様々な御意見があることはよく承知しています。
 そうした様々な御意見にしっかり耳を傾けながら,改めるべき点があれば,勇気を持って,誠実さを持って改めていくという姿勢でこの勉強会に臨むということを申し上げておきます。
(以上)