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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和4年1月18日(火)

 今朝の閣議において,法務省案件はありませんでした。

水際対策に関する質疑について

【記者】
 松野博一官房長官は17日の記者会見で,卒業や修了まで1年以内で卒業に支障が出るおそれがある国費留学生87人の新規入国を認める方針を表明しました。
 オミクロン型の確認に伴い運用を厳格化した特段の事情に基づく例外的な新規入国です。
 この点について大臣の所感をお願いします。

【大臣】
 総理も述べているとおり,政府では,当面,2月末まで,現在の水際対策の骨格を維持することとしています。
 御指摘の留学生については,公益性や緊急性の観点から,個別の事情を勘案し,必要な防疫措置を講じた上で,政府として,入国を認めることとしたものです。
 特段の事情による新規入国については,引き続き,個別の事情を勘案し,必要かつ適切な対応をとっていきたいと考えています。

【記者】
 関連ですが,国益上の観点,人道上の観点からの特段の事情がある場合には入国が可能だと,政府は説明しています。
 人道上の観点からの特段の事情は,不透明です。
 例えば,出産のために母国に帰国した女性は,日本への再入国許可を受けていますが,生まれたばかりの赤ちゃんは,新規入国であるため入国が否定されています。この場合は,特段の事情に当たるのではないのでしょうか。
 また,2年前から入国を待っている留学生も,結局,こんなに時間が経ってしまっており,人道上の観点からの特段の事情が考慮されていないのではないでしょうか。
 どのようなプロセスで,誰が,人道上の観点からの特段の事情に当たるかどうかを判断するのでしょうか。

【大臣】
 先ほども申し上げたとおり,オミクロン株への対応に当たっては,慎重にも慎重を重ねて対応すべきという考え方から,当面,2月末までは人道上,国益上の観点から必要な対応を行いつつ,外国人の新規入国の停止などの現在の水際対策の骨格を維持することとしています。
 また,特段の事情による新規入国については,厳格化して運用していくこととしており,引き続き,個別の事情を勘案しながら,必要かつ適切な対応を継続していくという姿勢です。
 こうした中で,これまでも人道的な配慮が必要な場合などについては,個別の事情を踏まえ,必要な防疫措置を講じた上で,入国を認めてきています。
 家族が離れ離れの状態で,家族で一緒に暮らす必要性が認められる外国籍の配偶者等についても,個別の事情を勘案しながら対応していく方針であると承知しています。
 また,先ほど申し上げたとおり,留学生については,公益性や緊急性の観点から,個別の事情を勘案し,必要な防疫措置を講じた上で,政府として,入国を認めることとしたものです。
 特段の事情による新規入国については,引き続き,政府全体として,個別の事情を勘案しながら,必要かつ適切な対応をとっていくこととなります。

【記者】
 確認しますが,大臣の説明を聞くと,私が取り上げた事例のような取扱いは行わないはずです。というのは,母国に帰国して出産して,再入国の許可を持つ女性が,日本に戻るときに赤ちゃんと一緒に戻れない状況になってしまいます。
 つまり,赤ちゃんは新規入国だからと否定されている状況は,人道上の観点からあり得ないことであるはずですけれども,なぜそういった事例があるのでしょうか。

【大臣】
 申し上げたとおり,特段の事情については,人道上の配慮を個別の案件ごとに判断しています。
 お尋ねの件について,法務省としては承知していませんが,飽くまで特別な事情というのは,今申し上げた考えに基づいて,個別に判断しているものと承知しています。

出入国在留管理行政に関する質疑について

【記者】
 昨日の国会で,林外相の外交演説もありました。そこで特に深刻な人権侵害に声を上げることや,対外的な対話の必要性なども訴えていらっしゃいました。
 日本国内の人権侵害にしても同様だと思うのですが,例えば,国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会による国別訪問手続(カントリー・ビジット),これは入管行政だけではなく,刑事法の拘禁ですとか,あるいは,精神医療の問題も含んでいるのですが,2015年以降,複数回要請されていますが,いまだに日本政府は招へいしていません。
 確かにこの2年間は,新型コロナ感染症で招へいできないという事情もあると思うのですが,外務省を始め,関係省庁と,国別訪問手続の受入れの検討は行われているのでしょうか。
 特に入管行政については,難民申請者2名が,入管の長期収容に関して,2020年9月に,この作業部会が恣意的拘禁であると意見を出したことに対して,それを法務省は認めずに,2021年3月に,上川法相が異議申立てを行いました。
 また,2021年3月末にも,入管法の改正について,この恣意的拘禁の作業部会を含み,国連の特別報告者から,入管法の改正法に国際法違反の疑いがあるという懸念表明が出されました。入管庁も一応回答を出しましたが,非常に簡単なものに過ぎなかったという事実があります。
 国連の方からの恣意的拘禁の疑いがあるという指摘に対して,やはり日本政府としてきちんと対応する,特に被害者の人権救済とか入管行政の具体的な改善対策の詳細を報告する義務があると思うのですけれども,こういったことを,今も引き続き検討していらっしゃるのかどうかということ。
 この2点について伺います。

【大臣】
 現在,我が国は複数の特別手続からの訪日要請を受けており,それぞれの訪日要請にどのように対応するかについては,政府として,外交日程や国会会期等,種々の要素を総合的に考慮して検討する必要があると理解しています。
 法務省としては,お尋ねのような要請に対しては,必要に応じて,外務省と連携しながら,対処していきたいと考えています。
 また,先の国会に提出した入管法改正法案の内容は適正であり,我が国が締結する人権諸条約に違反するものではないと考えています。
 いつも申し上げることですが,我が国は,外国人の人権に配慮しながら,入管法に基づく外国人の受入れを推進するとともに,日本人と外国人が互いを尊重し合いながら,ルールを守り,安全・安心に暮らせる共生社会の実現を目指しています。
 その観点からも,送還忌避や長期収容の問題の解決は,共生社会の実現のためにも重要な課題だと思っており,いつも申し上げているとおり,不断の検討を行って,現行制度における運用の改善を含めて適切に対応していきたいと考えています。

【記者】
 山陽新聞,そして毎日新聞に書かれていますが,岡山の建設会社でベトナム人技能実習生の41歳の男性が,2年間にわたって複数の日本人従業員から暴行を受け,あばら骨を折るなど骨折をしていたということが判明しました。動画もネット上では公開されています。
 男性によりますと,監理団体の通訳に相談をしたのだけれども,日本語能力が低いからとか,写真じゃなく動画が必要で,仕事を変えることも無理だと言われて諦めたということでした。
 この話はもうお聞きになっていると思いますが,どう受け止め,今後の改善にどう役立てていくおつもりなのかお伺いします。

【大臣】
 個別の報道の一つ一つに所感を申し上げるのは控えたいと思いますが,一般論として申し上げると,技能実習生に対する実習実施者による暴言や暴行といった人権を著しく侵害する行為は,決してあってはならないことであり,許されるものではありません。
 したがって,しっかり検査等を行った上で,法令違反が認められれば,当然,必要な指導及び処分を厳正に行うことになります。当然のことです。
 先日の会見で申し上げましたが,法務省内に,技能実習制度・特定技能制度に係る勉強会を立ち上げました。
 この両制度については,賛否を含めて様々な御意見や御指摘があることもよく承知しています。
 様々な意見に虚心坦懐に耳を傾けた上で,改めるべき点があれば改めるという気持ちで,この勉強会を立ち上げたところです。そのような姿勢を持って,様々な問題点があるとするならば,きちんと正面から受け止めて,対処していきたいと思っています。

【記者】
 勉強会の関連ですけれども,その中のメンバーに,例えば,今回のような技能実習の問題に対して支援をしている米国務省に「人身売買と戦うヒーロー」とされた指宿昭一弁護士,こういう立場の方を入れるか,また,日弁連,移住連等,現場で私たち取材する記者から見ても,かなり技能実習の問題点について踏み込んで,きちんとインタビューをして,いろいろな形で発信しているといった,おそらく法務省側にとってはある程度不都合であるような話もいっぱい出てくるような団体や弁護士の方々,こういった方たちを,この検討会の中に入れるつもりかという点をお答えいただけますか。

【大臣】
 現時点で,どのような方向性を持ってとか,いつまでにとか,誰からお話を聞いてということをあらかじめ予断を持って,決め打ちしているわけではありません。
 勉強会の趣旨としては,両制度それぞれの法律の附則において見直し規定が盛り込まれており,見直しの時期を迎えているということもあります。
 この際,実情をつぶさに把握して,様々な御意見・御指摘もありますので,幅広く耳を傾けて,その上で,改めるべき点があれば改めるという誠実さを持って,この問題に向き合っていきたいということは,先日も申し上げたとおりです。そういう強い気持ちを持って,勉強会を進めていきたいと思っています。

【記者】
 昨年12月21日,入管庁が公表した「改善策の取組状況」と「現行入管法上の問題点」の二つの文書ですが,「改善策の取組状況」の一覧がありまして,その中で,「取組中」とか「実施済み」という評価がされているのですけれども,これは通常でしたら,国土交通省のデータの書き換え問題で第三者委員会が立ち上がっているように,やはり第三者が,取組中なのか実施済みなのか評価すべきものだと思うのですけれども,どうして第三者ではなく,入管庁のどの部署が,何を基準に,こういった結果を判断しているのでしょうか。
 改善策の取組というのにもかかわらず,内部で評価しているような感じがするのですけれども,調査経過といったものについても,詳細について公表するのかどうかということも含めて,お願いします。

【大臣】
 まず,調査報告書は,複数の外部有識者の意見を始め,可能な限り客観的な資料に基づいて,幅広い視点から問題を抽出して取りまとめられています。
 入管庁では,プロジェクトチームを中心として,この調査報告書で示された12項目の改善策の着実な実施に全力を挙げており,今回の文書はその御報告になります。
 基準は何かとの点については,12項目の改善策のうち,通知等の発出や要領の改訂など,明文化した措置等を講じて改善策を実施した7項目について,実施済みと表現しています。
 今鋭意取り組んでいますが,改善策への取組状況は,入管庁において,適時適切に公表していくこととしています。
 いずれにしても,名古屋の事案は,二度とあってはならない事案であり,二度と起こさないという固い決意をもって,調査報告書で示された改善策を着実に実行することに全力を挙げています。
 引き続き,法務大臣としても,リーダーシップを発揮しながら,取組を加速化させていきます。
(以上)