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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和4年1月28日(金)

 今朝の閣議において,法務省案件として,主意書に対する答弁書が1件ありました。
 続いて,私から1件報告があります。
 今月31日から,全国の商業登記所において,実質的支配者リスト制度が開始されます。
 この制度は,マネー・ローンダリング防止等の国際的な要請を踏まえたものであり,株式会社の申出に基づき,実質的支配者に関する情報が記載された書面を,商業登記所において保管し,写しの交付を行うものです。
 この制度によって,我が国の法人の実質的支配者情報の透明性の向上や,銀行などの特定事業者による実質的支配者情報の確認の一層の円滑化が期待されます。
 今後も,この制度が広く活用されるよう,引き続き,関係省庁と連携して積極的な周知・広報に努めてまいりたいと考えています。

実質的支配者リスト制度に関する質疑について

【記者】
 実質的支配者リスト制度の開始について御発言がありました。
 同制度は法人の透明性を向上させ,資金洗浄等の目的による法人の悪用を防止する観点から,法人設立後の継続的な実質的支配者の把握についての取組の一つとして開始するものと思います。
 この制度の意義についての大臣のお考え,支配者情報の提出が任意にとどまる中でどのように実効性を高めるか,民間金融機関等による制度活用の検討状況について法務省として認知しているものがあるか,この3点についてお伺いします。

【大臣】
 実質的支配者リスト制度は,マネー・ロ-ンダリング防止等の国内外からの要請を踏まえたものです。
 法人の実質的支配者の透明性を向上させることは,法人を隠れ蓑として行われるマネロンの防止等に貢献するものと考えています。
 この制度によるマネロン防止等の効果が十分発揮されるためには,まずは,この制度が自発的に広く利用されるように努めることが重要と考えています。
 そのため,この制度の運用を開始するに当たり,金融庁や関係団体とも連携して,金融機関等への周知・広報を行っているところです。
 金融機関等は,顧客である法人の実質的支配者の確認義務を負っており,本制度の活用を御検討いただいているものと承知しています。

スポーツベッティングに関する質疑について

【記者】
 スポーツベッティングについて伺います。インターネット上で海外サイトが運営するオンラインギャンブルに日本で参加することが横行しており,日本の参加者たち複数の人間が合法だとの認識をYouTube上で発言し,広めています。
 これが合法か非合法なのか,IWJが電話で法務省刑事局に問い合わせましたら,「一般論として,賭博行為の一部が日本国内において行われた場合,賭博罪が成立することがあるものと考えられるということしか,法務省としてお答えできません。」,「海外で運営しているオンラインギャンブルに参加した場合は,個別の案件に当たるので,その捜査状況や,証拠によっていろいろ考えられるのでこちらとしては回答することができません。」と,曖昧な回答しかされませんでした。
 しかし,このような合法か非合法か分からないようなアナウンスをされると,グレーゾーンだから何をしても今は大丈夫だと判断する者が増えていきます。現行法では合法なのか非合法なのか,国民に正しい判断基準を示していただきたいのです。
 その上で,仮に合法であるとされて,不正行為が行われる可能性に対してどう取り繕えるのかという問題が生じます。かつてプロ野球でも,黒い霧事件と呼ばれる暴力団による野球賭博に,現役選手が関わる八百長事件が起こり,関わったプロ野球のピッチャーが永久追放されることがありました。
 オンラインスポーツベッティングが合法として行われる場合でも,シナリオや台本が,選手,当事者間で打ち合わせされ,大番狂わせが起こって,勝率の低い方が勝利を収め,その内情を知っていた者だけが不正に大儲けができるという可能性が出てきます。
 現に大晦日に地上波で放映された格闘技大会で,1試合だけ両選手の間で台本を話し合ったことが明るみに出たことがありました。この試合もオンラインでベッティングが行われていました。
 オンラインギャンブルというのは,賭博罪が制定された頃は想定されていなかったことと思われますが,それでも法の空白は許されません。現行法に照らし合わせて,合法か非合法か,また台本があるような真剣勝負と言えない試合があった場合にどう対処するのか,当局はそれも賭けの対象とするのか,指針をきちんとお示しいただかないと法秩序を守ることができなくなります。大臣の見解についてお答えをお願いいたします。

【大臣】
 犯罪の成否は,捜査機関により収集された証拠に基づいて個別に判断される事柄であり,具体的な犯罪の成否についてコメントすることはできません。
 お尋ねのオンラインギャンブルについては,捜査当局において,賭博罪等の刑事事件として取り上げるべきものがあれば,法と証拠に基づいて適切に対処するものと承知しています。

出入国在留管理行政に関する質疑について

【記者】
 大村入管収容所に長期収容中のネパール人男性について,施設内で起きた大けがを2年間放置された末,病状が悪化し続けて,現在ほとんど寝たきり状態になってしまっています。
 それにもかかわらず,適切な医療を受けられないということで,1月17日に長崎県弁護士会に人権救済を申し立てました。この方は既にこの件で国賠訴訟も起こしており,この件は報道もされています。 
 また,東京入管でも,長期収容中のスリランカ人男性が,2週間の仮放免と再収容を繰り返し,その度に健康状態を悪化させて,この数か月間,嘔吐がひどく,入管の医務室で点滴を毎日打っているような状況ですけれども,血管への負担が大きく,内臓疾患の疑いもあるので,入管の医師からは,入管収容がこれ以上続けば命に関わる,仮放免してそのまま入院する必要があると言われています。
 この件では,1月12日に,立憲民主党の国会議員,この中には医師の資格などもある阿部知子議員などもいるのですけれども,3人の議員が,東京入管局長に対して,仮放免を求める要請をしましたが,いまだに収容が続いています。
 現在法務省は,名古屋入管のスリランカ人女性死亡事案の最終報告書を踏まえ,「改善策の取組状況」を公表し,1月25日に改訂をしたのですけれども,今言ったような大村入管や東京入管で起きている被収容者の極度の体調悪化の状況というのは,大臣にも報告され,あるいは,こういった改善策の取組の中でも,しっかりと検討しているのでしょうか。
 実際に入管内での日々の実務に反映されなければ,「改善策の取組状況」を作成,公表してもあまり意味がないと思うのですけれども,一体何のために「改善策の取組状況」を作成し公表されているのか,その点についての説明もお願いします。
 この2点,大村入管と東京入管の件が報告されているのかどうか,こういった事例が,「改善策の取組状況」にしっかりと反映されているのかどうかといったことについてお答えください。

【大臣】
 仮放免の可否については,個別事案ごとの事情を踏まえ,許可すべきものと,すべきでないものを,適切に判断することが大事だと考えています。
 個別事案における具体的な事実関係については,お答えを差し控えさせていただきますが,体調不良を訴える被収容者に対しては,訴えの内容や症状等に応じて,必要な診療・治療を適切に受けさせているものと承知しています。
 加えて,名古屋事案を踏まえた改善策の一つとして,入管庁は,昨年12月28日,「体調不良者等に係る仮放免運用指針」を策定,発出しています。
 この新たな運用指針では,収容継続によって健康状態を大きく害するおそれがある旨の医師の所見が付された被収容者については,原則として仮放免を許可することなどを定めています。
 この運用指針に基づいて,体調不良者に対する仮放免の判断がより迅速かつ適切に行われていると聞いています。
 御指摘の「改善策の取組状況」は,こうした改善策の進捗状況をしっかりとお示しするために公表しているものです。

【記者】
 先ほどの質問ですが,大村入管と東京入管の件は大臣に報告されているのかどうかということをお答えください。
 それと,2020年8月に日弁連が,「入国者収容所等視察委員会の改革に関する意見書」を公表しています。このような法務省・入管庁から独立した専門的な第三者委員会の設立が必要だと大臣は考えていらっしゃるのかどうか,国連からも再三にわたり国内人権機関の創設を求められ続けているわけですが,それとも関係してくると思うのですけれども,こうした独立した入管施設の視察委員会をもう一度見直すといったようなことを考えていらっしゃるのかどうか,国連の勧告をなぜ受けようとしないのか,その理由についてお願いいたします。

【大臣】
 前段のお尋ねですが,個別の案件についてコメントすることは控えたいと思います。
 その上で,先ほど申し上げましたように,体調不良を訴える被収容者に対しては,その訴えの内容や症状等に応じて,必要な診療・治療を適切に受けさせているものと承知しています。
 後段のお尋ねですが,視察委員会は,学識経験者,法曹関係者,医療関係者等により構成されており,その運営は同委員会によって決定されています。
 視察委員会は,独立した立場で被収容者から直接意見を聞くことも可能です。また,各収容施設に設置されている提案箱を通じて,視察委員が直接被収容者の意見等を把握することもできます。
 このように,視察委員会は,入管庁とは一線を画した第三者機関であり,専門性・第三者性は十分に担保されていると考えています。

【記者】
 第三者性が担保されているとおっしゃっていますが,結局事務局も入管庁の総務課に設置されていますし,視察といっても,やはり全国に入管があるわけですから,東西に分かれて視察委員会がありますけれども,なかなか緊急事態に対処できるような仕組みになっていません。
 名古屋入管のケースでも,提案箱にスリランカ人女性自身が視察委員会宛てに要請を書いているのですが,それが検証されたのはスリランカ人女性が亡くなってからです。
 ですから,そういった緊急の申立てや個人通報的な形で,外部からきちんと,こういう状況だから検証してくださいといったような緊急の申立てには全然対処しきれていません。予算もない,本当に片手間に皆さんやっているような状況です。
 これはもちろん入管施設だけではなく,刑務所でもそういった視察委員会はあると思うのですけれども,入管の場合,特にそういった体制がぜい弱ですし,法務省の中でコントロールされているという意味合いが強いと思います。
 そういったことで,この日弁連の意見書というのを参考にされて,大臣はお読みになったのかどうかということを確認させてください。

【大臣】
 先ほど申し上げましたが,視察委員会は,学識経験者,法曹関係者,医療関係者,NGOや国際機関の関係者,地域住民代表者等の方々の中から任命するわけですが,選任が恣意的なものにならないように,日弁連や日本医師会等の所属団体から推薦を受けて選任しています。
 そして,視察委員会は被収容者から直接意見を聞くこともできる制度になっており,運営も視察委員会によって決定されます。
 現在の入管行政の在り方について,様々な御意見・御指摘があることは,私もよく承知していますが,あるべき入管行政の姿になるように不断の努力をしていくという姿勢に変わりはありません。
 第三者機関としての視察委員会については,専門性・第三者性は十分に担保されていると考えています。
(以上)