検索

検索

×閉じる

法務大臣閣議後記者会見の概要

令和4年3月8日(火)

 今朝の閣議において、法務省案件として、「民事訴訟法等の一部を改正する法律案」、「刑法等の一部を改正する法律案」及び「刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案」が閣議決定されました。
 民事訴訟法等の一部改正案は、民事訴訟手続を全面的にIT化すること等を内容とするものであり、国民の皆様が民事裁判をより利用しやすくなることにつながるものと考えています。
 また、刑法等の一部改正法律案等は、「懲役」及び「禁錮」を廃止し、これらに代わるものとして「拘禁刑」を創設し、施設内及び社会内における処遇の充実を図る諸制度をパッケージで導入するとともに、侮辱罪の法定刑を引き上げるものであり、罪を犯した者の改善更生・再犯防止を図り、新たな被害者を生まない安全・安心な社会を実現するとともに、侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止することにつながるものと考えています。
 これらの法案はいずれも、重要な意義を有するものであり、国会において十分に御審議いただき、速やかに成立させていただきたいと考えています。
 続いて、私から2件報告があります。
 1件目は、「特定技能制度・技能実習制度に係る勉強会」についてです。
 3月3日、「特定技能制度・技能実習制度に係る勉強会」において、是川夕国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長からお話を伺いました。
 是川さんからは、「国際労働移動ネットワークの中の日本」をテーマにお話をいただき、グローバルな国際移住の潮流と日本、移民政策とは何か、「国境を越える労働市場」と日本、改革の方向性といった視点から、両制度の現状と課題について御高説を賜りました。
 その後の意見交換を含め、貴重なお話を伺うことができ、大変有意義な勉強会であったと考えています。
 2件目は、公安調査庁における経済安全保障関連調査及びサイバー関連調査に関する取組についてです。
 まず、経済インテリジェンスに係る情報収集・分析機能を一層強化するため、来月(4月)から「経済安全保障特別調査室」を立ち上げることとなりました。
 先端技術の流出懸念等に関する情報の収集・分析、関係機関への情報提供、産学官の連携・情報発信等の取組を一層強化してまいります。
 また、サイバー関連調査に係る機能強化のため、同じく来月(4月)から「サイバー特別調査室」を立ち上げることとなりました。
 サイバー攻撃の脅威主体や予兆等に関する情報収集・分析、関係機関への情報提供に一層努めるとともに、民間企業や研究機関とのより緊密な知見の共有等を行ってまいります。

閣議決定された法律案に関する質疑について

【記者】
 冒頭発言にもございました本日の法律案の閣議決定についてお尋ねします。法制審議会の議論の過程では、侮辱罪の法定刑引上げについて、表現の自由への影響を懸念する指摘が、また、民事訴訟IT化法案に関しては、6か月以内に審理を終結する制度の創設に反対する意見がそれぞれありました。
 こうした懸念に対して、国会ではどのように説明を尽くしていくおつもりか,大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】
 まず、侮辱罪に関する御質問について、そもそも、表現の自由は、憲法で保障された重要な権利であり、これを不当に制限することがあってはならないのは当然のことです。
 今般の侮辱罪の法定刑の引上げは、悪質な侮辱行為に対して厳正な対処を可能とするものであり、構成要件に変更はなく、処罰の対象となる行為は変わらない上、当罰性の低い行為まで一律に重く処罰する趣旨ではありません。
 法制審議会の議論でも、正当な表現行為が処罰されないことには変わりがないこと、捜査当局においてもその趣旨を踏まえて表現の自由に配慮していくことが確認されています。
 次に、6か月以内に民事訴訟の審理を終結する制度に関する御質問について、この制度は、当事者の審理期間に対する予測可能性を高める観点から重要な意義があると考えています。
 法制審議会の議論においては、裁判を受ける権利が害されるのではないかという意見もありましたが、そうした意見を踏まえ、この手続では、当事者双方がその利用を希望している場合に限り、この手続を開始することとしています。また、手続の途中だけでなく判決後であっても、当事者の一方は通常の手続での審理を求めることができることなどとしています。
 いずれの法案についても、御指摘のような懸念を解消すべく、今後、国会審議の場などにおいても、しっかりと説明を尽くしていきたいと思っています。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について

【記者】
 前回の記者会見で、昨年3月6日に名古屋入管で死亡したウィシュマさんの件について哀悼の意を述べられ、二度とあってはならないと御発言されました。
 この間、上川法務大臣のときに作成された調査報告書に基づいて12項目の改善策を中心に取り組んでこられたわけですが、強制送還を大前提とした原則収容主義に基づく退去強制手続が抜本的に改善されない限り、今後も同じことが繰り返されるという意見が多数あります。
 国会の法務委員会での質疑も始まり、この点についてビデオ開示のことについても議論されると思うのですが、上川大臣のときに作成された内部の調査報告書を見直し、法務省から独立した専門の第三者委員会によって再調査を行うことや、その前提として、ウィシュマさんの御遺族や代理人と面談し、報告書の内容やビデオ開示の在り方について意見交換するようなお考えを大臣はお持ちでしょうか。

【大臣】
 調査報告書では、可能な限り客観的な資料に基づき、医師、弁護士等の外部有識者の方々に御意見・御指摘をいただきながら事実を確認し、考えられる問題点を幅広く抽出して検討がなされました。
 問題点の検討に当たっても、外部有識者の御意見・御指摘に基づいて評価が示されており、客観性・公平性を確保しつつ、十分な検討が尽くされたものと認識しています。
 したがって、再検証が必要だとは考えていません。
 大事なことは、今回の調査報告書で示された改善策を速やかに具体化することであり、改善策について着実に取組を進めていきたいと考えています。

経済安全保障関連調査及びサイバー関連調査に関する取組に関する質疑について

【記者】
 冒頭御発言のあった「経済安全保障特別調査室」と「サイバー特別調査室」についてですが、このタイミングで立ち上げる狙いと、それぞれどういった規模の組織になるのかという点について教えてください。

【大臣】
 まず「経済安全保障特別調査室」について、経済安全保障の確保は、岸田内閣においても極めて重要な施策として位置付けられており、経済安全保障推進法案も閣議決定がなされたところです。
 このような情勢を踏まえ、公安調査庁においても、経済安全保障分野における情報収集・分析機能の一層の強化を企図するものです。
 「サイバー特別調査室」については、日々拡大・進化を続けるサイバー空間をめぐっては、同空間を介した攻撃等による先端技術・データの流出や国家の重要インフラへの被害も発生しています。
 日本のみならず世界中で、このようなサイバー空間における現実的な脅威が日増しに増大しているわけです。
 このような脅威に適切に対応するため、「サイバー特別調査室」を立ち上げました。
 公安調査庁が、より一層の情報収集・分析機能を駆使して、このような事態に対応していくというところに意義があります。
(以上)