再犯防止推進白書ロゴ

第1節 再犯防止に向けた政府の取組

第1章 再犯防止をめぐる近年の動向
第1節 再犯防止に向けた政府の取組

 政府は、2003年(平成15年)に犯罪対策閣僚会議を開催し、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画-「世界一安全な国、日本」の復活を目指して-」を策定して以降、犯罪対策において、再犯を防止することが必要かつ重要であるとの認識の下、2012年(平成24年)に「再犯防止に向けた総合対策」を、2014年(平成26年)に「宣言:犯罪に戻らない・戻さない~立ち直りをみんなで支える明るい社会へ~」を、それぞれ犯罪対策閣僚会議で決定するなど、様々な再犯防止対策を講じてきた。

 そのような中、2016年(平成28年)12月、議員立法により、再犯の防止等の推進に関する法律(平成28年法律第104号。以下「推進法」という。)が成立し、施行されたことを受け、政府は、2017年(平成29年)12月、2018年度(平成30年度)から2022年度(令和4年度)末までの5年間を計画期間とする、国として初めてとなる再犯防止推進計画(以下「推進計画」という。)を閣議決定した。

 政府は、推進計画に基づき、関係府省庁の連携の下で、取組を進めているところであるが、その一方で、より重点的に取り組んでいくべき課題も明らかとなった。

 具体的には、近年、政府として2021年(令和3年)までに16%以下とすることを目標としている出所受刑者の2年以内再入率(【指標番号3】参照)自体は、着実に低下しており、2019年(令和元年)当時に把握していた2017年出所者では16.9%となっていたが、出所受刑者の約4割を占める満期釈放者について前記再入率を見ると、2017年出所者では25.4%と、仮釈放者(2017年出所者では10.7%)よりも2倍以上高くなっており、満期釈放者の再犯をいかに防ぐかが喫緊の課題と言える。

 また、満期釈放者はもとより、刑事司法手続の入口段階にある起訴猶予者等を含む犯罪をした者等の再犯・再非行を防ぐためには、刑事司法関係機関における取組にとどまらず、それぞれの地域社会において、住民に身近な各種サービスを提供している地方公共団体による取組が不可欠であり、再犯防止の取組を積極的に進める地方公共団体をより増やしていくことが必要である。

 さらに、刑事司法手続終了後を含めた“息の長い”支援を実現していくためには、国・地方公共団体との連携のみならず、犯罪をした者等の立ち直りを支援する民間協力者との連携協力が不可欠であり、民間協力者の活動をより一層促進していくことも必要である。

 そこで、政府は、こうした課題に対応した各種取組を加速させるため、2019年12月、犯罪対策閣僚会議において、「再犯防止推進計画加速化プラン」(資1-1-1参照)を決定した。その概要は次のとおりである。

資1-1-1 再犯防止推進計画加速化プランの概要
資1-1-1 再犯防止推進計画加速化プランの概要
1 満期釈放者対策の充実強化

 2022年までに満期釈放者の2年以内再入者数を2割以上減少させることを成果目標として設定し、この目標の達成に向け、次のような具体的な取組を進める。

 ・刑事施設入所早期からのニーズの把握と意欲の喚起
 ・生活環境の調整の充実強化と仮釈放の積極的な運用
 ・満期釈放者に対する受け皿等の確保
 ・満期釈放者の相談支援等の充実
 ・満期釈放者対策の充実に向けた体制の整備

2 地方公共団体との連携強化の推進

 2021年度末までに100以上の地方公共団体で地方再犯防止推進計画(以下「地方計画」という。)が策定されるよう支援することを成果目標として設定し、この目標の達成に向け、次のような具体的な取組を進める。

 ・地方計画の策定や再犯防止施策を推進するために必要な各種統計情報の整備・提供
 ・再犯防止に取り組む上で参考となる情報の集約など、取組の横展開を図る仕組みの整備
 ・地方公共団体における効果的な再犯防止の実施体制の構築に向けた必要な支援の実施

3 民間協力者の活動の促進

 近年、求められる役割や活動範囲が大きく広がっている民間協力者の活動を促進するため、次のような具体的な取組を進める。
 ・幅広い年齢層や多様な職業など様々な立場の保護司適任者の確保
 ・協力雇用主への継続的支援の強化、更生保護施設の体制整備と地域拠点機能の強化
 ・ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)等の成果連動型民間委託契約方式(PFS)の仕組みを通じた、社会的課題に取り組むNPO、民間企業・団体等と連携した効果的な再犯防止活動等の推進
 ・自治会等への幅広い情報発信と少年警察ボランティア等の活動の促進
 ・民間協力者の活動について、国民の理解と協力を得るための広報の充実強化
 ・民間協力者によるクラウドファンディングや基金等の活用の促進

 また、政府は、性犯罪・性暴力の根絶に向け、2020年(令和2年)6月、性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議において、2020年度から2022年度までの3年間を集中強化期間とする「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」を取りまとめたところ、性犯罪者の再犯防止施策として、次の取組を進めることとしている。

・刑事施設及び保護観察所における認知行動療法を活かした専門的プログラムの拡充の検討
・必要な体制ができた地方公共団体に対し、出所者に関する情報を含めた情報提供ができることの明示
・仮釈放中の性犯罪者等へのGPS機器の装着等について、諸外国の法制度等を把握した上で検討