入管法改正案Q&A

Q1 長期収容の問題を解決するには,収容するか否かを裁判所が判断する仕組みや収容期間の上限を設ければよいのではありませんか?

〇 今回の改正法案では,収容するか否かを裁判所が判断する仕組みや収容期間の上限については,次のような理由から,必要はないと考えました。
      長期収容の問題の解決は,監理措置の創設や速やかな退去の促進などによって図ります。
 (1) 収容するか否かを裁判所が判断する仕組み
   ●  今回の入管法改正法案では,日本から退去すべき外国人を当庁の収容施設に収容するか,監理措置により収容しないで社会内で生活させるかは,その外国人の収容等を行う入国警備官とは別の官職である上級の入国審査官(主任審査官(※))が慎重に判断することとしています。
      (※)入国審査官である地方出入国在留管理局の局長,次長,支局長などです。
   ●  また,退去すべき外国人は,収容されることに不服があれば,行政訴訟を提起して,裁判所の判断を仰ぐことができます。
   ●  このような仕組みにより,収容するか否かの判断は十分適正に行われると考えられます。
   ●  以上から,今回の入管法改正法案において,収容するか否かを裁判所が判断する仕組みは設けなかったものです。

 (2)収容期間の上限
   ●  例えば,収容開始から6か月が経過したら必ず収容を解くこととするなど,収容期間に上限を設けた場合には,日本からの退去をかたくなに拒み,収容期間の上限を経過した外国人全員の収容を解かなければならなくなります。
           そうすると,結局,日本から退去させるべき外国人全員が日本社会で生活できることになり,外国人の在留管理を適正に行うことは困難になります。
   ●  また,収容を解かれることを期待して退去を拒み続けることを誘発し,本来日本から退去させるべき外国人を退去させることがますます困難になります。
   ●  以上から,収容期間に上限を設けることは適切ではないと考えました。
 

Q2 収容について事前に裁判所が判断する仕組みがないことや,収容期間の上限がないことは,国際的な標準から外れているのではありませんか?

〇 当庁で把握している範囲では,例えば,アメリカ,イギリス,オーストラリア及び韓国においては,収容について裁判所が事前に判断する仕組みはないとのことです。
〇 また,当庁で把握している範囲では,例えば,イギリス,オーストラリア及び韓国においては,法律上の収容期間の上限はないとのことです。
〇 このように,いわゆる英米法系の国を中心に,収容について裁判所が事前に判断する仕組みや収容期間の上限を設けていない国があります。
〇 このような法制度が,国際的な標準に外れているとは考えていません。
      そもそも,各国の出入国在留管理制度は,これを構成する個々の制度が相互に密接に関連し,制度全体で適切に機能するよう設計されており,制度の一部のみを取り出して日本の制度と比較することは適切ではありません。
〇 なお,日本の入管法は,戦後,出入国の管理を目的として制定され,その体系を維持して現在に至っているものであり,アメリカの法制度を基礎としているものです。

Q3 なぜ,日本からの退去を拒む外国人を退去させなければならないのですか?

〇 日本に在留する外国人の中には,ごく一部ですが,他人名義の旅券を用いるなどして不法に日本に入国した人,就労許可がないのに就労(不法就労)している人,許可された在留期間を超えて日本に滞在している人(※),日本の刑法等で定める様々な犯罪を行い,相当期間の実刑判決を受ける人たちがいます。
      当庁の役割の一つは,このような日本のルールに違反し,日本への在留を認めることが好ましくない外国人を,法令に基づいた手続により強制的に国外に退去させることです。
 (※)これらの行為は,不法入国,不法残留,資格外活動などの入管法上の退去を強制する理由となるだけでなく,犯罪として処罰の対象にもなります。

〇 仮に,このような外国人を国外に退去させることができないと,日本国内に日本のルールを守らない外国人が多数滞在し続けることにもなりかねません。
      日本人も,ルールを守って生活する他の外国人も,日本国内で安心・安全な生活を送れなくなることにもなりかねません。

〇 そのため,日本のルールに違反し,日本への在留を認めることが好ましくない外国人は,たとえ本人が退去を拒んだとしても,強制的に国外に退去させる必要があります。

Q4 日本からの退去を拒む外国人は,本国に帰れない事情や日本にとどまらなければならない事情があるから,退去を拒んでいるのではありませんか?

〇 「本国に帰ると生命の危険が生じる」などの事情を主張して,難民認定申請を行う人もいますが,日本の難民認定手続においては,難民認定申請をした外国人とに,個別の事情を考慮しながらその申請内容を審査し,難民条約の定義に基づき難民に該当すると認められれば,難民と認定しています
〇 また,難民認定手続においては,当庁による二段階の審査を経て難民かどうかをに判断しています。
〇 具体的には,まず,難民に当たるかどうかに関する当庁職員(難民調査官)による調査を経た上で,難民の認定・不認定が判断されます。
  その判断に不服があれば,不服申立て(審査請求)を行い,改めて判断を受けることができます。
〇 難民認定手続において,難民の認定をしない処分がされ,これに対する不服申立てを行った場合,その不服申立て(審査請求)に対する判断は,必ず3名の「難民審査参与員」の意見を聴いて行うこととされています。
〇 難民審査参与員は,人格が高潔であって,公正な判断をすることができ,かつ,法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者(※)の中から任命されています。
  また,難民審査参与員は,3人1組で審理を行って,意見を提出し,その意見は不服申立てに対する法務大臣の裁決の際に尊重されています。
   (※)具体的には,(1)事実認定の経験豊富な法曹実務家,(2)地域情勢や国際問題に明るい元外交官・商社等海外勤務経験者・海外特派員経験者・国際政治学者・国連機関勤務経験者,(3)国際法・外国法・行政法等の分野の法律専門家などです。
〇 さらに,難民には当たらないとの判断に不服があれば,裁判所に訴えを提起した上でそのような事情を主張して,裁判所の判断を求めることもできます。
〇 これらの重層的な行政手続や司法審査手続があるにもかかわらず,これらの手続経た結果,難民と判断されなかった外国人については,難民であると認めることが困難です

〇 もっとも,現行法上,難民認定申請した者について条約上の難民とは認定できない場合であっても,本国情勢などを踏まえ,人道上の配慮が必要と認められる場合には日本への在留を認めています。
〇 また,難民認定申請をしていない者についても,従来から個々の事案ごとに,在留希望する理由,人道的な配慮の必要性などの諸般の事情(本国事情も含みます。)これらを総合的に勘案して在留を認めるべきものについては,在留特別許可をするしています。
〇 令和元年に,退去強制手続における違反審判において法務大臣に異議を申し出た者のうち,在留特別許可されたものは6割超,1,448件です。
〇 加えて,今回の法改正により,難民条約上の難民ではないものの,難民に準じて保護すべき外国人を「補完的保護対象者」として,難民と同様に日本での在留を認める手続を設けることとしています。
〇 以上の重層的な手続を経て,日本から退去することが確定した人については,本人が退去を拒んだとしても,強制的に国外に退去させる必要があります。
 

Q5 なぜ,日本からの退去を拒む外国人を退去させられないのですか?

〇 次のような事情が,退去を拒む外国人を強制的に国外に退去させる妨げとなっています。

(1) 難民認定手続中の者は送還が一律停止
    現在の入管法では,難民認定手続中の外国人は,申請の回数や理由等を問また,重大犯罪を犯した者やテロリスト等であっても,日本から退去させことができません(送還停止効)。
    外国人のごく一部ですが,そのことに着目し,難民認定申請を繰り返すことよって,日本からの退去を回避しようとする外国人が存在します。

(2) 退去を拒む自国民の受取を拒否する国の存在
    退去を拒む外国人を強制的に退去させるときは,入国警備官が航空機に同乗して本国に連れて行き,その外国人を本国の政府から受け取ってもらう必要があります。
    しかし,ごく一部ですが,そのように退去を拒む自国民の受取を拒否する国があります。

(3) 送還妨害行為による航空機への搭乗拒否  
    退去を拒む外国人の一部には,本国に送還するための航空機の中で暴れたり,大声を上げたりする人もいます。  
    そのような外国人については,機長の指示により搭乗拒否されるため,退去させることが物理的に不可能になります。

〇 (1)については,難民と認定されなかったにもかかわらず,同じような事情主張し続けて難民認定申請を3回以上繰り返す外国人は,通常,難民としてされるべき人には当たらない(申請時に難民と認定することが相当であることを示す資料が提出された場合を除きます。)と考えられます。
      そこで,このような外国人については,今回の入管法改正法案により,送還停止効の例外として,難民認定手続中であっても日本からの強制的な退去を可能とすることとしました。

〇 (2)及び(3)については,このような事情により,日本からの退去を拒み続ければ在留資格がないまま日本に滞在し続けられるという事態は見過ごせません。
  そこで,その外国人を翻意させて退去等を決意させるため,最終的な手段として,一定の期限までに日本から退去することを命令し,その命令に違反した場合は処罰されるという仕組みを設けることとしました。
   なお,当庁で把握している範囲では,例えば,アメリカ,フランス及びドイツについては,対象者にその国からの退去の義務を負わせ,その義務に違反した場合の罰則を設けているとのことです。
 

Q6 出入国在留管理庁の収容施設に収容される外国人は,どのような人ですか?

〇  現在の入管法の下では,(1)日本から退去すべき理由があると疑われている外国人や,(2)日本から退去すべきことが確定した外国人が,当庁の収容施設に収容されます。
〇 (1)の外国人(収容令書により収容される外国人)については,最大で60日間,収容されます。
〇 (2)の外国人(退去強制令書により収容される外国人)については,退去させることが可能となるまでの間,収容されます。
  もっとも,その外国人が日本から出国すれば,収容はすぐに終わることになります。

Q7 なぜ,長期収容の問題が生じているのですか?

〇 現在の入管法では,日本から退去すべきことが確定した外国人については,原則として,退去させるまでの間,当庁の収容施設に収容することになっています。
〇 そのような外国人が退去を拒み続け,かつ,強制的に国外に退去させる妨げなる事情があると,収容が長期化する場合があります。
〇 この点に関し,現在の入管法では,収容されている外国人の収容を一定期間解く仮放免が行われる場合もあります。
  しかし,現在の入管法では,仮放免を許可するかどうかは仮放免の請求の理由のほか,逃亡のおそれ,日本での犯罪歴の有無・内容様々な事情をして判断されますので,全ての収容された外国人に仮放免を許可することができるわけではありません
 

Q8 今回の入管法改正より先に,難民認定手続を出入国在留管理庁とは別の組織に行わせるなどして難民の保護を十分に行い,日本の低い難民認定率を諸外国並みに上げるべきではないのですか?

〇 難民認定手続は外国人に対して行われるものであり,難民と認定された外国人に対しては,入管法の規定に従って在留資格が与えられ,日本への在留が認められることになります。
  そのため,難民認定手続(Q4の回答をご参照ください。)は,外国人の出入在留管理という当庁の業務とのつながりが極めて深いものですので,現状おり,当庁が行うことが適切であると考えられます。

〇 確かに,日本の難民認定率が欧米よりも低いと指摘されることがあります。
  しかし,大量の難民や避難民を生じさせる国との地理的要因などは,日本欧米とでは大きく異なりますので,難民認定率のみを単純に比較するのは相当ではないと考えます。
  なお,韓国は,日本と同様,年間約1万件以上の難民認定申請を受けていますが,難民認定数は数十件~百数十件程度です。

〇 難民認定申請者数は,平成17年には約400人でしたが,平成22年に申請から6か月後に一律に就労を認める運用を始めたところ,申請者数は,平成22年(約1,200人)から平成29年(約2万人弱)の7年間で,約16倍に増加しました。

〇 そこで,平成30年に,こうした難民としての保護を求める本来の制度趣旨そぐわない申請(濫用・誤用的な申請)の場合には在留や就労を認めないする在留資格上の措置について,より厳格な運用を始めたところ,平成30年申請者数(約1万人)は,平成29年から半減しました。

〇 このような申請者数の推移からは,難民認定申請の中に,日本からの退去回避,日本での就労又は在留を認めてもらうことを目的として行われた濫用誤用的な申請が相当数含まれていたと考えられます。
 
※ その他,Q4の回答もご参照ください。 
 

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