秋田県人権啓発活動ネットワーク協議会
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第29回全国中学生人権作文コンテスト 秋田県大会最優秀賞 
秋田地方法務局長賞
笑顔の種

秋田市立城東中学校 3年 石岡 沙保(いしおか さほ)

「国境を歩いて横断しよう!」

これは以前私がアメリカに行った時に参加したツアーの名称だ。アメリカのカリフォルニア州からメキシコのバハカリフォルニア州ティファナに歩いて渡るという一見信じがたいものだった。メキシコへの入国にはパスポートもいらない。島国・日本に住んでいる私たちにとって、他国に歩いて渡ることなど想像にすら出てこないものだ。また、メキシコと言えばタコス、そうだ、きっとおいしいタコスが食べられるはずだ、という確信に満ちた気持ちから迷わず申し込んだ。

そして、私は国境に立った。

そこは陸続きで、ゲートと黄色いペンキで書かれた国境線の印だけだった。しかしメキシコへ入ると雰囲気はがらりと変わり、本当に世界の果てに来たように感じた。その直感は残念ながら見事に当たった。これから自分たちが食べようとしている物にはハエが集まっている。だが、お店の人はそれらを追い払おうともしない。たくさんの人が道路の脇にびっしりと並んでお店を出している。手作りの動物の形の小さな置物、キーホルダー、カウボーイハット・・・。どんどん景色に吸込まれていく。

まだ言葉をしゃべり始めて間もないような子供たちが、私たちツアー客のところに駆け寄って来て、「One dollar!! 」と叫び、かご一杯に乗せた小物を売ろうとしてくる。最後にシャワーを浴びたのはいつなのか、ボロボロの服を着て、裸足で、どの子の目も真剣勝負だ。きっと彼らが最初に覚えた言葉はパパでもママでもなく「One dollar」なのだろう。ただただ切なくなるばかりだった。私はその光景に衝撃を受け、胸がはりさけそうになった。日本ではそのような光景は見ることはない。絶対に今まで見たことがない。彼らがほしがる1ドルは、私たち中学生が買うアイスクリーム一つ分のお金だが、彼らにとってはその1ドルが命をつなぐものであることを知るのに、そう時間はかからなかった。

私はツアーに参加したことを少し後悔した。彼らにどのように目を向け、接していいのかがわからない。現実から目をそらしたくなった。しかし、そんな彼らの苦しい生活が、もし私の1ドルで救われるなら、という思いから、カラフルに色付けされたカメの首振り人形と、サンダル形のキーホルダーを幼い女の子から買った。女の子は笑顔で「Thank you.」と言ってくれた。本当に最高にキラキラまぶしい笑顔だった。同時に私ははっとした。どんなに環境や生活、苦労に違いはあっても、笑顔は唯一、世界共通なのだと気づいた。その笑顔が私の心をつかんで放さなかった。そして、世の中のほんの一部しか見ていなかった私は、360度見渡すことのできる広角レンズをもらったように感じた。心の瞳を感じることができた。

しかし今、私の心には疑問が湧いてくる。

もし彼らに私の持っているお小遣いをあげたら彼らの生活は良いものになるのだろうか。きっとそれは間違っている。たぶんそのお金は彼らにとって貴重で、一時的に生活の足しになるかもしれない。だがそれだけでは根本的な解決にならないばかりか、こちらの自己満足で終わってしまうに違いない。

「国境」というたった一本の線が引かれただけで、人間の持つ権利や義務、環境や生活などの全てが分けられてしまう現実を目の当たりにした。しかし飛行機の窓から地上を見下ろした時には、国境線も日付変更線も見えない。世界には分け隔てがない。地球という球体の中の陸、海、人、動物、植物がそこにあるだけだ。だが実際は、人間が勝手に線を作り、分け、気付かぬうちに私たち一人一人までもが、心の中にも境界線を引いてしまっているのではないだろうか。

ティファナの地に足を踏み入れたことを、私は後悔しないことにした。女の子の一瞬の笑顔が本当の笑顔になるためには、私たち一人一人が世界を知り、現実を知らなくてはならない。中学生の私たちでもできること。それは、心の国境線を引かないようにすることだ。それが、さらには社会全体の境界線を取り除くことにもつながっていくはずだ。境界線の向こうからの発信を真しに受け止める心を常に持ち続け、現状をとらえ、彼らがまいてくれた笑顔の種を、今度はこれからの未来を背負っていく私たちがこの地球という大地に根づかさなくてはならない。わたしたちの世代の人々が世界全体に種をまき、大切に育て、笑顔の花を咲かせること、常に心の瞳をいっぱいに開いて世界を見回し、嬉しい顔や悲しい顔を見逃さないことが必要だろう。

そして境界線がやがてなくなり、みんなで植えた種が一つ残らず花を咲かせる日になることを願っている。

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