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福島県人権啓発活動ネットワーク協議会
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県大会 最優秀賞・全国中央大会 法務大臣政務官賞
「僕の本名への思い」

いわき市立植田東中三年 新井 常豪

“朴(パク) 常豪(サン ホ)”それが僕の本名です。

幼い頃から、 アボジとオモニに僕が 『朝鮮人』 だということを教えられてきました。

在日コリアン三世にあたる僕は、幼稚園から現在までずっと日本の教育を受けてきました。それ故に、 母国語も満足に話せず、本名を名乗ることもありませんでした。

じょうごうという日本語名で通っていた幼稚園で、初めて自分の名前に疑問を感じたのが最初でした。 「呼びにくい」 「変な名前だな」 などと言われたのです。幼かった僕は、「皆と同じ名前が良い!」 と強く願うようになりました。

しかし、 その思いはある意外な形で払拭されたのです。

五歳の時のことです。七日間ほど高熱を出し、当初は単なる風邪だと診断されました。

ところが、一向に治る気配もなく総合病院へと転院することになりました。そして、病魔の謎がやっと解明されました。 病名は、 若年性全身リュウマチ。全身の関節が痛む病気でした。僕は二ヶ月間、 病院での生活を余儀なくされたのです。関節の痛みに耐えながらも、幼稚園に行かなくてすむと思っていました。 名前を気にしなくて良いし、友達に何か言われることもないと思い込んでいました。

そんなある日、 幼稚園の先生がお見舞いに来てくださり、一束のカードを受け取りました。そこには、 『あらいじょうごうくんへ』 と大きく書かれてありました。一抹の不安を抱きながらページを開いた瞬間、僕の目は大きく揺らいでいました。「一日も早く元気になってね」 「早く治して一緒に遊ぼうぜ」 という言葉や絵が書かれていました。僕は間違っていたことにそこでやっと気付きました。皆は僕を嫌がってなんかいなかった、しかもこんなにも心配して待っていてくれたということを知ることができたのです。本当にうれしかった瞬間でした。それ以来、僕は 「幼稚園に早く戻りたい」 一心で薬も積極的に服用し早く治るように努めました。

やっとの思いで退院はできたものの、僕は過度な運動は禁じられました。身体に負担がかかると関節痛の頻度が高まるからです。

惜しむ気持ちで幼稚園を卒業し、小学校への入学の時が来ました。僕の心の中には不安が一杯に広がり始めました。せっかく仲良くなれたのに、また名前でからかわれるかもしれないと。しかし、 その心配をよそに、皆は病気の僕に手を差しのべてくれたのです。友達もたくさんでき、さらに、痛む時は代わりに荷物を持ってくれたり、時には背負ってくれたり、僕は人の心の温かみを感じずにはいられませんでした。しかも、この状態は六年間変わることなく継続されたのです。友達の心の温かさに勇気づけられ、思い悩んでいた僕が、皆と同じ日本人ではないことを話してみました。本当はこのまま隠し通した方が良いのではないか随分と悩んだのですが、皆なら分かってくれるはずだと決心して打ち明けたのです。ドキドキしながら皆の返答を待っていると…。

「そんなの関係ないよ。常豪は常豪だろ。国籍は違っても常豪に変わりはないよ。」という明解な答えを出してくれたのでした。

当時の先生方も理解のある方々で、特に校長先生は僕の気持ちをじっくり聞いて下さり、卒業証書を本名の朴 常豪で書いて下さったことには素晴らしく感動しました。

現在、 僕は中学三年生です。新しい環境の中で小学校時代のように皆は助けてくれていますが、国籍のことに関しては言えないでいます。中学生は多感な時だからこそです。

今、日本と韓国との関係は、 交流が活発になってきたとはいえ、まだまだ意思の疎通が十分とは言えません。もし、両国の関係が悪化してしまったら差別されかねません。だから、僕は国籍を言うことが恐いのです。

今まで、イジメなど、何の弊害もなく幸せに過ごしてきました。贅沢な悩みと思われるかもしれません。単なるワガママととらえられるかもしれません。常に助けてくれる人がそばにたくさんいる幸せを味わっている僕がそんな事を言う資格もないかもしれません。だけど、外国人であり難病であるハンデを背負っている僕が孤独になってしまったら、僕は何もできなくなります。

しかし、「常豪は常豪だよ」 と励ましてくれた日本人の多くの友達のためにも弱音を吐かずに胸を張って、僕は 『朝鮮人』 だよと言わなくてはならないのです。

僕を優しく見守ってくれている両親、親族、そして、僕の心の支えになってくれた日本人の友達、先生方に感謝の気持ちを表す意味でも堂々と本名を名乗ろうと思います。それが 「ありがとう」 の証なのです。

呼んでください。僕の名前は“朴(パク) 常豪(サン ホ)”です。

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