法制審議会保険法部会 第10回会議 議事録 第1 日 時  平成19年5月30日(水) 自 午後1時30分                       至 午後5時33分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  保険法の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた議論について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● それでは,定刻でございますので,法制審議会保険法部会の第10回会議を始めさせていただきます。   それでは最初に,配布資料の説明を事務当局よりお願いいたします。 ● 事前に送付いたしました部会資料11のほかに,席上で7点,資料を配布させていただいております。   まず,事務当局作成にかかるものですが,「危険に関する重要な事項について事実の告知がされず,保険事故が発生した場合の規律」と題するA4の二枚紙のペーパーがございます。   それから,「保険事故発生前に保険金受取人が死亡した場合の規律」と題する同じくA4の二枚紙のペーパーがございます。   それから,第6回,第7回,第8回のそれぞれ議事録がございます。   以上5点が事務当局作成のものでございまして,このほかにこのブルーの冊子で,「生命保険契約に係るいわゆるプロ・ラタ主義に関する海外調査報告書(フランス・イギリス・ドイツ)」,生命保険協会作成のものと,その概要ペーパーがございまして,これは後ほどその該当箇所で生保の委員の方から御説明をいただく予定になっております。   以上でございます。 ● 資料はよろしいでしょうか。   それでは,具体的な審議に移りたいと思います。   今回も,例によりまして★印の付いたところを中心に御議論いただきますが,保険法部会資料11「保険法の見直しに関する中間試案の取りまとめに向けた議論のためのたたき台(3)」の2頁の「第4の1(2) 他人を被保険者とする死亡保険契約」について,まず審議したいと思います。   まず,事務当局より御説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。  他人を被保険者とする死亡保険契約については,第一読会において,生命保険契約に関する規律と,傷害・疾病等を原因とする死亡給付に関する規律とを分けて御検討いただきましたが,被保険者が死亡した場合に保険金が支払われるという点で共通することから,これらの規律を整合性のある形で設ける必要があると考えられます。そこで,傷害・疾病等を原因とする死亡給付についても,ここでまとめて御検討をいただきたいと思います。   まず,資料2頁のアと資料4頁のイのそれぞれ本文について御説明いたします。   まず,アでは,現行商法第674条第1項本文と同じく,被保険者の同意を契約の効力要件とすることを原則とし,被保険者の同意がある場合には,保険契約者と被保険者との間の関係や,保険金受取人の範囲などを限定しないことを提案しております。   イに掲げる場合であっても,被保険者の同意を得ればこのアの規律によることとなり,イには,(問題点)のところに1と2という二つの規律を書いておりますが,これらの規律は適用されないことになると考えられます。   なお,アの本文は,(補足)2に記載いたしましたように,同意について書面性は要求しないことを前提としております。   これに対しまして,4頁のイですけれども,こちらは,一定の場合には被保険者の同意を契約の効力要件とはしないことを提案しておりますが,第一読会において,被保険者の同意が必要であるという原則をあくまでも基本に考えるべきである旨の御指摘等をいただきましたことから,例外を認めるものを,保険契約者と被保険者との間に一定の関係がある場合に限定するとともに,保険金受取人を被保険者と一定の親族関係にある者に限定することを提案しております。   もっとも,この場合には,保険が賭博的に用いられることを防ぐとともに,被保険者の意思を尊重し,モラルリスクを防止するために,さらに(問題点)1及び2のような規律をも併せて設ける必要があるのではないかと考えておりますが,その要否や内容,さらに,イに当たる場合でも規律の内容を区別する必要があるかについて,御意見をいただければと思います。   このイの本文では,(ア)として,保険契約者と被保険者とが一定の関係にある場合を類型化して掲げ,また(イ)として,保険契約者と被保険者とが親族関係にある場合を掲げており,これは第7回会議において御説明いただいた実務上の契約のうち,特段の異論のなかったものをとりあえず類型化して記載したものですが,1頁の(前注)に記載しましたとおり,本文は法文を意識した記載にはなっておりませんし,そもそも(ア)と(イ)に分けて規律すべきかなどについても,なお検討の必要があると思われますが,何かたたき台をお示しした方がよいと思われますことから提案をしているものでございます。   そういう趣旨ですので,この本文を前提にしつつも,立法論として在るべき規律は何かという観点から御議論をいただければと考えており,検討が必要と思われる点を幾つか挙げたいと思います。   まず,(ア)についてですが,自動車保険契約の搭乗者傷害条項におきましては,保険契約者ではない被保険者の運転中に保険事故が発生した場合も補償の対象となりますが,これは,(ア)に掲げる場合に直ちに当たらないようにも考えられるものの,同意を要しない場合の規律にこの場合も含めてよいとも思われますし,同様のことは,自動車のディーラーが保険契約者となるシートベルト付帯傷害保険契約にも妥当するようにも考えられます。   また,クレジットカードに付帯された傷害保険契約については,例えば海外旅行の際にはクレジットカードを使用することが多いことなどを踏まえ,そのカードホールダーやその家族について旅行中に発生する保険事故を補償することは,必ずしも不合理ではないようにも思われるものの,この点については,知らない間に被保険者とされたというトラブルがあるとの御指摘をいただきましたことから,(問題点)1や2に掲げました規律との関係も含め,同意不要の場合に含めるかどうか,御検討をいただければと思います。   さらに,資料では(ア)について類型化を試みていますが,保険法は基本法であることを考えますと,現在の実務上の商品だけを前提とするのではなく,在るべき規律を考えた上で,何を規範として立てるべきかという観点からも御意見をいただければと思います。   次に,(イ)についてですが,この規律は,大まかに申しますと,生計を一にする親族内で保険事故が発生し,その親族に保険金が支払われる場合には,被保険者の同意を効力要件とはしないことも許容されてもよいのではないかという考え方によるものでございます。   資料では,先ほど御説明しましたように,第7回会議において御説明いただいた実務上の契約のうち特段の異論のなかったものをとりあえず掲げておりますが,例えば,資料6頁の(補足)のところ,上から4行目に,この(イ)について記載をしておりまして,ここで挙げた例でございますけれども,世帯主が職場を保険契約者とする保険契約に家族もまとめて被保険者として加入する場合,さらには,自分は十分保険に加入しているので,自分以外の家族についてだけ保険契約を締結するような場合には,家族のための保険であるという点で,(イ)と共通することから,これも同様の規律とすべきとも考えられます。   なお,今引用しました資料6頁のところの具体例の記載が若干不正確でございまして,ここの記載は,今申し上げましたとおり,職場を保険契約者とし,世帯主とその家族を被保険者とする契約が締結される場面を念頭に置いております。   その上で,ただいまの例を前提としますと,保険契約者も一緒に被保険者となれば同意は不要で,一緒に被保険者にならない場合には同意が必要というのは,合理的ではないとも思われることから,保険契約者とともに被保険者とすることを必須の要件とすることは相当でないようにも考えられます。   さらに,(ア)と(イ),いずれにも共通することですが,保険金受取人が被保険者又は被保険者と生計を一にする親族である必要がある旨記載しており,被保険者の相続人とはずれが生ずることもあると考えられますが,被保険者の相続人を保険金受取人とする場合も同様の規律でよいとも考えられることから,併せて御議論をいただければと思います。   以上,イの本文について主に御説明しましたが,この規律は,(問題点)にそれぞれ記載しております各規律とセットで初めて弊害防止としての意味を持つと考えられますので,(問題点)に記載した点についても併せて御議論あるいは御意見をいただければと思っております。   以上です。 ● ありがとうございました。   それでは,ただいまの点について,御意見があれば。   では,○○委員。 ● 第7回で,他人を被保険者とする傷害保険のさまざまな契約形態について御説明を申し上げまして,今回のイの案は,私どもの現行実務にかなり御配慮いただいた内容だということで,非常にありがたく思っております。   傷害保険は非常に多様な契約形態でございまして,幅広く普及しておりますので,できるだけ利便性が高い保険として,今後もさらに広がっていくことが望ましいと思っています。ただ,幾つか確認をさせていただきたいという点がございますので,申し上げたいと思います。   まず,イ(ア)の規定でございますけれども,「保険事故が保険契約者の管理若しくは監督下において発生し」という表現が書いてございますが,これは恐らく遊園地とかいろいろな施設に入場した場合,そこでけがをした方に対する補償という,そういう傷害保険には非常にふさわしいのではないかなと思いますが,先ほど申しましたようにいろいろな形の保険契約がございまして,例えば,企業が契約者となりまして役員全員に傷害保険を付けるという契約も広く普及しておりますが,受取人が被保険者の遺族等々になるわけでございますけれども,こういう場合につきまして,役員の場合は業務中とか業務外ということがなかなか区別しにくいということがございまして,一般的に業務中が限定されている契約につきましては,業務中のみ補償するという保険契約ができるのですが,役員のように24時間仕事をするという,プライベートと業務がなかなか区別できない方につきましては,業務上という保険契約の引受けができませんので,例えばそういう場合とか,あるいは工事をする場合の元請会社が,個人事業主である下請のいろいろな方々,こういう方々をまとめて傷害保険を付けるというような場合,これも,個人事業主の場合には,どこまでがプライベートでどこまでが業務中かというのはなかなか区別がつきませんので,実質的には,「管理下」とか「監督下」という,補償範囲を絞った契約がなかなかできないというのが実情でございますので,このような契約も引受けが可能となるような規定振りにしていただければというふうに思っております。   それから,先ほどクレジットカードのお話がございましたが,クレジットカードの保険につきましては広く普及しておりまして,海外旅行をされる方々等々はカードによりまして幅広い補償を得て,これは非常に利便性が高いというふうに思っておりますが,こういう契約につきましても広く普及しておりますので,また,クレジットカードに入るときに,保険の付保ということが明記されておりますので,御理解されているというように思いますし,なおかつ保険金の受取りは,契約者が受け取るわけではございませんで,被保険者,クレジットカードのカードホールダーの法定相続人が受け取るということになりますので,モラルリスクの問題もないと考えますので,こういうものにつきましても,できる限り引受けができるような形でお願いをしたいと思っております。   なお,先ほどの最後のお話にございましたとおり,職場で契約される場合の,御主人が自分を入れないで奥様を付けたいとか,子どもたちだけを付けたいというケースにつきましても,先ほどのお話のように非常にニーズが強いものでございますから,御契約ができるようにお願いしたいと思います。   以上でございます。 ● ○○委員。 ● 生保の実務についてお話し申し上げたいと思います。   まず,生保の実務におきましては,資料に原則として記載されました被保険者同意をいただくということを,そういう実務をやっておりますけれども,これは,4頁の例外に記載されているような考え方はとっていないわけです。したがって,今後も被保険者の同意をとることが実務の原則になると考えております。   なお,未成年者の保険についても,団体保険のように有職者でない限り,15歳以上の方が被保険者の場合は,原則,本人及び親権者の同意をとり付けております。   他方,14歳以下の方が被保険者となる場合については,本人ではなく親権者の同意をいただくといった対応をとっております。この場合につきましても,4頁の(イ)にありますように,例外として記載されている規律の対象とするとの提案,これを受け止めておりますけれども,ここに記載されております「保険契約者とともに」という記載ですが,これですと家族特約を前提としているように読めるのですが,むしろ,これまでの議論は,この家族特約よりも,むしろ,個人で被保険者になる場合を想定した議論だと認識しております。したがって,家族特約のみを認めるという意見はなかったと思いますので,未成年者個人が被保険者となる場合も含めた規律としていただきたいと,そういうふうに考えております。 ● では,○○委員。 ● この順番に沿って申し上げますけれども,まず,3頁の(問題点)2のところですが,これを(後注)に格上げしていただけないか。つまり,中間試案に盛り込んでいただきたいというふうに思います。理由は,これは団信生保のいろいろな問題とも関連しましたし,この要件というものはじっくり考えていく必要があると思います。   それで,3頁の(問題点)2の(1),(2)以外に,例えば,会社の経営者が経営上の損失に備えて役員とか使用人を被保険者とした生命保険を付けた場合,こういう場合にも認める必要があるという議論があったと思いますし,これは変わらないと思いますので,これら以外に認めるべき場合はないかという質問が3行目にありますけれども,こういうのを含めるという必要があると思います。   それから,重要なのは,やはりこの同意を法文上書面でやる必要があるのではないか。これは,第5回の議事録の11頁から17頁に議論されているところですけれども,消費者委員の方からも,書面を厳格にとるという御発言がありまして,その他の方も,そのときの議論の基本,この11頁から17頁を見ますと,書面をとるという論調だったと思います。ですから,これは法文上,書面であるということをまず原則に考えるという方向で検討すべきではないか。   それから,次の点,これは,この法改正というのは100年を見据えてということだと思いますので,一番重要な問題で答えが出ていない問題,四番目の問題ですが,それは,一定年齢以上の子どもに対して死亡保険は不要だという議論にまだ決着はついていないと思うのですね。特に,そのお金は何のために必要なのか。何に対して用いるのかということについては,業界からお答えはないわけですし,これはできないと思うのです。   ですから,私のお願いというか提案は,その点を(後注)として,パブリックコメントに付すべきだと。これは,要するに必要のないものに入っているのではないかという点で,広い意味では保険料の取りすぎとか,そういうものと根を同じくする問題であります。(後注)の具体的な文言ですけれども,幼児の生命保険については,葬祭費用程度を超える生命保険を法律上禁止すべきとの意見があるが,この問題についてどう考えるか,こういう(後注)を付けまして中間試案に載せていただき,パブリックコメントにかけていただくということを御提案したいと思います。   もう理由はお分かりだと思いますが,第5回の議事録の17頁に,○○委員が集約された御意見がございまして,そこには,先ほど来の御意見で,今のような未成年者を被保険者とすることについて,かなり批判的な御意見が今日多かったと思います,云々と述べておられるわけですね。こういう議論をしてまいりまして,こういう形でその点が表に出ていないというのは,これはよくないというふうに思います。   それから,第五番目の問題ですが,これは5頁の(問題点)2のところの問題です。これは,私もよく分からない問題なのですけれども,要するに,保険者が払う責任を負わないという,保険金を払うことが被保険者の意思に反するような場合云々で,保険者は保険金を支払う責任を負わないものとする,そうかもしれませんが,これはもうちょっと状況をよく考えて議論する必要がありますが,仮にそうだとしても,死亡前日の解約返戻金を契約者とか契約者の相続人に返戻すると,保険会社のもとに残るというのはやはりおかしいのではないかと思います。これが五番目。   意見は以上です。 ● では,○○委員。 ● 被保険者同意に関して,三点申し上げたいと思います。   第一点目は,資料4頁,イの(ア),(イ)に「被保険者」を受取人に指定できるというようなことが書いてありますけれども,これにおいて,その被保険者が死亡してしまうわけですから,結果的に被保険者の法定相続人が受け取るという理解でよいのかどうかについてです。   もし,よいということであれば,この案の文面だけ見れば,被保険者を受取人にした場合は保険金が相続財産になってしまうようにも見えますので,債権者の差押えを受けたりすると,遺族は保険金を受け取られなくなる。遺族の保護というようなことを考えれば,やはり「被保険者の法定相続人」としていただくのが適当ではないかと考えます。   もし,そういうことではなくて,受取人は生計を一にする親族に限るということであれば,例えば自動車保険の搭乗者傷害のような場合,独身の人が乗って事故で死亡した場合の受取人がいないということになってしまいますし,あるいは職場のレクリエーションで,例えば1人300円で参加者が保険料を集めたような場合に,参加者がまだ独身であったときに,受取人がいないということになりますけれども,このような場合は,やはり本来被保険者が受け取るべきだった保険金なので,遺族,つまり法定相続人が受取人になるのが適当だと考えます。   したがって,受取人については,生計を一にする親族に限定するのではなくて,「被保険者の法定相続人」としていただきたいと存じます。これが一点目です。   それから,二点目は,資料6頁の4行目以下についてですけれども,「例えば職場で世帯主が家族もまとめて被保険者とする保険契約を締結する場合にも同様の規律でよいとも考えられ」るとございますけれども,この点については賛成でございます。例えば,任意加入型の団体傷害保険の場合,保険契約者が企業で,加入者が従業員となって,被保険者は従業員の家族というようなことになります。   それから,あと,7回のときの議論で説明のありましたスポーツ安全協会の傷害保険は,これは保険契約者がスポーツ安全協会で,加入者がそれぞれのスポーツ団体の代表者で,被保険者が実際にスポーツをする団体のメンバーというようなことがございますので,このような場合に,保険契約者と被保険者との間に加入者という存在があります。加入者は加入手続を行って保険料も支払うということをやっておりますので,この規定の保険契約者に含まれる,あるいはみなされるというようなことが分かるような規定振りにしていただければありがたいと存じます。   それから,三点目。既に御意見がございましたけれども,被保険者への情報提供と離脱についてでございます。イの(問題点)1で,イの規律の場合は,被保険者の離脱を認めるとともに,保険契約者又は保険者が被保険者への情報提供を行うことが提案されていますけれども,人格権保護の観点など趣旨はよく理解できますけれども,幾つか問題点があると考えております。   まず,第8回でも申し上げましたけれども,保険者と被保険者とは直接の契約関係にはないので,保険者が直接被保険者に情報提供を行うのは困難ですので,被保険者への情報提供は,保険契約者を通じて行ってもらうこととしています。保険契約者に対して情報提供の義務を課すようなことになってしまいますので,保険契約者が義務を怠ると無効となるような厳しい効果だと消費者の利益にならないと思いますし,「言った,言わない。」ということで離脱できなかったりすると,法的に不安定にもなると思います。そういうことで,ここは慎重に検討いただきたいと考えます。   例えば,自動車のオーナーが,自動車に乗る人に,そのたびごとに「搭乗者傷害保険が付いています。」と言わなければならないというのも大変だと思いますし,入場者包括の傷害保険で言えば,加入している企業さんは,事務所ビルの入口に傷害保険の内容を掲示しなければならないというのは,企業のお客様にとっても負担だと思われますし,かえって保険の利便性を損なう結果になると考えます。あるいは,レクリエーション参加者の傷害保険のような場合,情報提供義務を課して,一定期間の離脱を認めるといっても,離脱をするときにはレクリエーションが終わっているような問題もあると思います。   このように,総じて言えばですけれども,少なくとも(ア)の方の規定に該当するものについては,情報提供義務を課す必要はないのではないか,あるいは,義務を課しても機能しないのではないかと考えております。   以上,三点申し上げました。 ● ○○委員。 ● この被保険者の同意の話,死亡保障に関する被保険者の同意の話なのですが,やはり原理原則を申し上げて,アが原理原則だという点については大変結構だと思っております。   思っているのですが,イの,特に(ア)は,この間,今,先生たちが皆さんおっしゃったようにもう議論は出てきていますけれども,以前このテーマをお話ししたときには,基本的には同意をとるべきだという方向だったというふうに私は思っているのです。   同意をとるべきなのだけれども,技術的にどうしてもできない保険がある。技術的にどうしてもできない保険については,ではそれは例外的な規定を設けましょう,そうでないものについては原理原則どおりで行きましょうというのが大きな流れだったように思っています。そういう観点から言うと,アは結構なのですが,特に,被保険者が契約関係から離脱できるという,そこの部分がありますので,それはまた後で述べるとして,アは大変結構なのですけれども,イの(ア)はともかく(イ)に関しては,これは,そこまで原理原則を外れてしまえば,これ,とれるのですから,とらないのは怠けていると私は思ってしまうのですね。   とれるものはおとりになればよろしいのにおとりにならないで,これが利便性どうのこうのと言うのは,基本的には,知らないうちに掛けていたということを防ぎたい,モラルハザードを防ぎたい,そういうお話から言えば,おとりになれるものを,なぜイの(イ)みたいな条項をお付けになって,おとりにならない方向に行くのか。しかも,お話を聞いていると,もっと連生でなくても,契約者でなくても,家族だけでも入れられるみたいなことをおっしゃると,そうすると,原理原則でとれますよということから言うと,ずれていくのではないか。   それに,そもそも,もともと生命保険というのは家族が家族に付けるのが常態でございます。家族が家族に付けるのがごくごく普通のことなのに,家族が家族に付けて家族が受け取るのだから,それは問題ないのでしょうというのだったら,それはモラルハザードはないと言っているに等しいわけで,そんなことはないからモラルハザードという問題になるわけで,そこの意味から言うと,イの(イ)に関しては,これはどうやってもおかしいのではないのかなと,私はそういうふうに思ってしまいます。   それから,幾つか言うと,契約関係の離脱から言えば,もともと,知らないうちに掛けられたということが,やはりそれはそういう事態を防がなければいけないというのは,一歩進めれば,嫌なものに掛けているのはおかしいということになりますのでね。被保険者としては,知らないうちに掛けられたのではなくても,いろいろな関係から,こういう契約関係からは離脱したいという,そういう切り札はやはり持っているべきだと考えていますので,この(問題点)は確かに結構なのですけれども,3頁の(問題点)1と2だけでは,特に2の(2)の方は,被保険者と保険金受取人との親族関係が終了したときという限定の仕方をしています。   これは,ほとんど夫婦のことしか考えていませんね。親子だってあり得るので,親子は親族関係は終了しませんので,そういう意味では,もう少しここら辺は検討をしていただかなくてはいけないのではないのかというふうに思いますし,それから,余り長々としゃべりたくないので言いますけれども,未成年者のことに関して言えば,やはり基本的には,未成年者に死亡保障を付けるというのが,そもそもいかがなものかということから議論が出発したはずですから,こういう形の整理にされてしまうと,同意がとれれば保険を付けてもいいという整理ですね,これ。そういうふうにしか見えないのですけれども,そういうのではなくて,やはり基本的な部分で,未成年者に死亡保障を付けるのはいかがなものかというスタンスは,やはり生きていてもらいたいなというふうに思います。   何でこんなことを申し上げるかというと,消費者相談の中で保険の相談って大変多いです。そのときに,そもそも論で申し上げると,なぜ保険の相談が多いかというと,保険の相談は,保険がとても難しい,分かりにくい,凸凹している。例えば,払う場合,払われない場合がまっすぐでない。そういう意味で,大変明瞭でなくて,シンプルでなくて分かりにくいという部分があって苦情がたくさんあって,なかなか国民に,保険がどんなものかというのが浸透していないという事実があるのですね。   そこから踏まえれば,ルールはシンプルなのが当然望ましいわけですから,同意をとるのだというふうな方向で行くなら,例外規定をたくさん設けて,ややこしいことにするべきではないのではないかというふうに思っております。 ● ○○委員。 ● まず,被保険者同意のところですけれども,先ほど○○委員からありましたけれども,生保は原則,被保険者同意をとっておりますので,基本的にはそれを原則というのは,考え方としては我々,その方向でいいのではないかなと。ただ,書面に限定するかどうかについては,この部会でも議論があったと思うのですけれども,これからのインターネットだとかそういうことを考えたときに,書面に本当に限定する必要があるかどうかというのは,少し議論があるのではないかなというふうに思っています。そういう意味では,例えば,インターネットだけではなくて,今の総合福祉団体定期保険の通知同意方式とか,そういうことも含めて読めるような形での同意というような形にしていただければありがたいなというふうに思っております。   それから,未成年者のところが前回議論になっていまして,今も少し議論が出ているのですけれども,前にも御説明したと思うのですけれども,未成年者の中で15歳以上の人には掛け捨てというのは販売していますけれども,14歳ぐらいというのは,掛け捨ての純粋死亡保険というのは売っていないというのがまず現状でございまして,それから,最高保険金額もかなり,昔に比べて引き下げておるという形になっています。   実は最高保険金額は今弊社の場合はどうなっているかと申し上げますと,例えば6歳から14歳までが3000万,5歳未満が2000万になっているのですけれども,では,上限に貼り付いているかといいますと,例えば0歳から14歳を合計でとってみましても,500万未満,死亡保険,生死混合保険ですけれども,500万未満がほぼ半分,1500万未満でほぼ9割ということですので,全然上限に貼り付いているわけでもないですし,かなり金額的には,300万未満もあれば,500万もあれば,1000万もあるということですから,何かセールスの人が不要なものを一律的に売っているということでは決してない。やはり,それだけニーズがあるところで売られているのだろうというふうに私は思っています。   一方で,さあ,何に使っているかということですけれども,それは葬儀費用というのはありますけれども,例えば子どもにいろいろな投資をしている,将来のために学費をかけた,亡くなったときに,やはりそういうことに対してということもあるでしょうし,子どもを記念して何かしたいとか,そこはいろいろなニーズが現実にあると思うのですね。それを,いろいろなニーズがあるにもかかわらず,ふたをしてしまって本当にいいのかどうか。   では,一方で,何のためにいかんのかということになると,いや,親の子殺しということなのかもしれませんけれども,現実に親の子殺しというのはほとんど起きていません。弊社の中で,未成年者が故殺されたというのは,ここ5年間で合計で8件ぐらいあるのですけれども,これは実は全部,無理心中です。そういう意味で言うと,親が単純に子どもを殺したというような事例なんていうのは起きていません。そういう意味で,モラルリスクという意味で,もしも未成年者ということについてふたをするのであれば,少し違うのではないかなという気が正直しております。   ただ,その同意の仕方としてどういうやり方がいいのかというので人格権の問題だとか,そういうことは議論していただいたらいいと思うのですけれども,では全くニーズがないという議論が本当にいいのかどうかについては,少し疑問があるというふうに思っております。 ● ○○委員。 ● 今おっしゃったのは,問題は200万円以上,後遺障害ですね,死亡保険だけで,例えば100万とか200万以上の,2000万とか1000万のところまでのお金が,そういう目的に使うということでみんな本当に入るのか,それが本当にニーズと言えるのか。それはあると,そうおっしゃるでしょうけれども,でも普通は,普通の人はそれは考えないと思うのですね。だから,一回お聞きになればいい。私は,普通はそう考えないと思うのです。それだけです。 ● ○○委員。 ● 今の点について,私,普通でないのかも分かりませんけれども,意見を申し上げたいと思います。   一般に,ある需要があるかどうかとか,無駄であるとかいうのは,基本的に我々のベースで考えますと,法律学者が決めることではなくて,市場とか消費者が決めることであると。   ただ,その場合ニーズがあるのは,前提として,例えば保険会社が利益追求のために割とごまかしているだとか,そういう場合にはやはり問題でしょうが,そうでないからには,需要があるとかないとか,あるいは無駄であるとかいうのはやはり市場が判断するというのが,まあ,普通かどうか分かりませんけれども,経済学的なベースを持っている者の考え方でございますが,そういうことを前提として,こういった子ども保険,子どもに関する貯蓄保険というのが,日本の社会でどういうふうに発展してきたかということをちょっと振り返って考えてみますと,全く戦前からなかったものが急にできたのではなくて,戦前からかなり子ども保険はございます,貯蓄保険として。   私が知る限り,明治29年ぐらいに,子どもを対象にした生命保険がありまして,これは,よく見てみますと,○○委員がおっしゃるように,葬儀費用程度の,つまり,子どもが亡くなった場合には,それまでの保険料,掛金を返すという,そういう商品でございます。ただ,その保険会社は若干マイナーな会社ですが。   ただ,その後,非常に保険会社の初期の民間保険会社の募集資料を見ますと,子弟の教育とか婚資に対して非常に保険が有用であるということを強調したチラシが多くて,実際にも,養老保険を利用した子ども保険,あるいは,もう少し後になると徴兵保険という制度がありまして,これもまさに貯蓄保険の一種なのですけれども,そういったことが明治後期から大正にかけてかなり定着しまして,それは先ほど申し上げました保険料を返す商品も同時にあったのですけれども,そういう意味では,まあ,途中で大正5年から簡易保険もありましたが,主流としては養老保険をベースに,子ども保険なり貯蓄保険が定着してきたという前提があるわけですね。   そういったことを踏まえますと,一概に子ども保険を弁護するというわけではないのですけれども,そういったニーズを踏まえると,今の現状で,しかも保険金目的のために子殺しがないということは,やはり市場が選択してきたものだと見る方が妥当ではないかと考えます。   以上です。 ● ○○委員。 ● 子どもの加入についての基礎資料がありますので御紹介したいと思うのですが,今日,事務当局の方からのボックスの中に,生命保険文化センターが昭和40年から3年おきに実施しております「生命保険に関する全国実態調査の速報版」というのが入っているかと思うのですが,白い冊子ですね。これは今申し上げたように昭和40年から3年おきにやっておりますから,それなりにあちこちで引用されるそれなりの権威のあるものだと思うのですが,その58頁をお開きいただきたいのですが,そこで,3として,「生命保険(個人年金保険を含む)の今後の加入に対する意向」というところで,その下の方の(2)「加入・追加加入が必要な被保険者」として,一番下の表ですが,図表Ⅱ-22「加入・追加加入が必要な被保険者(複数回答)」ですが,そこの3列目ですか,そこに,平成6年から比べると徐々に減っていますけれども,「子ども(未婚で就学前・就学中)」,こういう人に保険を掛けたいと考える人が18.7%いるということですね。   それから,次に60頁の下の段の(ウ)「加入・追加加入意向のある保障内容(子ども(未婚で就学前・就学中))」,これの図表のⅡ-26,一番下の表ですが,そこで「加入・追加加入意向のある保障内容」,要するに就学前・就学中の子どもに対する保障内容,消費者はどういうものを求めて子どもに保険を掛けるかということですが,そこの3列目に,まずあるのが病気とかから始まっていますけれども,3列目にあるのは,「病気や災害,事故による万一の場合の保障に重点をおいたもの」,この「万一の場合」というのは死亡も入っているわけですね。これ42.9%。それから,4列目に「保障と貯蓄を兼ねたもの」というのが25.7%。   ですから,やはり世の中には,こういった貯蓄的なもの,あるいは保障的なものも求めている人がこれだけいらっしゃるということも事実かと思います。   以上です。 ● ○○委員。 ● 一言だけ。○○委員がおっしゃったことは全くそのとおりで,私は世の中がそうなっているという意味で申し上げたわけではなくて,要するに,世の中の人が適正な情報を与えられた上で判断するのであれば,こういうアンケートの結果にはならないのではないか。例えば,保険会社とは関係のないインディペンデントなファイナンシャル・アドバイザーが「それにお入りなさい。」と勧めるのだろうかと。私は,そうは思わないのですね。   そういうことを聞くべきだと。つまり,論点として挙げて,それはもちろん多くの人に伝わらないかもしれませんが,100年に一遍の改正でそれを挙げないという考え方は,これはあり得ないと思うのです。   ○○委員がおっしゃった例えば貯蓄保険については,全然問題ないですし,今まで果たしてきたニーズというものは確かにあるし,全く今おっしゃったことには同感なのですけれども,問題はその先の,諸外国,ヨーロッパでは,下のところはみんなだめだということで共通しているわけですよね。基本的な考え方は,だめというか,よくないと。だから,そういうものをここで取り上げないのは,この法制審議会というものの性格からしておかしい。それは余りに,この審議会の資質を問われるのではないかと,こういう意見です。 ● ○○委員。 ● 一点,事実のことだけなのですけれども,先ほど○○委員が子殺しは起きていないというふうにおっしゃった。確かに過去5年については,保険金を目当てにした子殺しは起きていないかもしれませんが,その少し前の平成11年には,長崎,佐賀の母子の保険金殺人事件が起きているわけで,少なくとも,ないとは言い切れないと思いますし,仮にそういう事件が起きると,保険制度への信用が非常に揺らぐ。そういう意味では,無視すべきでないというふうに私は思っています。   そういう意味で申しますと,先ほどの○○委員のおっしゃった4頁のイの(イ)の限定の仕方がいいのかという問題は,私はやはりあるのではないかという気がしております。   それから,先ほど○○委員がニーズのことでおっしゃった中で,それは○○委員もそうですけれども,貯蓄,それから保障というのを一括しておっしゃっていますが,特にモラルハザードの関係で,やはり死亡保険,そこが問題なので,それは他と区別して議論すべきではないかなというふうに思います。   以上です。 ● ○○幹事。 ● 今,○○委員がおっしゃったことと大体同じなのですけれども,まずはイの例外のところというのは,あと○○委員がおっしゃったこととも大体同じですけれども,原則として,生命保険の場合には,他人の生命,身体を対象とする保険の場合に,その他人の同意があるということが原則だというところがあると思いますので,これは物保険,損害保険のときに,実損てん補というのが原理だというところ,理念だというのとパラレルに考えると,イが適用される例外というのは本当の例外の場合,ですので,この(ア)と(イ)については,法文を念頭に置いたものではないとおっしゃっているので,そのことかと思うのですが,まずは(ア)も,全体として,その被保険者の同意をとることが困難な場合であってという,それが前提につくかと思うのです。   そうすると,あとは保険事故がその保険契約者の管理下で発生した場合とか,共通の業務を行っている場合ということで,その搭乗者条項とか,遊園地とかで,これは同意をとるのは難しいけれども,モラルハザードの危険もないという,そういう場合が救えるのではないかと思います。   そのように同意をとることが前提であると,(イ)の場合など,同意をとることをしなくてもいいという,それが,利便を売りものにするというのが,原則を忘れていいと言っていることに等しいので,余り(イ)を挙げる必要はないのではないかと思います。   それから,子ども保険に関してなのですけれども,これももう既に何人かの方がおっしゃっているように,ニーズがあるとか,それからモラルハザードが起こっていないとかということに関しては,子殺しがそんなに頻繁に起こっていないということ,それをもってモラルハザードになっていないというふうに言えるのかということがあるかと思います。   保険契約というのは,射倖性との境目が,危ないというか危ういところにあるので,常に射倖性というものをどうやって捨象していったらいいかということを考えるのが重要かと思いますので,子どもの生命を保険の対象にする場合に,親はまさかそれで子どもを殺そうとは思っていないから,モラルハザードではないというふうには片付けられないのではないかと思います。   それから,ニーズと言えば,宝くじでもニーズがあるというのと同じようなことになってしまうのではないかと思うのです。本当に経済的にニーズがあるという場合に,子どもを保険の対象とした場合,貯蓄性の部分とか,死亡した場合の葬儀費用の部分とか,又は障害になった場合の後遺障害に対応するものとかというふうに整理して分析していくと,純粋に死亡保険という部分は,子どもの場合にはなくていいのではないかというふうに考えております。   例えば,子どもが意思能力がない時点で同意ができないときには,それで,ある一定の年齢,就学時期になった場合には一定の金額が下りるけれども,だけれども,その時点の手前で死んでしまった場合に,ではその死亡保険というのができなくて,その金額が下りないかというと,それは貯蓄性の部分で,その部分返戻するという商品をつくっても,そこの部分に対して同意が必要だということにはならないと思いますし,それが一定の年齢に達した場合に,子どもが,意思能力が,もっと年齢に達した場合に同意を得て,本来の死亡保険というか,生命保険に切り替えるとか,そういう商品設計も可能だと思いますので,多様な商品をつくるという企業活動として,又は消費者の側のニーズがあるとしても,その商品設計をしたときに,他人の生命を保険の対象としているときに,同意が必要であるということと,同意がない場合には,どうしてその商品が同意がなくて正当化できるかということを考えれば,大抵のものはカバーできてしまうのではないかなと考えております。 ● いろいろ御意見をいただいて,幾つかのカテゴリーの御発言に分かれていったと思うのですが,まず,今問題となっている中で,未成年者の保険について,そもそも一定の制限を設けるべきか。同意の問題以前にですね。そういうことをすべきかどうかという御意見で賛否両論あったのですが,もうちょっと意見分布をお聞きしたいと思いますけれども,そのあたりいかがでしょうか。   では,○○委員から。 ● 経済界のユーザーの立場の考えの発想は,当然,○○委員のとおりでございます。私も,自分の子どもには掛けていませんし,掛けたいとも思わないけれども,そういうことを商法で規定すべき問題かどうか。それはマーケットが決めることだというのが,経済界の基本的な発想でございます。   例えば,フィギュアスケートのスケーターが未成年で,親が巨額の投資をして大変活躍するときに,飛行機で落ちてぽっくり亡くなるとかいったときに,家,家財も全部売り払って投資した親が掛けたいと思っても,それを商法であらかじめふさぐ必要なんかないのではないでしょうか。   さらに言えば,20歳ということが本当に未成年として適切かどうか。今,憲法の関連でも18歳と動いていますし,非常に世の中というのは相対的でございます。それも社会であり,マーケットが決めることであって,保険法であらかじめ,未成年者だから云々というのは,私どもの立場での発想ではない。   殺人が悪いのは当然で,刑法違反ですから当然刑法で罰すればいいだけのことで,保険というリスクをヘッジしたい,分散したいという,非常に技術的な分野,それもまた保険業法ではなく商法の保険法という私法の中で,そこのところでふたをするという発想は基本的には反対です。   以上です。 ● ○○幹事。 ● 第一読会のときにも申したと思いますが,私はやはり死亡保障については限度を設けるのがよいというふうに思っております。   貯蓄の面,それから高度障害等の面については,これは高い保障額,保険金額を設定することに何ら問題はないと思うのですけれども,現在売れているから,だからニーズがあるのだ,高額の死亡保障についてもニーズがあるのだというのは,やはりちょっとそこは説得されないのですね。   やはり,そういう商品しか売ってないからこそ,もう仕方なく,消費者,高額所得者なのだろうと思いますけれども,そういう方たちは死亡保障についても,それこそ3000万とか5000万というような高い保障が付いた保険を買わされているというふうにも考えられるわけで,後遺障害については5000万,あるいは満期保険金については5000万,しかし死亡保障についてはずっと引き下げる。そのことによって保険料が安くなるのであれば,もっとありがたいというふうに考えている人はたくさんおられる可能性があるわけで,ですから,そのあたりも含めて,○○委員がおっしゃったように,パブリックコメントでそのあたりの意見を聞いてみるということがいいのではないかというふうに考えています。 ● ○○幹事。 ● 私は,少しこの問題を理論的にどのように整理したらいいかということから申し上げたいのですが,基本的に被保険者の同意という問題は,生命保険にも被保険利益の法理が適用されるかどうかということの文脈で議論されてきたと思われますし,英米法系では,現在もそのような議論です。   我が国は,既に同意主義でもって,被保険者の同意があれば,その問題は被保険利益そのものを問わなくても処理できるという前提で,そのルール一本でやってきたわけですが,未成年者に関しましては,私どもは,被保険者の同意によってモラルリスクないしそういう射倖性をコントロールするというところにやや限界がある。その場合に,その限界があるときに,では不完全な同意主義のもとで議論をするのか,あるいは元に戻って利益主義のところで,子ども保険について被保険利益ということから何か制約を考えることができるかどうかと,そういう議論の立て方をすれば,少し理論的にも整理ができるのではないかと思っております。 ● ○○幹事。 ● 私も大体皆さんと似たような感じなのですけれども,ただ,同意をとる意味ですね,ここから考えると,ちょっとまだ私自身も十分煮詰めてはいないのですが,今のお話,あるいは御提案いただいている場合の同意をとる意味としては,今おっしゃったように賭博保険にならないようにするだとか,あるいはモラルハザード,道徳危険を抑止するという,この観点が非常に強いと思うのですね。   やや古い時代は,主として射倖契約性のところへ焦点を当てて,賭博保険にならないように同意をとるのですと,ここを強調されたのですが,最近はむしろ道徳危険の方が高まるので,こちらを抑える意味で同意をとるのですと,こう言ってきたのですけれども,ただ,保険の同意をとる,あるいはとられる側,被保険者の立場から考えてみると,確かにモラルハザードが起こるのも嫌だし,勝手に賭博保険をされるのも嫌でしょうと,それはあるのですが,加えて,自分が納得もしないのに,勝手に私に保険を掛けないでと,こういう側面が出てくると思うのですね。だから,モラルハザードもないし賭博保険でもないけれども,その保険は私は嫌ですと,こういうふうにお断わりになる場合のケースというのは,やはり,自分の経済生活を,自分の同意なく勝手にほかの人が保険を付けないでと,こういう観点だと思うのですね。   そこで守られているものというのは,むしろモラルハザードでもなければ賭博保険でもなくて,個人個人の私生活にほかの人が勝手に介入しないで,容かいしないでと,こういうお話なので,それをクローズアップすると,これは民法でどう言われるか分からないけれども,ある種の人格的な利益というものを重視しているというふうにも言えるので,これを強調していくと,相当同意をしっかりとってもらわないといけない,こういう方向に行くと思うのです。   その文脈で考えると,被保険者が未成年者の場合に,果たしてそういう未成年者についての人格的な利益というものを,親が保護しなければいけない時期にあって,どういう形で未成年者に対しての保険の手当てをするのか。   死亡のところは,○○幹事もおっしゃったように,あるいは○○幹事もおっしゃられたのだと思うのですけれども,余り経済的な面からの親のニーズというのはそれほど大きくないのだろうなと。むしろ,けがや高度障害といったところは,確かに親の経済的な負担というものは大きいですから,子どもさんがけがをされるときのことを考えて,確かにその手当てをしていこうという,そのニーズは確かにあるだろうし,それから貯蓄型のものも確かに,成長されれば経済的負担があるのでそれに備えてということもあるのでしょうし,そういう形の保険であれば,別に社会的に何ら問題はないというふうに一般には思われると思うのですけれども,ただ,けがや高度障害にあっても,実は親が故意にけがをさせて給付を得るというようなこともないわけではないとなると,これもやはりモラルハザードが全くないとは言い切れない部分はあるのですね。   ですから,そうなってくると,やはり同意というもののとる意味をある程度ちょっと,立法趣旨というのでしょうか,そこを詰めて考えないと,単に利便性があるからどうかというそれだけで決定するのはいささか危ないというか,法理論的にもおかしいなというふうに思っておりまして,まだ,どこで線を引くべきかというのは,なかなか私も煮え切らないで申し訳ないですけれども,基本的には死亡保険についてはせいぜい葬祭費ではなかろうかなというのが今の感触でございます。 ● 先ほどからのお話の中で,「幼児」という言葉で議論されている場合と「未成年者」という言葉で議論されている場合,そのあたりというのは何か違いがあるというお考えなのですか。制約を何か設けよう,設けるべきだというふうにおっしゃっている委員の方,幹事の方というのは,そこは幼児だから問題,それとももう未成年者全般が問題なのか,14歳ぐらいの意思能力があやしい,そのあたり以下だと問題か,そのあたりは何か御意見というのはあるのでしょうかね。   どうぞ,○○委員。 ● 私が申し上げたのは,基本的に割合低いところで考えて,だれしもが,こういう子にそんなお金は必要ない,葬儀費という,それは,だから「幼児」に近い方です。 ● ○○幹事。 ● 私も,意思能力という,12~13歳のところを境目にしていて,「未成年」という法律の概念を使っているわけではないです。   ですので,基本法で経済活動を制約するという,何か制約する規定を設けるのではなくて,むしろ逆で,法律の方は,同意が必要であるというふうに原則が一本あって,ただし,その同意をとることが困難な場合であって,その保険契約者の監督下にある,管理下にある保険事故を対象とするもの云々というような場合はこの限りでないみたいな形になるので,そうすると,同意をとっているか,とっていないか,とれるか,とれないかというメルクマールになりますから,10歳でもすごく天才で,もう同意していると明らかに言える場合とか,その場合の生命保険というのは有効でしょうし,ですので,子ども保険の場合に,どこが同意をとらなければいけないかとか,その商品をつくる側で,この商品をつくったときに同意をとらなければいけない商品であるはずなのに,ですから,実損てん補という形でないのにかかわらず,同意をとっていない,そこは無効になる可能性があるという,そこを商品設計する側の経営の判断としてしていただくということになるかなと思うのです。   それから,あと二点ほど追加させていただきたいのですけれども,その意味で,原則の例外としては,4頁にあるイの(ア)のところなのですけれども,これは恐らく,判例の平成7年1月30日の判旨のところで,これは搭乗者保険で,それが1000万円下りたということの有効性,損害賠償から控除しないということを言うためだけなのですけれども,ただし,そこのところで,その搭乗者保険の有効性というのを,保険契約者及びその家族,知人等が被保険自動車に搭乗する機会が多いことにかんがみ,右搭乗者又はその相続人に定額の保険金を給付することによってこれらの者を保護しようとすることと解するのが妥当だから有効だというような趣旨を言っているかと思うのです。   そうすると,大体遊園地とか,搭乗者保険とかというのはこれでカバーできるのと,あと,子どもも,その保険契約者の管理下にあって事故にあって,その子どもか,又はその相続人を保護しようというような内容の保険契約であったら有効だというふうに言えるとすると,先ほど○○委員がおっしゃったような,子どもにもう全部,家屋敷も売って,たくさんのお金を注いで,それでスケーターに仕上げようと思って,そしたら10歳のときに亡くなってしまったというときに,その生命保険の金額が比較的高額であっても,まあ,ぎりぎり,ちょっと分からないのですけれども,有効だと言える余地はあるのではないかなと思っています。 ● ○○幹事 ● 年齢的には,○○委員,○○幹事が言われたように大体中学生ぐらいになればもう,被保険者自身の同意ということで,生命保険が保険金が高額になったとしても,それはいいのではないか。ですから,○○委員がおっしゃった特別に高い保険金を掛けるニーズがあるという場合も,中学生ぐらいになれば,被保険者自身の同意ということでそういう保険を認めてよいというふうに考えております。ただ,その金額を制限すべきであるというのは,まさに小学生までということで,そういうイメージで考えておりました。 ● この点,ほかに何か。○○委員からどうぞ。 ● 未成年の話に関して言えば,文字どおり未成年だと思っていまして,意思能力がどうのこうのという部分で線を引いて考えては全くおりませんでした。ですから,実際に,例えば,中学生・高校生になって,自分の意思が言えるではないかというふうに例えば言ったとしても,それはもう,親の監督下にありますので,親の意思を無視してどれだけのことが子どもは言えるのかと考えた場合に,何でそこで,意思能力のところで区別をしなければいけないのかというのは私はちょっと分かりません。 ● ○○委員。 ● すみません,死亡保障のところの話なのですけれども,何回も御説明していると思うのですけれども,14歳以下というのは死亡だけの保障はなくて,生死混合で,生存と死亡が一緒というのが今の売っている保険なのですけれども。だから,それは貯蓄と死亡が兼ね備わっている。   一方で,では死亡を減らせばいいのではないかという議論は,確かにそういう商品設計もあり得るかと思うのですけれども,そのときに,ではどれだけ保険料が下がるかとかいうことを含めたときに,そのことも含めて,僕はマーケットに判断してもらう方がいいのではないかなという気がするのですけれどもね。   やはり,ニーズがあるかないかというのを本当に法律で縛ってしまうというのがいいのかどうか。それで,例えば,極めてそのことによって,売っていることによって問題点が多いとか,弊害がいっぱい出ていると。確かに,先ほど○○委員から言われたように,全然起きていないわけではないですけれども,ではそれが極めて今,社会問題になっているかというと,そういう実態ではないと私は思っていまして,そのときに,何でここで金額を,しかも,それを今すごく高い保険を売っているというのだったら別ですけれども,2000万,3000万であり,しかもそれは一人一人の御契約者が自分は300万でよければ300万というふうに御加入されているときに,一律ぴしゃっとどこかで,この年齢だったらこれ以上はだめですよという線を引かないといけないのかというのは,やはりちょっと。それを法律で縛るということについては,少し納得がいかない。それは,やはりむしろマーケットであり,ニーズであり,消費者が決めていただくことではないかなというふうに思っているのですけれども。 ● ○○幹事。 ● 今まで何人かの委員がおっしゃった,本来ならば許されることを法律をつくって規制するというのはいかがか,マーケットにゆだねるべきではないかというのは,全くおっしゃるとおりだと思います。   ただ,その前提は,本来ならば許されるというのが満たされているという前提だと思うのですね。先ほど来,何人かの方々がおっしゃっていますけれども,被保険者の本人の同意というのをとることが必要だとして,一定年齢からでないと同意をすることができないということであると,それは本来商品化できないものが商品化されているということになると思うのですね。そのときに,しかし必要があるということであれば,本来の原則を曲げて,どれだけそのものを認めていくかという,そういう論法になるのではないかというふうに私は思いますが。 ● はい,どうぞ。 ● そういう意味では,今は同意をとっているのですね。親権者が代理でとっている。我々,同意をとっていないということではなくて,親権者が代理をして同意をとっていますと。   そういう意味で,冒頭に○○委員が説明しましたけれども,生命保険会社というのは,原則的には被保険者の同意はとりますというところから始まっています。その中で未成年については,本人というところで限界がある部分では,親権者が代理をして同意をしていますということで,同意が全く要らないというふうには我々は思ってはいなくて,そのときに,では,親権者同意ではまずいのかと,そこが議論になるのだと思うのですね。親権者同意でどういう問題が出てきて,まずいのですかということの御議論になるのではないかなと思うのですけれども。 ● はい,どうぞ ● それもやはり出発点の問題だと思うのですね。同意をとっていらっしゃるということで,一定年齢以上で同意が可能だということについては○○委員がおっしゃるとおりで,それに異論があるという委員の方もいらっしゃいましたけれども,差し当たりよろしいのではないかというふうに思うのですけれども,本人が同意ができないというところについて,そこで法定代理人の同意をとっているというお話だったのですけれども,それがそれでいいのかどうかというところに,やはり疑義があるのだろうと思うのですね。   それでいいということであれば,それを前提に制限を加えるのはおかしいではないかという御議論は成り立ち得る御議論だろうと思いますけれども,その同意が十分かどうかというところに問題があるということだとすると,その先は,原則としてはだめなのだから例外を設けるということになるのか,あるいは,問題があるとも言えるし,そうではないとも言えるというグレーゾーンならば,グレーゾーンを前提にしてどれだけのことを認めていくかという政策判断になる,こういうことなのではないかと思いますが。 ● この問題はいろいろ今日議論が出て,検討すべき点,まだいろいろありそうだという,ちょっと今日の段階でそんなに集約はできそうにないので,まだちょっと今日の議論を踏まえて検討してもらおうかと思うのですが,何か事務当局,ございますか。 ● さまざまな御意見をいただきまして,このたたき台をどのようにバージョンアップすればいいか非常に悩んでいるところですけれども,今回のたたき台でこのような案,資料でいきますと4頁の上の方,(補足)3に書きましたとおり,未成年者を被保険者とする生命保険契約の規律の在り方について,公序良俗違反の場合はさておき,そうでない限りは基本的には有効とすることを前提として考えましたと,こうしました理由を申し上げたいと思いますが,制限すべきではないという御意見の中にその理由の大半は含まれていましたけれども,事務当局として一番考えましたのは,法律に何らかの規律を置く,その規律が規制の形で働くものであるとすれば,それはある目的を達成するために必要最小限度の規制でなければいけないだろう,ここが出発点にございます。   そうして考えてみましたときに,被保険者同意の趣旨はいろいろさまざま説明されていますが,例えば賭博保険を避けるということであれば,例えばそれは同意をとればいいではないかということが言えるでしょうし,あるいは,この4頁のイのような例外を仮に認めるとしても,そのイの例外が無限定にならないように絞るということで考えればいいのではないかということが言えるような気がいたしましたし,仮に人格権的な利益ということを考えるのであっても,それは例えば同意を求める,あるいは同意の撤回といいますか,離脱を認めることによって,そこはクリアするということが十分に考えられるのではないか。   あるいはモラルハザードの指摘もございましたが,これも認識がいろいろあるということが今日の御意見でよく分かりましたけれども,モラルハザードの問題も,仮に,ないではないというレベルだとすると,そのために未成年者を被保険者とする契約そのもの,契約を否定する,それは無効だということは,それは余りにも過剰な規制ということになってしまって,それは,なかなか法律にそういう規律を置くのは難しいのではないかなというようなことなど考えまして,この4頁の(補足)3の最初の4行に書いたような立場で今回のたたき台は出させていただこうと,こう考えたということでございます。   今,申し上げましたことは,今日の御意見の中にもございましたが,一定の年齢以下についてそう考えるべきだという考え方にも当てはまるものでして,では,その年齢というのはどこから出てくるのかと聞かれたときに,今日の御意見自体がもうさまざまで,文字どおり未成年と考える方から,15歳以下ではないか,あるいは中学生以上はさておき小学生以下ではないかとか,人によって考え方が全く異なるところで,そこを一定の線を引いて,ではそこで線を引いた理由は何かと,例えば所管省庁として説明を求められたときに,恐らく答えられないのではないか。もちろん,政策判断ですということは言えると思いますが,なかなかそれを,ここで線を引いた理由はこうですと,こう言えるのかというと難しいのかなという思いがございます。   それから,金額の上限という話もございましたけれども,同じように,ではその金額はどこから出てきたのか。冠婚葬祭をやれば,一般的な葬祭費と,こう言ったときに,それは人によって恐らくとらえ方が全く違うと思います。私のような庶民は,それは300万,500万,これは一読でもそういう話がございましたが,そう思いますけれども,人によっては,500万何ていうはした金は,ということになって,子どもにそんな恥ずかしいことはできないと,こう言われるかもしれません。そうしたときに,いやいや,法律で500万以上はだめですよと,こういう規制がかけられるのかと言われたときに,それもやはりなかなか厳しいのかなと。等々を考えますとやはり,あるいはモラルハザードであれば,単に保険者の免責の規律の仕方ですとか,重大事由解除の規律の仕方ですとか,他にも,それを手当てすべき規律を今現在検討しているわけですから,いずれにしてもこの問題について契約そのものの効力を否定する,あるいは年齢を制限する,金額を制限するにせよ,そういう形で手当てするということについては,なかなか困難ではないかということから,こういうたたき台を出させていただいたということでございます。 ● ○○委員。 ● 一言だけ,どうも今のだと,この案で行くという,そういうご趣旨のようですけれども,でも,ここでの議論で業界の利害関係がある方以外の御意見は,それは,○○委員には申し訳ない,本当は未成年が正しいのかもしれませんが,先ほど私が申し上げたのは,幼児の生命保険に対する葬祭費用程度を超える生命保険を法律上禁止すべきとの意見があるが,それについてどう思うかと,こういう意見をやはり出していただいて,その結果を踏まえた上でやるべき,というのは,やはりばらばらではないと思うのですね。ちょっと上限は違うけれども,下の方,基礎は共通で,そこはやはり皆さんおかしいと,特に利害関係のない方はそう言っておられるわけで,だからそこはちょっと考えは変えていただいて,何もこちらの案を否定するつもりはありません。しかし,後注で挙げて,中間試案でしっかり聞いた上で,その上で最終的に判断していただきたい,こういうふうに思います。 ● ○○委員。 ● 一点だけちょっと○○委員に抗議したいと思いますが,今,○○委員がどういうことで言っているのか分かりませんけれども,業界に利害関係のある方,ない方というのは。 ● いや,業界と言っているだけで,そのことは,どうも申し訳ありませんでした。 ● いや,賛成・反対という分け方をされたのですけれども,ちょっと,私,中立的な立場でものを申しているつもりなので,その辺ちょっと御再考いただけませんでしょうか,今の発言に関して。 ● 衷心よりお詫びを申し上げます。申し訳ありませんでした。 ● それでは,事務当局はまたこれ,本日の審議を踏まえて次の資料をつくる立場でそれなりに考えなければいけないこともあるというのがただいまの説明だと思いますが,この扱いをどうするかというのはちょっと御検討いただくということにして,ほかの点で,イの(ア),(イ)という例外を設けてはどうかと,それについて,(ア)の方はテクニカルな,こういう場合はどうかとかいう御質問がありましたが,それはテクニカルな検討で結構かと思うのですが,(イ)については,多少これは例外としては広すぎるのではないかという御意見が一人にとどまらずあったように思いますが,このあたり,いかがでしょうか。   ○○幹事。 ● 先ほどは未成年者の生命保険に関してだけでしたので,これは申しませんでしたが,例外の(イ)が広すぎるのではないかというのは,やはり傷害,死亡保険についてこの(イ)のルールを定めてしまうと,夫婦間の,言葉は悪いですが,保険金殺人というのを防止することがもう本当にできなくなってしまうのではないか。親子間は保険金殺人というのは,ないわけではないけれども少ないというのがありましたけれども,夫婦間の保険金殺人というのは,親子間に比べるとはるかに多いわけで,しかも,これがよく使われるのは,傷害保険,あるいは海外旅行傷害保険という,保険料が安い割に保険金が高いという,レバレッジが高い保険ですね。   そのような保険に関して,この(イ)のルールを採用されれば,例えば夫が妻殺しを意図していたとして,妻だけを被保険者にして保険に入ることはできなくなるので,夫も妻も両方ともまとめて保険に入るというようなことにしなければいけませんから,多少保険料は高くなるかもしれませんが,このモラルリスクの高い保険というのはもともと保険料が安いですから,ですから,この(イ)のルールを採用したからといって,これでモラルリスクが低くなるとは到底考えられないですね。   だから,傷害・死亡保険に関して配偶者の同意を得ずに配偶者を被保険者にして,そして最終的に保険金殺人で保険金を詐取するという危険については,第一読会のときから随分言われていましたように,私も申し上げたと思うのですけれども,率直に言いまして,この(イ)のルールでは,現在の傷害保険の実務について言われている問題点を解消,あるいは低減させるという効果というのはほとんど期待できないのではないかというふうに思っておりまして,個人的には非常に残念というか,もう何か絶望感を感じております,この(イ)のルールが出てきたことに関して。   以上でございます。 ● ○○幹事,どうぞ。 ● 私の意見は,基本的に○○幹事と同じなのですけれども,立法の長年の経緯を考えてみますと,かつて我が国,親族主義というのを採っていたわけですが,親族主義のときは,親族以外には掛けられないという,そういう制約ではありましたからちょっと違いますけれども,そのときに,親族主義を克服するときの理由は実は二つあったと私は理解しているのですけれども,親族以外の者にも保険を掛けさせるけれども,同意をとってモラルハザードを防止しましょうという意見のほかに,むしろ親族こそ危ないのだという意見が確かやはり当時はあったと思いまして,親族だから何の同意もとらなくて,何も制約なしに掛けられるというのがおかしいのだと,むしろ保険事故,要するに保険金殺人等が親族間で圧倒的多数起こっているのだということが立法事実として示されて,親族主義を乗り越えたという,そういう歴史がございますので,やはりそこを克服できないまま立法が先祖返りするのは,ちょっと問題があるのではないかなというふうに思います。 ● この(イ)に当たる場合,これは生命保険会社は,先ほどのお話で,基本的には同意をとっているから余りこういう(イ)のような例外は要らないという感じだったと思うのですが,やはり損保の方の傷害保険を考えると,こういう例外がないと困るということなのでしょうか,そこらあたり損保側の委員はいかがなのですか。   どうぞ,○○委員。 ● 保険金殺人という問題は,もちろんそれは避けなくてはいけない問題でございますけれども,例えば皆さんが会社あるいは大学等々で,団体の割安な傷害保険に入るという道がございまして,これは非常に広く利用されているところでございまして,例えば御家族のけがとか,それから後遺障害ももちろんそうでございますけれども,死亡も含めまして,保険に入る場合に,御家庭に帰られて,御家族全員の方の同意をとり付けて,そしてまた会社にそれを提出する,これがもちろん一番望ましい形だとは思うのですが,実際問題としてはかなり契約者に煩雑なことではないかなというふうに考えていまして,現在の形で行われるということはそれなりの利便性があるのではないか。保険金そのものが法定相続人に支払われるということを前提にしておれば,今の形がそれなりに存続する意味があるのではないかなというふうに考えております。   ちなみに,3月にフランスとドイツに行ってまいりまして,フランスとドイツでは一体こういうものはどういうふうに扱われているのかなと非常に興味を持って,監督庁とか保険会社等々に聞いてまいりました。   フランスでは,保険法では,他人のための生命保険については被保険者同意が必要となっているけれども,傷害保険については規定が不明確なので,どうなっているのだろうかということを監督庁とか保険会社に聞いてまいりました。   この結果,フランスでは,傷害保険につきましては,他人のための死亡につきましては被保険者の同意はとっていない。また,被保険者の同意をとるということについても,特にその必要性を,業界あるいは監督庁等々で議論が起こったこともないと,こういう状況ですね。これは向こうの金融庁とも話をしたのですが,手続が非常に煩雑になるので,傷害保険というのは非常に利便性が高いので,利便性の高いままにしておくのがいいのではないかという意見でした。それから,人格権的な問題というのは,フランスでは議論されたことがないというふうに監督庁の方は言っておられました。   ドイツでは,法律上は,他人のための傷害保険につきましては被保険者の同意が必要というふうになっております。   一体,実務ではどうなっているのだろうかということですが,これは保険会社によっていろいろ取扱いが違うみたいでございまして,他人の死亡に関して同意をとるという,そういう会社もあれば,法定相続人が保険金を受け取る場合にはとらないという会社もございます。   こんな事情でございますので,やはり気になりますのは,利便性が高いという傷害保険の特性そのものは,それなりに重要視されているのではないかなという考えを持っております。 ● (イ)のような形に関して,生命保険から何から一切合切,家族であれば例外が大きくぽこっと穴が開くという感じで,これはいくら何でもという意見が今日は多かったかと思いますが,では全部この例外を外したときに,あと(ア)でどこまで読めるかとか,あるいは,(イ)ほどではないけれども何らかの例外のようなものが小さい範囲であるかどうかと,ちょっとそういうあたりを考えてみる価値はあるのかなという印象を持ちましたが,このあたりも事務当局の御検討で,何か今の段階でございますか。 ● それでは,ちょっとその点も一点補足させていただきますと,今日さまざま出た御意見は,指摘されるだろうというように思っておりましたが,その中で(イ)を付けましたのは,先ほどの,もともとこれはまだ熟していないということを自白した上でたたき台をお示しした方が,いろいろ御意見をいただきやすいだろうということがまずございますし,それに加えて,一読の傷害・疾病保険契約の議論の際に,損保の家族保険のパンフレットが配布されまして,あの中で,無記名の家族型の保険の御説明をいただいたところですが,あれなどをイメージしますと,例えば4頁のイの(ア)は,搭乗者傷害保険なり,施設の入場者といった被保険者が不特定な場合をイメージして,その場合にまで同意をとるのは難しい,あるいは非現実的というようなことから,例外的に考えたらどうかということで考えたわけですが,同じように,例えば無記名の家族型などを考えますと,今は同居していないけれども,将来同居予定のおじいちゃん,おばあちゃんがいますと,それは同居した時に同意をとって被保険者に加えればいいとは言うのですが,そうせずに,自動的に被保険者となって保険が付くことによって家族みんながカバーされるという形の保険を,本当に全部同意で仕切らないといけないのだろうかという疑問が,なお残っておりまして,そのようなケースを想定しますと,あるいは生まれてくる子ども,それは生まれてきた時に一つ一つ同意スキームに乗せて被保険者に加えればいいといえばいいのですが,そのような,将来同居するかもしれない,あるいは同居予定のおじいちゃん,おばあちゃんなり,生まれてくる子どもとかいうことを考えたときに,(ア)の「不特定」というようなものと同じような発想で,この(イ)のようなことも同意スキームの例外としてあってもいいのではないかというか,考えられるのではないかと,このようなこともありまして,たたき台として(イ)も併せて出させていただいたということでございます。 ● そうですね。割と,だから家族が包括的に被保険者のところにと,そういうイメージ。 ● 先ほど事務当局からの説明で申し上げましたとおり,家族みんな一緒ならいいけれども,なぜ一人なのがいけないのかという理論的な問題があり得ますので,突き詰めると,○○幹事から御指摘のように,先祖返りしてしまうということにもなりかねないところでして,それはおかしいということはあり得るかもしれませんが,一方で,その先祖返りしないまでも,今申し上げたようなイメージの部分についてまですべて同意でないといけないのかというと,ちょっとその辺も直ちには,それも全部同意でいいのだと言うにはなおちゅうちょしたものですから,(イ)を出させていただいたということでございます。 ● というようなことですが,ここ,もうちょっと何か工夫が必要かなという感じですが。   ○○幹事。 ● すみません,ちょっと工夫というのには思い至っていないのですけれども,先ほど来からの議論の中で,同意をとると全部モラルハザードが防止できるかのような議論というのが幾つかあったのですが,同意をとっても,かなり危ないわけですね。   そこで,同意をとるということを要求しても無意味なのではないかという議論が次に出てくるのはしようがないことなのですけれども,しかし,それに代わる何かモラルハザードの防止策,あるいは限定的な類型の明確化とか,さらには金額的な制約とか,何かを絡めないと,同意は確かに,とっても,これ,無理ではないですかとか,こんなとき,とるまでやると面倒ではないですかとかという議論が出てくるのはもう当然で,同意によって防止できるものが非常に小さい分だけ,同意のコストというか,同意の手間の方が大きく見えてしまうというのが当然なのですけれども,では,それを外したときに,ほかに何の防波堤もなくていいのかという問題がありますので,そこに何か代替措置を出していただいた上で,同意が要らない場合というのを示していただければありがたいなというふうに思います。 ● では,この点もちょっと,今日の御議論を踏まえて,なお検討を続けていただくことにしたいと思います。   では,この被保険者の同意のところで事務当局からちょっと,なお御発言をいただきます。 ● 先ほど来,若干整理をして,未成年者の問題,それから同意の例外の問題について補足的なことを申し上げましたけれども,先ほど,そのほかに大きく分けて,同意の書面性の問題,それから,同意の撤回といいますか,契約関係の離脱の問題についても御意見をいただきましたので,そのうち,書面性の問題につきましては,やはり事務当局の考え方をちょっと補足させていただきたいと思います。   資料でいきますと,3頁の一番下,(補足)2のところ,被保険者の同意は必ずしも書面によることを要しないものとすることを前提としてこのたたき台を考えましたという部分ですけれども,○○委員から御指摘いただきましたとおり,一読では,同意を要求すべきだという意見が多数述べられたことはもちろん前提とした上で,なおこのように考えたということになりますけれども,それは,一つは保険というのがその保険に入る契約者のためのものだとすると,万一のために保険を付けました,では,保険金請求しようというときに,被保険者の同意について書面がないから,では無効だ,保険金は払わないと,こういうことになるのが本当にいいのだろうかと。   それは同意はしっかりとらなければいけないと思いますが,成立時点で書面がないと効力が否定されるということが果たして合理的な規整なのだろうか。保険を付けるときに電話でよく説明をして,こうこうこうで,こういう保険をつけるよ,いいねと言って同意をとったというときに,書面がないからだめ,あるいは書面をとらない限りは保険に入れない,例えば離れて暮らしているときには,書面を送って返送してもらわないとだめ,ということまで求めなければ本当にいけないのだろうかということにまず疑問が,その点の疑問を払しょくできなかったというのが一点ございます。   もう一点目は,これは一読の際の事務当局の説明で申し上げましたが,請求段階でも同じことがありまして,貸金業者が保証人に保証債務の履行を求める場面であれば,きちんと保証意思があったかどうか書面でとっておいて,このとおりあったよということを,請求する請求権者である貸金業者が示す,そういう証拠の明確性という意味があると思いますが,保険の場合は,請求するのは保険契約者側なわけでして,請求の場面でも,同意は書面でとったのだけれども,書面が見当たらないということになった場合に,それで不利益を被る可能性があるのは請求する契約者の側でして,そうだとすると契約者の側は書面をずっと大切に,保管場所も明らかにして,なくさないようにとっておかなければいけないということにもなりかねないわけでして,その請求の場面でも書面性を求めることによって,かえって契約者に,過剰といいますか,重たい負担が課されることになるということもまた懸念されまして,同意をしっかりとるということはそのとおりだと思いますが,必ずしも書面性を求めることが合理的かというと,そこまではなかなか言いにくいのではないかということから,こういう前提に立ってたたき台をつくったということでございます。 ● とりあえず,そこまでで。   ○○委員。 ● 本当に一言だけ。全く理解できないと思うのです。というのは,この書面性というのは被保険者を保護するためのもので,広い意味では契約者側ですけれども,請求があったときに,それを保険会社側が使うというのは,制度的にそういう使い方はそもそも認める必要はないわけで,書面というのは被保険者側を保護するためのものですから,被保険者が何かあればあれですけれども,そういう話に簡単になるのかというのはちょっとよく分からないところです。 ● 保険会社が,書面がないから無効だという主張をするのはおかしいと。無効と言ってしまうと,そうは読めないだろうという事務当局のあれなのですが。   ○○委員,どうぞ。 ● 私も,前に申し上げましたように,団体生命保険では,書面の同意ではなく,通知同意方式とか社内のネットによるという形できっちり同意はやっていますけれども,これを書面にすれば,これは被保険者のためだというよりも,保険会社に負担をかければ保険料が高くなるだけで自分に戻ってくるわけですから,なるべく合理的にきちっとやって,かつ競争力のあるというか,適切な保険料で提供していただきたいと,こういうことで,被保険者である保険契約者側の立場で,保険会社に負担をかけたくないと,そういうことで,きちっとやっている会社とか団体が,今回の法制の見直しで負担が重くなって,保険料が上がる,又はそんなことだったら団体生命保険はやめようというのは極めてよくないと。   実は,ある委員から,そういうことをきちっとやっていない団体もあるではないかと,それはそのとおりです。どんなに規律があったとしてもきちっとやっていない団体はあるわけですから,そういう人たちにはそれなりの効果が生じるようにするのはいいのだけれども,そのために,きちっとやっている団体とか,そこに属する個人,消費者が損失をこうむる,こういう発想での法律変更というのは困るというのが私の意見であります。 ● ほかに,この点いかがでしょうか。   その他,全体に,この被保険者の同意のところで何か。○○幹事。 ● 今の同意の問題につきましては,私は,同意の相手方が保険者又は保険契約者,どちらでもよいということ自体が,少し,同意の性格をきちんと決めずにやっているということになってしまっているのではないかなという気がしておりまして,基本的に,保険会社として,同意があるかどうか書面で確認できないものについて承諾をするということ自体,やはりおかしいのではないかという気がしておりますので,そういうことからすると,実務的にはやはり,保険会社としては書面で同意をとるのが原則になるというのは当然だろうと思います。   あと,コストの問題でどうかということなのですが,それは結局,団体保険なのでコスト的に見合わないとかそういうことがあり得るのかもしれませんが,団体保険と個別の保険とを共通のルールで読まないといけないから,低い方に合わせないといけないという議論に,結果としてなっていると思われますもので,それはやはり,団体保険の場合にはそういう手続的に緩めても弊害は少ないということであれば,それは,そういう原則が,何で,その弊害が少ないものについては例外がどうでと,そういう整理をしていただいた方がやはり理論的には分かりやすいのではないかと思っております。 ● ○○委員。 ● 先ほど事務当局の方からお話がありましたように,離脱のことですが,3頁の頭に,「一定の場合には」と書いてありますけれども,それで例示が出ていますけれども,この「一定の場合」の内容については,慎重な検討をお願いしたいと思うわけです。   というのは,重大事由解除の要件に合致するような場合は重大事由解除で契約を解除すればいいと思いますし,それから,「親族関係が終了」と言っていますけれども,夫婦関係なのか親子関係なのか,いろいろあるかもしれませんが,先ほども出ましたけれども,ここで被保険者というのは,保険会社との関係においては当事者ではないのですね,契約の当事者ではないという意味ですが,そこに契約者のニーズというか,意思というのは,入ってこなくて本当にいいのかということなのですが。   結局,これを認めていきますと,保険会社というのはどういう場合に解除を認めて,どういう場合に離脱を認めて,認めないのかということの争いに巻き込まれるわけですね。結局,当事者間の話がつくか,あるいは訴訟によることになると思うのですが,その間,契約関係というのは不安定なままに置かれますから,実務に与える影響も大きい。そういう意味からも,慎重な検討をお願いしたいということでございます。 ● ○○幹事。 ● 私は,この点は,離脱を比較的自由に認めて問題ないのではないかなと思っているのですが。というのは,どちらかというと,意見の中で,生命保険の有効性・無効性というのを同意の有無という柱だけで整理して,あとは例外というのを,イの(ア)をちょっと整理することによって処理できるのではないかというふうに考えておりまして,そうすると,一定の時点で同意というのも撤回する自由というか,事情が生じたときに撤回して,そのときにその効力を失って保険契約が終了して,あとは解約返戻金とか,その精算の問題だけになるので,それは,自己を被保険者とした保険契約を一応いつでも解除できるのと同じなのではないかなと思うのですよ。   結局は他人の生命を対象にした生命保険ですので,その人が嫌だというふうになったときには,ちょうど本人を対象とした生命保険で,もう解約しようと思ったというのと同じぐらいの感じの理由で契約関係が終了していいのではないかと思います。 ● ○○委員。 ● 先に,同意の書面の話ですが,すみません,戻して,同意の書面の話は,○○幹事がおっしゃったように,全く同じように考えておりまして,基本的には,今同意をとっているという実務をやっていらっしゃって,そこで何ら問題はないわけですから,やはり,同意の効果がどうのという先ほどお話がありましたけれども,とらないといけないというふうに思っております。   それから,今の契約関係の離脱の話ですが,被保険者は死亡保障に関しては全く受益者ではありません。受益者ではない関係の,要するに保険の対象であるその人が,長期間の契約関係の中で離脱できないというのは,それはそもそもおかしいのではないのかなと。一応最初はよいですよと言ったけれども,人間は変わりますから,10年,20年経っている間に,嫌だよということは当然出てくるもので,それを肯定しないで,一回,最初にうんと言ったのだから,ずっとあなたは離脱できませんというやり方は,やはりそれはおかしいのであって,それは離脱できるようなスキームをつくる。   それをここで例示しているように縛らなくては,無限定にとは当然申し上げませんので,そんなイージーに出たり入ったりされても困りますので,それはそうなのですけれども,やはりある程度の縛りを設けながらもそういう関係を残しておかないと,被保険者はある意味,立つ瀬がないので,そこら辺は御理解をいただきたいと思います。 ● よろしいでしょうか。最後の二点についても,いろいろな意見が出ましたので,なお御検討をいただきたいと思います。   ここで中断いたしまして,休憩したいと思います。           (休     憩) ● それでは,再開したいと思います。   次も大変重い事項なのですが,6頁の「(3) 危険に関する重要な事項についての事実の告知」というところでございます。   まず,事務当局より御説明をお願いします。 ● それでは,御説明いたします。   告知義務違反の要件や解除権の阻却事由などについては,損害保険契約の通則として既に御審議をいただきましたので,これらについてはなお検討させていただくことといたしまして,今回は,告知義務違反の効果について問題提起をしております。   本文では,現行商法の考え方をA案,プロ・ラタ主義と呼ばれる考え方をB案として掲げ,この点について再度御議論をいただきたいと考えております。   今回は,第一読会における御審議を踏まえ,いわゆるプロ・ラタ主義について検討すべきと考えられる点を問題点に掲げました。詳しい説明は(補足)に記載したとおりですので,それを踏まえて御議論をいただければと思います。   また,A案とB案とでどのような違いが生ずるかを比較しやすくするために,本日席上にペーパーを配布いたしました。「危険に関する重要な事項について事実の告知がされず,保険事故が発生した場合の規律」と題するペーパーでございます。こちらを御覧いただきながらお聞きいただければと思いますが,こちらは,左側に本文のA案の帰結,こちらは現行商法の帰結ですが,を掲げ,右側にB案,いわゆるプロ・ラタ主義の帰結をそれぞれまとめております。   現行商法の採用するいわゆる因果関係不存在の場合の特則を維持すれば,結局どちらの立場を採るかによって結論が異なりますのは,この表の右側の△印を付している箇所,つまり,保険契約者又は被保険者に重過失があり,引受け範囲内で,かつ,告知されなかった事実と発生した保険事故との間に因果関係がある場合でございます。   この点については,1枚めくっていただきまして,2枚目の「事例4」に記載しましたように,現行商法上支払拒絶可能な事案について保険金を一部支払うこととすることの必要性及びその当否という観点から検討する必要があると考えられます。   これに対しまして,因果関係不存在の場合の特則を維持しない場合には,ほかにも結論に違いが生じますが,その結果,保険者は,現行商法上保険金を支払うべき事案について,保険金を全部又は一部支払わなくてよいということになりますが,その場合には,そのような改正をすることの当否という観点から検討する必要があると思われます。これについては,2枚目の「事例1」及び「事例3」を御覧いただければと思います。   さらに,本文では,A案とB案のいずれを採る場合にも,因果関係不存在の場合の特則を維持する考え方を提案しております。そこで,この因果関係不存在の場合の特則について,因果関係の証明責任の所在や強行規定性についても問題提起をしており,それぞれ御意見をいただければと思います。   そのほか,(問題点)や(後注)に記載の点についても,併せて御意見をいただければと思います。   以上です。 ● 部会資料の方で,相当丁寧に問題点というのが整理されているかと思います。 それを踏まえて御議論いただきたいと思いますが,まず,○○委員。 ● 今日席上配布していただいていますいわゆるプロ・ラタ主義に関する海外調査の概要につきまして御説明申し上げたいと思います。   この2頁物ですけれども,これは,この青い「海外調査報告書」の各聴取先の冒頭についています議事要旨から抜粋したものでございます。   今回配布させていただきますのは,第1回会議でプロ・ラタが議論された際,海外での実務,実態に関する御質問がありましたことを受け,生命保険協会では,1月から2月にかけ,フランス・イギリス・ドイツの3か国を視察し,その内容をまとめたものでございます。   報告書につきましては,訪問先に録音の許可をいただきまして,質疑応答をありのまままとめたものです。後ほど御参考にしていただければと存じます。   本日は,報告書の議事要旨から抜粋して作成しましたA4横の配布資料をもとに,視察結果の概要と若干の論点を御紹介させていただきます。   まず,一番上の「導入の経緯等」ですが,フランスでは1930年法でプロ・ラタが導入されまして,軽過失の告知義務違反者に対し保険金を全額払わなければならないとすると,正当に告知した人の保険料を回していることになることから,プロ・ラタ主義は保険会社を守るための制度,保険群団の中の正しく告知した人たちを守るための制度と認識しているようでございます。また,日本と違い,生命保険に加入している人は少なく,死亡保険の請求件数も,アクサの例ですと年に数百件程度しかないという背景もあるようでございます。   次に真ん中のイギリスですが,イギリスでは1981年から金融オンブズマンが導入されまして,その紛争処理の際,部分的にプロ・ラタ主義が導入されているようでございます。オンブズマンは,「インアドバーテント」,つまり不注意に該当する場合に限り,プロ・ラタ主義を適用しているようですが,法律委員会の調査では,実際に使われたケースはわずかなようでございます。   次に,右端のドイツでは,オール・オア・ナッシング主義だと軽過失の場合に保険金が全く支払われないという極端な解決になることが問題とされ,軽過失では,それなりに保険保護を提供すべきであるというのが議論の出発点であったようでございます。   次に,2段目の「適用の方法」ですが,フランスでは,不実告知が判明した後に保険料の変更を提案するのは保険会社側であり,契約者側は裁判所に対して異議を唱えることができるが,最終的に判事が事案ごとに考えるとされているとのことでございます。また,四つ目の「・」ですが,プロ・ラタ主義を適用するための公的な割増保険料表のようなものは存在せず,あくまでも当該会社の料率表により割合計算が行われるようです。   次に真ん中のイギリスの例ですが,二つ目の「・」にありますように,プロ・ラタ主義に基づく計算をするために,事後的なリスク測定を行うことが困難であることが反対の理由として挙げられているが,裁判実務の中では計算が可能と考えているとの,法律委員会のコメントを得ております。   最後にドイツですが,ドイツの連邦司法省は,プロ・ラタ主義に基づく計算を行う場合,他社とのバランスは見ず,当該保険会社の基準だけで合理的な判断をすべきとのことでした。また,保険会社からは,契約当時にさかのぼってリスクを再評価するのは難しく,一定の裁量幅が生じるとのコメントがありました。   次に,2頁へまいりまして,「故意・(重)過失の区別,証明責任の分配」ですが,フランスでは,判事が告知者個人の知的能力に照らして,質問表の意味を十分に理解できる能力を備えていたかどうかを判断するとのことでございます。質問事項を具体的にしておけば,保険会社が不利な扱いを受けることはなく,質問表に明示的な病名が記載されており,被保険者が「いいえ。」と回答したのに実際には治療歴があれば,故意の不実告知と判断しているようであります。   真ん中のイギリスですが,イギリスでも同様に,質問が明確であることが重要であるとの法律委員会のコメントがございました。   最後にドイツですが,連邦司法省によれば,保険契約者が不告知が重過失であったこと,さらに,保険会社が他の条件であれば契約を締結し得たであろうという事実を証明した場合には,保険会社は契約を解除することはできず,立証責任は保険契約者側にあるとのことでした。言い換えますと,保険者が告知義務に反していますと通知をして,契約者側が重過失によるものであったことを立証するということです。二つ目の「・」にあるように,保険オンブズマンからも同様の内容をヒアリングしており,その理由は,裁判所は,保険契約者にどのような故意があるかを保険会社は知ることはできないと考えるからだとのコメントがありました。また,質問表との関係について,商品試験財団によれば,質問事項が明確であればあるほど,保険会社は立証が容易になると思われるとのことでした。   次の行ですが,「告知のインセンティブ,保険契約者間の衡平性」の欄です。   フランスでは信用生命保険が中心であり,保険金が減額されるとローンが残ることになるので,制裁効果はあるとの説明がありました。   他方,ドイツの保険会社は,重過失にプロ・ラタ主義を適用すると制裁効果が弱まり,告知義務違反が増加する懸念があり,保険契約者全体の利益を損なうことから,保険契約者の保護にならないと考えているようです。   次の欄,「医的情報へのアクセス」ですが,フランス・イギリスでは,保険会社は被保険者のかかりつけ医,すなわちホームドクター等がおり,既往症等の有無を確認しているとのことでございます。ホームドクターに既往症等の有無を確認し,それから,次の「因果関係」の欄,この一番下ですが,フランス・イギリスでは,因果関係の有無によって告知義務違反の効果が変わることはないようですが,現在,イギリスでは,がんの不告知があったがテロで死亡した場合に,何らの保険金も支払われないのはアンフェアだとして問題になっているようでございます。   海外視察の状況は以上でございますが,最後に,これらを踏まえまして,我々が論点として考えていることを若干述べさせていただきます。   まず第1に,故意・重過失のそれぞれによる告知義務違反をどうとらえるかという点であります。現在,オール・オア・ナッシング主義で解除することが苛酷となるケースがあるかどうかということです。我々としては,故意と同視し得るほどの過失,すなわち重過失を解除しているという認識ですが,分かりやすい質問書を間違えて記載をすれば故意と推定される海外との比較において,この異同をどう考えるべきかということが問題になると考えております。   第2に,本日の部会資料8頁の(問題点)1の⑤とも関連しますが,故意・重過失を区別した立証責任を保険者,保険契約者のいずれが負担するかという点です。ドイツでは,誤った告知をした場合,先ほど述べましたように,故意による不告知と推定され,故意によるものではないという立証,すなわち,重過失によるものとの立証は,保険契約者が行うこととなっておりますが,我が国においても同様の規定が可能か,逆に保険者が故意を立証するという規定になった場合,果たして被保険者の故意を立証できるかという問題があります。   第3に,同じく今回の部会資料の(問題点)1の⑥にありますように,正しく告知するインセンティブが下がる可能性をどう評価するかということです。フランスのように,信用生命保険が中心であれば,それなりの制裁効果が期待できると思いますが,我が国の市場実態を踏まえた議論をお願いしたいと考えております。   最後に,実務的な課題をどうクリアすべきかということも御配慮をお願いしたいと思います。海外では,かかりつけのお医者さんがいることから,うその告知をしてもばれやすく,かつ,事後的に契約当時の健康状態が容易に判断できるという実態があります。我が国において,保険事故が発生した後に,告知時点にさかのぼって当時の病状を正しく把握し,どの程度正確な保険料が算出できるのか,それが消費者にとって合理的なものとなり得るか等についても,慎重に御検討いただければと思います。   以上でございます。 ● それでは,○○委員。 ● B案,プロ・ラタというか,減額原則ですね,もうそれで行くべきだという立場で少し申し上げたいと思うのですが,やはりちょっと議論がいろいろ混乱していて,そこをまず整理する必要があると思うのです。   まず第一点は,もし私の誤解であれば訂正していただきたいのですが,従来のここまでの議論は,損保はこういうプロ・ラタ,減額原則をやっているけれども,生保はやっていない,というような議論で来たのではないかと思うのですが,おかしいなと思って調べてみますと,私の昭和59年ぐらいの研究メモですが,日生年金特約の普通保険約款の第35条第1項でプロ・ラタをやっておられる。年金の間違い誤差の範囲の場合には,誤った保険料と実際の年齢の保険料の割合で減額される。   先週,この報告書をいただいて,私はとても全部は見れなかったのですけれども,そのフランスの46頁を見ますと,日本でもプロ・ラタは実は一部やっているのですと,そこの記述を見ますと,フランスの46というところですけれども,一応申し上げますけれども,年齢とか性別の訂正については,さかのぼって保険料を調整したり保険金から差し引いている,これは,もしこういうのがあるとこれは引受基準減額原則に則っているのかなと。だから,シンプルなものではやっておられるので,まずその延長線で考えていただけないかという問題が第一点です。   第二点が,なぜこういう減額原則を導入しなければいけないのかという,そもそも論だと思うのですけれども,それは,要するに過失と重過失という,もちろん,典型的な過失,典型的な重過失というのはあると思うのですが,だんだんスペクトラムのように変わっていくところの真ん中で,片一方はゼロ,重過失行為は払いません,片一方は全額払います,これは余りに酷だろうという問題,ここが出発点であって,なぜこういうことをする必要があるかという質問がありますが,その問題意識があったからこそ,私はこの議事録を見るとやはり,これは○○委員も賛成されたと思いますけれども,基本的にはそういうところに問題があるのだという問題意識があったのだと思います。だからこそ,何かしらできないかと。   一番の問題は,重過失と故意というものは新しいルールではどうなるのか。ちょっと時間がなかったのですが,裁判実務に携わられる方とも少し真剣に議論したのですけれども,これは○○幹事とか○○関係官にも,もしおかしければ正していただきたいし,もし御意見があれば,ぜひ御意見をいただきたいのですが,この委員会でも最初の方にやりました,3か月前の脳いっ血を忘れていた,重過失だと,これは常識的に見れば故意で,こんなのを払うのはおかしいわけですね。   これは新しいルールになったら故意と認定されるのではないかというのが,まず一つの論点で,基本的にはそういうものはやはり故意と認定するだろう。どういうことかと,これは言わずもがなのことですけれども,裁判官の方が認定されているときに,要件事実を認定するときに,当然効果も頭に入れて認定するわけです。そうすると,今は故意・重過失のところで大きな線があって,過失の方は全部払う。そうすると,重過失よりひどいかどうかというところに当然焦点を当ててやるわけですから,新しいルールによって法律効果が変われば,つまり,重過失であると払う,故意だったら払わないということになれば,これは事実認定の仕方は劇的に変わるだろう。   この中にもありましたが,少なくとも重過失だという認定がなぜ起こるか。これはもう裁判官の方はお分かりだと思いますけれども,一つは上訴で訂正されたくないからですね。やはり,認定すればいいわけですけれども,結論は同じ,しかし,故意は認定ではなくて,そこは重過失だと,こうされたくないので,少なくとも重過失も認定というようなことが行われるのだと思います。   ということは,我々がおかしいと思うようなものは大体故意認定で,問題はだんだん変わっていく。例えば第一生命の告知書で言うと,最近3か月間に医師の診断を受けましたかと。例えば,全く風邪をひかない人が,ただ1回風邪をひいたというと,もうこれは,そもそもまず重要性の要件がありますから,重要性の要件の告知事項ではないという考え方もあるかもしれません。でも,これが3か月間に3回だ,単にそれが風邪だったら,またこれはちょっと微妙なところかもしれませんけれども,でも,そこでちょっと特別な頭痛がしたとかそういうことになると,これは過失の問題になるかもしれない。これが何回も増えていくと重過失になって,最後は故意になると,こういうふうに順番に程度が変わっていくわけですよね。こういうところで,もちろんだれもがおかしいというのは故意で外して,真ん中で切って,片一方をゼロにして,片一方を100%にして,そういうのがいいのかというのがまず議論のスタートなのだと思います。   それから,次に,保険料は上がるのかという,そういう議論もありましたので,こういうことをやった場合にどういうことが起こるのか。私はこれは,結局保険料は上がらないという考え方でいいと思うのですけれども,これは一方で,保険商品の中に安全率というものがあるということも踏まえておく必要があると思うのですね。それで,何かちょっとお詫びしなければいけないのですけれども,保険会社の方はできるだけプロ・ラタは嫌だということであるとすると,いただいた資料を使って保険会社の方に反論するというのはちょっと心苦しいのですけれども,この中にある記述から言うと,日本の大手の不告知の割合というのは,告反で解除した割合というのは,0.1~0.3%ということですね。これは件数ベースですが,0.1~0.3。そのうち,先ほど議論したように,まず故意で除かれる分がある。次に,従来,重過失と言われていたけれども,故意で認定されるようになって除かれる分があります。それから,この引受基準だと,本来の引受基準だと払わなくていいというのがあって,そこもまたあり得る。残りの部分がどのくらいか。つまり,本当の新しい法制度の下での重過失はどれくらいか。0.1~0.3,例えば10分の1としましょうか。0.01~0.03。金額ベースではありませんけれども,倍になる。まあ,3倍ぐらい見てもいいですよね,0.03~0.09か分かりませんが。でも保険商品には安全率というものがあって,数パーセントから,ものによっては20%もあれば,仮に安全率が低くても,社費が20も30も取っているというものもあります。保険会社のビジネスの問題としては,これを全体としてどうかという形で御覧になるわけで,これは「生命保険論集」に書かれた論文で言うと,件数ベースでも,3社で,告知義務全体で保険金で500件,給付金で2000件。多分,重過失と言うと思われるそれは100件単位ぐらいではないか,直観的にはですね。そう大したことはないのではないかと思うのですよね。   それから,次は因果関係の問題ですけれども,この因果関係というのは,多分保険の従来の理屈から言うと,重過失のところまでと,いろいろ議論があると思いますが,北欧の消費者保護的な考え方から持ってくる,そういう考え方ではないかと思います。だから,因果関係がなかった場合には保険金を払わなければいけないというのは,私はこれは強行法規にして,契約者の保護に資するような形でやればいいのではないかというふうに思います。この中にも,ドイツのところ,12頁ですか,アンゲラ・ロストさんの,契約者の利益を守るためにはこういうことが必要なのではないかと,こういう発言がございますが。   それから,もう一つ,この重過失と過失をめぐるいろいろなもめごとというのは,募集段階にもいろいろ問題があるから起こっている。つまり,募集人に説明義務というものを,しっかり説明していただいて,告知の受領権を与えるという形にすれば,相当部分解決する問題でもあるということに留意する必要があるのではないかと思います。   それで,あと,多量な10頁近くにわたっていろいろな問題点が指摘されていますが,ほんのもうちょっと1~2分いただいて,重要な幾つかの点にコメントだけさせていただくことをお許しいただければと思いますが,まず8頁,最初に保険契約者間の衡平,多分ここで言われたものとは違いますけれども,私は,重過失と過失の間の,その契約者の衡平というものをまず考えないといけないのではないかと。それから,その次の保険料の増加という問題は先ほどお答えいたしました。   次の③の厳密に知ることは可能かという問題は,これは,もうやはりそれは完全にはできないわけですね。でも,これは保険料で見ている。先ほど言われたような,全体としてリスク管理をして,保険制度が破たんしないような形で見るということになっていると思いますし,そのことは,この資料の中のフランスの中で,フランスの財務省,今ちょっと名前が変わっていますけれども,ルカンさんという方も,これは保険料に折り込み済みだと回答しておられるわけで,まさにこれは,ビジネスをやっている者の立場とも,私は同じではないかと思うのです。   それから,次に④の現物給付の問題ですけれども,これは現物給付についてはいろいろ批判があったところで,私はこの部会の議論に対して,そうだったのだろうかという疑問を持つところなのです。基本的にどういう問題があるかというと,これは議事録の中にもありますけれども,結果として受け取る給付が支払った保険料に見合っているかどうかというのは,なかなか見えづらい,こういう現物給付にすると。したがいまして,収支相等の原則が担保されていると言えるのかどうかというのは,被保険者側から見てきちんと分かるようなものにしていかなければならないということであろうかと思います。法文にそういうものを規定しないと非常に阻害要因になるというのであれば,またそれは別ですけれども,普通,保険金があってそれをあらかじめのアレンジメントによってどこに支払うという,そういう充当させるというアレンジメントをされれば別に何も問題はないわけで,まずこういう現物給付がどうかということをてこに,この問題を議論するというのは,これはちょっとよくない。木を見て森を見ずという形になるのではないかと思います。ただし,念のために申し上げておきますけれども,損保の方はこれを損害保険だと言って批判されますが,それもまた当たらない。これは,定額の保険金をあらかじめ決めたアレンジメントで一定のものに使うということですから,そういう非難は当たらないと思います。   それから,⑥ですけれども,インセンティブが失われないか。このインセンティブについてはアメリカでもいろいろ議論があって,私も法と経済学の論文を書くときに,東大の経済学の先生方とも話しましたが,これはなかなか簡単にはいかない。インセンティブに阻害があっても,いろいろな多様な要因があって,それが打ち消しあって実証研究はなかなか難しい。数少ない検証された例は,車の後ろのブレーキが二つの場合と,上にも三つ目を置いた場合に,事故が著しく減少する。規制インパクト分析の典型ですけれども,そういうのはありますけれども,こういう規範ベースでインセンティブが効くかどうかという,そういうようなものはなかなかない。この資料の中の英国の26頁ですけれども,そういうインセンティブの問題は告知を改善することで解決すると,タマラ・ゴリエリさんという方が言っておられて,まさにそのとおりで,私,家内がつい最近生命保険に入ったのですが,その過程をずっとじっと見ていると,立派な募集人の方で感心したのですが,家内はこういうことをインセンティブだとはもちろん考えていないわけですよね,常識的に。そういうことを知らない人も,それは知らない。だから,余りそんな御心配になる必要はないというふうに思います。   もうちょっとお許しください。9頁。 ● 簡潔にお願いします。ほかの方の意見も聞きたいので。 ● はい,そうですね。あと,立証責任の点で,9頁の上から4行目ですか,これは,立証責任を保険者に課すことでいいと思います。フランスでもそうなっております。   長くなりましてまことに恐縮ですけれども,どうもありがとうございました。 ● ほかにいかがでしょうか。○○委員。 ● それでは,ただいまの話は生命保険につきましてのお話を伺いましたので,損害保険という立場から意見を申し上げたいと思います。   損害保険にはさまざまな保険がありまして,こういう形のプロ・ラタになじむものもあれば,余り適さないものもございます。そういうことから,このプロ・ラタ主義というものにつきまして,一律に強行規定として導入することについては,やや問題があるのではないかなというように考えておりますので,任意規定というふうに位置付けていただけないだろうかなというふうに思っております。   どういう点が問題があるかという点でございますが,例えば具体的に一番ポピュラーな自動車保険を例にとってみますと,保険料の割合で,比率で削減して払うという点でございますけれども,自動車保険におきまして典型的な告知義務違反というのは,割増・割引の等級ですね,今,自動車保険に入る場合には等級制度がございまして,何等級か,等級によって保険料が変わるのでございますけれども,初めて自動車保険に入る場合には6等級,それから,1回事故を起こすと3等級ずつ下がっていく。事故がなければ,1等級ずつ増えていく。こういうことになっておりまして,保険料が増減するわけでございます。ところが,一方で,これは会社によって大分違いますけれども,6等級で車両保険の免責金額が例えば5万円で引き受けるという場合で入った場合,事故があって,実は等級の誤りがあったという場合に,実際はその等級,本来の等級であれば,免責金額は10万円でしか引き受けられない,例えばこういう場合には,なかなか保険料の比率ではすぐに計算できないということですね。あるいは,非常に事故の多い方は高い割増がかかるという,そういう1等級というのがございますけれども,例えば会社によりましては,その1等級につきましては対人賠償しかお引受けしないとか,あるいは搭乗者傷害保険の支給金額を非常に抑えてしか引き受けられない,こういうことがございますので,標準的な契約で入った場合というのは,必ずしも契約の比較ができないということがございます。いずれにしましても,こういうようなうまく機能しない面というのがあるということは,ぜひ御理解をいただきたいと思っております。   それから,最後でございますけれども,やはり消費者の分かりやすさという点が非常に大事だと思うのですね。削減払というのはなかなか分かりにくい。これは,損害保険には二種類ございまして,自分の財産とか自分のけがについて払うというそういう保険,これは自分が間違った申告をして自分が受ける金額が減るわけですから,これは分かりやすいのですけれども,賠償責任保険という第三者に対する賠償金を払うという,こういう保険につきましては,例えば50%削減して払うというときに,被害者からすれば,なぜ50%しか払ってくれないのだと。例えば治療費用とか賠償金,これを半分しか払ってくれないということに対して,保険会社が,実は,契約した,つまり加害者の方が保険契約に入るときに,告知を誤ってうそをついて入ったので,その保険料の比率で半分しか払えないのです,だから,治療費も半分しかお支払できませんということを御説明するというのはそう簡単ではございませんし,そういうことは,結局,保険会社の担当者が被害者の方と相当トラブルが発生するということがございますので,こういうなかなか説明しにくいという保険があることも,ぜひ御理解いただきたいと思います。   以上でございます。 ● ○○委員。 ● 二点だけ申し述べたいと思います。   一点目は,先ほど○○委員からお話が少しありました重過失に関連してなのですけれども,重過失の考え方については前回の部会資料10の11頁の中にも書いてありましたが,注意を著しく欠いているという考え方と,ほとんど故意に近い不注意という考え方の二つあるというふうに書かれてありましたけれども,損保としましては,ほとんど故意に近い不注意だけは,故意と同様の取扱いをしていただく必要があると考えています。   (問題点)1の⑤に,故意と重過失を明確に区別することは可能かとありますが,個別事案において故意の立証は困難であることは御理解がいただけると存じます。不正な告知でも,それが立証できないためにプロ・ラタで一定救済されるということになりますと,まさに正直な方との公平を欠いて,不誠実な告知が増加すると思っています。少額の保険料の積み上げによる料率制度そのものが維持できなくなり,それは,少しの不正の増加でも影響は甚大となるということもあって,結局は保険契約者全体の利益を損ねることになると考えています。   二点目は,これも少し議論がありましたが,因果関係不存在の特則についてです。資料13頁の(後注)の(補足)1で強行規定とすることが提案されていますが,因果関係不存在の特則の取扱いについては,任意規定としていただきたいと考えています。   例えば,第三分野においては,内臓の病気を告知しなくて内臓の病気にかかってしまえば因果関係があるということでしょうし,火災保険においては,火を使うレストラン等,告知しないでちゅう房から火が出てしまったような場合には,事故と因果関係があると言えるでしょう。これに対して,自動車保険において,先ほども事例が出ましたが,割増・割引の等級誤りの場合,一番事故歴がよくない1等級なのを偽って,フラット,普通の危険度の6等級で加入した,それで事故に遭いましたというような場合に,等級と事故との間には,直接の因果関係ありとは言えないと思いますので,幾ら不正の告知にあっても,いつも免責は問えないことになってしまいます。   どうしても強行規定とされるのであれば,このような危険測定,重要事実ではあるけれども,事故原因となり得ない告知事項について,告知履行の確保手段をご検討いただきたいと考えます。   以上です。 ● 実務からは,ややプロ・ラタの問題点の御指摘が相次いでおり,それに対して学者委員の一人からプロ・ラタを支持する意見が出ておるところですが,どちらの立場にせよ,お手元の場合分けした表で考えれば,このA案とB案でどう違うのかということは,結局,重過失による告知義務違反があった場合の取扱い,A案の方だと,2段目の一番右で×印が付いており,B案だとそこが△印になっているのですね。減額というそのあたりで,故意か重過失かというところで,A案とB案とで結論が変わってくる。   そのあたりの認定がどうなるのでしょうかというのが,この問題を考えるときの一つの重要なポイントになるかと思うのですが,これは先ほどから出ているように,ルールが決まればそれなりに認定ができて動いていくのではないかという御意見と,そこは難しいという御意見,両方あろうかと思いますが,このあたり,裁判実務のお立場から何かコメントというのはございますかね。あるいは,事務当局としても何か。   どうぞ,○○幹事,もし何か。どんなところでしょうか。 ● 実際にどういうケースを念頭に置いて考えてよいのかというのがちょっと何とも言えませんので,ここでは,やはり在るべきルールをつくっていただく場かと思っておりまして,裁判実務になった場合にどういう故意と重過失の認定の仕分けになるかということは,具体的なケースを前提に議論しないと,何とも一般的には言い難いとしか,ちょっと申し上げようがないかなと思っております。 ● 故意と重過失の認定なんてとてもできないと,そういうことではないのですね。 ● それはないと申し上げていいと思います。 ● 前に第一読会で出てきたときには,これは要するに後出しじゃんけんで,とても消費者の納得は得られないというような感じの御発言がございましたが,今日は多少整理して提案されているのですが,○○委員,このあたり,今日の御説明を聞かれまして,そのあたりいかがでしょうか。 ● 拝見させていただいて,言っていることは第一読会と全く同じでございまして,基本的には,この表を見させていただいて,それからこれを読ませていただいても,消えない思いがありましてね。プロ・ラタというのは,故意と重過失をどう見るか,重過失の中の当然引き受けるものをどうやって見るかとかというようなお話が出てきてしまうと,大変,加入者側,保険契約者側のサイドから言うと,では告知書をきちんとまじめに書くという部分のインセンティブの問題はどうなるのかという問題もありますし,それから大変制度が,私先ほども申し上げましたけれども,基本的に,一番最初に○○委員の方が先ほどこれの整理をしてお話をなさったときに,具体的に告知書が簡単で明瞭で分かりやすいものである限りではという,先ほどそういう前提がございました。   そういう前提があるのであれば,それは現実に我々保険契約者が加入するときに,告知書はそういうものであるのだとすれば,では,それを超えてプロ・ラタという制度を取り入れて,重過失でもなおかつ拾ってくれるような部分があって,それが割増保険料が見えるのだか見えないのだか,割増の削減払が見えるのだか見えないのだか分からないというような,そういうところに保険契約者が立つのが,本当にその保険契約者にとっていいのだろうかと考えると,すごくシンプルでとても雑ぱくな言い方をすれば,大変制度をややこしくしたのに,ややこしくしたのに見合うだけの保険契約者側に利得があるのだろうかという,そこをどうしても考えてしまいまして,そうすると,再三申し上げているように,保険はとても分かりにくくて,なかなか理解し難いという部分があるのにもかかわらず,さらに,面ようにとは言いませんけれども,複雑にややこしくするという制度を取り入れて,だから,ほら,保険契約者に利することになるのだよと言われても,なかなかそこのところは承服し難いという部分があって,なるべくシンプルにしてほしいというふうにお願いをしている部分があるのに,こういう形であなたたちに利得があるのだよと言われても,利得が本当にあるのだろうかというのが,この表を拝見していて,現実の問題として思ってしまうのですね。   その辺を考えると,今回の法改正の趣旨がやはり,保険法を分かりやすくして,みんなに分かってもらいましょうという部分で言うとなかなか,むしろB案というよりは,従来どおりでどこが問題なのだろうかという部分にどうしても行き着いてしまうという気がいたします,大変申し訳ないのですが。   それで,むしろA案の中の「因果関係がない場合を除き」と書いている部分の方が,消費者トラブルに実はなりやすい。例えば糖尿病があったり高血圧があったりすると,随分広くとられてしまって,因果関係というところでざっくり持っていかれて,それは因果関係があるのだから払えませんよみたいな,そっちの方のトラブルの方が実はとても多いのですね。   だから,そういう意味では「因果関係がない場合を除き」は,この法文が整理されていないのだとしても,その辺は,その因果関係をもう少し明瞭にしてほしいというのは,実際の実務者レベルで考えていることです。 ● ○○委員。 ● 余りしゃべるのはいけないので,簡単に一つだけ,○○委員にお伺いしたいのですが,従来,重過失で払われなかった方たちが保険金を払われるようになる。それでも,やはりよくないわけですか。 ● 従来払われない人たちが,今までのずっと整理で申し上げれば,重過失のところの表に対して,見させていただいた上で言うと,重過失の人に対してばっさり払わないのは気の毒でしょうというのが,これが出てきたものなのだろうというふうに。 ● ここでは,そうではないと思うのですけれども。 ● はい。今,現実には,軽過失だと払うことになっています。日本の…… ● そうですね,軽過失は払われているわけですよね。 ● 払われているのですね。重過失の部分で,重過失の部分,重過失と故意の極めなんて,私ごときにはとてもできませんけれども,重過失で本当に,それでも,保険の引き受けられるものに該当するものがあって,保険金を削減でも払うのだというようなものが本当にあるのだろうかと,そこがよく分からないのです。 ● ですから,そこ,私の言い方が悪かったのかもしれませんが,従来,重過失だから保険金を払わないというものが,新しいルールでは,そのうちの一部は故意と認定される。しかし,やはり重大な不注意だということで払われないというのが,これによれば払われるようになるわけですよね。   保険会社は,その内容をいろいろポイント,これはノウハウだから,表にお出しにならないのですけれども,非常に細かな段階をつけてそれを,昔だったら10段で,今は大分変わってきたのだと思いますけれども,やっておられて,救済される部分が必ずあると思うのですよね。それはなくていいというお考え。どうも,なおかつ,それはもうないのだと考えておられるからそうおっしゃっているわけで,そうではなくて,やはりそれはあるということではないか,そこを。 ● ○○委員,いかがですか。 ● すみません。ないのだと考え,実際上,どんなものがあるのだ,あったら見せてほしいというのがまず一つございます。 ● 本当は。見せてくれないから,問題なのですけれども。 ● それから,普通我々保険契約者側は一所懸命,入るときには告知書には誠実に答えようとするのです。誠実に答えてきちんと払ってもらいたいということなのです。誠実に答えなくても,重過失があっても,それでもうまくやって払ってもらいたいと思って入る人は,それは私なんかの感覚から言うと論外なのですね。すみません,こういう乱暴な言い方をして。   だから,きちんと告知をして払った人と,イージーゴーイングで,むしろ重過失的に,故意ではないけれども重過失的にお入りになった方が,同じベースに立って,同じではないとおっしゃるかもしれないけれども,同じベースに立つというのは,やはり,本来保険契約者が置かれているシチュエーションとしてはまずいのではないかと私は思っているのです。 ● 同じベースに立つのではなくて,減額はある。そこは。   ○○委員。 ● プロ・ラタ主義についての問題は,先ほどから○○委員,あるいは損保の委員の方々の言われたとおりで,一番気にしているのは,やはり正確にきちっと告知するインセンティブが下がっていくのではないかと,そのことによっていろいろな弊害が出てくるのではないかということとか,あるいは技術的な問題とかいうのがあるのですけれども,一方で,このA案,B案を比較したときに,要は救われるかもしれないという人が,この表で,極めて粗い議論として言えば,重過失で,因果関係が,まあ,因果関係がなければ払っているわけですから,重過失があって,しかも因果関係がある人を救いに行くということですよね。   しかも,それは2年以内,告知義務違反を問うのは2年以内ですから,重過失で,2年以内で,告知しなかったことと因果関係があって死亡したケースというのは,本当に救いに行かないといかんのですかね。ということも,実はちょっと議論の前提としては置いていただきたいなと思うのですけれどもね。   全体の制度として,要は告知に対するインセンティブが落ちるという問題があるのですけれども,これでよって,要は今の保険会社の実務と,これで変わるところというのはそこだと思うのですね。2年以内の告知義務違反であり,しかもそれが重過失ですと。しかも,告知されなかったことと死亡の因果関係があるケースを救えという議論なのですけれども,それが果たしてこういうプロ・ラタ主義を入れてまで保護しないといけない人なのか。   それが一方で,先ほどから○○委員が言われていますけれども,全体として制度をややこしくするとかいう中で,あえて踏み込まないといけないのかというのは,ちょっとよく分からないところがあるのですけれども。 ● ○○幹事。 ● 今の○○委員の御指摘の点ですが,故意は認定できないけれども重過失があるというときに,それは,やはり告知すべき事項かどうかについて,だれもが自信を持って答えられる領域であれば,多分故意の認定ができると思うのですね。   それは,質問書の分かりやすさとか,あるいは募集の過程で募集人がどういう態度をとったかとか,そういうファクターと兼ね合わせて判断しないと,やはり契約者がそれをどういうふうに理解してどういう告知をしたかということは,やはり決まらないのだろうと思っておりまして,その場合に,今までの判例法でどうやったかといいますと,重過失が認定できる,これについて保険金をなお払おうと思うと,保険会社側の過失を認定した上で全額払うという選択肢はなかったわけですね。ここは,やはりオール・オア・ナッシングで,一番判断が難しかったところでありまして,ですから,在るべき保険料と実際に払われた保険料の間でどう調整するかということが本当の問題なのか,お客さんが判断ミスで,あるべき告知ではない告知をしたときに,その原因が加入者と保険会社側,両方にあるときに,どう判断すべきかという問題だと整理します,そちらのところが,結局,重過失の判断のところに現れてくるのかなと。   軽過失であるとか,あるいは重過失であるとか,故意であるとかというのは,結局,告知すべき事項を契約者がどうとらえて,それを告知すべきである,すべきでないという,どういうふうに判断したかという,そこの判断過程の問題だと思われますので,基本的に,故意で整理できる問題はもういいと思うのですね。重過失の問題というのは,そういう判断ミスの問題として考えるのであれば,やはりそれは,ここでプロ・ラタの議論でされるのか,前に出された比較過失といいますか,過失相殺的な処理といいますか,どちらかの形でそれを救ってあげる方が,やはり裁判所としても判断しやすいのではないかなという,そういう気がしているのですけれども。 ● ○○委員。 ● 今の○○幹事の御指摘は,重過失か軽過失かの,むしろ認定の問題なのですか。それとも,重過失にいっているのだけれども,救ってあげるということなのですか。 ● 重過失のカテゴリーにどういう契約が来るかということを考えたときに,告知書を見て,非常にクリアな質問があって,それに対して,過去2年とか3年とか,こんな大きな病気について忘れることはないだろうということが言える場合には,もう故意で認定できるわけですね。それが,だんだん,病気の程度が余り重くないものになってきて,しかも期間が古くさかのぼってきたりすると,それはだんだん人間の判断,告知者の判断としてブレが出てくる。そこのところを見て,そういう問題だというふうに見ておかないと,多分,この重過失が何をとらえようとしているのかというのは分かりにくいのではないかと思うのですが。 ● ○○幹事。 ● これは第一読会のときにも意見を申しまして,今回も記載されていないので,やはり賛同いただけなかったのだなと思うのですが,まず一点は,故意と重過失で効果を変えるべきかどうかというのは,先ほど何人かの委員の方がおっしゃっているように,ただ単に,もともと分かりづらい保険契約について余計に分かりづらくなってしまうということで,それをする意義があるのかというところは疑問なので,プロ・ラタを,故意又は重過失のところで効果を分けるというのは,余り有意義ではないのではないかと思うのですけれども,仮にそれを法律のレベルでそういう効果の違いというのを書き分けないとして,約款とかで書けるとしたら,それが,要件を故意と重過失で分けるべきなのかというのが前から疑問でして,それは,不実告知,告知しなかったその事故の,「重要な」という縛りはもともとあるのですけれども,その「重要な」の中で,これを告知しなかったら,さすがにこの保険契約を締結しなかったというのと,それから,これを告知されていたらもっと違う条件だったはずだとかというものと,多少,不実告知の対象の事項によって違うのではないかと思いまして,そちらでのプロ・ラタということは,約款レベルの話になってしまうのですけれども,あるのではないかなと思っております。   これは前も申しましたけれども,やはり契約締結の入口のところで,相手方が知らなかった重要な事項があるということは,契約締結にどういう影響を与えるかというのは,民法のレベルでの双務契約でのその契約の締結の時点で隠れた瑕疵があった場合に,それを知った場合に,基本的には損害賠償で,それがあるがために契約の目的を達せられないときに解除ということになるかと思いますので,そこの解除できるかとか,損害賠償かというところについては,主観では分けなくて,その瑕疵のレベルで分けるかと思うのです。先ほど申しましたように,「重要な事項」というくくりがまずあるから,だから,もう一律,故意,重過失であれば解除なのだというふうになるかというと,今度,質問方式になりましたので,質問されている事項が,まあ,すべて重要でしょうが,それの告知義務違反がみんな解除に至ってしまうような事項なのかということは,整理できないなりに疑問は今も残っております。 ● ○○幹事。 ● この問題について,私は,第一読会のときには難しくて発言しなかったと思うのですが,先ほどの被保険者同意については私,実務家の方たちがいろいろ言われたのですけれども,あれについては余り説得力を感じないというように申しましたが,この告知義務のプロ・ラタ主義に関しては,逆に,特に生保実務家の方がこれを導入したときに懸念されている問題については,説得力があるというふうに感じております。具体的には,特にインセンティブが低くなってしまうのではないか,正確に告知をするインセンティブが低くなってしまうのではないかというところが,私もその可能性は十分にあるなというふうに思っています。   ただ,これも損害保険と生命保険ではあるいはこれは違うのかなという気もしておりまして,例えば損害保険だと,プロ・ラタ主義が採用された場合,被保険者が重過失で,ただし告知をしないと,被保険者に発生した損害額が全部てん補してもらえなくなるわけですね。例えば,火災で3000万円の損害が生じたけれども,1500万しか保険金を払ってもらえない。1500万は自腹で負担しなければいけない。あるいは,自動車事故で1億円の損害賠償義務を負担したけれども,5000万円は保険金を払ってもらうけれども,5000万円は自分で負担しなければいけない。   そういうふうに損害保険の世界では保険金が減額されて,損害額が全部てん補してもらえないということの心理的プレッシャーというのは,かなり大きいのではないかと思うのですね。フランスの調査で確か,信用生命保険の場合には,1億円の債務で5000万円しか保険金が出ない,5000万円の債務が残ってしまうから,正確に告知しようというインセンティブはあるのだというふうにありましたが,これは損害保険と同じようなことかなというふうな気がしております。   これに対して生命保険というのは,もともと保険料をたくさん払えば払うほど,それに比例して保険金も高くなるという,そういう保険商品で,保険金額を幾らにするかというのは,保険料負担との見合いで各保険契約者が自由に決めることができる,そういう商品なのですね。そのような保険商品で,果たして正確に,注意深く告知をしないと保険金額が減額されてしまうかもしれない,逆に,正確に告知すると満額保険金が支払われると,そういうルールをとったときに,正確に告知しようとするインセンティブがきちんと働くのかどうかということについては,やはり疑問を感じております。   確かに,正確に告知すれば保険金は満額もらえる,しかし,保険料は高くなる可能性があるわけですね。逆に,不注意にいいかげんに告知すると,プロ・ラタで減額されるかもしれないけれども,保険料は安くて済むかもしれない。かつ,これは現在の保険実務を前提とすると,解除権の行使期間を2年間に限定していますから,2年間何もなければその安い保険料のままで確定して,保険金は満額もらえるということになるわけで,こういう状況,現在の生命保険実務を考えると,プロ・ラタ主義を導入した場合に,正確に告知しようというインセンティブはやはり余り働かないのではないかという気がするのですね。   だから,そういうことからすると,生保実務家の方が懸念されている問題というのは,私は割と納得できるというか,共感するところでございます。 ● ○○委員,どうぞ。 ● 以前私,特に企業の場合には正確な告知がなかなか難しくて,結果的に重過失と言われても仕方がないというような局面も大いにあり得るという話をさせていただいたのですが,そうしたお話をしたのは,まさか因果関係の不存在の原則ですか,例外を撤廃するわけではないでしょうね,維持してくださいと,そういうコンテクストでお話しした次第です。だからプロ・ラタ主義を支持したとかいうことでは全くありませんので,それはちょっと誤解のないようにということです。   経済界全体の意見というのを私は言う立場にありませんが,経済界の中に身を置く一人として,基本的な発想というのは,先ほどの別の議論でも言いましたけれども,取引費用を安くしてほしい,もうこれに尽きるわけです。したがって,制度変更によって取引費用が高くなったら,結局回り回って取引先であるユーザーに回ってくるというのは,もう自明のことでありますので,今日は余り議論されていませんけれども,私が一番心配しているのは,もしプロ・ラタ主義を導入した場合に,そのプロ・ラタの程度・基準・内容について本当に明確な規律ができるのか。やはり,さじ加減でプロ・ラタ主義にしたけれども,その金額について個々の保険ユーザーが不満であるといった場合に,規定が,商法の考え方がそこが明確にしきれない。   または,いくら商法で規定しても,それを支える技術ですね。先ほどお話のあった英国,フランスのホームドクター制度のように自分の健康状態がずっと管理できるのであろうかとか,個人情報に本当にアクセスできるのであろうかとか,こういうようなことで,結局は,要は社会的な背景の事情でそこのところはあいまいなままである。そうすると紛争になる。紛争になれば,最終で裁判になる。裁判になると,その裁判の弁護士費用からコストは全部保険会社が負担するし,国家も負担するわけですけれども,それがまた保険料にはね返ってくるというふうに見るわけですよね。   したがって,取引費用が高くなるということはもう明らかであろうと。では,その取引費用が高くなるようなことは基本的には,よほどのメリットがない限りは,それをコンペンセートするメリットがない限りは,導入というのは余りロジカルではないなと,こういうふうに現時点では思っています。 ● ○○委員,何かありますか。 ● 短く一言。○○委員の賛同を得られなかったのは非常に残念なのですけれども,今の取引費用の問題は,例えばイギリスなんかは,オンブズマンという制度とかなにかで,結局ほとんどもうみんなこちらへ行ってしまっているわけですよね。それで,プロ・ラタで,消費者保護,重過失などを消費者保護にやろうという流れの中で。ですから,ちょっと何か一時代前に戻ったような感じがいたしまして。   支払基準の問題は,今あるマニュアルを二つに分けて,公開できるものと,そうでないものに分けて,それで裁判所とか何かには一貫した形で出していく。それは役所の監督,これは事業方法書上の問題で,規定された引受基準の細目という形で位置付けられると思いますので,裁判所に出したものとか分かれて,使ったものというのがもし矛盾したもの,その都度違ったものが出れば,それは監督の対象になるという形でやればよろしいですし,過去の引受けというものができないのか,どうやって確認するのかというのに対して,この中にもありますけれども,その当時の同じような引受けというのはあるだろう,それと比較すればいいではないかと,こういうことで,私は○○幹事と意見が違うのは残念なのですが,インセンティブのところは全く同意できなくて,そんなに効くようなものではないというふうに思います。   長くなって申し訳ないのですが,これでおしまいです。ありがとうございました。 ● ほかに,この点についての御意見はございませんか。   念のため,損保で先ほど,因果関係の不存在の特則をどうするかという御指摘があったのですが,その前提として,等級を間違って告知して,保険料を安くして加入してしまったと。これで,故意であればこのB案の方でも,支払はゼロにできる。先ほどの1級と6級をごまかして入ったので,まあ,こんなのは故意というふうなことになるだろうと思うのですけれども,何かの故意性がないけれども,等級を一つぐらい間違えて告知して,それで契約が成立したというときに,これA案だと,その場合でも,まあ,ゼロにできる。因果関係の特則をどうするかということはまた別として,告知義務違反が成立すればゼロとできる。B案の方では,そこは何らかの減額をして払うということになるのですが,それでいいのかどうかということで,ただ実際は,全額,A案でゼロになるということであっても,因果関係不存在の場合の特則を入れれば,結局払うことになって,契約者としては保険金がもらえる。   けれども,○○委員が御指摘のように,因果関係の不存在の特則をもう外してくれと,強行法的なところから外してくれということになると,割と比較的軽微な告知義務違反なのだけれども,それで,重過失なのだけれども,やはり支払はゼロになる,こういうことでいいというお考えなのでしょうか。 ● 必ずしもゼロでなくてはいけないとは思っていないのですけれども,先ほど申し上げましたように,やはりインセンティブが落ちないような形の告知が履行できる手段がとれるような形にはできるようにしておいていただきたいという意味です。 ● 減額というのでは,インセンティブは大幅に落ちるということですか。 ● と思っています,はい。 ● という御意見です。   ○○幹事。 ● 今の点なのですけれども,損保にもそういうことはあると思うのですが,生保にも,年齢の告知を間違えたというケースだと,実際は,亡くなられても,恐らく修正して保険料分を取って,あるいは比例減額されるのか,そういう処理はされると思うのですね。損保実務は私は存じませんけれども,そこが比例減額するようなことはされないのですかね。今申し上げたような例は,因果関係がその事故との関係ではないというような,通常はないというふうに考えられるようなケースだろうと思うのですけれども。もしそういうところで減額できるような,比例減額みたいな形だとすれば,そういうパターンは,一応告知義務の問題としても別途あるのだろうなというふうに思うのですけれどもね。   それと併せて,もうついでに申し上げますが,今問題になっている重過失で,因果関係があるというケースでのプロ・ラタ導入の点ですけれども,結局,因果関係があるケースですと,パーセンテージは分かりませんけれども,恐らくその事故を告知されていれば引き受けられなかったというようなケースが当然,その因果関係があるというケースにはかなりある。一方で,それでなおかつ引き受けられるという,割増保険料なり何なりして引き受けられるというケースと,一応,二様に分かれてくるかと思うのですね。   プロ・ラタを導入する部分というのは,結局その引き受けられる部分に限られるというので,この△印がついている部分も結局その△印の中身が二つに分かれるということになって,△印の下の方は×印になって,上の方が○印になるのでしょうが,その○印も結局減額されるという形になっていくのですけれども,私もそこはまた非常に歯切れが悪いのですが,先ほど申し上げた,因果関係がないケースで比例的な保険金支払の処理ができるのであれば,場合によっては引き受けられるケースについてはプロ・ラタ的な処理もできないわけではないなというふうな,まだ雰囲気程度なので申し訳ないのですけれども,そういう対応関係で考えておりました。でも,やはり実務的に相当難しいなと言われるのであれば,まあ,それはやむを得ない部分もあるのかなというふうには思っております。 ● ○○委員。 ● 当初,冒頭に○○委員からも約款の話が出ておったのですが,今,○○幹事がおっしゃったように年齢が間違っていたとか,明らかに価額の訂正ができるという場合はそういうことを例外的にやっていますけれども,全般的に,この医的引受けのところについてプロ・ラタを入れているということではないわけですね。そういうことで言うと,医的の問題については,もう先ほどからの議論のとおりで,我々としては反対と,現行どおりでお願いしたいというのがあれです。   そういう意味で,年齢とか性別が間違っていた,明らかに訂正できる部分は,やっています。ただ,そのことをプロ・ラタと言うのかどうか,ちょっと私はよく分からないので,それをプロ・ラタと思ってはいないのですけれども。 ● はい,どうぞ。 ● もう一点,ついでに言えばですが,重過失のところ,概念的に重過失,先ほど少し御説明されていましたけれども,一般的に判例上に出てくる表現ですと,要するに,故意に比すべき著しい注意欠如の状態というのが一般的な表現で,保険法などでも出てくるのですが,そこで言っているその著しい注意欠如の状態というのは,最初についている修飾句としての「故意に比すべき」というのは,非常に過失の中でも,もう故意と見まごうばかりのレベルの著しい注意欠如状態ですよと,こういう限定をされておりますので,実際のところ,重過失の幅は,そんなに大きな幅で認められるわけではないはずなのですね。だから,過失が10あるとしたら,上のせいぜい1割か,あるいは5%という,故意に近い部分のそういう接近的なレベルだと思うのです。   そうすると,プロ・ラタ導入ができたとしてもかなり限られているなという気はいたしますので,それで実務的にそこまで限られた部分についてプロ・ラタを導入して,さて,どれほど意味があるかと言われるとちょっとどうなのかなという気はしているのですが,しかし,そうであったとしても,全く善意で重過失というケースがないわけではなくて,この間の判例などでも,これは故意と言うか重過失と言うか,もうぎりぎりのケースとしてあるのは,例えば,自分はちょっと体調がおかしくて,医者が診たところ,「精密検査を受けた方がいいですよ。」と言われて受けたところ,「何もありませんね。」と言われた。それを二回受けても何も出てこなかった。しかし,結局はやはり疾病がありました。これを告知しなかった。   そのしなかった告知義務違反が問われたのは,結局,精密検査を受けなさいと言われたということに対して,そういうことを言われましたかと聞かれて,それはノーと答えているという点がいわば故意の告知義務違反ということになって,告知義務違反が問われるという格好になるのですが,しかしその点は,一般の人から言うと,検査を受けても特に何も見付からなかったという点から言うと,自分は大丈夫なのかなと思ってしまっても不思議はないなと,こういうようなケースだったかと思うのですけれども,それは,ひょっとしたら,一般的な考えでは重過失になるのかもしれない。   こんなときに,御本人は別に保険会社をだまそうとしているわけでも何でもなくて,ただやはり判断をミスしていると,こういう善意者について最後どう判断するかというところで,オール・オア・ナッシングでいいのですかという問題になって,これが非常に私,悩んでいるというのが実際でございます。 ● ○○委員。 ● 今おっしゃっていただいた例というのは,割とよくある話なのです。それは,先ほど申し上げたように告知書の書き振りが大変よくなかったというか,不明瞭であるというか,そこをきちんと拾えるように書かない告知書が悪い,そこの部分がまずはあるのですけれども,でも,そういう例がないわけではありません。   それが重過失かどうかという話は,個々の例によるのでしょうけれども,私なんかの普通の感覚で言うと,故意に近い重過失と呼べるの,というようなふうにはなります。   ただ,告知書がどう書かれているかということとの,それこそ見合いだと思いますから,その辺はそういう話だと思うのですけれども,何で先ほどからプロ・ラタがややこしくて分かりにくいから,そんなに利益がないのにやりたくないみたいなことを言っているかというと,基本的にはやはり保険は,再三申し上げているように本当になかなか分かりにくい。入るときも,払ってもらうときも,それから途中の経過においても,大変分かりにくいルールがいっぱい並んでいる制度だというふうに思っていると,やはり入るときに何を頼るかというと,公平で透明でシンプルだという,そういうルールにきちんと制度がなっているということを頼って,きちんとすればきちんと戻ってくるだろう,適当にやっておけば,幾ら戻ってくるか分からないけれどもというのだったら,やはりそれでは信頼に耐え得ないのではないのかなというふうに私は実は思っておりまして,それで再三先ほどから申し上げております。 ● ○○幹事。 ● やはりこの問題を考えるときには,重過失といっても実はかなり故意に近いものに限定的にされていて,むしろそれ以外の重過失は,本来の民事上の重過失の大部分はオールで払われているという現実があって,オール・オア・ナッシングの厳しさというのは逆に振れているようなところが現状にはある。それは,要するにオール・オア・ナッシングというのがかなり厳しいので,払わないというのはもう,故意あるいはそれに準ずるものというふうに限定されているというのがまず大前提なのだろうというふうに思います。   その上で,かなり限定されているぎりぎりの重過失の部分でどういう政策的な配慮をする必要があるのかという,かなり限られたテーマなのだろうというふうに思うのですが,重過失のその部分ですね,ピンポイントの部分というのがかなり限定的だとすると,私はちょっと○○幹事などとは意見が違いまして,そんなもうぎりぎりのところをねらって,インセンティブが衰えるということはまずなくて,もう普通にやっているわけです。普通に告知していなければ,ほとんどの場合はアウトなわけですから,そんな限られたところに入るかもしれないと思っていい加減にしてしまえば,ほとんどアウトになってしまうということですから,実務はそんなに変わらないだろうと私は思っています。   ですから,むしろ逆に言うと,インセンティブ論で,告知の動機付けが下がるからかえって弊害が多いという,そういう議論にはむしろならなくて,結果においてここにはまってしまった人をどうするのかという議論なのではないかなというふうに,私は実は思っています。   そのときに,結果において,はまってしまった人には二種類あって,まさに今,○○幹事がおっしゃられたような,ある意味では自分の日常生活における注意散漫の問題,個人のレベルでのかなりずさんな生活態度等が反映されてしまったという場合と,もう一つが,やはりちょっと○○幹事が先ほどおっしゃっておられたと思うのですが,だれかがそこに何らかの要素を加味したことによってそこにはまり込んでしまったというケースが,もう一つあるのかなというふうに思っています。   これ,両方救うのか,それとも後者だけでいいのかという観点があって,私は,もう前者の方に関して言うと,かなりの部分でその人がよほど,一般の人から見ても随分ずさんな人だったですよねという人を救うという世界になってしまうので,そこは従来どおりでいいのかなという感じはするのですけれども,現実の実務の中で生じてきていて不満感があるのは,私は,募集のプロセスの中で,何となく勘違いさせられるようなプロセスがあったために,ここにはまり込んでしまったのだという不満感みたいなものが解消されるのかどうかという,ここだと思うのです。   そうしますと,以前事務当局の方から御提案があった,いわば告知義務違反を誘導したとか,そういった別な要素が加味されたときの救済措置というもので,処理,ごく例外的な処理をもう一つ用意しておけば,下手にここでプロ・ラタを導入するまでもなく,社会的に問題となっているものは解決できるのではないかなと,そんなふうに感じています。 ● ほかにこの点,ございますか。   大体意見の分布は以上のようですが,何か事務当局,この点ございませんか。   プロ・ラタを離れて,因果関係の不存在の場合の問題というのは8頁に指摘されている。事務当局としてはこれ,8頁の(問題点)3のところで,証明責任の問題は今のとおりでいいでしょうかという,そういう問題提起ですか。 ● はい。 ● その他,因果関係のところはどうでしょうか。   仮にA案を採るとして,今の因果関係不存在の場合の救済というのを外すという意見と残すと,それから,残す場合も任意規定なのか,強行規定なのかと,そこら辺のいろいろなことがあって,損保の方からは,少なくとも強行規定としては外してほしいということがございましたが,そこら辺はどうなのでしょうか。A案を採るとなると,やはり因果関係の不存在の特則というのは,非常に重要な救済のためのルールという位置付けになろうかと思います。   それから,○○委員から先ほど,因果関係の不存在はなかなか認められない,そういう御指摘もありましたですよね。そのあたり,何かこの際,御意見はございませんでしょうか。   証明責任がこれ,今契約者側というふうに普通は考えられているのですね。それは,やはり何か問題があるということではございませんか。では,そこはそういうことで,証明責任のところはそれでよろしいでしょうかね。   それでは,今日またいろいろ御意見をいただきまして,A案,B案それぞれの,特にB案の問題点はいろいろ御指摘いただいたところで,これを踏まえてなおどうするかというのを検討していただこうかと思います。   それでは,先へ進みまして,今度は15頁の一番上,「(6) 生命保険契約の無効・取消しによる保険料の返還」の問題でございます。   まず,事務当局より説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。   本文では,保険契約が無効であったり取り消されたりした場合の保険料の返還について問題提起をしております。   この項目は,第一読会で御審議いただく機会がなかったことから,本文では両論を併記するという形にしておりますが,中間試案においても両論を併記するかどうかは,本日の御審議を踏まえてなお検討する必要があると考えております。なお,この項目については,詳細な説明を保険法部会資料8の8頁以下の(補足)に,これは以前お配りした資料でございますが,そちらに記載しておりますので,併せて御覧いただければと思います。   まず,本文の説明に入ります前に,保険法に何も規定がなかった場合にどのような結論となるのかを確認しておきたいと思います。   保険契約が無効・取消しの場合は,民法第703条,あるいは第704条により,保険者は不当利得として受領済みの保険料を返還するのが原則となります。   ただし,民法第705条は,債務の不存在を知って弁済をした場合は,その返還を請求することができないと規定していることから,例えば保険契約が無効であることを知って保険料を支払った場合には,その返還を請求することはできないことになるとも考えられます。また,民法第708条は,不法な原因のために給付をした者は,原則としてその給付をしたものの返還を請求することができないと規定しております。ここに言う「不法な原因」とは,公序良俗違反を言うと一般に解されておりまして,単なる詐欺の場合はこれに当たらないと考えられます。   以上のことを前提として現行商法第643条について見ますと,同条は,保険契約者及び被保険者の一方又は双方が悪意又は重過失であるときは,保険料の返還を請求することはできないとした規定であり,その趣旨は保険契約者等に制裁を課す点にあるといわれております。同条の悪意や重過失の対象は法文上明らかではございませんが,民法第705条との関係では,少なくとも悪意の場合だけではなく,重過失の場合も保険料の返還義務を負わないとしている点と,もう一つ,保険料を支払った保険契約者の主観だけでなく,被保険者の主観も問題としている点が特則と考えられます。   以上のような商法の立場を基本的に維持しようというのが本文のC案でございます。   なお,商法第643条に関しましては,保険者は未払保険料を請求することができるとの見解もありますが,本文では民法の不当利得に関する規定との関係を意識して,保険契約者による保険料の返還請求を否定するにとどめることとしております。   また,保険契約者等が重過失の場合には制裁という趣旨が妥当するのか疑問もございます。商法制定時の資料を見ますと,当時は告知義務違反の効果が無効とされており,その要件に重過失が加えられたことを受けまして,現行商法第643条に相当する規定でも重過失を対象とすることとしたことがうかがわれますが,その後,明治44年の改正によって,告知義務違反の効果が無効から解除権の付与へと改められ,告知義務違反は第643条の適用場面ではなくなっておりますので,現在の第643条の重過失が何を意図していることになるのか,必ずしも明らかではございません。このことから,「又は重過失」という文言のところに〔 〕を付しております。   さらに,商法第643条では保険者の主観は問題とされておりませんが,学説上,保険者が悪意の場合には保険料の返還を認めるべきとの指摘等がされておりますことから,本文のC案では,保険者の主観をも問題とすることとしております。   このほか,C案につきましては,これを形式的に適用しますと,部会資料8の9頁の下から5行目以下に書きましたように,不合理な結論となるようにも考えられる場合がございます。一例を申し上げますと,例えば未成年者が法定代理人の同意を得ずに保険契約を締結し,法定代理人がこれを取り消した場合には,保険契約者である未成年者は取消事由,すなわち,自己が未成年者であることについて悪意ですから,保険料の返還が認められないということになるようにも考えられますが,これは取消しを認めることによって未成年者を保護しようとした民法の趣旨に反するとも考えられます。これ以外にも,消費者契約法などとの関係で検討を要する場合があるように考えられます。   以上,C案について指摘しましたことは,解釈にゆだねるということも考えられないではございませんが,保険料の返還という保険契約者にとって重要な問題について,明確にできるところは明確にするのが適切とも考えられます。   そこで,B案として,保険法で特則を設けることによって,保険料の返還を否定すべき場合を限定的に列記し,規律を明確化しようという案を提示しております。   本文では,制裁の必要がある場合として保険契約者等による詐欺の場合を掲げておりますが,このような規定を設ける前提として,そもそも民法第705条は保険契約に適用されるのか,被保険者や保険金受取人といった保険契約者以外の第三者による詐欺の場合に同条が適用されるのか,契約の取消しの場合にも同条が適用されるのかなどについて検討する必要があると思われます。また,制裁のために不当利得の特則を設けることの当否,しかも,保険者が結果的に利得をすることになることをどのように正当化するのか,契約締結上の過失による損害賠償の理論や不法行為による損害賠償にゆだねることでは足りないのかについても,検討する必要があると考えられます。   なお,B案に立ったとしても,公序良俗違反による無効の場合には民法第708条の規律にゆだねることで足りると考えられますが,B案を採る場合には,保険契約者等による詐欺以外に列記すべき無効・取消事由があるかどうかについても,併せて御指摘をいただければと思います。   また,本文のB案では,主体について二つの案を掲げております。すなわち,前者は保険契約者と被保険者を掲げておりますが,これは損害保険契約の場合にはもちろんこのようになりますが,生命保険契約や傷害・疾病保険契約でもこのような規律とすべきか,それとも生命保険契約等については,保険金受取人という概念がある以上,これをも含むものとすべきかについて御検討いただければと思います。   以上のような検討の結果,民法の不当利得の規律で足りる,あるいは保険法に特則を設けることを正当化することはできないということになれば,A案のように,保険法には何らの特則も設けないということになると考えられ,以上のような観点から御検討いただければと思います。   続きまして,保険法部会資料8の12頁の(注)1について御説明をいたします。   ここでは,保険契約者等が善意又は軽過失である場合には,保険者は保険契約者に対して費用の償還請求をすることができる旨の規定を設けるべきであるとの考え方について,このような立法論的な提案がされることがありますことから,問題提起をしております。   もっとも,保険者が善意の利得者の場合は保険者を保護する必要があると考えられますものの,もともと保険者は,民法第703条によりその利益の存する限度においてこれを返還する義務を負うにすぎないため,保険者が費用等を支出していればその分については利益が存せず,したがって,そもそもその分については返還義務を負わないですし,保険者が悪意の利得者の場合には,そもそも保険者を保護する必要はないことから,このような請求を認める規定を設ける理由はないようにも考えられます。   また,保険契約者等に過失があれば,場合によっては保険者は契約締結上の過失による損害賠償の理論や不法行為に基づき保険契約者等に対して費用相当額の損害賠償を請求することができ,これに重ねて保険法に規定を設ける必要はないようにも考えられます。そこで,このような理解でよいのかについて御議論をいただければと思います。   さらに,最後に,本文の規定の強行規定性についても御検討をお願いしたいと思っておりまして,この点については,保険料の返還という保険契約者にとって重要な事項に関する規定であることからすれば,仮に何らかの規律を設けるとすれば,これを片面的強行規定とすべきようにも考えられますが,このような考え方について御意見をいただければと思います。   以上でございます。 ● それでは,ただいまの御説明の部分について。   ○○委員,どうぞ。 ● いろいろしゃべって申し訳ありませんが,C案を基本的に,少し修正した上でC案で行くことを支持したいと思います。   約款にこういう関係の規定がありまして,それに限度を設ける必要があると。これは,契約者側に非常に不利益な規定なのですね。返ってこないということになる。   ここについてはご存じの方も多いと思いますが,昭和59年の国民生活審議会,竹内先生が政策部会の部会長で,その審議会は北川先生がおやりになって,それまでこの損保の約款は,責めに帰すべき事由という形で過失まで返さないと言っていたのを,それはおかしいという形で直して,約款にそれが及んで,実質,強行規定ではないのですが,強行規定であるかのような形で今日に至っているわけです。   生命保険会社の方は,私の昔の記憶では,これは事業方法書にはあるのに約款には書いておられない。このあたりはどういうことなのか,また御説明をしていただけると助かりますけれども,書いた方がいいのかもしれない。   それから,B案との関係ですけれども,これも,今の約款に含まれています詐欺無効の保険料を返さない規定,このときに,この第643条に照らして有効だという議論があって,この詐欺の場合は下のC案の「悪意」のところで読んで,C案一本で行けるのではないか。   それから,あと,返戻する義務を負わないのはその年度のみで,やはり長期契約で,次年度以降はやはり返さないといけないのではないかということ,これは文言を工夫する必要があると思います。   それで,超過保険の話が,ここ抜けていますので,残り,無効・取消しは基本的には錯誤,公序良俗違反,詐欺,そして消費者契約法と,こういうところだと思うのですけれども。詐欺の話は先ほどいたしましたが,錯誤の場合で共通錯誤というのがあって,これは大阪地判の昭和62年2月27日で,契約者と被保険者は悪意はないのですね。受取人は悪意,本当の黒幕はもっと別にいる。だから,契約者・被保険者は何ら悪いところはない。そういう場合にも,これだと契約者には返ってこなくなってしまうのですね。これはやはりちょっと,このあたりはだんだん議論がいろいろあれですが,本当にいいのかなという疑問がまず一つございます。それから,公序良俗違反は,これは公序良俗違反の場合は悪意だといった判例がありますので,そこでそういうふうに考えればいいのではないかと思います。   消費者契約法の問題という,この取消しの問題は,ちょっと別にした方がいいのかなというふうに思うのです。もちろん未成年者の場合は,これは優先して保護しなければいけないということが言えると思いますけれども,問題は,例えば契約をいろいろな取り決めで乗り換えさせられて,こちらの契約があったと。取り消したまでの間は,保険はちゃんと付いているではないかという,こういう議論が来るわけですね。これは余り特異な例ではなくて,普遍的,割合よくある例で,非常に深刻な例というので議論したらきりがないと思いますけれども,例えば終身保険で,大手で月4万ぐらい払っているのを,高いですね,半分ぐらいにしましょうと言って,2万円で,年をとるとどんどん保険料が上がっていくようなものに乗り換えさせられて,気が付いたら,こんなのはもう続けられないということで元に戻す,何か取消事由がある場合に,それまでは保険が入っているから,その分の保険料は保険会社は返さなくていいと本当に言っていいのか。このあたりはもうちょっとよく考えないといけないと思うのです。   それから,あと,12頁の(注)1と2の問題ですけれども,1の問題は,契約者が善意,軽過失である場合には償還請求ができるかどうか,それは理論的にはもちろんするという考え方はあると思いますが,現在,例えば火災保険の約款の第14条第1項は,この場合は全額返すという形になっておりますので,これは,まあ,契約者に分かりやすい形のものでこの形にするという意味もありますし,もう一つの理屈,理論的な考え方は,不可分原則を緩和して途中でも解約できるようにしたのと同じように,こういうコストがもしかかるのであれば,それはみんなに均てんして,返さないという形で分かりやすいものにする。そういう理屈付けで,それは償還請求は認めなくていいのではないか。   本文の性質は,基本的には取消しを入れるといろいろややこしくなるので,ちょっと取消しは別にして,約款にはいっぱいこの規定があって,それはみんな契約者に制裁的なのですね。だから,そこのところは少なくとも強行法規にして,それ以上はいけないようにする必要があるのではないかと,そんなふうに考えます。   以上です。 ● ○○委員。 ● 商法第643条のとおり,無効主張する場合で,保険契約者等に重過失があった場合には保険料返還不要ということを維持していただきたいと思います。したがって,C案の重過失要件があるものを要望いたします。A案ですと,民法第705条では,保険契約者側の故意を立証できなければ保険料を返還しなければいけないということになります。   長期契約の実務の場合には,翌年度以降の保険料は返還しています。故意の疑いのある重過失の場合に,保険会社としても労力をかけて調査をしますので,調査コスト等を考えますと,当年度分の保険料を返還しなくても保険会社にはそれほど現存利益はなくて,損害の額と見て過大ではないと考えています。   以上です。 ● ○○委員。 ● 生保の方ですけれども,今実務の取扱いといたしまして,公序良俗違反のケース,それから不法取得目的無効の場合,それから詐欺無効のケース,このケースにつきましては,保険料は返還しておりません。それから,一方で,先ほどから議論が出ました契約取消し,契約がやはりおかしいという取消しのケースは,実は全額保険料を返還しております。   そういった視点から行けば,我々はB案というのが現行の実務に近い形ですし,B案でお願いできればというふうに考えております。 ● 実務の方からC案とかB案の支持の意見が出ましたが。   ○○幹事,何かありますか。 ● これは質問なのですが,B案において,保険金受取人による詐欺というのはどういう場合なのかというのを少し事務当局から教えていただければと思うのですが。 ● 逆に,考えられないのではないかとも思いまして,〔 〕を付けていまして,先ほど申し上げましたとおり,ただ,生保の場合には登場人物として受取人というのがよく言われますので,そのあたり御意見をいただきたいという趣旨で〔 〕で出したということでして,もし生保の場合も含めて,受取人というのは想定されないということであれば,ここはB案の前の方の〔 〕に入っている「保険契約者又は被保険者」を考えればいいということになろうかと思っています。 ● つまり,解除によって無効になる。その場合は,この規律にはよらないということなのかということなのですが。解除権が発生する場合には,その保険金受取人が介在する場合がありますよね。そもそもの,もともとの契約の意思表示について,無効とか取消しとかということを問題にする,あるいはそういう局面で受取人というのは,余り,先ほどの共通錯誤ぐらいしかないのではないかなという気がするのですが。 ● ダミーを立ててというような場合ですよね。受取人が,実質的には契約者だと,そういうのぐらいはあり得るのかもしれない。 ● 契約者の解釈の問題ですね。 ● 実質的に考えれば,それで済むという話で。   ○○委員。 ● 一つ質問させてください。この保険料を返還するというのは,今まで支払われた保険料の総額というのは割と分かりやすいし,消費者にとっても分かるから,だから保険料ということなのでしょうか。あるいは,生命保険の場合,キャッシュバリューのある保険ですと,単純に保険料でやると,例えば初年度に無効だと持ち出しになってしまうわけで,契約のためのコストがかかりますから。この辺は,どういう認識で保険料という基準にされているのか,ちょっと質問です。 ● 恐らくは現行法もそうだと思いますけれども,ここで考えていますのは契約が無効,あるいは取消しにより当初から無効という場面を想定していますので,そこでは契約が有効であることを前提としたキャッシュバリューその他は,関連する場面ではないというように考えております。 ● そういう意味で,○○幹事が御指摘になったような解除のような場合は,また話は別だという,そういう世界ですね。 ● はい。 ● ほかに何かこの点。○○委員,どうぞ。 ● B案,C案を拝見しておりますが,具体的なイメージがうまくいきませんので,ちょっと抽象的な意見にとどまりますが,発言させていただきます。   契約が無効・取消しになりましたら,原則は,私の理解ですと,その払ったものを返すということになるのだろうと思うのです。そこにこういう特則を置く趣旨ですが,一つは,やはり制裁というのがどうも見え隠れしているというか,前面に出てきているように思いますけれども,それは何かそれとして,やはり過不足のない形での修正に,B案,C案がとどまっているのかというテストが必要だろうと思います。   そして,あともう一つは,今,直前にもう○○委員から御発言がありましたような観点,すなわち,保険者側の方に,無効・取消しになることによって一定のコストが生じているのではないかという問題は,制裁の観点とは切り離して,御説明の中にもあったかと思いますが,契約締結上の過失というのでしょうか,無効な契約あるいは取り消される契約を締結させて相手方にコストを発生させた場合には,発生させた側がそこの賠償をしなければならないという,民事の一般的な原則で処理をすべきであると。そして,それもさらにこのB案,C案の中に取り込もうとするならば,そこはやはり過不足のない形で取り込まないといけないのではないかなというふうに思います。 ● B案とC案,特に大きく違うのは,やはり実質的には重過失の場合をどうするかというのがあるのですが,これは,先ほど○○委員は,重過失の場合もC案のように返さないということの御意見だったと思いますが,ここでこの重過失をぜひ現行法と同じように残しておいた方がいいというふうな御意見というのは,ほかにございますか。 ● すみません,重過失なのですけれども,重過失をこういう形で制裁的に返さないというのは,先ほどの重過失であり得るかという話をさんざんやっている感じで,あの辺が重過失という感覚で言いますと,それを全然保険料を返さないでいいというのは,やはり契約者側に酷なのではないのかなという気はいたします。   ですから,詐欺ぐらいのところであれば,それはサンクションとしてしようがないという部分はあるかもしれませんけれどもというふうには,直観的には思いますが。 ● このあたりは,あと取消しをどうするかというのも理論的には難しいところかと思うのですが,まあ,これは実質的な理屈の整理という点が大きいかと思うので,では,今日の御意見を踏まえて,なお詰めていただくことにして,それでは,もう若干続けさせていただきたいと思います。   18頁,「(4) 保険金受取人の変更」の「ア 保険金受取人の変更の意思表示」の部分,今日議論できるところだけ議論しておきたいと思います。   まず,事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ● それでは,御説明いたします。   保険金受取人の変更については,第一読会と同じく,生前の意思表示による変更と遺言による変更とを分けて御検討いただく形で資料を作成しております。   まず,資料18頁の「(ア) 生前の意思表示による保険金受取人の変更」については,相手方のある意思表示か,相手方のある意思表示であるとして,その相手方はだれかについて,立法論として御議論をいただきたいと思います。   この点については,第一読会において,新旧の保険金受取人に対する意思表示によることを許容するB案や,相手方のない意思表示とするC案を採用すべきとの御指摘もいただきました。これらの考え方を採ると,19頁以下の問題点に記載したような,法的に不安定な事態が生ずるのではないかという懸念がありますことから,これを踏まえて具体的に御議論をいただければと思います。   また,本文の各案について考えますと,保険金受取人の変更の意思表示は重大な法律関係の変動をもたらす形成権であり,その行使の相手方を契約当事者である保険者に限った方が法律関係が簡明となり,またその方が形成権という法的性質との関係でも自然ではないかとも考えられ,このような観点からも御意見をいただければと思います。   さらに,B案やC案の方が保険契約者の意思を尊重することになるとの御指摘がございましたが,本文②の規律のように,保険金受取人の変更の意思表示を発したときにその効力を生ずるとしたり,遺言による保険金受取人の変更について別途規律するとしたりした上で,さらにB案やC案を採用すべき積極的な理由は何かという観点からも御議論をいただければと思います。   続きまして,24頁の「(イ) 遺言による保険金受取人の変更」につきましては,特に(問題点)1に記載した点について御検討をいただきたいと思います。詳しくは,(補足)1に記載したとおりでございます。   以上です。 ● それでは,まずアの(ア)の方から御意見をいただきたいと思いますが,いかがでしょうか。   ○○委員から。 ● 第5回会議で,確か○○幹事が御意見されていましたとおり,A案,つまり,保険契約の一方の当事者である保険者を相手方とする意思表示と考えるのが自然ではないかと考えます。結構大きな単位のお金が動く話が多いでしょうから,法的な安定性を考えますと,保険会社を相手方とした意思表示としておいた方がよいと考えます。(問題点)①から⑥のいずれの例も,A案を採用した方が妥当な結論なのではないかと思います。   (注5)の任意規定とすることについては,賛成でございます。 ● ○○委員,手を挙げていますか。 ● 手短にいたしますが,まず,この規定を強行法規とするかどうかという問題がございまして,それはこの頁の23頁,下から3行目の(注5)のところですけれども,やはりこれは強行法規として考えなければいけないと思うのです。つまり,意思の尊重と保険者の利便性のバランスをどうとるかということですが,この23頁の(補足)2のところで,下から2行目,第5回における御指摘云々とありますけれども,これは指摘ではなくて事務当局説明ですよね。私が間違って……。23頁にこの指摘がありまして,これを見ると,その指摘の括弧書きのところですが,保険金受取人の変更を認めずというのは生存保険の話になっていて,これもちょっと別な話なのだと思います。それから,最後の行の,一定の場合に限って保険金受取人の変更を認める旨の特約をする必要があるということですが,これはこの議事録を見ますと,いわゆる消費生活協同組合に基づく共済の場合は,あらかじめ限定して,変更権を認めないことにしている。でも,ここでの問題は何が一番問題かというと,保険会社の同意がないと変更できないというような,そういうことはやはりまずい。それだけは,そこを止める必要があって,やはりそこは強行法規にしなければいけないと思うのですが,この共済の約款を見ますと,まさにそうなっているのですね。承諾を得ないとできないということになっている。やはりこれは,ですから,ここの23頁の下から2行目のところはちょっと,これは事務当局の説明であって,委員の指摘ではありませんし,この引用もちょっと不正確で,最初は団体保険の話,この数頁前にありますけれども,一応これは,地の文は死亡保険を前提にした議論だったと思いますし,それから23頁の最後の行は,これは共済で,しかも,変更権を同意のない限り認めないというちょっと不適当なものですから,こういうものを理由に任意規定とするということはちょっといかがかと,反対したいと思います。これがまず,第一点。   それから,第二点ですけれども,これは前回の議論のときに,資料6の3頁のところで私がこのC案と同じようなことを言ったわけですけれども,もうお分かりの方がいらっしゃると思いますが,そのときに私は何を望んでいたかというと,まず一つは遺言でできるようにしよう,もう一つは,発信するだけで効力が生ずるようにしよう,そういうことで,相手方なき意思表示プラス書面ということを申し上げたわけです。   そこで,本件を見ますと,今日はちょっとやらないということですが,遺言事項にはするという方向で,かつ,私が重要だと思うのはこの第2項ですね,受取人が発したときだと。そうすると,大分目的は達しておるのですけれども,残りは,要するに契約者の保険金受取人指定の変更の自由と保険会社の利便性のバランスをどこでとるかという問題,この本論になるわけです。私はそういう観点から,このCとBの中間の案をとりたい。つまり,B案プラス書面性です。これは実は,最高裁判所の判例の立場ではないかと思うのです。最高裁の判示には書面という言葉は出ておりませんが,その事案は書面があった事案で,ただ,筋はよくない。ただ,原審から見ると,まあ,これは払わなければいけないかなと。これは言わずもがなのことで恐縮なのですけれども,最高裁判所の判例というのは,やはりその事案の解決だけでなくて,その文言がルールとして社会に置かれたときにどういう機能を果たすかというところまで考えて出しておられるのだと思うのですよね。ですから,この判例というものは,このあたりでバランスをとるのがいいというふうに言ったものだというふうに私は考えたい。考えているのです。やはり味わい深いというか,滋味尽くすべきというか,もう少しこの最高裁の判例の立場を擁護して考えるべきではないかと思います。   それから,短くいたしますが,次は順位付けの問題で,ここにはないのですが,規定を起こして,契約者は順位を付けて指定することができるという規定をやはり置く必要があると思います。共済はそうしておりますけれども,これは,私は生命保険募集人の方は広く認識している問題だと思うのですけれども,要するに,旦那が契約をして被保険者にし,それで子どももいる。受取人が相続人となっている場合に,子どもが先に死んで,それから夫が死ぬと,奥さんだけではない人のところにも保険金が行くという,これは法制審議会のコピーが以前配られた,そういう問題がありますので,やはり,条件付きの指定というものもできるようにすべきではないかというふうに思います。   それから,あと,21頁の(注3)の受取人を変更しない意思表示,そういうものもこれはぜひ認めていただきたいと思います。   以上です。 ● ○○委員。 ● 生保業界としましては,実務的に考えればA案が妥当であると。特に,今回,遺言による指定を考えますので,現実にその保険者による過誤払い,二重弁済の危険を回避するという観点では,A案がよいかと思います。 ● ○○幹事。 ● 私も,ちょっと以前と,いろいろ考えているうちにだんだん変わってきてしまって,大分コンサバになって,それで結論としましては,○○委員がおっしゃったように,まずは変更については,保険者に対する意思表示で,それから,遺言でも認めないというのが整理がつくかなと思います。   と申しますのは,生命保険,この場合,一般論として生命保険というよりも,この保険金の受取人が問題になるのは死亡保険だと思うのです。死亡保険であって,なおかつ,自分の死亡についての保険の保険契約の保険金受取人だと思うのです。   というのは,先ほど議論になっていた,第三者の生死を保険の対象とする保険契約の場合には同意があるかどうかとかいう別の柱があったかと思うのですけれども,自分の死亡を対象とした場合には,もう保険契約というのは,双務契約の場合は,自分が保険料を払います,自分がそれの対価をもらいますというそういう一本の線にあるはずなところ,自分の死亡を保険事故とした場合に,保険金が下りる段階で自分はいなくなってしまうから,必然的に保険金受取人というのを指定せざるを得ないという状況にあって,ただそれが,では,死亡したときには相続人がいるではないですか,相続という分野があるではないですかということなのですけれども,これはもう判例で,ちょっとこれが前回私が理解してきていなくて違った回答になってしまったのですが,保険金というのは,もうその指定された第三者のところで初めて発生するもので,遺産にはならないという,そういう整理になっていると思うので,そうすると,保険金受取人の指定というのは,契約の中で比較的重要な要素になっていると思うのです。   そうすると,自分の死亡を保険事故とした場合の保険契約というのは,必然的に,先ほど申しましたように受取人がいないので第三者のためにする契約という性格を帯びていて,では,民法上はどうなっているかというと,民法上は,その相手方が第三者に対してある履行をすることを約してというふうになっているので,もう約して,それに対して対価を払うみたいな関係になっているから,その第三者を変更するのであれば,一度合意したことを変更するので,また変更をする場合には変更を申し入れて変更を承諾するという形になるかと思うのです。   他方,保険の場合には,保険金を支払うという弁済だけのものなので,保険金を払うと約束した者にとって,だれに払うかというのはさほど重要ではない。ここのところで,先ほど申しました,他人のためにする,他人の生死に対する保険契約かどうかということで違いが出てくると思うのですが,その場合には,だれに支払うかということも一つの重要なことだと思うのですけれども,自分の死亡に対してという場合に,だれに払われるかということはもう重要ではなくなって,ですので,保険契約,生命保険の定義というのが,まずは生死そのものか,又は第三者の生死に関してというふうに,死亡の対象はだれかというのはきちんと,「相手方又は第三者」と書き分けて,ただし支払うところについては,「一定の金額を支払うべきこと」と言って,「その者又は第三者に対して一定の金額を支払うべきこと」というふうにはなっていないというところも,注意を要するかと思うのですけれども。   というように,ちょっと長くなりましたが,自分の死亡を保険事故とした場合に,だれが受取人かということは重要ですが,保険者にとってはさほど重要でないので,だから,意思表示としては,重要だから保険者に対してしますけれども,一方的な意思表示なので,だから変更も保険者に対してして,一方的な意思表示でいいという。   やはり遺産としてひっくるめて入ってきてくれるのであれば単独の意思表示でもいいでしょうし,新たな保険金受取人に対する意思表示ということもあるかもしれませんけれども,遺産から外れて,だれの財産ですかというようなことを決定するような保険金受取人の変更というのが,保険者との関係で効力要件ではないというのは,やはり整理がちょっと,効力要件にした方が整理がつくかなと思ったのです。   ちょっとこれが,先ほどおっしゃった判例かも分からないのですが,昭和62年の判例では,対抗要件というふうな整理がついているかとは思うのですが,対抗要件ではなくて効力要件で,遺産に似ているけれども遺産性がないとはっきり言っているので,遺言でするのはちょっと違うのかなというふうに整理できるかなと思いました。 ● では,○○幹事から。 ● 今回の事務当局案では,到達主義でなくて発信主義に,②のところで発信主義が明らかにされている。これは,第一読会のときに,保険金受取人の変更というのは,まさに被保険者の死期が迫ったときになされることもあるので,A案を仮に採るとすれば発信主義を採る方がいいのではないかということを私,申し上げたような気がするのですが,それをここで入れていただいたのかなというふうに思うのですが,しかし,こうやって法文になったのを見るとですね,前に言ったことと何か矛盾することを言いそうなのですけれども,例えば保険契約者兼被保険者が,自分が世話になった保険募集人に保険会社宛の手紙を渡して,保険金受取人をAからBに変更する。私が死んだら,これ開けてくださいと。実質的に遺言に近いと思うのですが,しかし,それがここで言う保険者に対する意思表示だとすると,この手紙を書いた時点で受取人に変更の効力が生じてしまうのかなと。そうはならないのか。   そうならないのであればいいのですけれども,ちょっと遺言,今日は遺言のことはされないと言われましたけれども,これはどうもアの(ア)の話と(イ)の話はやはり両方関連付けて検討しないと何かおかしなことになってしまうかもしれない。私が第一読会で言ったことでかえって混乱させてしまって申し訳ないのですけれども,ちょっとこの②については,このままで本当に大丈夫なのかなというのはちょっと気にしております。 ● ○○委員。 ● ○○委員とちょっと意見が違うのですけれども,特に受取人の関係で承諾という言葉が入っているというのは,やはり協同組合法の立法趣旨,つまり,メンバーシップ制を前提にした契約ということが前提になっていますので,事業をやっている協同組合としても,やはりその立法趣旨を外すということはできませんので,そこはやはり承諾ということにしていませんと法を守れないということが前提にありますので,そういう点について御理解をお願いしたいというように思います。   ただ,全体として,任意規定として整理されていますので,全体としては支持をしたいというように考えています。 ● A案について幾つか御質問,御指摘があったと思いますが,何か事務当局から。 ● それでは,ちょっと資料について御指摘があった点についてコメントさせていただきたいと思いますが,○○幹事の方からの,生前の意思表示と遺言とは関連付けて考えないとというのは,一読から御指摘いただいていることで,それはそのとおりだというように考えております。   例えば,19頁の(問題点)に書きましたC案をとれば,これは相手方のない意思表示と整理するわけですから,恐らく文字どおり(ア)と(イ)は区別しないで,相手方のない意思表示でできると,こういう整理になるということからも明らかなとおり,そこは当然関連付けて考えるべきだと思っておりますが,ちょっと今日は時間の関係でということで御了解していただければと思います。   それから,A案について,任意規定・強行規定の点ですが,資料で行きますと23頁の下から3行目,(補足)2の(注5)に関する補足の部分ですが,第5回の議事録の引用が不正確ではないかという御指摘がございましたが,私どもとしては,まさに今日も御指摘がありましたが,第5回の○○委員の御指摘,第5回の議事録でいきますと36頁の上から二つ目の●印ですが,その中で,協同組合という組織の問題も考えますと,保険者の同意ということを要求している,そういうことも含めて規律を考えてもらいたいと,こういう御指摘がありまして,それを指しているつもりでございまして,決して第5回会議の自分たちの説明をもって指摘があったとしているわけではないということは御理解いただきたいと思います。   それから,同じくその点につきまして,これは理由になっていないという御指摘もございましたけれども,そこはまさにそういう,そもそも受取人の変更を認めないという特約を許容する,あるいは,変更は認めるけれども保険者の同意を要求するという特約も許容すると,そういう立場からすれば任意規定と考えるということになるでしょうし,それをそもそも許容しないという立場に立てば,それは強行規定とすべきということでしょうから,それは理由付けになっていないというよりは,まさにどちらの立場に立って考えるかという問題そのものではないかというように考えております。   それから,受取人の指定についての順位付けですが,特に規定を設けることは現時点では想定した記載がこの資料の中にはございませんけれども,考え方としましては,複数の受取人を指定するということ,それは同順位で指定するということ,あるいは順位を付けて指定するということもそれはあり得べしということで考えております。例えば,資料でいきますと,ちょっと次回以降のところになってしまいますが,今回の資料11の27頁の(注3)を御覧いただきますと,ここでは,受取人が死亡した場合に,契約者が受取人を変更しないまま事故が発生してしまったという場合について,特約がなければ,こういうデフォルトルールにしてはどうでしょうかということを提案している場所ですが,そういう場合には次順位でこの人にしますよという特約があれば,それはその約定が優先するということを考えているということが,この27頁の(注3)に書いたことでございまして,そういう意味では,順位付けの指定もあり得べしということで現在考えております。 ● 一言。 ● どうぞ。 ● そこはちょっと誤解があったかもしれません,失礼しましたが,最後の点は,でも,生命保険会社にお願いすると,やっていただけないのですよね。そこが本当の相当な問題点で。そう申し上げておきます。 ● 遺言で認めるかという(イ)の問題,それとの相関であることはもちろんなのですが,それを肯定的に大体考える方向では従来あったかと思うので,そうすると,この(ア)の方については,従来の判例などとは大分方向が変わりますが,A案のような方向が出て,今日,比較的御支持があったかと思います。   もちろん,19頁の上の②のような発信主義に直すと,これが新基軸で,これでうまくいくかという,ちょっと技術的な問題はなお検討が必要かなというところなのですが,B案,現在の判例の考え方というのはやはり残すべきだという強い御意見の方,いらっしゃいますかね。これ,A案に移すとすると,ルールの大きな変更にはなるのですが,そこのあたりいかがでしょうか。   どうぞ,○○幹事。 ● 私は○○幹事と少し意見が違うのですが,A案でもいいとは思うのですが,そのときにやはり②は強行規定にした方がいいのかなというふうに思っております。   特に承認裏書きをやりますと,多分,本人確認法とかの関係で,やはり受取人の変更は本人がしたということは必ず要ると思うのですが,保険証券を契約者が持っていないということ,あるいは手元にないということはやはり考えられまして,そのときに,現在の約款ですと,保険証券も出さないといけません,それが出せないときには,その出せない理由を言って再発行の手続もしないといけませんと,そこまで要求して,その手続が終わらないと受取人変更はできませんというのは,少し,法的安全性を重視しつつ,縛りすぎなのではないかなというふうに思っております。 ● ○○幹事。 ● すみません,追加してという感じになるのですけれども,保険金請求権の処分のところとちょっと連結して少し考えなければいけない部分があるかなと思っておりまして,私は,前回申しましたとおりA案支持者なのですが,保険金請求権の処分のところ,先ほど○○委員がおっしゃったように,順位付けでもし受取人指定ができるのであれば,契約者が保険金請求権に質権を設定できるということも同様に認めないと,これ,順位付けするのと実質的に同じ中身になってきますので,この処分の規定のつくり方というのを,とりわけ生前といいますか,保険事故が発生するまでのところでの受取人変更という問題は,結局,保険金請求権の帰属主体を自由に変えられるという問題ですから,これは契約者が自分がその契約を締結しておる生命保険契約の財産的価値をどこへ帰属させるか,どういうふうに利用するかという問題になるわけですよね。   その際に,保険金請求権をどういう形のものにするかというのは,結局,契約者が主導的な立場に立って動かしていく,こういうことになるはずなので,そのときに保険金請求権について,ちょっと従来の考え方ですと,契約者の意思だけでは,これは契約者は被保険者と同一人のパターンですけれども,契約者,被保険者の意思だけでは保険金請求権に質権は付けられませんよという,そういうような見解もないではないので,もしそうだとすると,受取人変更は自由に契約者ができる,そして順位付けも契約者は自由にできる,にもかかわらず,質権の設定だけはなぜ契約者はできないのかという,そういうちょっとアンバランスが生じ得るなと思いましたものですから,そことちょっと関連付けて考えさせていただければありがたいなと思っております。 ● ほかに。○○幹事。 ● ちょっと補足説明なのですが,私は②のルールをやはりやめた方がいいというのではなくて,入れても大丈夫で,問題が生じないのであればやはり,結局,B案に代えてA案を入れるとすれば,B案の利点が失われないようにするために,やはり発信主義を採った方がいいと思いますので,そのあたりを,遺言による受取人変更との関係でちょっと確認させていただきたかったということでございます。ですから,先ほどのようなケースで,単に手紙を書いただけで中身は一体何が書いてあるのか分からないような状態では,それは通知を発したことにはならないというふうに解してしまう,つまり中身が分からない形で受取人を変更するのであれば,それはもう遺言による方式,遺言によってしかできないのだと,そういう解釈論というのは一つあり得ると思うのですけれども,ちょっとそのあたりを事務当局の方で検討していただければというふうに思います。 ● 今の御指摘の点は難しい問題が含まれていると思っておりますが,少なくともB案と区別をしてA案を提示している以上,どう考えているかといいますと,今のようなケースで何らかの意思表示が保険会社に向けられてされたものでない限りは,それは例えば,旧受取人に対して受取人を変えるよと,あるいは新受取人に対してあなたを受取人にするよということがされたとしても,何らの効力を生ずるものではないという整理をすることになるとは思っております。ただ…… ● ただ,募集人に対して手紙を書いた,渡したというかですね。 ● そこは今申し上げようと思ったまさに悩ましいところでして,募集人に対してされたということは,それは,すなわち意思表示をした意思表示者としては,保険会社に向けて意思表示を発したと見るべきケースも,それは,ないのかと言われれば,その人に受領権限がなくても,その人を使者として託したという形で見るべきケースも,それは,ないかと言われればあるのではないかというふうに思っておりまして,そこは事実認定の問題になってしまうのかなという感じを持っております。 ● これはまた,「募集人に渡してくれ。」と言って,だれかに渡したらどうかとかですね。それはかなり微妙という,そのあたり,まあ,常識に従って解決されると思うのですけれども,なお詰めていただくということで,ほかに御意見はございますか。   それでは,この点は,A案をベースに,なお詰めていただくというのが今日の大体の御意見であろうかと思います。   遺言の点が残りましたが,これはでは次回ということでお願いいたします。   それでは,一応,今日はこれで審議を終わりたいと思いますが,事務当局から何かございましたら。 ● それでは,いつもどおり,次回の確認をさせていただきたいと思います。   次回,第11回会議は来月6月13日,水曜日,午後1時30分から予定しております。   本日積み残しのあった部分と合わせまして,生命保険契約の後半部分,保険金の支払の場面と保険契約の終了の場面についての御審議をお願いしたいと思っております。   場所は,17階の東京高検会議室を予定しております。 ● それでは,今日はこれで終了いたします。   どうも長時間,ありがとうございました。 -了-