法制審議会保険法部会 第15回会議 議事録 第1 日 時  平成19年8月29日(水) 自 午後1時33分                       至 午後5時27分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  保険法の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ● 定刻でございますので,法制審議会保険法部会の第15回会議を開催させていただきたいと思います。   本日もお忙しい中,御出席くださいまして,ありがとうございました。   (関係官の異動紹介省略) ● それでは,本日の議事に入りたいと思いますが,本日は席上に配布してございます「保険法部会第15回会議(ヒアリング)進行予定」にございますとおり,保険者側の関係団体及び保険ユーザー側の関係団体からのヒアリングを行いたいと思います。   まず最初に,保険者側の団体といたしまして,在日米国商工会議所の保険小委員会の○○委員長,○○副委員長,○○委員代理,以上のお三方から御説明を伺いたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。 ● 在日米国商工会議所の保険小委員会委員長,○○と申します。本日はお招きいただきましてありがとうございます。   今回は,副委員長の○○及び委員代理の○○とともに保険契約法改正に対するACCJの提案についてお話しさせていただきたいと思います。   最初に,私からACCJの組織及び考え方等について御説明させていただいた後に,○○が幾つかのトピックを説明します。その後,私から数トピック説明させていただき,残りの時間はQ&Aセッションに移ります。Q&Aセッションは委員代理の○○が担当させていただきます。   まず,ACCJの組織について御説明させていただきます。   2頁に書いてありますとおり,ACCJは1948年に米国40社の企業の代表により創設されました。その後,拡大を続け,現在では1400社以上の企業と約3200名のビジネスパーソンを会員とする外国ビジネス組織です。我々,保険小委員会には,日本で保険業に従事するすべての米国生命保険会社とほとんどの米国損害保険会社が参加しており,会員保険会社の日本人従業員数は,代理店を除いても3万人を超えます。   米国保険会社は日本を非常に重要な市場としてとらえており,日本における米国生命保険会社のマーケットシェアは17%を超えます。会員企業の中には,古くから日本市場に進出し,去年60周年を迎えた企業もあります。また,外国保険会社は先手を切って日本の消費者に新商品やサービスを提供してきた経緯があります。   以上のことから,会員の外国保険会社の保険契約法改正についての関心は高く,委員の皆様におかれましては,これから申し上げる要望につき,是非御検討いただきたく思っております。   保険契約法改正に対するACCJの総括的な意見について,3頁を御覧ください。   ACCJは,消費者保護を推進する規制の見直しを歓迎します。そして,具体的な検討に当たっては,見直しの本来の趣旨である契約者保護を損なわないように,契約者の利便性をサポートし,経済合理性のある実務との調和の取れた規制の構築を応援したいと考えています。特に,第三分野については,コンプライアンスや契約者の理解を促進するような簡明な規制の構築が重要であり,できる限り支援させていただきたいと考えております。   次の頁を御覧ください。   今回,保険法部会で発表された中間試案を拝見しまして,ACCJとして提案させていただきたい点について一覧にいたしました。一通り御説明させていただいた後,質疑応答の時間をとらせていただきます。   次の頁を御覧ください。   生命保険及び傷害・疾病保険契約の意義についてですが,〔その他の一定の給付〕として現物給付を認める方向性を示しており,ACCJはこれを歓迎しております。   次の頁を御覧ください。   これに対して,本規定の実効性をより高めるため,現物給付も保険法の適用がある旨を明文化していただきたいと思います。   そして,次の頁,被保険者同意についてですが,中間試案によると,死亡保険金に関する被保険者同意については絶対的強行規定とする,例外となる「一定の場合」については,同意は書面であるべきか,未成年者等の制限行為能力者の取扱いについては,今後検討するということであります。   これに対して,次の頁にありますが,無記名の団体保険,海外旅行保険等の同意を得ることが実務上不可能又は極めて困難な商品もあり,従来,同意を不要としていた商品については,新たな制限を設けるべきではないと考えております。特に問題も起こっていない現状において,新たに制限を設けることは消費者利益を妨げます。   次の頁を御覧ください。   また,ACCJは第三分野商品において,他人や未成年者が被保険者となる保険契約は社会的ニーズとともに既に定着しており,モラルリスクが増えるなどの明らかな証拠がない限り,契約者の利便性及び経済合理性の観点から,生命保険等の既に被保険者同意を必要としている商品は別として,被保険者同意は不要とすべきであると考えております。   次の頁を御覧ください。   従来,同意が必要とされていない場合は同意は不要としても,既に同意が必要とされている場合には,同意の方式は書面に限定すべきではありません。金融庁のガイドラインに挙げられている電磁的な方式等や総合福祉団体定期保険で行われている通知同意方式等の実務は尊重されるべきです。   次の頁に書いていますけれども,被保険者が未成年者である場合も同意が必要であるという点については賛成であるが,現行の実務どおり,親権者の代理人による同意で対応するべきであると思っております。また,未成年者について,保険金額等を制限するべきではないと思っておりますが,次の頁からは○○から説明させていただきたいと思っています。 ● 中間試案によりますと,告知義務違反による解除の効果について,A案とB案という二つの案が提示されており,B案はプロ・ラタ主義を採用するものとなっています。   これに対して,ACCJは告知義務違反による解除の規制に関し,プロ・ラタ主義は導入すべきではないと考えます。プロ・ラタ主義の導入は告知の形骸化を招くおそれがあり,また,故意と重過失の区別についても課題が残るからです。   14頁を御覧ください。   次に,告知受領権のない者の告知妨害があった場合の告知義務違反の取扱いについてですが,中間試案によりますと,保険者の使用人等のうち,告知を受領する権限がない者が告知を妨げた場合等において,保険者は,保険契約の解除をすることができないとあります。   これに対して,ACCJは募集ルールに従わない募集人に対して適切に罰する対策を支持します。しかし,告知義務違反による解除権に時効が設定されているなど消費者保護は適切に図られている一方,解除権阻却規定を悪用する保険契約者等が存在することから,募集人の行為の態様のみで一律に判断するのではなく,保険契約者等の事情も考慮した総合的な判断の中で規律を整備すべきと考えます。また,告知義務違反による解除権に2年の時効が設定されていることで,既に消費者保護は適切に図られていると考えます。   16頁を御覧ください。   保険金受取人変更の意思表示について,中間試案はAとBの二つの案を提示しています。   これに対して,ACCJは保険金受取人変更の意思表示を保険者に限定するA案を支持します。A案の方が法律関係が簡明であり,B案の場合は保険者による正確,迅速な保険金支払業務の支障となるおそれがあるからです。   18頁を御覧ください。   保険金受取人等の意思による保険契約の存続についてですが,中間試案によりますと,保険契約者の債権者又は破産管財人等が保険契約の解除をしようとし,又は解除をした場合には,〔一定の者〕は,保険契約者の同意を得た上で,保険契約の解除をすることができる者に対して〔一定の金額〕を支払うことによって,契約を存続させることができるとしています。   これに対して,ACCJは本条項による保険金受取人等が享受することができるメリットは理解できるものの,その実効性については解決すべき課題が存在するため,慎重な検討が必要であると考えます。   その理由は,契約法上,一度消滅した契約の存続を認めるのは極めて異例であることに加え,保険者が解約払戻金や保険金等の二重弁済の危険にさらされることを防止する措置も検討する必要があるため,解除の効力発生後の規律を定めることには,特に慎重な検討が必要です。また,解除の効力発生の前後で異なる規律が設けられることにより,保険者のコスト増を招き,保険契約者全体への負担が増加するおそれがあります。保険金受取人は,通常,保険契約者の家族であることが多く,保険契約者が金銭的に窮している場合に,家族が保険契約を継続させるための一定の金額を負担することは困難であることが予想されます。「一定の者」は本条項の趣旨から保険金受取人に限定すべきです。「一定の金額」について実務の混乱が生じないよう,一義的に定まる規律としていただきたいと思います。   20頁を御覧ください。   中間試案によりますと,保険金の支払時期について,次のように規定されています。①保険事故の発生並びに損害の有無や額の確認に必要な期間が認められる。②保険金支払について期限を定めてもその期間が確認が必要な事項に照らして相当な期間を超過する場合,遅滞の責任を負う。③保険契約者又は被保険者が確認を故意に妨げた場合等は,遅滞責任を免れる。   これに対して,保険契約の支払時期における「相当な期間」については,個別の事情に照らして柔軟に解釈することが,保険契約者,保険金受取人等の利益になると考えます。硬直的な運用を行うことは,かえって保険者が迅速,正確,公正な保険金支払を妨げる懸念があります。   また,③に挙げられた契約者等が保険者の確認を故意に妨げる例以外にも保険契約者や病院側の都合で調査に時間が掛かるケースもあります。そのような場合も,保険者が遅滞責任を負うことは,契約者全体への負担を強いることになりかねない点も御配慮いただきたいと思います。   22頁から,○○から説明させていただきます。 ● 中間試案では,保険料積立金等の支払について,新しいルールが示されています。保険期間満了前に保険契約が終了した場合には,保険者は保険契約者に対し,将来の保険金の支払に充てるべき保険料を基に算定した〔一定の金額〕を支払わなければならないとするものですが,23頁にあるとおり,ACCJはこのルールの導入に反対です。保険料積立金等の支払は導入すべきではありません。解約返戻金をなしとするか,保険料積立金に比して低くすることにより保険料を低廉化する商品が既に多く出回っており,事実として広く社会に受け入れられています。このような状況で,保険料積立金等の支払を片面的強行規定とすることは,消費者の選択の幅を狭めるばかりではなく消費者利益を阻害するため,当該規定の導入には強く反対します。   次の頁を御覧ください。   試案では,保険契約の募集に関する規定につき,保険契約法上の規律を設けることを検討するとあります。次の頁にありますとおり,ACCJは募集ルールにつき,契約法上の規律を設けることに反対します。現在,保険募集については,保険業法や金融商品の販売等に関する法律等に規定され,金融庁の各監督指針により,時勢に即した柔軟な監督がなされています。保険募集等の方法,形態等は年々変化するものであり,今まで実態に即した規律が機動的に手当てされてきた経緯があります。保険募集を保険契約法で厳しく規定することは実態に即した形で対応することを困難にしてしまうおそれがあるため,ACCJはこれに反対します。   次の頁を御覧ください。   中間試案によりますと,いわゆる契約成立前発病不担保条項に関する契約法上の規律を設けることについては,今後検討するということになっておりますが,27頁にありますとおり,ACCJはこの点に関し,保険契約法上,制限を設けることについて反対します。現状,契約成立前発病不担保条項と危険に関する告知義務により,保険契約者側のモラルハザードは防がれ,保険集団全体の公平性が保たれています。各保険会社は,商品デザインや経理の経験によって独自の不担保期間を設定する余地も与えられるべきであり,ルールの標準化は消費者の選択を狭め,商品開発を阻害します。   次に,失効時の催告についてですが,中間試案では,失効時の保険契約者に対する催告を不要とする約定の効力に関する規律を設ける必要があるかについては検討するとしています。   次の頁を御覧ください。   保険会社は,約款上,保険料払込猶予期間を設けていますし,保険料の払込みがない場合は,契約者に対して複数回通知を行っており,保険者は消費者保護に十分対応した実務を行っています。そのため,通知の方法を催告という特定の方法に限定する規定を設けるべきではなく,保険者が最も効率的な通知方法を自由に選択できるようにすべきであると考えます。   次の頁を御覧ください。次に,一部保険,重複保険に関して,独立責任額連帯主義と減額請求について申し上げたいと思います。   まず,中間試案では,独立責任額連帯主義が任意規定として導入されています。31頁にありますとおり,ACCJは独立責任額連帯主義に強く反対します。一社が各保険会社分を含めて被保険者の損害額をてん補した後,各保険会社に負担分を求償することになった場合,一社はクレジットリスクを背負うことにより過度の負担となります。これまでの実務上,独立責任額按分主義で特に重大なトラブルは発生しておらず,不必要かつ過度な規制は避けるべきであると思っております。   次の頁を御覧ください。   同じく一部保険,重複保険につきましては,保険金額が保険価額を超えている場合に,契約者は保険料減額の請求をすることができるという規定が導入されるようですが,次の頁にありますとおり,この点については,ACCJは減額請求を導入する必要はないと考えています。その理由は,商品が多様化している近年,保険価額のない保険契約が多くなっており,新たに一部保険,重複保険の規律を策定するベネフィットは少ないからです。   次の頁を御覧ください。   試案では,被害者の直接請求権を認める規定が導入されています。この次の頁にありますとおり,ACCJは被害者の直接請求権は導入すべきではないと考えています。被害者の直接請求権が導入された場合,保険会社にとってリスクコントロールがほとんど不可能となり,不正請求を助長するおそれもあって,市場の安定性を害することになると思います。また,補償請求処理に掛かる費用が増大し,ひいては保険料の上昇につながるため,契約者利益を阻害すると思います。   そして,次の頁を御覧ください。○○が次の点を御説明させていただきます。 ● 次に,傷害保険における偶然性の立証責任について,中間試案では,保険契約者,被保険者又は保険金受取人の故意又は重過失によって保険事故が発生したときは,保険者は保険金を支払う責任を負わないとしています。   これに対して,ACCJは保険契約者が偶然性の立証責任を負うべきだと考えています。というのは,保険者が偶然性の立証責任を負うとした場合,保険金の不正請求が容易となるおそれが増大し,保険制度の健全性を妨げ,また誠実な保険契約者の利益を大きく損なうおそれがあるからです。また,保険事故に関する情報が契約者側に多く存在すること,個人情報保護等の制約から,傷害の原因を保険者が特定することは困難だからです。 ● 以上,保険契約法改正に対する在日米国商工会議所の要望を説明させていただきました。   改めまして,今回は意見発表の機会を与えてくださいまして,ありがとうございます。   続く質疑応答は,委員代理の○○が担当いたしますが,御質問の前に○○より一言述べさせていただきます。 ● ちょっと時間をいただきまして,ACCJとしての検討の基本的なスタンス,考え方又はポジションというものを三つ,四つ申し上げたいと思います。   ACCJとして,まず第一に,保険契約法の改正については,極めて長期的な視野を基本としていろいろな検討,方向性を付けるべきだろうと考えております。というのは,ここで申し上げるのも何ですけれども,いったんこれが決まりますと,恐らく10年,20年,30年,40年,100年とは言わずまでも,相当長期にわたって継続性があるだろうというふうに見ております。   一方,そういう中で社会の変化,進展に伴いまして,いろいろなリスクが,多様性が出てくるだろう。そういうことをある程度想定しながら,つまり逆に言いますと,過去とか現在だけを見据えているのではなくて,将来的にできる限り長期を見た上でどう在るべきかということを基本にすべきだろうというのが一つのポイントです。   それから,二番目のポイントですけれども,そういう中で契約法に盛るべきものは極めて基本的な事項,言わば枝葉というのではなくて,幹になるべき部分を中心に契約法で規定していただきたいと。社会の変化とか法的環境の変化,いろいろな変化に伴って適宜アジャストする必要が考えられるような分野については,できる限り保険業法の中で機動性を持った対応をする。業法に従った政省令でさらに機動性を持った対応をする。それが本来の在るべき姿ではないだろうかというふうに,ACCJは考えております。   それから,三番目ですけれども,いろいろな改定又は修正,新たな条文の追加を行う場合には,当然のことですけれども,行う目的があるだろうと。つまり,ある課題を解決する,問題をなくする,未然に防ぐというために条文の改正をする,追加をするということが大前提になると思うのですけれども,私どもが考えるに,何かを追加する,改定するということが予定した課題の解決には役立つかもしれないけれども,逆に,予定していなかった別の分野での問題点,例えば実務上の問題点であるとか,予想もしていなかったことが起こるとかということも考えられます。ベネフィットとコスト,そういうことが常にあるだろうと考えております。   ということで,検討においては,もちろん課題の解決は必要ですけれども,常に予想されるコスト,問題点ということもよく見極めつつ,常にバランスをとったやり方でやっていただきたいと考えております。   それから最後に,四点目ですけれども,今までいろいろな議論を拝見するに,それからこのメンバーの皆さんもそうですけれども,保険会社側とか消費者サイドであるとか学者の先生方であるとか,いろいろな方が議論をされておりますけれども,どうも保険のインターミディアリー,代理店の人たちの意見が余り出てきていないのではないか。確かメンバーの中にもいらっしゃらないかと思うのですけれども,しかしながら,現在において保険の大多数がまだ,いわゆる代理店からフェイス・トゥー・フェイスでお客様の方へ販売されている。そういう中で,いろいろな現実的な問題点があるはずです。そういう問題点も検討した上で,必要な部分については保険契約法の中に取り込むということも,今となってはちょっと遅いのかもしれないですけれども,していただきたかったと。パブコメもありますので,そういうところで出てくるかもしれませんけれども,そういう現実的な問題点等も踏まえながら,条文改正,追加等々を是非行っていただきたいと。この四つがACCJとしてのこの問題に取り組む基本的な考え方でございます。   ありがとうございました。 ● どうもありがとうございました。   それでは,せっかくの機会でございますので,ただいまのACCJのお三方の御説明について,何か御質問がございましたらいただきたいと思いますが,ございますでしょうか。   ○○委員,どうぞ。 ● 時間が限られています。簡単に御質問し,また簡単にお答えいただければ助かります。   まず,11頁の未成年者の保険金額の制限のところですけれども,保険会社の方できちんとリスクを管理しているというお話ですけれども,モラルリスクの防止に対応しているということですが,最近の栃木の保険金殺人事件ですと,7歳の二男に8000万円,17歳の長男に3000万円の保険が付けられているわけです。小さな人には1500万までしか売っていないというお話もありましたが,実際にはこういう引受けをしている会社もあって,こういうことがこれからも多く起きると思うので,そういう事態も十分踏まえた上での御発言なのかと。また,そういうものに対してどういうふうに考えておられるのかというのを,簡単にお聞かせいただければというのが一つです。   あと二つですが,プロ・ラタのところで,13頁ですけれども,プロ・ラタのところでは告知の形骸化ということをおっしゃっているわけですけれども,ここの部分はお立場によって考え方が違うわけですけれども,引受範囲外のものであれば,本来引き受けられないというものを引き受けることになるということはないのではないかというような議論もされていて,簡単にはこう言えないのではないかと思うのですけれども,その点についてどうお考えかと。   三番目,始期前発病の27頁のところですけれども,これはちょっと誤解があるのではないかと思うのです。結果として契約者に過度な負担を強いるということではなくて,二つあったうちの一つ,要するに,始期前発病の趣旨はよく分かるけれども,だれが見てもおかしい場合にそれはちょっとやめた方がいいのではないかと。具体的には,契約者の方が全部わざわざ保険会社も医者の診断も選択してすべて告知していると。それで保険会社が承知の上で引き受けたのに,いざ病名が分かると,後で始期前発病は払わないと。それはおかしいという,始期前発病の使い方がだれから見てもおかしいというのを制限しようとしているわけであって,そこはちょっと理解が違うのではないかということなのです。   以上,三点です。 ● ○○さん,お願いいたします。 ● 三つ関係しているところがあります。それから,先ほど私も申し上げました四つのポイントと関係しているところがありますので,それと関連付けながらお答えしたいと思うのですけれども,まず,被保険者同意ですけれども,これなどは先ほど金額のお話もございましたけれども,5年先,10年先,15年,20年と考えた場合に,8000万とか1000万とか,お金の価値というものはどう変わるか分からない。そういう中で長期的な観点で見た場合,それからもう一つ,機動性ということを考えた場合には,11頁の問題等は,まさに私どもが申し上げた保険業法又はその政省令でやるべきではないかという,それが私どもの基本であります。   それから,27頁,始期前発病もまさにその典型といいますとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども,こういう種類のことが,本来,保険業法及び政省令で決めた方がより適切ではないだろうかというのを私どもの考えから申し上げました。   それから,13頁,プロ・ラタ主義ですけれども,これも告知云々と言った場合に,頭の中で考えているものと,事によると,現実の販売の現場において行われていることの二つの間にかなり乖離があるかもしれないなと。私,あるとは申し上げていないのですけれども,あるかもしれないと。そういうこともありましたものですから,先ほど最初に申し上げましたように,いわゆるインターミディアリー,代理店等の現実に販売に携わっている方,その辺のところの意見もよく聞きながら決めるべきではないだろうかということを申し上げたわけでございまして,例えば立証責任とか,立証という具体的な問題を考えても,例えば故意と重過失とかいった場合に,販売の現実の実態を考えると,結構難しいのではないかと,そういう実務的な観点が先にありまして,こういうことを申し上げたわけです。   以上でございます。 ● ほかにいかがでしょうか。   ○○幹事。 ● 私は二点ありまして,契約法は幹に限って枝葉は業法にという基本的なお考えについてですが,ここで基本的に議論されているのは,民事上の紛争の解決として,その要件効果を高めるという観点から必要なものという議論だったはずなのですが,その中で枝葉なものは業法に落とされるということを議論されると,業法で定めたことも民事上の効果はどうかということをまた別途考えないといけないということになりますので,その点についてのお考えをお聞かせいただきたいということが一点と,もう一点は,典型的には最後の偶然性の立証責任のところでありますが,判例の言い方で,不正請求が容易となるおそれが増大するという言い方をされていますが,アメリカ的なものの考え方でいきますと,日本語で言う「おそれがある」というのは,possibleからprobableか,いろいろな表現の違いがあるはずなのですが,そういうことを踏まえた上で,あえてこの判例の表現で出してこられたのはどういう御理解なのかということをお聞かせいただきたいと思います。 ● いかがでしょうか。 ● 最初の問題ですけれども,私の言葉がそれていたかもしれません。枝葉というよりも,内容は別として,長期的な観点からすると,極めてコアとなる民事上のものについてのみ,それを中心に契約法で定めて,社会とか状況の変化に伴っていろいろ柔軟な対応をしなければならない,した方がいいであろうものについて,かつ,保険業に深くかかわるようなことについては,できる限り業法の方がよろしいのではないかという,言わば実務家としての観点でございます。   それから,二番目については,アメリカ,日本というよりも,アメリカはアメリカ,日本は日本でありまして,法制も社会も違いますし,多分先ほど言われたのは37頁のところだと思いますけれども,私どもは実務を保険会社から見た場合には,なるべくこういうところは厳しくしておかないと,昨今はやっている,又はますますはやってくるであろう保険詐欺,この人たちが喜ぶような規定には絶対したくないという魂胆がございまして,このような発想になっているわけでございます。 ● ○○委員,何か。 ● 23頁のところで,保険料積立金の支払に関する規定を設けるべきでないというふうな御意見ですけれども,確かアメリカではNAICのルールで不没収価格法で一定の解約返戻金を払うことが強制されていると思うのですけれども,アメリカと異なるルールをむしろ日本では導入すべきだというお考えなのか,そこをちょっと伺いたいと思います。 ● いかがでしょうか。 ● 先ほどもちょっと申し上げましたけれども,確かにアメリカでそういう状況はあるということは承知しております。しかしながら,日本では,私どもは日本へ来てやっているわけですし,日本での社会の環境とか状況等々を考えた場合にはいいところ取りしてもいいのではないかと。必ずしも整合が進んでいるというわけではないと。より状況にフィットした方がよほどいいのではないかという考えをしておるのでございます。 ● なお御質問はあろうかと思いますが,あと,まだヒアリングが続きますので,大体予定の時刻になっておりますので,在日米国商工会議所からのヒアリングはこのあたりで終了させていただきたいと思います。   本日はどうもありがとうございました。 ● ありがとうございました。 ● それでは,引き続きまして,同じく保険者側の団体といたしまして有限責任中間法人外国損害保険協会の○○副会長・専務理事,同協会の会員会社であるAIU保険会社の○○法務部部長,同じく会員会社であるアトラディウス信用保険会社の○○業務企画部長,以上のお三方から御説明を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ● 有限責任中間法人外国損害保険協会,○○でございます。よろしくお願いいたします。   まず,お手元に配布されております資料の確認をさせていただきたいと思いますが,FNLIAの会員会社の事業概況という表がございます。それにFNLIAの意見というのが3頁ございます。次いで,AIU社の,特に第三分野の被保険者同意の問題に関することですが,二枚ものでございます。次に,アトラディウス社の,特殊な保険について契約法をどう適用するかということにつきましての見解でございます。以上の資料がお手元にあると思いますので,御確認いただきたいと思います。   それでは,早速,私の陳述に移らせていただきます。   まず,本題に入ります前に,本日の御出席の委員,幹事の方の多くはと言ったら大変失礼なのですけれども,私も存じ上げている方は多数おられますけれども,外国損害保険会社及びFNLIAの活動につきまして,余り御存じないのではないかなという気がいたしますので,それをまずお話し申し上げたいと思います。   現在,私どもFNLIAの会員会社は,免許損害保険会社21社,保険事業関連会社5社,この中には,今後事業免許を取得するということでスタンバイしております会社も含まれておりますけれども,合計5社,それに足しまして26社で構成されております。   その中で,ここにもございますように,AIU(アメリカ),アリアンツ(ドイツ),アクサ(フランス),チューリッヒ(スイス),そしてスイスリー,こういう会社は収入保険料,時価総額,収益規模等のいずれの指標をとりましても,世界的な規模の金融保険グループでございます。   日本の損害保険会社のように,幅広い商品を主として代理店を通じて販売する会社もこの中にはございますけれども,信用保険もしくは債務保証保険等の特定の商品を専門とする,いわゆるモノラインの会社が最近多く出てきておりまして,また,企業向けに特化しております,特に責任保険等の分野で特化しております保険会社がございます。それから,先ほども申し上げましたような世界的な大きな再保険専門会社,こういうもので構成されておりますのが,当FNLIAの協会の特徴でございます。   次いで,この表を簡単に御説明したいと思います。   ここでは,まず会社の名前が左にございまして,それから,国籍,会社の形態。現在,保険業法では支店形式と日本法人形式の二つがございますが,現在では三社が現地法人方式で進出してきております。それから,業法の中で,特定保険業ということでロイズが一社ございます。   ビジネスの形態は,先ほど簡単に申し上げましたように,複数の商品を販売する会社と単品でやっている会社,中でも15,16,17,18の4社はかなり特徴的な会社でございまして,取引信用保険でありますとか債務保証保険を販売している会社でございます。   そこから主要対象マーケットを家計分野と企業分野に分けましてマークしてございますが,これで御承知いただきたい。   それから,販売方法につきましては,代理店というかなり伝統的な方式を使っているところ,ブローカー,さらに通信販売,ダイレクトマーケティングというのがございますが,外資系の損害保険会社の日本における販売の特徴といいますのは,ダイレクトマーケティング方式を採用している会社が多いということでございます。   あとは,御参考までに,直近年度の収入保険料,社員数,代理店数,ソルベンシーマージン比率を書いておきましたが,これを見ていただきまして,現状でどういうふうになっているかということでございますが,日本におきましては,規制,日本独特の商慣習等さまざまな障壁がございまして,これはかなり減ってはきていますけれども,やはり日本の文化でありますとか伝統というものがございますので,一概に悪いとは言えないものが多々ありますが,そういう中で障壁になるものが幾つかございます。そういう障壁の中で苦戦を強いられてきておりますけれども,直近の10年間で,外国会社全体で1.8倍の成長をしております。約2倍に近いということです。   それから,マーケットシェアも直近年度末,この3月末で5.42%となっておりまして,過去20年ぐらいは大体2.3%とか2.5%ぐらいで推移していたものが大体倍になってきているというのが現状でございます。   一方,日本の保険会社は,成長がやや鈍化しておりまして,特に積立ものの不振というのがありますけれども,その影響を大きく受けておりまして成長が鈍化している。一方の会社の方は,こういう形で成長していると。しかも,モノラインを特徴とする会社の活躍が際立ってきているというのが特徴でございます。   あと,幾つか私どもで持っております一種の懸念といいますか,ちょっと苦言を含めましてお話を申し上げたいと思います。   今回の法制審議会保険法部会の開催に当たりまして,私どもFNLIAといたしましては,審議委員として選出していただきたいということを申入れいたしましたけれども,結果として実現ができませんでした。その理由の一つは,この審議会のテーマといたしまして,新たに傷害・疾病等のいわゆる第三分野が独自に新しく規律されるということになっておりますが,外国損害保険会社のポートフォリオ全体に占めます第三分野のウエイトは約40%でございます。したがいまして,当然ではございますけれども,私どもとしましては,第三分野の新しく設けられる規律につきまして極めて大きな関心を持っている。したがいまして,こういう場で是非論議に参画したいということだったわけでございます。   こういうことで,直接論議参加ができなかったということは極めて残念ではありますが,本日,このような機会を与えられましたので,これには感謝を申し上げたいと思っておる次第でございます。   今,日本政府,とりわけ金融担当者の間では,グローバリゼーションでありますとか東京マーケットの構築等の発言が多々ございます。また,ロンドンのカナリーワーフをまねしたブロックをつくるのだというようなことを発言していた大臣等もございましたけれども,グローバリゼーションというのは,私の理解では,労働,人ですね,それと資本が国境を越えて移動するということかと思いますが,こういう状況の中で,政府もしくはこういう業界といたしましては,それをどう実行できるかということを考えていきますと,やはり私ども外資の考え方に耳を傾けていただく必要があるのではないかと思います。この辺は,やや,今ごろになって言っても,もうこの審議会も終盤に近づいているわけでございますけれども,是非,委員の方,幹事の方は十分御記憶にとどめていただきたいと考えております。もちろん,本件の主務官庁であります法務省といたしましては,参事官の方々を初めといたしまして,かなりもろもろの御配慮を私どもにいただきまして,大変感謝しておりまして,この場をお借りいたしまして改めて厚く御礼を申し上げたいと思います。   それから,先ほどACCJの中で出ておりましたので,大体二番手になりますと,どうも前に発言したことを繰り返すようなことになる。別にACCJとすり合わせをしていたわけではないので,私どもの考え方で次のことを申し上げたいのですが,御案内のとおり,保険金の不払問題等,この二年半ほど,保険業界,生保も損保もそうですが,大揺れに揺れて,数多くの行政処分が出されました。この問題につきましては,やはり保険会社としては,保険の販売の末端,保険代理店,保険募集人,ブローカー等にも責任があるということで,資格制度でありますとか研修の機会,そういうものの見直しを現在しておるところでございます。   この審議会に,現場に密着している方々の意見を何らかの形で反映するという機会がどうもないように思われますし,私どもはちょっと心配だったものですから,代理店の組織でありますとかそういう方々に聞いたのですけれども,どうもこの法制審議会で論議されているということと,それからこれは当然ホームページに出ているのですけれども,中間試案が出て,それに補足説明が出ているということも知らない方々が多数おられまして,パブリックコメントが9月締切りだから,是非よく読んで,必要ならば必要な発言をする方がいいですよということを言いましたけれども,どうもそういうところが抜けているような気がいたします。   募集の面で働いている方々のニーズというのは大変多いわけです。しかも,その人たちに,今度の法改正によって,今まで以上に負荷がかかるという問題等もありますし,また,その方々のアドバンテージになるような問題もあるわけですけれども,是非こういう方々の意見を吸い上げるということが必要かなと思います。特に,契約締結権を持っております保険代理店はこの法改正に大きな関心があるわけでして,現実にこれにどう対応したらいいかというので,若干戸惑っているふうがございます。   それでは,本題の方に入りたいと思いますが,本日はペーパーを用意してございまして,今までACCJの方が発言されたことと重複するところも結構あるのですけれども,私どもとしましては,まず,全般にわたる意見を申し上げて,個別の意見につきましては,ごく簡単に触れておきたいと思います。   損害保険各社,これは共済団体を一応含みますけれども,直近年度におきまして,約6兆円の保険金を払っております。また,平成3年の台風19号は日本を襲った台風の中では一番大きな台風だったわけですけれども,ここでも約6000億円を払っているということでございます。それに,例の兵庫県の阪神・淡路大震災におきましては,日本地震再保険株式会社の限度を超えまして783億を払っているという状況がございます。   損害保険は,とりわけ地震,風水災という自然災害に対する対策が日本の場合は不可欠でございますが,その一翼を担っているということで,非常に重要な仕事をしていると私どもは考えております。   今回の中間試案というものを拝見いたしますと,現行の規律,実務で格別問題がないのではないか,要するに,保険契約者,今後保険を買う消費者,保険者双方にとりまして格別問題がないと思われるものにつきましても,規律の改正というものが提案されているところが何点かございます。そういう点では,この中間試案はどちらかといいますと,ちょっと言い過ぎかもしれませんが,理が勝った議論という印象を受けざるを得ないというのが正直な感想でございます。   先ほど申しました損害保険,生命保険も含めまして,社会に対する貢献といいますか,必要性というものを考えた場合に,幾つかの論点がございます。   保険も,ユーザーは一般の家計分野から国際的な大企業に至るまで非常に幅が広く,新しいリスクに対する新たな保険商品の開発というのが社会的に求められているところです。保険契約法は保険契約者と保険者との公平な責任の分担を基本といたしまして,保険の商品のイノベーションを阻害しない法律であってほしいと考えます。   二番目に,契約に関する基本法の一つでございますので,当たり前の話ですけれども,契約自由の原則の下で対等な私人の契約関係というものが基本になっている必要があるだろうと考えます。先ほどもちょっと出ておりましたけれども,基本法というところを若干のりしろが出て,監督法に近い部分が中に入り込んでくるというところが若干見受けられますので,その辺はやや懸念をしているところでございます。   もし,家計の分野で保険契約者を特に保護する必要があるということであるならば,これは当然ですけれども,別途特例法を設けるとか,そういう形をとった方がいいのではないかと思います。先ほどもありましたように,現行法は約1世紀,100年もたせたという形ですが,ここのところの保険契約法の改正によって,長ければ約半世紀改定がないというようなことを考えますと,そういう展望に沿ったものである必要があるというのが私どもの考え方です。   それから,保険契約はいずれも射倖性を持っておりますので,現在でもいろいろ出てきておりますけれども,保険契約を利用した犯罪,こういうものを誘発する可能性がございます。保険契約法は,保険会社の保険犯罪阻止のための防御を過度に阻害しないように,抑制しないように在るべきだろうと思います。   それから,四番目ですが,保険契約法は保険契約の利便性を減殺して,過度の運営コスト,コストパフォーマンスの考え方でございますけれども,過度な煩さな手続を要するというようなことは避けるべきだろうと考えます。   五番目に,慣行として社会的に問題なく定着しております実務,我々は実務をやっておりまして,その中でこれは変えるべきだという問題ももちろんあるわけですけれども,概して現行実務で問題がないという部分が多いのですが,実務の部分を尊重するということが必要かと思います。とりわけ企業分野につきましては,企業を保険契約者とする保険契約につきましては,できる限り市場の規律に任せるということの方がいいと。   それから,最後に,これは既に審議会で議論されておりますけれども,海上保険,航空保険,原子力保険,それから後で申し上げます取引信用ですとか債務保証保険等につきましては,国際的に標準化された約款というものを使っておりまして,また,リスクがかなり大きいということから,国際的な再保険を利用しているという部分があります。したがいまして,やはり世界的に受け入れられる内容である必要があろうかと思います。そういう点をベースにして今後検討していただきたいというのが,私どもFNLIAの考え方でございます。   次いで,個別なのですが,これは今まで出てきた問題もありますし,後で申し上げるところもありますので,キーだけちょっとお話を申し上げますと,傷害・疾病保険の位置付けでございますけれども,2頁でございます。「しかしながら」以下を見ていただきたいのですけれども,世界的にはいわゆる定額払を生保流だというふうにどうも理解している向きが多いように見受けられますけれども,そうではない。それから,実損てん補を問わず,傷害による死亡,生存に関する保険金を支払う保険は傷害保険というふうに認識されております。試案の今回の提案は,傷害保険の歴史的背景とか社会的慣行をやや無視するような内容になっているのではないかという懸念を持っております。したがいまして,次のような整理がいいのではないかというのが私どもの意見でございます。   傷害保険は,傷害に関しての一定額の金銭の支払その他の一定の給付をする。疾病保険は,疾病に関しての一定額の金銭の支払その他の一定の給付をする。生命保険は,人の生死に関しての一定額の金銭の支払その他の〔一定の〕給付,これは先ほど出ていました現物給付なんかを含むわけですけれども,そういうことで明確にこういうふうに分けた方がいいのではないかなという気が私どもとしてはしております。   それから,二番目がかなり論議が行われている問題といたしまして,被保険者同意の問題ですけれども,他人を被保険者とする保険契約に当該被保険者の同意を求める理由は,生存保険契約について同様の同意を求めないということから,いわゆる保険犯罪の阻止にあると考えておりますけれども,損害保険会社の場合は,損害保険制度の悪用の防止による社会的責任の遂行及び保険契約者間の公平性の確保並びに自己の経済的損害の回避の観点から,契約類型でありますとか契約の状況に応じまして,被保険者の同意,他保険の告知,他人を被保険者とする契約の必要性の判定等,保険会社としましては,さまざまな保険契約の引受けの可否に関する判断,いわゆるアンダーライティングをやっておるわけでございまして,さらに運用の精度を高めていくということで十分悪用は回避できると考えております。したがいまして,ここで余り過度な抑制をしないということを是非御検討いただきたい。   あと,他保険告知,保険料積立金の支払等がありますが,これはここに書いてあるとおりでございます。   五番目の保険金からの優先的な被害の回復,これは責任保険の分野で,こういうことが,世界を見回しますと,ドイツ等ではそういうことが行われているということでございますけれども,日本の場合は,まだ被害者の直接請求権を認めるというほど社会の成熟度といいますか,そういうものに問題があるのではないかと私どもは思っておりまして,直接請求権の問題は今後の検討の課題としていただきたいと思っております。   あと,一部保険,重複保険は先ほども出ていましたので,同じような内容ですから省略いたしますが,ここに書いてあるとおりです。   それから,企業契約でございますけれども,これは新たなリスクに対する保険商品の開発に対して,従来にない方式というものが求められてきておりますし,今後もそういうものが数多く出てくると思われます。特に,国際的な事業をやっております企業に対する保険契約というものがありまして,また,国際的な再保険の活用ということも分かりますので,規律につきましては,任意規定であるか,もしくはもっと自由を尊重する形をとっていただきたいと思っております。   以上が個別の問題の何点かでございますが,先ほどもちょっと出ておりましたので,二番手で話をしますと重複でお話しするようなことになるので,余りよろしくないのですけれども,今回の改正につきましては,保険契約法という基本法の問題と監督法であります保険業法との仕切りをきっちりしていただく必要があるのではないかと思います。   業法は,施行されまして今回で5回ほど改正が行われておりまして,その時々の社会状況等に合わせまして改正が頻繁に行われておりますが,やはり基本法でありますところの保険契約法はそう何度も改正をするという代物ではないのではないかと思っておりますので,その辺の仕切りをはっきりしていただくということが必要かと思います。   それから,もう一点,これは先ほども出ていましたので,同じことの繰り返しになりますけれども,長期的展望を,保険の世界も非常に大きく変わってきておりまして,商品も新たなリスクに対応する商品が数多く出てきておりますけれども,過去の100年,今後の50年という,この50年と言わず30年というスパンで考えましても,相当大きな変化があるだろうと思われますので,そういうような変化というものをある程度見通した契約法の改正というのが望ましいと私どもとしては考えております。   続きまして,AIUの○○さんの方から,第三分野の被保険者の同意問題につきまして話をしていただきます。 ● 御紹介いただきましたAIUの○○と申します。委員の皆様におかれましては,保険法の見直しにつきまして御熱心に議論いただきまして,本当に感謝を申し上げます。今回は,私どもにもこのような機会をお与えいただき,誠にありがとうございます。   さて,AIU保険会社でございますが,ニューヨークに本社を置く保険・金融サービスグループのアメリカン・インターナショナル・グループ,AIGというふうに略しますが,その主要メンバーカンパニーです。AIGグループ全体では,保険・金融サービス業界を中心に130以上の国,地域で展開しておりまして,日本におきましては,AIU保険会社の他にアメリカンホーム保険会社,アリコジャパン,AIGスター生命,AIGエジソン生命等,グループ各社が多数営業しているところでございます。   AIU保険会社でございますが,1946年,昭和21年に外資系の損害保険会社として初めて日本に進出させていただきまして,昨年で日本での営業60周年を迎えたところでございます。元受正味保険料ベースという一つの指標でございますが,外資系の損害保険会社としては最大の規模ということになっております。   さて,日本損害保険協会加盟会社といいますか,日本社の収入保険料の中では,傷害保険の比率というのは大体15%ぐらい,統計的な数字でございますが,一方私どもAIU保険会社の場合は約40%が傷害保険となっております。今回の保険法見直しに関しまして,既にいろいろ議論されているところでございますし,それから,ただいまACCJや外国損害保険協会からいろいろな意見を出していただいているところでございますが,私どもAIU保険会社からは,傷害保険の被保険者の同意のところにつきまして,絞って述べさせていただきたいと思っております。   お手元のレジュメは箇条書きにした関係でちょっと言葉足らずのところがございまして,少し足しながら申し上げたいと思います。   今回の審議会の議論等を見ておりまして気になるところでございますが,損保商品と生保商品は商品特性が異なっておりまして,実務的な立場あるいは顧客の利便性という観点を考えますと,人保険ということで一つのくくりにして,単純に生保商品と同様のレベルで被保険者の同意を求めるということにつきましては,適切ではないと考えております。   理由としまして,三点申し上げます。   まず第一に,損保商品と生保商品は商品特性が大きく異なる部分がございます。生保商品は基本的に,一般的にですが,長期でお一人一契約のような形が多いわけでございまして,言わばオーダーメイド型の商品だと考えています。一方,損保商品の方は比較的短期のもので,定型商品が中心でございまして,言わばパッケージ商品,一件の契約にかけるお客様の方も保険会社,代理店の方も手数が相当違っているということでございます。   それから,損保商品につきましては,レジュメではちょっと言い切ってしまっているのですけれども,死亡だけの単独商品というのは,特殊な例を除きまして基本的にはないということが特徴でございます。また,損保商品の場合は死亡とか死亡でないにかかわらず,基本的には急激かつ偶然の外来事故が要件となっているところが生保商品と違うというところでございます。   繰り返しになりますが,損保商品は基本的には期間1年というのが多くございまして,また,継続契約も多いという特性を持っております。同じお客様と毎年継続の手続をとらせていただくというようなことも多くて,お客様から見ますと,契約手続の頻度が多く,またお一人で何件もいろいろな契約を持っていらっしゃる方が多いわけでございまして,契約の頻度が多いという面がございます。   このような特性から,煩雑な処理を付加し過ぎますと,契約者の利便性を損なうという面がございます。それから,保険会社,代理店からしましても,生保商品よりも非常に手数が多い部分がございまして,募集上,事務処理上の負担が増え,商品によってはこういうものを取得することに困難があるということでございます。   それから,当審議会でも議論いただいておりますが,欧米での法令上の損保商品と生保商品は区別された扱いになっております。ここで区別がされているというのは,フランスとかドイツの例が示されております。アメリカは州ごとに法律が違うということでちょっと調べ切れていないわけなのですけれども,この中ではアメリカのニューヨーク州の保険法のところをちらっと見たところでは,損保と生保を区分されているところがあります。ただし,被保険者同意の部分については区別がなかったのですけれども,実態面をとらえて,団体保険でありますとか包括傷害医療保険契約でありますとか,家族保険のようなものとか夫婦間とか未成年とかについては,同意が必要なものから除外されているというようでございまして,これらのことも御配慮いただきたいと考えております。   それから,理由の二番目でございますが,既に第7回の審議会において保険商品,損保商品について分かりやすく分類,整理された資料が提出されて,そこについて御説明もされておりまして,詳細には触れませんけれども,損保商品の場合,契約時に被保険者同意の取得が不可能な商品あるいは実務上極めて煩雑な商品,あるいは一般的に懸念が小さくて問題がないであろうという商品も含まれているということを御検討の中でお考えいただきたいということでございます。   それから,販売方法です。昨今は国内旅行保険とか海外旅行保険における自動販売機というのを空港で御覧になったことがあると思うのですが,その他にインターネットとか通信販売とか,恐らく100年前には考えられていなかったような販売形態が増えてきております。また,これらも定着しておりまして,保険商品にかかわらず非対面の販売形態が一般化しつつあり,また,今後いろいろな技術革新によって,そういうものが増えていくということが予想されております。これらの販売方法の中では,被保険者の同意を取得することは困難ということを御配慮いただきたいと思っております。   それから,三番目にモラルリスク防止の観点でございます。被保険者の同意を効力要件とする理由として,賭博的利用でありますとかモラルリスクの防止でありますとか人格権的な利益の保護ということで御議論いただいているところで,それについて否定するものではございません。ただ,このうち,さきにFNLIAからも意見を出しておりますけれども,保険会社としまして,当然モラル事故というのは私ども自身の経済的損失につながるところでございまして,保険会社として悪用防止に取り組んでおりまして,一定の成果を上げているところでございます。   一方,マスコミ等で派手に取り上げられることもありまして,極めて例外的なモラル事故というのがクローズアップされ過ぎているのではないかと。そのために,大半の善良な契約者の利便性が損なわれるようなことがあってはならないと考えております。   例えば,海外旅行保険を例にとりますと,我が国の海外渡航者数というのは年々増加しておりまして,ちょっと古い数字ですが,2004年で1600万人と言われております。私どもAIU保険会社の海外旅行保険の年間取扱件数は百数十万件ございまして,また,保険金の支払も11万件という数字でございます。恐らく,損保業界全体での海外旅行保険取扱件数というのは年間五,六百万件あるのではないかと考えます。   海外旅行保険の場合は,空港のカウンターや自動販売機で,例えば出発間際に申し込まれるようなケースもありまして,簡便さとか即時性が求められております。それから,極めて例外的なケースのために,数百万件の契約一件一件に煩雑な処理を負荷することは経済合理性に欠けるのではないかと思います。   また,立法論からするとちょっと外れるかもしれませんけれども,もちろん私どもとして被保険者の同意をとることがモラル事故の防止に一定の効果があるということを否定するものではございませんけれども,一方,マスコミで取り上げられているようなモラル事故でございますが,被保険者の同意をとったら防げたかというと,必ずしもそうではないのではないか。被保険者同意がすべてを防ぐことはできないというのは,もちろん明らかなことでございまして,その点も御配慮いただきたいと思っています。   以上,実務的な観点から申し上げましたので,ちょっと立法論から外れるところもあるかもしれませんけれども,被保険者の同意につきましては,傷害保険の商品特性あるいは募集事務処理の実務でありますとか顧客利便性,経済合理性等を御配慮いただきまして,慎重に御検討いただきたいと思います。   以上でございます。 ● アトラディウス信用保険の○○と申します。よろしくお願いいたします。   当社は,信用保険に特化したモノラインの会社ですが,そのような会社としての立場から意見を述べさせていただきたいと思います。   まず,会社の紹介をいたします。当社はオランダに本社があり,世界40か国に事業展開をしています。日本における事業展開は比較的新しく,2004年12月に営業を開始しております。   皆さんの中には,取引信用保険という保険を御存じない方がいらっしゃるかもしれません。まだ日本ではそれほど知られていないのですが,企業向けの商品です。ごく簡単に申し上げますと,売買取引等に基づく売掛債権の債権者を被保険者とし,債務者,売買契約の場合は買主ですが,買主が倒産した際の焦げ付きを損害として保険金を支払うというタイプの保険です。ヨーロッパでかなり普及している保険であり,言わば社会的なインフラとなっております。我々としては,日本でもそれに近いような役割を果たすべく,事業展開をしたいと考えています。既に日本でも,国内の大手損保は取引信用保険を取り扱っておられます。また,輸出に関しては,日本貿易保険機構がずっと専門的に販売されておられましたが,2005年から民間にも開放されまして,現在では,当社も日本貿易保険機構と一緒にお客様に商品を御提供しているという状況です。   次に,商品の特性を御説明させていただきます。   保険の対象であります売掛債権は,例えば火災保険とは異なりまして,取引の日々の状況に応じてその残高が大きく変わるものです。加えて,リスクであります買主の倒産の状況というのも,日常的な資金繰りの状況や財務状況によって大きく変化します。ですから,ほかの保険と比べましても,非常にリスクの変動が激しい保険ということができます。したがって,モラルリスクの排除あるいはリスクの平準化という観点から,複数の取引を一まとめにして包括的に引き受けるという形が一般的になっております。   加えて,売買契約というのは,当然のことながら,被保険者であるところの事業主,企業が,日常的に残高を管理しておられます。ですから,保険会社と被保険者で比べると,情報が被保険者側に偏在しているということになります。したがって,損害防止軽減義務,告知義務,通知義務というのはどの保険にもあるものですが,取引信用保険では,これらの規定が特に重要です。   保険金と保険料に関しましては,保険会社によって,あるいは保険契約によっていろいろな方式がありますが,当社では,保険金については,当社で決める与信限度額というものと実際の債権残高のいずれか低い方を基に支払われます。一方,保険料については,売上高に料率を掛けて求めております。   何を申し上げたいかというと,保険法の試案に出ておりますような,いわゆる保険金額や保険価額という概念が,取引信用保険には必ずしもなじまないということです。これは,当社が日本で独特のやり方をやっているわけではなくて,ヨーロッパではごく一般的にやられている方式でして,お客様にとっても利便性がある分かりやすい方式だと考えております。   以上を踏まえまして,保険法について若干意見を述べさせていただきたいと思います。   まず,資料①は,強行規定の対象についてです。今申し上げたとおり,取引信用保険というのはお客様の事業に対してかける保険でございまして,おのずと柔軟な引受けをやらざるを得ないものです。つまり,顧客との交渉に基づいて保険条件が決定されてきます。ですから,恐らく今回の議論というのは,消費者保護,個人契約者の保護というところに重きが置かれている印象を受けておりますが,強行規定あるいは片面的強行規定というものが余り多いようですと,我々にとっての引受けの幅が狭くなります。結果的には,顧客利益を損ねるということもあり得ると考えております。   加えて,取引信用保険は,国内取引のみならず海外への輸出をカバーすることもあります。あるいは海外事業展開をしている会社,つまり外資系企業の日本支店とか,そのようなお客様にもヨーロッパで使っているのと同様の保険を提供する形でセールスさせていただいていますが,このような場合には,国際的に通用している約款をベースにやらせていただきたいと思います。この資料には書いていませんが,再保険の問題も当然ありますので,その点でも,ある程度の自由度が必要です。お客様にとっても,国によって異なる約款というのは,お客様の保険契約管理上も問題が生じることがありますし,こちらではこれで通用したのに,こちらでは通用しないということですと,例えば保険金支払の場面でのトラブルにもなりかねないと考えております。   さらに,先ほども申し上げたとおり,引受けリスクというのが非常に特殊なものですから,損害防止軽減義務についても独自の規定が幾つかございます。そのあたりは,物保険や賠償責任保険だけのベースで議論されて結論が出ているというのは,我々の会社としては非常に困るというところが正直なところです。   結論的には,試案の(前注)3のところに一定の契約,いわゆる企業保険についての検討があると記載されていますが,取引信用保険も,再保険契約やマリン契約と同様な性格を持ったものだと認識していただければ,非常に幸いでございます。   この資料の①が一番申し上げたいところで,以下は各論ですので,多少はしょって御説明させていただきます。   まず,試案2-1の「保険契約の成立」では,告知に関する事項が検討されていますが,資料の②は,これに関連した事項です。試案では,故意又は重大な過失というのが解除の要件と記載されていると思います。けれども,企業が被保険者,保険契約者である場合には,ある意味ではプロとプロとの契約と考えられますので,被保険者,保険契約者に告知義務違反があれば,重大な過失に至らなくても,保険会社側にも解除ないしは保険責任を免れる規律をつくる自由度を認めていただきたいと思います。   資料の③は他保険告知についてです。現状,我々の実務では,なるべく重複保険は引き受けないような形でやっております。そのためには,引受時に他保険告知を受けることが非常に重要であり,かつ,他保険に加入していないという告知がなければ,何らかの対抗手段をとらなくてはいけません。試案では,このあたりが非常にあいまいな形になっていますが,我々としては保険会社としての権利を認めていただきたいと考えております。   次に,試案2-1「保険契約の変動」についてです。全体を通して火災保険等の物保険を前提にされている議論だという印象を強く持っていますが,取引信用保険は,冒頭に申し上げたとおり,売掛債権という非常に変動しやすいものを保険の目的としています。したがって,危険の変動によって,保険料を追徴したり,あるいは返戻したりということは実務的にも耐えられないと思われます。具体的には,我々は与信限度額を調整することによって,危険の変動に対応しておりますが,この方法は,国際的に見ても取引信用保険の基本的な実務であり,この試案の規律が例えば片面的強行規定となれば,正直なところ,引受けに非常な混乱を来すと思われます。   同様に,超過保険の規律につきましても,保険金額や保険価額というのを前提とした議論です。先ほど申し上げたように,企業保険ということで,取引信用保険を一律強行規定の対象外にしていただければ問題はないのですが,そうでなければ,この規律も,実務的に支障を及ぼすと思われます。   最後に,資料の⑥は,保険金請求権の消滅時期についてです。現状,お客様には,できるだけ速やかに保険金の請求をいただけるようお願いしているところですが,試案では,2年ないし3年までは権利が残る形になっております。信用保険というのは,保険金請求から後の時間が非常に長く掛かります。保険金を支払った後の回収も含めると,非常に足が長い保険ですので,まず,その第一歩である保険金請求が2年も3年もないことがあり得るということを前提にすると,事務負荷が非常にかかります。何度も申し上げているとおり,お客様は法人ですので,ある程度責任を持って自らの損害を認識し,かつ,保険会社に通知していただきたいと考える次第です。 ● 若干補足しますと,今のアトラディウスの意見陳述なのですが,私どものメンバーの中には,同様の商品の認可を受けておりますコファス,フランスの会社,ユーラーヘルメス,これはドイツの会社ですが,この2社,合計3社ございます。それに名前が金融庁に似ているのですが,FSAインクというのがございまして,これは債務保証保険ということで少し違いますけれども,大体似たような規制についての懸念というのを持っているという会社でございます。こういう会社がありますので,その辺の実態をよく御検討の上,今後御配慮をいただきたいと思っております。   以上でございます。 ● どうもありがとうございました。   大体,予定の時間お話しいただいたのですが,どうしてもこの際御質問というのがございましたら受けたいと思います。   ○○幹事。 ● ○○様が御指摘になった傷害保険,疾病保険の定義に関してでございますが,御用意されたレジュメでいうと,2頁の「しかしながら」というところなのですけれども,ここでの御意見は,定額給付方式であっても損害てん補方式であっても,いずれも傷害保険契約,疾病保険契約と位置付けるべきであるという御意見かと理解したのですが,私も個人的にはここに指摘されていますように,諸外国の法制あるいは過去の我が国の立法論等を考えると,その方がどちらかというと自然であって,中間試案の考え方というのはやや異例の考え方ではあるかなという気はしておるのです。   ただ,ここで御提案になっている傷害保険の定義なのですけれども,これを見ますと,中間試案の定義とほぼ変わらないのです。中間試案でその他の一定の給付をするものと,括弧付きでありますけれども,中間試案のいう「一定の」というのは,多分定額給付という意味で書かれていると思いますので,もし○○様の御趣旨どおりにこの定義を提案するとすれば,「その他の給付をするもの」というか,あるいは「その他の契約で定めた給付をするもの」というふうに定義をする方が正確なのではないかと思うのですが,いかがでしょうか。 ● おっしゃるとおりでございまして,前に金融庁の方とお話をしたときに,実損てん補は損害保険で,定額給付は生命保険だということをお話しされましたので,びっくりいたしまして,そうではないと。損保の場合にも定額給付,実損てん補,両方の方式がある。むしろ現状で各種の実態を調べますと,定額給付の方がどちらかというと多いです。それから,先生のおっしゃったとおりなので,書き振りがちょっとまずければ,その辺直しますけれども,おっしゃったとおりのことで,私どもとしましては試案で述べられておりますものにつきましては,再検討をお願いしたいということでございます。 ● ○○委員。 ● ○○様御発表のところについて,一つ質問をさせてください。   責任保険に被害者の直接請求権を認めてはどうかという中間試案に対して反対であるという御意見がございました。その理由として,口頭でお話しくださったところは,私の記憶が誤っていなければ,社会の成熟がそこに至っていないということをおっしゃられたように思います。そこについての御質問なのですが,そこでおっしゃっている社会の成熟というのは何を指されているのかというのが一つと,社会の成熟と被害者の直接請求権を認めるルールとの関連について,何らかのお考えがあるのだろうと思うのですが,そこについて御説明をいただけますと幸いです。 ● 社会の成熟といいますか,社会の構成員であります国民の成熟度の問題だろうと思います。現在,直接請求権を認めますと,大いに混乱をするのではないかなと思います。これは,過去いろいろな薬害でありますとか食品の中毒の問題とかというのがありまして,その辺の実態,マスコミの取り上げ方の問題,先ほどちょっとマスコミ問題につきまして出ておりましたけれども,そういう意味では,やはりこの問題につきましては慎重を期した方がいいと,口頭で申し上げた部分はそういう趣旨でございます。 ● ○○幹事。 ● これは事実関係だけ,○○様にちょっと御質問したいのですが,AIU保険会社での海外旅行傷害保険の年間取扱件数が百数十万件,保険金支払が約11万件という御報告がございましたけれども,このうち,死亡保険金の支払件数,何件ぐらいか分かりますでしょうか。 ● 手元に数字を持っておりません。申し訳ございません。必要であれば,調べてお答え差し上げます。 ● 後ほどで結構ですので。 ● もし可能なようでしたら,後日でもお知らせ願います。 ● 後日,事務当局の方にお答えいたします。 ● それでは恐縮ですが,時間の関係で,有限責任中間法人外国損害保険協会に対するヒアリングを終了したいと思います。   本日はどうもありがとうございました。   それでは,ここで休憩します。           (休     憩) ● それでは,再開したいと思います。   次は,中小企業ユーザー側の団体といたしまして,全国中小企業団体中央会の○○専務理事から御説明を伺いたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。 ● 御紹介いただきました全国中小企業団体中央会専務理事の○○と申します。本日はこのような場にお招きいただきまして,意見発表させていただきます機会を与えていただきましてありがとうございます。   通常,中小企業団体ということですと,商工会議所あるいは商工会というものが頭に浮かばれるかと思います。商工会議所が都市を中心とした中小企業者の地域割の組織,商工会は町とか村に居る中小企業者の組織ということになりますが,私どもはそういう地域割の団体ではございませんで,協同組合を中心といたしました中小企業組合,組合組織を束ねる都道府県中央会があり,全国団体ということで,ちょうど商工会議所の日本商工会議所に当たりますのが,私ども全国中小企業団体中央会ということでございまして,昭和31年に設立いたしておりまして,中小企業等協同組合法,さらには中小企業団体の組織に関する法律という二つの法律に基づいて設立されているわけでございます。   本日は,ユーザーである中小企業者としての立場,それからもう一面は,実はサプライヤーとしての立場というのもございまして,これは私どもの会員の中に中小企業のいろいろな協同組合がございますが,そちらが共済ということで,生命共済あるいは火災共済という事業をやっておりますので,それからまた火災共済組合というのもございまして,これは火災共済を専門にやる組合でございますが,そういったユーザーとしての組合も傘下にございますので,その両面からお話をさせていただきたいと思います。   ただ,最初に意見発表されました方々,保険会社ということで,非常に専門的な御意見でございましたのですが,私どもの方は非常に大ざっぱな議論しかできないということをまず最初にお断りを申し上げておきたいと思います。   私どもの会員数を申し上げ忘れましたのですが,ざっと3万2000の中小企業組合が私どもの傘下にございます。その組合の傘下に組合員である中小企業者が居るわけでございますが,ざっと300万企業です。日本全国で中小企業は430万ございますので,そのうちの300万ということですので,大体,組織率ということになりますと,7割の組織率を持った団体ということになりますが,これは商工会議所とか商工会に比べますと,非常に高い組織率ということでございまして,私どもが中小企業を代表した団体の一つであると自負しているところでございます。   そこでまず,ユーザーとしての意見ということでございますが,共済については,いわゆる組合組織の中で組合員の利便のために共済事業をしているということになりますので,通常の民間保険会社が多額のコストを掛けて,広告宣伝費でありますとか募集経費を掛けて保険を募集しているというそこのところのコストが必要ないということでございますので,共済の掛金というものは一般の民間の保険料よりは安く設定することが可能であって,組合員のメリットというのもそこにあると言えるかと思います。   キャッチフレーズ的に言いますと,「小さな掛金,大きな安心」でありますとか,あるいは「家計に優しい掛金,支払もスピーディー」と,こんなようなキャッチフレーズが募集のパンフレットには載っかっているわけでございますが,実際,例えば生命共済の場合にも,いざ保険事故,死亡したというような場合にも請求手続が簡単で,かつ,支払が普通の生命保険よりも早いと言われております。ただ,共済をかけている中小企業者も,さらにそれに加えてほかの生命保険に加入しているということも何割かはあると聞いております。   今回の中間試案の中にも,信義に従って誠実に行動するという一般規定を設けたらどうかというような御議論があったかと思いますが,これにつきましては,昨今の保険金不払事案の反省ということ,それからまた,保険金殺人のような痛ましい事件の防止というような観点からも,是非こういった規定,これは努力規定にすぎないと言われればそれまででございますが,それにしても,こういった規定はあった方がいいのではないかなと思っております。   それから,中小企業としての保険の利用ということで,若干特徴的なことがございます。それは,生命保険を事業承継の場合にうまく活用するというようなケースが若干あるということでございます。例えば,死亡保険の受取人を遺産相続人に指定しておくことによりまして,相続税の納税資金を確保するというような使い方があるようでございます。また,例えば,受取人を複数指定するということも可能でございますので,その受取人の指定をうまくすることによりまして,財産分割のバランスをとるというような使い方をする場合もあるやに聞いております。   事業承継ということを考えますと,兄弟が何人かいる場合に,例えば長男に事業を引き継がせたいというときには,遺産相続は長男の方に集中させるというようなことがございます。これは,もちろん民法上の遺留分というのがございますので,その範囲内でということになるわけでございますが,そうした場合に保険金の方で,集中させなかった方の兄弟に手厚くするとか,そういったバランスをとるのに生命保険を利用するというようなケースがあると聞いております。ただ,これは統計的にそういった利用をどれぐらいの方がしているかというのは,なかなかそういった統計もございませんので,よく分かりませんけれども,そういったケースがあると聞いております。   それから次に,サプライヤーとしての意見でございますが,この共済につきましては,保険業法とは別途,私どもの中小企業等協同組合法でありますとか,あるいは農協法,生協法というようなところで,いわゆる保険業法的な規制をいたしております。共済につきましても,若干好ましからざる事案というものが出てきたということもございまして,本年4月1日から施行されております中小企業等協同組合法の改正によりまして,保険業法と同程度の規律を中小企業の共済事業にもそういった規律を課すというふうにしたと。逆に言いますと,組合員の保護をそれだけ手厚くしたといったことがございます。   共済には,非常に小規模なものから大規模なものまで非常に範囲が広うございまして,小規模のものですと,例えば慶弔見舞金程度のいわゆる保険の大数の法則の働かないような非常に小規模なものもございます。したがいまして,どの程度のものが保険法の適用になるのかというあたりは,はっきりと規定していただいた方が,現場でもって,これが保険法の適用になるのかどうかというような疑義が生ずるということでは現場に混乱を来すというおそれも考えられますので,その辺は御配慮をいただければと思うわけでございます。   それから,規模の大小ということ以外に,共済としての質的な違いと申しますか,共済の場合には組合員自らが出資をする。それで,事業の運営にも自ら参画するというようなことがございます。また,組合の大原則といたしまして,組合員の相互扶助のための事業であるということで,非営利ということが大原則というふうになっておりますので,そういった面で営利事業として行われております保険と異なる面も多少あるのではないかなと思っております。   今回御議論いただいております保険法につきましては,多くの部分で任意規定ということで規定するのだと伺っておりますので,そういったことであれば,特に今申し上げたような共済と保険の質的な違いから来る相違点ということで共済の方がちょっと困るということは生じないと思うわけでございますが,そういう前提の下で若干気になる点を二,三指摘したいと思います。例えば,共済の場合には,料率算定書というところまで総会あるいは組合員の数が多い場合には総代会ということになりますが,そういったところでの議決事項となっているわけでございまして,これが保険法の規定が仮に強行的に適用されるということになりますと,協同組合の意思の決定手続,そういったものとバッティングするような可能性が出てくるというおそれがあるということだと思っております。   それから,先取特権というような部分もございますが,協同組合の場合には本業というのがございまして,それとともに共済事業も兼業しているということがほとんどの場合でございますので,そういった場合に先取特権が適用されますと,出資者である組合員に影響が出てくるというおそれがあると思っております。   それから,そのほかに生命保険の保険金受取人の指定,あるいは保険金請求権の譲渡,遺言による保険金受取人の変更というような規定が予定されているということでございますが,共済の場合には組合員のための共済ということになりますので,一定の範囲に受取人を限定しておりまして,基本的には「生計を一にする者」というところに受取人を限定しているということがございまして,その範囲で受取人の指定をする場合にも,共済者の側の承諾を要件としているということでございますので,そういったところが若干引っ掛かってくる可能性があるのかなと。あるいは,実務上質権の設定は認めておりますけれども,その譲渡というところまでは現行の実務では認めていないというようなところがございます。   それから,生命保険の保険者の免責につきましては,現行,共済におきましては,自殺免責期間,大体1年というのが多いようでございますが,そういったことを設定しておりますとか,あるいは戦争,内乱の削減払というようなこともございまして,そのあたりが,先ほど申しましたように任意規定であれば特に問題はないと思っておりますけれども,若干共済の特殊事情というようなところがあるのかなと考えております。   私からは以上でございます。 ● ありがとうございました。   それでは,ただいまのお話について,何か御質問ございますでしょうか。--ございませんでしょうか。   それでは,○○様に対するヒアリングをこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。   それでは,続きまして,消費者ユーザー側の組織といたしまして,独立行政法人国民生活センターの○○相談調査部長から御説明を伺いたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。 ● 独立行政法人国民生活センター相談調査部の○○と申します。よろしくお願いいたします。   私ども国民生活センターでは,全国から消費生活全般にわたる相談の情報を集約しております。パイオネットと称するデータベースに全国からネットワークでつないだ情報が入ってくるということで,それの収集,分析及び国民生活センター独自で相談処理も行っております。   今日は,保険法の見直しに関する意見ということで,その背景となっておりますような保険にかかわる消費者の苦情がどういう傾向であるのか,どういう苦情が届けられているのかということを中心にお話をさせていただきます。資料に従いまして御説明させていただきます。   まず,1頁を開けていただきたいと思いますが,先ほど申しましたように,パイオネットというネットワークのデータベースシステムに全国の約500か所を超える消費生活センターからの相談が寄せられております。例えば,2006年度は年間で110万件ぐらいの苦情データが寄せられておりまして,非常に膨大な数の苦情が入っていると御理解いただきたいと思います。ここに入れております図は,生命保険と損害保険の年度別の苦情件数ですけれども,一見して分かりますように,生保,損保ともに年々苦情件数は増大を続けているという状況でございます。2006年度を見ますと,生保あるいは損保ともに過去最高の相談件数ということになっておりまして,合わせますと2万件ぐらいの苦情ということになりますが,先ほど言いましたように,消費生活全般が100万件ちょっとということですから,2%ぐらいが保険絡みの苦情で,決して小さい数字ではないと考えております。   このように苦情が増大しました背景としましては,やはり昨今の保険金不払問題等の社会的な生・損保への批判といいますか,不満というものが背景になっているものと思われます。もちろん,保険自体に関する苦情が増大しているということもありますけれども,やはりそういった社会的な報道等に対する反響相談というものも非常に多く入っているように思われます。過去にも,例えば2000年度あたりは,グラフには入っておりませんけれども,破綻にかかわる苦情が一気に増大したことがございまして,そのときも生保で1万件を超えたというようなこともあるのですが,そのときよりも今は苦情件数が多いという状況になっております。   次の頁を見ていただきますと,ここにも生・損保で二つの図を入れております。これは,それぞれの主な相談内容はどういうものかということを表した図でございます。契約,解約というものが全体の8割を占めて,これは保険という商品から当然だろうと思いますけれども,特に解約という形の苦情が生・損保ともに多いということが非常に大きな特徴かと思います。   それから,販売方法につきましては,生命保険が3割を超えるということで,損保に比べて大きな比率になっております。これは,例えば販売員,営業職員の強引な勧誘であるとか,あるいはセールストークに問題があるとか,販売面での苦情が特に生保の場合は多いということから,このような比率になっております。   接客対応というものもございますが,これは逆に損害保険が非常に高い比率になっております。この接客対応というものの内容としましては,アフターサービスであるとか,クレーム処理であるとか,あるいはまさに接客の対応,態度の問題なのですけれども,後で事例でも触れますように,損害保険の場合は特に,契約時には非常にニコニコと笑顔で接していただけるのですけれども,一たび保険金請求という段階になると非常に冷たい,対応が悪いというのがこういう数字になって現れているものと思われます。   次の頁を御覧いただきます。   これは,契約当事者の年代別割合ということで,ちょっと見えにくいかもしれませんが,何十代がどれぐらいの割合かということを示しておりますが,例えば生命保険を見ますと,60歳以上という比率を見ますと,やはり年々増加を続けておりまして,最近では全体の5割を超えているという状況でございます。これは,いろいろと背景があるかと思われますが,高齢者になってからトラブルがあるということでは必ずしもなくて,若いころに入った保険が例えば満期を迎えた際に,配当金が以前パンフレットで言っていた内容と違うとか,説明された内容と違うとか,あるいは保険金を請求する段階になって不払のトラブルが発生する。医療保険等の問題も入院給付金が出ないとか,そういった問題が背景にあるかと思います。   損害保険もやはり高齢化傾向が続いておりまして,これは第三分野のウエイトが高まってきているということからも,このような傾向は現れているのではないかと思っております。   続きまして,では具体的にどのような相談が寄せられているのか,今日は九つほど事例を用意してはいるのですが,すべて御説明するだけの時間がないと思いますから,ごく簡単にさわりだけでもお話をさせていただきます。   まず,告知義務の問題なのですけれども,これはよくあるケースかと思いますが,すべて保障されるというような勧められ方をして,営業職員には検査に病院に通っていることを伝えた。そうすると,営業員は告知書に書く必要はないと言われたので記入しなかったけれども,その後ガンになったということで入院・手術給付金を請求したところ,告知義務違反だということで払われないというのは納得できないというような苦情でございます。このように,すべて保障されるというようなメリットを強調するセールストークというのは非常に多くて,逆に告知義務違反による解除というようなデメリットにかかわる説明を営業職員からされるということは余り聞かない,非常に説明が不十分であるだろうと思われます。   消費者の場合,営業職員は気心が知れている方が多くて,割と通院歴とかしゃべっていることが多いのですけれども,営業職員の場合は,やはりどうしても契約がとりたいということがあるのだろうと思います。ということで,告知書に書く必要はありませんというようなことを言ってしまうというケースが現実には多いかと思います。   消費者からすると,保険会社の名刺を持ち,封筒を持って,パンフレットを持って来る営業職員というのはまさに会社側の人間ですから,その方にお話をするということで,いや,それは大丈夫ですと言われることによって安心してしまう。まさか後日このような問題が発生するとは思わなかったということで,不注意もあるのかと思いますが,こういう問題というのは後を絶たないと考えております。   二番が,責任開始前の発病ということです。これは,きちんと告知書にも書いたということなのですけれども,実際には責任開始前の発病であるということを理由に払われない。医療,入院・手術給付金等が支払われないという事例でございます。このように,正しく告知しても契約前の発病を理由に支払われないということがあります。これでは,宣伝文句と違って,将来の不安に備えるための保険と消費者側は考えているわけですが,それがいざというときに役に立たないのでは納得できない。我々としても心情的には非常によく分かるということですが,約款上はそうなっているということになるかと思います。   次の頁に進ませていただきます。   三番目が,約款の陳腐化という問題ですが,この方の場合は25年前に医療特約付きの保険に加入したということです。ところが,最近前立腺ガンの小線源療法という,新しい先端治療だろうと思いますけれども,それを受けて,手術給付金等を請求しました。けれども,この保険契約では小線源療法という新しい治療方法については給付金の対象にならないと言われて,支払われないことが分かりました。   本人からすれば,入院給付金あるいは手術給付金特約付きの保険を25年間かけていたにもかかわらず,実際にその段になってみると,いや,昔の約款では入っていませんよということで,新しい医療技術の進歩に伴って次々に新しい治療方法,手術等が開発され,それが一般化するにもかかわらず,開腹手術でもしなければ払えませんということであれば,約款の陳腐化というのは由々しき問題ではないだろうかと思われます。また,保険契約は何十年というような長い契約が通常なのですけれども,一度加入しますと,その後の情報提供とかあるいは注意喚起というものが十分に行われていないという状況があるかと思いますので,このような苦情がどうも発生してしまうという問題が生じております。   四番目が配当金の問題です。これもやはり25年前に加入したようなのですが,65歳から5年ごとに祝い金が支払われるということで,85歳までに300万円が受け取れるということで契約をしたわけですが,実際にそのもらえる時期になってくると支払われないということが分かりましたという苦情です。   保険会社に問い合わせたところ,パンフレットに「配当金額は今後変動することがあります。したがって,将来の支払を約束するものではありません」という記載があるということで,確かにそういう記載はあるわけですけれども,本人からすれば,あるいは当時の営業職員の説明からすれば,5年ごとに祝い金が出るということだけが強調されて,まさか出ないという事態があるとはその当時は全く予想できなかったという状況です。消費者側がそういう不満を持つというのも当然かと思われます。運用の状況によって,かなり当初の配当の予定を下回ってしまうということはあり得るかと思いますが,5年ごとの祝い金が全く出ない,ゼロであるということについての問題は,あるのではないかと思っております。   次は,五番目です。これは他者を被保険者とする保険契約ということで,これは80歳の男性ということで非常に高齢の方なのですが,保険の契約を勧められて,自分が死んだときに葬式代が払われるのであれば入ってもいいと伝えたところ,よい保険があると言われて契約したと。その後,保険会社からのお知らせが来たので家族と相談したところ,自分の葬式代ということではなくて,孫が死んだときに,つまり孫が被保険者になっているということを知って驚いたと。自分が希望した内容と全く違うので取り消すように求めているのですが,御本人の署名捺印があるということから,それはできませんという形で断られているというケースでございます。   六番目が超過保険の損害保険のケースですけれども,よくあるケースだろうと思いますが,30年前に新築した自宅に1500万円の火災保険を更新しながらずっと払ってきたと。最近,マスコミの報道で超過保険の場合は無駄になってしまうことを知って問い合わせたところ,自宅の保険価額が幾らかは把握していないということであった。これまでの設定がずさんだったのではないか,つまり超過部分を知らずに支払わされていたのではないか,それについて,保険会社もきちんと査定等のしっかりしたものをしていなかったのではないかということから苦情になっております。   こういう報道を受けて,過払分の保険料を返してほしいという苦情は非常に多く寄せられております。家屋であるとか,あるいは自動車,車両等もそうなのでしょうけれども,物保険に共通して,保険会社が契約時に適正な保険金額,保険料の設定をしていない,あるいはまた,更新時にもその後の価値の変動を踏まえた適正な見直しを行っていないのではないか。多くの消費者の場合は,契約時の付保額を自動継続しているということで,担保価値に見合う金額の保険料になっていないということがあるかと思われます。   次の頁ですが,七番目が自動車保険の被害者への対応ということです。これは,車両同士でぶつかって,こちらの過失はゼロのケースなのですが,頚椎損傷ということで入院して,その後も通院を続けていると。ところが,保険会社側から治療費の支払を打ち切るとの連絡が一方的にあったと。医師は治療を継続する必要があるという診断をしているのに,保険会社はこのようなケースでは3か月が限度だということで,非常にもめてしまうというケースです。   このように,加害者側の保険会社と被害者,個人の保険金をめぐっての交渉というのは,そもそも直接の契約関係がない上に,巨大な保険会社と個人という関係,それから,支払う側ともらう側との力関係の差というか,そもそも交渉にはならない。したがいまして,一方的な決定がなされて,それをのむか裁判でもするかというようなことしか選択の余地がないということが,非常に消費者を苦しめているといいますか,つらい立場に立っているという状況があるかと思います。   続いて,八番が住宅ローンの借換えをすることにして,銀行窓口で手続をとったということなのですけれども,その後死亡し,保険会社は告知義務違反があったので保険金は払えないということで,死亡後も遺族が住宅ローンを返済し続けることになったと。借換え手続の際に,銀行員から告知が重要なことであるとか,あるいは告知義務違反をすると保険金が支払われなくなるといった説明がなかったと。そういう説明があれば,こうした借換えはしなかったというのが苦情の内容でございます。   このように,団信保険等で保険契約者は銀行ということになりますが,ローンの利用者が被保険者という関係の中で,被保険者の同意というのは当然なのですけれども,告知義務違反の説明義務というものがどこにあるのかというのが必ずしも明確ではない。しかし,死亡事故が発生した場合に,告知義務違反が問われた場合の影響というのは非常に深刻でして,多くの場合,御主人が亡くなって住宅ローンだけが残されてしまうということで,家族が支払うのか,あるいは家を手放すのかというような非常に重大な影響を与えているということがあるかと思います。   続きまして,次が銀行窓口販売なのですが,これも最近非常に多くなりました内容ですが,このケースでは,定期預金が満期になったので来てほしいということで電話があって銀行に出向いたと。そうすると,金利がよいとか元本保証だと説明されて,本人からすると銀行で勧めるのですから預金だろうと思ったとのことなのですが,ところが,その後保険証券が届いて,変額個人年金であるということを知ったと。保険に入るつもりはないので解約したいと言ったところが,非常に高額な手数料が掛かると言われたということです。   このように,銀行窓販におきまして,変額個人年金等が非常に多く販売されているわけですけれども,多くの場合,まとまった資金を持つ高齢者が主な勧誘の対象になっている。しかも,この事例のように定期預金が満期になったから来てほしいという形で呼び出されたり,あるいは銀行員が訪問したりという形で,ある意味で預金の情報と連動していると思われるような状況があります。   この相談者も70代の方なのですが,高齢者の場合は銀行に対してある種の信頼感というのが非常に高いものですから,銀行は悪いものは勧めないとか,あるいは元本保証であるということを非常に強い信念を持って考えていると。銀行員も元本保証ですよという言い方をしているとかということなのですが,実際には70代で入って,例えば据置期間が10年とか,あるいは保険期間がさらに10年とかということになると,90歳とか100歳とかそこまでいかないと元本部分が取り返せないということになりますので,その間,高齢者としては非常に多額な資金が拘束されてしまい,苦しい状況に陥ってしまうという状況があるかと思います。銀行の信用が傷つけられるといいますか,傷つけているといいますか,そういう面があるのではないかと思っています。   最後の頁なのですが,相談処理から見る問題点ということで,五点ほど挙げてみました。   まず,消費者には告知義務違反とか契約前発病といった保険の仕組みに関する詳細な知識はない。また,どんな特約を付けているのかとか,どのような場合に支払われるかといった内容についても十分理解していないというのがほとんどです。相談に来られる方はほとんどと言っていいほど,例えば自分の保険が終身であるのか定期なのかとか,医療特約といっても,とにかく入院や手術すれば出るのでしょうと思っているのですけれども,それがいろいろ条件があったり,制約があるということについてよく分かっていない。   二番目が,医療特約における入院・手術給付金の適用等について営業職員等による不十分な説明により,消費者が通常,期待あるいは理解している保障内容と実際に保険会社が保障する内容に大きなずれが生じていると。先ほど言いました先端医療技術が古い保険では対象にならないというようなこともほとんどの保険の加入者は知らないということで,手術してみてから払われないことが分かるということについては,非常に大きなずれが生じているのだろうと思われます。   三つ目が,営業職員等がすべて保障されるとか,告知しなくても大丈夫といった説明は,後日,言った言わないの水掛け論になることが多いこと。ほとんどの場合,保険会社は確かに営業職員がそう言いましたなどとは,我々が交渉しても認めてもらえません。保険会社は,保障内容や告知義務違反等について約款に記載されていると主張しますけれども,そもそも約款には専門用語が羅列されていまして,一般消費者にはほとんど分からないということがあるかと思います。また,消費者は約款の内容よりも知り合いの営業職員等が口頭で説明した内容を信用する。つまり約款の細かい文字は読みたくないけれども,あなたが大丈夫と言ったのだから信用するということがほとんどであるために,後日こういった告知義務違反等の問題が生じた場合には,消費者は一方的に被害を被るという状況があるかと思います。   それから,保険金の支払に係る詳細な基準,例えば入院日数が二回にまたがったり,三回にまたがったりといろいろあるのですけれども,入院日数の算定方法等が約款に細かく記載されていない場合がありまして,それは内規と言われるような社内規定で定められているようなのですが,それ自体が消費者に示されていないということから,それによって保険の支払の可否が決まるというのは,非常に問題ではないかと思っております。   最後に,消費者,特に高齢者の年齢とか契約の目的あるいは理解力に照らして適合しないと思われるケースでも,保険会社は契約書に署名捺印があるので,理解,納得して契約していると主張されることが多いと思います。最近はリスク性のある保険商品も増えておりますので,このようなことについての適合性を踏まえた説明責任というものの在り方がさらに問われる状況になっているのではないかと思われます。   ということで,以上,私どもの報告をさせていただきました。 ● どうもありがとうございました。   それでは,ただいまの御説明について,何か御質問ございませんでしょうか。   ○○委員,どうぞ。 ● 簡単に。また,お返事も簡単で結構なのですが,三つほど。   まず最初に,4頁にあります世代別の割合なのですが,60以上の方が非常に多く増えていると。これは,先ほどの銀行の窓販関係の影響が大きいのでしょうか。人口に占める割合から見ると,相当多いですね。   二番目が5頁の始期前発病の問題ですけれども,これは相談の割合としては相当多いと考えてよろしいのでしょうか。   三番目は最後の銀行の窓販のケースですけれども,これは最終的にどう解決されるのか,結局,泣き寝入りでおしまいになっているのか,そのあたり,もし分かれば教えていただければと思います。   以上です。 ● まず,年齢別の部分です。これで,60代が生保の場合も特に非常に増えているということなのですが,確かに窓販の件数,割合も非常に増えてはいるのですが,5割を超えた原因が窓販かというと,そういうことではなくて,要するに,若いときに入った契約が,例えば支払の段階になって,本人はもう70になっているということになりますと,そのときに苦情を申し出ますので,苦情を申し出る方の年齢が非常に高くなっているということです。通常の人口における高齢者の比率よりも,当然,保険という長い契約の内容になりますので,割合としては増えるのではないかと思っております。もちろん,それに加えて,高齢者で新たに入れますような保険とか,あるいは窓販による個人年金の保険とか,そういったものの比率も一方で増えているという状況はあるかと思います。   それから,二番目が契約前発病の比率は多いかということですが,これはそんなにまだ多くないと思います。それよりは告知義務違反の苦情件数等が多いと思いますが,不払問題が大きな問題になる前ぐらいの段階では,これも結構あったかなと思われますが,比率的なものは決してまだ多くはないと思います。   それから,最後の9の事例,窓販のこういうのは泣き寝入りかということなのですが,泣き寝入りになる場合が多いと思われます。したがいまして,こういうケースでは高齢者はもう続ける意思がないと。そんなお金を10年,20年預けておくつもりはないということから,損をしても解約されるということを選択されることが多いです。ただし,我々もいろいろ相談の中で交渉を重ねて,実質的に手数料のない形で取消しをするというケースも一部にはございます。 ● ほかにいかがでしょうか。   ○○委員,どうぞ。 ● ありがとうございました。大変貴重な事例を聞かせていただいたのですけれども,3頁の相談内容のところで,一つちょっとお聞きしたいのですけれども,こういった相談内容を分類するというのはとても難しいと思うのですけれども,これを見せていただいて,後ほどの事例がこの四つのどれに入るか,私自身よく分からない。分類というのはすごく難しいものだなと思うのですけれども,ここでいきますと,契約,解約を一緒にされて8割あるのだということなのですが,例えば,契約と販売方法あるいは解約と接客対応がかなり相関が強いような感じもしますので,一つお聞きしたいのは,契約と解約をもし分解したら大体どのくらいに分かれているか,もし分かれば教えていただきたいと思います。 ● この相談内容分類というのは,先ほど言いましたように,パイオネットの設立当初から採用しているものなのですけれども,全体で九つキーワードといいますか,契約,解約とか接客対応とかこういった内容分類があるのですが,相談の一件一件について,相談カードに記載する際にマーキングをしていくような形です。したがって,例えば契約に絡む問題で,販売方法も実は強引な販売方法で無理な契約をさせられたという場合は両方にマークしますので,したがいまして九つを全部トータルしますと,当然100%を超えるということで,一つの相談についてどういう要素が含まれているのかということを,主に相談現場の相談員等がチェックしていく。それの集計でございまして,確かにおっしゃるとおり,契約と解約というのは,そもそも一つにするものではないと我々も実は思ってはいるのですが,従来からそのやり方でやっているということで,統計上こういう形しかとれないということになるかと思います。 ● まだ御質問があるかもしれませんが,時間の都合もございますので,国民生活センターへのヒアリングをこれで終了したいと思います。本日はどうもありがとうございました。   それでは,引き続きまして,同じく消費者ユーザー側の団体といたしまして,社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の○○常任理事・消費者相談室室長から御説明を伺いたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。 ● はじめまして。社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の○○と申します。今日は,このような審議会の席で意見を発表させていただきます機会をつくっていただきましたこと,大変光栄に存じております。   まず最初に,簡単に私どもの協会について,民間の消費者団体ということで御存じない委員の方々もいらっしゃるのではないかと思いまして,お手元の資料,それからパンフレットも一部御用意させていただいておりますので,簡単に御説明をさせていただきたいと思います。   私どもの協会は昭和63年に設立いたしまして,消費生活アドバイザー,消費生活コンサルタントという各企業の消費者相談の窓口又は行政の相談窓口に多く在籍している有資格者の集まりとして発足いたしました。その中で,私どもの相談室につきましては,平成3年から行政の消費者相談窓口が閉庁する土曜,日曜のみなのですが,「ウィークエンドテレホン」と銘打ちまして,電話による御相談を全国から承っております。   今までの相談に関しましては,助言,仲介,あっせん等により,民間の消費者団体として苦情解決を行って,18年度の実績では,東京と大阪で4500件以上の御相談を受け付けさせていただいております。こちらの対応者は,現在各地の消費生活相談の窓口で相談員をしております約70名の相談員が,土曜,日曜交代で担当しております。   今日は,私どもの相談室もしくは相談員が実際にあっせん,解決させていただいた事例を現状の保険契約に関するトラブルの実態を御紹介させていただこうと思いまして資料をつくりました。ただし,私ども相談員という立場で聞き取りをし,資料等を拝見し,それから,あっせん行為では事業者の方とお話をさせていただく中で解決を図っていきますが,今回,時間的な制約もございまして,資料等の確認をしていないものも多く,また私ども相談員の知識の限界等もございますので,御紹介する事例に関しまして,不確実な表現等も多々あるのではないかと危惧いたしております。ただ,これが消費者の代弁者,相談員,現場の声と御理解いただきまして,是非御一読いただければと思います。それから,私なりの消費者側としての意見も今日のレジュメに書かせていただいておりますので,時間の制約がございますので全部きちっと御紹介させていただけるかどうか,早口で申し訳ないのですが,これから発表させていただきたいと思います。   2頁から事例を20,準備いたしました。私どもなりにトラブルの問題点としてある程度分類してきたつもりですが,問題は一つではなくて,いろいろな要素を含んでいると思われます。すみません,不慣れなものですから,このレジュメを読ませていただく形で御紹介いたします。   A,2年前に医療保険に勧誘された時に,ひざの痛みで通院中であると担当者に話したが,それぐらい大丈夫ですよと言われ,告知書に書かずに加入した。4か月前にひざの手術をし,20日間入院したので,入院給付金と手術費の保険金を請求したところ,告知義務違反と言われた。担当者の言葉を覚えていたので交渉したところ,当初から契約がなかったものとして既払金30万円弱の保険料が返された。勧誘した担当者は,長年火災保険に入っている会社の人で,自宅に訪問されたときに勧められて契約した保険だった。70代の女性からです。   B,入院特約付きガン保険に加入。加入後,糖尿病で入院したので給付金請求したところ,一年半前の会社の定期健診の症状が原因で告知義務違反と判断されて契約解除になった。定期健診の結果は高脂血症で「要医療」と書いてあったが,病院にかかってもいなかったし,告知することもないと思っていた。それに,勧誘の営業マンにも話してあった。告知のどの部分が違反なのか分からず,今回の入院は病名も違うので,会社の対応に納得できない。60代男性からです。   告知義務違反に関する相談は,営業担当者絡みのことが多く見られます。保険の申込みを引き受けるかどうかの判断は会社であり,生命保険会社と損害保険会社で,営業担当者が会社の代理者であるのか否かの違いは,担当者が消費者にはっきりと言わない限り,消費者には区別できません。営業担当者の立場をしっかり消費者に伝え,告知書に記入する事柄が自分が入る保険にとって最も重要であり,保険金が出るか出ないかを左右することだと理解できる資料づくりや記載内容,記載方法についても,消費者が理解できるまで教えてもらえる環境を提供するのは,保険会社の責任だと思っています。   それには,告知書の質問項目や質問数はできるだけ最小限にしていただき,保険会社からの質問に消費者が回答すれば,保険会社が消費者の不実告知を証明できない限り告知義務違反に当たらないようにしていただきたいと思いますし,営業担当者が告知書の記載に関して不実告知や不告知の教唆を行った場合には,これは思われる場合も含みたいと思っておりますが,告知義務違反による契約解除ができないような法規制にしていただきたいと願っています。   なお,消費者が「告知しなかった事実」というのを病気等の「当該保険事故に因果関係がないことを証明する」ということが今回の中間意見にも書かれていたと思いますが,これは専門知識も情報も保険会社の足元にも及ばない消費者にはとても過大な負担だと思います。消費者の証明責任はできる限り軽くしていただいて,保険会社に証明をしてもらう,証明できなければ支払うという方式,もしくは消費者の主張に因果関係の証拠を付けて逆に反論していただく機会をつくらなければ,今回,A,Bで御紹介したような事案については救済できない。これは私どもが入っても,既に契約がなかったものにという結果で救済されなかった案件ですので,法規制を考えていただきたいと思います。   3頁にいきます。契約時の説明義務の在り方についての事例紹介です。   C,長年利用していた銀行の営業マンに頼まれて,1000万円の預金を金融商品に書き換えたら証券が届き,ドル建ての個人年金保険だった。すぐに解約を求めたが,3年間は返金額が元本を下回ってしまうと言われた。そんな話は書換えのときに聞いていない。70代の男性。   D,銀行のロビーで映っているビデオや一枚もののパンフレットで高金利と書いてあったので,窓口でも「金利がよい商品がある」という勧めもあって,確かに金利がよかったので申し込んだところ,帰宅後,書類をよく見たら,年金保険と書いてあった。帰るときに渡された書類には「契約前によく読んでください」と書いてあるが,契約前には見せてもらっていないし,年金保険の契約という説明もなかった。すぐに解約したいと連絡したが,返事がない。50代の女性。   Cの方については,相談室があっせんする形で全額を返金していただきました。Dについても,相談員があっせんすることで,こちらも結果としては返していただけました。解約というか取消しの形で全額被害は受けないで済んだ案件です。   これらについては,近年,販売チャネルが多様化していますが,銀行が保険商品を販売していることを理解している人はまだまだ少ないと思っています。さらに,高齢者になればなるほど,金融機関の中で銀行に対する信頼度,信用度は絶大です。したがって,保険会社の営業担当者でもトラブルが絶えない勧誘,販売時の説明義務については,今後,銀行が保険の販売をする以上,保険代理店としての責任を保険仲介人と同様に重く課していただき,トラブルの責任を保険会社に代わって持っていただきたいと思います。   この案件,CもDも御本人たちが交渉した段階では解決できなくて,我々を含めた相談窓口である消費者センターなどの第三者が入る形で解決できたので,やはり消費者が自力で戦うのは無理だと理解しています。   次に,契約時の虚偽説明の責任についてです。   E,25年前に加入した保険料の払込み終了後,一生涯年金が受け取れるという終身保険の事例です。年金額として勧誘時に担当者に説明され,設計書にも記載された96万円が実際には8万円にしかならないという。老後の設計が狂ってしまう。保険会社は約束した96万円を払うべきだ。60代男性。   F,15年前に生存給付金付き終身保険に入り,毎月9000円の掛金を15年間払い込んで満了した。契約時の案内書に「払込満了時に積立配当金約48万円」と書いてあったのに,実際には2万円しか配当金がないという。保険会社は約束した金額を払ってほしい。80代の女性です。   これは,先ほどの国民生活センターの○○氏からの御説明にもありましたように,最近,高齢者の相談が増えているという中で特徴的なものです。団塊の世代が60代を迎えている現在ということも踏まえて,実際に保険金を受け取ろうとしたら,こういうことが起きているということで御相談が増えております。配当金に関する虚偽説明によるトラブルは非常に増えていると感じています。今後もこれは増えると予想しております。設計書(提案書)には,よく探すと確かに小さな字で,「配当金は経済状況の推移によるもので確定していない」という趣旨の文言が並んでいます。しかし,これは設計書に印字された配当金額の大きさや位置に比べると非常に分かりにくく,もし消費者がこの表示を読んだとしても,勧誘時に営業担当者が配当金の額を大きく手書きしながら説明されれば,配当金の額を確定金額と思い込んでしまう方が自然だと思います。したがって,表示をしたことで保険会社の責任を免責されるのは大変疑問に思います。   先ほどの国民生活センターのデータで,接客対応とかのクレームの割合が増えているという中には,やはりこういう苦情を申し立てたときに,約款に書いてある,設計書にこういうふうに言ってあるということで一切応じないと保険会社がいうことで,クレームを言ったけれども,それに対しての会社への不満をキーワードとして「接客対応」でとっていたり,販売方法のキーワードでは,入るときの説明が非常に不足しているようなケースが一緒に入っていると,「虚偽説明」「説明不足」というキーワードを,これは相談員としてキーワードを私自身も振っておりますので,先ほどのデータの読み方ではそういう部分も含めての割合だと思います。こういう事例が出たときに振られるものだと御理解いただけたらと思います。   次に,団体保険の勧誘と書面不交付についてです。   G,亡くなった兄がクレジットカード会社経由で団体傷害保険に入っていた。義姉が保険会社に解約希望の電話をしたところ,二回分の保険料の支払が必要と言われたという。義姉は,兄が保険に加入していることも知らなかったし,保険の書類も見たことがない。30代男性。   H,地方の実家で独り暮らしの兄から,以前,大阪のスーパーでつくったクレジットカード会社から保険料の請求書が届き,自分には覚えがないと言うのでカード会社に連絡してほしいと頼まれた。そこで,カード会社に連絡して調査依頼したところ,スーパーの関連業者がカード会員に電話で団体傷害保険の勧誘をしていて,それを兄が申し込んだということだった。しかし,兄は全く知らないと言っている。40代男性。   I,郵便局の貯金口座からカード会社の毎月引落としがあるのに気付き,調べたところ,以前キャッシュカードにクレジット機能を付けたカードを発行したカード会社から電話で勧めがあって,自分が入った保険だと言われた。申込書も書いていないのに,勝手に郵便局の口座から引落としができるのか。カード会社は「電話で契約は成立し,録音もとっている」と言い,金融庁にも届け出ている問題のない販売方法と言うが,入りたくもない保険にこの歳になってお金を払うのは嫌なので,取り消したい。70代の女性からです。   これは,大分今は落ち着いたのですが,一時期カード会社の団体保険ということで,書類も何も契約時点でも出ていない,入ったことが分からないというような部分で苦情件数が結構ある問題でした。消費者が傷害保険の被保険者になっていたことが自覚できない。私どもも事情を聞いただけではよく分からなくて,やはり保険会社に確認していく中で傷害保険だと見えてくるというのが実態です。   今回の保険法改正の意見の中に,インターネットの普及等を背景に電磁的な方法で保険の手続を行う場合には保険証券の不交付が検討されているようですが,無形の保険商品で,保険証券も電磁的な方法でよいとすると,消費者には契約内容も契約成立時期も今まで以上に認識ができません。今の段階で電話の契約でも消費者の認識ができていないわけですから,インターネット上というのはもっと危険も大きいと思います。   現実は,加入時の書類を消費者が理解しようとする時期は保険金請求のときがほとんどですから,団体保険の場合,被保険者には同意も必要なく,被保険者であることの書類もないという場合も含めて,加入していて補償が受けられるのか受けられないのか,消費者が分からないケースが増えかねません。また,電話の口述,要は一回説明されただけで無形の保険契約の内容を消費者が理解することは余りに過酷ですから,被保険者になる同意書も含めて契約関係を書面で出す必要があると思います。さらに,加入の有無を,契約者本人が亡くなってしまったり,疾病等で記憶がなくなったり,今,認知症の方々の御家族からの御相談も増えてきておりまして,こういう場合に遺族や家族が保険の補償の内容についても全く知るすべがないというところも実際にあるわけです。保険会社には被保険者の同意の確保と書面交付というのは義務付けが必要だと思っております。   続きまして,超過保険,重複契約に関しての事例紹介です。   J,8年前に軽量鉄骨を使った工法で木造の注文住宅を建てて,住宅総合保険に入った。その翌年,隣接する土地に賃貸用の木造アパートを2×4工法で建てたときに自宅と同じ損害保険会社に相談し,勧められた火災保険に入って毎年更新してきた。最近になって,建物の工法によって木造住宅でも火災保険の掛金が安くなると新聞で知り,保険会社に連絡したところ,「5年前にさかのぼって掛金20万円余を返金する」と言う。自宅とアパートを建てた時からの掛金と利息を返すべきではないか。60代男性。   K,旅行社のパックツアーに申し込んだときに,一緒に勧められて旅行傷害保険に入った。旅行先で,ブランド品等のお土産の入ったトランクを盗まれたので保険金を請求したら,「クレジットカードで購入したブランドの時計はカード会社の保険が使えるので,保険金は払わない」と言われた。そのときに,もともとクレジットカードに付いている保険で盗難の被害はすべて補償されることが分かり,ツアー申込時に入る必要のなかった旅行傷害保険の保険料を返金してほしい。30代女性。   ここのところ,Jの超過保険につきましては,マスコミ報道や何かを通じて御相談が一時期ありましたけれども,今は保険会社へ直接申し出ることでほとんど消費者の方が解決しているようで,相談の窓口までには件数としてはほとんど入ってこなくなりました。   それから,旅行用の傷害保険については,結構皆さん体験はされているのですが,もう旅行に行って使ってしまったということで,あきらめている方が多い事例だと思います。   保険のかけ過ぎについては,保険会社の不払事件発覚後,消費者の申出によっては対応がされるようになったので,大分件数は落ち着いてきています。しかし,消費者には適正な保険価額が幾らなのか分からず,営業担当者に頼って決めてもらうことがほとんどです。保険商品の勧誘時点や更新時期に重複や超過保険になっていないか,保険会社の説明責任は極めて重いと思います。したがって,保険会社には超過保険が分かった段階で,払込済み保険料については返還義務を課していただきたいと思います。   6頁です。支払時の説明不足の事例です。   L,夫が自宅3階のベランダから転落し,数日後,治療のかいなく亡くなった。そのため,入っていた生命保険の死亡保険金を申請したところ,災害割増特約や傷害特約が付加されると思っていたところ,「不慮の事故ではない」と言われ,約款記載の別表「不慮の転落死」の説明を求めたところ,昭和54年の厚生労働省の告示に定められた分類項目に当てはまらないという説明の文書が届き,意味が分からないので詳しく教えてほしいと言ったところ,「図書館に行けば資料があるかもしれません,当社にはないので」と言われ,納得できない。40代女性。   続いて自動車保険の満期案内に対する事例です。   M,契約していた損害保険会社から任意自動車保険の期間満了のころに,「満期になります」という通知がいつも来ていたので,今年もその通知が来てから契約するつもりでいたら,通知がなかったので保険の満期に気付かなかった。自動車を買い換えたので代理店に電話したところ,「満期から4か月たっている,保険は継続されずに終わっているので」ということで,「今からだと保険料の等級も6等級からになる」と言われ,納得できない。30代の男性。   この方のケースは事故に遭っていなくてよかったねとお慰めをして,代理店と交渉したケースなのですが,それから,Lに関しましては,私どもの方からも説明の内容が分からない。資料提供を求めたのですが,やはりどこからも厚労省の告示という資料が出ないままで,約款の別表というのも拝見したのですが,やはり意味が私たちにもよく分からない。いろいろな調査を駆使して結局のところ,この件は御主人にほかの要因もあったようだというところで不慮の転落死,3階から落ちてすぐ死んだのではないというのも影響したらしく,保険会社と大分やり合ったのですが,結果としては対象にならないで通常の死亡保険金しか受け取れなかった事例です。   自動車保険の方に関しましては,長年の代理店とのお付き合いということで,一応6等級からではないのですが,契約継続という何か手続をしていただけたと聞いております。   次に,被保険者からの解約についての事例,Nです。   中学生の時に,父が私を被保険者にして生命保険に加入したらしい。3年前に両親は別居し,高校卒業後就職して,昨年成人した私と父との二人暮らしだが,リストラされて定職を失った父との折り合いが悪く,口げんかが絶えない。父が酔ったときなどに「おまえの保険金が入れば」と口走るので,殺されるのではないかと不安になり,保険会社に被保険者として契約解除を求めたが,「契約者でないと無理」と言われた。自分に幾ら保険がかかっているのかも分からないのはおかしくないか。20代男性。   前述しました団体保険の事例でも申し上げましたけれども,契約者と被保険者が異なる場合,被保険者の同意というのは必要だと思います。これは損保の場合だと思いますが,さらに本事例のような場合には,現状では契約者でないと契約解除ができない。やはりそれはおかしいと思いますので,被保険者の立場からも保険がやめられるような手だてが必要だと思います。   最後,7頁。こちらは,最近,御高齢者の御相談が増えている事例をざっと集めました。支払手続とか解約手続上の御不満の類型です。   O,夫あてに保険会社から失効返戻金の手続書類が届いたが,夫は脳梗塞を患って記憶がなく,何も覚えていないと言う。生命保険に加入した覚えが妻の私にもなく,どうしたらよいか。70代女性。   P,給付金請求者の妻がアルツハイマー症で,生命保険の満期金の受取書類の書き方が分からないし,字が書けない。保険会社に代筆を頼んだが,自筆でないと駄目だと断られた。給付は受けられないのか。70代男性。   Q,自宅に電話があって勧められ,病気等の疾病に給付金が払われる保険だと思い,届いた書面に署名捺印して送り返した。後で契約書をよく読んだら,長期補償傷害保険で病気等には保険金が出ないと知った。解約したいと連絡したら,解約には応じるが,銀行引落手続をとったので,保険料は引き落とされた分は返金できないと言われた。保険の保障期間前なのに納得できない。60代女性。   R,妻の私が,夫と娘と3人分の傷害保険を通信販売で契約した。その後,夫が脳梗塞で倒れ,現在は電話に出たり話をすることもできない状態になった。そのため,必要がない傷害保険をやめようと保険会社に電話したところ,本人による解約手続が必要と言われた。入るときは簡単にだれでも手続ができるのに,解約は本人しかできないという。本人が手続できない状態の場合,どうしたらよいか。70代女性。   S,「生命保険が満期になるから転換しましょう」と,たびたび女性の勧誘員が二人で自宅を訪問してくる。80歳に近いのに,満期保険金を受け取って貯金をした方が自由に使えると友人にも言われているので,「転換したくない」と電話で会社に断ったが,満期保険金支払の手続をなかなかしてくれない。70代女性。   これらの事例は,働き盛りのときに保険に加入して,高齢になって,先ほども申し上げたのですが,いよいよ保険金受領等の手続をしようとしたときに,健康上,身体上の問題等で契約者本人が実際には手続不可能な場合などに家族等が代理できるような対策も十分に保険会社にとっていただきたいと思います。   今,成年後見制度のような制度があるということで,高齢者のこういった問題に後見制度を利用するようにアドバイスをされるケースも増えてきていますが,成年後見制度を使うための手続をするだけでも最低でも15万円ぐらいの費用が掛かります。それと,手続のための時間といろいろな書類の提出ですとか,そういうものも必要になりますから,家族や関係者の苦労が大変でとても現実的ではないのです。こういう高齢者の事例に関しましては,「なかなか保険給付がもらえない」という相談が今後とも増えるのではないかと思っています。   最後は,保険金の支払時期ということでの,御紹介です。   T,6年ぐらい前に入った終身保険の特約についている重度障害保険金を,10か月前に心筋梗塞になって心臓手術を受けたその後遺症で障害認定を受けたので請求したところ,請求した時に,保険会社が必要という書類はすべて提出したのにもかかわらず調査と称して返事を延ばされて,その間も保険料は払ってきた。ようやく,保険会社が保険金を払うと言ってきたが,半年間の保険料や保険金の支払が遅れた分の利息というのは払ってくれるべきだと思う。これは50代の男性からです。   これについては,支払時期が延ばされたときに消費者が少しでも不利益を受けているという実態,件数としてはなかなか出てこないのですが,こういうような御意見もありましたので御紹介いたしました。   以上,御清聴ありがとうございました。 ● ありがとうございました。   それでは,ただいまの御説明について,御質問ございませんでしょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,大変ありがとうございました。   それでは,引き続きまして,最後に同じく消費者側ユーザーということで,○○金融オンブズネット代表,埼玉大学経済学部非常勤講師から御説明を伺いたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。 ● 今日は貴重な機会を与えていただきましてありがとうございます。   私は今,金融オンブズネットということで御紹介いただきましたが,これは消費者グループで2000年からグループ活動を展開しておりますけれども,今回は夏休みの時期にも入ったりしましたので,金融オンブズネットを総意しての意見ということではなく,私個人の意見でまとめてきている点は御容赦いただきたいと思います。   今,国民生活センターと○○さんから実際の消費者トラブルの実態についてお話をいただきましたので,そういった意見を頭に置きながら,私がこの保険法の検討で考えていることをお話ししたいと思います。私自身も保険の専門家ではありませんし,保険法の議論から外れるところも多々盛り込んできておりますけれども,消費者の意見として聞いていただけたらと考えております。   まず,第一点目ですけれども,ここで検討している議論というものの位置付けです。100年ぶりの商法の改正ということで,保険契約法を検討していると。今回,中間試案で出されたのは「保険法」という言葉を使われておりますけれども,これをどういうものにするのか,単なる商法の100年ぶりの改正という話にするのか,それとも保険法という新しい法律をつくっていくということになるのかということ,このあたりを是非整理して,後半の議論を進めていただけたらと考えております。   保険法と保険業法をどのように切り分けるかということが念頭にあるわけなのですけれども,保険法に規律がないと,保険業法の中に盛り込めないというような課題も出てくると思っておりますので,是非保険法の中で取り決めるべき,先ほど幹と枝葉の話がありましたけれども,幹となる部分というのが何かの明確化が必要かと思っています。   一方で,金融庁では金融商品取引法が9月末から施行されますけれども,金融商品取引法と保険法を並列した関係に置くのか,それとも保険法を柱にしつつも業法の関連というのは今のままの保険業法として置くのか,保険業法は金融商品取引法の中に一元化していくのかというようなことを,このあたりも是非詰めて,後半の議論をしていただきたいと思います。   それから,二番目に書きました文言の平易化ということも論点になっておりましたけれども,やはりすごく難しくて,例えば,「危険の増加」とか「減少」という言葉は保険者から見た文言ですけれども,「契約者の条件の変化」というような文言にならないだろうかと考えております。それから,共済も対象範囲とすることには賛成です。   論点に入りたいと思います。まず,保険契約を消費者の視点から見るということで,契約全般の観点からと保険に固有の観点と,再び全体についてということでまとめてきました。   まず,保険契約を消費者の視点から見るということなのですが,私は保険の専門家ではなくて,ずっと消費者問題を長くやってきた人間なのですが,そういう目から保険契約を見ると,非常にまだ不十分だと感じているものを書いてきました。   一つが広告の規律の必要性です。金融商品取引法では,広告について必要表示事項と誤認を与える表示の禁止という二本柱を立てましたけれども,これが保険分野では必ずしも明確ではない。先ほど○○さんから「配当金が思っていたのと違う」という事例の報告がありました。大きな活字に比べ小さな活字だったということもあると思うのですけれども,そういった資料が出ているのは確かなので,広告の問題です。私がよく感じるのは,販売促進資料では,こんな場合支払いますということが列挙されているのですけれども,約款は,この場合支払いませんというのが膨大な厚さで並んでいて,一種カルチャーショックというのでしょうか,こういう情報提供の在り方というのは,消費者契約の在り方からすると大変疑問を感じております。   それから,2頁目ですが,重要事項の説明義務の明確化が大事だと思っております。書面の交付義務というところはもちろん書かれておりますけれども,これまでの国民生活センターや○○さんの発表の中からも多々感じられるのは,やっぱり説明義務を果たしていないのではないかということです。説明不足がトラブルの原因になっていることは大変多くありまして,交付義務にとどまらず何らかの説明義務の規定が必要だと思っております。   今回,金融庁の保険業法の監督指針では,契約概要とか注意喚起情報の規定が導入されましたけれども,これは監督指針の事項ではなくて,保険法あるいは保険業法の条文に規定を置くべきものだと思っております。それから,契約当初だけではなくて,長期契約については途中での情報提供や説明義務も必要ではないかと思っております。   それから,三番目に販売・勧誘ルールの充実と書きましたが,不実告知や断定的判断の提供の禁止といった行為規制は,保険法に入れるのか,業法に入れるのかはちょっと迷うところではありますけれども,こういった行為規制が必要ということです。   それから,3)の②のところに書きましたのは,適合性の原則の話です。消費者契約の場面では,重要事項の説明義務と適合性の原則というのは非常に今大きな論点になっておりまして,保険では保険仲立人にはベストアドバイス義務が課せられています。今回,適合性の原則については,討議の対象になっていないように感じるのですけれども,これはなぜかと思っております。これも監督指針に顧客意向確認書面というものが導入されておりますけれども,実際には,適合性の原則というより契約者自身が自己に合った保険かどうかを検証するものになっていて,箱に入れたものが出るときには何か違った形になっていたという印象がありまして,私は金融商品,特に保険は,投機性商品と並んで適合性の原則というのは大きいと考えておりますので,検討をお願いしたいと思います。   それから,クーリングオフ規定は,店舗外に限らず,保険商品の複雑性という特性を考えると,保険商品全般に広げていただきたいと思っております。   それから,次からが保険固有の観点からということで,審議会での議論の中から感じていることを幾つか述べさせていただきたいと思います。   まず,1)のところに書きましたのは,いわゆるプロ・ラタ主義の話ですけれども,これについては,故意と重大な過失にはさほどの差異はないということが事業者側から見解として示されていましたが,ただ実際にどんな案件があるのか,具体的な資料の提出がないため判断しにくいと感じております。今回の不払問題で私は各社とも調査をしていらっしゃると思うのです。その調査の中から故意と重大な過失について,どのような案件があるのかというのは,具体的な資料としてはあるように思っておりまして,なぜこの場に出てこないのかなということを感じております。   それから,2)で告知義務と通知義務の規定についてですが,この二つが大変重要な事柄だということを消費者へ周知するということがまず第一です。それから,今回,自発的申告義務から質問応答義務になさったことは評価しておりますけれども,質問については,契約者が明確に理解し回答できることに絞っていただきたいと思っております。   それから,告知妨害についての規定の導入も評価しております。ただし,言った言わないの争いにならないよう,周到な準備が必要かと思っております。規定が入っても今のようなままでは,やはり同じように言った言わないの争いになると考えておりますので,是非,ここはきっちり導入できるように考えていただきたいと思います。   それから,契約を更新する場合についても明確化が必要だと思います。ただ,いたずらに契約者が排除されることのないようにしていただきたいと思います。   それから,通知義務については,必ずしも消費者の認知度は高くないので,効果を解除とするのは,今の段階では行き過ぎではないかと思っております。   それから,3頁目にまいります。   これはちょっと長々と書きましたが,契約成立前発病の扱いについてなのですが,ここは消費者側としては,これから医療保険が伸びてくる中では非常に重要な事柄になってくると思っております。消費者側は告知義務ということの重要性については,私はある程度認識していると思っておりますけれども,契約成立前の発病については明確な理解を持ち得ていないのが現状だと思います。   例えばaに書きましたように,持病的なものを抱えていてそれが進行した場合,例えば,糖尿病であれば進行した結果として手足の壊疽とか失明ということになった場合どうかとか,それから,b,契約時に自覚していなかったが既に発病していた場合,先ほどの事例の中にもガンのお話がありましたけれども,こういった場合,それから,cですが,人間ドックで再検査とか観察の指示までなかったけれども,様子を見ましょうと言われていたような場合です。実際,人間ドックに入った場合,何ら問題なしの判断をされるのは一割強にすぎなくて,ほとんどの人は何らか言われるのです。私も50代ですけれども,人間ドックに毎年入っていますが,毎年言われます。毎年違ったところを言われるのです。前のところは治っているのです。前は胃にポリープがあったのが今は胃にはないと言われて,十二指腸にあると言われて,手術をなさる方もいますけれども,私の場合は様子を見ましょうと言われて,状況は変わらないのですが,また1年後なのです。こういうような状況で,何を私たちは求められているのかということです。   この糖尿病の方は,私は多分,糖尿病自体は告知していらっしゃるのではないかという事例が多いと思うのですけれども,そのような場合に,それが進行してこういう病状になったときにどうなのかとかというようなことです。ですから,保険者としては二重にフィルターをかけていらっしゃるというような印象があって,議論は尽くしていただきたいけれども,責任開始前発病の不担保条項の規定を置くということは,無効とすべきではないかと考えています。   先ほども代理店の方々とお話をしたのですけれども,やっぱりこれは保険者の免責ですよと言われたのですが,簡単にそういうことにはならない。消費者としては告知義務をきちんと果たして,保険者が引き受けたからには支払ってほしいと考えております。   それから,4)ですが,同意と離脱の規定です。やはり原則は,同意と離脱を認めていただきたい。これを書面に限定していただきたいと考えています。損保をどうするかということは,先ほど前半の議論でも幾つか出ておりましたけれども,ニューヨーク州の事例で,家族保険と夫婦間と未成年は対象外とおっしゃられたのですが,ちょっとこれは異論があるところです。   それから,五番目に催告の規定について書きました。保険者に対する催告の義務付けの規定については,実務上はきちんとやっておりますというような意見が多く,見送りと判断していらっしゃるように見えるけれども,果たしてどうなのかと。保険者のミスを恐れることが優先されて,契約者のミスが致命傷にならないよう,もう少し精査していただきたいと考えております。   それから,六番目,解約返戻金についてですが,保険料積立金等の支払の規定が入ったことは評価しております。現状では何が書かれているかというと,契約当初に解約するとほとんど保険料は戻りませんというただし書と,根拠不明というかよく分からない中途解約の規定です。一定の規律が必要ではないかと思っております。なお,保険契約において,保険料の基礎とされるべきものを維持するために必要な金額を考慮するとありますけれども,これがいたずらに広がらないような規律を求めます。それから,その金額が妥当かどうかは透明性を上げて確保し,保険者は説明責任を果たすべきです。   そして,「また」と書きましたのは,保険商品というのは,必ずしも保険金の支払を受けるということがなく終了する保険商品も多々あります。そういう意味で,保険法にこうした規定が置かれることで,保険契約全体を通じての保険料というのが妥当なものかどうかということも定まってくるように期待しております。   それから,超過保険については,超えていた金額に相当する保険料の返還を請求することができるものとする考え方に賛成いたします。それから,先ほどの国民生活センターと○○さんの発言を聞いていて思いましたけれども,やはり適正な保険価額の設定がされているかどうかということも大きなポイントだなと感じました。   それから,八番目ですが,支払要件の明確化ということです。これは,私はどうしたらいいのかというのがちょっと分からなかったのですけれども,保険法の規定になるのか,業法の規定になるのか,それとも監督指針,約款,一体どこにどのように配分したらいいのかというのが分からないのですけれども,今回,保険法では,支払のところについては遅滞なく支払うということは入っておりますけれども,ほかのところがちょっとよく読み込めないのですが,ただ,実際のトラブルは「支払」のところにすごく集中しているわけなのです。一体何を基にして支払っておられるのかなと。例えば,契約を交わすときにはいろいろな情報提供があったりいたしますけれども,支払要件というのはもちろん約款には書かれているのですけれども,どうも消費者には見えにくい。   先ほど国民生活センターの資料でも何か内規はあるらしい,保険会社が内規を持っているらしいというのはあるのですけれども,だからすぐ支払われると思っていたのに支払われなかったとか,一回目は支払ってくれるけど,二回目って支払ってくれないのよねとか,自動車保険ですけれども,受験生は通院したくてもできないと,暇で通院できる人が保険金をもらっているのよねというように,多くの不満が滞留しているわけです。実損てん補である損害保険と言いましたけれども,これは実損てん補だけではないと先ほど御説明がありましたので,ちょっとこの冠は妥当ではなかったのですけれども,納得できないということが非常に大きいので,ここについては,何か規定が工夫して入れられないのかということをお願いしたいと思っております。   それから,九番目は責任保険における保険金からの優先的な被害の回復については,そのとおりと思っていますので,進めていただきたいと思います。   そして,最後,再び全体についてなのですが,保険は当事者任意を原則とするものの,対消費者向け保険については,できるだけ片面的強行規定にするなど工夫していただきたい,これも後半の議論だったと思いますので,お願いしたいと思います。   それから,5頁目なのですが,保険法をどのような法律にするかということともかかわってきますが,今の保険業法を見る限り,消費者に対する規定は非常に不十分なのです。限定的です。そうすると,私は新しくできる保険法に民事効を入れるということを期待したいと考えておりまして,その際,二つのことをお願いしたいと思っております。   一つは,立証責任の軽減です。3年前,一つの裁判についてずっと傍聴に入って実際に敗訴になるという事例を見ました。その際に,明治時代までと随分さかのぼっていろいろと判例も見させていただいたのですけれども,消費者側がすごく敗訴しているのです。なぜこれで敗訴するのだろうかなというのが,読んでもよく分からないというものが幾つもありまして,契約者側に課せられた「損害」「因果関係」と書きましたけれども,損害保険における「偶然性」についても立証責任の負担は非常に大きいと考えております。こういったことを考えると,消費者側の立証責任の軽減を是非考えていただきたいと思います。   それから,二つ目に書きましたのは損害賠償についてなのですが,損害賠償額については,金融オンブズネットで金融商品取引法を審議する過程で,「金融消費者のための金融サービス・市場法へ提言」というのをまとめました。このときに,金融サービス・市場法に保険も当然入れていただきたいと考えましたので,保険の損害賠償について検討したのですけれども,随分考えた結果,やっぱり保険というのは,リスクに備えて購入する商品です。ですから,不実告知とか断定的判断の提供とか不利益事実の告知等により契約して損失を被った場合,消費者が誤認した保障・補償内容に相当する額を被った損害とみなしていただきたいと考えました。支払った保険料を返還したと,払った保険料を返せばいいだろうという話にとどまるのでは,私は損害賠償にはならないと考えております。   それから,※印で書きましたのは,これまでもヒアリングの対象者から何人か御意見が出ておりましたけれども,代理店とか募集人等募集,流通からの意見も聴取してみてはどうかということです。これは,やはり聞いておかれた方がいいのではないかということです。今日,ここに来る前も関係者の方々と少しお話をしたのですけれども,今日,私どもはこういうヒアリングの機会を与えられましたけれども,どこかの段階で聞かれるということが必要ではないかと思います。   それから,そのときになのですけれども,今,法務省のホームページに中間の取りまとめが出されておりますけれども,やっぱり読み込めない,分かりにくいと言われておりまして,これは一般消費者であればなおさらだというような感じがありまして,補足説明を読むとますます分からなくなると言われましたので,是非後半の議論は一般の消費者に分かる形で,何が論点になっていて,ここは変わって,ここは変えないのだというようなことが分かる形での議論をお願いしたいと思っております。   以上です。どうもありがとうございました。 ● どうもありがとうございました。   それでは,ただいまの御説明について,御質問ございますか。   ○○幹事。 ● 4頁の8)の支払要件の明確化とおっしゃる点ですが,これは要するに,約款でどういう場合は支払うか支払わないかというように一応定められているけれども,さらに具体的にはどういう場合に支払うように会社側としては考えているかというような支払基準みたいなものを明らかにせよという御趣旨でしょうか。 ● そうですね。だから,法律の中にどういう文言で入れることができるのかという感じがあるのですけれども,やっぱり適正な支払金額とか,今回,「時期」のことは検討項目に入っていますよね。遅滞なく支払うということは入りましたけれども,何か適正な金額とか。努力義務にすると,特に余り意味もないので,どう考えたらいいのかなというのは,私も妙案があるわけではないのですが,トラブルの実態をとらえて,それが説明義務のところに起因するからそこを充実すればいいとか,広告のところに起因するからそこにやればいいというふうになると思うのですけれども,今のトラブルを分析していただいて,何かまだ欠けているところがあれば,是非何らかの方策を考えていただきたいなと思っております。   特に,消費者から見るとグレーなのです。よく分からない。もちろん約款はあっても,約款も抽象的な文言なので,それをどう判断されるのかというようなところがあると思っておりますので,私自身も考えてみたいと思っておりますけれども,是非この部分について検討を深めていただけたらと思っております。すみません,明確な回答が出せませんが,私も考えます。 ● ○○委員。 ● 簡単に。質問は一つでコメントです。まず,貴重で非常に印象的なたくさんの御発言をありがとうございました。   2頁の説明義務の問題ですけれども,説明義務,どこからどこまでという問題もありまして,例えば契約締結プロセスから契約途中,支払と。私は支払のところには入れたらいいのではないかということを言っていますけれども,念頭に置いておられるのは,そこの中に適合性原則も含めてという御趣旨かと思いますが,どういうイメージをお持ちなのかというのがまず一つの質問で,あと,簡単な感想ですけれども,プロ・ラタのところで事例を出してくださいという御発言には全く賛成で,告知義務違反による解除,その中に重過失のものもあるわけですから,そこをできれば明らかにしていただきたいというのは全く同感です。   それから,最後の支払のところ,○○幹事の御質問のところですけれども,私の理解では,要するに約款に書いていない内規によって払わないというのは,実は損保の方も生保の方も幾つかあるわけですよね。例えば,支払時期に関してとか請求時期に関して内規でいろいろな書類が省略できるとか,いろいろなものがありますから,そういうことを念頭に置いておられるということなのでしょうか。 ● そうですね。最初のところなのですけれども,説明義務の話ですね。これは消費者側としては是非お願いしたいのですけれども,例えば,金融商品取引法では書面交付義務にとどまっていて,説明義務までは盛り込んでいない。けれども,金融商品販売法でリスクにかかわることについての重要事項の説明義務を課しているということですね。   それから,金融商品取引法も政省令のレベルにいくとひっくり返した規定で,実質的にはその人が理解できるように説明しなければならないとしておりますので,私は流れとしては書面交付義務だけにとどまるのではなくて,その先です。   それから,今おっしゃられたように,契約時,契約途中,長期にわたる契約もありますので,契約途中の説明義務とか情報提供義務,それから,おっしゃられたように,支払時の説明義務も本当に必要ですね。やっぱりそこがどうしても納得ができていないというようなことにもなると思いますので,それぞれの場面での説明を果たしていただくということが重要かなと考えております。 ● ありがとうございました。 ● ほかにいかがでしょうか。--よろしゅうございますか。   それでは,これで金融オンブズネットからのヒアリングを終わりたいと思います。本日はどうもありがとうございました。   以上で,本日予定しておりましたヒアリングがすべて終了しましたので,本日の議事もこれで終了したいと思います。ヒアリングにお越しくださいました皆様方,大変ありがとうございました。御礼申し上げます。   それでは,事務当局から次回の予定について,御説明をお願いします。 ● 次回,第16回会議ですが,来月,9月19日水曜日の午後1時30分から,今日と同じ法務省20階の第1会議室で開催いたします。次回は中間試案に対するパブリックコメント期間の終了後ということになりますので,第四読会といたしまして,部会としての最終的な意見集約,すなわち要綱案の策定に向けた御審議をお願いしたいと考えております。   具体的には,中間試案でなお検討することとされた論点につきまして,順次取り上げていくことを予定しておりますけれども,具体的にどの論点をどのような順番で取り上げていくかにつきましては,まだ事務当局としても決まっておりませんので,次回の資料の発送までにはそのあたりも整理しまして,お諮りすることにしたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。 ● ということで,よろしくお願いいたします。   それでは,本日の会議はこれで終わります。どうもありがとうございました。 -了-