法制審議会 第155回会議 議事録 第1 日 時  平成20年2月13日(水)   自 午後1時00分                         至 午後5時21分 第2 場 所  東京高等検察庁第2会議室 第3 議 題   1 ヘーグ間接保有証券準拠法条約に関する諮問第57号について   2 「子及びその他の親族の扶養料の国際的な回収に関する条約」及び「扶養義務の準拠法に関する議定書」に関する諮問第67号について   3 保険法の見直しに関する諮問第78号について   4 少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るための法整備に関する諮問第83号について   5 民法の成年年齢の引下げの当否に関する諮問第84号について 第4 議 事 (次のとおり)                 議        事 (開会宣言の後,法務大臣から次のようにあいさつがあった。) ● 法制審議会第155回会議の開催に当たり,一言ごあいさつを申し上げます。   委員及び幹事の皆さん方におかれましては,公私共に御多用中のところ御出席をいただき,誠にありがとうございます。また,この機会に皆様方の日ごろの御尽力に対し,厚く御礼を申し上げます。ただし,委員の皆様方に心から御礼を申し上げておるので,幹事は出席して当然と思っております。   さて,本日は五つの議題について御審議をお願いいたしたいと思いますが,このうち四つにつきましては諮問事項について各部会でお取りまとめいただいた内容を,各部会長から御報告いただくことにしております。   議題の第1は,ヘーグ間接保有証券準拠法条約に関する諮問第57号についてでございます。   これについては間接保有証券準拠法部会で調査審議が続けられ,今般,諮問第57号に関する審議結果報告案が取りまとめられたと承知しております。   第2は,子及びその他の親族に対する扶養料の国際的な回収に関する条約草案等に関する諮問第67号についてでありますが,これについては国際扶養条約部会において調査審議が続けられ,諮問第67号に関する審議結果報告案が取りまとめられたと承知しております。   第3は,保険法の見直しに関する諮問第78号についてでございますが,これについては保険法部会で調査審議が続けられ,保険法の見直しに関する要綱案が取りまとめられたと承知しております。   第4は,少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るための法整備に関する諮問第83号についてでございますが,これについては少年法(犯罪被害者関係)部会で調査審議が続けられ,少年審判における犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための法整備に関する要綱(骨子)が取りまとめられたと承知しております。この件は私が諮問させていただいた件でございます。   これらの事項は,法整備を含め,いずれも早急に適切な措置を講ずる必要がございますので,できる限り速やかに御答申いただけますようお願い申し上げます。   さて,最後に新たな課題として,民法の成年年齢の引下げの当否に関する諮問第84号についての御審議をお願いしたいと存じます。   民法は明治29年に制定されましてから現在まで年齢20歳をもって成年とすると定めております。その前に太政官布告があったわけでございます。この成年年齢は,行為能力が制限されることによって取引における保護を受ける者,親権に服する者の範囲等を画する基準となっていますが,現行民法が成年年齢を20歳としたのは,制定当時の日本人の精神的成熟度などを考慮したものといわれています。   ところで,昨年5月に成立した「日本国憲法の改正手続等に関する法律」の附則においては,同法が施行される平成22年5月までの間に,満18年以上満20年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう,公職選挙法,民法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとされました。   そこで,若年者の精神的成熟度の観点や若年者の保護の在り方の観点から,民法の成年年齢を引き下げるべきか否か等について御意見を承りたく,御審議をお願い申し上げるものでございます。   それでは,これらの議題について,御審議をよろしくお願い申し上げます。 (法務大臣の退席後,委員の異動紹介があり,引き続き,本日の議題につき次のように審議が進められた。) ● それでは,本日の審議に入りたいと存じます。   ただいまの法務大臣のごあいさつにもございましたように,本日の議題は五つございます。そのほかに報告案件が二件ございますが,議題自体は五つでございます。何分にも審議内容が盛りだくさんでございますので,皆様方にはどうぞ十分な御審議をしていただくことと同時に,議事の進行にもどうぞ御協力をお願いしたいというふうに思っております。   それでは,本日の第1の議題,ヘーグ間接保有証券準拠法条約に関する諮問第57号について,御審議をお願いしたいと存じます。   まず,間接保有証券準拠法部会における審議の経過及び結果につきまして,○○部会長から御報告をお願いしたいと思います。 ● 間接保有証券準拠法部会長の○○でございます。   当部会は,平成14年7月から5年余りにわたりまして諮問第57号に対する審議を続けてまいりましたが,昨年12月4日開催の第21回会議におきまして,資料番号1の「諮問第57号に関する審議結果報告案」を取りまとめました。その内容を御説明申し上げます。   この諮問第57号は,本報告案1(2)に記載されておりますように,「ヘーグ国際私法会議において作成のための審議が行われている間接保有に係る証券の準拠法に関する条約の内容,その批准の要否,批准を要するとした場合には国内法整備の要否及び整備を要するとした場合には整備すべき事項の骨子につき,御意見を承りたい。」というものでございます。   この諮問を受けて設置されました当部会におきましては,ヘーグ国際私法会議において「口座管理機関によって保有される証券についての権利の準拠法に関する条約」が2002年12月に採択されるまでの間は,本条約の草案に対する日本国政府の意見や外交会議における対処方針を作成するための審議を行いました。また,本条約の成立後は,本条約の公式解説書であるExplanatory Reportの案に対する日本政府の意見の作成のための審議・検討や,具体的な事例に則した問題点等の本条約の解釈上・実務上の論点を始めとする,本条約の批准の要否に関する審議・検討を行ってまいりました。   なお,ヘーグ国際私法会議に日本国政府が提出した意見書や,本条約策定のための外交会期における日本国代表の発言は,すべて当部会における審議結果に基づくものでございます。これらの意見や発言は,その多くが本条約中に採り入れられているほか,あるいは,Explanatory Reportに解釈として記載されております。   本報告案の1におきましては,ただいま申し上げましたような当部会における検討の経緯を,ヘーグ国際私法会議における本条約採択に至るまでの経緯と併せて,簡潔に記載してございます。本件諮問,この57号諮問に応じた十分な審議を行ったということを明らかにしております。   では次に,本条約の内容等について御説明申し上げます。   本条約は,いわゆる間接保有証券,すなわち「口座管理機関によって保有される証券」についての証券上の権利の準拠法を定める条約でございます。   株式や社債権等の証券上の権利につきましては,これまでは,その流通性を確保するために,当該証券上の権利を表章する有価証券である株券や社債券等が発行され,当該有価証券の交付がこれに表章される権利の移転の効力要件とされてまいりました。そこで,株式や社債等の国際的な譲渡や担保権の設定等における証券上の権利の帰属等についての準拠法は,法の適用に関する通則法第13条の規定により,動産である券面が所在する,証券所在地法によることになると一般に考えられてきましたし,他の国々においてもおおむね同様の考え方がとられてまいりました。   ところが,IT技術の高度の発展に伴い,大量の証券取引の迅速かつ安全な決済を確保するため,我が国を含む先進諸国においては,近年,証券の間接保有制度が広く普及してきました。我が国を例にとりますと,昭和59年に「株券等の保管及び振替に関する法律」,いわゆる保振法が制定され,投資家は,株券や新株予約権付社債券等の券面を自らが直接保有するのではなく,証券会社等の口座管理機関を通じて,中央証券預託機関である証券保管振替機構に券面を預託し,口座管理機関から開設を受けた証券口座に記録を受けることによって株式等の証券上の権利を保有し,口座振替することによって,証券上の権利の譲渡や担保設定等の取引を行う間接保有制度が法律上正式のものとして位置付けられました。今日におきましては,上場株券の8割以上が証券保管振替機構に預託され,その振替決済システムを通じて取引されています。また,一般社債や国債につきましては,平成14年の改正によって「社債等の振替に関する法律」,いわゆる社振法が制定されまして,券面を発行せずに,ペーパーレスの社債については証券保管振替機構を頂点とする,ペーパーレスの国債については日本銀行を頂点とする,それぞれの口座振替システムを通じて保有し,取引するという制度が実施されております。さらに,上場会社の株券を一斉に廃止し,ペーパーレスの株式を証券保管振替機構を頂点とする口座振替システムを通じて保有し,取引するという,いわゆる株券の電子化が来年1月に実施されることは,既に御承知のことかと思います。欧米諸国におきましても,制度の細部には違いがございますものの,我が国と類似の間接保有形態の証券決済制度が設けられ,これが証券取引の主流となっており,国際的な証券の振替決済網が構築されているのでございます。   このような間接保有形態の証券につきまして,証券所在地法により証券上の権利の帰属等を決するという従来の準拠法決定ルールを当てはめますと,保振制度のように券面が発行されている場合であっても,末端の投資家がその保有する証券についての券面が中央証券預託機関によってどこに保管されているのかを特定することは困難であるという,実務上の大いなる不都合が生じます。また,仮に券面の所在地を特定することができたとしても,その地が準拠法を定めるのに適当な最密接関連地ということはできない場合が多いという問題もございます。さらに,券面が発行されていない,ペーパーレスの証券の場合には,そもそも証券所在地自体を観念することができませんので,証券所在地は準拠法を定める基準とはなり得ませんが,このようなペーパーレス化は,ただいま御説明申し上げたように,ごく最近になって実施されてきているものでありますことから,この場合の準拠法の決定方法について,判例はなく,学説も定まっておりません。   このように,間接保有形態による国際的な証券の譲渡や担保権の設定等についての準拠法がどの国の法律となるかは不明確でございまして,当事者の予見可能性や法的安定性を確保することができないという状況にございますが,このような状況は,我が国のみに特有のことではなく,世界各国においても同様の状況にございます。   そこで,このような準拠法決定についてのリーガルリスクを解消して国際的な証券取引の法的安定性を確保するために,間接保有形態における証券上の権利の帰属等についての準拠法決定ルールを新たに定めたものが本条約でございます。   本条約の英仏正文及びその仮訳を資料として添付しておりますので,それを御覧いただきたいと思うのですが,本報告案の2には,その要点を記載しております。   その更に要点を申し上げますと,まず,本条約によって準拠法が決定される事項は,第2条に規定されておりますが,口座管理機関によって保有される証券について,証券口座への増額記録に起因する権利の法的性質及び第三者等に対する効果等の証券上の権利の帰属に関する事項でありまして,証券の発行者の権利義務等についての準拠法を定めるものではありません。ちなみに,証券の発行者との関係につきましては,例えば,株式については,株主名簿への記載が発行会社に対する対抗要件とされているように,権利の帰属とは別の取扱いがされておりますことから,その準拠法も,発行者の設立準拠法によると一般に解されております。   次に,本条約が適用対象とする事項についての準拠法決定ルールの内容でございますが,第4条第1項の規定により,口座名義人とその口座を管理する口座管理機関,これを本条約では,relevant intermediary,関連口座管理機関と呼んでおりますが,この関連口座管理機関との間において合意された当該口座管理契約の準拠法によることを原則とすることとされております。間接保有形態の証券の取引におきましては,口座名義人の口座への記録によって権利の帰属が定まることになりますことから,最も密接に関連するのは,関連口座管理機関が管理している当該口座名義人の証券口座の所在地ということになります。しかしながら,現在の証券決済実務においては,コンピュータ・ネットワークで結ばれた電子帳簿により口座のデータが管理されております。そして,そのようなバーチャルな口座の所在地を探求することは容易でございません。そこで,法的安定性を確保するため,当該口座にかかわっている口座名義人と関連口座管理機関が合意した国の法律を準拠法とすることとされたものでございます。   このような当事者の合意がない場合や,当該合意に瑕疵があって,これによっては準拠法が定まらない場合の準拠法の決定の仕方については,第5条が3段階に分けて規定をしております。すなわち,第1に,書面による口座管理契約において関連口座管理機関の特定の事務所を通じて当該口座管理契約が締結されたことが明示され,かつ,その内容が明確であるときは,当該事務所が所在する国の法律によることとされております。そして,このルールによっても準拠法が定まらないときは,第2のルールとして,書面による口座管理契約が締結された時等における関連口座管理機関の設立準拠法所属国の法律によることとされています。さらに,このルールによっても準拠法が定まらないときは,第3のルールとして,書面による口座管理契約が締結された時等において関連口座管理機関が営業所を有する国の法律によることとされています。   なお,準拠法が定まった後でも,当事者間の合意により,準拠法を変更することが可能でございますし,また,本条約は,本条約が発効する前に締結された口座管理契約にも原則として適用されます。   次に,本条約の批准の要否や,批准を要するとした場合における国内法整備の要否等についての諮問に対する当部会の審議の結果を申し上げます。   この点につきましては,本報告案の3に記載しておりますが,本条約を批准すれば,口座管理機関によって保有される証券が国際的に取引される場合における証券上の権利についての準拠法決定ルールが明確になり,取引当事者にとって予見可能性と法的安定性が高まることになりますから,本条約を批准する意義は大きいものと考えられます。当部会におきましては,本条約が定める準拠法決定ルールを適用する場合の問題点の存否についても,国際的な証券決済についてのさまざまな実務方式に即して,網羅的に検討を重ねましたが,不都合として指摘すべきような事項は認められませんでした。   したがいまして,本条約が国際証券決済の分野におけるグローバルスタンダードになるのでありますれば,我が国も是非これに加入すべきであるということになります。   そこで,当部会の審議におきましては,本条約への加入に関する欧米をはじめとする諸国の状況をも注視しつつ検討を行ってまいったのでございますが,本報告案の3(2)に記載しておりますとおり,本条約は,その成立から5年以上が経過したにもかかわらず,2006年7月にアメリカ合衆国とスイスの2か国が署名したのみでございまして,両国においても批准には至ってないことから,いまだ発効するには至っておりません。また,ヨーロッパ諸国においては,ヨーロッパ連合内,EUですね,内部で本条約の検討が行われておりますものの,主要国を含む構成国の一部に根強い反対があり,批准の見通しは立っていない状況にございます。EU内部では,いったん,専門委員会において,本条約を批准することを推奨するとの報告書が取りまとめられたのでございますが,その後,より上位の機関の検討において反対意見が強く出されたことから,加入の当否についての議論が断続的に続けられているようでありますが,議論が非公開で行われておりますため,反対派の国の反対の理由の詳細が分からないという実情にございます。   そこで,当部会としましては,本条約の批准の当否についての諮問に対しまして,報告案の3(3)に記載しておりますとおり,本条約については,ヨーロッパ連合における検討の帰趨を見極めた上で,適切と考えられる時期に,我が国も批准すべきものと思料するとの最終的な意見を取りまとめた次第でございます。   なお,本条約を批准する場合における国内法整備の要否についても検討を加えましたが,本報告案の3(1)の最終段落にも記載しておりますように,本条約は準拠法決定ルールを定めるものである上,その準拠法決定ルールの内容は条約自体ですべて規定されており,国内法による補充を要する部分はございませんので,本条約の批准のために国内法を整備する必要はなく,本条約の直接適用によって対処することができるという結論になりました。   以上,簡単ではございますが,本報告案の内容について御説明申し上げました。   よろしく御審議のほどお願い申し上げます。 ● どうもありがとうございました。   それでは,ただいま間接保有証券準拠法部会の○○部会長から報告されました審議結果報告案の全般的な点につきまして御質問と御意見があれば承りたいと思いますが,順序としてまず御質問があれば,どうぞ御発言をお願いしたいと思います。   どうぞ,○○委員。 ● 今の御説明を伺いまして,大変よく理解できましたのですけれども,気になるのがやはりヨーロッパにおける反対ですね。しかもその反対の理由もなかなか調べることができないということもよく分かりましたが,何か推測できるような不都合といったものはございますのでしょうか。 ● これはちょっといろいろな情報は細かには聞こえてまいるのでございますけれども,ちょっとここで申し上げてよいものかどうかという事情がございまして。それで,一部の反対で,その一部の反対の中にかなり有力な国が含まれているというようなことがいわれておりますが,そのあたりまでは申し上げてよろしいのではないかと思います。 ● どうぞ,○○委員。 ● 御報告を聴いて,この条約についてはよく分かったのですけれども,批准しない場合には,例えば券面の発行のない外国証券を日本人が買った場合に,現在の日本の国際私法に恐らく,準拠法について定説はないのでしょうけれども,通説というのはあるのでしょうか。何が準拠法になるかについてそういうケースですね。 ● 通説ですか。 ● はい,一応こうなるだろうという。 ● この点につきましては,今のところ学説もいろいろ出てはいるのですが,通説と呼べるほどのものはないと思います。学説の状況もまだ非常に,これからまたいろいろな学説が出てくるかとは思いますけれども,今のところ,これはということは申し上げにくいと思います。 ● では,判例はないのでしょうか。 ● 判例もございません。これからの判例の蓄積はもうちょっとということになろうかと思うのでございますけれども。 ● よく分からないということですね。 ● はい,本当によく分からないという状況でございます。 ● ほかに御質問ございますでしょうか。   御質問がなければ,御意見を承りたいと思いますが,何か今の報告案につきまして御意見ございますでしょうか。   御意見もないようでございますので,この報告案,原案につきまして採決に移りたいと存じますが,採決に移ってよろしゅうございますでしょうか。   特に御異議もないようでございますので,そのように取り計らわせていただきます。   それでは,諮問第57号につきまして,間接保有証券準拠法部会から報告されました「諮問第57号に関する審議結果報告案」のとおり答申することに賛成の方は挙手をお願いいたします。   (賛成者挙手) ● 念のために,反対の方がありましたら挙手をお願いいたします。 ● 採決の結果を御報告申し上げます。   議長を除くただいまの出席委員数は16名でございますところ,原案に全員が賛成でございます。 ● 御報告のありましたとおり,採決の結果,全員賛成でございますので,間接保有証券準拠法部会から報告されました「諮問第57号に関する審議結果報告案」は原案のとおり採択されたものと認めます。   採択されました審議結果報告につきましては,この会議終了後,直ちに法務大臣に対しまして答申することといたします。   ○○部会長,長い間どうもありがとうございました。 ● ありがとうございました。 ● 続きまして,第2の議題,「子及びその他の親族の扶養料の国際的な回収に関する条約」及び「扶養義務の準拠法に関する議定書」に関する諮問第67号につきまして御審議をいただきたいと存じます。   まず,国際扶養条約部会における審議の経過及び結果につきまして,同部会の○○部会長から御報告をお願いしたいと思います。 ● 国際扶養条約部会長の○○でございます。諮問第67号に関し,昨年11月開催のヘーグ国際私法会議第21外交会期におきまして,「子及びその他の親族の扶養料の国際的な回収に関する条約」及び「扶養義務の準拠法に関する議定書」が採択されましたことから,本年1月15日開催の国際扶養条約部会第11回会議におきまして,諮問に対する報告案を取りまとめましたので,御報告申し上げます。   まず,ヘーグ国際私法会議における経緯につきまして御報告いたします。   ヘーグ国際私法会議におきましては,報告案の1(1)に記載しております5つの条約の運用状況につきまして,1995年11月と1999年4月の2回にわたって開催されました特別委員会におきまして検討が加えられ,新条約の作成を開始することが勧告されました。この勧告に基づきまして,2000年5月開催の一般問題特別委員会におきまして,新条約の作成を優先的な議題とすることとされ,2002年4月開催の第19外交会期の第1委員会,一般問題委員会といいますが,この委員会においても,その結論が再確認されまして,これらの各条約の問題点を克服した国際的な扶養の実現に関する新条約の作成が開始されることとなりました。   その後,2003年5月から2007年5月までの間に5回にわたって特別委員会が開催されまして,条約草案及び議定書草案が起草されました。そして,同年11月5日から23日までオランダ王国ハーグ市において開催された第21外交会期におきまして,これらの草案についての審議が行われ,その最終日に「子及びその他の親族の扶養料の国際的な回収に関する条約」及び「扶養義務の準拠法に関する議定書」が採択されたものでございます。   次に,我が国における経緯について御説明いたします。   我が国は,報告案の1(1)に記載しております5つの条約のうち扶養義務の準拠法に関する2つの条約を締結しており,新条約の内容は我が国の基本法制にも影響を及ぼすものと考えられるため,我が国としても新条約の作成に積極的に取り組む必要があるとの観点から,平成16年2月10日,諮問第67号が発せられ,同日開催の法制審議会第142回会議におきまして,国際扶養条約部会を設置して,調査・審議を行うこととされました。この部会は,同年5月25日に第1回会議を開催し,その後,ヘーグ国際私法会議において特別委員会や外交会期が開催されるのに併せて,その前後に合計11回の会議を開催し,本条約及び本議定書について,審議してまいりました。   ヘーグ国際私法会議に日本国政府が提出した意見書や,ヘーグ国際私法会議の特別委員会や外交会期における日本国代表の発言は,すべてこの部会における審議結果に基づくものでございます。   続きまして,本条約及び本議定書の内容を御説明いたします。   本条約及び本議定書の英仏正文及びその仮訳を添付させていただいておりますが,以下,それらの要点を申し上げます。   まず,本条約は,子及びその他の親族の扶養料の国際的な回収について実効性を確保するため,国際的な行政協力や,扶養義務に関する決定等の承認・執行,すなわち,外国の裁判所の裁判がどのような要件の下で内国の裁判所の裁判と同じように扱われるかといった点のルールを定めるものでございます。   本条約の適用範囲につきましては,第2条の規定によりまして,本条約は,21歳未満の者に対する親の扶養義務に関する申立てに適用されるほか,この申立てとともにされる配偶者間の扶養義務に関する決定の承認・執行又は執行の申立てに適用されることとされております。また,行政協力に関する第2章及び中央当局を介する申立てに関する第3章の規定を除きまして,配偶者間の扶養義務に関する申立てにも適用されることとされております。もっとも,締約国は,親の扶養義務につきましては18歳未満の者に対するものに限って本条約を適用する旨の留保をすることができるようになっております。他方で,能力の十分でない成年者に対する義務を含む親族関係等から生ずる扶養義務に本条約の全部又は一部を適用することを宣言することができます。   そして,行政協力のために,第4条の規定により,締約国は,本条約により課せられた任務を果たすために中央当局を指定しなければなりません。   行政協力の内容につきましては,まず,第9条及び第10条の規定により,居所を有する締約国の中央当局を介して受託国の中央当局に対し,扶養権利者は扶養義務に関する決定の承認・執行の申立てや,当該決定又は決定の変更の申立てをすることができ,扶養義務者は扶養義務に関する決定の承認等の申立て又は決定の変更の申立てをすることができます。   また,第6条の規定により,中央当局は,この申立てについて,転達若しくは受領し,手続を開始し,若しくは手続の開始について便宜を与え,又は必要な場合には法律扶助を提供し,若しくはその提供について便宜を与え,扶養義務者の所在の発見を援助するなどの適切な措置をとらなければなりません。さらに,第12条の規定により,嘱託国及び受託国の中央当局は,互いに事案の処理状況を知らせ,かつ,照会に対して適時に応答するなどしなければなりません。   そして,第14条の規定により,受託国は,先ほど申し上げた各種の申立てから生ずる手続を申立人に実効的に利用させなければなりません。なお,この手続利用に関し,第15条及び第16条においては,法律扶助を提供するに当たり,21歳未満の者に対する親の扶養義務に関する決定の承認・執行の申立てなどについては,資産審査をすることができないというふうにされております。   承認・執行につきましては,第19条,第20条及び第22条の規定により,締約国の司法当局又は行政当局の手続において成立し又はこれらの当局により承認された和解又は合意を含む,これらの当局がした扶養義務に関する決定は,相手方が手続の開始時において決定国に常居所を有していた場合等には,公の秩序に明らかに反するとき等の限定された拒否事由がある場合を除きまして,他の締約国において承認・執行されなければならないとされております。   承認・執行の手続に関しては,扶養料をできる限り簡易・迅速に取り立てることができるようにするという観点から,第23条の規定により,権限当局は,当事者の意見を聴かずに職権で,扶養義務に関する決定の承認・執行が公の秩序に明らかに反するか否かのみを審査して,決定が執行可能であることを宣言し,若しくは決定を執行のために登録し,又はこれらを拒否し,速やかに当事者に通知しなければならないとされております。当事者は,これらに対し,本条約が規定する期間内に異議を申し立て,又は上訴をして初めて意見を述べることができるというふうにされています。もっとも,第24条の規定によりまして,締約国は,権限当局が当事者に意見を述べる十分な機会を与えた後に承認・執行の原因及び拒否事由を審査し,承認・執行についての決定をするということを宣言することができます。この規定は外交会期において,十分な告知・聴聞という適正手続が確保されるべきであるという我が国の主張が採り入れられて,設けられたものであります。   また,本条約は,公正証書による合意又は権限当局に登録等された合意である扶養の取決めの承認・執行についても規定しておりますが,第30条の規定により,締約国は,これらについては本条約が適用されないものと宣言する権利を留保することができます。この留保規定も,こういった合意については,各国の法制上相違があり,法制によっては合意が当事者の真意に基づくことあるいは手続的公正さについての制度的保障が不十分なものもあり得るため,本条約を適用するかどうかの判断は締約国にゆだねられるべきである,こういう我が国の主張が採用されたものであります。   強制執行については,第32条の規定により,迅速に行われなければならず,また,第34条の規定により,国内法において,扶養義務に関する決定を執行するための実効的な措置を利用することができるようにしなければならないとされております。   次に,本議定書の骨子を御説明いたします。   本議定書は,扶養義務の準拠法,すなわち,扶養義務に関する渉外的法律関係に適用される法について定めるものでございます。なお,第23条において,本議定書は,本条約とは別個独立に締結することができるとされております。   本議定書は,第1条のとおり,子に対する扶養義務を含む親族関係,親子関係,婚姻関係又は姻族関係から生ずる扶養義務の準拠法について定めております。   そして,第3条の規定により,原則として,扶養義務は扶養権利者の常居所地法によって定まります。   しかしながら,次のような特則が定められております。   まず,第4条の規定によりまして,扶養権利者の常居所地法によって扶養権利者が扶養を受けることができない場合には,①子に対する親の扶養義務,②配偶者間等の扶養義務を除きまして,21歳未満の者に対する親以外の者の扶養義務及び③親に対する子の扶養義務は,法廷地法によって定まります。   また,扶養権利者が扶養義務者の常居所地の権限当局に申立てをした場合には,法廷地法によって扶養権利者が扶養を受けることができないという場合を除きまして,やはり当該扶養義務は,法廷地法によって定まります。   そして,扶養権利者の常居所地法及び法廷地法のいずれによっても扶養権利者が扶養を受けることができない場合には,当該扶養義務は,当該扶養権利者及び扶養義務者の共通の本国法によって定まります。   次に,第5条の規定により,配偶者間等の扶養義務は,当事者の一方が異議を述べたときには,婚姻により密接な関係がある地の法律によって定まります。   また,第6条の規定により,扶養義務者は,子に対する親の扶養義務及び配偶者間等の扶養義務を除きまして,扶養義務者の常居所地法及び当事者の共通本国法のいずれによっても扶養義務がないことを理由として異議を述べることができます。   さらに,第7条の規定により,扶養権利者と扶養義務者は,特定の国における個別的な手続との関連で,法廷地法を扶養義務の準拠法として選択することができます。   また,第8条の規定により,扶養権利者と扶養義務者は,①当事者の本国法,②当事者の常居所地法,③夫婦財産制の準拠法,④離婚等の準拠法のいずれかを扶養義務の準拠法として選択することもできます。   なお,公的機関につきましては,第10条の規定によりまして,公的機関が扶養権利者に対して行った給付について扶養義務者からその費用の償還を受ける権利は,その機関の所属国の法によるとされております。   これらに対し,第13条の規定によりまして,この議定書により定まる法律の適用は,その結果が法廷地の公の秩序に明らかに反する場合に限り,拒否することができます。   また,扶養額の決定に当たっては,第14条の規定によりまして,準拠法に別段の定めがある場合でも,扶養権利者の需要及び扶養義務者の資力のほか,扶養権利者が定期的な扶養の支払に代えて受領した補償についても考慮しなければならないとされております。   本条約及び本議定書の内容に関しまして,我が国は,国際扶養条約部会の審議の結果に基づき,特別委員会及び外交会期を通じて,多数の事項について意見を述べ,その多くが受け入れられ,ただ今御説明いたしました内容の中に盛り込まれております。しかしながら,我が国の意見が採用されなかった事項もございます。その主たるものは,次のとおりです。   本条約に関しては,法律扶助に関し,申立人が受託国において法律扶助を受けることができるかどうか,どのような内容の法律扶助を受けることができるかという点については,締約国の国内法にゆだねられるべきであると主張してまいりました。条約第3条c号においては,行政協力として受託国が提供しなければならない法律扶助の内容については,例示として規定されるにとどめられ,締約国の国内法にゆだねられたために,この限りにおいては,我が国の主張が受け入れられましたが,他方で,第15条及び第16条におきまして,法律扶助を提供するに当たり,21歳未満の者に対する親の扶養義務に関する決定の承認・執行の申立てなどについては資産審査をすることはできないというふうにされております。また,これらの申立て以外の申立てについては,宣言をすることにより資産審査をすることができるとされておりますが,その資産審査は,子の資産についてのものに限定されております。このことは,資産審査をすることを原則とする,我が国の現行の法律扶助法制とは相当に異なる内容の規律であります。   また,承認・執行の要件について,我が国の法制におきましては,外国裁判が確定していることを必要としておりますところ,仮に,この要件を不要とした場合には,執行を求められた国において強制執行がされた後に決定国において不服申立てが認められ,執行済み部分の国境を越えた取戻しが必要となってしまうことも考えられます。そのため,決定国において決定について不服申立期間内に不服申立てがされないか又は不服申立手続が終了するまでは,決定の承認・執行を拒否することができるものとすべきだと我が国は主張してまいりました。しかしながら,第20条第6項においては,こうした要件は必要とされず,決定は決定国において効力を有し,かつ,決定国で執行可能である限りにおいて承認・執行されるとのみ規定され,我が国の法制とは異なる内容の規律がされました。   他方,本議定書に関しましては,指定された法律の適用が明らかに不公正又は不合理な結果をもたらす場合におけるその不適用に関する第8条第5項の規定について,当事者の予見可能性や,当事者による準拠法の指定の有用性を損なうとの観点から,削除を主張いたしました。しかしながら,この点については,準拠法の指定時において当事者が指定の結果について十分に知らされ,かつ,認識していたときは,指定された準拠法が適用されるというふうに規定され,指定された法律が不適用とされる場合は狭められましたが,我が国の主張は全面的には受け入れられませんでした。   なお,本議定書は,我が国が締結している「子に対する扶養義務の準拠法に関する条約」及び「扶養義務の準拠法に関する条約」を実質的に改正するものであり,これらの条約及びその国内法である扶養義務の準拠法に関する法律と規律を異にする点が少なくありません。   我が国が本条約又は本議定書を締結するか否かに関する検討は,諸外国の動向を見ながら,適切な時期に開始されることとなると思われますが,その際には,ただ今御説明しましたように,本条約及び本議定書について我が国の意見が採用されなかった事項があること,それから本議定書について「子に対する扶養義務の準拠法に関する条約」及び「扶養義務の準拠法に関する条約」と異なる規律が採用された点があることなどから,本条約又は本議定書と,我が国の法制との間には,相当異なる部分が生じていることに留意する必要があろうかと思います。   以上,簡単ではございますが,本条約及び本議定書が採択され,諮問第67号に関する審議が終了いたしましたことから,その内容等につきまして,御説明申し上げました。   よろしく御審議のほど,お願い申し上げます。 ● どうもありがとうございました。   それでは,ただいま○○部会長から報告がございました国際扶養条約部会の審議結果及びその結果報告案の全般的な点につきまして,御質問と御意見を承りたいと思います。まず,御質問があれば御発言いただきたいと思います。   御質問がなければ,それでは何か御意見があれば伺いたいと存じます。何か御意見ございますでしょうか。   特段御意見がなければ,ただいま御報告のありました報告原案につきまして採決に移りたいと思いますが,採決に移ってよろしゅうございますでしょうか。   それでは,御異議がないようでございますので,そのように取り計わせていただきます。   それでは,諮問第67号につきまして,国際扶養条約部会から報告されました,「諮問第67号に関する審議結果報告案」のとおり答申することに賛成の方は,挙手をお願いいたします。   (賛成者挙手) ● どうもありがとうございます。   念のため,反対の方はいらっしゃいますでしょうか。 ● 採決の結果を御報告申し上げます。   議長を除くただいまの出席委員数は16名でございまして,全員賛成でございました。 ● ただいま御報告のありましたように,採決の結果全員賛成でございますので,それでは,国際扶養条約部会から報告されました「諮問第67号に関する審議結果報告案」は原案のとおり採択されたものと認めました。   採択されましたこの審議結果報告につきましては,この会議終了後,直ちに法務大臣に対して答申することといたします。   ○○部会長,どうもお疲れさまでございました。御苦労さまでございました。   続きまして,第3の議題に入らせていただきます。第3の議題は,「保険法の見直しに関する諮問第78号について」でございます。御審議をお願いしたいと思います。   まず,保険法部会における審議の経過及び結果につきまして,同部会の○○部会長から御報告をお願いいたします。 ● 保険法部会長の○○でございます。よろしくお願いいたします。   それでは,御報告させていただきます。   諮問第78号につきまして,本年1月16日に開催されました保険法部会第24回会議におきまして,「保険法の見直しに関する要綱案」を決定いたしましたので,その審議の経過及び要綱案の内容につきまして御報告を申し上げます。   まず,審議の経過でございますが,要綱案の決定に至る審議の経過は次のとおりでございます。   諮問第78号は,平成18年9月6日に発せられたもので,その内容は,「広く社会に定着している保険契約について,保険者,保険契約者等の関係者間におけるルールを現代社会に合った適切なものとする必要があると思われるので,別紙『見直しのポイント』に記載するところに即して検討の上,その要綱を示されたい」というものでございます。その別紙「見直しのポイント」には,商法が定める保険の類型を見直すとともに,商法に規定のない傷害疾病保険契約について適切な規律を法定することや,保険契約者の保護等に配慮して,損害保険契約や生命保険契約の規律を見直すことなどが記載されております。   この諮問にもございますように,保険契約は広く社会に定着し,国民の社会生活・経済活動において非常に重要な役割を果たしているわけでございますが,それにもかかわらず,商法の中にある保険契約に関する規定は,明治32年の商法制定後,明治44年に一部の規定が改正されただけで,その後約100年にわたって全く実質的な改正がされないままでございました。そこで,この間の社会経済情勢の変化を踏まえ,保険契約に関する規定を現代の社会に適合した内容に改めるための検討が求められるに至ったわけでございます。   この諮問を受けまして設置されました保険法部会は,平成18年11月に審議を開始いたしまして,平成19年8月には,それまでの審議の中間的な成果として,「保険法の見直しに関する中間試案」を取りまとめ,公表いたしました。この中間試案については,1か月間パブリックコメントの手続を実施いたしまして,215件もの意見が寄せられたところでございます。その後,中間試案に対して寄せられた意見も踏まえまして更に審議を進め,本年1月16日の第24回会議におきまして,「保険法の見直しに関する要綱案」の取りまとめに至ったものでございます。    以上が要綱案の決定に至る審議の経過でございます。   次に,要綱案の内容につきまして,要点に絞って,その概要を御説明いたします。   要綱案は,大きく分けまして,1頁の「第1 保険法の適用範囲」,その次の「第2 損害保険契約に関する事項」,それから少々飛びまして,11頁の「第3 生命保険契約に関する事項」,それからさらに飛びまして,19頁の「第4 傷害疾病定額保険契約に関する事項」,そしてさらに飛びまして,27頁の「第5 その他」という5つの項目で構成されております。順次御説明をいたします。   まず,「第1 保険法の適用範囲」におきましては,商法の規定する保険契約だけでなく,契約としてこれと同等の内容を有する共済契約等も適用の対象とすることとしております。これは,共済契約が我が国において社会的に重要な役割を果たしていること,現行商法の下でも保険契約に関する規定が類推適用されると解されていることなどを踏まえてのことでございます。   続いて,「第2 損害保険契約に関する事項」のうち,「1 損害保険契約の成立」でございますが,まず,「(3)告知義務」につきまして御説明いたします。その(3)の①におきまして,商法では保険契約者等の告知義務者が自発的に重要な事実を告知しなければならないとされているところ,保険者からの質問に応答すれば足りることというふうに改めております。また,③の(イ)及び(ウ)では,いわゆる保険募集人等が保険契約者等から告知を受ける権限を有しない場合であっても,告知を妨害したり,告知をしないこと等を勧めたりしたような場合には,保険者は告知義務違反を理由に契約の解除をすることができないこととしております。いずれも保険契約者等を保護するという趣旨に基づくものでございます。もっとも,③の(イ)及び(ウ)につきましては,これによって悪質な保険契約者等が保護されるという不都合な結果を招くことにならないように,④におきまして,告知の妨害等の行為と保険契約者等の告知義務違反との間に因果関係がないと認められる場合には,保険者は原則どおり契約の解除をすることができるということにしております。   続きまして,3頁の「(6)損害保険契約の無効・取消しによる保険料の返還の制限」におきましては,保険者が保険料を返還する義務を負わない場合を商法よりも限定しております。   次の「(7)保険証券」では,商法においては保険契約者から請求があった場合にこの保険証券を交付しなければならないとされているところですが,これを請求の有無にかかわらず交付しなければならないというふうに改めております。   3頁一番下の(8),これは「片面的強行規定」ということでございますが,商法の規定は大半が任意規定でございまして,約款等で法律の規定と異なる内容の合意をすることも基本的には自由と解されておりますが,この(8)では,先ほど申し上げた告知義務の規律等につきまして,これに反する特約で保険契約者等に不利なものを無効とすることとしております。これも保険契約者等を保護するためのものでございます。   続きまして,4頁の「2 損害保険契約の変動」の部分でございます。そのうち「(1)危険の増加」でございますが,商法は,例えば保険契約者等が自らの意思によって自動車保険で自動車の用途を自家用から業務用に変更するなどして危険が増加した場合には,契約は効力を失うということにしておりますが,保険料を増額すれば足りる場合には直ちに契約の効力を失わせるまでの必要はないことから,そのような場合には,この(1)の①の(ア)及び(イ)のいずれにも該当するとき,すなわち,約款等で危険が増加した場合にはそのことを遅滞なく保険者に通知しなければならないとされていたにもかかわらず,保険契約者等が故意又は重大な過失によってこれを通知しなかったときに限って,保険者が契約の解除をすることができ,また,契約が解除された場合には,この③によりまして,危険の増加後に発生した保険事故について保険者が免責されることにしております。これは契約が存続することに対する契約当事者の利益に配慮しながら危険の増加の事実を通知してもらうことによってリスクに対応した保険料を徴収する必要があるという保険者側の利益との合理的な調整を図ったものでございます。   続きまして,4頁の一番下,「(3)超過保険」におきましては,契約締結時に保険給付の限度額でございます保険金額が目的物の価額である保険価額を超えている超過保険も有効としつつ,超過部分について保険契約者が無駄な保険料の支払をすることによって不利益を被ることがないように,保険契約者は超過状態が生じたことについて善意でかつ重大な過失がなかったときは,超過部分の契約を取り消して保険料の返還を受けることができることとしております。   これらの規定についてはいずれも,5頁の「(5)片面的強行規定」におきまして,片面的強行規定とすることとしております。   続きまして,5頁「3 保険給付」でございますが,このうちでは,まず,6頁の「(5)重複保険」の部分を説明いたします。これは具体例で申し上げますと,同一の建物に二つ以上の保険契約が締結されていたというふうな場合の問題でございますが,この(5)の①におきましては,このような場合でもすべての契約が有効であることを前提に,被保険者はそれぞれの契約で定められた内容に従って各保険者に保険金を請求することができることといたしまして,②では,ある保険者が被保険者に保険金を支払ったときは,この複数の保険会社の間でそれぞれの負担部分に従いまして求償することができることとしております。これは,重複保険の場合であっても,被保険者が複数の保険者に一部ずつの保険金を請求しなければならないという不利益を被らないようにしたものでございます。   続いて6頁,「(6)保険給付の履行期」につきましては,商法には規定がございませんで,実務上約款の定めにゆだねられていた保険金の支払時期につきまして明文の規定を新設するものでございます。適正な保険金の支払のために不可欠な調査に要する時間的猶予を保険者に認めつつ,その調査に客観的に必要な期間が経過した後は保険者は遅滞に陥るということにしております。この規定も8頁の「(12)片面的強行規定」において片面的強行規定としております。   7頁に戻らせていただきまして,「(7)保険給付請求権等の消滅時効」では,保険金請求権の消滅時効期間を商法の2年から3年に改めております。これは被保険者側の利益を考慮したものでございます。   続きまして,8頁「4 損害保険契約の終了」のうちの「(1)保険契約者による解除」におきましては,保険契約者に契約の任意解除権を認め,「(2)重大事由による解除」では,保険者に重大事由による解除権を認めております。この(2)の重大事由による解除と申しますのは,保険金取得目的で保険事故を発生させたり,その未遂行為をしたような場合など,保険契約者等が保険を悪用しようとするような場合において保険制度の健全性を維持することを目的として保険者の解除権を認めるもので,商法にはない規定を新設するものでございますが,保険者の解除権がこの規定以上に広く行使され,善良な保険契約者等が害されることがないようにするために,これを9頁の「(5)片面的強行規定」のところで片面的強行規定としております。   次の9頁の一番下でございますが,「6 責任保険契約に固有の事項」のうち「(1)責任保険契約についての先取特権」は,非常に重要な新設規定でございます。現行法の下では,例えばPL保険(生産物賠償責任保険)等の責任保険契約の被保険者である加害者について,これは,例えばメーカー等でございますが,破産手続開始の決定があった場合に,保険者が責任保険契約に基づいて加害者に支払う保険金がそのまま被害者への賠償には充てられずに,加害者の債権者の平等弁済に回されてしまって責任保険の持つ被害者救済機能が十分発揮されないという問題がございます。そこで,このような場合にも被害者が保険金から優先的に被害の回復を受けることができるようにするために,被害者に対して保険金請求権についての特別の先取特権を付与することとしております。   また,10頁の「(2)保険者の免責」では,責任保険については被害者の保護に配慮しまして,7頁の「(8)保険者の免責」のところにある損害保険契約の一般原則とは異なりまして,被保険者等の重過失,被保険者とは先ほどの加害者のことですが,これを保険者の免責事由とはしないこととしております。   その次の「7 傷害疾病損害保険契約に固有の事項」では,被保険者の傷害又は疾病による損害,例えば治療費等を実際にかかった金額を基礎にてん補する保険契約におきまして,保険契約者と被保険者とが異なる場合には,被保険者は保険契約者に対して契約の解除を請求することができることとしております。これは傷害疾病損害保険契約が人保険契約であることを踏まえて,後ほど申し上げる生命保険契約等と同趣旨の規定を新設するものでございます。   10頁,「8 片面的強行規定の適用除外」のところでは,海上保険契約等の損害保険契約については,特殊なリスクや事業活動に伴うリスクを保険でカバーしようとする場合に,先ほどから出てきております片面的強行規定の制限が及びまして,合理的な契約内容を合意することができないというような支障が生じないようにするために,片面的強行規定の対象とはしないこととしております。   なお,11頁の「(損害保険契約に関する事項関係後注)」の1では,運送保険契約に関する商法の規定を削除する,すなわち,保険法には運送保険契約に関する特別の規定は設けないこととしております。また,2では,海上保険契約に関する商法の規定については所要の整備にとどめることとしております。   続きまして,11頁,「第3 生命保険契約に関する事項」でございます。   「1 生命保険契約の成立」の「(2)他人を被保険者とする死亡保険契約」,これは保険契約者と被保険者とが異なる契約でございますが,「ア 被保険者の同意」では,常に被保険者の同意がなければ契約が有効に成立しないこととするとともに,「イ 被保険者による解除請求」では,被保険者が契約締結時に同意をするに当たって基礎とした事情が著しく変更した場合等に,被保険者が保険契約者に対して契約の解除をすることを請求することができることとしております。これは被保険者を保護するために,自らの意思によって契約関係から離脱する手段を被保険者に与えるものでございます。   損害保険契約と共通する項目がたくさんございますので,それについては説明を割愛させていただきまして,少し飛びまして14頁の「2 生命保険契約の変動」の「(2)保険金受取人の変更」についてでございますが,これはアの①におきまして,保険契約者は保険事故が発生するまでは保険金受取人の変更をすることができることとし,イでこれを保険者に対する意思表示によってすることとしております。これは変更の方法を明確なものとして,保険金の帰属についての紛争を回避しようとするものでございます。また,ウでは保険金受取人の変更を遺言によってもすることができることとしております。これは保険契約者の意思を反映させるために変更の方法を拡大する趣旨の規定でございます。   次に,15頁の「(5)保険金受取人の意思による死亡保険契約の存続」では,生命保険契約が解約返戻金請求権の差押債権者や保険契約者が破産した場合の破産管財人等によって解除されそうになった場合に,被保険者の親族等でございます保険金受取人が差押債権者や破産管財人等に対して解約返戻金相当額を支払うことによって解除の効力の発生を阻止して,契約を存続させることができることとしております。これは多数の利害関係者の利益に配慮しつつ,保険金受取人の生活保障という生命保険契約の目的を達成するために新設することとした規定でございます。   最後に,「第4 傷害疾病定額保険契約に関する事項」,19頁でございますが。ここでは,商法には規定がない傷害疾病定額保険契約について規定を新設することとしております。なお,この第4の見出しが「傷害疾病定額保険契約」となっていることから明らかなように,第4の対象とする傷害疾病定額保険契約は生命保険契約と同様に定額給付をするものというふうにされており,損害てん補の給付をするものについては先ほど御説明いたしました第2の損害保険契約に該当するものとしつつ,10頁の7で御紹介した若干の特則を置くものとしております。   19頁の「1 傷害疾病定額保険契約の成立」の「(2)他人を被保険者とする傷害疾病定額保険契約」の「ア 被保険者の同意」では,原則として被保険者の同意を契約の効力要件としつつ,被保険者の傷害又は疾病による死亡のみを保険事故とする契約を除き,被保険者又はその相続人が保険金受取人である場合には被保険者の同意がなくても契約が有効に成立することとしております。これは傷害又は疾病を保険事故とする保険金が被保険者本人に支払われる場合にはモラルリスクの問題がないことなど,傷害疾病保険契約に特有の諸事情を勘案して,生命保険契約とは異なる取扱いとしたものでございます。   また,「イ 被保険者による解除請求」では,生命保険契約と同じく被保険者による契約の解除請求を認めておりますが,(ア)におきまして,被保険者の同意を契約の効力要件としない場合には,被保険者の保護のために,被保険者による契約の解除請求を,先ほどの生命保険契約の場合と違いまして,要件の限定なく認めることとしております。   それから,25頁,「(4)保険者の免責」では,生命保険契約とは異なり,保険契約者等の重大な過失により保険事故が発生した場合を保険者の免責事由としております。   最後,第5「その他」,この部分は27頁でございますが,所要の規定を整備することというふうにしておりますが,これは保険法を商法から取り出して単行法とすることに伴い,商法の中の保険契約に関する規定を削除することなどを念頭に置いております。   以上,簡単ではございますが,要綱案の主な項目につきまして御説明をさせていただきました。   よろしく御審議のほど,お願いいたします。 ● どうもありがとうございました。   それでは,ただいま○○部会長から御報告がありました報告内容及び要綱案の双方につきまして御質問と御意見を承りたいと思いますが,まず御質問がありましたら先に御発言をお願いしたいと思います。   どうぞ。 ● 他人を被保険者とする死亡保険契約の問題ですが,被保険者が子どもであるというような場合に,たまにですけれども,非常に困った事態を生ずることがあるのですが,この点,何らかの制限を置くということは審議の対象になりませんでしたでしょうか。 ● それでは,部会長,お願いいたします。 ● 今,御質問いただいた点は,この保険法部会でも多くの議論があったところでございまして,従来の我が国の商法では子どもを被保険者とする生命保険契約あるいは傷害疾病保険契約について余り制限を置いてきていなかったところでございます。ただ,保険の実務上は保険会社の方で実質的に保険金額の限度額を設定して,余り子どもに高い保険金額の保険が付けられないようにしてきたということではございますが,非常に例は少ないのですが,まま報道されるように,親が子どもを殺したところ保険金額がかなりの保険が付いていたというようなものがございます。こういう保険についてはヨーロッパ諸国を中心に非常に厳しい制限が保険法の中で規定されていることがございまして,全く禁止するとか,あるいは葬式の費用ぐらいに抑えるとかそういうことを規定している例がございまして,保険法部会でもそういう立法例を参考にして日本でもかなり厳しい制限を設けてはどうかという主張が一方でございました。   他方で,実際に行われている生命保険契約や傷害疾病保険契約というのは非常に多様なものがございまして,民事の基本法の中で,例えば生命保険でも養老保険,終身保険,定期保険といろいろなものがございます。それぞれについてまた限度額を設けるにしても非常に違ったような基準を設ける必要があるだろうというような,そういうことをこの民事の基本法で規定するのはなかなか難しかろうということで,この問題はどちらかというと保険業法,行政的な保険会社の監督規制の中で対応してはどうかということになりました。   現在,金融庁の金融審議会の方でこの問題を業界の自主規制,それから金融庁による行政的な監督,これをどう組み合わせて対応するかと。何らかのやはり従来よりは制限を設けたほうがいいだろうということではコンセンサスがあるところでそういうところに動いておりますが,まだ具体的にどこまで認めるかというあたりで意見の集約が完全にはできておりませんので,近いうちにそれを更に詰めていくということになろうかと思います。 ● ほかに何か御質問ございますでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 100年ぶりの見直しということで丁寧に御検討いただいたかと思いますし,また,保険契約が商行為とかそういう議論を抜きにして,相互保険契約はもちろんのこと,共済契約等に至るまで一本の法律の中にまとめるということは格段の進歩ではないかというふうに思いますので,その点は安心しておりますのですけれども,単行法として保険法が抜けた後の商法が一体どうなっていくのか,今後どう整理していくおつもりなのかということを,部会長にお伺いする質問事項ではないのかとは思うのですけれども,少しお話ししていただければ有り難いと思います。 ● その点は私どももこれから更に考えていかなければいけないことだと思っておりまして,○○委員や○○委員にもいろいろ御相談させていただきながら考えていきたいと思いますけれども,この保険が抜けました後,まだ海商といいますか,運送法の大きな分野がございます。そこをこの片仮名のまま残っているものをそのまま平仮名にしてもほとんど意味がないということで,今,先生方有志で研究会もしていただいているというふうに承っておりますので,その改正もしていかなければならないと。   一方で,商行為法につきましては,民法の債権法の大改正の検討が進められているわけですけれども,その債権法の改正との兼ね合いで民商法の切り分けをどうするかというのも一つの課題になっておりまして,これは○○参与を中心として商法の先生方にも入っていただいて,商行為法の部分にあるものを民法の方へ移すのかどうかというのも御議論いただいております。   いずれにしても残った商行為法が,先ほど委員御質問のとおりに,抜け殻みたいなものだけが残るというようなことは絶対避けなければならないと思っておりますので,そういう観点も踏まえながら更に検討していきたいというふうに思っております。   以上です。 ● よろしゅうございますか。 ● はい。 ● ほかに何か御質問ございますでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 今度の保険法の見直しに関しての大きな物の考え方ですね,そういうものが従来の保険の在り方,考え方とここが違うのだという,思想というか理念というか。先ほどちょっと契約者の保護という観点を非常に強めたというような意見があちこちに出ておりましたけれども,そういう大きな観点での見直しの姿勢といいますかね,そんなようなものはどんなように議論されたのかお教えいただければと思いますが。 ● その点は幾つかのポイントで御説明できるかと思います。何よりも,今御指摘がございましたように,従来の商法がほとんどが任意規定であるということで,契約者側のやはり情報の面でも取引力といいますか,バーゲニングパワーの面でも十分でない,そういうお客さんの側といいますか,契約者の側の保護が十分かというと,これは実質的な規制は行政的な監督規制でそれなりに対応はして相当なレベルにはあると思うのですが,なお不十分な点もあったところでございまして,今回の見直しではこの契約者の保護が特に必要な事項についてはこれを片面的強行規定とするということで,この保険法の規定よりも契約者側に不利益な特約を認めないと,こういうことにしている,これが大きな特徴かと思います。   それから,もう一つ強調しておきたいのは,保険契約という保険会社あるいは共済者と契約者側の契約という問題ではあるのですが,しかしこの保険契約をめぐっては契約当事者以外の者の利害が非常に強くかかわってくる問題がございます。これは契約当事者で自由に契約をすればそれでよいかというと,それは当事者だけの問題ではないのでどうしても不十分になってまいります。やはり法律で第三者,契約の当事者以外の第三者の保護が必要な場合にはそれを強行的な規定として設けておくということが必要になるわけでございます。そういうものの典型的な例が先ほど申し上げました,責任保険における被害者の保護措置でありますとか,あるいは生命保険の差押えとか保険契約者の破産があった場合の受取人の保護措置というふうなものでございます。後者の点は,受取人を保護する必要はもちろんあるのですが,ただ一方では保険契約者の債権者側の利益も十分考慮しなければいけないと。これを当事者間の契約の交渉にゆだねるというのはなかなか難しいわけで,やはり法律でこういう強行的なルールというものを設けることにして解決をしていると,こういう点が今回の保険法の新しいところではないかと思います。   他方で,以上申し上げた2点はどちらかというと契約の自由を制限するという方向のルールづくりということになりますが,やはり保険契約というのは非常に多様なニーズがある中でいろいろ複雑な契約内容というものを形成していく必要がある。またはどんどんイノベーションも行われていくことが経済全体にとっても好ましいということで,この保険法では契約の自由を一方では制限しながら,他方ではやはり余り細かいことまで規定を設けない,基本的なことをしっかりとこの保険法で定めまして,あとは当事者間の契約の交渉による自由な内容の契約というものを可及的に認めていくと,こういう姿勢が裏側として当然含まれておると。途中で申し上げました,事業者向けの保険については片面的強行規定性を外していると,こういうものもそういう観点に基づくものかと思います。   おおむね以上のようなことではないかと思っております。 ● ありがとうございました。   ほかに何か質問ございますでしょうか。なければ,御意見があれば御意見を承りたいと思いますが,いかがでございますでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 労働組合の立場から一つ二つ,意見を言わせてほしいと思います。   御承知のように,労働組合の活動の一つの領域に,メンバーの間の相互扶助といいますか,その一つの活動類型が共済でございます。ここで保険とは何ぞやとか共済とは何ぞやという,そんなそもそも論をやるつもりもございませんが,やはり保険と共済が違う部分が厳然とあると思っております。その違いがよってきたるところ,商行為であります保険と助け合い行為であります共済の違い,その辺が今回の保険法の改正で,共済側,労働組合の側から見れば,先々厄介な問題がこの改正内容によって惹起されるというか,そんなことがないように心から願っているわけでございます。   もう一つは,これは保険法の議論とは違うのですが,保険業法の方の議論と関わりまして,アメリカの対日何とか要望書なんかにもこの共済に触れた要望がいろいろ出ておりまして,そういったことが将来業法の見直しという形の中で議論がされてくるのだろうと思うのですが,今回のこの保険法の改正がそういったところに,我々共済に携わっている者にとりまして妙な影響にならないように,これは国会等でも御議論になるかもしれませんけれども,そんな懸念を持っているということだけ意見として申し上げておきたいと思います。   ありがとうございました。 ● 何かお答えすることはありますか。それでは,その御意見を承ることにさせていただきます。   ほかに御意見ございますか。どうぞ,○○委員。 ● 保険法,今回新しく保険法という名称になるみたいなのですが,その前,商法の後ろにあったということもありまして,私たち消費者からすれば全く分からない部分であったという感じがするのですね。保険に関しては保険業法の方がどうしてもイメージが強かったと。ところが,実際に消費者生活センターで起きているトラブルは,この保険法の部分なのです。媒介者の告知妨害とか,それから被保険者の不同意とか,そういうものが圧倒的に多かったのですが,今回この部分がすごくきちっと契約者保護ということで盛り込まれたという部分では,やっと私たちが考えていた矛盾というものがこれで解決するのかなというふうに思うと同時に,今まで消費者も余り認識がなかったし,業界,企業の方も保険業法ばっかり一所懸命守ってきたのではないのかなという感じもするものですから,制定された後は,是非この辺の啓発というのでしょうか,せっかくいい法律ができても消費者に対してそれを知らせなければ機能しないわけですから,解説等を丁寧に書いていただいて。今回言葉を随分やさしくされたという部分では条文を読めば分かるのですけれども,ただ,そこで迷うような部分はやはり解説を出していただくというような形でやっていただきたいなということが一つ。   これを契機に保険業法ももっと保険法を踏まえた上での改正というのでしょうか,その辺を強めていただきたいなというふうに思います。 ● 何かおっしゃることはありますか。それでは今の御意見も承っておきたいと思います。   どうぞ,○○委員。 ● 大体訴訟になるときには今のような問題点で争って丁々発止長い時間掛かるわけですね。関係の証拠というのは消費者の側からは非常に出しにくい実情にあります。そういう中で,ある程度異議なり何なりを出す期間といいますかね,こういうものについて相当考えていいのではないかというふうに思うのですけれども。   よく分からないのですが,ここの例えば2頁の解除権の期間の件なのですが。これ1か月間行使しないときは消滅するものとするというような立場になっていますが,これはどういう側面でどういう点を考慮されてこうなったものか,そこをちょっとお尋ねしたいと思うのですが。その点ちょっと短か過ぎではないかという意見なのですが,どうでしょうか。それはそういう意味ではないですか。 ● これは契約者のほうが告知義務違反をしたということで,保険者,共済者が契約を解除する,保険金を支払わないために解除をすると。その期間というのは1か月ですよ。保険会社がきちんと告知義務違反がありましたという事実を確認してから1か月という非常に短い期間内に解除しなければならないと,こういう契約者保護の観点から短くしていると。これは現行の商法でもそうなっているので,それを維持するものでございます。 ● どうぞ,○○委員。 ● 将来に向けての要望だけです。こちらの保険法の見直しに関する要綱案については賛成でございます。民商法をフランス,ナポレオン法典以来日本は分ける体制を採ってきたのが,会社法も独立し,また保険法も独立する中で,商法がずたずたになってきているということでもありますし,また,民法の大改正も予定されているということであれば,本当に一つのチャンスだと思いますので,民商合一論のほうが合理的ではないかということは昔からいわれながら,なかなかいったん出来上がった体制を崩せないままきていたと思うのですね。したがって,そういう観点からも今回全体の民事法の体系がどう在ったらいいのかというところを根本からきっちりと見直すまたとないチャンスではないかというように思いますので,商行為法を見苦しくない程度にどう片付けるかというレベルではなくて,もう少し基本的なところからの見直しができないものかというふうに思います。   その点,商行為法とそれから契約法との一体化ということも一つにはありますけれども,もう一つやはり法人に関する法律が,今いかにもばらばらになっているような感じがいたします。特に民法にほんのわずかだけ法人に関する規定が残っておりますけれども,その内容からいきましても,もう世界中で採用するところはなくなったのではないか,本家本元のイギリスでさえもうやめたというウルトラヴィーレスの規定がまだあるとか。内容面も含めて,体系的な在り方も含めて全体を見直すいいチャンスととらえていただければというように思う次第です。やはり取引法と法人法,あるいは組織法との切り分けとかいったことが考えられるのではないかというふうに思いますので,将来に対する要望として述べさせていただきます。 ● その御意見は承っておきたいと思います。   何かほかに御意見ございますでしょうか。   御意見がなければ,採決に移らせていただいてよろしゅうございますでしょうか。   それでは,ただいまの諮問第78号につきまして保険法部会から報告されました「保険法の見直しに関する要綱案」のとおり答申することに賛成の方は挙手をお願いいたします。   (賛成者挙手) ● 反対の方,念のため。 ● 採決の結果を御報告申し上げます。   議長を除くただいまの出席委員数は17名でございまして,全員が賛成でございます。 ● 御報告のとおり,採決の結果全員賛成ということでございましたので,保険法部会から報告されました「保険法の見直しに関する要綱案」は原案のとおり採択されたものと認めます。   採択されましたこの要綱につきましては,この会議終了後,直ちに法務大臣に答申することといたします。   ○○部会長,どうも御苦労さまでございました。 ● ありがとうございました。 ● それでは,ここでいったん休憩に入りたいと思います。 ( 休     憩 ) ● それでは,審議を再開いたします。   引き続きまして,第4の議題,「少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るための法整備に関する諮問第83号」について,御審議をお願いしたいと思います。   まず,少年法(犯罪被害者関係)部会における審議の経過及び結果につきまして,総会委員でもあり,同部会の部会長を務められました○○部会長から御報告をお願いいたします。 ● 少年法(犯罪被害者関係)部会長の○○でございます。私から,当部会における審議の経過及び結果を御報告申し上げます。   諮問第83号は,犯罪被害者等基本法の趣旨及び目的等にかんがみ,少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るため,早急に法整備を行う必要があると思われるので,要綱(骨子)について御意見を承りたいというものでした。  平成16年に成立した犯罪被害者等基本法は,犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とし,その基本理念として,「すべて犯罪被害者等は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」ことを掲げております。また,これを受け,平成17年12月に策定された犯罪被害者等基本計画においては,法務省において,少年審判の傍聴の可否を含め,犯罪被害者等の意見・要望を踏まえた検討を行い,その結論に従った施策を実施することとされています。そこで,被害者の方々を始めとする関係各方面の御意見や御要望をも踏まえて慎重に検討した結果,少年審判における犯罪被害者等の権利利益の一層の保護等を図るため,早急に法整備を行う必要があると考えられたことから,今回の諮問がなされたものです。   本審議会は,平成19年11月29日開催の第154回会議において,この諮問について,まず部会で検討させる旨の決定をされました。これを受けまして,少年法(犯罪被害者関係)部会が設けられ,部会では,その構成員として犯罪被害者関係団体の方々にも加わっていただき,同年12月13日から平成20年1月25日までの間,合計4回にわたって集中的に審議をいたしました。このうち,第1回会議後には,東京家庭裁判所の審判廷を見学し,第2回会議においては,少年犯罪の御遺族の方々などからのヒアリングを実施して,要綱(骨子)に対する御意見を直接伺いました。   そして,各諮問事項について,いずれも賛成多数により,本日,配布資料4としてお手元に配布されていますが,諮問された「要綱(骨子)」のとおり法整備をすることが相当であるとの結論に達しました。   それでは,部会おける議論の概要につきまして,御説明申し上げます。   まず,要綱(骨子)第一の「被害者等による少年審判の傍聴」について御説明いたします。   現行法において少年審判は非公開とされ,事件の被害者等であってもその傍聴は認められておりませんが,特に,少年が被害者を死亡させたり,その生命に重大な危険を生じさせたような重大事件においては,被害者やその御遺族から,審判におけるやり取りを自らその場で直接見聞きして,その具体的な状況について十分な情報を得たいとの強い要望が示されております。このような被害者等が,審判の具体的な状況について重大な関心を持つことは当然のことであり,その心情は,犯罪被害者等基本法の趣旨等にかんがみると,十分尊重されるべきものと考えられます。また,被害者等に少年審判の傍聴を認めることは,被害者等の立ち直りにも資すると考えられる上,少年審判に対する被害者等を始めとする国民の信頼を一層確保することにもつながることになると考えられます。   そこで,第一の一は,家庭裁判所が,故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪及び業務上過失致死傷等の罪,このうち被害者を傷害した場合にあっては,これにより生命に重大な危険を生じさせたときに限りますが,このような罪の被害者等から,審判期日における審判の傍聴の申出がある場合において,少年の年齢及び心身の状態,事件の性質,審判の状況その他の事情を考慮して相当と認められるときは,その申出をした者に,これを傍聴することを許すことができることとするものです。   要綱(骨子)第一の一については,まず,被害者等による少年審判の傍聴の可否について議論がなされました。   この点については,少年審判の傍聴に反対する立場から,少年審判が事件から間もない時期に行われるため,被害者等による傍聴を認めると,少年が精神的に萎縮し,率直に心情等を語ることができなくなるなどのおそれがあり,少年の健全育成を目的とする少年法の理念に反するのではないかという意見や,事実を知りたいという被害者等の要望については,記録の閲覧・謄写の制度の活用等により十分に対処することができるのではないかとの意見が出されました。これに対しては,要綱(骨子)では,適正な処遇選択や少年の内省の深化を妨げられることなく審判を行うことができるよう,裁判所が,少年の年齢や心身の状態等を考慮し,審判期日ごとにきめ細かくその相当性を判断した上で,被害者等の傍聴を許可するものである上,傍聴が認められた期日であっても,プライバシーに深くかかわる事項を取り扱う場合等には被害者を退席させる措置をとることも可能であるとの意見や,被害者等は,審判の具体的な状況を直接見聞きしたいと強く要望しており,この要望は記録の閲覧・謄写により対応することはできないとの意見が示され,少年審判の傍聴を認めることに賛成する意見が大勢を占めました。   なお,被害者等の傍聴については,少年審判規則第29条に基づく在席を認めることで対応することができるのではないかとの意見も出されましたが,同条は,審判のために必要がある場合に,少年の生活環境や処遇に関係の深い者について審判への在席を認めるものであり,被害者等が審判の状況を見聞きしたいという場合に同条に基づき傍聴を認めることは困難であるとの指摘がなされ,結局多くの委員の賛成を得るには至りませんでした。   また,要綱(骨子)第一の一については,対象事件や傍聴を認める要件についても,議論がなされました。   まず,要綱(骨子)では,いわゆる触法少年に係る事件についても,傍聴の対象事件としておりますが,この点について,触法少年は精神的に未熟であり,特に保護の必要性が強いことから傍聴の対象から除くべきであるとの意見が出されました。しかしながら,被害者の側が受ける被害は,少年の年齢により特段変わるところはなく,審判のやり取りを自ら直接その場で見聞きしたいとの被害者等の心情も,犯罪少年によって被害を受けた場合と特段変わるところはない上,触法少年の場合は,検察官送致されて刑事事件となる可能性がないため,被害者等にとっては少年審判の傍聴が可能な唯一の機会といえることから,傍聴を認める必要性は高いとの意見や,触法少年の事件であっても,年齢や心身の状態等を考慮して裁判所がきめ細かく相当性の判断を行うことにより適切に対応することが可能であり,およそ一切傍聴を認めないとすることは相当でないとの考えが示され,これに賛成する意見が大勢を占めました。   また,傍聴の対象事件については,過失犯である業務上過失致死傷等の罪を含めることに反対する意見や,逆に,性犯罪や生命に重大な危険を生じていないもののその心身に重大な故障がある場合についても,傍聴を認めるべきであるとの意見が出されました。この点については,被害者等の「個人の尊厳にふさわしい処遇」の一環として少年審判の傍聴制度を設ける趣旨からすると,特にこの「個人の尊厳」の根幹をなす人の生命に害を被った被害者等を傍聴の対象とすることが,その趣旨に合致するものと考えられ,これについては故意犯と過失犯で違いはないとの考え方や,少年審判が非公開とされている趣旨にかんがみると,被害者等による少年審判の傍聴を例外として認めることとしても,この対象事件としては,殺人事件等,何ものにも代え難い家族の生命を奪われた場合のように,被害者側の事実を知りたいという傍聴の利益が特に大きい場合に限るのが適当であるとの考え方が示され,結局原案が維持されることとなりました。   このほか,第一の一では,傷害について,「これにより生命に重大な危険を生じさせたとき」と限定しておりますが,この要件があいまいであり,傍聴の対象に含めるべきではないとの意見も出されましたが,医療措置を施しても死に至るような,死亡に至る蓋然性が極めて高かった場合は,死亡に匹敵する被害を受けたものといえるから,傍聴を認めるべきであるとの考え方が示されましたし,傷害の程度に関する資料は,捜査機関において収集され,家庭裁判所に送付される一件記録に含まれているのが通常であり,これらの資料を基に,家庭裁判所は適切な判断を行うことができるとの意見も示されたことから,結局原案が維持されることとなりました。   このほか,要綱(骨子)第一の一については,傍聴の場所,方法等についても議論がなされましたが,これは前回の会議においても指摘をいただいていたところです。この点については,各裁判体が審判廷の形状や事案に応じて判断すべきことではありますが,見学をした東京家庭裁判所等の裁判廷のレイアウトを参考にしつつ,例えば,比較的スペースのある審判廷の後方の角の辺りにおいて被害者等に傍聴をしてもらうことなどにより,少年と被害者等の間,裁判官と少年の間に,それぞれ一定の距離を保ちつつ傍聴に対応することが可能と考えられ,更に必要に応じて対応する職員の数を増やすこともできるとの考え方も紹介され,これに特段の異論は示されませんでした。   また,傍聴の方法については,被害者等が別室からモニターにより傍聴する方法を認めることの可否についても議論がなされましたが,モニターによる傍聴であっても被害者等から見られているという点では同じであり,直接傍聴をする場合と比べて,少年や審判に対する影響については大きな違いはないのではないかなどとの指摘もなされ,結局モニターによる傍聴について多くの委員の賛同を得るには至りませんでした。   次に,要綱(骨子)第一の二は,傍聴する者が著しく不安や緊張を覚えることも考えられることから,家庭裁判所は,そのようなおそれがあると認めるときは,適当な者をこれに付き添わせることができることとするものです。   なお,第一の一及び二に関連して,被害者から委託を受けた弁護士等による傍聴を認めるべきではないかとの意見も出されましたが,間接的にでも審判の具体的な状況を知りたいとの要望については,審判調書の閲覧・謄写を行うことが可能である上,被害者の代理人による傍聴を認めることは,被害者等による傍聴を認めることとする趣旨からすると疑問があるとの意見が出され,委託を受けた弁護士による傍聴に反対する意見が大勢を占めました。   次に,要網(骨子)第一の三は,傍聴により,少年等の名誉やプライバシーにかかわる事項を知り得ることから,傍聴した者又はこれに付き添った者に対し,傍聴により知り得た少年の身上に関する事項についての守秘義務等を課すこととするものです。   この守秘義務については,前回の会議において,これを担保するための措置についても議論を深めてもらいたいとの意見をいただいたところですが,守秘義務等については,記録の閲覧・謄写の制度等においても同様の規定振りとなっているところ,その運用上特段の問題は生じていないとの意見が示されました。また,プライバシーに深くかかわる事項を審理する場合などには,裁判所が裁量によりいったん被害者等を退席させるなどの措置をとることも可能である上,傍聴により知り得た事項を用いて,違法なプライバシー侵害を行った場合には,民法第709条の不法行為や刑法第230条の名誉毀損罪が成立したり,再度の傍聴や記録の閲覧・謄写が認められなくなることなどから,原案のほかに罰則等の担保措置を講ずる必要はないとの意見が示され,これに特段の異論は示されませんでした。   要綱(骨子)第一の一から三までは一括して採決に付され,私を除く出席委員16名のうち,賛成13名,反対3名の賛成多数で,諮問のとおりの法改正を行うべきであるとの結論に至りました。なお,傍聴の対象事件については,触法少年に係る事件を傍聴の対象から除くとする修正案も出されましたが,採決の結果,賛成1名,反対15名で否決されました。   次に,要綱(骨子)第二について御説明いたします。   被害者等による記録の閲覧・謄写は,平成12年の少年法の改正により創設された制度でありますが,要綱(骨子)第二は,この被害者等による記録の閲覧・謄写の範囲を拡大し,被害者等については,原則として記録の閲覧・謄写を認め,例外的に,閲覧・謄写を求める理由が正当でないと認める場合,又は少年の健全な育成に対する影響,事件の性質,調査又は審判の状況その他の事情を考慮して相当でないと認める場合に限り,閲覧・謄写を認めないこととするとともに,現行法において,正当な理由の例示として規定されている「損害賠償請求権の行使のために必要があるとき」という文言を削除することにより,正当な理由が認められる範囲を拡大することとするものです。また,現行法では閲覧・謄写ができる記録は,非行事実に係る部分に限られておりますが,その範囲を拡大し,非行事実に係る部分以外の記録も対象とするものです。ただし,少年の要保護性に関して行われる調査についての記録であるいわゆる社会記録については,少年や関係者の名誉やプライバシー等に相当深くかかわる内容が含まれることから,閲覧・謄写の対象から除外しております。   以上のうち,後者の対象記録の範囲の拡大については,新たに閲覧・謄写の対象となる記録には,例えば,捜査段階で実施された精神鑑定書等のプライバシーに深くかかわる記載が含まれ得る記録も対象となることから,これに反対する意見もありましたが,少年の身上・経歴等に関する記録をも閲覧・謄写したいという被害者等の心情については,犯罪被害者等基本法の趣旨等からすると十分に尊重すべきものと考えられること,要綱(骨子)第二においても,少年のプライバシーの侵害等の弊害がある場合など,裁判所が相当でないと認める場合には,閲覧・謄写を許可しないことができることなどから,記録の閲覧・謄写の対象となる記録の範囲の拡大に賛成する意見が大勢を占めました。   なお,要綱(骨子)第二については,社会記録についても閲覧・謄写を認めるべきであるとの意見も出されましたが,社会記録については,類型的に,少年や関係者の名誉やプライバシーに相当深くかかわる内容を含むものであり,閲覧・謄写の対象とすることは相当ではないとの意見が出され,結局原案が維持されることになりました。   要綱(骨子)第二については,採決の結果,私を除く出席委員16名のうち,賛成14名,反対2名の賛成多数により諮問のとおりの法改正を行うべきであるとの結論に至りました。   次に,要綱(骨子)第三の「被害者等の申出による意見聴取の対象者の拡大」についてであります。   平成12年の少年法改正により,被害者等の申出により意見聴取を認める制度が創設されましたが,被害者の心身に重大な故障がある場合における配偶者等は,その対象とされていなかったことから,これらの者についても,意見聴取の対象者とすることとするものです。この点については,特段の異論が示されることはなく,委員全員の賛成により,諮問のとおりの法改正を行うべきであるとの結論に至りました。   最後に,要綱(骨子)第四の「成人の刑事事件の管轄の移管等」についてであります。  要綱(骨子)第四の一は,現行の少年法においては,第37条第1項に掲げられた少年の福祉を害する罪に係る成人の刑事事件については,家庭裁判所が管轄権を有するものとされておりますが,このような成人の刑事事件については,他の事件と同様に地方裁判所又は簡易裁判所で取り扱うこととするのが適当と考えられることから,その管轄を,家庭裁判所から地方裁判所等に移管することとするものであります。  また,要綱(骨子)第四の二は,少年法第38条において,家庭裁判所は,少年に対する保護事件の調査又は審判により,同法第37条第1項に掲げる罪に係る成人の刑事事件を発見したときには,これを検察官等に通知しなければならないものとされていますが,現在,この規定の有する意義は乏しいものと考えられることから,第四の一において成人の刑事事件の管轄を移管することと合わせ,この規定を削除することとするものです。  いずれについても,特段の異論はなく,委員全員の賛成により,諮問のとおりの法改正を行うべきであるとの結論に至りました。  以上のほか,被害者に対する配慮については,運用面において,裁判所を始めとする関係機関による対応を一層改善し,早期に被害者がサポートを受けることができるよう系統的かつ積極的な施策が必要であることを指摘する意見もありましたので,併せて御報告させていただきます。  概略,以上のような審議に基づき,諮問第83号については,諮問された要綱(骨子)のように法整備を行うことが相当である旨が決定されました。  以上で,当部会における審議の経過及び結果の御報告を終わります。 ● どうもありがとうございました。  それでは,ただいま少年法(犯罪被害者関係)部会の○○部会長から御報告いただいたこと及びこの要綱(骨子)の全般的な点につきまして御質問と御意見を承りたいと思いますが,順序としてまず御質問がありましたらどうぞ御発言いただきたいと思います。  どうぞ,○○委員。 ● 第一の三の,御説明があったかもしれないのですが,ちょっと聞き漏らしていると思うので質問しますが,ここで正当な理由がないのに傍聴により知り得た少年の氏名その他うんぬんとあるのですけれども,正当な理由というのはどういうふうなものをいうのでしょうか。 ● 部会長,お願いします。 ● 例えば損害賠償請求などを行う場合は,正当な理由というふうに考えられます。そのほか,この傍聴した人が自分の家族とかそういう関係者にこれを漏らすということは,漏らすというかそれを告げるということは,一定の範囲でやはり正当な理由と認められると考えます。 ● では,傍聴は認めていない家族について話すことは構わないと。 ● はい,その話し方にもよるかもしれませんが,それまで一切禁じているという趣旨ではございません。 ● それから,あと,ここのところで罰則規定は設けないというふうに説明してくださったのでしょうか。 ● はい,そういうことです。 ● それはどういう理由からですか。 ● 現在民法上の不法行為とか刑法における名誉毀損とかそういう規定がございますので,もちろんそれに触れる場合にはその法適用がありますけれども,それ以上のサンクションということはこの場合は設けるべきではないというのが部会の考え方であります。理由はそういうことでございます。 ● そうすると,今までの名誉毀損等々によるその罰則規定で十分これが補えるというとおかしいですけれども,対応し得るというふうな考え方でよろしいのでしょうか。 ● はい。部会での議論では,それ以外に一番のサンクションは何かというと,こういうことをすればその後傍聴が認めてもらえないと,それから記録の閲覧・謄写も認めてもらえないと,それが一番のサンクションになるんだという意見がありまして,それはもっともな意見だろうと思います。   それからもう一つは,このプライバシーに関して,例えば,現在インターネットなどでその事実が流れることが多くあるわけですけれども,その場合と比較して,特に被害者がこういうことをした場合に,これはもちろん審判で見聞きしたことについてではありますけれども,被害者であるということで特にそれより強いサンクションを求めることはいかがかという意見もございまして,結局こういうことになったものでございます。 ● サンクションがあるとおっしゃったのは,では,初めの一人の少年だけは犠牲になってしまうのですけれども,そういうことでよろしいということですか。要するに,それで傍聴が認められなくなるということは,次からはそういうふうになるかもしれませんけれども,傍聴して,例えば氏名を明かしてしまったというような場合に,それはほかの法律で何か罰則規定があればそれはそれで対応できると思うのですけれども,そうでない場合に,それだと傍聴ができなくなりますよということになると,二例目からは効くと思うのですけれども。 ● 今申し上げましたように,民法上の不法行為とか一般的な規定で対処できるものと考えられます。 ● そこでいけるということですか。 ● はい,そういうことです。 ● はい,分かりました。 ● ほかに御質問があったらどうぞ。   どうぞ,○○委員。 ● 大変に短い時間で相当頑張って審議されたように感じるわけで,この内容もそれなりに深いところにも入っているというふうに感じる点があるのですが,幾つかの点について審議経過というかそういったような点について少し質問したいと思います。   こういう少年法の50年,60年というふうな大きな期間を経て定着していると思われる少年法の改正の点では,非常に大きな課題を今突き付けられているような気がして,私だけではなく私なんかの友達も含めて非常に弁護士が気が重い状態ではあるんですね。そうすると,こういった大きな少年法の持っている目的や理念等の変更にわたるのではないだろうかという気持ちを持っている側面と,被害者の方のそういった心情を何とか実現していくのをどうバランスをとっていいかというような趣旨で幾つも悩みがありますけれども。それだけにいろいろな方々からの事情聴取といいますかね,そういったようなことが背景にあったかなというふうに感じます。   今回の場合は審議4回ということで,期間的にも非常に短い期間でした。12月から1月という期間でこれだけのものを結論付けているという点では,もう少し期間が多く定められて,そして回数を増やして,関係する関係者の事情聴取をもう少し深くできなかったのだろうかなという点で質問なんです。   今回の場合は,被害者の方については相当程度の事情聴取を行ってヒアリングもされているように聞いておりますが,当の関係する審判の関係者とか,すなわち調査官も含めてそういう方の持っているお気持ちとか,それから付添人をやった経験のある人も部会には参加していたと思いますけれども,特に私の感じ方では,今,少年関係の事件を非常に一所懸命やっている若い人たちがたくさんいるんですね。その人たちはもうその少年法を自分の将来の仕事にしたいという人たちもたくさん私の周りにはおるんですね。各弁護士会なんかでも少年法の部会が形成されていて活発に議論されているわけなんですね。もちろん日弁連もそうでしょうけれども,各地方単位会は全部そうです。そういう中で若い人が非常に熱心に少年に対して努力されているんですが,こういう付添人,特に若い人たちの意見等を実情を踏まえた形で御審議の中で取り入れられなかったのだろうかというような気がちょっとしているんです。   そういった点についてはどの程度まで議論されたのか。一部ちょっと分からない,記録からは見えますけれども,その辺を経過との関係で御説明いただけると有り難いと。 ● ただいまの御質問は,審議の過程で,今先生がおっしゃったような立場の方々の意見をどのくらい取り入れて議論したかということでよろしゅうございますか。それと,結論としては4回では事実上は短いのではないかと,そういう御指摘ということで理解してよろしゅうございましょうか。 ● 取り入れていただけないだろうかというところについて議論がどの程度なされたかということ。 ● はい。もしお許しいただければ,○○先生の御質問にお答えする前に,今,部会長報告をいたしましたけれども,その繰り返しになる点もありますが,どこに問題があるかということについて,なるべく短くですが,かいつまんでもう一度説明させていただきたいのですが。よろしゅうございますか。 ● はい。 ● その後で先生の御質問に対してお答えしたいと思います。   これは言うまでもないことなのかもしれませんけれども,少年法においては,少年の健全育成ということがその目的となっております。そういうことからこの審理が非公開になっているということです。少年審判の場合に一般の刑事事件と違うところは,一般の刑事事件の場合には検察官が警察から送られた事件について起訴,不起訴を決定すると。起訴相当なものについて公訴提起をするというスクリーニングがあるわけですね。ところが,少年事件の場合はそういうスクリーニングがなくて,全件送致主義といいまして,原則として全部事件は家庭裁判所に送られるということになっております。   家庭裁判所で何をするかというと,まずその審判が開かれる前にその家裁の調査官が調査を行う,主に社会調査ですが,それから,必要な者については少年鑑別所に送って心身の鑑別を行う。そういう調査結果や鑑別の結果が家庭裁判所に寄せられて,その上で審判を行うというわけです。それはなぜかといいますと,これは正にこの少年法というのが少年の健全育成というところにかかっているからで,そこで審理をするものは単なる非行事実だけではなくて,要保護性といいますが,この少年にとってどういう処遇が一番大切かということに力を入れて審理を行うわけです。そのために今申しましたような調査や鑑別などが行われているということです。   もう一つ重要なことは,審判の教育的効果といいますけれども,その少年に対する処遇というのは,例えば,審判が終わって少年院に送られてから始まるのではなくて,その審判が始まったその最初から少年に対する処遇は行われているということです。それを有効ならしめるためにこの審判は非公開になっていて,そこで少年が自由に物が言える。そもそも自由に物を言うことに慣れてないような非行少年が多いんですけれども,それが自由に物が少しでも言えるように,裁判所も苦心をしているわけです。そういう意味で非公開というのが原則になっているということであります。   一方,ここで問題になっているのは,被害者の方々の立場なわけでありまして,この方々は審判におけるやり取りを直接見たいと。本件については,これはほとんどが被害者が死亡している場合ですから,例えば,自分の子供がその少年に殺されたときにどういうふうに審理をされるのか,果たしてそこで少年がどういうことを言うのか,本当に反省しているのかそうではないのか,それを自分の目で見極めたいと,そういう気持ちが非常に強いわけです。   それはこの報告でも申しましたように,法的には犯罪被害者等基本法3条で,「すべて犯罪被害者等は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」と,ここに基づいているわけです。したがって,従来は被害者あるいはその遺族の立場というのはこの少年法の中に顕在化した形で出てこなかったわけですね。それでは十分ではないということで,ここでその点についてどこで線を引くかという問題になる。したがって,これまでの少年法の理念と言わば違う利益というものがこの少年審判に入ってくるということになるわけです。しかし,当部会としてはその立場に立てばそれは無理からぬことであるという考えなのであります。そういう意味で,心情的にこの二つの立場をどこで折り合いを付けるかということは,極めて困難で苦渋な決断をしたということになります。   そういう対立があるところで,この被害者及び遺族の方々にこの審判の傍聴を認めるかどうかという問題が実際に問題になったわけで,ただ心情が苦しいというだけでは法制審としては適当でないのであって,どこに線を引くかということをしたわけです。それは,一つは,この少年によって被害者が殺された場合,またそれに準ずる場合もありますけれども,殺害された場合というふうに言っていいと思います,そういう場合にその事件を限定することです。それからもう一つは,傍聴を認めるかどうかということは家庭裁判所の裁量によって定めるべきであると。どういう基準でもって定めるかというのはこの案文にもありますように,相当性があるかどうかということなわけです。その相当性というのは何を基準にするかというと,これはやはり少年法の理念である少年の健全育成ということで,より具体的に裁判所の方から見れば,その少年審判の機能というものが影響を受けないでやれるかということがその基準であって,その判断基準によって個別的に傍聴を許すかどうかということを決めると,そういうことになっています。傍聴を許す場合でも,ある事件の最初から最後まで許すかどうかということもありますけれども,各期日ごとにそれを,この場合は許す,これは許さないということはできる。それから,同じ許すというときでも,その審理の過程で例えば少年のプライバシーを強く害するようなことについての審理が行われる場合には,一時被害者遺族の方は退席していただくということもできるような構造になっております。おおむねそういう形でこの要綱(骨子)ができ上がっておりまして,部会はそれについて採択したということであります。   それで,部会としてはその過程において,被害者の方々からヒアリングを行いました。そこでは非常に切実な意見というか気持ちの表明がありました。大変つらい思いをしたということ,被害者の方から見れば,加害者が成人であっても少年であっても自分の家族あるいは子供が殺されたということには変わりはないんだと,是非自分の目で審判を見たいという意見が表明されました。それ以外のいろいろな意見もありましたけれども,そういう考え方が主だったと思います。   ところで,今の○○先生の御質問は,いろいろな関係者からの意見を十分聴いたかどうかということだと思うのですけれども,一つは,パブリックコメントという形で,その内容については部会で事務局の方から報告がありました。その点については必要がありましたら後ほど事務局から説明していただきたいと思います。   それから,少年審判,それは付添いに携わっている人,熱心に携わっている若い人たちの意見を十分聴いたかということでありまして,無論意見書としてはいろいろなところから御意見をいただいております。ただ,直接のヒアリングは被害者だけということでそういうことはいたしませんでした。   その要否についての議論はありました。しかし,その点はこの部会の委員の中に熱心に付添いをしている弁護士さんが参加されておりましたし,これは個人的な評価ですけれども,非常に優秀な方で,極めて論理的にその状況を説明されました。そういう意味で,現実に付添いをなさっている弁護士の方が委員として参加されているので,それ以上の方を呼んでヒアリングをするということまでは必要ではないのではないかという結論になったわけです。   それでは,そのヒアリングをしなかったから十分そういう立場の意見が反映されなかったかというと,これは私の判断ですけれども,それは十分に意見書の形,あるいは特に代表された付添いについて熱心に行われている方の発言によって,それは反映されたのではないかというふうに思います。   それからもう一点,4回で終えたことがやはり短か過ぎるのではないかということですけれども,部会長としまして一番気を付けたことは,審議を尽くすことであります。それで,例えば,今申しました第2回の被害者の遺族の方のヒアリングの場合には,それでかなりの部分の時間が費やされましたが,それ以降予定の時刻を大幅に延長して,そのヒアリングがない場合と同じ程度の時間を費やして審議を行いました。   それから,どういう論点について議論をしたかということについては,ここに一覧表がございますが,時間の関係で読み上げませんけれども,論点というのは私が最初にいたしました報告の中でこういう論点について議論を行ったということです。   これについて第3読会まで行いました。ここで議論をするべきであるという論点についてはそれだけの議論をいたしました。論点としては基本的にこの要綱について議論すべき論点はほとんどそれでカバーしたと思います。   それから,もちろん議論は1回だけではなくて同じ論点について何度も何度も繰り返して……。 ● 先生,途中なんですけれども,質問の内容が先ほどのように付添人の若い人たちについて事情聴取するようなことがなかったかとか,そういう気持ちはなかったかというそういう問題と,あと,審判官みたいな人はどうなのかとか調査官みたいな人はどうだろうかとか,そういうことについて御議論になったかどうかということと,そういう者についての事情聴取等が必要ではなかったかという点で質問させていただいたものですから。骨子の内容については端的な形で結構なんですけれども。   私がそのような質問したのは,やはり審判官の心情とか調査官の心情というようなものが特に傍聴との関係では特段あるのではないかというようなことと,若い人たちの非常に熱心にやっている人たちの付添人の姿勢とか気持ちというのが端的に出るものが多かったのではないかというようなことが前提にあったものですからお尋ねしたのですが。 ● 失礼いたしました。裁判官とそれから調査官ですね,調査官についてのヒアリングということはいたしませんでした。ただ,裁判官については実務に直接かかわっている方を含めて,部会の委員として参加していただいております。実際の審判の運用をどうするかということについて,一番難しいのは裁判所だと思うんですね。それについてかなり詳しく裁判所の代表の委員の方から意見を伺い,乗り切れるという印象を我々は受けましたので,こういう結論に至ったわけです。   どうも先生の御質問と外れて申し上げて申し訳ございませんでした。 ● 内容までにわたって御回答いただきましてありがとうございました。質問に端的に答えていただければ結構ですので,詳しくお答えいただかなくてもいいと思いますが,あと一点よろしいでしょうか。 ● はい。 ● 先ほども出ましたパブリックコメントなんですけれども,これも非常に短い期間で募集したようですね。その募集の方法も必ずしも多くの人に分からないというか分かるような様式ではなかったというふうにも感じたのですが,実は記録にも出ているように,70,80の回答があった,意見があったというときに,その意見がこの資料の中ではどの程度の量がそうあったのかというのが全然出ていないものですからね。賛成意見と反対意見,あるいは問題とするかどうかの点についての意見を,こういいますと失礼ですけれども,平面的に書いてあるだけなので,どのような数の人が傍聴については是とするか非とするかというようなことについてあったんでしょうかね。その数も含めて非常に重要だと思いますし,多くはどんな方がそういった意見をお寄せになったんだろうか,そういった点が私興味がありましたのでお尋ねしたいと思います。 ● 部会ではそういう報告がありましたけれども,これは事務局の方から御回答いただいたほうがいいかと思いますので,よろしくお願いします。 ● では,事務局の方でお願いします。 ● 御指摘の意見募集は,今回の諮問が行われた当初に,いわゆるパブリックコメントの通常の手続と同様に行っております。特に分からないような形で行ったということはなくて,通常どおりの形で行ったところでございます。それで,実際に審議に反映していただけるような期間を設定して,その内容を取りまとめたものを御報告をしたところでございます。確かにどういう意見について何人かというようなことについてまでは御説明しておりませんが,部会でも若干御議論がございましたが,そもそもそういう御意見は個人だけではございませんで,団体で意見を述べられているところもございます。そうすると,団体についてはそれを1件というか一人とカウントするのかどうかという問題もございます。ただ,実際にその意見が個別にどういう内容であったかというのは事務局で全部保管してございまして,それについて直接御覧になりたい委員の方には御覧いただくという手続をとりまして,実際に御覧いただいた委員の方もいらっしゃいました。   以上でございます。 ● ほかに何か質問ございますか。どうぞ。 ● そうすると,どのくらいの賛成意見があったとかどうかは記録を見に行かないと分からないと,そういうふうなことになるわけですよね,実際は。だから,ここで議論すると,せっかく出たパブリックコメントがどうだったのか,どのくらいの数がこれだけあったのかというのは分からないわけですけれども,部会での問題の数を挙げるのはまずいんですかね。それとも,この総会でそれを出すことはどうなんですか,難しいんですか。 ● 技術的にそれが難しいと申し上げているわけではなくて,例えば,何対何なのかというような形で言われても,例えば先ほど申し上げたように,では1団体で意見を出されているときは,その会員数までカウントする必要があるのかどうかとかそういう問題が生じるわけです。 ● 一人とか二人とか人数ではなくて,1件とか2件と考えればよろしいんではないかというふうに私は思っているものですからお尋ねしました。   それからあと,被害者団体の方というのは幾つかあるように聞いているのですが,そういう被害者関係の方から反対意見,賛成意見,そういうのがやはり両方あったようでしたか。 ● はい,ございました。詳細は事務局からお願いします。 ● 実際に行ったヒアリングにつきましては被害者団体幾つかございますが,そこの代表の方等に来ていただくという形で伺いました。その中に少年犯罪の被害者という立場ではないようには思われますけれども,犯罪被害者団体の方で反対意見を述べられる方もおられまして,そういう御意見も伺ったところでございます。 ● こういった資料は,法律案を作成するに当たっては,関係する議員等には見聞できるようになっているんですか。 ● 部会の関係資料,議事録も含めて公開しておりますので,もし国会で御審議されるときに必要ということであれば,提出することは可能だと考えております。 ● 分かりました。失礼しました。ありがとうございました。 ● ほかに質問ございますでしょうか。   ○○委員。 ● 先ほど触れられた点について,確認という意味で教えていただきたいのですが,傍聴の場所の件でございます。先ほど審判廷を御覧になられた上で,後ろの方の席に座って傍聴することがいいのではないかという結論に至ったとの御説明がございました。その場合,これはモニターによる視聴ともかかわるのですが,少年が被害者等の傍聴人と直接顔を合わせる可能性があるのかどうかについて教えていただきたいと思います。と申しますのは,修復的司法という観点からは審判廷における審判自体が少年の立ち直りのための一つの要素となることがあり得るからです。その場合に少年が被害者等と直接顔を合わせることがいいのか悪いのか分かりませんが,そのような点についても御議論があったのでしょうか。お伺いいたします。 ● この点は各裁判所の審判廷の物理的な事情にもよりますけれども,先に申しましたように,被害者の遺族の方には審判廷の後ろの隅に座っていただくということです。その場合には被害者の遺族の方が少年から見えない位置にあるということが一つの考慮要素なのであります。もう一つは,できるだけ少年と被害者の遺族の間の距離を空けるということでその点を解決しようということでございます。 ● どうもありがとうございました。 ● ほかに御質問ございますでしょうか。   御質問がなければ,それでは御意見があれば承りたいと思いますが,いかがでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 私は諮問時に第一の三について,すなわち傍聴人の守秘義務違反についての法的制裁に関する議論を深めていただきたいというふうに申し上げたと思いますが,それで気になっておりまして,今回は議事録にしっかり目を通していたところ,大変よく議論されていましたので,問題の難しさを更に理解しました。したがって,ここで何か意見を申し上げるというより,感想を申し上げたいのですけれども。   少年審判が継続中は,先ほど報告されましたように,裁判官が傍聴をやめさせるとか不利益を与えるとかということで対応できると思うんですけれども,その審判が終わった後ですね,これについて先ほどの御報告では,民法の損害賠償責任と,それから刑事上の名誉毀損の責任を問うということで対応できるがというふうにおっしゃったと思うんですけれども,それはそうかもしれませんが,果たしてそれでいいのか。それは,ややこしくなりますから簡単に申し上げますが,少年審判の意義を更に損なうような泥沼に陥っていくのではないかという心配があります上に,そうかといって,では別な規定を設ければいいかということは既に部会で議論されたようですけれども,そうするとほかとの関係で非常に難しくなるということは大変よく理解できました。   したがって,これから先は,感想というか,ややこしくならないように期待するだけだという,そういうことでございます。したがって,お答えいただく必要はなくて,そういう感じを得ましたということです。 ● ありがとうございました。○○部会長,何か。 ● 特にございません。 ● そうですか。それでは,今の御意見はお聴きしておくということにさせていただきます。   何かほかに御意見ございますでしょうか。どうぞ。 ● 私の方で余り多くを言いたいとは思っていないのですが,悩ましい仕事というか考え方で私の方もつらいわけですけれども。これまで多くの委員の方が議論されているので,特に弁護士の委員の中で付添人をよくやっていた方の中で意見書が出ているものもありますし,多くをそこで述べておりますからそれを援用させてもらえれば有り難いというふうに思います。そういう立場ですが,付け加えて言うならば,一,二点を聴いていただきたいというふうに思います。   前回,審判廷の問題でちょっと御検討いただきたいという趣旨のことを申し上げました。実際にここの調べていただいた資料によると,10坪程度若しくは12,13坪程度のものが多いようですけれども,現場の審判廷でやりますと,すぐ後ろにいるというのと同じ結果になるんですね。私なんかはこちらの少年が何か発言をすることによって傍聴される方が一つ一つについてやはりいろいろな思いがありますから,息遣いとか感じ方の発露といいますか感情の表れといいますか,そういったものが聞こえていくということはほぼ間違いない,そのくらいの距離感だというふうに思います。そういう中で傍聴をお認めになるのが適当なんだろうかというのが私,非常に深刻に感じています。   少年といってもいろいろな少年がおると思いますけれども,行為をしたときには自分はそんなに悪くないと思ってやっているような少年もおるかもしれません。精神的な発達段階でも非常に弱いと私も感じます。下手すると発達障害があるような子がおることもよくあるわけです。そういったような子が短い期間で,大体審判になるのによく四十九日なんていってますけれども,そういったような期間で行為から審判の席に着くわけですね。そうすると,そういう中で十分な内省がなされていない可能性もあるわけですね。審判官というのは法にもありますように,懇切を旨として穏やかに行うとともに,非行のある少年に対して自己の非行について内省を促すものというふうな形を審判官の在り方として規定されているわけですね。そうすると,非常に丁寧に,あるいは諭すように,あるいは上手に婉曲に聞き出すように,いろいろなことを経験に基づいて行っている実情にあると思います。それに沿って付添人も本人のそれまでの面接経過,調査経過,そういったようなものを踏まえてそこで丁寧に補助していったり,本人の内省を深めていったりするわけでありますね。そういう中で初めて本人の反省というのが内実化してくる,現実化してくる,このようなふうに思うのです。   そういうことからすると,ある意味の非公開の現場において話されるその実情は,大変大切なものというふうに考えますし,裁判官の姿勢若しくは調査官などや付添人の姿勢も少年に対して,よそから外見上見ると極めて丁寧に,あるいは人によっては悪いことをしたことのない子に接するような態度に見える可能性があるらしいんですけれども,実際はその人の内省を深めるための作業だというふうに私は思うんですね。そういう中で少年が,なるほどというふうに少しずつ自分の心を開いていき,過去のいろいろな環境や何かにおける問題点をきちっと把握して,自分の行った行為がいかに厳しかったことであるか,よくないことであったかということを深く反省して,被害者に対する思いも深めていくということが期待されているんだろうと思うんですね。   少年の場合飽くまでも刑事手続とは本質的に違っていて,対審構造とっていません。ですから,裁判官の審判というものが本人を矯正あるいは教育するための非常に大きな力になるように思うんですね。それに対して傍聴というのがどの程度資するものかというところを十分に考えて,今後検討していただきたいなというのが,法制度化に当たって求めていきたいというふうに私は思っております。   傍聴の場所,そういったようなことも含めてまだまだ検討すべきことが多いのではないかという意味で,傍聴は時期尚早ではないかというふうに思っています。そんなのが一つの意見であります。   幾つかのたくさんの問題点がありますが,もう一つ物の考え方として述べておきたいのは,これは私の独断かもしれませんけれども,少年法の理念とか目的というのは,やはり少年の健全育成に基本を置くものというふうに思いますし,そういったようなことで手続を経る中で教育あるいは教育的効果あるいは副次的効果を持たせながら彼を更生させていくということが非常に重要ですね。そうすると,個人の,少年自体の問題はそこにあるわけですが,もっと広く納得というものを通じて,自分の内省を深めた結果,今後二度と犯罪に手を染めない,再犯の立場に立たない,こういったような形で社会的にある意味の防衛的な結果を生じていく,社会的な安定をもたらしていくということになろうかと思うんですね。   したがって,審判手続というのは個人の利益若しくは更生,教育,そういったようなものとともに,社会の大きな安定というようなものに資するものというふうに考えます。それの一環として被害者に対するものもあろうかと思いますが,今までの議論の中には被害者の直接に具体的に見聞をしてその情報を得る,そういう意欲,関心,そういったものを満たすべきではないかということは,私はそのこと自体は非常に大切だと思いますし,そうだと思うんですけれども,それと少年の更生その他についての問題がパラレルにあるいは対置するものとして,あるいはバランス的なものとして考えるのはどうなんだろうかという疑問を持っています。私は,本人の更生,それから被害者への慰謝あるいはそういった情報を得たいとする気持ち,そして社会における安定といったような三つの大きな要素を踏まえてこの問題をとらえていっていただきたいというふうに私は感じています。よろしくお願いしたいと思います。 ● では,○○先生,何か。 ● ○○委員を中心に非常に熱のこもった御議論がありましたので,私も一言付け加えさせていただきたいと思います。これまで少年法の改正に関しては,その都度少年法部会が設置されました。その際議論の対立の軸になりましたのは,少年法の根幹をなしている健全育成という考え方をどの程度修正すべきか,逆にいえばそれをどの程度守っていくべきかということでありまして,そういうきっかけになりましたのは平成12年の改正の場合には,事実認定の非常に難しい事件が続出したということでありました。山形マット死事件というのに代表されるそれでありました。それから,昨年の少年法改正は非行の低年齢化が極限に達して,触法少年が大きな問題を起こすということでありました。そして今回は被害者の問題です。犯罪被害者等基本法ができ,あるいは基本計画が策定されたということを背景にしてどの程度の手直しを行うべきかということであります。   簡単に申しますと,私は,過去3回を通じて,少年法部会は全く同じ態度をとったと思うのでありまして,それは健全育成という根幹を維持しつつ必要最小限度の手直しを加えるということであります。今回部会長が報告されました骨子案も,私はその線上にあると思います。傍聴を認めるわけですけれども,その対象事件は言わば最小限度に絞り込まれておりますし,裁判所の裁量ということも十分書かれております。それについて心配される意見があるということは確かで,○○委員は家裁の調査官のことにも言及されましたけれども,私も調査官の人たちとお話をする機会がありますが,それはそれで過去60年の家裁の実績というものを踏まえてそういう御議論が出るのは当然であると思いますが,それだけに,家裁は少年法の理念を支える十分な実力を付けてきているわけで,このような改正が行われたからといって健全育成という基本思想に傷がつくということは,私はあり得ないと思っております。そのような意味で先ほどの部会長の報告を拝聴していた次第でございます。 ● ほかに何か御意見ございますでしょうか。   よろしゅうございますでしょうか。   それでは,御意見が尽きたようでございますので,それでは原案について採決に移りたいと思いますが,これを一括採決したいと存じますが,それでよろしゅうございますでしょうか。 ● 傍聴とその他の点は随分ちょっと違うようにも感じますので,一括というのは全部ですよね,一から四まで。 ● はい。 ● 一と二から四というように別に分けてもらったほうが私としては有り難いのですが。 ● 御意見は,一と,二,三,四とは別に分けると,そして採決をしてほしいというそういう御意見と承りました。   ただいま○○委員から,この諮問83号に関する要綱(骨子)につきまして,第一と,それから第二ないし第四を分けて採決したらどうかという御提案がありましたが,これにつきましてはこの総会での前例といいますか取扱いについての前例があるように伺っておりますので,これについて事務当局から伺いたいと思います。 ● 関係官の○○でございます。今,会長がお話になった前例について一言御説明します。平成11年の第125回会議になりますが,総会において,やはり少年法部会からの報告がございまして,その際委員の中から今御提案があったように,事項を分けて分割採決したらどうかという御意見がございました。   他方で,その総会においては他の委員から部会の報告というものは全体としてバランスを考慮した一体のものであるから,そのようなものとして全体について採決すべきであるというような意見もございまして,そのときは総会の場でまず採決の仕方について採決をいたしまして,その結果は全体を一括して採決するという御意見のほうが多数であったことからそのように採決したという例が平成11年にございます。また,昨年2月の第152回会議において刑事法(犯罪被害者関係)部会の要綱(骨子)を採決する際にも同様の取扱いをしたという例がございます。 ● 今,事務当局からそのような説明がございまして,分割採決をするかどうかをまず採決をして,その結果に従って分割採決がよいということになれば分割採決をするし,一括採決がよいということになれば一括採決をするという前例があるということでございますが,この方式でよろしゅうございますでしょうか。   それでは,まず分割して採決することについて何か御意見ございますか。いきなり分割採決をするか一括採決するかをすぐに採決をかけてよろしゅうございますか,それとも何か具体的な御意見ございますでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● あえてこだわるわけではありませんが,諮問83号に関する要綱について御報告いただいて,これについてどう考えるかというのがここの総会のあれなので,もしそうでしたら,そもそも分けて諮問するということが最初にあってよかったはずなので,そして分けて要綱案を出すようにというそういうのがあってよかったはずで,ここにきてそれはないのではないかと。基本的にまとめてやるのが普通ではないかと。また,次の,後々の将来のためにそういう先例を残す必要はないのではないかと思います。先例は先例としてみますけれども,それに固執する必要はないというふうに私は思います。 ● そういう御意見もございますが,ほかに御意見ございますでしょうか。   それでは,採決の仕方についてお諮りいたします。この諮問第83号に関する要綱(骨子)につきまして,一括して採決することに賛成の方は挙手をお願いしたいと思います。   (賛成者挙手) ● それでは,反対の方は挙手をお願いいたします。   (反対者挙手) ● どうもありがとうございました。 ● 採決の結果につきまして御報告申し上げます。   議長を除くただいまの出席委員数は17名でございまして,提案に賛成の委員が14名,反対の方が2名でございました。 ● それでは,ただいま御報告がありましたように,一括採決することにするという案が賛成多数でございますので,諮問第83号に関する要綱(骨子)につきましては一括採決をすることにさせていただきます。   それでは,これから採決をいたしますが,少年審判における犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための法整備に関する要綱(骨子)につきまして,これを原案のとおり答申することに賛成をする方は挙手をお願いしたいと思います。   (賛成者挙手) ● 反対の方は挙手をお願いします。   (反対者挙手) ● 採決の結果を御報告申し上げます。   議長を除くただいまの出席委員数は17名でございます。賛成の委員が15名,反対の方が1名でございました。 ● 以上のとおり,賛成多数でございましたので,少年法(犯罪被害者関係)部会から報告のありました少年審判における犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための法整備に関する要綱(骨子)は,原案のとおり採択されたものと認めます。採択されました要綱につきましてはこの会議終了後,直ちに法務大臣に対して答申することといたします。   ○○部会長,どうも御苦労さまでございました。   それでは,最後の議題であります「民法の成年年齢の引下げの当否に関する諮問第84号」について,御議論をお願いしたいと存じます。まず始めに,諮問事項の朗読をお願いいたします。 ● 民事局参事官をしております○○でございます。   それでは,諮問を朗読させていただきます。   諮問第84号   若年者の精神的成熟度及び若年者の保護の在り方の観点から,民法の定める成年年齢を引き下げるべきか否か等について御意見を承りたい。   以上です。 ● それでは,この諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由等につきまして,事務当局から御説明をお願いいたします。 ● それでは,「民法の成年年齢の引下げの当否に関する諮問第84号」について,提案に至りました経緯及び諮問の趣旨等を御説明申し上げます。   昨年5月に成立した「日本国憲法の改正手続等に関する法律」の附則第3条におきましては,同法が施行されるまでの間に,18歳以上20歳未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう,選挙年齢を定める公職選挙法,成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとされました。そして,この附則を受けて内閣に設置された「年齢条項の見直しに関する検討委員会」において,昨年の11月,各府省において必要に応じて審議会等で審議を行い,平成21年の臨時国会又は平成22年の通常国会への法案提出を念頭に法制上の措置について対応方針を決定することができるよう検討を進めるものとするとの決定がされました。   そこで,民法の成年年齢を,現在の20歳から引き下げるべきか否か等について法制審議会で御検討いただく必要があると考えまして,今回の諮問をさせていただいたものでございます。   次に,今回の民法の成年年齢の引下げの当否を検討する際のポイントとして考えられるところについて御説明申し上げます。   第1に,検討の視点についてですが,民法の成年年齢を引き下げた場合,18歳,19歳の若年者でも売買や賃貸借等の契約を自己の判断のみで結ぶことができ,また,父母の親権に服しないことになる年齢が18歳や19歳となり,このような若年者でも父母の同意なく婚姻することができたり,養親になったりすることができるようになります。養親というのは養子縁組の親でございます。そこで,民法の成年年齢を引き下げるかどうかの検討に当たっては,若年者の精神的成熟度や若年者の保護の在り方の観点から検討を加える必要があると思われます。   第2に,今回の検討は,あくまでも民法の成年年齢に絞って検討を行うということです。仮に民法の成年年齢を引き下げる場合には,民法以外の法令にも影響を及ぼすことになるとは思われますが,法務省で他省庁所管の法令についてまで検討を行うことはできませんし,民法以外の法令には,それぞれ,その法令が制定された経緯・理由等があり,そこまで検討をすることはできませんので,成年年齢を引き下げるべきか否かにつきましては,民法のみの観点から検討をしていただきたいと考えております。   第3に,民法の成年年齢の引下げの当否の検討に当たっては,国民の意見,意識を十分に考慮する必要があるということです。すなわち,民法の成年年齢は,行為能力が制限されることによって取引における保護を受ける者,親権に服する者,養親となることのできる者等の範囲を画する基準となる年齢ですので,これを引き下げるかどうかは国民生活に重要な影響を及ぼすことになります。そこで,その検討をするに当たりましては,国民の意見,意識を十分考慮する必要があると考えられます。   また,本諮問の契機となりました国民投票法附則第3条が設けられた趣旨等も十分踏まえる必要があると考えております。お手元に配布資料をお配りしておりまして,その資料10番の「国民投票法との関係について」と題する1枚紙がございますが,これをちょっと御覧いただきたいと思います。これに基づいて御説明いたします。   御承知のとおり,国民投票法におきましては,第3条におきまして,その投票権者の範囲を18歳以上の者としております。しかし,当初,与党議員が国会に提出いたしました案は,投票権者の範囲を20歳以上の者としておりました。その後,国会審議の中で,諸外国の調査などが行われ,18歳以上の者に国民投票の投票権を与えるのが世界標準であるという認識が幅広く共有されるようになりました。そこで,与党は,国民投票の投票権者を18歳以上の者とするという修正案を提出いたしまして,最初に申し上げましたが,その附則第3条において,国は,この法律が施行されるまでの間に,満18年以上満20年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう,公職選挙法,民法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとすると定めたわけでございます。   この附則を設けた理由については,この法案の提出者は,国会審議における答弁等において,そこに書いてありますとおり,①公職選挙法の選挙年齢を戦後20歳に引き下げた理由として,民法の成年年齢が20歳であることが挙げられており,民法上の判断能力と参政権の判断能力とは一致すべきであること,②公職選挙法の選挙年齢と国民投票の投票権年齢は同じ参政権であることから,一致すべきであること,また,③諸外国においても,成年年齢にあわせて18歳以上の国民に投票権・選挙権を与える例が非常に多いことが挙げられています。   今回,民法の成年年齢の引下げについて御審議をお願いいたしましたが,その検討に当たりましては,このような国民投票法附則第3条が設けられた趣旨等も踏まえていただくようお願い申し上げます。   以上のとおりでございます。よろしくお願いいたします。 ● 引き続きまして,配布資料の説明をさせていただきます。まず,配布資料10番ですが,こちらは先ほど○○幹事から御説明申し上げたとおりでございます。   次に,配布資料11番の「参照条文」と書いてある資料について御説明させていただきます。こちらに載せております条文は,民法のうち「成年」に関連した条文及び国民投票法の関連条文でございます。   民法は,第4条におきまして,「年齢二十歳をもって,成年とする。」と定めております。民法における成年の意義につきましては,先ほど○○幹事から御説明させていただきましたが,行為能力が制限されることによって取引における保護を受ける者,親権に服する者,養親となることのできる者等の範囲を画する基準となっており,民法におきまして「成年」という概念を用いた条文は約50ほどございます。民法の成年年齢の引下げの検討に当たりましては,これらの条文に与える影響も考えながら検討を進める必要があるものと考えており,また,成年年齢を引き下げるという結論を出す場合には,これらの関係条文のうちのどの条文にどのような手当てを施す必要があるかについても,御審議いただく必要があると考えております。   配布資料の説明は以上でございます。 ● それでは,ただいま御説明がありました諮問第84号につきまして,まず御質問がございましたら御発言をお願いしたいと思います。   どうぞ,○○委員。 ● 先ほど○○幹事からは,この民法に限ってここでやるんだというお話がありましたが,民法以外に何らかの格好で成年年齢に言及している法律はどんな法律がどれぐらいあるんでしょうか。 ● どうぞ,お願いします。 ● ここに挙がっている公職選挙法がそうですが,それから例えば未成年者の略取誘拐といったような刑法についても規定がございます。そのほかにも各省庁にまたがって191本の法律があるということが内閣における検討委員会で報告をされておりまして,もちろんその1本の法律にたくさん条文もございます。それから,成年,未成年と書いている条文のほか,年齢で一定の規制を加えたり保護を加えたりとそういった条文もありますが,これもある程度それは影響を受ける。未成年者がどうなろうと成年者がどうなろうと関係がないという規定もあろうかと思いますが,それは一つ一つ検討していかなければならないだろうということが内閣の検討委員会では今議論されているところでございます。 ● ○○委員,よろしゅうございますか。 ● はい。 ● ほかに御質問はございませんか。   ○○委員どうぞ。 ● 今の○○委員の質問と同じようなところから始まるのですが,あくまでも民法のというふうにおっしゃいましたが,直ちに国民投票法に触れられましたから,いくら民法に限ってやっても,世の中はすぐそこで出た答えは国民投票法から公選法からすべてになびいていくという,これはどうしようもないことではないでしょうか。ですから,あくまで民法のというのは無理なことではないかという気がいたします。   それから,国民投票法についてはこれはおかしいというのが私の意見ですけれども。公職選挙法が20歳だから国民投票法も20歳だという発想がここにあるのですけれども,そんなことはないので,憲法改正国民投票というのは公職選挙の国民代表を選ぶということと全く違いますから,違う発想で考えるべきだという意見を,この法律ができる過程で私は間接的にいろいろ自民党などに言ったのですけれども,なかなか議員さんたちには理解してもらえない,そういう点があるのですけれども。こうなると,部会でおやりになるのではないかと思うのですが,大変なことになるのではないかと。民法に限ってといいながらも,それは難しいのではないかという気がします。   それから,精神的成熟度をどのようにして測るのか,本当に明治時代と今と違うのか,これは計測できないことではないかというふうに思いますので,その辺は部会の審議は大変なことになるのではないか,こんな質問をしたってしようがないのかもしれませんが,こういうことが言えます。 ● 私も十分にお答えできるかどうかは自信がないのですが,それぞれ成年とか未成年とかを決めている規定というのは各法律にたくさんあります。それはそれぞれの法律の立法趣旨があるわけでございまして,したがって,基本的には,その成年年齢というものを改めるべき必要があるのかどうかというのは,それぞれの法律に従って検討するのがまず筋であろうと思います。国民投票法がこうなっている,公職選挙法がこうなっていると,だからもう全部結論は決まっているんだというのであれば法務省としても諮問にならないわけでありまして,そこは民法の立場でどうだろうかというのを考えていただきたいというのが偽りのない本当の気持ちでございます。   今,国民投票法の規定はどうなんだという趣旨の御質問がございました。これも非常に難しい問題で,実は法務省は憲法を所管しているわけではありませんので,これはあくまでも個人的な一般論だということでお聴きいただきたいと思いますが,憲法15条3項には,成年者による普通選挙を保障するという規定がございます。憲法の教科書を見ましてもいろいろな説がありまして,この成年という言葉を受けて民法は成年年齢を20歳としているんだと。つまり,完全に連動するんだというふうに読む解釈と,これはもう先生が一番御存知ですけれども,そうではない,連動しないんだと。例えば民法の成年年齢は20歳であっても投票権,公職選挙法上の投票権はもっと下にしてもいいんだとか,広く選挙権を保障することになるんだからとか,それから,全く両方は関係しないで,それぞれの法律の趣旨に従って成年というものを決めていけばいいんだと,いろいろな見解がございます。もちろんそういうことについてはこれからも御議論になる余地はあるのかなと思うのですが,しかし,あくまでも民法の成年年齢をどうすべきかということは,この法制審議会で民法の解釈の立場でやっていくということは不可能ではないはずでありまして,その観点から御検討いただきたいと思います。   精神的成熟度なんてどうやってみるんだという御意見がありましたが,これはいろいろな各界の御意見とかヒアリングを通じてある程度のものが出てくるのかもしれません。あるいは今,委員が御指摘のとおり,そんなものは全く論証不可能だという結論が出るのかもしれない。そこは私どもとしては何とも申し上げようがございませんけれども,全く白紙の気持ちで民法の観点から成年年齢はどう考えるべきだろうかということをここで一度御検討いただくというのは非常に意義のあることだろうと,こう思っております。よろしくお願いいたします。 ● 私からよろしいですか。この諮問第84号はここに書いてありますとおり,成年年齢を引き下げるべきか否か等について諮問すると。引き下げるという可能性もあるし,引き下げないという可能性もあるということが含まれていると思いますね。では,引き下げなかった場合にそれでは国民投票法の方はどうなるかといいますと,国民投票法の方の附則の3条2項は,この公職選挙法なりあるいは民法の改正で18歳に引き下げるということが実現しない間は20歳でいくんだということが書いてありますので,どういう結論になっても国民投票法の方が施行できなくて困るということはないし,国民投票法があるから当然民法は引き下げるということでも必ずしもないと。先ほどの説明にもありましたように,この附則が付けられた意義というのは十分に理解した上で,民法の立場から議論せよというのがこの法制審議会に課せられた使命ではないかというふうに思うことが一点です。   それからもう一つは,この成年年齢を18にするか20にするか19にするかといっても,確かに今おっしゃったとおり,精神的成熟度というのを科学的にどこで測るのかというのは確かに非常に難しい問題だと思います。そこで,私としては,どういう結論が出るかという結論の正当性は,たくさんのパブリックコメントなり公聴会なりいろいろな審議の仕方があると思いますけれども,多くの世論を聴いて,十分な審議を尽くして結論を出す。その結論が正当性を持つんだという手続の正当性でその結論を正当化する以外に,結論の正当性というのはかなり難しいのではないだろうかというのが私の感じです。 ● 私もそれでよろしいのですけれども。ただ,民法に限ってといっても,ここでの覚悟は,結局,公選法とか国民投票法とかいろいろなところに影響を与えるんだというそういうことでやるしかないのではないかという気がしています。私が旧司法試験の口述試験で聞いたところ,合格になってる人,法律家になる人たちが圧倒的に民法の成年年齢の20歳と公選法の20歳とは同じものだというふうに考えている。でも,これは憲法の議論からすれば,国民主権の原理から始まって,これは長くなりますからやめますけれども,これは全く違うものだと考える余地もありますし,ましてや憲法改正国民投票のこれについてはもっと違う考え方がある。自分の将来のことを考えればいいというのですから,住民投票と同じように14歳とか15歳でもいいという議論もあるので,そういうこともありながらここで法務省が法制審議会でこれをやるということは,成年年齢をこれから先決めてしまうのだという覚悟が必要ではないか。   むしろ私は総務省の方に公選法を変える覚悟があるのかどうかというのをちょっと打診して動かしてみる必要もあるのではないかという気もしますけれども,聞くところによると,総務省は動く気がないという,それ正しいんですか。 ● 申し訳ありません,少し補足をさせていただきたいと思います。先ほど来,国民投票法の附則3条,これをどうやって読むんだということが言われております。何もしなければどうなるんだと,20歳のままだとしたらどうなるんだということもよく言われるんですけれども,そもそも国民投票法それ自体が法務省の所管ではありませんので,これについてコメントをするというのはもう非常に我々としては控えるべきだと思っておりますけれども,この条文の附則3条をそのまますうっと読めば,これで何もしなくていいということになるのかというのは一つ考えどころだろうと思います。   先ほどから皆さん聴いておられて矛盾したことを言っているではないかと思われるかもしれないのですが,民法の世界だけで考えるというのは,これはもう我々法務省の立場としてそうせざるを得ない。ですから,そういう立場で御審議をお願いしますが,何度も申し上げますが,それに当たってはこの検討をしなければならなくなった理由は,この国民投票法があるからだと。これは○○委員が繰り返しおっしゃっているとおりで,そこの附則にこういう規定があって,附則3条の趣旨について国会の審議の過程でも提案者の委員からそういう説明がされているということがありますので,そこを十分に踏まえていただきたいということでございます。 ● では,○○委員,どうぞ。 ● ちょっと今の禅問答みたいなお話を聴いておりまして,ちょっとどうかなと思うんですが。国民投票法の附則第3条の読み方,○○先生からも読み方についてのお考えが述べられましたけれども,一つはその読み方が先生のおっしゃったような読み方でいいのかどうか,これも議論したらいろいろなことがあるのではないかなと私は思います。   それから,191本,成年とかいう表現のある法律があるというお話でしたが,その中でも一番ベースになるのがやはり民法だろうと。そういう意味では民法が現在成年年齢を20歳にしていることを敷衍している法律というのは191本の中の圧倒的多数ではないかと思うんですね。法律は各省ごとに所管,管轄があるというお話ですが,これだけ広範にかかわるものを法務省の所管はこれだからという感覚でよろしいのかと。あるいは私も手続のことはよく分かりませんが,それだけ各省にまたがるのなら内閣ででもちょっと整理をしていただいて,もう少し敷衍的な議論がきちんと行われてしかるべきではないかなと。   だから,今のお話を聴いていると,自分のところはこれだけだから庭先しか掃きませんという,国民がこの問題について持っている関心というのはもっと広いものがあるのではないかなと。ルール,手続のことはよく分かりませんので暴論だったらお許しいただきたいんですが,一般的な感覚からしたら民法のことだけやるという今の○○幹事のお話はちょっと視野が狭いんではございませんかと。生意気ですがそんな感じがしております。 ● 今,○○委員がおっしゃられたこと,誠にごもっともでございまして,私どもも政府全体として全体を統括した審議という方法ももちろんあったと思いますので,そうしていただければどれほど楽だったかと思います。しかし,先ほど冒頭に○○幹事から御説明申し上げましたように,検討委員会の結論はそうではなくて,各府省において個別に検討すると。ただし,そごが生じないように調整は検討委員会において行うと,そういうこととされたものでございますから,まず虚心坦懐に民法のこの成年年齢というそれが設けられた趣旨,機能を勘案して,その年齢が今までどおり20歳であるべきなのか19歳なのか18歳なのかということを御議論いただきたいということでございます。 ● それはどこで決めるの。閣議で決めたの,各省ごとにやれというのは。 ● 私の方からちょっと補足的に説明しますと,各省の事務次官を構成員とする年齢条項の見直しに関する検討委員会というのが,この国民投票法が成立した直後に設けられまして,昨年5月ですけれども,そこで昨年中に2回の会議が開かれて,2回目の会議で政府としてこの附則を受けてどういう態勢で検討するかということについて,○○幹事がお話ししたように,各省で検討本部をつくって,それぞれの所管法律について審議会等必要なシステムで議論をして結論を出すようにと,ほとんどの省庁の法律にこの成年年齢,年齢条項といわれる条項がありますので,各省でやるようにと。ただし,連絡調整は内閣官房で責任を持ってやるというようなことがこの事務次官級の検討会議で決まって,それを受けて,それは11月に決まった話ですが,法務省で12月に法務省の検討本部を設けて,そこに法務省所管法律のうち,この年齢条項が関係するのはどれだけあるかということを取り上げた上で,民法のこの部分についてまず今日の総会で成年年齢の引下げの当否等について諮問をして審議をしていただこうと,こういう方針を法務省として立てたということです。   この議論の結果あるいは途中経過なども政府全体の方針に従って適宜他省庁に連携,連絡をするような調整は,内閣官房の方で行うことに今後なっていくと思います。 ● 妙な国ですね,何々省で年齢というのがみんな違うの,そんなことがあり得るという議論ではないと思うんだけれどもね。いろいろな手続のことよく分かりませんのでこれ以上申し上げませんが,何となくおかしいとお思いの方は多いと思います。 ● 各省別々にヨーイドンで始めるという話には実はならなかったわけです。各省でやるといったときに,法務省の民法の成年年齢はその成年という概念を使っている各省所管の法令が多数ございますので,内閣全体の意向として早めに,これ3年間で整備しろという,附則の期限が切られている検討ですけれども,早めに法務省の民法成年年齢についての検討は進めてほしいと。その結論をみて,その結論いかんによってはそれぞれの所管法律をどうするかというのは,また各省でそれを踏まえて考えなくてはいけないというようなことになっております。 ● どうぞ,○○委員。 ● 申し上げたいことは○○委員の方からほとんど御質問という形で出ていますし,多分こういう回答しかないんだろうなと予想されるような回答があったんですけれども。   私は民間会社にいるんですけれども,この手の審議会とかいろいろな政府の会合に出ますと,これ私どもの省としてはこれしかできないと,他省庁のことについては申し上げられないというような回答が非常に多くて,あちこちでフラストレーションを感じてる,これは一般論ですけれども。   一つだけ,本日のこの審議会でこの年齢の話が諮問されるというのは,メディアを通じて随分前から宣伝されていた。ところが,ほかの資料は事前にいただいたにもかかわらず,この3行しかない諮問第84号が何ゆえ本日席上で配布されたのか。多分この間いろいろな政府の内部や各省庁との間でいろいろなやり取りがあったのかなと。もしそういうような事情がいろいろあって,たかだかこの3行の,この3行もよくよく読んでみるとなかなか含蓄があって,これ難しいですよ。何で精神的成熟度を読み,若年者の保護の在り方の観点から民法のと,こうなって,民法にすっとくっ付いてくるような,くっ付いてこないような。   多分,この数日間にいろいろなやり取りがあったに違いないと思うんですが,差し支えなかったら教えてほしい。何ゆえ今日席上配布になったのか。ただ諮問するというのならもう前々からこの3行ぐらいの文章は私どもの手元に着いていたはずだと,こんなふうに思っています。 ● どうぞ。 ● 御指摘のとおり,マスコミが非常に早くから関心を持って,実はそれは政府部内でもそうですが,各界から非常に高い関心を持たれた問題でございました。そういうこともありまして,事前の準備,特に今日資料を補足して説明したりとかいうことをいたしましたけれども,そういうことについての準備に多少時間が掛かったというのが正直なところでございます。 ● どうぞ,○○委員。 ● 何かこの成年年齢の議論というのは法務省あるいは民法の改正という内在的な要求からではなくて,あくまでも外在的なそういう要請を受けてということで,そのために何かなぜ民法の年齢改正なのかというその問題関心が非常に希薄だというのはやはり皆さん感じられており,国民投票法という民法とは関係のない他の法律との関係でというそういうことを受けて動くものですから,何かもうひとつよく理解できないということはあろうかと思うんですけれども。   もう少しそれを逆手にとって,これだけ社会が変わり,民法のこういう議論でも大きく民法も改革され,変革されている時代に,やはりこの年齢というのはかなり法律体系において基本的なことなわけですよね。特に子どもと大人を区分するこの境界線を引く年齢という,成年年齢をどうするかというのは,社会のルールをつくっていく上で非常に重要なもので,それがこれだけ動いている,大きく変化している産業社会の中で,今,民法の観点からどう在るべきかというのは,何だかんだ問題はあるかもしれないけれども,非常に重要な議論になるというふうに,疑心暗鬼とかは別に,法制審議会として受けるというのは重要なことなのではないかなと思うのですね。   そういう観点からこの諮問を見ると,引き下げるか否かというのはちょっとすごく気になるんですね。というのは,私のような職業キャリア,労働問題をずっと調査している人間としましては,要するに子ども,若者から成人への移行過程というのは大きなこの産業社会の変動の中ではどちらかというと非常にプロセスとして充実させなければいけないという認識が産業社会に定着してきていると思うのですね。つまり,青年期というのはきちっと,かつてのように青年期をいいかげんな短い期間ではなくて,かなり長期間に青年期を設定して,その中で大人がいろいろな支援をして,今ここで苦しいといろいろ言われてました成熟ということなのでしょうけれども,そういう育成期間というのは産業社会が複雑化し,情報化し,国際化するという,高度化する社会の中では非常にどちらかというと充実させなければならず,充実させるということは長さと質を両方とも担保するということになる。そうすると,そういう議論の中にずっといて,最近のフリーターなんていうのはまさにそういう社会の変化を受けてフリーターのような現象が出てくるというのはよくいわれるわけで,私どもの調査でも出ているわけです。   ということになると,何か今の我々の現実からくる課題との逆行というか,逆なのかなという印象を私は持つわけです。成人年齢を引き下げるということは,要するに早くにあなたは大人ですよということになるわけだから。なぜそれに非常にしつこくこだわるかというと,これまで日本はどちらかというと学校から職業社会への移行というのが非常にうまくいった社会なんですよね。それは何かというと,皆さん実業界の方がいらしてあれなんですけれども,学校出の何の知識もない若者を企業社会が全部引き受けてそこで育成するというような,若者を育成することを引き受けてきた社会だったわけです。それが最近の非常に厳しい産業社会の変化の中で,あるいは企業の変化の中で,そういう育成部分は企業はもういいと,あるいは負えないというような状況で,その部分は社会が担わなければいけないという。そのためにそれが十分ケアできない,あるいは支援できないためにフリーターとかそういう若者の問題で出てきているというのはよく言われていることで,かなり説得的なことだと思うのです。   そういう意味からいえば,今の日本の社会で若者あるいは成人ですよという年齢のラインを引き下げるということは,我々からいうと支援が必要とされている年齢を,というかその支援を必要とされている育成のプロセスについての社会的な支援が,何かこうおざなりになるというか,むしろそれは我々の観点からいえば充実させなければいけないのに,何か早く若者にしてしまうというような形でおざなりになる方向にいくのではないかというような,疑心暗鬼ではないですけれども,そういう心配があるというようなことから,やはりこの成人年齢というものは他の分野からもいろいろ関係もあり,学校もいろいろ,家庭もすべてありますが,職業,労働の分野では非常に決定的に重要な問題でもあるわけです。そのための基本になる成人とは何か。育成され成人であるというふうに社会的に認定される年齢とはどうなのか,社会的にどう認定したらいいのかというのは,外在的に押し付けられたというのではなくて,私は法律家でもないのであれですが,基本である民法の観点から,しっかりと多角的に成人とは何かということを是非検討していただきたいというふうに労働分野の人間として要請をしたいと思います。 ● ほかに御意見いかがでしょうか。○○委員。 ● ○○先生の先ほどの附則第3条の読み方に関する感覚では,議論した結果上げなくてもよい,現行のままでもよい,それは議論した上で結論を出せばいいんだというふうに聞こえましたが。それから,この諮問の文章も可否ということでどっちでもいいみたいなふうに読めるように書かれておりますが,立法府の意思として,国民投票法案に係るいろいろな議論もあったと思うのですけれども,その立法府の意思はどの辺にあるのか,その確認等はきちっとできて,なされた上でどっちでもいいということなのか。単なるこの国民投票法との関係についてというこの1枚のペーパー,解釈の仕方はいろいろなお立場の解釈がもちろんあるのかもしれませんが,立法府が国会を通した国民投票法ですから,その立法府の意思とそごを来すような受け止め方になっていないのかということを,やはりもう少し吟味をしていただく必要があるのではないかなと。私の取り方が違っていれば御指摘をください。 ● どうぞ。 ● その点についてですが,実は先ほど申し上げましたとおりでして,附則3条につきましてこの案を提出した提案者からは,民法上の判断能力と参政権の判断能力とは一致すべきであること,それから,諸外国においても成年年齢に合わせて18歳以上の国民に投票権,選挙権を与える例が非常に多いことが挙げられております。   そこで,私どもとしてはこの法律を所管しているわけではありませんので,これを踏まえていただきたいということになるわけですけれども,同じ国会審議における提出者の答弁において,たくさんいろいろな法律があるけれども,それぞれの立法の趣旨に立ち返って一つ一つ精査をし,18歳に引き下げるもの,あるいは現状のまま20歳にとどめるものを一つ一つ検討していく必要があるという見解も述べられております。そういったことを踏まえて御検討いただきたいというところでございます。 ● ○○委員。 ● 質問になるかと思いますが,この諮問事項で若年者の保護の在り方ということがうたわれておりますが,これはあくまでも民法上の法律行為に関しての補完と,法定代理人がいてそれで補完することがありますので,そこだけに限定して議論するという御趣旨なんでしょうか。といいますのは,精神的成熟度というのは,むしろその保護の在り方の根拠なんですよね,恐らく。そういう成熟してないから保護が必要なんだという観点できているわけで,そういった場合の若年者の保護という中身を教えていただきたいんですが。 ● これから御検討いただく内容にも深くかかわるかと思いますが,ここの若年者の保護というのは民法上の行為能力,未成年者の行為能力のことを念頭に置いております。そのほか,精神的成熟度というのは,最初にここ,本日も配布資料で関連条文を挙げておりますけれども,例えば未成年者は養子をとれないとか,結婚に同意がいるんだとかいろいろな規定がございます。それについてそれぞれやはり精神的成熟度というのは考えていかなければいけないんだろうなと。だから,行為能力を考える上でも精神的成熟度がそのベースにあることは間違いありませんが,ほかの条文の場面でもそれぞれ精神的成熟度というのを考えていくことになるんだろうなと思っております。ただ,これはこれからの議論にゆだねたいともちろん思っておりますが。 ● ちょっと今の関連でよろしいですか。これは刑事法でもやはり未成年者という概念を用いて,成人でない者を未成年者と扱っているわけです。その場合に,ある意味でこれは民法が過重な負担を強いられて,民法が決めたものにみんな乗っかって統一的に成年者と未成年者を分けたと,こういう経緯があると思うのですが,その場合に,この成熟度の問題と,それから保護の対象としての未成年者というものの総合的なとらえ方という観点で,民法だけではなくて,ほかの観点も入れるような形での御議論をしていただきたいというように思います。これは希望ということで。いずれ部会をつくって審議するとかそういう場面で,やはりほかの法律とリンクしておりますので,そういった観点の御議論も十分にしていただきたいなというそういう希望でございます。 ● ほかに何か。どうぞ,○○委員。 ● そういう希望を刑事法の方からおっしゃられると,憲法ないし行政法などの公選法とか国民主権とかそういうことについて少し識見の高い人も,部会にすべて参加しなくても,一定時期呼んで見解を聴くということもしていただきたい。そうなるともう日本の法制上の成年者は何かということを法務省の法制審議会が先導してやるということに事実上なるかと思いますが,それで私は構わないというふうに思っていますので,そのように多様な意見を取り入れて進めていただきたいと希望いたします。 ● 御意見は,どうぞ,○○委員。 ● 以前弁護士さんから聞いたんですけれども,未成年の契約の取消し条項,これが機能しているのは消費生活センターぐらいだねと言われたことがあるのですが,やはり消費生活センターにおいては20歳未満と20歳を超えたといった場合はトラブルの件数が全然違ってくるんですね。その一方で,では何歳,20歳のままがいいのか,もっと下げて18歳でいいのかというのはやはり個人差にもよるのですけれども,私どもとしては,今の若者というのは昔よりもどうも成熟してないような印象があります。特にトラブルに引っ掛かるというか起こすような若者に関してはそういう印象があって仕方がないのです。それを,だからといって年齢を高くするとか今のままでいいというのがいいのかどうなのかというふうに考えると,やはり議論を尽くすべきではないかなと。今の時点で18歳にされるというのは確かに消費者にとっては厳しいです。ですけれども,いろいろな意見を聴いた上で,やはり18歳でいいのではないかということであれば,それはそれできちんと法律ができて対応していくのではないかというふうに思いますので,こと民法に関して,中でも法律行為に関していえば,やはりいろいろな方の意見を聴きたいなというふうに思います。 ● ほかに御意見はございますでしょうか。   それでは,審議の仕方等についても含めて何かございましたらお願いします。   どうぞ,○○委員。 ● 今までいろいろ事務局の御説明とか委員の御意見を伺って,非常に難しい問題だということは十分分かりますけれども,差し当たって,民法の成年年齢を中心に議論するということで,関連する民法の条文が多数ありまして,それぞれもちろん成年が基準になってますけれども,それぞれの制度の持っているところが反映しているところもありまして,一律な議論ではいかないと思うのですね。先ほど○○幹事が養親の話をされましたけれども,養子縁組でも特別養子の場合には25歳以上でないと養親になれないというふうになっていますし,それから,他方で未成年者でも婚姻すれば成年擬制というのが日本の規定なんですけれども。これも普通の人は大体当然と考えているんですけれども,もともとフランスの民法なんかはそういう制度を採っておりませんで,親権から解放されるという,効果はほとんど違いはないんですけれども,違った考え方をとってまして,もうちょっと日本よりは成年年齢に対する点で柔軟な制度を持ってますので,いろいろ議論の幅が必要だと思います。   それから,先ほどのお話で,時間的にもいろいろ制約があるということで,機動的,集中的に審議をするということが必要だと思いますので,総会でということではなくて,むしろ新たに専門の部会を設置して,そこで調査審議をして,その結果を更に総会で審議をするというのが適当ではないかというふうに考えます。 ● ただいま○○委員から専門の部会を設置してそこで議論をした上で,また総会に上げて審議するというのがいいのではないかという御意見がございましたけれども,これにつきまして何か御意見ございますでしょうか。   どうぞ。 ● 御存知かもしれませんし,私の読み方が違うのかもしれませんが,この国民投票法の附則の3条2項,あるいは1項も含めて読めば,一応この国民投票法では18歳にすることを予定しながら,暫時その間は20歳と読み替えるというような書き方になっているわけですね。そういう意味ではこの法制審議会で民法の改正の諮問文としてはああいう諮問文でよろしいのかどうか分かりませんが,少なくとも国民投票法は18歳に国民投票に関する投票権について18歳にしようということを前提にしているということを踏まえて,その諮問文そのものもそごがないのか,そういう脈絡の上の中で。それはそれで法務省は勝手に理解してこういう,上げたり下がったりどっちでもいいんだという諮問の仕方ですが,その辺の表現振りはそれできちんとした論議に耐えられる諮問文になっているのかということについてちょっと心配です。 ● 先ほど申し上げたとおり,繰り返しになりますが,国民投票法の附則の3条の趣旨については,先ほど申し上げたとおりの答弁がされていると。そのことを踏まえた上で,しかし民法の世界でこれをどうするのがいいのかなというのは,それはやはり法制審議会で御審議をいただく必要があるだろうと。それに関して法務省が結論がこちらを向いているというようなことをいうことはできないということでございますので,民法の観点から先ほどの附則の3条についての提案者の説明等も十分に踏まえた上で御検討いただきたいと思います。その意味ではこの諮問事項で足りていると考えております。よろしくお願いします。 ● 分かりました。 ● よろしゅうございますか。   それでは,先ほど○○委員から御提案がありました部会を設置するということについては,そういうことでよろしゅうございますでしょうか。   (異議なしという声あり) ● それでは,特に御異論もないようですので,諮問第84号につきましては,新たに部会を設けて調査審議することに決定いたします。   次に,その設置する部会に属するべき総会委員,臨時委員及び幹事に関してでございますけれども,これにつきましては先ほど来いろいろな御意見を承っておりますので,その御意見をも踏まえて,恐れ入りますが,会長に御一任していただけますでしょうか。   (異議なしという声あり) ● それでは,そういうふうにさせていただきます。   次にお諮りしたいのは,部会の名称でございます。部会の名称は,諮問第84号がこういう形でございますので,「民法成年年齢部会」という名称にしたいと存じますが,よろしゅうございますでしょうか。   (異議なしという声あり) ● では,そういうふうにさせていただきます。   この諮問は今のように非常に重大な諮問でありますので,何か今の意見のほかに特に総会委員の意見としておっしゃっておきたいという方がありましたら,今おっしゃっていただければと思います。まだこれから先も御意見を聴く機会が多分あるとは思いますけれども,部会を設置するに当たって何か御意見があれば承りたいと思います。   よろしゅうございますでしょうか。   それでは,諮問第84号につきましては部会で審議をいただくことにいたしまして,部会での審議に基づきまして総会において更に御審議を願うことにいたします。   これで本日の議題に関する審議は終了となりますが,最後に,最初に申しましたように報告案件が2件ございますので,民事局と刑事局からそれぞれ報告をお願いしたいと思います。   まず,民事局からお願いいたします。 ● 時間も押してまいりましたので簡単にと思います。この略称「ウィーン売買条約」と呼ばれているものについて,現在,加入に向けた準備を法務省及び外務省で進めております。本件は条約案件でございます。それから,国内法の整備が要らないものでございますので,法制審議会への諮問はいたしませんでしたが,民事法制に関わることですので,この機会にここで御報告をさせていただきたいということで今日の報告案件とさせていただいたわけでございます。   事前に配布資料6という概要を書いたペーパーを配布させていただきましたのでお読みいただいたかと思いますが,そこにありますとおりの条約でございまして,この中身については非常に合理的,機能的にできていると考えております。実務界のニーズも高いものであります。既に世界中で70か国が加入しており,国際標準になっているものですので,是非この機会に加入したいと考えております。条約加入の必要性及びメリットについては1頁で3つの項目を掲げておりますが,このとおりでございます。   以上,御報告いたします。 ● 今の御報告でございますが,何か御質問,御意見ございますでしょうか。   なければ,引き続きまして刑事局から,「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律案の概要」というものについて御報告がございます。○○幹事,よろしくお願いします。 ● それでは,刑事局から報告をさせていただきます。お手元に配布資料12,それから13ということで関係の資料を配布させていただいております。   ただいまの法案でございますけれども,被害者参加人のための国選弁護制度の創設を内容とするものでありまして,2月5日に国会に法律案を提出いたしました。   この法律案を提出した理由でございますが,平成19年6月の刑事訴訟法の改正によりまして,被害者の方々が刑事裁判に参加する制度が創設されました。この制度の下で被害者の方々が効果的に刑事裁判に参加するためには,必要に応じて弁護士による援助を受けることができることが大切であります。しかし,一般に被害者の方々は犯罪によりまして多大の被害を被り,経済的にも困窮することが少なくないということで,そうした被害者参加人の方も弁護士の援助を受けることができるための施策を講じるということで,この法律案を提出することとしたものでございます。   この法律案の要点でございますけれども,大きく2つございます。資料12に記載してございますけれども,1つ目は,国選被害者参加弁護士の選定に関する規定等の整備でございます。制度の基本的な枠組みは,裁判所が日本司法支援センターの協力を得ながら国費で弁護士を選び,その弁護士が必要な法的サービスを被害者参加人に提供するというものでありまして,被告人のための国選弁護制度と基本的には同様の仕組みになっております。   弁護士の選定の請求をすることができる被害者参加人でありますけれども,その資力が一定の基準額に満たない方としております。こうした要件は被告人の場合と同様でありますけれども,被害者の方々の置かれている実情を考慮いたしまして,選定の要件や償還の要否につきまして,被害者の方々の負担ができる限り小さくなるような方向で配慮がなされているわけでございます。   法律案の要点の2つ目は,日本司法支援センターの業務に関する規定の整備でございます。日本司法支援センターは,被害者参加弁護士の候補を指名して裁判所に通知する業務,そして,この通知に基づき裁判所により選定された弁護士に国選被害者参加弁護士の事務を取り扱わせる業務等を行うこととしておるところでございます。   簡単に申し上げましたけれども,これがこの法律案の趣旨,概要です。この法律案につきましては,被害者参加制度の施行,これは本年12月26日までに施行されることになっておりますけれども,これに併せて施行する必要があるということなどから,できる限り早期の成立をお願いしているところでございます。   以上,御報告申し上げます。御理解を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。 ● ただいまの御報告につきまして,何か御質問,御意見ございますでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 質問です。被告人の場合に比べて多少制度を変えて負担を軽くするようにという御検討があったということで,大変結構な方向ではないかと思うのですけれども。その際に同じように,少なくともベースにおいては同じように現金預金等の流動資産の合計額でもって線引きをすると。この点につきましてはそのほかの方法などについては余り御検討はなかったのでしょうか。 ● 流動資産を基本に検討するとしたのは,迅速に決定を行う必要があることなどを考慮したためでございます。なお,被告人の場合には1か月分の必要生計費を基準にしているのに対しまして,被害者の場合には3か月分の必要生計費を勘案するとしている点,あるいは3か月内に犯罪行為を原因として治療費等を支出する場合には,それもまた併せて考慮する点,さらに,原則として償還する必要がないというような点におきまして被告人,被疑者の場合よりも有利な取扱いになっているということでございます。 ● よろしゅうございますか。 ● ええ,報告事項ですので,伺えればそれでいいと思います。 ● ほかに何か御質問,御意見はございますでしょうか。   本日予定していた事項はすべて終了でございますが,ほかに何かこの機会に御発言がございましたら伺いたいと思います。よろしゅうございますか。   それでは,特に御発言もないようでございますので,本日はこれにて終了いたします。   本日は大変長時間にわたり,かつ大変熱心な議論を繰り広げていただきまして,ありがとうございました。   これにて本日の会議は終了いたします。   -了-