法制審議会民法成年年齢部会 第1回会議 議事録 第1 日 時  平成20年3月11日(火) 自 午後1時31分                       至 午後4時24分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民法の成年年齢の引下げの当否について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○佐藤幹事 予定していた時刻がまいりましたので,法制審議会民法成年年齢部会の第1回会議を開会いたします。   本日は,御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   私は民事局参事官の佐藤と申します。部会長の選出があるまで,暫時議事の進行を務めさせていただきます。   議事に入ります前に,法制審議会及び部会について,若干,御説明申し上げます。   法制審議会は,法務大臣の諮問機関でございますが,その組織や審議会に関し必要な事項を定める法制審議会令によれば,法制審議会に部会を置くことができることとなっております。この民法成年年齢部会は,先の2月13日に開催されました法制審議会第155回会議におきまして,法務大臣から成年年齢の引下げに関する諮問第84号がされ,これを受けましてその調査審議のために設置することが決定されたものであります。   法制審議会に諮問された事項は,お手元に配布させていただいておりますように「若年者の精神的成熟度及び若年者の保護の在り方の観点から,民法の定める成年年齢を引き下げるべきか否か等について御意見を承りたい。」というものであります。   審議に先立ちまして,まず委員の倉吉民事局長より,一言ごあいさつを申し上げます。 ○倉吉委員 民事局長の倉吉でございます。事務当局を代表いたしまして,ごあいさつ申し上げます。   先生方におかれましては,大変お忙しい中,法制審議会民法成年年齢部会の委員・幹事をお引き受けいただきまして,本当にありがとうございます。   御承知のように,昨年5月に成立した「日本国憲法の改正手続に関する法律」の附則第3条におきましては,同法が施行されるまでの間に,18歳以上20歳未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう,選挙年齢を定める公職選挙法,成年年齢を定める民法,その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとされました。   そして,この附則を受けて,内閣に設置された「年齢条項の見直しに関する検討委員会」におきまして,昨年の11月,各府省において必要に応じて審議会等で審議を行い,平成21年の臨時国会又は平成22年の通常国会への法案提出を念頭に,法制上の措置について対応方針を決定することができるよう,検討を進めるものとするとの決定がされました。   そこで,民法の成年年齢を,現在の20歳から引き下げるべきか否か等について,法制審議会で御検討いただく必要があると考え,今回の諮問がされたものでありまして,法制審議会総会の決定により,当部会が設置されたものでございます。民法の成年年齢の引下げは,国民生活に重大な影響を与える問題でありますことから,今回,さまざまな立場,知見をお持ちの方々に委員・幹事をお引き受けいただいたわけでございます。事務当局といたしましては,できる限り審議が円滑に進みますよう,努力するつもりでありますので,十分な調査審議をしていただきますよう,よろしくお願い申し上げます。   簡単ではございますが,以上をもちましてごあいさつといたします。よろしくお願いします。 (委員等の自己紹介につき省略) (部会長に鎌田委員が互選され,法制審議会会長から部会長に指名された。) ○鎌田部会長 ただいま部会長に指名されました鎌田でございます。議事の円滑な進行のために,誠心誠意努力してまいる所存でございますので,委員・幹事の皆様方におかれましては,何とぞよろしく御協力のほど,お願いいたします。   それでは,議事に入らせていただきますが,まず,事務当局から資料の説明をお願いいたします。 ○佐藤幹事 それでは,事務当局から配布させていただきました資料について,御説明させていただきます。   事前配布いたしました資料をお手元に置いていただきたいと思います。当方から事前に配布させていただきました資料には,民法成年年齢部会資料と,参考資料とがございます。   まず,各資料の1枚目の右上部分に,民法成年年齢部会資料又は参考資料と表示して,それぞれ資料番号を付けてございます。本日,資料目録を配布させていただきましたが,その順になっているかと存じます。各資料につきまして,右上の部分に民法成年年齢部会資料1から6まで,そして参考資料につきまして1-1から8までという資料がございます。よろしいでしょうか。   それでは,まず最初に民法成年年齢部会資料と題する資料につきまして,簡単に御説明いたします。   まず資料番号1,これは右上に1と書いてある資料ですが,「国民投票法との関係について」という1枚紙の資料でございます。内容は詳しくまた御説明しますので,次に移りますが,第2に資料番号2は,「国民投票法附則第3条について」という2枚紙のものでございます。   資料番号3は,「民法の成年年齢が20歳と定められた理由等」と題する5枚からなる資料でございます。   資料番号4は,旧民法制定以前の成年年齢について,その沿革について書かれた3枚ものの資料でございます。   資料番号5につきましては,「今回の検討の対象について」と題する2枚ものの資料でございます。   資料番号6は,「参照条文」と書いてございますが,中身を1枚めくっていただきますと,縦書きで条文が書いてあるものでございます。これは大部でございますので両面印刷にしてございます。中身は民法と日本国憲法の改正手続に関する法律の抜粋ということでございます。   以上が部会資料と呼ばれるものでございまして,本日の部会におきましては,これらの部会資料を中心に,御議論していただくことになると考えております。これらの資料の内容につきましては,後で詳しく御説明いたします。   続きまして,参考資料につきまして御説明いたしますので,お手元に参考資料を御用意いただきたいと思います。   まず資料番号1-1というものがございますが,これは国民投票法等の国会審議録の抜粋でございまして,大部でございますので,両面印刷にしてございます。この参考資料は,先ほど申し上げました部会資料の1と2を補足する資料でございまして,後に詳しく御説明いたしますが,国民投票法等に関する国会審議が行われました際の議事録のうち,民法の成年年齢の審議に関係があると思われる部分を抜粋し,まとめたものでございます。   資料番号1-2は,1枚ものなのですが,これは国民投票法の提出者の一人であります葉梨康弘衆議院議員が,国民投票法成立後に毎日新聞に発表されました成人・選挙権年齢引下げについての論稿でございまして,これも部会資料1と2を補足するものでございます。   続きまして資料番号2に移ります。資料番号2は,「主要国の各種法定年齢」と題するA3判の1枚ものでございます。これは国立国会図書館の作成によるものでありまして,諸外国の選挙権年齢,私法上の成人年齢等の一覧表となっております。また後ほど少し使うことになります。   続きまして資料番号3,「近年成年年齢の引下げを行った主な国(平成14年の海外調査結果)」を御覧いただきたいと思います。これは3枚からなる資料でございますが,これは近年といいましても1970年前後からなのですが,成年年齢の引下げを行った諸外国とその引下げの理由等をまとめたものでございます。   この資料番号2と3につきましては,成年年齢の比較法的な検討の際の御参考としていただければという趣旨でお配りしているものでございます。   続きまして資料番号4に移りたいと思います。資料番号4は参考資料4-1から4-5までございまして,いずれも平均寿命に関する資料でございます。4-1が「平均余命の年次推移」と題する1枚紙のもの,4-2が「完全生命表における平均余命の年次推移」と題する1枚紙のもの,4-3が「平均寿命の国際比較」と題する1枚紙のもの,4-4が「主な諸外国の平均寿命の年次推移」と題する1枚紙で,折れ線グラフが書かれたものでございます。そして4-5が国際連合の「DEMOGRAPHIC YEARBOOK 1948」と題する英文で書かれたものでございます。表紙を含め11枚からなっております。   これらの資料は民法制定当時の我が国及び諸外国の平均寿命,現在の我が国及び諸外国の平均寿命を明らかにしているものでございまして,検討の際の御参考としていただければという趣旨でお配りしているものでございます。   続きまして参考資料の資料番号5でございますが,これは「年齢,男女別人口及び人口性比-総人口,日本人人口」という2枚紙の資料でございます。   参考資料6は,「18歳人口及び高等教育機関への入学者数・進学率等の推移」と題する1枚紙のものでございます。この表でいいますと,棒グラフの部分が18歳の人口の推移でございまして,線グラフが高等教育機関への入学者数・進学率等の推移を示してございます。   これらの資料は,今回の諮問により成年年齢の引下げがされた場合に影響を受ける18歳の人口と,その進学状況等を明らかにするものでございまして,これも検討の際に御参考としていただければという趣旨でお配りいたしました。   続きまして資料番号7でございますが,これは人口動態統計でございまして,A3判の紙3枚からなっております。1枚目が出生数,2枚目,3枚目が婚姻件数についての統計を記載したものでございます。   これらの資料は,親が何歳で子を出生しているのか,男女何歳で婚姻しているのかなど,主に婚姻年齢を考慮する際に御参考としていただければという趣旨でお配りしているものでございます。   最後に,資料番号8でございますが,これはこの部会の臨時委員のお一人であります大村敦志委員が昨年法曹時報という雑誌に発表されました「民法4条をめぐる立法論的覚書」と題する論文でございます。これについてもまた後で御説明いたします。   以上が事前に配布させていただきました部会資料と参考資料についての確認でございますが,それとは別に,本日席上に配布したものといたしまして,資料目録のほか,部会の委員等名簿と配席表とあと民法の成年年齢部会の審議スケジュール(案)という書面もお配りさせていただいております。詳細につきましては,後ほど審議の中でまた御説明させていただきます。   配布資料の説明につきましては,以上でございます。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは次に,当部会の今後の審議スケジュールにつきまして,事務当局に説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 それでは引き続いて御説明いたします。   本日席上に配布いたしました「民法成年年齢部会の審議スケジュール(案)」という書面を御覧いただきたいと思います。   事務当局が現在考えております審議スケジュール案は,この書面のとおりでございます。本日が第1回の部会でございまして,以後,約1か月弱に1回のペースで12月まで11回を予定しております。   本日は,第1回でございますので,事務当局から今回の諮問の内容,その発出の経緯,検討の対象等について御説明をいたしまして,その後フリーディスカッションをしていただきたいというふうに考えております。そして次回以降につきましては,幅広い分野から御意見を伺うため,教育関係者,消費者関係の方,労働関係の方,若年者の研究をされている社会学,発達心理学の方などから,ヒアリングを実施したいと考えております。   ヒアリングは,数回をかけて実施することを考えておりまして,スケジュール案でいいますところの第5回又は第6回ぐらいまで実施したいというふうに考えております。そしてヒアリングを実施しました後に,それを基として秋以降に成年年齢の引下げ等に関する委員・幹事の御議論を行っていただきたいというふうに考えております。   その上で,第11回の本年12月に基本的方向性について御決定いただければ有り難いというふうに考えております。   民法の成年年齢を引き下げるべきかどうかは,国民生活に重大な影響を及ぼす事柄でありますので,慎重かつ十分な調査・審議をお願いしたいと存じます。その一方で,国民投票法の附則第3条におきまして,国民投票法が施行される平成22年5月までの間に,公職選挙法,民法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずることとされ,この附則の規定を受けて,内閣に各事務次官等を構成員として設置されました「年齢条項の見直しに関する検討委員会」におきまして,昨年11月,各府省において必要に応じて審議会等で審議を行い,平成21年臨時国会又は平成22年通常国会への法案提出を念頭に,法制上の措置について対応方針を決定できるよう,検討を進めるものとする決定がされております。   ところで,民法が定めております「成年」・「未成年」という概念は,他の法令でも多数使用されております。これらの民法以外の法令における成年年齢条項を引き下げるかどうかにつきましては,各法令を所管している部署におきまして,各法令が制定された理由や,趣旨等から検討がされることになりますが,それらの検討は民法の成年年齢を引き下げるか否かについての当部会の審議結果を踏まえた上で行われることになるものと考えられます。   したがいまして,当部会の審議に要する時間につきましても,民法以外の他の法令を見直すべきかどうかの検討期間も考慮して決めざるを得ないものと考えているところでございます。   そういたしますと,事務当局としてはできる限り年内に基本的方向性を出していただきたいと考えておりまして,お手元に配布いたしましたように,本年12月までのスケジュール案で御相談させていただきたいと考えております。   本年12月までに,基本的方向性が決まりましたら,その方針案,引下げの方向であれば試案になりますが,これを公表し,パブリックコメントという手続で国民からの意見を伺いまして,その意見を踏まえて,更に調査審議をしていただきまして,最終的に結論,引き下げるとの結論の場合には,要綱案となりますが,その結論を取りまとめていただきたいというふうに考えております。   ですので,当部会は来年春ころまでは続くと思いますが,審議が当初予定よりも長く掛かることもあり得ると思われますことから,現時点で来年の予定までお示しするのもいかがかと考えましたので,本年内のスケジュールに絞ってご相談をさせていただく次第でございます。   御検討のほど,よろしくお願い申し上げます。 ○鎌田部会長 今後の審議スケジュールにつきまして,ただいまの説明のとおりでよろしいかどうか引き続いて御意見を伺いたいと思いますが,いかがでございましょうか。   よろしゅうございますか。それでは,特に御異論もないようでございますので,審議スケジュールにつきましては,ただいま事務当局から御説明のあったとおりに決したいと思います。   そのほか,審議の方法等について御意見等がございましたら御発言いただければと思います。これもおおむね事務局が御提案になったような形で審議を進めていくということでよろしゅうございますか。   ありがとうございました。   次に,当部会の議事録の取扱いについてでございますが,先日,鳩山法務大臣が当部会の議事録の取扱いについて,国民的な大議論が期待されているから,発言者名を一律に非公開にする現在の取扱いの当否について,審議の課題によってはこれを公にすることができないかということについても,法制審議会の方で慎重に議論してほしい旨の発言をされているところでございます。この点に関連しまして,事務当局から議事録の作成についての現状を御説明いただきたいと思います。 ○井上関係官 法制審議会の庶務を担当しております立場から,現状につきまして御説明申し上げます。   まず法制審議会の会議そのものにつきましては,これは議事規則で非公開とされておるところでございます。次に会議の議事録につきましては,やはり法制審議会の議事規則によりまして,これは幹事が作成するという規定がございます。また部会の議事については,総会に関する規定が準用されると,規定としてはそのようなものがあるというのが現状でございまして,結局,部会の議事録は総会と同様な形で作成するというのが大枠でございます。   それでは,その総会の議事録の作成方法がどうなっているのかということでございますけれども,これは平成10年7月に開催されました第124回の総会,このときは審議会改革が全省庁的に言われていたときでございまして,その中で法制審議会の議事とか議事録の公開に関する検討がされた会議でございます。そのときに,議事録の作成方法としては,「発言者名及びプライバシーを侵害するおそれのある事項を除いた議事録を作成して,これを公開する」そのようなつくり方で公開するということが決定されたところでございます。したがいまして,それ以後,総会はもとより部会につきましても,一律発言者の名前が分からないような形の議事録を作成し,それを公表するという取扱いになっております。   それから,既に10年近くたつわけでございまして,その間,幾つかの部会でその構成の委員から発言者名を明らかにする形で議事録を作成したらどうかという提案があったことは何回かございましたし,また部会でそのような議論があったということが総会に報告されて議論されたこともございましたが,その取扱いの変更につきましては,大勢を占めるに至らず,今日に至っておるというところでございます。   したがいまして,当部会の議事録の作成方法はと申しますと,現在のところは今申し上げました総会で定められた方法である発言者名を除いた形で作成するということになっております。   以上が現状でございます。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ただいま御説明がありましたように,当部会の議事録の作成方法に関する大臣の御発言に関しましては,法制審議会の総会で御検討いただくべき事柄でございます。本部会には総会の会長でいらっしゃいます青山委員もいらっしゃいますので,いずれ総会で御検討いただく際の参考に供していただくというような意味でも,当部会の委員の皆様のお考えをお聴きしておくことが適当ではないかと思いますが,いかがでございましょうか。   よろしゅうございますか。それでは,当部会の議事録につきまして,これまでと同様に発言者名を除いた形で作成すべきか,あるいはこの議事内容にかんがみまして,当部会の議事録については,発言者名を明らかにして作成すべきかという点につきまして,委員の皆様の御意見を伺いたいと思いますが,いかがでございましょうか。   それでは,岡田委員お願いいたします。 ○岡田委員 司法制度改革推進本部の検討会も,当初,顕名の検討会と匿名の検討会に分かれましたが,最終的にはほとんどの検討会が顕名になりました。私はやはり自分の発言に責任を持つという意味でも,名前を出すべきではないかと考えます。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。ほかに御意見いかがでしょうか。幹事の方も含めて,御自由に御発言くださればと思います。   皆様,大体同趣旨というふうに承ってよろしゅうございましょうか。   よろしいですか。それでは,委員・幹事の皆様の意見は一致していると理解してよろしゅうございましょうか。   発言者の氏名を明らかにするのが相当ということのようでございますので,総会で御検討される場合には,当部会の委員の意見も参考にしていただきたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。青山委員,よろしゅうございますか。 ○青山委員 分かりました。 ○鎌田部会長 それでは,青山委員にはよろしくお願いいたします。   なお,総会で御検討いただきました結果,例えば一定の場合には,発言者の氏名を明らかにすることとされた場合,そのような取扱いが遡及するのかどうか,つまり,総会の方が本日のこの部会よりも後になりますので,総会で氏名を公表すると決まったときに,本日のこの部会あるいは場合によっては第2回もそうなるのかもしれませんけれども,その総会以前の本部会の議事録について,さかのぼって発言者の氏名を明らかにした議事録に替えるのかといった点について,いかがでございましょうか。事務局から何か御提案はありますか。 ○佐藤幹事 では発言させていただきます。   今後,総会での御検討の結果がどのようなものになるかは分かりませんが,例えば部会の判断で発言者の氏名を明らかにすることができることとされた場合におきまして,当部会の議事録の取扱いにつきましては,総会での検討結果を踏まえて御議論いただくのが本来の趣旨でございます。しかしながら,先ほど部会長もお話になりました大臣の御指摘は,当部会の審議事項を例に挙げてのものであることを考慮しますと,今回の第1回会議だけは総会の決定が未了であるからという理由で,発言者の氏名を公表しないこととして,第2回会議から公表するというのも,いささか形式論に過ぎるように思われます。   そこで,今後の総会において部会の判断で発言者の氏名を明らかにすることができるという決定がされました場合には,当部会におきましては,今回の会議にさかのぼる形で発言者の氏名も公表するという取扱いにしていただいてはいかがかというふうに考えております。このような議事録の取扱いを行うことでよろしいかどうか,御議論をいただければ幸いであります。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。ただいま事務当局からは,総会において部会の判断で発言者の氏名を明らかにすることができるという決定がされたときには,今回の会議の議事録も含めて,発言者の氏名を公表してはどうかというお話がございましたけれども,この点につきまして御意見等ございますでしょうか。   よろしいですか。そういった御提案のとおりということでお認めいただいたものとさせていただきます。総会での決定を待ちまして,総会におきまして部会の判断で発言者の氏名を明らかにすることができるという決定がされましたときには,今回の会議の議事録も含めて,発言者の氏名を明らかにした議事録を作成することとしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。   それでは,本日の審議に入りたいと思います。   まず,事務当局に本日の配布資料に基づいて少し時間が掛かるかと思いますが,今回の諮問の内容及びその発出の経緯,特に国民投票法との関係や今回の検討の対象等について説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 それでは,事務当局から本日の配布資料に基づきまして,諮問の内容及びその発出の経緯,今回の検討の対象等について御説明いたします。   なお,民法に関する御説明をいたしますが,この分野を専門としておられない方もいらっしゃると思われますので,できる限り分かりやすく,丁寧に御説明するように心掛けます。分かりづらい部分がございましたら,御遠慮なく御質問をしていただけたら幸いでございます。   では,諮問の内容及びその発出の経緯から御説明いたします。   法制審議会に諮問されました事項は,本日の会議の冒頭においても申し上げましたが,先日事前に配布いたしましたとおり,「若年者の精神的成熟度及び若年者の保護の在り方の観点から,民法の定める成年年齢を引き下げるべきか否か等について御意見を承りたい。」というものでございます。   民法は第4条で「年齢二十歳をもって,成年とする。」と定めております。そして民法におきましては,成年,未成年という用語を用いた各種の規定がございます。今回の諮問は民法が定めている成年年齢を引き下げるべきか否か等についてのものであります。後に御説明いたしますが,我が国には成年,未成年の用語を用いました各種の法令がございますが,当部会で皆様に調査審議をお願いする事項は,民法の定める成年年齢の在り方についてでございます。   それでは次に,民法の成年年齢を引き下げるべきか否か等を諮問することに至りました経緯について御説明いたします。   今回,諮問を発出することになりましたのは,昨年5月に成立・公布されました日本国憲法の改正手続に関する法律,いわゆる国民投票法によるものでございますので,最初に国民投票法との関係を御説明いたします。   まずは,部会資料1を御覧ください。部会資料1は「国民投票法との関係について」と題するもので,先月13日に開催されました法制審議会の総会におきましても,配布させていただいたものでございます。国民投票法案は,平成18年5月に与党議員により国会に提出されましたが,当初の案では国民投票の投票権者の範囲を20歳以上の者とするとしておりました。しかし,国会における審議の過程で,諸外国の実地調査や文献調査が行われ,その結果,18歳以上の者に国民投票の投票権を与えるのが世界標準であるという認識が幅広く共有され,平成19年3月,与党は国民投票の投票権者を18歳以上の者とするという修正案を提出し,附則第3条において,国は国民投票法が施行される平成22年5月までの間に,満18歳以上20歳未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう,公職選挙法,民法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずるものとすると定めました。   この規定が設けられました理由として,国民投票法の国会審議における同法案の提出者の答弁等におきまして,①公職選挙法の選挙年齢を戦後20歳に引き下げた理由として,民法の成年年齢が20歳であることが挙げられており,民法上の判断能力と,参政権の判断能力とは一致すべきであること,②公職選挙法の選挙年齢と,国民投票の投票権年齢は同じ参政権であることから一致すべきであること,また,③諸外国においても成年年齢に合わせて18歳以上の国民に投票権・選挙権を与える例が非常に多いことが挙げられております。   次に,部会資料2を御覧ください。部会資料2は,国民投票法附則第3条について,その概要及び国民投票法成立後の国会等における検討状況などを説明したものでございます。国民投票法は,第3条におきまして国民投票の投票権者の範囲を18歳以上の者としております。しかし,附則第3条におきまして,第1項で,国民投票法が施行されるまでの間,18歳以上の者が国政選挙に参加することができること等となるよう,民法その他の法令について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずることとすると定め,第2項で第1項の措置が講じられ,18歳以上の者が国政選挙に参加すること等ができるまでの間,国民投票法の投票権者の年齢は20歳とすると定めております。   この国民投票法附則第3条が設けられた経緯,理由につきましては,先ほど部会資料1を御説明しました際に,国会における提出者の答弁の一部を御紹介いたしましたが,本日,参考資料1-1として,国民投票法の国会審議のうち,附則第3条に関して述べられた部分を抜粋したものを御用意しましたので,参考資料1-1もあわせて御覧いただきたいと思います。   この参考資料1-1のうち,重要な箇所について御紹介させていただきたいと思います。 ○神吉関係官 それでは引き続き,関係官の神吉から参考資料1-1に基づきまして,国民投票法の国会審議録のうち,重要な箇所について御説明させていただきます。   まずは3頁から4頁と,6頁,それから9頁の下線を引いた部分を御覧ください。こちらは国民投票法の提出者の一人であります自由民主党の保岡興治衆議院議員の御答弁であります。要約をさせていただきますと,海外調査の結果,国民投票法の投票権年齢,選挙権年齢及び民法の成年年齢は一致しており,これを18歳とするのが国際標準であるということが分かったということでございます。   引き続きまして,12頁を御覧ください。12頁の下線部分は,国民投票法の提出者の一人であります自由民主党の葉梨康弘衆議院議員の御答弁です。こちらはフランスの例を紹介しながら,日本の若者の成熟度がそれほど高くはないものの,成人年齢を将来にわたっては引き下げる方向で整理をすべきではないかと御答弁されております。   次は24頁から25頁を御覧ください。こちらは保岡議員の御答弁ですが,議員御自身の印象として,18歳それから19歳の大学生であっても,政治のみならずあらゆる点について一人前の立派な議論をすることがあり,非常にしっかりとした物の考え方に立って,判断をしていると感じる場面が多い,我が国の将来を担う若い人たちについて,どのような権利を付与して自覚を求め,そして日本全体として基盤をしっかりとしたものとしていくか,そういったことは十二分に考える必要があるということが述べられております。   次は26頁から27頁を御覧ください。こちらも保岡議員の御答弁ですが,国民投票の投票権年齢と選挙権年齢,成年年齢を18歳にすることが世界標準であること,18歳に引き下げる方向は正しいにしても,民法や刑法などの改正は,国民生活に大きな影響を与えるので,よく検討する必要があること,教育に与える影響も非常に大きく,国の制度の根幹にかかわること,そういったことが述べられております。   次に30頁から31頁を御覧ください。こちらも保岡議員の御発言ですが,30頁の下から3行目からの部分につきまして,下線を付してございませんが,18歳を成人年齢にすることは,民法,刑法,選挙権さらには教育に大きな影響を与えるもので,日本の国の基盤を大きく左右する問題であることが述べられております。   次に36頁を御覧ください。こちらも保岡議員の御答弁ですが,諸外国では成人年齢にあわせて18歳以上の国民に投票権を与える例が非常に多いこと,他方,投票権年齢や選挙権年齢及びそれらの基礎となっている民法の成人年齢を引き下げることは,我が国のほかの法制度,社会的制度への影響が非常に大きいことから,附則第3条を設けることとした,そういったことが述べられております。   次に,若干飛びますが,49頁を御覧ください。まず最初は,保岡議員の御答弁ですが,公職選挙法の投票年齢は戦後間もないころに25歳から20歳に引き下げられて以来,20歳になっているが,その改正の提案理由として,民法上の判断能力と参政権の判断能力とは一致すべきだという前提で書かれていること,それから選挙権年齢と国民投票年齢は,同じ参政権であるから,一致させるべきであること,また青少年の日本の教育を根幹からみんなで考えていく必要があること,こういったことが述べられております。   また,次の葉梨議員の御答弁についてでありますが,附則第3条第2項を設けた趣旨について触れられております。民法の成年年齢の引下げが行われた場合,施行まで1年を要するということも考えられるが,そのような期間中に18歳以上の者が国民投票をすることができるというのは,国民投票の正当性の問題にかかわってくる,だから技術的にその期間は20歳とするという規定を設けたと,そういったことが述べられております。   次に51頁を御覧ください。こちらも葉梨議員の御答弁ですが,先ほどと同様に,附則第3条第2項の趣旨について触れられ,民法や刑事法で法制上の措置をとったとしても,周知期間,施行期間として相当な期間を設ける必要があるということも考えられる,みんな18歳にそろうというような段階までは,20歳としていく形で整合性をとったものであるなどと述べられております。   次に54頁,55頁を御覧ください。こちらは国民投票法の提出者のお一人であります自由民主党の船田元衆議院議員の御答弁です。まず,最初の御答弁は附則第3条が公職選挙法と民法について経過期間である3年間のうちにしっかりと議論をし,改正という措置をとっていただきたいという,義務ではないが非常に強いお願いをしているものである,関連する法令をすべて18歳にするということになれば一番よいが,少なくとも公職選挙法と民法はきちんと変えたほうがいいのではないか,強いて言えば,公職選挙法の規定を変えるのが最低限の条件になるだろうなどと述べられております。   また,55頁から56頁にかけての御答弁も同じく,船田議員によるものでございますが,ここでは18歳というのが世界標準であるということ,世界的な傾向と現在における日本の若者の状況を踏まえた場合に,もう18歳にしていいのではないかという意見が相当数に至っている,だから18歳に踏み切ろうとしたものであるということ,しかし,単に18歳にすればいいということではなく,義務教育や高校教育において憲法や国の仕組みなどを教える必要があること,また,国民投票の投票権年齢と選挙権年齢が違っているのは避けなければならず,一定の経過期間を置いて,いずれも18歳になるよう最大限の努力をしようということを附則が規定していると,そういったことが述べられております。   次に,58頁を御覧ください。こちらは葉梨議員の御答弁ですが,附則第3条第1項で,公職選挙法と民法を頭出しした理由が述べられております。憲法15条で成年者による普通選挙を保障するとされているが,成年者を決める民法と,普通選挙を決める公職選挙法,これはリンクをしているということで,この2つを頭出しをしたと述べられております。   次に,63頁,64頁を御覧ください。まずは,葉梨議員の御答弁ですが,先ほどの御答弁の補足という形で,憲法の成年者というのは必ずしも民法と全く一緒である必要はなく,いろいろな検討ができるだろうとは思う,ただし,この成年者というのは,民法の成年と同じであることが望ましいなどと述べられております。   また,船田議員は,諸外国の例を十分に参考にすると,国民投票の年齢は18歳が世界標準であり,我が国も踏み切るときが来たのではないかと考えた,諸外国では公職選挙法の選挙権年齢と国民投票の投票権年齢はほとんど同一で,選挙権年齢も18歳に引き下げるべきである,また,現状の選挙権年齢である20歳というのは,民法の成年年齢とも一致しており,密接なもので切り離すことができない,このような考え方から附則第3条第1項で,まずは公職選挙法,それから民法を頭出しをした,しかし,民法や刑法は,それぞれの法の趣旨に照らして年齢を決めているわけで,全部18にするというのは乱暴な話であるので,それぞれの立法の趣旨に立ち返って,一つ一つ精査をし,18歳に下げるもの,あるいは現状のまま,20歳でとどめるもの,それ以外の年齢のものということで仕分けをしていく,これを国民投票法後の施行までの3年間の間にやっていくというのが修正案の趣旨である,18歳というのが本当にいいのかどうか,世論調査や若者の意識調査を含めた議論をするべきであるなどと述べられております。   さらに,保岡議員も,国民投票法が施行される3年間の間に,若者の社会経済生活の実態や意識,それに関連することについて調査をし,国民各階層の議論をどうやってとらえていくかということなどを工夫すべきである,また,これは下線を引いてはございませんが,下から4行目以下を御覧いただきますと,政府与党で連携をとり,3年間の検討を充実させていかなければならないなどと述べられております。   次に,76頁,77頁を御覧ください。いずれも葉梨議員の御答弁ですが,最初の御答弁は,附則第3条第2項の趣旨について言及されたもので,公職選挙法や民法の改正自体は3年間の間に行うが,施行までに期間が掛かるような場合もあるので,それまでの間は国民投票の投票権年齢を20歳とするという経過規定を置いたなどと述べられております。   また,76頁の末尾から77頁にかけての御答弁は,附則第3条第2項の「国政選挙に参加することができること等となるよう」の「等」に何が含まれるのかを,法律成立後,早期に確定する必要があること,そして民法の成年年齢はこの「等」に確実に含まれると思っていることなどが述べられております。   80頁から81頁にかけての葉梨議員の御答弁も同様の趣旨のものです。   最後に,82頁の下線部を御覧ください。こちらは参議院の日本国憲法の調査特別委員会において,国民投票法案が可決された際の附帯決議でございます。そこでは,「成年年齢に関する公職選挙法,民法等の関連法令については,十分に国民の意見を反映させて検討を加えるとともに,本法施行までに必要な法制上の措置を完了するように努めること」とされております。   以上で,国民投票法に関する国会審議についての説明を終了とさせていただきます。   次に,国民投票法の国会審議におきまして,諸外国においても,成年年齢にあわせて18歳以上の国民に,投票権・選挙権を与える例が非常に多いことが答弁において挙げられていることを御説明しました関係で,諸外国における成年年齢と選挙権年齢について御説明いたします。   お手元の参考資料2もあわせて御覧いただきたいと思います。参考資料2は,国立国会図書館が作成したA3判の1枚紙のものでございます。こちらは主要国の各種法定年齢を記載したもので,一番左側に国名が記載されております。次の列に,選挙権年齢が記載されております。そして左から7列目の「私法上の成人」という列が民法上の成年年齢に該当するものと考えられます。ただし,諸外国の制度は,必ずしも我が国と同一というわけではございませんので,この点に御留意いただきながら見ていただきたいと思います。   そこで御覧いただきますと,選挙権の年齢と私法上の成人の年齢は一致している国が多いといえるものと思います。しかしながら,選挙権年齢と成年年齢が必ず一致しているかといいますと,そうでもない例もございます。例えばアメリカについて見てみますと,アメリカは表の上から3番目でございますが,御覧いただきますと分かりますように,選挙権年齢は18歳で成年年齢につきましても表の該当欄には18歳というふうに記載されておりますが,下の注のところで小さくなって大変恐縮なのですが,(6)の注を見ていただきますと,45州では18歳ではあるが,2州で19歳,それから3州で21歳となっているとされております。   カナダにつきましても,選挙権年齢は18歳で,成年年齢につきましては表の該当欄では18歳となっておりますが,19歳の州も多いということになっております。カナダにつきましては,表の下の注の(7)のところに記載されてございます。   また韓国につきましては,選挙権年齢は19歳で,成年年齢が20歳となっており,またニュージーランドでも選挙権年齢が18歳であるのに対し,成年年齢が20歳となっております。   このように,選挙権年齢と成年年齢が一致していることが多いのですが,必ずしも一致していないという例もありますことを御紹介させていただきました。 ○佐藤幹事 それでは,再び部会資料2に戻って御説明をいたします。部会資料2の真ん中より下あたりの第2,国民投票法成立後の状況について御説明いたします。国会におきましては,国民投票法の成立を受け,平成19年8月,衆・参両院に憲法及び憲法関連基本法制について,広範かつ総合的に調査審議をするため,「憲法審査会」が設置されました。   憲法審査会におきましては,国民投票法が施行される平成22年5月までの間に,国民投票法の附則で検討を義務付けられた選挙権年齢の引下げ等について,調査審議が行われる予定ですが,憲法審査会を始動させるための憲法審査会規程がいまだ制定されておりませんので,憲法審査会における調査審議は始まっておりません。   憲法審査会規程の制定につきましては,マスコミの報道によりますと,その制定作業に野党が難色を示しているようでありまして,憲法審査会規程がいつ制定されて,憲法審査会における審議が始まるかは予測が付かない状況にございます。もっとも,最近の報道によりますと,超党派の「新憲法制定議員同盟」に与党のみならず,民主党の鳩山幹事長,前原誠司議員なども役員としてかかわったとのことでありまして,今国会中にも憲法審査会における検討が開始される望みが出てきたとされております。   各政党における検討状況につきましては,私どもは与党の一つである自由民主党の状況を承知しているだけでございまして,他党における状況は把握できておりませんが,自由民主党におきましては,平成19年6月の国民投票法の成立に伴い,党の政務調査会内に「憲法審議会」が設置されました。そして,本年2月14日,第4回の憲法審議会が開催され,今後国民投票法の施行までに実施すべき問題点について議論があり,その中で民法の成年年齢の引下げの問題等について,議論を続けていくことなどが話し合われました。   さらにこの資料をお送りした後の今月6日に,第5回の憲法審議会が開催され,法務省から成年年齢の変遷,総務省から選挙権年齢の変遷などにつきまして,それぞれヒアリングが行われ,また文部科学省から我が国の小・中・高等学校における憲法教育についてのヒアリングが行われました。このように,自由民主党におきましても,成年年齢の引下げの問題について今後議論が行われていくものと思われます。   今回の諮問は,民法で定められております20歳という成年年齢を引き下げるべきか否かというものでございますが,そもそもなぜ民法が成年年齢を20歳としているのか,その理由を歴史的な経緯を含めて少し詳しく御説明させていただきます。皆様のもとにございます部会資料3を御覧いただきたいと思います。   まず,我が国におきまして,成年の年齢が20歳と定められるに至りました経緯につきまして,概要を御説明いたします。まず第一に,我が国におきまして成年年齢が満20歳と最初に定められましたのは,明治9年,西暦で申しますと1876年の太政官布告第41号が出されたときでございます。太政官布告といいますのは,明治維新から明治18年に内閣制度が設けられるまでの最高中央官署でありました太政官が,全国一般に達すべきものとして発した法形式でありまして,太政官布告は旧憲法下における法律又は勅令事項にほぼ該当するものであります。   この太政官布告では,「自今満弐拾年ヲ以テ丁年ト相定候」と発しまして,これにより満20歳が成年年齢と定められました。「丁年」とは一人前の年齢をいいまして,成年と考えてよろしいかと思います。なお,この太政官布告が定められる少し前であります明治6年には,徴兵令が制定されておりますが,これによる徴兵年齢も20歳とされておりまして,大久保利通侯から三条実美公にあてられました書簡によりますと,この徴兵年齢も成年年齢決定に当たっての考慮要素の一つになっていたもののようでございます。   続きまして,2の旧民法のところですが,明治23年に制定されました旧民法では,第3条におきまして,「私権ノ行使ニ関スル成年ハ満二十年トス但法律ニ特別ノ規定アルトキハ此限ニ在ラス」というふうに規定されました。   旧民法は,フランスの法律学者で我が国に法典整備のために招聘されましたボワソナード氏が起草したもので,この法律を施行すべきかどうかにつきましては,法典論争というものが起きまして,議論の結果,延期されることになり,その後旧民法は施行されないまま,明治31年法律第9号によりまして廃止されました。   その後,現行の民法の問題になるのですが,現行の民法は明治29年,西暦で申しますと1896年に制定されました。成年年齢についての規定につきましては,旧民法の規定とほぼ同様でして,第3条で「満二十年ヲ以テ成年トス」と規定されました。   そして現行民法は,平成16年に現代語化されまして,第4条におきまして「年齢二十歳をもって,成年とする。」と規定されており,現在に至っております。   以上のような経緯によりまして,民法上は成年年齢が20歳と定められているのですが,それでは成年年齢が20歳と定められた理由は何かと申しますと,いろいろ文献等を調査しましたものの,必ずしも明らかではありませんが,旧民法制定当時の日本人の平均寿命や,精神的な成熟度などを総合考慮したものであるといわれております。   なお,当時の日本人の平均寿命と申しましたが,参考資料4-2に日本人の平均余命の推移が記載されております。あわせて御覧いただきたいと思います。   参考資料4-2は,厚生労働省が作成したものでありまして,各年におきまして何歳の方があとどのくらい余命があるのかというものを表にしたものでございます。一番上のところなんですが,第1回と書かれておりますところが,明治29年から31年にかけてのものでございます。0歳の方があと何年生きられる,20歳の方があと何年生きられる,40歳の方があと何年生きられるというのを表にしたものでございます。一般的に言われるのは0歳の方の平均余命が平均余命ということですので,この表の男子,女子の0歳のところを見ていただきますと,0歳の方の平均余命は,男子の場合は42.8歳,女子の場合は44.3歳ということでございます。民法が制定されましたのが明治29年ということでございますので,当時の日本人の平均寿命は約43歳ぐらいということができるかと思います。   なお,現在の平均寿命につきましては,参考資料4-1も恐縮ですがあわせ見ていただくと分かりやすいかと思います。この表は昭和22年から平成18年までの平均余命の推移が記載されたものですが,一番下の平成18年の0歳のところを見ていただきますと,男子が79.00歳,女子が85.81歳というふうになってございます。これが平均余命です。   恐れ入りますが部会資料3に戻っていただいて,2枚目の第2の2のところに移っていきます。民法の成年年齢が20歳と定められた理由につきまして,民法の解釈等について解説しました基本的文献において,次のような記載がされております。まず注釈民法によりますと,「明治期の制定法が,当時21歳から25歳程度を成年年齢と定めていた欧米諸国に比べて,やや若い20歳成年制を採用したことについて,当時の学説には,日本人の平均寿命の短さ,あるいは日本人の精神的成熟の早さなどを理由として挙げるものがある。現実的な理由としては,当時の立法者が,近代的な経済取引秩序を作り上げるための必要条件として欧米の成年制度を受け入れることを基本に,15歳程度を成年とする我が国の旧来の慣行をも考慮に入れて,当時の国際的基準からいえばやや低く,それまでの我が国の慣行からすればかなり高い成年年齢を,律令を理由付けに,採用したと考えることができよう。なお,『全国民事慣例類集』には,20歳ないしそれ以上の成年期を定めた地方があることも記されており,本人保護を主な目的とする無能力者制度の趣旨からも,それまでの日本の慣行の中では高度な20歳を標準としたとする考察もある。」とされております。   また,2つ目の民法学者であります米倉明氏の著作によりますと,太政官布告が「丁年」を20年と定め,旧民法も同旨であったことを考慮し,他方,慣習も調査した結果,西洋では21歳となっている例が多いけれども,日本人のように寿命の短い国民には20年が適当であろうし,また日本人は他の国民に比べて世間的知識の発達がすこぶる早いので,満20年とするのが適当であろうとされたのであるというふうに記載されています。   さらに,3枚目ですが,永田菊四郎氏の文献によりますと,我が国の慣習として20歳とした地方が割合に多かったことに比重を置くならば,慣習に従ったと解することもできるし,本人保護を主な目的とする無能力者制度とも照らし合わせて,高度な20歳を標準としたものであろうとしております。   次に,3の民法制定時の文献ではどのような記載がされているのか御説明いたします。まず,これはちょっと片仮名で難しいのですが,まず明治21年に成立したと言われる旧民法の草案の一部となる民法草案人事編の理由書には,満20年と定めたのは,当時の現行法すなわち太政官布告によるものであるというふうにされております。   そして1枚めくっていただいて,「法典調査会」の方にいきますが,旧民法の修正を目的とする内閣の委員会である「法典調査会」における議論におきましては,民法の起草者の一人であります梅謙次郎氏作成の起草原案,理由等におきまして,「本条ハ既成法典ノ字句ヲ修正シタルニ過キス」ということで,旧民法の字句を修正したにすぎないとだけ理由が記載されております。   そして質疑応答におきまして,満20歳をもって成年とした理由につきまして,既成法典,すなわち旧民法をそのまま採用したのかどうかという質問に対して,梅謙次郎氏は旧民法の20年がもっともと思ったこと,その理由は太政官布告にも20年とされていたこと,これまでの慣習を調べたところ,21年となっているのがあり,これを満年齢にすると20年であること,西洋では21年が多いが,日本人のような寿命の短いところではこれが適当と思ったというふうに答弁されております。   なお,民法が制定された明治29年,西暦1896年ごろの日本の平均寿命が約43歳であるということは,先ほど御説明いたしましたが,当時の諸外国の平均寿命につきましては,参考資料4-5の国連が作成しました1948年のイヤーブックが参考になると思われます。これを見ていただきますと,これは全部英文と数字ということになっておるのですが,2枚目を見ていただきますと,表紙をめくって2枚目ですね。真ん中のあたり左側のところに,United States 1900-1902 Male Femaleということで,右側が何歳の場合に幾つ生きられるかというものが書いてあるということですので,アメリカの場合ですと,1900年から1902年につきましては,男子が47.88歳,女子が50.70歳ということになっています。同様に見ますとほかにイギリスとかフランスとかドイツというのが書かれております。それをまとめたものが部会資料3の4ページの注のところに書いてあるものでございます。   これを見ていただきますと,我が国が43歳だったということに比べますと,おおむねこのアメリカやイギリス,フランス,ドイツにおきましては,平均寿命が日本よりは上であったということがお分かりになるかと思います。   続きましてその下の丸のところに移りますが,民法の起草者の一人であります梅謙次郎氏の「民法原理」という文献によりますと,太政官布告が20歳を成年と定め,旧民法がこれを採用したことから,民法でも20歳としたこと,これは西洋諸国が21歳から25歳と定めていたのに対し,早いかもしれないが日本人が他に比べて世間的知識の発達がすこぶる早いがゆえに,20年としたのであり適当であるというふうに記載されております。   以上が事務当局で調査した結果でございますが,20歳が成年年齢とされた理由につきましては,補足あるいは修正していただくことがございましたら,この後のフリーディスカッションの際に,特に民法御専攻の委員・幹事の皆様に補足等をしていただければと存じますので,よろしくお願いいたします。   ここで部会資料4に基づきまして,旧民法制定以前の成年年齢について,沿革を簡単に御説明いたします。部会資料4を御覧いただきたいと思います。   我が国におきまして,成年年齢が定められるに至った沿革として,まず最初に御説明いたしますのは律令についてでございます。大宝律令,これは8世紀初頭に制定されました律令であり,一般的に律が刑法,その他の法律についてが令というふうに言われております。ですので,行政法や民法につきましては令に入るかと思いますが,そして大宝令では,隋唐の制度に倣って,人の年齢を以下の6階級に分けるということで分けられておりました。男女3歳以下が「緑児」,16歳以下が「少子」,20歳以下が「少丁」,男子21歳以上が「正丁」,61歳以上が「老」,66歳以上が「耆」というふうに呼ばれていたというふうになっております。   括弧で書かれています養老令というのは,8世紀中ごろ,大宝令が養老令になったということで,養老令の中では20歳以下につきましては,少丁ではなく「中男」と呼んでいたということでございます。ただし,ここで人の年齢を6階級に分けてございますが,これにつきましては租税である調庸あるいは兵役を課す兵役義務の基準ということで,これが定められたものでございまして,21歳を正丁とするというこの令をもって,今日の成年制と見ることはできないというふうに,一般に言われております。   続きまして元服に移りますが,奈良朝以降,元服の慣習が生じました。元服の私法上の意義というのは必ずしも明らかではありませんが,男子は元服によって社会的に成人の資格を得て,一人前の男になるというふうに考えられておりました。ただし,元服の年齢は,時代,身分階級によって異なっておりました。ここに書きましたように,天皇が11歳から15歳,皇太子皇族が11歳から14歳,臣下は12歳から20歳ということで,武士については15歳前後というふうに言われております。   続きまして,江戸時代における慣習のところに移りますが,文献によりますと,江戸時代,15歳未満を幼年とするということが普通であった。庶民階級では,男子15歳で幼年を脱して一人前の男になる,15歳で元服が常であったというものが記載されております。   先ほども言いましたが,1870年の「全国民事慣例類集」という文献によりますと,およそ15歳未満を幼年と称することが一般の通例ではあるが,これと異なる多数の地方の慣習の例があり,その例としてここに掲げられていましたのが,13歳,16歳,17歳,18から19歳,20歳,22から23歳又は婚姻の時をもって成年とするという地方もあったという記載がございます。   明治9年4月1日に先ほど御説明いたしました成年年齢を20歳とする太政官布告が出されましたが,その経緯を御説明いたします。   明治8年11月24日,内務卿である大久保利通侯から太政大臣の三条実美公に対し,成年について布告はないが,徴兵令等これまでの法令やフランス民法等を参照しても,何歳が成丁年であるかはっきりしないので,早急に決めていただきたいという内容の伺いがされました。そこで,これにつきまして,当時新法の制定等を議定する職責を担っておりました元老院で検討することとなりました。   元老院におきましては,成年が何歳か決まらないと官民とも不都合があること,諸外国と比較しても,人民の成長・才能知識の開発は,各地の気候・人種により異なるものであること,成年となる時期が早過ぎると,子を害するおそれがあり,遅過ぎると独立と勉強を妨害し,保護が拘束になってしまうこと,大宝令が21歳を丁としていることに基づき,満20歳以上を丁年と定めるべきこととしております。   なお,このときに添付された別表として「各国丁年制度異同表」というのがございまして,これには各国の成年年齢が記載されておりましたが,フランス,ロシア,イタリア,アメリカは21歳,イギリスは22歳,オランダは23歳,オーストリア,ポルトガルは24歳というふうになっております。   次に,元老院の議事のほうなんですが,大宝令が丁男と中男とを分けていること,諸外国の制度を考慮した結果,満20歳を丁年とすべきという理由で,議案どおり20歳を丁年とすることが最終的に可決されたと,こういう経緯で太政官布告が出されたということになっております。   それでは,次にこの部会における検討の対象について御説明させていただきます。部会資料5を御覧ください。   まず第一に,この部会におきましては,民法のみの検討を行うということでございます。仮に,民法の成年年齢を引き下げる場合には,民法以外の法令にも影響を及ぼすことになるとは思われますが,法務省で他省庁所管の法令についてまで検討を行うことはできませんし,民法以外の法令につきましては,それぞれその法令が制定された経緯・理由等があり,そこまで検討することはできません。したがいまして,あくまで民法の観点から民法の成年年齢を引き下げるか否か等を検討していただきたいと存じます。   そして2で書きましたが,検討していただいた結果,仮に現時点では民法の成年年齢を引き下げるような状況にはないという結論になりました場合,いかなる条件,環境整備が整えば,成年年齢を引き下げてよいか,またそれにはどの程度の期間を要するのかということも検討の対象となるものというふうに考えます。例えば,現時点では成年年齢を引き下げるべきではないが,中学校や高等学校における法教育が徹底されたり,消費者保護の制度が充実すれば,成年年齢を引き下げてもよいといった結論も,当部会の審議の結果の選択肢として,論理的に考え得るものの一つでありますし,先ほど御説明いたしました国民投票法の審議におきましても,民法の成年年齢の引下げのためには,条件整備が必要となって,そのためにある程度の期間を要することもあり得る旨が,複数の答弁者によって述べられているところでございます。したがいまして,現時点での引下げの可否の議論に加えて,このような点につきましても御審議をお願いしたいものであります。   他方で,3のところですが,現行制度を変えるという場合にも,単純に成年年齢を引き下げるという結論をとるほかに,裁判所等による審査を条件に,未成年者が服している親権からの解放を認めるという制度や,成年・未成年で二分するのではなく,段階的に権利を付与する制度を採用するといったことも検討の対象となり得ると考えられます。   ただいま申し上げました親権からの解放を認めるという制度は,フランス民法が採用しているものでして,フランスにおきましては18歳を成年年齢としつつ,未成年者であっても16歳に達した場合には,親権者の請求に基づき裁判官によって正当な事由があると認めるときに,親権解放の宣言をして,未成年者の行為能力の制限が解かれるとされており,先日開催されました法制審議会の総会におきまして,一部の委員からこのような柔軟な制度の採用も検討に値するという指摘がされたところでございます。   また,段階的に権利を付与する制度につきましては,参考資料8として皆様に配布させていただいております大村敦志委員の論文を御参考にしていただきたいと思います。これにつきましては大村委員から補足的に御説明いただく機会もあろうかとは思いますが,この論文全体でいうと,2873頁なのですが,右上の括弧でいいますと,11頁のところですね,ここ以下を御覧いただきたいと思います。この論文の内容を大ざっぱに申し上げますと,未成年者につきましても,全く行為能力がない者と親権者の同意を得て,法律行為をすることができる者というのを区別しまして,成年者につきましても,完全な成年と成年ではあるが重要な法律行為を行うについては,一定の制限をかける者を区別するというような制度も考えられるというのがこの論文でございますが,このような制度につきましても,当部会におきまして検討に値するのではないかと考えております。   この参考資料8につきましては,また後ほど,本日ではないかもしれませんが,また御議論いただくことになるかとは思いますので,簡単に紹介させていただきました。   部会資料5に戻りますが,以上が検討の対象として,まず民法のみの検討を行うという第1のところの御説明でございました。   次に第2の民法のうちの検討対象条文というところを御説明申し上げます。   現在,民法は第1条から第1044条までございますが,このうち今回検討の対象となります「成年」「未成年」という用語を用いている条文は,約50か条ございます。   民法におきまして,成年,未成年を使用している条文はほかにも多数ございます。恐れ入りますが2枚目の注1というところを御覧いただきたいと思いますが,注1にも記載しましたように,「成年後見」あるいは「成年被後見」という用語で「成年」が用いられているもの,これは先ほど申しました50か条のところからは除いております。これはなぜかといいますと,皆さん御承知でない方もおられるかもしれませんので,御説明いたしますが,精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある者につきましては,家庭裁判所が後見開始の審判というものを行い,審判を受けた者が成年被後見人と呼ばれて,行為能力が制限されます。そして,成年後見人という者が付されます。このような後見開始は,成年だけではなく当然未成年者も対象となり得ます。したがいまして,成年後見,成年被後見といった場合に,ここでいう成年には未成年も含まれることになりますので,成年という用語が用いられていても,今回の成年年齢の引下げについての影響は及ばないということになります。   約50条あります検討対象の条文のうち,主なものとしましては,恐れ入りますが1頁の下から①,②,③,④と書いてあるところを見ていただきたいと思いますが,①として行為能力が制限されることによって取引における保護を受ける者の範囲をどうするかということ。これは主に民法の第5条の関係でございます。②として親権に服する者の範囲をどうするか。③として養親となれる者の範囲をどうするか。④として仮に成年年齢を18歳に引き下げる場合,現在の婚姻年齢を維持すべきかどうかということになると思われます。   順に御説明いたします。ここのところは,条文も関係してまいりますので,部会資料6の参照条文もあわせて御覧いただけると幸いでございます。   まず1つ目が,5条関係ということで1枚めくっていただいて,頁は左下に書いてございますが,1頁のところでございます。4条が年齢20歳をもって成年とするという規定になっておるのですが,次の5条というところに,未成年者の法律行為についての規定がございます。ここの第1項のところで,未成年者が法律行為をするには,その法定代理人の同意を得なければならない。ただし書を読むのは省略いたしますが,同意を得なければならないと,こういうふうに規定がしてあります。   第2項で,前項の規定に反する法律行為は取り消すことができるという規定になっております。このように,第1項におきまして未成年者が法律行為をするには,その法定代理人の同意を得なければならないと規定して,第2項におきましてその効果としまして,第1項の規定,つまり第1項に反する法律行為は,取り消すことができるというように規定されております。法律行為と申しますのは,売買や賃貸借などの契約が典型的なもので,法によって行為者が希望したとおりの法律効果が認められる行為をいいます。法定代理人とは,民法上代理権が本人の意思に基づかないで,直接法律の規定によって与えられる代理人をいいまして,未成年者の場合,親であることが通常でございます。したがいまして,未成年者が売買や賃貸借の契約を締結するためには,親の同意が必要であり,親の同意なしで行われた契約は取り消すことができるということになります。   この規定を設けることによりまして,未成年者の保護を図っております。ですので,この成年年齢を引き下げますと,この未成年者としての保護を受ける者の範囲が狭くなることになります。   次に,2の親権に服する者の範囲につきましては,民法第818条に関するものでございます。部会資料6でいいますと,11頁を御覧ください。真ん中のあたりに親権者と書いてあります818条ですが,この第1項を御覧いただきたい。民法第818条第1項におきまして,成年に達しない子は父母の親権に服すると規定されております。親権制度といいますのは,未成熟な子の養育・監護のための制度でありますので,親権に服する子を未成年者に限定したということでございます。   なお,先ほど述べました①の行為能力が制限される者の範囲と,②の親権に服する者の範囲につきましては,一致せざるを得ないものというふうに考えられます。これはなぜなら,親権は大別して財産管理権と身上監護権をその内容といたしますが,財産管理権の問題は行為能力の制限の問題と表裏一体の関係にあるというふうに考えられるからです。なお,親権の中身として財産管理権と身上監護権を書き分ければ,身上監護権の及ぶ範囲と行為能力が制限される者の範囲を一致させる必要はなくなりますが,親権の中身を単純に財産管理権と身上監護権に書き分けられるのか,またそれが可能としてもそれが適切なことかどうかにつきましては,慎重な検討を要するものと思われます。   ③の養親となれる者の範囲につきましては,民法第792条に関するものです。部会資料6でいいますと7頁を御覧いただきたいと思います。真ん中辺に書いてございますが,民法第792条におきまして,成年に達した者は養子をすることができるという規定がございます。養子縁組といいますのは,重大な身分関係の設定を伴うものですから,養親の適格者を成年としたものでございます。仮に,成年年齢を引き下げることとする場合には,民法第792条をこのままにしておきますと,養親になれる年齢も自動的に引き下がることになりますが,それでよいのかどうか,諸外国の中には養親になれる年齢は成年年齢よりも高くしている国もありますので,そのような取扱いをすべきかどうかにつきまして,検討していただく必要が生じてくるものというふうに考えられます。   ④の婚姻年齢の検討も,仮に成年年齢を18歳に引き下げるという結論になった場合に問題となるものでございまして,現在,婚姻年齢は男子が18歳,女子が16歳となっておりますが,成年年齢が18歳になった場合,男子は成年年齢と婚姻年齢が一致することになりますので,これをそのまま維持すべきかどうか検討していただく必要が生じてくるものと考えられます。   なお,部会資料5の2枚目の注3に記載しましたとおり,①から④までに掲げました条文以外にも,成年を用いた条文は民法中に多数ございます。しかしながら,①から④の範囲が決まりましたときには,これらに当然連動することとして差し支えないものが多いと思われます。   長くなりまして恐縮ですが,以上で御説明を終了します。 ○鎌田部会長 どうもありがとうございました。   いろいろと御質問等もあろうかと思いますけれども,ここで休憩をとらせていただきたいと思います。           (休     憩) ○鎌田部会長 それでは,会議を再開いたします。   先ほど部会資料の1から6まで説明をしていただきましたので,いろいろと御質問等あろうかと思いますので,まず御質問をお受けして,その後でフリーディスカッションというふうな進め方にしたいと思います。先ほどの事務当局の説明につきまして,御質問がありましたら,どの点に関してでも結構でございますので,御発言をお願いしたいと思います。 ○松尾関係官 休憩前の最後の段階で,今回の検討の対象について御説明を伺いました。民法だけを対象とするということで,それはもう民法部会として当然のことであり,その結論自体は大変結構だと思いますが,その理由付けとして,各省庁それぞれ所管の法令というものがあるからとおっしゃったかと思いますけれども,法務省の所管する法令の中にも少年法は別としましても,刑法にも未成年者誘拐罪とか,未成年者を対象とする人身売買罪がありますわけで,その辺をちょっと御認識いただければ幸いだと思います。 ○佐藤幹事 大変失礼いたしました。先ほど他省庁の法令というふうに申し上げましたが,法務省の中にも多数の法令がありまして,それぞれ立法の趣旨なり理由が異なるということで,それぞれ検討するということでございまして,まずは多数の法令で成年という用語が使用されております民法について検討するというのが,法務省の方針でございまして,まずはこの部会におきましては,民法の成年年齢について引き下げるべきかどうかについて御検討いただくということでございまして,もちろんほかの法令があるのは存じておりまして,説明が不十分で至らなかった点がありましたことをおわび申し上げます。 ○鎌田部会長 よろしゅうございますか。   ほかにいかがでございましょうか。今田委員お願いいたします。 ○今田委員 御説明の中で,国会の審議も諸外国は18歳に引き下げるのが趨勢であるという御説明があったのですが,この参考資料3でいただいている近年の主な国の資料なんですが,これを見せていただいたら,およそ引下げの時期というのがほぼ70年代の半ばから後半ころにかなり集中していると。少し例外として2000年とかいう国もありますけれども,ベトナム戦争の末期のころとほぼ同じ時期だったのではないかなと思います。諸外国が引き下げたときの状況と,それからなぜ日本はこの中では蚊帳の外だったのか。この時期に日本はこういう議論をしたのか,全くされなかったのか,なぜされなかったのか,そのあたり教えていただければと思います。 ○佐藤幹事 それでは,御説明いたします。   諸外国の理由につきましては,この参考資料3については余り詳しく御説明いたしませんでしたが,今,今田委員から御指摘がありましたので,ご説明させていただきます。これにつきましては,平成14年に法務省で各国大使館に対して,成年年齢の引下げを行ったかどうかについて調査をしたことがございまして,その結果,戻ってきたものについて,こちらで判明しているものについてのまとめをしたと,こういうものでございます。   これにつきまして,諸外国でなぜ下がったのかということですが,これはさまざまな理由がございまして,先ほど今田委員からの御指摘もありましたが,ベトナム戦争のころの徴兵制と関係しているということで,アメリカのカリフォルニア州とかを見ますと,18歳で徴兵されることから,徴兵される者は投票できるとすべきことが妥当であるということで,成年年齢も合わせたというあたりの記載とか,こういうものがございます。   また,ほかにも,理由が幾つか書いてあるのですが,例えばフランスでいいますと,社会学的理由,世代の生物学的な成熟の進行,経済的及び社会的分野においてすべての世代に対する一般的な保護の措置が設けられたこと等により,若年者のみを特別に保護する必要性が低下したことという記載がされております。これは,返ってきた回答をほぼそのまま書いたような関係になっておるのですが,具体的に,ではこれは社会学的理由としてどういう調査をしたかとか,そのあたりが必ずしも当方の調査でまだ明らかでございませんで,現在,それについて更なる調査をしたほうがいいということで,今こちらの方で調査を進めております。ですので,諸外国がなぜ引き下げたかの理由につきましては,現在調査中ということですので,できるだけ急いでやりたいとは思っていますが,相手もあることですので,分かり次第,その結果をまた御報告する機会があるかと思います。   このように,諸外国が引下げを行ったのに,なぜ我が国は行わなかったのかということでございますが,当方の調べた限りでは,例えば法制審議会でその成年年齢を引き下げるべきかどうかについて議論したというような記録は残ってございません。それがなぜかと言われますとちょっと今のところよく資料がないのですが,特に引下げをしようという動きが余りなかったのではないかとは思っておりますが,今のところちょっとそこは推測を出ませんので,取りあえずそういう法制審議会等で調査審議を行ったことはないということだけは申し上げさせていただきたいと思います。   平成14年に調査した理由は,このときに民主党が選挙権や成年年齢等について,20歳を18歳に引き下げるという法案を出したことがございまして,それを契機に調査をしたということでございます。 ○鎌田部会長 五阿弥委員お願いします。 ○五阿弥委員 国民がどういうふうに考えているかということは,私たちが審議する上でも非常に重要なことだと思うんですが,先ほどの進め方を見ると,ヒアリングが最初数回入っています。世論調査というようなことは,今お考えになっていらっしゃるんでしょうか。確か,この問題については,1970年代に一回,内閣府かどこか分かりませんが,どこかでやったというようなことをどこかでちょっと読んだんですけれども,そのときには引き下げるべきではないというような声が圧倒的に多かったと,そういう記憶があるんですけれども,そういう意味では審議の参考になると思いますので,そういう世論調査の御予定はあるかどうか,ちょっと教えてください。あるいはほかの機関でも,この問題について何かそういう調査みたいなことが最近あったら,そういう資料も出していただければと思います。 ○佐藤幹事 お答えします。世論調査の点ですが,世論調査というのは政府の中では内閣府が実施するというものでございまして,法務省が主体的に実施するものではございませんので,その点についてはこの場では言及を差し控えさせていただきたいというふうに思います。   しかしながら,この問題につきましては国民生活に重大な影響が及ぶ問題ということでございますので,幅広く国民各層の意見を聴取する必要があるというふうに考えております。ですので,どのような方法がよいかについては,皆さんにまた議論をしていただくことは必要かとは思っておりますが,世論調査自体をこの審議会でこちらの方から言及するというのはなかなかできないということでございます。   1970年代の調査は,選挙権年齢の調査だったようですので,成年年齢について調査したかどうかについては,承知しておりません。 ○五阿弥委員 何らかの形で,今国民がどういうふうにこの問題を思っているのかということについては,やはり調査することは必要だと思います。 ○始関委員 今の関係でございますが,民間の方では既に毎日新聞と日経新聞だったと思いますけれども,法制審議会の総会が開かれた後の土日あたりの新聞に,世論調査というほど大々的な調査ではありませんけれども,インターネット等を使って,国民の意識を聴かれた結果が公表されておりますので,必要であればまた参考資料として追加でお配りさせていただきたいと思います。 ○鎌田部会長 ほかに何か御質問ございますでしょうか。   木村委員どうぞ。 ○木村委員 この最初の部会資料のところで,国民投票法との関係という資料の中で,ちょっと法解釈みたいな話になってしまうんですけれども,公職選挙法の選挙年齢を戦後20歳に引き下げた理由の中で,民法の成年年齢が20歳であることが挙げられていると。だから,民法上の判断能力と,参政権の判断能力とは一致すべきだとこういうような話になっていたりしているわけなんですけれども,憲法の先ほどの国会での議論の中にも,憲法の15条で成年という言葉が出てくるというような話がございました。その場合の成年というのと民法上の成年というのが,法解釈上というか,法論理的に同一である必要性というのはあるのかないのか。議員の先生たちは,だんだんと同じであったほうが望ましいというような議論になっているんですけれども,その辺をまず法論理的解釈上もやはり成年というのは憲法と民法とやはり同じような言葉を使っている以上,同じように解釈すべきなんだよねというようなところが,まずちょっと確認をさせていただく必要があるのかなと,ちょっと私,その辺からよく分からないものですから,よろしくお願いします。 ○佐藤幹事 お答えいたします。皆さん御承知のとおり,憲法第15条第3項で,公務員の選挙につきましては,成年者による普通選挙を保障するという規定がございます。今の木村委員の御質問は,ここでいいます成年者による普通選挙というところの成年が,民法上の成年と同じであるかという御質問だというふうに承知しました。この問題につきましては,当方でもちろん憲法の解釈ということも絡むものではございますが,憲法の基本書等を調べてみましたところ,憲法第15条第3項でいう成年者の意味について,これが民法の成年を指すかということを明確に記載した文献自体がそれほど多くなくて,明示的に憲法第15条第3項の成年者が民法の成年者であると記載した文献はございますが,むしろそう書いてある文献自体が少数ではないかというふうには考えております。   憲法第15条第3項の意義につきまして,言及のある文献によりますと,憲法学の学説では民法の成年年齢とは必ずしも一致すべきではないというものから,民法の成年年齢と一致するというものまで,バラエティーがあるようでございます。ただ,民法の成年年齢より低く選挙年齢を定めるということ,例えば民法の成年年齢を20歳のままにして,公職選挙法の選挙年齢を18歳にするということは,選挙権を広く保障するといった憲法の趣旨からしますと,当然に許容されるべきであるという点についての学説は多くて,この点は異論がないようでございますので,必ずしも一致しなければならないということではないように思っております。 ○木村委員 どうもありがとうございました。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。単純な質問というよりも,意見にもわたるようなお話も出てこようかと思いますので,フリーディスカッションの形で御意見も含めて御発言をいただければと思います。委員,幹事の方,どの課題からでも結構でございますので,御自由に御発言ください。   それでは,仲委員お願いいたします。 ○仲委員 今日の御説明の中で,随分平均寿命の話などがございましたけれども,これをよくよく考えてみますと,当初,明治時代などには,平均余命が短く,しかも日本はほかの国に比べて短いので,成年の年齢も引き下げるという発想であったと思うのですけれども,現在,平均余命は伸びているわけで,そうすると成年年齢を引き上げることになるのではないかと思うのです。余命あるいは平均寿命というのをどう考えたらいいかということについては,何か少しディスカッションをしていただければと思いました。 ○鎌田部会長 何かその点に関連して,御意見等ございますでしょうか。   明治時代のものは,諸外国よりも低く設定することを正当化する理由として持ち出したので,それの逆に当然になるとかというと,それは余り説得力がないような気がします。 ○仲委員 平均余命のことはもう考えなくてもよいのでは,と思ったのですが。 ○鎌田部会長 事務局,何かありますか。 ○佐藤幹事 一応,制定時の理由として一つ平均余命が挙げられたので,参考資料としました。ですが,平均余命が伸びたから単純に,ではそのままでいいということにはならないのかなとは思っていますので,そこは皆さんで議論していただいてというふうには思っております。 ○鎌田部会長 何かこの点について,御意見ございましたら。   よろしいですか。また追っていろいろ御専門の立場からのお話を伺った際等に,議論の対象になろうかと思いますので,その際にまたよろしくお願いいたします。   ほかの点につきまして,この成年年齢をどうすべきかというふうなことだけでなくて,今後のこの部会の進め方について,先ほど五阿弥委員からも御意見がありましたけれども,そういう観点からの御意見も是非ちょうだいしたいと思いますので,どこからでも御発言いただければと思います。   山本委員。 ○山本委員 これは質問なんですけれども,先ほどの質問とも重なるかもしれませんが,国民投票法の国会審議においては,民法上の判断能力と参政権の判断能力とは一致すべきであると,こういう基本的な認識に到達したということですが,先ほどの説明では,憲法15条のいわゆる成年概念と,民法上の成年概念については,諸説あると。その上で成年年齢より参政権が下であってもよいと,そういう考え方があるということですが,その主たる理由,その場合の成年概念,参政権の概念と,民法上の成年という概念,それらについては,どんな代表的な意見があるのか教えてもらえると有り難いです。 ○佐藤幹事 先ほど申し上げましたのは,憲法での議論についての学説を御説明申し上げたのでございますが,そこで一般的に言われていますのは,必ずしも民法での成年概念と違って,選挙権を広く保障するという観点から見たときに,選挙権を引き下げることが成年年齢とは別に,選挙権を引き下げることは憲法上も許容されているだろうと,こういう文脈で説明はされております。 ○始関委員 民法でいう成年と,憲法でいう成年が同じかどうかというのは,先ほど佐藤幹事から申し上げましたように,諸説ございます。しかし,はっきりしていることは,憲法15条は成年者による普通選挙を保障するということを言っているだけでございまして,未成年者に選挙権を与えてはならないということは一言も言っていないということでございます。ですから仮に民法の成年年齢と憲法15条の成年年齢が同じだという解釈をとりましても,憲法上も民法上も未成年という解釈になる者について法律で選挙権を与えるということ自体は憲法には何ら違反しないということになるわけでございます。 ○氷海委員 私は学校の方で子どもたちにもちょっとこういう話をしてみたんですが,子どもたちから純粋に,「何で今変えるの。」と,単純に出るんですよ。だから,多分世の中には,今この審議会が開かれていて,どうして今なんだという理由,つまり,簡単に言えばここが動き始めることの明確な理由ですね。子どもたちに質問されて,私もすぐ答えられなかったんですけれども,なぜ今変えるんですかと言われたとき,これは広がる可能性があり,変えることで非常に影響があるものですから,これをスタートさせる根拠みたいなところを結構明確にしていかないと,周りも分かりにくいかなと。いろいろな思惑があるんではないかとかいうような憶測も出てくるものですから,その辺,組織としては必要かなというような気がしました。 ○佐藤幹事 先ほど来,ご説明いたしておりますとおり,国民投票法が昨年できまして,それで附則のほうで民法等についても検討するということになりまして,これがきっかけといえばきっかけでございます。その中で,先ほども部会資料1等でも説明しましたが,やはり18歳が世界標準であるという認識が幅広く共有されたとか,こういう答弁もされておりますので,そこら辺も踏まえて,これを機にやはり議論してみようということで議論するということになったということでよろしいのかと思っております。 ○氷海委員 そうすると,政党的にとらえますと,世界が今みんな18歳で日本だけ20歳だから変えるんだよという理解になっていきますよね。 ○始関委員 今,変えるんだよとおっしゃられたのですが,諮問をもう一度御覧いただきたいのですけれども,引き下げるべきか否か等について御検討いただきたいということでございまして,先ほどの部会資料5で,検討の対象について御説明しましたときも,引き下げるかどうかをまず考えていただき,引き下げるとしてどういう条件が整ったら引き下げられるのかということも御議論いただき,仮に引き下げるとした場合にどういう形で引き下げるのかということも御検討いただくということを申し上げたのでございます。先ほどの国民投票法との関係では,引き下げることが極めて望ましいというふうに,国民投票法の立案者は答弁されておられるわけですけれども,民法については法の趣旨に立ち返ってしっかり議論をしてもらいたいという答弁もされているということは,先ほど御覧いただいたとおりでございまして,そのためにこの部会をやっていただくわけですので,民法の観点,これは諮問の冒頭に書いてございますように,若年者の精神的成熟度,それから若年者の保護の在り方ということでございますので,そういう民法の趣旨に照らして,18歳に今引き下げることが妥当なのかどうか,仮に妥当でないとすればどういう条件が整えば引下げができるのか,例えば,ヨーロッパでは教育も日本とはかなり違っていて,若い世代でもっと成人としての自覚を持たせられるようになっているところが日本とは違うのではないかという,外国に居住されている方からの投書も寄せられているのでございますけれども,そういったことも含めて,広く御議論いただきたいというのが事務当局のお願いでございます。 ○鎌田部会長 よろしゅうございますか。   どうぞ。 ○出澤委員 私も今の議論の出発点のところですが,民法の成年年齢というのは,法的に非常に安定しているんではないかと思っており,法的安定性としてはこれをなぜ引き下げなければいけないかということが,引っ掛かっているところでございます。   今回契機になったのは,国民投票法というのはもちろん分かるのですが,ただ,司法の安定性,この法的見地からどんな問題が逆に生じてしまうのかということは十分調査審議する必要があるのではないかと思います。20歳が成年ということで,若干のほころび,例えば親権を濫用する親からの親権の解放を求める制度,先ほどもちょっとございましたけれども,そういう部分的な修正は必要にせよ,この20歳を18歳に引き下げることの法律的な意味合いというのは,まだ私にはちょっと理解できていません。今後,議論をするにつれて,だんだんそれが腑に落ちてきて,結論として,ああなるほど,そうだということになる可能性はもちろんあると思います。そういう意味で,私はまだ結論的には白紙ですが,出発点としてどうしてもそこがまだ引っ掛かってしまうというのが実情でございます。   以上でございます。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。   どうぞ。 ○松尾関係官 なぜ,今の時点でこういう議論を始めたのかという御質問であったかと思いますが,今日いただいた資料を拝見しておりますと,幾つかの国で引き下げた時期が70年代の前半に集中しているように見受けられます。そのころ,日本の法制審議会は何をしていたかといいますと,やはり「年齢」の問題を抱えて非常に苦労していたのであります。ただし,その場合の年齢は,民法の問題ではなく,少年法の問題でありました。当時議論された少年法の改正論は,20歳を端的に18歳に下げるというものではありませんでしたけれども,ただ,実質的に20歳までを少年として扱っていることに対して疑問の目を向け,18歳のあたりで少し区別をしたらどうかという考え方で出された案でした。これをめぐって賛否の議論が非常に激しく衝突し,日本弁護士連合会から出られた委員の方は,途中で部会委員を辞任されるというような,異例の事態も起こったわけであります。   そういう状況を踏まえますと,民法の年齢を18歳に下げるというような議論は,到底持ち出すことができなかった時代でありました。そこからかれこれ30年たちまして,今そういうしがらみが全くなくなって,改めて民法の部会で自由な御議論をしていただくということになりましたわけで,私は30年たったなという感慨をかみしめている次第でございます。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   岡田委員お願いします。 ○岡田委員 取引に関していいますと,一番関係するのが消費生活センターです。20歳未満と20歳過ぎが,契約が取り消すことができるかできないかの別れ目になり,昨日までは20歳になっていなかったが,20歳になった日の契約は取り消せないことになります。したがって,成年年齢が下がることにより,トラブルが増えることとなるでしょう。ただ一方で,外国が大方18歳になっているということになりますと,今後,日本人もどんどん外国に行ったり,外国から日本に入ってきたりしていく状況を考えますと,果たして20歳のままでいいのかどうなのか。   トラブルが劇的に増えるということもあるんですけれども,将来的なことを考えると,これで何も起きないのかなという悩ましい問題がありまして,今のところ,本当に悩んでいるという状況です。 ○鎌田部会長 何かありませんか。水野委員。 ○水野委員 私は民法が専門でございますので,この段階で民法を改正するということについて,一言だけ申し上げます。先ほどから御説明がありますように,今度の国民投票法は民法の改正を当然に意味するものではないということは確かだと思います。ただ,憲法が基本的に国の形を決める基本法だといたしますと,民法は私人間の,我々の社会における人々の関係,社会の成り立ち方を決める,これも非常に重要な基本法でございます。そして,国民投票法は,やはりこの機会に民法典の成年年齢を考えてみるきっかけには,もちろん十二分になるものだと思います。そして,民法はそれだけ基本的なものでございますので,そこで成年という言葉が20歳だと決まっていることが,ほかのあらゆるところに影響します。これはいろいろな意味で影響するわけですが,基本法がそうだから他の諸法律にも影響するということのほかに,我々がものを考えるときに,観念の力はとても強く,観念に縛られるのが不可避だということがあります。元服をするといきなり精神的にも子どもが大人になるということがありますように,20歳になったときに,皆がこれで大人だ,成人だと思うこと,民法がそう決めているのでそのような観念の呪縛のある社会になっているわけで,その観念自体を変えることの意味は非常に大きいものです。   先ほど出澤委員がおっしゃいましたように,皆が共有する観念で動いているときにはもうそのことについて特に違和感を持たないで動くのだと思うのですけれども,でも改めて白紙から考えてみたときに,それを変えたほうがいい時期に来ているのであれば,基本法たる民法を十分に審議をして変えることによって,我々の社会の成年というものの観念を変えていく必要があるでしょう。そしてその判断をするためには,その変化の影響をいろいろ考えて,我々の今後の観念,その観念が形成する社会をつくっていくということになるのだろうと思います。ですから,民法の改正というのはそれだけ重いものでございますし,今後の我々の社会が大人になるということをどのように考えるのかということの縛りを,ある意味では加えていくことになりますので,民法学者以外の多方面の委員の先生方に御参加いただいて,これからゆっくり議論をするということになるのだろうと考えております。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見いかがでしょうか。   青山委員お願いします。 ○青山委員 民法の成年年齢を引き下げるかどうかという審議を開始するのが,唐突ではないかという率直な感じがするという意見も,私には非常によく分かるんですけれども,これは先ほど事務当局がお答えになったように,基本的な憲法改正手続で18歳になったこととの関係で民法はこのままにしておいていいのかということが,我々自身に突き付けられている。そのことが直接的なきっかけになって,こういう部会が立ち上がったことが,唐突感をもたらしているというふうに思っております。しかし,今まで長く安定した成年年齢20歳というものを,見直すきっかけがそういうことからできたんだ。それをいい機会に利用できれば,大変よいのではないかというふうに思っております。   ただ,そういうことを申しましたのは,だから20歳を18歳なり19歳に引き下げるという意見をいま私が持っているわけではございませんで,私自身は白紙です。諮問自身が引き下げるか否かについて検討してほしいという諮問ですから,その中で十分審議をしていただいて,結論を出していただきたいと思います。   私が言いたいのは,この問題はどういう結論が出ても,それが国民全体で賛成ということにはならない可能性が非常に大きい問題だという点です。   そこで審議の仕方として,どういう結論になるか否かではなくて,十分に審議を尽くす。そのためには先ほど言われましたように世論調査はここではできないにしても,国民の意識を十分把握した上で結論を出していただく。そして,結論が年内ぐらいに出るかと思いますが,それをパブリックコメントで一応返して,また意見を十分に聴くと,そういう過程を繰り返すことによってしか結論の正当性というものが引き出せない,そういう性質の問題ではないだろうかというふうに思います。審議の最初の段階で,これは私,総会でも申し上げたんですけれども,この部会の構成員を民法学者だけではなくて,広い層から委員・幹事を集めていただいて,内容自体は20歳にしておくのか,19歳にするか18歳にするか,その選択肢がそんなにない中で十分な議論をして,これが国民的な総意になることができるような議論の仕方を展開していただければというのが私の希望でございます。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。   それでは,平田幹事お願いします。 ○平田幹事 幹事の平田でございます。ここで改正する必然性の議論なんですけれども,何十年も安定した状態だというのは間違いないと思います。しかし,その間にいろいろな法制度が整ってきて,いろいろなひずみも起こっていると思うんですね。例えば児童福祉法,児童虐待防止法というのは,18歳という年齢で引かれている。18歳になったら逃げられる年齢だからということで,福祉の対象から外されるわけですけれども,2年間は親権に服さなければいけない。親権で,居所指定権と職業許可権とがあります。だから逃げようと思っても逃げられない状態,2年間というのが児童福祉法制の中でできてしまっている。   このひずみをどこかで調整しないと,例えば虐待を受けて逃げようとしても,逃げられない2年間というのができてしまうんではないか。では未成熟だから,20歳まで児童にしてしまおうというのも失礼な議論ではないか。そういういろいろな法制度の調整もしなければいけないと思います。片や先ほどお話があったように,今,20歳になった途端に若年層にマルチ商法の働きかけというのが非常に増えている。これは20歳に成りたての人をターゲットにした勧誘商法です。成年年齢が18歳に下がることによって,当然18歳をターゲットにしたマルチ商法の勧誘が増えるだろうという気はしております。   ですから,どこかで法制度を調整するとともに,ではどういう条件を整えていけば,引き下げることが許容できるのか。それをいろいろな法体系を見ながら,調整していくべき必要性が出てきたと思います。表向きは国民投票法の流れに乗っているのは間違いないと思うんですけれども,しかし全法制度を見たときは,そういう必然性も少なからず出てきているんだというのが,私の理解です。 ○鎌田部会長 それでは,今田委員お願いします。 ○今田委員 国民すべてが何らかの考え方なり,このことについての意見を持つ,そういうテーマなんだろうと思います。関心も非常に高いでしょう。けれども,結論は出せるでしょうが,今,事務局からいろいろ説明を受けて,理解できた部分も多々あったように,実態や事実について十分な情報提供が必要だと思います。世論調査がいろいろなところでおやりになるんでしょうけれども,やはり不確かな情報に基づいていろいろな意見が飛びかって,結果だけがさまよって,ますますそれを増幅させるようなことのないようにしたほうがいいと思います。できるだけ情報提供ということで,事務局や専門家の先生方にお願いしたい。我々が今日もらった情報だけでもすごい情報です。恐らくこれだけの情報がマスコミ関係者も知り得ていないものもいっぱいあると思います。できるだけ情報を公開して,国民一般の人たちが理解しやすいような状況をできるだけ努力してつくり出すということが必要なんではないかなと思います。 ○鎌田部会長 仲委員どうぞ。 ○仲委員 先ほどの平田幹事の御意見,本当になるほどなと思いました。公的な機関から子どもにアクセスをしようとするときに,それが難しくなる期間というのがあって,一つは3歳から6歳の,3歳児健診が終わって就学前の健診があるその期間がなかなかリーチしにくい。もう一つは,今先ほど出てきました18歳から20歳の間で,18歳になると,児童養護施設なども出なくてはいけなくなってしまいます。しかし,家を借りる契約もできないということで,大変苦しい立場に置かれるお子さん,お子さんと呼んでいいのか分からないのですが,いらっしゃる。18歳から20歳というのはやはり一つのギャップになっているなと感じます。   このようなギャップが,ほかにもまだいろいろとあるのではないのかなという気がいたしまして,もし可能であれば,例えば飲酒は幾つ,車の運転は幾つといった,いろいろな法律的な年齢の表みたいなものがあったりするといいのかなと思いました。 ○鎌田部会長 まあ,余り権限優越というふうにならない形で,全体としての成年年齢の機能の仕方というふうなものを分かりやすく提示するというのも必要かもしれないですね。 ○佐藤幹事 分かりました。それは少し検討してみます。 ○仲委員 そういうギャップのようなものが明らかになってくれば,問題も明確になってくるのではないかと思います。 ○始関委員 今,仲委員からお酒とかたばこの話が出ましたので,参考資料2を御覧いただきたいのですけれども,これは主要国の各種法定年齢の比較でございますが,我が国におきましては婚姻年齢や被選挙権は別ですけれども,ほかのものは大体20歳で統一がされております。そのために,お酒やたばこについて規制している法律も,未成年者飲酒禁止法とか未成年者喫煙禁止法とかいう名称になっているんでございますが,しかし,この飲酒年齢,喫煙年齢につきましては,未成年という言葉は法律の題名には使われておりますが,中身は「満二十年」と数字で入っているわけでございます。ですから,民法の改正をしたからといって,お酒とかたばこまで18歳からのめるようになるわけではないということになってございます。   ですから,そこは民法が変わったときにどうするのかというのは,それぞれの所管の省庁さんで別途御検討されることになります。   なお,酒やたばこにつきましては,参考資料2をもう一度御覧いただきますと,例えばアメリカは成人年齢18歳,選挙権年齢も18歳でございますが,お酒は21歳でございます。このように,飲酒がもたらす健康に対する害ということを考慮して,成長の世代にある者については,成年年齢とか選挙権年齢とは別途,規制を加えているという国もございまして,このようにそれぞれ法律が一定の年齢で絞っているものについては,それぞれの法律の趣旨,理由がございますので,そこで先ほど冒頭にも申しましたように,この部会で全部を議論していただくことはできませんから,ここの部会ではあくまでも民法について御議論いただき,民法の成年年齢について仮に引き下げるという結論になった場合には,さらにそれぞれの私どもの省庁の中であれば別の部局,それからよその省庁の所管法律であれば当該省庁さんの方で,別途どうされるかということを御検討されると,そういう順番になるということでございます。 ○仲委員 確かに,私たちが議論するところというのは決まっていると思うのですけれども,全体的な見通しを持ってできればいいなというそういう趣旨でした。   改めてよろしくお願いいたします。 ○鎌田部会長 民法が成年年齢の基本法というような形になっているんですけれども,民法の5条自体はちょっと矮小化した言い方になるかもしれませんけれども,取引社会でこの線を越えるともう全部自己責任でやってください,それまでは保護してあげますよという線になっているわけですね。それで,この参考資料3のフランスのところに書いてあるのが割りと示唆的なんですけれども,実は一人一人の保護の必要性というのは,個人差がものすごく大きいわけで,どこかできちんときれいに線が引けるわけではないけれども,便宜的に原則的に保護の対象にして,例外的にもう一人で何でもやれるような人には,営業の許可等を与えて,あるいはフランスなんかですと未成年者解放制度で,成年と同じにしていく。例外的に一人前にしていく。ところが20歳になると,原則全部自己責任なんだけれども,例外的に能力の劣った人は,その成年被後見人とか被保佐人という行為能力制限制度で救っていきましょうと。この後者の能力補完の制度が十分に機能していればということで,日本はずっとそれが余りうまく機能してこなかったので,比較的最近,もうちょっときめ細かく個人の状況に応じた使い方ができるようにしましょうということになった。これが非常に柔軟に幅広く使われていくと,この参考資料3のフランス欄の3行目に書いてあるように,そういう制度を十分柔軟に使っていけばいいんだから,成年年齢を引き下げてもそれによる弊害はほかの制度で埋めていけますよという,こういう組合せに多分なるんだろうと思うんですね。   大村論文なんかもそういう意味で,非常に多様な個人の状況に応じて適切な対応をしてあげる柔軟な制度を考えたらどうかという,こういうふうな御提案だと思うんですけれども,我が国では制限行為能力制度をつくるときにも,それに連動してちょっと成年年齢を引き下げましょうというふうな発想は,多分全くなかったし,そういう形で非常に幅広く柔軟に使われるというふうな発想も多分なかった。現実にもそういう高齢者以外の人のいろいろな能力の程度に応じた,適切な保護を与える制度として使われていくという実態は,多分社会的にもまだまだないんだろうと思いますが,そういうものとこの成年年齢制度というのをやはりワンセットで考えていかなければいけない部分もあるんではないかなという気がいたします。   石井委員どうぞ。 ○石井委員 20歳を18歳にするということに関しまして,現段階で私ははっきりした見解を持っておりません。今日いただいた海外のいろいろな資料を見てみますと,いくつかの理由が考えられると思います。アメリカの例は徴兵制によって,18歳で兵役にとられるため,同時に参政権を与えるということで,非常に分かりやすいと思います。ほかの国々がどうして20歳から18歳にしたかについては,生物学的な成熟の進行とか,あるいは経済的,社会的な観点で18歳が適当であろうという形で,法改正がされたのではないかと思います。そういう意味ではこの問題は社会生活に大変大きな影響を与えますし,いろいろな国民の考え方,意見があると思います。先ほどいろいろ調査をするということを聞いておりますけれども,これからさまざまな専門分野の方々のヒアリングを通して,生物学的,あるいは経済的,社会的にどうなのかというところを詰めていけば,結論が見えてくるのではないかなと考えておりますので,これからのヒアリングに期待したいと思います。   以上です。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは,ほかにいかがでしょうか。五阿弥委員お願いします。 ○五阿弥委員 先ほど部会長もおっしゃったんですが,例えば民法の成年の年齢を20歳を18歳に引き下げると,そのときに具体的にどういう問題が生じるのか。例えば消費者保護みたいなことであれば,それは単に18歳,19歳だけの問題なのか,それとも今,高齢者なんかがさまざまな悪徳商法の犠牲になっています。全体の消費者保護行政をやはりそれは強化することでカバーでき得るものもきっとあるでしょう。あるいはそういうような対応では,なかなか難しいというような事例もあるかもしれません。多分,もしかすると民法の18歳に引き下げたとしても,ここの部分については従来どおりの,例えば20歳未満はこうするという形で残すということだって可能でしょうから,では一体現在の民法の中で引き下げることによってどんな支障を来たすのか,その想定されるものというのを,ちょっといろいろ教えていただければ,今後の審議の参考になるというふうにちょっと思ったんですけれども。 ○鎌田部会長 これは今後のヒアリングその他の中で,今の御指摘のような分野の話を聞く予定になっているかということですか。 ○五阿弥委員 そういうことです。 ○鎌田部会長 ちょっと説明できる範囲でお願いします。 ○佐藤幹事 民法のうち,対象条文ということで,部会資料5のほうでも御説明いたしましたように,引き下げた場合に大きな影響が及ぶというところにつきましては,ここで挙げました①から③ないし④のあたりということになろうかと思います。行為能力を制限した場合に保護される者の範囲が狭くなるが,それはどうかということとか,あるいは親権に服する者の範囲が狭くなるが,それはどうかということと,あと養親となれる者の年齢の範囲が変わってくるがそれがどうかというあたりが主だったものだということではございます。ただ,先ほど言いました消費者の問題とか,具体的にでは行為能力といいましても,五阿弥委員がおっしゃるとおり,消費者の問題とか労働契約の問題とか,いろいろな分野がございますので,今後どのような具体的な問題があるかにつきまして,消費者の方々でありますとか,労働の分野の方々でありますとか,また高校生の実態の関係でありますとか,あるいは発達心理学とか社会学の関係で,どういう問題があるかというあたりをヒアリングしていただこうというふうに考えております。 ○鎌田部会長 この点ももう少し具体的なヒアリング対象とか,審議の対象が明確になってきたところで,もっとこういうことも付け加えてはどうかというふうな御提案をいただければ,それはまだ十分に柔軟に対応できる余地はあるわけですね。 ○佐藤幹事 はい。 ○鎌田部会長 青山委員お願いします。 ○青山委員 そのヒアリングですけれども,そのヒアリングでここで話していただく方にも,我々の問題関心を十分に御理解いただいた上で,話していただきたいと思います。民法の成年年齢ということで,こういうことが問題になっているということを一応理解していただかないと,お酒やたばこの年齢の話ばかりされても困るんではないだろうかというふうに思います。   余り縛るつもりはありませんけれども,一応,その問題意識ということを十分御理解いただいたほうがよいのではないだろうかと思います。 ○鎌田部会長 分かりやすい問題のようでいて,実はどこに本当に問題があるのかというのは,なかなか一般に十分に理解した上で議論していただけるかという不安があることも確かですので,事務局はその点御苦労ですけれども,十分御配慮をお願いしたいと思います。   また,ヒアリングの対象者として是非こういう分野の方の話も聞くべきではないかというふうな御提案がございましたら,お出しいただければと思いますけれども。   今でなくてもいいですよね。事務局にいろいろとお知恵をお貸しいただければよろしいかと思いますし,今からもう何回も先まで中身がすぐに決まってしまうわけではありませんから,次回にでもまた御提案をいただくというふうなことで,柔軟に対応ができていくと思いますので,是非ともよろしく御検討のほどお願いいたします。   出澤委員お願いします。 ○出澤委員 先ほど,具体的な成年年齢を引き下げることによって,どんな具体的な問題が生じるかと,もう少しその具体的な問題,先ほどの例えば児童福祉法とか,そういうような問題,確かにここの検討課題ではないかもしれませんけれども,やはり民法という基本となる法律に,成年は幾つであると書かれると,どうしてもそれが事実上大きな影響を与えるということがありますので,どんな分野を検討する必要があるのか,消費者問題もそうですけれども,やはりここのところはきちんと確認しておく必要があるのではないかと思います。もう少し具体的にですね。   それから,統計上のことなんですが,例えば国民生活センターで,現在の未成年者の相談件数とか,相談内容とか,また若年者,今は未成年だから何とか悪質商法から助かっているという面もあると思います。ですから,成人になって20歳,今の成人ですけれども,20歳になってからこれだけ件数が多いんですよというような,何かそういう対象者年齢18歳から20歳,それから20歳から若年の23歳なり,24歳,25歳なり,そういうところの少しきめ細かな資料をいただけないかと思います。 ○佐藤幹事 今のお話しにありましたうちの,消費者問題でどのくらい件数があるかにつきましては,国民生活センターの方にお越しいただいて,そこら辺の統計的なものも出していただくことを考えております。   それで,ほかの分野についてはどの程度というお話がございましたが,まずこれは民法の関係で議論していただくので,その関係で影響する分野につきましてはもちろん検討はいたしますが,今の段階ではどこまでということまではちょっと申し上げられないということで,今日先ほど論点で御説明した限りで影響してくるんだろうと。その具体的な中身で,消費者問題以外に何があるのかというのは,民法上の観点では検討いたしますが,事実上,影響があるものすべてということになりますと,やはり民法だけではできないところはできないということで申し上げざるを得ないということですので,御容赦願いたいと思います。 ○鎌田部会長 ほかによろしゅうございますか。   それでは,本日の審議はこの程度にさせていただきまして,事務局に次回の議事日程等についての御説明をいただきたいと思います。 ○佐藤幹事 どうもお疲れさまでした。   次回の議事日程につきまして御連絡いたします。次回の日程は,日時としましては来月15日火曜日,時間は本日と同様に,午後1時30分から午後4時30分までを予定しております。場所は本日と同じ法務省20階の第1会議室を予定しております。   次回は,教育関係者からのヒアリングということで,当部会の委員であります氷海委員,国際基督教大学教養学部の藤田英典教授,そして,都立江東商業高校の本多吉則校長の3名からのヒアリングを実施することを予定しております。 ○鎌田部会長 それでは,本日の審議はこれで終了といたします。   本日は御熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。 -了-