法制審議会 第156回会議 議事録 第1 日 時  平成20年3月26日(水)   自 午後1時30分                         至 午後3時14分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  法制審議会における議事録の作成方法等について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 (開会宣言の後,法務大臣から次のようにあいさつがあった。) ● 法制審議会第156回会議の開催に当たり,一言ごあいさつ申し上げます。   本日の会議は急遽開催されることとなりましたが,委員の皆様方におかれましては,公私共に御多用中のところ御出席をいただき,誠にありがとうございます。また,この機会に,皆様方の日ごろの御尽力に対し,厚く御礼を申し上げます。   さて,本日は,法制審議会における議事録の作成方法等について御審議をいただくためにお集まりいただいたものと承知しております。   法制審議会の議事録につきましては,これまで発言者名及びプライバシーに関する事項を除いた議事録を作成し,これを公開してきたところでございます。   ところで,先の第155回会議において諮問いたしました民法の成年年齢の引下げの当否に関する諮問第84号については,国民的な大議論が期待される極めて重大な問題であることから,審議の内容や経過については,できる限り分かりやすく,国民的な議論に資するような形で公開していく必要性が特に高いのではないかと考え,一律に発言者名を削った議事録を作成することについては,法制審議会の方で慎重に検討していただけると有り難い旨の発言をさせていただきました。   もとより,法制審議会は,法務大臣の諮問機関でございますが,議事録の作成の在り方を含め,議事に関する事項については,法制審議会において御決定いただくべきものでございます。したがって,法務大臣である私が開会に当たり,これ以上内容に立ち入ったあいさつをすることは差し控えることといたしますが,この際,今後の議事録の作成・公開の在り方等について,十分に御検討いただき,新たな指針を御決定いただければと思う次第でございます。   それでは,どうぞよろしくお願い申し上げます。 (法務大臣の退席後,引き続き,本日の議題につき次のように審議が進められた。) ● それでは,本日の審議に入りたいと思います。   本日の議題は,法制審議会における議事録の作成方法等についてでございます。   通常でありますと,諮問事項に関する報告,あるいは新規の諮問事項について御審議いただいておりますが,今回については,議事録の作成方法という当審議会の在り方について御審議をいただきたく,急遽,御参集をお願いした次第でございます。   この議題につきましては,法制審議会の性格や特殊性に加えまして,これまでの経緯や情報公開の流れ,また,法制審議会における審議状況に対する国民の関心にどうこたえていくかという点などを総合的に勘案する必要がある重要な問題であると認識しておりますので,どうぞ慎重な御審議をよろしくお願いしたいと思います。   それでは,早速,審議に入りたいと思います。   まず,現在の法制審議会における議事録の作成方法等につきまして,これまでの経緯や最近の動向などにつきまして,事務当局から説明をお願いします。 ● それでは,法制審議会における議事録の作成方法についての経緯と現状について,最近の動向も含めて御説明を申し上げます。   まず,規定上の説明をさせていただきますが,法制審議会の組織や議事の基本的事項を定める「法制審議会令」という政令がございまして,「審議会の議事及び部会に関し必要な事項は,審議会が定める。」と規定されております。この規定に基づきまして法制審議会が定めた細則である「法制審議会議事規則」というものがあり,この議事規則においては,「会議は公開しない」ということと,「議事録は幹事が作成する」ということが定められておりましたが,その議事録の作成方法の詳細や,議事録の公開の取扱いに関する明文の規定はございませんでした。この状況は以前から今日まで同様でございます。   このような規定の趣旨,つまり会議自体の非公開という趣旨に基づきまして,従来は議事録それ自体も非公開となっておりました。   しかしながら,平成10年7月の法制審議会第124回会議におきまして,法制審議会改革の一環といたしまして,会議や議事録の公開の在り方について審議され,その結果,行政改革や情報公開の動向を考慮いたしまして,会議自体は公開いたしませんが,「発言者名及びプライバシーを侵害するおそれのある事項を除いた議事録を作成して,これを公開する」ということが決定されました。この決定に基づきまして,以後今日まで,総会・部会ともにそのような議事録を作成し,公開しているところでございます。   その後の経緯について補足いたしますと,平成15年4月に開催された刑事法(ハイテク犯罪関係)部会におきまして,この部会の委員から議事録をいわゆる顕名方式に改めることについて御提案があり,同部会での議論を経て,総会に報告して検討していただくということになりました。そして,平成15年9月に開催された法制審議会第141回会議におきまして,同部会の部会長から,議事録の作成方法に関し,一部の委員から顕名化すべきであるという意見があり,これに反対の意見もあったという旨の議論の状況が総会に報告されました。   その際,同総会におきましては,同部会における議論の内容や,他の部会において同種の要望が特に認められないことなども勘案した結果,顕名化に賛成の意見が大勢を占めるには至らなかったことから,総会としては,刑事法部会でそのような意見があったということを認識するにとどめ,従来どおりの議事録の取扱いとすることが確認されたところでございます。   その後も幾つかの刑事法系の部会において,部会の委員から顕名化すべきであるという意見が表明されていたという経緯がございます。   続いて,最近の動きについて,時系列に沿って御説明申し上げます。   まず,本年2月13日に開催された法制審議会第155回会議におきまして,成年年齢の引下げの当否に関する諮問第84号を調査審議する「民法成年年齢部会」の設置が決定されたところでありますが,この諮問につきましては,かねてから国民の関心度が極めて高く,新聞等のマスコミにおいて広く報道がされました。   その後,3月7日の法務大臣記者会見におきまして,法務大臣から,「成年年齢の審議については国民的な大議論が期待されているから,発言者名を一律に非公開としている現在の取扱いについて,審議の課題によってはこれを公にすることができないものか,法制審議会で慎重に議論してほしい。」旨の発言があったところでございまして,この発言も新聞等で大きく報じられたところでございます。   この法務大臣発言の4日後に当たる3月11日に民法成年年齢部会第1回会議が開催されたわけでございますが,この部会におきましても,部会の議事録の作成方法が議論され,同部会の議事録は,発言者名を明らかにするのが相当であるということで意見が一致し,今後,法制審議会総会において認められるのであれば,第1回会議から発言者の氏名を明らかにした議事録を作成し,公開することが相当ということで意見がまとまったところでございます。   以上が,最近の動きをも含めた議事録作成に関する経緯と現状でございます。 ● どうもありがとうございました。   それでは,ただいまの事務当局からの御説明につきまして,御質問がございましたら御発言をお願いしたいと思います。御意見につきましては,御質問のあとに承りたいと思います。   ○○委員。 ● 法制審議会,特に部会の議事録に,発言者名を顕名にするということになりますと,最初に思い出しますのは,明治時代の法典調査会の議事録でありまして,そこには発言者の名前が書いてあり,それが100年たっても引用されるわけです。学者が発言を一言一句取り上げるわけですね。   だれが発言して,その結果条文がこうなったというのが分かるのは悪いことではないと思うのですが,そうなりますと,やはり公表する前に確認させてほしいという話が出てくると思うわけです。   その辺は,どうなるのでしょうか。 ● 今の点ですけれども,これからまさに議論をしていただいて,仮に発言者名が公開されるという形で議事録を作るということになりました場合には,他の審議会等でもそうですけれども,発言者に必ず内容の確認をしていただく機会を設けた上で,内容を確定していくことになるのだろうと思っておりますので,そういう前提でこれから御議論いただければと思います。 ● よろしゅうございますか。 どうぞ,○○委員。 ● 法制審議会のほかにも,いろいろな審議会がございますけれども,今回の議題である顕名・非顕名に関して,具体的にどういう運用がされているのか,教えていただければと思います。 ● それでは,他省庁が所管する審議会等における議事録の作成方法等について御説明申し上げます。 あらかじめお断りしておかなければなりませんが,各審議会等と申しましても,我が国には,国の審議会として各省庁が所管する相当数の審議会がございますほか,名前は審議会ではなくて,各種委員会とか運営会議,検討会といったものが政府の各省庁で設置されていることもございまして,その数も非常に多くなっております。 各会議体ごとにその役割,検討事項や会議体の規模なども千差万別でございますし,そのすべての審議会等について,短時間で議事録に関する正確な調査を実施し,これを取りまとめることは困難でございました。 したがって,今回は,各省庁のホームページに掲載されている審議会等の議事録に可能な限りアクセスした調査結果にすぎないことをあらかじめお断りさせていただきます。 調査に当たりましては,主に公開されている議事録における発言者の氏名に関する取扱いを調査いたしましたけれども,実際のところ,我が国の審議会等は,いわゆる総会のみで調査審議を行うものは少なく,ほとんどの審議会等には,部会,専門委員会,分科会あるいはワーキンググループといった下部機関が設置されているようでございます。この点は,法制審議会においても同様でございますので,今回は各審議会の総会のみではなく,部会等の下部機関についても可能な限り調査いたしました。 そのように限られた範囲での調査結果ではありますけれども,いわゆる総会・親会に当たるものにつきましては,顕名の議事録を作成しているところが多いように見受けられました。 その一方で,いわゆる総会は顕名でありながら,部会等の下部機関や分科会,ワーキンググループは非顕名としているという会議体もございました。 もとより,各審議会ごとに設置目的・役割,構成員の属性,そこで出される結論の法的な位置付けが異なりますし,顕名又は非顕名とする理由を調査したわけではありませんので,これ以上の情報を御報告することは困難ですけれども,そもそも民事・刑事の基本法制について審議するという特質を有する法制審議会と単純に比較することもできないということもございます。 ● ほかに質問はいかがでしょうか。 どうぞ,○○委員。 ● 第124回総会において,非顕名で公開するという決定がなされているわけですけれども,そのときにどういう議論があり,なぜこの段階で非顕名で公開ということになったのか。分かる範囲内でお話しいただければと思います。 ● 10年前の第124回会議で,先ほど私が経緯で御説明したような形で御決定がされたわけですけれども,そのときに非顕名で議事録を作成して公開するということになった一番中心的な理由は,やはり法制審議会の審議内容の中には,発言者名が公開されると自由な発言ができない,あるいはできにくいというような事項も少なからずあるだろうと思うのです。そうなると,審議会の本来の目的である民事・刑事の基本法制について十分な審議をするという一番の眼目が十分に果たされないおそれがあるので,自由闊達な議論の場を確保するという観点から発言者名は伏せた上で,しかし発言内容は公開しようということになったと承知しております。 ● ほかに何か御質問ございますでしょうか。   それでは,御質問がなければ,御意見を賜りたいと思います。   非顕名のままにするか,あるいは顕名にするか,あるいはどういう条件かというようなことについて,御自由に御発言をいただきたいと思います。   どうぞ,○○委員。 ● 法制審議会に出席していて感じることの一つは,だれかが質問された場合に,答えがほかの省庁よりゆっくりしか出てこない,ないしは余り出てこないというか,検討するというのが多いような気がします。この点は公開することとはまた次元が違う問題なのですが,公開であろうが,公開でなかろうが,法制審議会で質問が出たときは,こんなふうに考えているけれども,別の議論もあるとか,今検討中であるとか,何かもうちょっと理由が明らかになった方が,審議としてはレベルがアップするのではないかと思うのです。   公開にするのであれば,このやり取りが非常に常識があって理の通っている理由がある,だからこうだという感じのやり取りが公表されるのならいいけれども,ただ反対だ,賛成だというだけで何かするなら余り意味がないかなとも思うのです。公開か公開ではないかという前に,そういうところについても何か質問とか意見とかをハンドルするときの基準のようなものについてまず御一考をお願いするというようなことがあったら,公開するというのもいいかなと思うのです。   公開したら明々白々と法制審議会というのはすごいねという感じにするように,議論の中身が分かるようにするというのは,それでいい法律を作る,こういう形でより大きな正義を実現するんだという感じの議論にできるだけ,質問と答え,いろいろな議論という感じにしていく方向に行ったら,ものすごい効果があって,法律をつくる大きな土台となっている法務省の評判も上がるのではないかと思うのです。 ● ただいま○○委員から非常に一般的なお話を承りまして,これは公開すればもちろんでございますけれども,公開しなくてもそれが望ましいという議論の仕方について御注文をいただいきました。   この点について,私自身も異論があるわけではございません。それで今日は,今の○○委員のような意見も含めまして,まず,委員の皆様方から,議事録の作成方法の在り方について,基本的な方向性,あるいはそこで考慮すべき要素などにつきまして御意見を承り,そして論点をある程度絞りながら,さらに細かな議論に進んでいきたいと思います。   せっかくの機会でもございますので,幅広い意見をいただいた上で,結論が出せれば非常に望ましいというふうに思っておりますので,できれば委員の皆様全員の方から御意見を賜れば,大変有り難いと思っておりますが,いかがでございますでしょうか。   ○○委員。 ● 先に質問をよろしいでしょうか。   大臣の御指摘にある,国民的な大議論を期待するということと,一律に発言者名を削った議事録を作成することについてもう一度再考しろということの因果関係が少し分かりにくいというのが正直なところなんです。   国民的な議論ではなくて,法制審議会でも情報公開という大きな流れを徹底しなさいというふうに理解してよろしいのでしょうか。   国民的な大議論を期待されるということになった場合には,○○先生の御議論も国民をもすべてインボルブして,大議論にということと。だからといって委員の発言者名を明記したから大議論になるかという,この関係もよく分からないのです。要するに,何のために我々はこの発言者名を公開するのか,しないのかという目的ですよね。そこについてきちんと理解を共通に持っておくことが重要なのではないかなということで,ちょっとお教えいただければと思うのですが。 ● それでは,私の方から御説明しますが,もとより大臣御自身の御発言について,私がこうであると言うわけにはいかないので,推測しているところを申し上げるわけですけれども,民法の成年年齢を18歳に引き下げるかどうかというのは,ほかの諮問事項と比べても,とりわけ国民の社会生活,法律の生活に与える影響が大きいので,法制審議会で議論をするのと並行して,国民の中でもさまざまな議論をしていただいて,その大勢の多きところで言えば,国民の法意識は現行制度の位置を支持するのか,あるいは引下げを支持するのかということで決まる要素が相当大きな,特殊な問題だろうということです。その国民的な大議論を期待するということと,発言者名を議事録で公開することの関係ですけれども,民法成年年齢部会には法律の民法の専門家のみならず,さまざまな分野の方,マスコミの方であるとか,教育者の方であるとか,心理学者の方であるとか,それぞれの専門的な知見や立場で,心理学の専門の方がこういう意見を述べられた,教育関係者の立場の方がこういう意見を述べられたということも,公開されることによって,国民的な議論,つまり,法制審の外での一般国民の皆さんの議論に,その発言者がだれであるかということが大いに資する情報であろうということで,国民的な大議論を期待すると。これは法務省全体のスタンスですけれども,どういう立場の方がどういう意見を述べたということまで,審議の過程を公開することによって,議論を活発にしたいというのが,恐らく大臣の思いだと思います。   しかし,これは一つのきっかけでして,ルールを決めてから10年ほど経ちますが,この10年間には情報公開法もできましたし,一般的な意味でも行政の透明化という要請は非常に高まってきた10年間だと思います。   したがって,これを一つの契機として,法制審議会の議事録の発言者名を非顕名にしていることの当否について,もう一度考えてもらえないかというのが,最終的な大臣の御発言の,あるいは御要望の趣旨だろうと思います。   我々はこのように理解して,民法成年年齢部会の発言者名のみをどうするかということではなくて,それをきっかけにこの10年間のいろいろな時代の変化も踏まえた,新たな基準と先ほど大臣は言っておられましたが,新たなルールがあってしかるべきではないかという問題意識から本日の総会に至ったということだと思います。 ● 今のような御趣旨ならば,いろいろな立場からの意見ということで,発言者名のある方が情報が豊かなわけであり,より情報としては上質になることから,名前を明記するということは非常にこの部会に関して効果があると。そういう意味ではプラスに評価したいと思います。   ただし,やはり部会によっていろいろな事情があり,逆に名前があることによって,議論が阻害されるというような場合もないとはいえないわけですから,明記をすることが情報公開にプラスになる場合と,そうではない場合はやはりきちんと仕分けをするという何らかの手段を担保することを前提にして,今回に関しては部会の議論というのは,公開にすることに賛成です。 ● ほかの方の御意見を承ります。   どうぞ,○○委員。 ● 議論の進め方について,一つお願いなんですけれども,総会の議事録を顕名にするのと,部会の議事録を顕名にするのとは,ちょっといろいろ事情が違うのではないかと思います。   私の推測では,総会の議事録を顕名にすることについては,そう抵抗がないのではないかと思うのですけれども,部会については,案件によっては大変微妙な問題点がいろいろございますので,そう一概に顕名というわけにはいかない。   一律に決めていいのかどうかということがありますので,まず総会での原則と部会での原則は変わってもいいのかどうかという,その辺の議論から進めてもらいたいと思うのですが,いかがでしょう。 ● それも含めて,今,議論をお願いしているわけですが,法制審議会の規則は,総会の規則がそのまま部会にも適用されるということになっておりますので,総会でどうするか,部会でどうするか,それぞれ違っても問題はないのかですね。それについても併せて御議論いただければと思います。 ● 部会についてはむしろ,部会長にその都度任せて運用していくのがいいのではないかと思います。 ● 御意見として承ります。   どうぞ,○○委員。 ● 今回の大臣発言の御趣旨というのは,大変適切なものであると私自身受け止めております。   先ほどいろいろ事務方からも御説明がありましたような,この情報公開の流れというのは,これはもう当然の流れだというふうに思いますし,そういう観点から,やはりこの際こういう議事録についても,やはり基本原則として公開することでよろしいのではないかというふうに思うわけです。   ただ,もちろん総会で,ましてや今のお話でも出ました部会などで,また,テーマによって,公開することにより,当事者,あるいは関係者の間に問題が生じる場合ことが当然あると思います。そういうものについては,やはり原則公開としつつ,きちんと個別事例をもとに,これは発言者の名を公開する,あるいはこれはしないということをきちんと判断していく,そういう何らかのルールみたいなものが確立されていれば,よろしいのではないかと思うわけです。   今回,大臣の御趣旨は,今も御説明もありましたように,民法,特に成年年齢という先ほどのお話のように広く社会に大変大きな影響を与えるテーマですから,こうしたことをやはり幅広く議論するべきであるというのは,ごく当たり前の御認識だろうと思うわけです。   そういう意味で,この成年年齢部会の方でも発言者を明らかにするのがいいのではないかということで一致されたということでありますけれども,それももっともであるというか,それはそうでしょうというふうに私自身も考えているわけです。   基本的に原則公開というもの基本に据えて,その上でいろいろなあり得る問題についてどうするかということを考える。そういう方向が一つ議論の仕方ではないかなというふうに私は思っております。 ● どうぞ,○○委員。 ● 法制審議会には総会と部会とがあるわけですけれども,分量的に圧倒的に多いのは部会の議事録であると思いますが,この部会の議論というのは,総会の議論と違いまして,ほとんどは厳密な法律論なわけです。それにつきまして顕名にするかどうかということになりますと,先ほど申しましたとおり,顕名にした方がずっと学問的価値が出てくるというふうに思います。ですから,私は,基本的には部会の議事録について顕名とすることに賛成であります。   恐らく,今の議事録は発言者が分かりませんので,余り学者が引用したりしませんけれども,議事録に名前がついていますと必ず引用されるようになります。ですから,ずっと学問的価値が出てきます。   ただ,部会によってはそれが好ましくないこともあるわけで,それこそ戦前には司法学者の中には,テロの脅威にさらされた人はいるわけですから,何が起こるか分かりませんので,その都度の部会の判断で顕名にするかしないか決めるのがよいのではないかと思います。   総会の議事録を顕名にして困るということは,余りないかと思うのですが,これについても,その都度顕名かどうかを判断すればよいのではないかと思っております。 ● ほかに御意見はどうでしょうか。   ○○委員。 ● 今,顕名主義ということでかなりの委員の先生の方が意見を述べられているわけですが,私は従来どおり非顕名でいいのではないかというように考えている者でございます。   その理由の一つとして挙げられますのは,この法制審議会の議論というのは,基本法典,あるいは基本法についての議論を自由闊達の雰囲気の中で,よりよい法律案をつくって,それを答申するという点に,大きなねらいがあるだろうというように考えているからでございます。   やはり自由闊達な議論というのは,ほかからの心理的な圧迫を受けずに,ここで述べるという点も大事ですし,それから,これは部会においても同じだろうと思っております。   それで,先ほど部会によっては,あるいは審議事項によっては別の取扱いもあり得るのではないかということで御指摘を受けております。その点につきまして,特に刑事法に関しては,顕著であると考えております。   と申しますのは,刑事法の場面では犯罪と刑罰の在り方ということを根本的に議論するのが大前提になるわけでございます。その場合に,ほかの民事とかその他の関係では当事者たる地位の代替可能性とある場合には,こちら側の立場に立ち,ある場合には別の立場に立つということがあり得るわけですが,刑事法の場合には,処罰する国家権力と処罰される個人というものが常に対峙する場面でございます。そうしますと,どちらに重点を置くかというのは,最初から必然的に対峙点を包蔵しているわけでございます。   そういった場面で,自由に一定の物事を前提にして発言するという場合に,利害対立が激しいだけに,これに対して反対の立場に立つ者から,実は心理的な攻撃,圧迫,非難,中傷を受けて,個人が孤立して自由な意見が発言できなくなってくるという事態も結構あるように聞いております。   そういったことからしますと,今,我々は委員名は出さないということで自由闊達な議論をしているわけですが,これを個人攻撃という形でさらされますと,そういう事態をおもんぱかって,発言が非常にしにくくなってくるという面もあろうかと思われます。   そうしますと,本来根本的な議論をすべき場において,非難・中傷を避けるがために表層的な議論に終始するという可能性も出てまいりますので,そういった点からしますと,やはり必然的にそういった利害・対立を伴う厳しい対立状況のもとでの審議事項については顕名主義をとると,逆の意味でマイナス面があるのではないだろうかと思うわけです。   もう一つの理由として挙げられますのは,先ほど学者としての意見が100年後も引用されると,あるいはすぐに引用されるかどうかという点も確かにございます。その場合に,我々としては研究成果があり,そしてそれに基づいて著書を出していたり,それから論文を出したりしているわけですが,ただ,個別具体的な問題として,よりよい法律をつくるにはどうするべきかという場合に,自分の過去の学説だけにこだわっておりますと,せっかくいろいろないい議論があるにもかかわらず,さらにいい案を出そうとする場面で,将来,その発言が引用されることをおそれて発言を躊躇する可能性があります。そういった場面で,やはり最終的には立派な法律案をつくるという専門家の立場から意見を述べ合っているわけで,その場面であえて未熟ではあるけれども,ほかの人の発言に触発されて,極端なことを言って,それがまた導火線となって,さらにこういう問題もあるではないかというような形で,どんどん議論が深まって,いい案が出てくるということも十分にあるわけでございます。   そういったことで,常に名前が出ていて,あの人はこんな変なことを言っているんだというような形で,批判を受けるという事態もあり得ることから,やはりまたそこで萎縮してしまって,本来はこの法律案としてはこういうことが望ましいんだけれども,それについては述べられなくなってくるという事態もあり得るのではないかと,そういうように思っております。   それから,ある団体に属している委員が意見を述べる場面であっても,その団体ないし組織の公式な意見と違うことが言いにくいこともあり得ると思うんです。せっかくそこで得られてきた知識,経験,識見,これらを基礎にして委員あるいは幹事になっていただいているのにかかわらず,逆にそれが拘束力を持ってきて心理的に発言できなくなってしまうと。こういう事態もあり得ると思いますので,そういったような問題点についてはやはり非顕名のほうがいいのではないかと考えている次第です。   ただ,今回問題になっております成年年齢の問題については,国民の各生活部門にかかわってまいりますので,幅広い議論が必要だと思います。そういうことで,どの立場の人がどういう意見を言っているのかが一目瞭然であるということであれば,これは非常に理解しやすいだろうということで,この点については私は反対はいたしておりません。   以上でございます。 ● どうぞ,○○委員。 ● 私の意見は,○○先生がおっしゃったのと極めて近いので,簡潔に申し上げたいと思います。   先生がおっしゃいましたように,この法制審議会の一体何が重要なのかというと,やはり自由闊達な議論が何の拘束も受けずにできるということ,そして,その結果よい意見がまとまるということだと思います。もちろん顕名にしても,そういう弊害が全くないということであれば,もちろん顕名にすること自体に反対するものでは全くありませんが,顕名にしたことによって,何か弊害や懸念があるとすれば,やはりこれはちょっと慎重に議論してみないといけないんだろうというふうに思います。   では,どういう懸念があるのかについては,既に○○委員の方から具体的にいろいろ言われてしまったので,それに付け加えることは全くございません。   ただ,いろいろ懸念はあっても,私は別に平気だよという方もいらっしゃると思うんです。しかし,自分はやはり心配だね,嫌だなというような委員がおられる以上はやはり顕名にするということは基本的には妥当ではないんだろうと思っております。   もう既にいろいろな方の議論で出ていますけれども,この法制審議会で審議することというのは,別に利害対立も何もないような問題もあるだろうし,そうではなくて,審議の内容によっては,委員の中にも賛成・反対はあったでしょうし,世間もいろいろ意見があったはずです。   そういう非常に対立のある場面でどういうことが起きてくるかといいますと,まさに今,○○委員がおっしゃいましたように,絶対これは反対だという人たちは,審議会で議論すること自体,不当だ,おかしいぞというふうに言うし,あるいはこういうことを言っている者がいるけれどもけしからんというような話にもなりやすいわけであります。   そういうことを総合して考えると,結論的には顕名にしたときに圧迫感を受けるような委員の方がいらっしゃる以上は,やはり基本的には非顕名にすべきだと。今回の民法成年年齢部会における議論については,例外としてこれを認めることは一向やぶさかではないと思うんですけれども,一般論しては不適切なんだろうなと思っております。 ● どうもありがとうございました。   ほかに,いかがでしょうか。   ○○委員。 ● 基本的には顕名でよいというふうに思います。非顕名の理由も今幾つか出ておりまして,なるほどという点もございますけれども,そもそも私たちがどういう立場で議論するかというのは,それぞれの立場を何か代表しているというよりも,個人の意思を持って議論しているんだという強い意思を持っているんですね。何かの圧力を受けてその意見を代表して代弁することは,やはりすべきではないというふうに基本的には思っています。   ただ,個人的に非常に大きな問題点,ある集団なり,ある個人の人権等について,非常に厳しい問題となるような法案等があった場合に,それをどう処理するか,どう議論するかという点については,その都度議論のときに議題にしたらいかがかと思うのです。   先ほど,圧力が感じられるのかどうかという点で,個人的には,ほとんど圧力を感じない方の性格なのかもしれませんが,感じたとしても,仮にビラがまかれ,その他の行動が議論をする周辺でなされたとしても,物理的に強力な行動が個人的に行われたというような問題はほとんど考えられないのではないか。また,表現の自由の範囲内で,いろいろな行動を起こすということは,やむを得ないというふうに感じて,国民のある意味で立派な法制を議論するわけですから,少し大らかに考えたらいかがかと思います。  したがって,原則は顕名でやっていただいて結構だと思います。   それから,学説等についての議論がちょっと出ましたけれども,私の所属する弁護士会においても,対立意見というのは数多くあります。しかし,議論が対立することも当然にあることを前提として議論しておりますので,そういうことを余り気になさらないで,せっかくいろいろな立場でお力のある方がお集まりなんですから,思い切った形で議論をしていただきたいと,こんなふうに願っているのですが,いかがでしょうか。 ● ほかに御議論ございますでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 私も原則は顕名だと思います。例外として,どんなものがあるのかなと思って,先ほどから考えておりますが,御研究の成果である学説云々だとかは,余り理由にならないのではないかと思うのです。そのような場合にはきちんと御自身の御主張をなさったらいいのではないかなと思います。特に公安・治安関係の問題とかいうのは,若干あるのかなと思ったりもいたしますけれども,いずれにしろ原則は顕名だと思います。   私も幾つかの審議会に出させていただいておりますが,ほとんどの審議会が原則顕名となっているのが実態ではないかなと思います。 ● ほかにございますでしょうか。 ● これはメリットとデメリット両方あると思いますが,今の大きな流れからすると,顕名で議事録を公開するというニーズ,これにはやはり歴史的に見て大きな流れがあるだろうというように思うわけです。   ただ,もちろんこれに伴うマイナスもあるわけでして,一つ目は,私ども法律家,裁判官でも弁護士でも,常に自分の名前といいますか,存在を外部に示して仕事をしておりますから,○○先生は,全然恐怖感を感じたことがないとおっしゃいます。我々裁判官も常に判決をするときは自分の名前を明らかにして判決をしておるわけですから,そういうリスクには平然,慣れておるわけでございます。   しかし,委員の中にはやはりそういう形で個人として自分をさらして仕事をしていない方も何人もおられるわけでして,そういう人たちが仮に顕名といったときに,いろいろな層から,この法制審議会の委員としてふさわしい人を選び得るのかと,やはりある程度勇気が要ることであることは間違いないわけですから,それで選び得るのかということが一つだろうと思います。   二つ目は,やはりここで行う議論というのは,多角的で冷静な議論が保障されないといけないと思うのです。ある問題が起こったときに,何か一つの方向からだけで議論がなされるということは決して好ましいことではない。それに伴うデメリットがきちんとだれかから指摘されるという環境を確保されることも必要であり,心配なことは,そういう少数意見を言うということに対して,もちろん先ほどのような直接的な人身攻撃をやるという問題ではなくて,例えばメディアによってでも,非常にネガティブな反応をされると。これもまた冷静な議論を妨げる一つの契機だろうと思うわけでありまして,そういったこともあれこれ考えなければいけないと思っています。   そういう意味では,特に総会については原則として顕名という方向が必然的にとられるであろうと思います。けれども,多様な人選が確保できるのか,それから,冷静な議論がきちんと保障されるのか,そういう点について,危険性があると判断した場合,それは部会であれ,あるいは総会であっても,場合によって例外的に非顕名という措置をとるということを見ながら進めていくということが必要なのではないかと思っています。 ● ほかにいかがでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 総会については原則顕名でよろしいのではないだろうかと思いますが,部会については,総会より慎重に考えるべきではなかろうかと思うのです。先ほどの刑事,あるいは刑事政策のような問題と,民事,商事のような問題とは,少し性格が違うのではないかというお話もありましたけれども,その中で例えば非顕名にする,顕名にするという判断を例えば部会の部会長にあずけることになると,部会長は,かなり重い責任を負ってくることになるのではないかと思うのです。   そうだとすれば,世の中はかなりスピーディーに動いているとは言いながら,根本の部分についてはそれほど大きい変化はなかろうとも思われるわけです。したがって,とりあえず今回については,総会については顕名を原則にし,必要に応じて議長の判断で非顕名ということはあり得ると思います。   ただし,部会についてはもう少し慎重に考え,例えば原則は非顕名とし,先ほどの成年年齢部会のように,総意で顕名にしようというような合意があれば,顕名にすることはやぶさかではないという対応をし,少し推移を見ながらやっていくという方がよろしいのではないかと考えております。 ● ほかに何かございますでしょうか。   ○○委員。 ● 先ほどほかの審議会の傾向について事務局の方から説明がありましたが,私の頭に残ったことは,法制審というのは非常にユニークな性格を持った審議会であるということです。それはやはり民事なり,刑事なりの基本的な構成,性格を決め,答申を取りまとめていくところだと思います。この法制審の特色をどのように理解して,もっとアウフヘーベンしていくかというところが,やはり大きなポイントではないかなと思っております。   自由闊達な議論をし,そして多面的な議論をし,さらには双方向な議論をして,できればグローバルな議論をするというところがもっと在るべきだなと思いますし,もっとダイバーシティの高い議論をするということもあるでしょうし,その議論の在り方というところをもう少し進歩した形にするということを念頭において,これはやはり考えた方がいいのではないかなというように思っております。   そこでやはり,法制審の特色はもう皆さんが言われたように,そういうことをすればするほど,はっきりした対立点が出やすいというところではないかなと思いますので,全体の傾向としては顕名ということは非常に正しい方向かと思います。けれども,議長の御判断なりで,非顕名ということもあり得るという形で運用をしていただければと思っております。   部会は,やはりさらに意見の対立なり,いろいろなケースがあるということをまずテーブルに出す場だと思いますので,テーブルに出すに当たっては,まさしく世の中全体の論理では片がつかないところがやはり出てくるのではないかなと思います。   そこを本当にさらけ出して議論をした場合に,顕名でやればやるほど運用ができるのかというのは私はよく分かりませんので,○○委員が言われたように,原則的にはそうした生の議論,現場の議論が出れば出るほど,私は非顕名にした方が,むしろ意見が出るのではないかなと思います。そういう生の議論をそのままディスクローズするということが,本当に国民的な議論にいいのかどうかというのは,またちょっと別の議論があるのではないかなというふうに思っております。結論として,総会は原則顕名で,しかし,非常に鮮明な対立がある場合には非顕名ということがあり得る。それから,部会はどちらかというと,非顕名ということを中心として,なるべく顕名にするということをここで決めていただくという方がいいのではないかと思っております。 ● どうぞ,○○委員。 ● 原則顕名ということでよろしいのではないかと思います。   部会については確かになかなか難しい問題がございますが,これも一応は原則は顕名としつつ,その部会の特色に応じて,非顕名ということが大いにあり得るということでよろしいのではないかと思います。やはりどういうお立場の方が発言されているのかということも併せて議事録が公開されますと,公開された議事録を読む者の立場からしますと,情報量が大変豊富になると思います。   関心のあるテーマについて読みましても,これはどなたの御意見なのかなと推察しながら読んでいると,もどかしい思いをしたりします。明治時代の法典調査会でも,顕名で議事録がきちんと残されたおかげで,今も私どもは恩恵を受けているわけです。現在の情報公開の流れの中で,もう一度やはり原則は顕名であるという形で議事録を,インターネットで公開するということを決断してよろしいのではないかと思っております。 ● 一通り皆さんの御意見を承りましたので,中間的に論点を整理させていただきます。   今の御議論を聞いておりますと,この問題について考慮すべき基本的な要素といいますのは,よりよい法律案をつくるためには自由闊達な議論が必要であり,そのための環境を整えることがどうしても必要だということです。   しかし,それと同時に,この情報公開の流れの中で議事の透明化を図ることも必要だという二つの主な考え方がある。   この二つの要素をどのように調和していくかということでございますが,一律に顕名とする,あるいは一律に非顕名とするということではなくて,必要に応じて,ある場合には顕名とし,ある場合には非顕名とするという必要があるのではないかということまでは御了解がいただけたのではないかと思います。   総会と部会とで取扱いを変えるべきかどうかという点でありますが,今の御意見では総会は顕名,部会は非顕名でいいのではないかというのが大勢であったかと思いますが,議論のポイントとして,一番目に,総会と部会で取扱いを異にするのか。それから二番目に,顕名と非顕名のどちらを原則とするのか。あるいは,諮問事項ごとに顕名,あるいは非顕名とするのを決めるかどうか。それから,三番目に,顕名とするか,あるいは非顕名とするかをどういうふうに,いつ決めるのか,それは座長,会長なり,部会長に任せていい事項なのかどうかという三つの点があるかと思います。   決定方法については幾つかの御意見が出ましたけれども,必ずしもまだ方向性が出ていないと思いますので,その辺について,ちょっとさらに御議論をいただければと思います。   ○○委員。 ● 顕名とするかどうかの決め方なんですけれども,私は次のように考えます。すなわち,部会を設定すると必ず議事がどこかで出るわけです。そのときに,法務省においてあり得る議論の整理を行い,総会において議論をし,いい結果を出すための討論ができず,質が落ちる危険があるというようなふうに判断されたときのみ,部会の議論を非公開にすることができることとし,最終的には会長がそれを判断するというふうにした方がいいかなと思います。 ● ほかに,顕名・非顕名,原則をどうするかとか,決め方をどうするかという問題について,もし御意見があればお願いいたします。   ○○委員。 ● 総会と部会の関係での問題点でございます。   確かに最終的に法律の成案をどうするかという点については,共通の要素があるわけですが,部会の場合には個別的に専門的な観点から議論をする。それはかなり法技術的な要素も入ってまいりますので,具体的な条文にするに当たって,どういうやり方がいいか,解釈論を踏まえて立法をどう考えていくかという非常に技術的な要素が入ってまいります。その場面と,それからもう一つは利害調整ということで,極端な利害がそこで対立している場面,個別的な,どういう問題状況のもとで,どういう利害がどのように対立し,どのような収束を図るべきかという点の議論がどうしても必要になってくるわけでございます。   それを踏まえた上で,答申案として総会に出されるというプロセスがありますので,かなり総会の場面と部会の場面では,議論の仕方,あるいはその中身,方向性というのがかなり違っているのではないかと考えられるわけであります。   そういったことからしますと,総会は,必ずしも高度な技術的な部分だけの観点からの議論にとらわれるのではなくて,大所高所から全体的な場面での在り方などをベースにして議論がなされますので,部会と総会の扱いは別にしてもいいのではないかと考えております。 ● どうぞ,○○委員。 ● 総会も部会も原則は一致した方が望ましいというのは,理想論であり,現実の問題として見ますと,この部会に出てくる人たちは学者,先生や,それから法曹の専門家だけではなくて,やはり民間からも出ているわけで,みんな覚悟が決まった人ばかりが出てくるわけではないのです。だれが何を言っているかということも大事だけれども,それ以上に大事なことは,必要な議論がなされている,必要な意見がそこに出されているかどうかということであり,それらに重きを置けば,我々民間にいる立場からすると,そういう人たちが自由に発言をして,その専門家の方々とも意見を交わしながらというところが大変大事なわけです。そういう意味では,総会と部会の取扱いは一致させるべきですが,現実の取扱いとしては二つはやはり分けてしかるべきではないのかと考えます。   少なくとも当面は分けて,少し運営してみて,そのときの部会長がどういう例外的な判断をするかというようなことも積み上げた上で,将来一つの方向に持っていくというのが方法の一つではないかと,こんなふうに考えております。 ● ほかに何か御意見ございますでしょうか。   すみません。それでは○○委員,その後,○○委員お願いします。 ● 皆さんの中に,情報公開の要請ということをおっしゃって,それを顕名・非顕名に結び付けておっしゃられていますけれども,今,我々が考えているのは,法制定過程についての情報公開の在り方の問題であります。これは本来,議会,委員会での議論がはっきり主権者である国民に明らかにされて,十分説明がされれば,それは情報公開の要請に十分こたえているということになるわけです。   ただ,日本の法制定過程は,必ずしも議会でいろいろな議論が出されて,制定過程が明らかになるというわけではなくて,政党間の取引でろくに審議されないで制定されることなど,いろいろあります。   法制審議会の議論が明らかになると,法制定過程の事情が非常に明らかになってよろしいと。その意味では,既に議事録が明らかにされていますから,情報公開の制度に十分のっとった運用がなされているというふうに私は理解しています。   顕名・非顕名ということになりますと,ここで今,情報公開制度の基本になっている議会制民主主義の原理に立ち返ってみますと,多数決原理ですべて仕切られているわけです。けれども,法制定過程で最も重要なことは,少数者の意見がどの程度取り込まれて,成案がなされているかどうかということが十分明らかになっていて,その上で議論をされた上で法が制定されている。これが議会制民主主義の要請にかなっていることです。   そこで,少数者の意見が十分に取り込まれているかということについては,先生が議事録を明らかにする,私が議事録を明らかにすること自体も疑問だったと思うんですけれども,顕名にすることは,むしろ今言った趣旨から外れてくるのではないかというふうに思います。   総会については,その少数者意見とか,技術的な問題,微妙な問題ということについてのブレーキがそれほどかからないだろうと思います。だから,その要請の方に譲っていいだろう,だけれども,部会については,部会長にゆだねるべきだと思います。   部会長にゆだねるのは大変だとおっしゃいましたけれども,少数者の意見を尊重するということは,ここの要請にかかわっていますから,部会長はそのことを斟酌して,案件ごとに,これについては非顕名でやりましょうとすればいいのではないかと思います。   部会でも,多数決原理を行ったら,少数者はたまったものではないのです。部会長は議事を仕切る役割をしているのですから,そこでその事情を斟酌して,非顕名という道をとってもいいのではないかというふうに思って先ほど申し上げたわけです。 ● ○○委員。 ● ただいまの御意見とほとんど同じでございまして,総会・部会を分けるかどうかという問題はあるのですが,まず,最初に部会の問題ですが,部会というのは,いろいろな利害対立をどうもんで議論していくかということでありまして,先ほど○○委員がおっしゃいましたように,だれが何を言ったかというようなことよりも,本当に十分意見が出たのかということが大事なわけなのです。そうしますと,やはり意見が言いにくいなというようなふうに感じるという人が一人でもいれば,それは非常にあんばいが悪いことなんだろうというふうに思います。   そういう意味で,非顕名がいいのではないかと思います。しかし,顕名にしてもいいのではないかという案件もありましょう。そのときにどうやって決めるのかは,やはり会長,部会長から委員の方の意見を聴いていただきまして,いや,実は私困るんだよという人がおられれば,よくよくその方の立場を考慮して,その方も自由闊達な意見が言えるようにすべきであり,そこは部会長が決していくんだろうというふうに思います。   これを多数決にすれば,絶えず私は心配だなという人が一人,二人しかいない場合はいつも顕名となるわけでして,それは好ましくないんだろうというふうに思います。   総会についても,非顕名でいいのではないのかなというふうに思っておりますが,強く主張するものではありません。 ● 御議論がまだあれば伺いますが,なければ今まで御議論いただいたところを,私が一応取りまとめさせていただいて,お諮りするということでよろしゅうございますでしょうか。 (異議なしという声あり) ● 今,非常に深い御議論をいただきましたが,総会であれ,部会であれ,法制審議会の審議はよりよい法律案をつくるために,自由闊達な議論がなされる環境が保持されるということは極めて重要な要素であります。   他面,議事の透明化という,言わば公益的要請というものもあり,この両者をどう調和させるのかというのがこの問題であろうと思います。   法制審議会には御存じのように,総会と部会がありまして,それぞれ少し役割が違うわけであります。審議の方法もかなり違っていると思います。具体的に申しますと,まず総会におきましては,法務大臣から諮問を受けて,今後の審議,調査における検討の視点,あるいは留意事項につきまして,包括的な議論をしていただいた上で,その審議事項の内容に応じた部会を設置するのが任務であります。   そして,設置されました部会におきましては,今度は諮問事項の審議にふさわしい法律専門家等の委員が任命された上で,審議事項について専門的,あるいは技術的検討のほか,その審議事項を取り巻く利害の対立をも踏まえた深い議論をして,その利害の調整を尽くした上で,部会案を作成してまいりました。   各方面の利害の調整は,主として部会においてなされていることは御存じのとおりでございます。   その後,部会長から総会に部会案の報告がなされまして,この総会では法律専門家のほか各方面の有識者の方々から構成される委員の間で,さらに大所高所に立った,検証的な,あるいは総括的な議論がなされて,部会案の当否を判断して,最終的にはそれを答申という形でまとめている。これが現在のやり方でございます。   なぜ,こういう仕組みがなされ,総会と部会が設けられているかというのは,最も効率的に,かつ充実した審議をするためには,総会と部会で役割分担をするのが望ましいということから,こういうことになっているわけでございます。   以上のことから考えますと,次のように言えるのではないかというふうに思います。   まず,総会におきましては,議事録に発言者名を記載することによって,審議の充実,あるいは適正が害されるおそれは少なく,むしろ,これによって議事の透明化が図られ,総会における審議及び答申に対する信頼性の確保ということにもつながるというふうに考えられます。   他方,部会におきましては,先ほどから御議論がありますように,その審議事項の内容,性質は千差万別でありますし,その内容いかんによっては,その議事録を顕名とすることによって,さまざまな障害が生じ,自由闊達な議論が阻害されるという弊害の程度というものも,その審議事項ごとに,部会によっては違ってくるのではないかというふうに思います。   したがって,具体的な審議事項を離れて,部会における一般的な扱いをあらかじめ定めておくのは困難ではないかというふうに思われます。   そこで,結論として次のようにすることが妥当ではないかと考えます。   まず,総会につきましては,原則として,発言者名を明らかにした議事録を作成することとしますけれども,会長において,委員の意見を聴いた上で,審議事項の内容,あるいは部会の報告を受けて審議する場合には,その部会の検討状況や,報告内容にかんがみて,発言者名を明らかにすることにより,自由な議論が妨げられるおそれがあると認められる場合には,発言者名を明らかにしない議事録を作成することができることにしてはどうだろうかということでございます。   部会につきましては,これは審議事項ごとに設置されるものでありますから,それぞれの諮問に係る審議事項ごとに,その部会の部会長において,部会委員の意見を聴いた上で,審議事項の内容,発言者名を明らかにすることによって,自由な議論が妨げられるおそれの程度,審議過程の透明化という公益的要請等を考慮して,発言者名を明らかにした議事録を作成することができるという範囲で議事録を顕名とするということにしてはいかがかというふうに思います。   なお,現に顕名とすることによって自由な発言を妨げられるという懸念を有する構成員がいるときは,それを多数決で押し切るということは適当ではないと思われますので,そういう意見にも十分配慮した上で,会長又は部会長が判断するということにしてはいかがかと思います。   お諮りしたいと思います。   よろしゅうございますか。   どうぞ。 ● 部会の件ですが,部会長にそういう取りまとめといいますか,部会員の意見を聴取した上で判断をするというのは,部会長の決め方自体が私はよく分からないのですが,それによって相当程度方向性に左右が出てくるのではないでしょうか。   できれば総会において,この事項については特段の問題が起こり得るかどうかをあらかじめ聴取して,総会で一定程度の制限なり,非顕名の判断をするという方向性は求められないのかどうかと思うんです。部会長の責任といいましても,なかなか難しいような気がいたします。 ● 総会の委員は一名,二名が部会に属していることもありますが,大部分は,部会委員は総会委員でない方が選ばれていると思います。その総会・部会委員の一人一人がどういう状況において,責任を持って発言するかということをそれぞれの部会に任さないで,総会において,この部会の審議は顕名でやってほしいとか,非顕名で結構であるとかいうことは,ややこれは問題ではないかと思います。 ● 今の○○委員の御発言に関してですが,御案内のとおり,総会で部会を作るということを決めてから,その部会のテーマに最適な人を選んでおります。   そうすると,どのような人が選ばれるかというのは,もちろん総会の時点では分からないわけです。その時点で最適の人が選ばれ,フォーラムがやっとできたときに,その皆さんが顕名・非顕名の問題を当該諮問事項との関係で,どうお考えになるかということは,それはやってみなくては分からないわけです。   例えば,これは顕名でやりますということを総会で決めて,それから部会の構成員を募るということになりますと,今までのように,その部会の委員になっていただく方の識見で最もいい人選をするということができるかどうか,つまり,確かに専門かもしれないけれども,顕名ならば入りたくないというような形で少しその人選が変わってしまう可能性もあります。   そういう意味でも実際上,部会の構成員に最善の人を選んできたという今までのやり方がやや阻害されるリスクであるとか,それから,会議体でありながら,自分たちが集まってフォーラムをつくった段階で,そこの点を自分たちで決められなくて,あらかじめ決まっているというのがやや違和感があるというようなあたりが今の御意見で,こちらからするとやや問題があるかなと思った点です。 ● ○○関係官,お願いします。 ● 今日の総会は,大臣のごあいさつから始まりましたけれども,今日は諮問というものはない,そういう意味では異例の審議会であると思います。大臣は顕名の有無について審議して決定してほしいとは言われなかったような気がいたします。大臣がおっしゃったのは,今日はそういうことを議論されると聞いておるというふうに言われたように思います。   この発端が大臣の言葉にあったことは確かですけれども,それを受ける形で先日の民法成年年齢部会が顕名の方針を打ち出されて,そのことについて,総会の承認を得たいということがこの総会が開かれたきっかけではなかっただろうかと思います。   そうだとすれば,本日の会議としては,その民法成年年齢部会の希望を受け入れるかどうか,その点について御決定いただければ一応十分ではないでしょうか。しかし,今後も同じような問題が起こってきますので,各部会で顕名の方針を採択した場合には,総会において通常それを認めるという申合せをするというのはいかがでございましょうか。 ● 少なくとも,民法成年年齢部会が前回顕名にするということを,意見は一致しましたけれども,これはもともと総会がどうするかという判断にかかっておりますから,最小限今日の総会で,民法成年年齢部会はそれでよろしいというふうに決定すれば,最小限の必要は満たすわけでございます。   ただ,せっかくこれだけの議論をして,民法成年年齢部会はそれで結構だということになりますと,ではこの総会の方はどうなるのかと,これから次にまた部会が設定されるかもしれませんけれども,それはどうするのかと。今,継続中の部会はどうするのかということを次の総会の議論にゆだねてしまうと,せっかくのここまでした議論がもったいないという気もします。最小限のところだけではなくて,もし,大方の御意見が一致するようであれば,先ほど私が申し上げたところで取りまとめさせていただければ,この問題については,時間を取らずに決められると思っているわけでございますが,いかがでございますでしょうか。   どうぞ,○○委員。 ● 今,○○会長がおっしゃったことに全面的に賛成です。せっかく議論いたしましたから,今日,先ほどの○○会長の取りまとめのとおりで私は結構だと思います。それから,今,○○先生のおっしゃった,民法の件については,別途決めればいいと思います。 ● ○○委員。 ● ○○会長の御采配で結構ですが,ただ,部会も原則は顕名でということですがいかがでしょうか。   ところで,今日の議論はこれは顕名で議事録をつくられるのですか。 ● それはまた後でお諮りします。   先ほど私が取りまとめさせていただいた内容でよろしいのかどうかということを再度お諮りいたしますけれども,いかがでございますでしょうか。   よろしいでしょうか。   では,そのように決定させていただきます。   どうもありがとうございました。 ● 会長,要望だけよろしいでしょうか。 ● どうぞ。 ● 今のような取りまとめで結構ですが,今後,部会についても原則顕名にすることについて研究していくことを要望します。 ● また,そういう必要があれば考えていただければいいのではないかと思います。   今後の議事録を作成するに当たりまして,実務的に整理しておかなければならない点が何点かございますので,お諮りしたいと思います。   一点目は,総会又は部会における議事録の作成方法に関する議論について,その結論が出るまでの議事録です。総会は原則公開にするというのが今日の結論でございますが,今までの議論についてはどうするか,あるいは,部会でもそういう議論が始まった場合に,その結論が出るまでの議事録の取扱いはどうするかということでございます。これはほかの審議会でも多分そういう扱いかと思われますけれども,一般的に議事録の作成方法に関する議論についての議事録が発言者名を記載して公開されることとなりますと,非顕名にすべきであるという意見を有する方が結果的に議事録が顕名されることを懸念して,率直な発言ができなくなるということがございます。   他の審議会でもそうですけれども,その結論が出るまでの議論は非顕名とする扱いをしておりますので,ここの総会でも,あるいはこれからの部会でも,そういう結論が出るまでの議論は非顕名として取り扱うことが相当だろうと思います。   本日の審議につきましても,今申し上げたような趣旨のほか,皆さまもこれまでどおり非顕名であることを前提として御発言いただいたものと考えられますので,非顕名で作成することとしたいと思います。   二点目は,現在審議中の部会が四つございますが,これらの取扱いについてでございます。   この点につきましては,原則的には現在審議中の部会であっても,本日の決定事項は,本日以降に開催される会議に適用されることとなりますので,今後開催される部会において,本日の決定を踏まえた上で,それ以後の審議,議事録の作成について議論をしていただき,同部会委員の意見を十分聴いた上で,部会長において決定していただくということではどうだろうかというふうに思います。   そのような取扱いでよろしゅうございますでしょうか。 (異議なしという声あり) ● よろしゅうございますか。   それでは,既に終わっている部会について,さかのぼってそれをまた顕名にするということは考えられませんので,今後の扱いということにさせていただきたいと思います。   これが本日お諮りしたい,簡単と言えば,非常に簡単なことですけども,非常に難しい議論につきまして,非常に率直かつ深い議論をしていただいたように思います。これにて終了させたいと思いますが,何かありますか。 ● 最後に少し時間をいただきまして,次回の総会の開催予定について御説明申し上げます。   次回の総会は,本年9月の初旬を予定しております。具体的な日程調整は改めてさせていただきますけれども,9月3日の水曜日から5日の金曜日にかけての3日間,それから予備日として,9月11日の木曜日,12日の金曜日を候補として考えております。   まだ先のことですので,日程が決まり次第,なるべく早く御連絡させていただきますけれども,委員の皆様が9月初旬のころのいろいろな予定をお考えになる際に,今申し上げた5日間のうちどこかに法制審の次回の総会が入るということを御留意いただければと思います。 ● 本日は,年度末の大変お忙しい時期に急遽お集まりいただきまして,熱心な議論をいただいて,本当にありがとうございました。   それでは,これで本日の会議は終了いたします。 -了-