法制審議会民法成年年齢部会 第3回会議 議事録 第1 日 時  平成20年5月13日(火) 自 午後1時30分                       至 午後4時19分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民法の成年年齢の引下げの当否について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○鎌田部会長 予定した時刻がまいりましたので,法制審議会民法成年年齢部会第3回会議を開催いたします。   早速議事に入りますが,まず事務当局から配布されている資料の説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 それでは,事務当局から配布させていただきました資料について御説明させていただきます。   第3回会議のために配布させていただきました資料の目録は,本日,席上に用意させていただきました。部会資料といたしましては,事前に送付させていただきました資料番号12-1と12-2,13-1と13-2,14がございます。参考資料といたしましては,事前に送付させていただきました資料番号12がございます。   まず,部会資料につきまして御説明いたします。   部会資料12は,「ヒアリングをさせていただきたい事項(消費者編)」と題するものでございます。部会資料12-1が国民生活センターに対する質問,部会資料12-2が鎌田弁護士と髙橋弁護士に対する質問でございます。ヒアリングをさせていただく方に応じて質問事項を変えてございます。   なお,部会資料12-1と12-2は,部会資料7の「ヒアリングをさせていただきたい事項(共通編)」とともに,ヒアリングをさせていただきます方々にあらかじめお渡ししてございます。   部会資料13-1と13-2は,本日ヒアリングにお招きしました国民生活センターの島野理事及び河岡統括調査役から頂だいいたしました,「独立行政法人国民生活センターの業務概要」と題する資料と,「契約当事者が18歳から22歳までの消費生活相談」と題する資料でございます。   部会資料14は,同じく本日ヒアリングにお招きしました鎌田弁護士から頂だいいたしました「2004年度相談件数一覧」,「2005年度相談件数一覧」,「2006年度相談件数一覧」表でございます。   部会資料13-1,13-2及び14につきましては,本日のヒアリングの際に使われるものでございます。   続きまして,参考資料につきまして御説明いたします。   参考資料12は,読売新聞社が本年4月12日,13日に実施しました全国世論調査の結果を報道したものでございます。記事によりますと,全国の有権者3,000人を対象として,個別に訪問・面接をし,1,753人から回答が得られたとのことで,回答者のうち民法が定める成年年齢を現在の20歳から18歳に引き下げることに賛成と答えた人が36パーセント,反対が59パーセントであり,慎重な意見が多かったなどと記載されております。   以上で,配布いたしました資料についての御説明を終了いたします。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは,本日予定をしておりました消費者関係のヒアリングに入りたいと思います。   本日は,独立行政法人国民生活センターの島野康理事と河岡優子統括調査役,弁護士会から鎌田健司弁護士と髙橋温弁護士をお招きしております。これら4名の方に,民法の成年年齢の引下げに関する御意見をお述べいただきまして,その後に質疑応答することを予定しております。御意見をお述べいただきます順番としましては,島野理事と河岡統括調査役,次に鎌田弁護士,最後に髙橋弁護士の順で,4名の発表が終了しました後に,一括して質疑応答をすることとしたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。   それでは,島野理事,よろしくお願いいたします。 ○島野参考人 国民生活センターの理事をしております島野と申します。よろしくお願いします。それから,河岡は,実際に相談を受け付けている相談部というところで,消費者あるいは業者とのあっせんなどを実際に行っている者であります。   まず,部会資料13-1を使用して国民生活センターあるいは消費生活センターの業務について少し説明をいたしまして,それから部会資料13-2の説明をさせていただきたいと思います。   まず,部会資料13-1の「独立行政法人国民生活センターの業務概要」ですが,1ページから御説明いたします。   国民生活センターは独立行政法人であります。そこに図がありますが,何の仕事をしているかといいますと,消費生活情報の収集・提供,それから苦情相談処理,あるいは自動車,おもちゃ,こんにゃくゼリーといったものの商品テストをする。あるいは行政職員に対する研修とか,消費生活相談員に対する研修ということを行っております。   この国民生活センターと兄弟といいますか,都道府県に消費生活センターというのがございます。上下関係は全くございませんで,都道府県,市町村に設置されている消費生活センターが全国に五百数十か所ございますが,そこと連携・協力をしながら,情報の収集をしたり,先ほど申し上げた仕事をしているということであります。この消費生活センターと国民生活センターの違いがなかなかお分かりにならないと思いますが,国民生活センターというのは独立行政法人であることから,一応国の機関,消費生活センターというのは地方公共団体の機関であると御認識いただければと思います。   2ページですが,主な業務としては先ほど申し上げたとおりでありますが,①から③の業務については,東京の高輪の事務所にて,④,⑤については,相模原の事務所にて行っております。   職員数は117名であります。よくマスメディアに登場する機会が多いので,もう少し大きいのかなというふうな認識があるかもしれません。また,予算規模も30億程度であります。   3ページにいきますと,今回は消費者トラブルというのが中心だと思いますので,相談のことをちょっと申し上げますと,消費者問題とは,消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力等の格差に起因する消費生活上のトラブルのことをいいます。非対称性とかいろんな言い方をされますが,いわゆる悪質商法とか表示・広告に関する問題,商品・サービスの安全性や品質に関する問題というようなものが,この中に入っているということであります。   消費生活相談(苦情)というのはどういうものかというと,消費者とは個人であるというのが消費者契約法の定義になっておりますが,消費者と事業者との間で締結される契約ということの中でトラブルになったものというようなものです。   それから,直接的な契約ということではないかもしれませんが,製造物責任法なんかで言いますと,製品とかそういったことで身体的な被害を受けたもの,あるいは受けそうになったものというようなものが,この苦情の中に入っているということであります。   次のページは,相談処理の中身であります。これは国民生活センターでどういう相談をやっているかと,直接消費者からいろんな苦情や問い合わせに対して処理するというのと,国民生活センターは中核的機能を発揮しなさいとされておりますので,各地の消費生活センターから寄せられる相談を処理しております。各地の消費生活センターで受けきれない,非常に難しいとか,小規模な消費生活センターもございますので,そういったところの相談員からの相談を受けるという,二つの種類があるということであります。   5ページは,そういう中でどのような助言をしているのか,あっせんをしているのかということですので,割愛いたします。   7ページの相談処理状況を見ていただきますと,2006年度に,全国の消費生活センターと国民生活センターの両方を合わせますと111万件の苦情が寄せられているということであります。   9ページに相談苦情の件数がございます。1984年はまだ5万件であったのが,今現在は,111万件ということであります。2004年度の192万件というのは,架空請求事件というのがしょうけつを極めたようなときがありまして,こういったものが異常に多かったということで,200万件近くあったんですが,今は少し減少しまして,111万件になったということです。ただ,件数としては,10年前に比べても3倍ぐらいになっているというところであります。   また7ページに戻りまして,その111万件の中でどういう処理がなされているかと申しますと,その88パーセントが助言であります。消費者に対して助言をする。これも簡単な助言から,いろんな判例等も見ながら,こういうのでよろしいのではないかというようなことも含めて助言をするというのがあります。   あっせんというのは,事業者との間に入ってあっせん処理をするわけですが,6万3,000件ということで,5.7パーセントであります。あっせんで解決をしたのが5.3パーセント,あっせん不調は0.4パーセントということで,不調になるものもかなりあるということの御紹介であります。   10ページにいきまして,全体的な主な特徴はどんなものかというと,先ほど申し上げましたように,総件数としてはかなり多い。依然として高水準だということであります。ただ,この110万件が多いか少ないかというのはなかなか難しいところでありますが,消費生活センターとか国民生活センターに持ち込まれる苦情の率は4パーセントぐらいなんですね。苦情を持った人,サービスに不満を持った人の4パーセントぐらいがこの数だということですから,その裏側に暗数としては相当な数があるのではないかということであります。   契約当事者としては,高齢化になっているせいもありますし,高齢者をねらっているというようなものもなくはないので,高齢者の伸び率が高いということであります。あとは,架空請求とかそういったことがありますということで,ほとんど,エのところに書いてあるように,取引に関するものが多くて,9割が取引関係であります。「契約取引」と言っていますが,そういうものであります。オというところで,「店舗外販売」,訪販とか電話勧誘とか通信販売というようなことがありますが,それがかなり多いということであります。   11ページになりますが,全国の消費生活センターは,オンラインで国民生活センターと結ばれておりまして,相談情報がどんどん集積されていまして,それに対して中央省庁あるいは国会等から資料要求が来たり,それに対して我々の方からこの辺に欠缺があるのではないかというようなことで,いろんな面で要望したりするというようなことを業務としてやっているわけです。   12ページは,あっせん不調の事例ですから,これは割愛いたします。   14ページにいきます。国民生活センターは,あっせんをするわけですけれども,あっせん不調となることも,なくはないということで,限界をかなり感じております。交渉の入口での問題,電話をしてもなかなか担当者が出ないということもあるわけです。   交渉過程の問題を見ますと,来訪要請に応じない。消費者の申入れが本当なんだろか,事業者はどうなんだろうかという形で,同席してやる場合がありますが,そういったときに来訪要請に応じないというようなことがあります。   それから,三番目には,合意はしたんだけれども履行しているのかしていないのかよく分からない。返金しますよという合意をしても,なかなか履行しないということがある。   そういうことで,消費者被害を救済して同種案件の処理の指針とするためにADRが必要なのではないかということで,次のページ,これは本日の主題とはかなりかけ離れるかもしれませんけれども,国民生活センター法の改正がなされました。この5月2日に公布されまして,多分,来年の4月1日から施行という形になると思いますが,4月25日,参議院の本会議において全会一致という形でADRを国民生活センター法の中に組み込むという内容の法の改正がなされました。それは,先ほど申し上げましたように,消費者紛争をめぐる事情としては,非常に内容も複雑化,高度化,多様化,私はそれに悪質化というのがあるのではないかと思いますが,そういうことになっているということで,件数も非常に増えてきたということであります。裁判にはなかなかなじまないというところが消費者紛争の特性にあるのではないかと。被害金額は少額ということもあるということで,改正をしたわけです。それが16ページに簡単に紹介してあります。   17ページ以降は今回とは関係ございませんので,説明を略させていただきます。   そこで,ようやく本論ですが,全国の消費生活センターに寄せられる18歳から22歳までの若年者に関する消費者相談はどうなっているかということであります。   部会資料13-2を見ていただきますと,2ページが,2002年度から5年間の年度別の相談件数の推移でございます。2007年度は,まだ最終的な集計がなっていませんが,2007年度のも一応書いておきました。一番左が18歳,次が19歳,20歳,21歳,22歳ということで,20歳になるとぽんと上がっているのが見られるのではないかということであります。 絶対数は減っております。というのは,先ほどちょっと申し上げましたけれども,以前は架空請求事件が非常に多かったためだと考えております。   3ページも同じことなんですが,全体から言いますと,20歳になるとぽんと多くなっているとはいっても,相談の全体から見るとパーセンテージはそんなに高くはない。70歳以上の高齢者の方が非常に多くなってきたということから見ると,さほど多くはないということが見てとれると思います。   4ページは契約当事者が18,19歳である相談の傾向であります。今申し上げましたように,全体的には相談は減少傾向にあるということであります。   それぞれ何が多いかというのも御質問にあったような気がしますけれども,18歳については,電話情報提供サービスということで,携帯電話等を利用した情報提供サービス,オンライン情報サービス,そういう関係のものが多い。これは19歳も同じようであります。   7ページにまいりますが,20歳ですとフリーローンとかサラ金などの相談も出てくるということであります。   8ページは,18歳から22歳までの人がどのような販売形態において契約したかということを書いております。通信販売などがかなり多いのが見てとれるのではないかと思います。   それから,9ページになりますが,契約に当たって信用供与を受けたかと,この辺が今回の主題と関係するのではないかと思います。信用供与とは,クレジット販売信用のことでありますが,18歳の場合は3,175件で4.1パーセント,19歳は7,778件,8.3パーセント,それが20歳になりますと,5万1,887件ということで,26.5パーセントという形になっております。販売信用に関するところが20歳と20歳以下とかなり変化があるのではないかということが見てとれるのではないかと思います。   10ページは,契約購入金額であります。当然といいますか,20歳以上になるとだんだん金額が高くなるということでありますが,2007年度でありますが,相談全体の契約購入金額は,125万円というところから見ると,やはり若年層についてはやや低額であるということは言えると思います。   11ページで,その辺を全体的に総括しますと,18,19歳の相談は,携帯電話やパソコンによるインターネット関連サービスに集中しております。20歳を超えるとインターネット関連サービスの相談が減少して,ネックレス,これはデート商法みたいなものがあるわけですけれども,賃貸アパートなどといった相談が寄せられ始めるということです。18,19歳の相談では通信販売が多くて,20歳以上だと店舗販売や訪問販売の割合が,18,19歳よりもやや高いということであります。それから,先ほど申し上げましたように,20歳を超えると販売信用,いわゆるクレジット契約の割合が高くなるということ,あるいは,20歳を超えると平均契約金額がやや高くなるということが見てとれるということであります。   相談事例の具体的なものとしては,いっぱいあるわけであります。   12ページになりますが,懸賞サイトに登録したら,出会い系サイトから請求されたというようなものもある。携帯電話で懸賞サイトに登録したところ,出会い系サイトからメールが届くようになり,相手の悩み事を聞くようになった。しばらく無料だったが有料になり,お金がないので支払えないと断ったけれども云々と,こういうようなものがあります。   13ページでは,50万円という高額なパケット料金が請求されたという事例を紹介しております。   14ページは,新聞の訪問販売ということで,新聞の訪問販売というのはずっと昔からかなり多くあるわけでありますが,こういうものもあります。   15ページになりますと,インターネットから消費者金融に借金の申込みをして,督促状が届き云々ということで,父親からの相談です。   16ページだと,キャッチセールスと言ったりしますけれども,街頭で声をかけられて,断ったがしつこく販売員がついてきて,店舗に連れていかれて3時間も勧誘されたということで,クレジットの申込書の年収に150万円と書くように言われたけれども云々と,そういうものも寄せられています。   17ページは,高額な包茎手術ということで,新聞の広告には10万円と書かれていたんだけれども,手術台の上に登ったところで,はい幾ら,はい幾らと,結果的には非常に高くなってしまったと。そういうようなものが代表的といいますか,そういう事例が寄せられたということであります。   部会資料12-1,今回のヒアリング事項についてでございますが,一番目,二番目の質問事項は今申し上げてきたと思います。   三番目の質問事項でございますが,星野英一先生の「民法のすすめ」だったかと思いますが,最大の消費者保護法は民法であるというようなことが書かれていたような記憶がありますけれども,我々の現場ではこれを前面に立てて云々というのはあまりないのではないかと思うのです。業法で不実告知だとか特定商取引法という法律がありますが,それでの解決というのが,業法ですので,かなりスパスパッとできると。あるいは書面を交付していないとか書面の不備だとか,そういったところが主でありまして,相談の現場であまり民法を使うというのはないような気がしております。ただ,先ほど見ていただいたように,20歳になると急にぽんと多くなるということは,やはりこれがかなり強い抑止力になっているのではないかということは考えられると思います。   四番目の質問事項である,若年者が消費生活においてトラブルに巻き込まれないようにするためには,どのようなことが大事であるとお考えですか,家庭や学校教育等でしておくべきであると思われる事項はありますかということなんですが,多重債務の問題だとか契約の問題というのは,かなり若いとき,小さいときから,学校教育の中で少しでも入っていくべきだと思うのです。こんなトラブルに巻き込まれてしまうのかなというのがはっきり言ってあるわけです。普通の人だとなかなか理解できないというんですが,消費者トラブルは両者の合意で契約をしているのではなく,「契約をさせられた」というのが一つの特徴だと思います。契約をさせられた,させられた契約とか,何とかされたというのが消費者問題には非常に多いような気がします。   ですから,学校教育あるいは家庭教育というのは,こういう消費者トラブルをなくすというのに非常に迂遠なようでありますが,しょう径なのではないかと思うわけであります。ただ,いろんな学校教育の中でというと非常に難しい部分もなくはないので,先ほど我々も研修事業もやっているということを申し上げましたが,学校の先生に対する講座などもやっておりますし,出前講座といって,出掛けていって,本当の少人数のところでも講座を実施しているというようなことをやっております。   それから,最後の質問事項でありますが,これは国民生活センターとしてきちんと議論をしてきたわけではありませんし,私の個人的見解でありますが,今現在を見ていますと,18歳に引き下げるというのはにわかに賛成できないなというふうに現場感覚では思います。というのは,20歳になると急にトラブルに巻き込まれる件数も多くなる。そういったところからすると,18歳というと高校生もいるわけでございまして,これをどう考えるかといったときに,消費者トラブルの現場から見れば,18歳というような形で引き下げるというのはあまり賛成ではないということであります。トラブルに引き込まれる可能性が非常に高くなってくるし,低年齢化するということで,更にトラブルが増すという意見を持っております。   以上でございます。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは,次に鎌田弁護士,よろしくお願いいたします。 ○鎌田参考人 弁護士の鎌田と申します。仙台弁護士会に所属しておりまして,今日も仙台からまいりました。   日本弁護士連合会の中では,消費者問題対策委員会という消費者問題を取り扱う委員会がございまして,その中で副委員長をさせていただいております。この消費者問題対策委員会は,多重債務の部会だとかクレジットの部会だとか,いろいろな消費者問題ごとにそれぞれ専門ごとに10個ぐらいの部会があるんですが,私はその中で消費者教育の担当部会の副委員長をやっております。   それでは,早速ですが,ヒアリングの事項ごとにお話をさせていただければと思います。部会資料12-2「ヒアリングをさせていただきたい事項(消費者編2)」に沿ってお話しさせていただきます。   まず,最初のヒアリング項目,ヒアリング対象の弁護士に寄せられる18歳から22歳までの若年者に関する消費者関係事件は年間何件ぐらいあるのか,未成年者に関するものと,それ以外に分けてということ,また,件数は増加しているか,減少しているかということですが,先ほど国民生活センターの島野理事からは詳細に,きちんと統計的なお話がされましたが,私は自分の事件について年齢まで詳細に統計化していないものですから,なかなかきちんとしたお話はできないんですが,昨年,宮城県内で集団詐欺被害事件がございました。その中で多数の若年者が詐欺被害に遭いまして,仙台弁護士会の有志で弁護団を立ち上げて対応したという経験がございましたので,若干その話をさせていただきます。   事案としましては,宮城県内に在住していた成人男性のKという者が,2003年ころから2007年1月ころまでになりますが,20代前半の若者を中心として,消費者金融会社数社から借入れをするアルバイトがあると勧誘をしたわけです。消費者金融から借入れをするアルバイトなんてないんですが,そういうアルバイトがあるんだということで若者を勧誘しまして,消費者金融数社から借入れをさせると。一社当たり10万円から,多いところでは200万円ぐらい借入れをさせるんですね。借入れをした若者に対しては,さらに君の知り合いを紹介してほしいということで,知り合いを紹介させて,連鎖的に被害者を拡大させていったという事案でした。   当然,借入れをするので返済がどうなるのかというのは気になるんですが,被害者に対しては,返済は自分が責任を持って行うんだと。あなた方が借りてきたお金は,ヤミ金融に預けて運用するので,半年もあれば完済できますと。だから借りてきてもらえれば半年で完済できるので,あなた方は返さなくていいですよと,そういうような話がされておりました。   Kは信用させるために,若者には,きちんとこういう形で返済しますというような誓約書,あるいは自分の印鑑証明書まで渡して信じさせていました。2006年12月ころまでは,順繰りに,次の被害者に借りさせたもので前の被害者の借入れを返すような形を自転車操業的に続けてきたんですが,それもついに途絶えてしまいまして,被害が顕在化してしまったということで,消費者金融会社から一斉に若者に督促がされるようになって発覚した,そういった事案でした。   昨年の3月に弁護団を立ち上げまして,被害者の相談を受けたんですが,134名の若者から依頼されまして,弁護団で対応したんですが,年齢層を見ますと,22歳以下が134名のうち120名いました。実に全体の90パーセント以上を22歳以下の若年層が占めておりました。また,その中に1名でしたが未成年者,19歳だったと思いますが,おりました。   なお,宮城県内では同じような被害が実は2000年にも発生しております。その際には桁が違って,2,000名ぐらいのやはり20代前半の若者がこのような被害に遭っております。また,今年に入っても同種の被害が生じたということで,宮城県の消費生活センターからは報告を受けておりまして,また弁護団をつくらなければという話になっております。こういう被害は宮城県だけにとどまらず,全国各地で繰り返し発生しておりまして,そのたびに弁護団が立ち上がっておりますが,全く絶えません。   この若年者の消費者関係事件ということで,こういう被害もあるということで紹介させていただきましたが,私自身に寄せられる相談としましては,この数年間で増加しているとか減少しているとか,そういった感じは特にしておりません。毎年何件かあるというような形で推移しているようには思います。ただ,年齢別に見た場合に,18歳から22歳ぐらいの年齢層というのはあまり弁護士に相談を寄せる件数としてはそれほど多くないのかなという気はしております。消費生活センターに寄せられる相談は,先ほど御報告がありましたとおり,相当あるようですが,なかなか弁護士自身の敷居の高さとか,いろいろな問題もあろうかと思いますが,それほど多いという印象は受けておりません。   次のヒアリング項目ですが,弁護士会全体で,消費者関係事件の相談が年間何件くらいあるかと。また,増加しているか,減少しているかというヒアリング項目がございます。   これにつきましては,弁護士会は各都道府県に存在しております。その各弁護士会ごとに法律相談を行っているんですが,ただ,相談件数の集計の仕方が必ずしも決まっているわけではございませんので,先ほどの国民生活センターのような十分な統計資料は存在しませんでした。 今日,皆様にお配りしている資料は,部会資料14ということで「2004年度相談件数一覧」というところから始まる資料がございますので,それを御覧ください。   これは各地の弁護士会で行っている集計結果について,日弁連が各地から報告を受けてまとめた形になっております。ただ,見ていただければ分かるとおり,各弁護士会において独自の分類をしているために,この一覧表に対応する形で件数を挙げることができなかったり,あるいは集計していないという弁護士会もございまして,きちんとした形で御報告をできないことをおわび申し上げます。   この一覧表をもとに説明いたしますと,右から4番目に消費者という欄がございます。これが消費者関係事件の相談になります。この件数を見ますと,3ページ目に2004年度の各地の合計の件数が出ておりますが,3,067件となっております。次のページが2005年度の相談件数一覧になりますが,これもさらにそれの3ページ目になりますと,消費者の合計件数として2,959件。さらに次のページから2006年度になりますが,これも3ページ目に合計がございまして,消費者関係事件としては3,426件ということで書いております。というわけで,消費者関係事件の累計としては3,000件前後で推移しておりますので,増加も減少もしていないのかなと思われます。   ただ,この累計とは別に,消費者という項目の二つ左側にサラ金・クレジットという項目がございます。このサラ金・クレジットという項目は,御承知のとおり多重債務関係についての相談を集計したものとなっております。これも一つの消費者関係事件だと思われますので,これについて報告させていただくと,合計が2004年度で4万3,865件,2005年度で4万7,528件,2006年度は7万486件ということで,それまでに比べて大幅に増加しております。消費者被害の中でも,特にこの多重債務に関する相談は,我々弁護士の認識としてもここ数年増加傾向にあるのかなという印象を受けております。統計にもそれがあらわれていると思います。   続きまして,ヒアリング項目の三つ目ですが,若年者に関する消費者関係事件の内容は,どのようなものが多いか。また,若年者がトラブルに巻き込まれる特徴としては,どのような点が挙げられるかという点ですが,若年者に多い消費者被害は,先ほど国民生活センターからも御報告があったのとほぼ同じなんですが,やはり印象としては,パソコン,携帯電話関係の詐欺被害,架空請求なども含みますが,そういったものが多いように思われます。それから,キャッチセールスとかマルチ商法,アポイントメントセールスといった各種の被害が多いのかなという印象を受けております。   若年者の被害の特徴ですが,相談あるいは事件処理をしていて感じることは,「無料」とか「格安」「もうかる」とか,こういった表示あるいは勧誘に非常に弱いと感じております。そういった表示とか勧誘に対して安易に乗ってしまったり,十分に検討することなく即決したりする,そういったことが多いように思われます。   例えば,先ほど報告させていただいた宮城県における集団詐欺被害事件でも,借入れをするだけで借り入れた額の1割,例えば50万円サラ金から借りてくればその1割の5万円をアルバイト料としてもらえると。4社から合計200万円借りれば,1割で20万円アルバイト料がもらえる。わずか1日でこれだけのアルバイト料がもらえるというもうけ話をされて,それに簡単につられてしまう。   借入れをするので,後でその返済を迫られるのではないか,1割だけ受け取って残りの返済をどうするのかといったことを考えるべきなのですが,そこまでは考えない。あるいは,考えるけれども,こちらで返済するから大丈夫だよ,君以外にもほかにたくさん若い人たちがやっていて大丈夫なんだよと,そういった言葉に簡単に信用してしまうといった傾向が感じられます。日ごろから考えて行動することがなかなか習慣付けられていない若年者というのは,詐欺師にとって格好のターゲットになっているように感じております。   特に消費者金融とかクレジットの利用が可能になる20代前半の若者は,これを利用することによって,本来その若者の支払能力を超えるような資金も支払わせることが可能になるので,非常に消費者被害が多くなっているように思います。先ほど国民生活センターの報告でもありましたが,やはり20歳以上になると信用供与を受けられるようになって,多くなっていると感じております。   ヒアリング項目の四つ目ですが,若年者に関する消費者関係事件については,どのような助言をすることが多いか,未成年者取消権が使われることがあるか,使われるとすると,どのような場面かというヒアリング項目ですが,これについては,未成年者の契約トラブルということであれば,弁護士としてはやはり最初に未成年者取消権を発想しまして,それが可能であればその行使を助言しております。ただ,未成年者取消権の場合によく業者から言われることとして,未成年者の詐術による取引ですね。要するに年齢をごまかしたと,自分は未成年者ではないということで年齢をごまかして取引をしたので,取り消しできないのではないかという主張をされたりするという問題があったりしますので,それだけではなくてクーリングオフとか,特定商取引法に基づくいろいろな取消権だとか,消費者契約法に基づくものだとか,そういったその他の権利行使についても併せてアドバイスすることは多いと思われます。   それから,五番目のヒアリング項目ですが,若年者が消費生活においてトラブルに巻き込まれないようにするためには,どのようなことが大事であると考えるか,家庭や学校教育などでしておくべきと思われる事項は何かということですが,これにつきましては,先ほど島野理事からもお話がありましたが,各年代に応じて契約や消費者の権利に関する知識とか情報を提供する,いわゆる消費者教育というのは重要で,特に学校教育の中でこれを十分に行うことが重要だろうと考えております。ただ,現在の学校教育でこの消費者教育が行われているかと言われれば,十分に実施されているとは思われません。   この分野は,先ほども申し上げたとおり,私が消費者教育関係の担当の副委員長ということもあって,いろいろと感じていることがございますので,この機会に若干述べさせていただきますが,消費者教育については,法律上も2004年に制定された消費者基本法の中で,「消費者に対し必要な情報及び教育の機会が提供され」なければならないと規定した上で,「国は,消費者の自立を支援するため,消費生活に関する知識の普及及び情報の提供等消費者に対する啓発活動を推進するとともに,消費者が生涯にわたつて消費生活について学習する機会があまねく求められている状況にかんがみ,学校,地域,家庭,職域その他の様々な場を通じて消費生活に関する教育を充実する等必要な施策を講ずるものとする」と規定されておりまして,消費者教育に関する施策を講じる責務が国にあることを明確化しております。   この消費者基本法を受けまして,2005年4月には消費者基本計画というものがつくられました。その中に消費者の自立のための基盤整備という項目がありまして,その課題の一つとして,消費者教育を受けられる機会の充実ということが明記されております。それに基づいて具体的な施策も挙げられております。これによって,学校教育の中での消費者教育が推進されるのではないかと,我々としても強く期待していたところでございます。   ただ,学校教育の中に消費者教育を採り入れるためには,実はいろいろと問題がございます。一番の問題と感じておりますのは,やはり学習指導要領の問題がございます。現在の学校教育は学習指導要領に基づいて行われておりますので,これに盛り込まれていない事項は,たとえ必要性があったとしても学校教育の対象とはなり得ないと。今年の3月28日には,幼稚園から中学校までの新学習指導要領が告示されましたが,その中でも,消費者基本計画があったにもかかわらず,消費者教育について十分な内容が盛り込まれたとは感じられませんでした。   また,授業時間数の問題もございます。現在の学校教育の中で消費者教育はどの分野で行われているかと申しますと,社会科の公民科,家庭科といった中で行われることが多いのですが,学習指導要領でも実際にそのようになっております。ただ,これらの科目は絶対的な時間数がほかの主要科目に比べると少ない。その中で,さらに消費者教育に充てられる時間は本当にわずかに限られているようで,現場の教員からは,消費者教育は必要なんだけれどもなかなか時間がとれないという話を何度も聞かされております。ですので,若年者が消費生活トラブルに巻き込まれないようにするための方策として,消費者教育が必要だというのは,これはだれしもお話しされることで,皆が賛同するところだとは思うんですが,ただ現実に学校教育の中でこれを普及,実現することは難しい問題だというのが実感として感じております。   最後のヒアリング項目ですが,現在,民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることについて議論が行われています。18歳に引き下げると,親の同意なく契約できる。これについてどう考えるか。消費生活上の問題点はあるかという質問でございます。これについては,近年,携帯電話やインターネットの普及によって,若年者が高額の商品を購入したり,サービスを受けたりする機会は,以前よりも格段に増加していると思います。   例えば,高校生が宝石店をうろうろしているということになれば,やはり不審な目で見られるのではないでしょうか。高額の宝石を買おうとしても支払ができなければ買うことはできないでしょうし,多額の現金を持っていれば少し怪しまれるかもしれません。ところが,携帯電話やインターネットのサイトの世界では,若年であろうと未成年であろうと,高額の商品,サービスの提供を受ける機会に簡単に遭遇してしまいます。不審な目で見られることもありません。高額なサービスの提供も拒絶されず,むしろ悪質な業者からは積極的にサービスの提供をされて,提供されたサービスについて不当に高額な対価を要求されたりもしております。   他方で,先ほどもお話ししたとおり,現在の学校教育の中では消費者教育が十分に行われておりません。携帯電話やインターネットのことは先生よりもむしろ生徒の方が詳しいことが多くなっているくらいです。近い将来,消費者教育が確実に普及するという見通しも立っておりませんので,この若年者の消費生活トラブルというのは,今後ますます増加するおそれが高いのではないかと思われます。現在の成年年齢制度のもとでも,年代ごとの消費者トラブルの件数を比較した場合に,20代前半の若年者のトラブルは結構多いのではないか。18歳に引き下げられた場合には,そのまま18歳,19歳の者が悪質業者の格好の餌食になるのではないかということが危惧されてしまいます。   また,いわゆるマルチ商法と呼ばれるような連鎖的な被害ですね,次々と仲間を誘っていって,次々に連鎖的に被害を巻き起こす消費者被害というのが結構あるんですが,そういったものについては,現在,大学や専門学校内で瞬く間に被害が拡大するケースが散見されます。これが成年年齢が18歳になった場合には,高等学校の中でそういった連鎖的な被害が起こる可能性があるのではないかと思われます。その場合に,18歳の誕生日を迎えた3年生だけが未成年者取消権を行使できない。18歳の誕生日を迎える前の3年生,あるいは1,2年生はそれが使えるのに,18歳の誕生日を迎えた3年生だけが未成年者取消権を行使できず,十分な救済を受けられないということで,社会問題にも発展しかねないと感じております。   というわけで,私としましては,民法の成年年齢を18歳に引き下げることは,消費生活上の問題が非常に大きいのではないかと思っております。   18歳に引き下げること自体についての意見と言われると,ちょっと現時点で総合的な判断で意見を述べることができず,今申し上げたとおり,消費生活上の問題点という見地だけ述べさせていただければ,やはりマイナスかなと思います。消費者としての利益保護の見地からは明らかにマイナスだということだけ申し上げまして,実際の引下げの是非はその見地だけではなくて,ほかのさまざまな見地から検討すべきことかと思われますので,そういったいろいろな見地からまた検討が必要だろうと思っております。ただ,現時点で私の方でそうした総合的な判断はできかねますが,本日は,消費者としての利益保護の見地からは引下げがマイナスだということだけ申し上げて,私のヒアリングは終了させていただきます。どうもありがとうございます。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   次に髙橋弁護士,よろしくお願いいたします。 ○髙橋参考人 私は,日弁連子どもの権利委員会所属の弁護士で,消費者被害という観点から子どもとかかわることはそれほど多くありませんが,少年事件や児童虐待事件でかかわった子どもとその後の交流の中で見聞きすることや,NPOで子どものシェルター事業をやっておりますので,そこで生活している子どもとのかかわりから,ヒアリング事項の中でも,特に共通編の部分と,あとは子どもの消費者としての能力について,若干お話をさせていただきたいと思います。なお,あくまでも個人的な意見であることを御承知おきください。   まず,成年年齢を18歳に引き下げることについては,結論としては反対しております。成年年齢の問題は,裏返せば未成年とされる子どもの権利の問題だと思うのですが,子どもの権利の問題として考えるのであれば,子どもの意見表明権や自己決定権の実現こそが問題であり,これはすべて民法の成年年齢と一致させる必要はないと思うのです。例えば,今回の諮問の背景には国民投票法の問題があると伺っていますが,私には,参政権や国民投票の権利を,私法契約上の行為能力と一致させる必然性があるのかどうかは分かりません。   次に,諮問事項に関連するんですが,私法上の行為能力の問題として考えた場合ですが,行為無能力者制度の趣旨は未成年者本人の保護ですから,成年年齢を下げることで大人としての自覚を持たせるという考え方には,本来の制度趣旨とはなじまないのではないかと思っています。   また,18歳,19歳の子どもの現実の行為能力の問題ですが,実際にその年代の子どもとかかわっている経験からすると,財産管理能力には疑問を感じています。具体的には,私たちがやっている子どものシェルターは,親の虐待や見放し等が理由で,20歳未満にもかかわらず親元で育てられていない10代後半の子どもたちが自立のための居場所を見付けるまでの短期滞在施設です。短期滞在といっても,多くの子どもは2か月以上滞在しており,長い子どもは半年近くの滞在になることもあります。入所者の年齢はほとんどが17歳と18歳です。中には高校生もいます。   この子たちは,シェルター入所中にアルバイトをして,シェルター退所後のためにお金をためておく必要があります。本人たちもお金をためる必要性は十分に分かっているので,お金をためるために,自分で持っていると使ってしまうだろうから,シェルターで管理しようかと聞いても,最初は,大丈夫,しっかりためるからと言います。こうしてアルバイトなどを始めて,多い子どもだと月10万円ぐらい稼いできますが,これを自分で管理してためることができる子どもはほとんどいません。大抵は外食したり,洋服や化粧品を買ってしまったり,遊びに行ってしまったりして,手元にお金が残らないという結果になるので,その後もう一度話をして,アルバイト代が入ったらこちらでお金を預かるようにしています。これは養護施設等出身の子どもでも,親や親戚に育てられてきた子どもでも,ほぼ一緒です。鎌田弁護士のお話は,主に消費者被害の観点から,だまされやすいということでの説明だったと思いますが,それだけでなく,自分の欲求を抑えて計画的にお金を使うという意味での成熟度は,今の18歳,19歳の多くの子どもは低いのではないかと感じています。   また,子どもの権利という視点からすれば,成年年齢の引下げは,子どもの利益になるのであれば引き下げればよく,そうでなければ引き下げるべきではないということになると思います。ですから,成年年齢を20歳から18歳に引き下げることが子どもの利益になるのかを考える必要があると思うのです。私のような虐待にかかわっている者の印象でも,大部分の親権者は子どもの年齢に合わせて適切な権利行使をしていると思います。   私がかかわったケースで,父子関係が大変悪化しているケースで,子どもが渋谷の街を歩いていて警察に補導されて,特に悪いことをしたわけではないんですが,事情を聴かれた後にお父さんに引取りに来てほしいという連絡がいったんですけれども,お父さんの方は,もうあんな息子は知らん,少年院にでも入れてくれと言って引取りを拒否したケースがありまして,それで私が知り合ったという経験がありました。このお父さんは家庭裁判所の呼出しにも来なかったんですけれども,後日,実はこの子の家庭はお母さんが先に亡くなっていまして,お母さんの遺産が多くて,子どもが独立するために不動産を買うことになりまして,子どもが買主として不動産の契約をすることになったんですけれども,その契約をする時点でまだ親子関係というのは依然として悪化したままで,不動産を見に行くのも別々でしたし,契約書にサインする日に親子は同席しましたが,一言だけ話しただけで,あとは特に話もしなかったと。このような親子関係があるんですけれども,この場合でも,お父さんが親権者として権利行使をする,その行使態様を私は横でずっと,子どもから相談を受けながら,見ていたんですが,それは非常に適切だったんですね。やはり物件としての妥当性,値段としての妥当性を十分吟味をして,最終的には子どもの意思との絡みで,父親が子どもの自己決定権を一定程度尊重する形で物件が決まっていくというような流れになっておりました。ですから,制度論として,現在の親権者による権利行使の同意権という制度を根本から変える必要性というのは,虐待等の事案を考えてもそれほど高くはないのではないかと思います。   他方,先ほどお話ししたようなシェルターをやっていますと,親権者からの身体的虐待や性的虐待を逃れてくる子どもたちもいて,親権が子どもたちの生活や安全を脅かしているケースも多いです。   また,契約関係で考えても,携帯電話を契約したり,シェルター退所後のアパートを借りる際に,取引の相手方から親権者の同意を求められることがあり,親権者の適切な権利行使ができない例外的な場合に対応する法制度が現在ないことは課題だと思っています。これについては,個人的には,成年年齢は20歳のままとして,原則として20歳未満の親には同意権,取消権を認めておき,一定の年齢以上で虐待等が理由で親権者が適切な権利行使をできない場合にのみ,親権者の同意に代わる家庭裁判所の許可等で契約ができるという制度が考えられるのではないかと思っています。   成年後見制度と同じように個別の行為能力に着目した考え方だと思いますが,成年後見制度の場合は,主に本来行為能力がある成人の一定の場合に取引能力を制限しようという制度であるのに対して,未成年の場合は,ほとんどは親の適切な権利行使が期待できるわけですから,原則と例外を逆転させて,同意に代わる家庭裁判所の許可というような仕組みを考えればよいのではないかと思います。   最後に,今日は私法上の行為能力の点を中心にお話しさせていただきましたが,民法の成年年齢の問題を考えるに当たっては親権についても御議論いただきたいと思います。身上監護権については,虐待事案等の不適切な権利行使をされている場面では,親権からの早期解放が子どもの利益にかなうとも思えますが,養育義務の側面で見たときには,18歳と同時に学費を出さないし面倒も見ないと言い出す親が出てくることが予想されます。また,同様の理由から,離婚後の養育費についても18歳までという議論が起こるのではないかと懸念しています。   以上が私の意見です。御清聴ありがとうございました。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは,お招きいたしました皆様方の御意見につきまして,委員,幹事の方々から御質問あるいは御意見をお出しいただければと思います。      それでは,仲委員,お願いします。 ○仲委員 先生方,本当に興味深いお話,どうもありがとうございました。   髙橋先生にお尋ねしたいんですけれども,先ほどの子どもの福祉という観点から伺いますと,例えば自立養護施設であるとか,あるいは児童養護施設のような施設を考えたときに,18歳と20歳の間というのは,現実としてはどういうふうになっているのか。19歳11か月まで入れるところもあるし,18歳までで切っているところもあるし,その間をいろんな運用で扱っているところもあるのかなと思うんですけれども,どうなっているのかというところを伺えればと思います。 ○髙橋参考人 多分,今日の本題と直接は関係がないところとは思うんですが,簡単に御説明をさせていただくと,児童福祉法で保護される年齢は18歳までとなっていて,民法の成年年齢が20歳になっているので,18歳から20歳の間というのは,親権に服しているけれども,児童福祉,いわゆる社会的擁護の対象に原則としてはなっていないです。児童養護施設は基本的には18歳になったら退所しなければならないですし,児童自立支援施設も同様です。   ただ,自立援助ホームという児童福祉法上の施設がありまして,自立援助ホームの場合は,都道府県で要綱が定められていますが,そこで20歳までの入所を認めるというふうにされていると,自立援助ホームには19歳,20歳のお子さんもいらっしゃいます。それから,児童養護施設でも,民間のものですと,事実上18歳を超えたけれども,しばらく在所させてくれるというところはありますし,里親さんが措置を受けている場合も,18歳だからといっていきなり追い出すのではなくて,実際には大学進学の面倒を見てくれたりということもあるというふうに理解しています。 ○仲委員 そうしますと,20歳が成年であるからということで,18歳から20歳までのギャップが,今のような民間とか,自立援助ホームによる形で埋められているというふうに考えてよろしいんでしょうか。 ○髙橋参考人 そういう理解で結構だと思います。 ○仲委員 これが例えば成年年齢が18歳になると,むしろもう18歳で終わりみたいな方向にいくのかなと思ったのですが。 ○髙橋参考人 成年年齢が18歳になったときに児童福祉がどう対応するのかというのは私もちょっと分からないのですが,でもどちらかというと,我々は今,成年年齢が20歳だから,子どものうちに手厚く保護をしてあげることで,大人になって,その大人が自立することで,最終的には国民全体にはプラスだろうということで,手厚く保護をしてもらうために,成年年齢20歳なんだからもっとやっていただきたいという,むしろそういうスタンスでお願いをしているところです。 ○仲委員 分かりました。どうもありがとうございました。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。   どうぞ,五阿弥委員,お願いします。 ○五阿弥委員 島野参考人と鎌田参考人にお伺いしたいんですが,現状ですと18歳に引き下げるということは難しいのではないかという御意見だったと思います。それは現状のままではということがあるのかどうか。つまり,日本の消費者行政というのは先進国の中では非常に遅れていると指摘されています。ようやく消費者庁というのを福田首相が打ち出して進みつつありますが,縦割り行政の問題とか予算の乏しさとか,あと権限の問題,さまざまな問題が今指摘されております。ただ,消費者行政をもう少し強力なものにしていくことが今後できていく,あるいは消費者教育も確かに教育現場ではなかなか難しい現状があると思いますけれども,消費者教育がもう少し充実していく。そうした場合であっても,例えば18歳に引き下げることが難しいのかどうか。消費者行政ということを考えると,高齢者が今非常に被害に遭っている。これも同じではないかと思うのです。やはり18歳,19歳の問題と同時に,高齢者の方も視野に入れたものでないと駄目なので,そこら辺のことをどういうふうにお考えなのか,お二人の方にお伺いしたいと思います。 ○鎌田部会長 それでは,まず島野参考人,お願いします。 ○島野参考人 委員の御指摘のように,現状のままではこういう事件が起きてきた,こういうことが起きているということでありまして,そのままですと,にわかに賛成できないという話をしたつもりです。つまり,数ある日本の法律の中で,本来的消費者保護法と機能的消費者保護法が相当な数あるんだと思うんですね。ただ,例えば,今一元化の問題の中で,例えば違法収益吐き出し法制とか,そういうのも一応議論されているところであります。あるいは不招請勧誘の禁止,これは一部には入っていますが,そういったものが非常にいろいろな面で入ってくると,また考え方は変わってくると思います。   私法の中でも,一橋大学の松本先生なんかですと消費者保護における司法の積極主義ということをおっしゃっているような気がしますけれども,そういう中でいろいろな面で予防なり救済がきちんとされていると。きちんとされるというのは,どの程度までがきちんとされるか難しいところではありますが,そういった格好になれば,別に絶対に反対だとかそういうことではなくて,委員がおっしゃったように,むしろ高齢者の問題というのがひょっとしたら大きい問題になるかもしれませんが,そういういろんな面で手当てがされれば,必ずしも消費者現場でも,多分反対ということにはならないと思います。 ○鎌田部会長 鎌田参考人,お願いします。 ○鎌田参考人 引き下げる場合の条件とか環境整備といった問題になるのかと思いますが,どういった状態になれば引き下げてもよいかと言われると,本当に一言で言えば,消費者被害が生じないような環境が整備されればいいんだという話になるのかもしれません。ただ,ではどうすれば消費者被害が生じない環境が整備されるかというのは,私自身としてはなかなか明確には意識できません。消費者教育といいましても,先ほど詳しく述べましたとおり,なかなか実現させることが難しくて,実際に普及させたいと願っている立場からすると,まどろっこしいぐらいなかなか普及していかない。   それから,事後的な規制を強化するということも確かに必要です。現在,進められている割賦販売法,あるいは特定商取引法の改正もこれに沿うものですし,あるいは先ほど御紹介があった消費者庁のお話などもこれに沿うものだとは思いますが,ただ,これまでもそうであったように,この規制が強化されても,必ずその規制のすき間をねらって消費者被害が生じるということで,完全に規制することができるのかという点について疑問に感じております。規制を強化したとしても,例えば振り込め詐欺のように摘発が進まないために堂々と行われているようなものも,もちろんございます。   それから,仮に最終的に救済がされるような状態,法律の整備,あるいは行政が実現したとしても,結局救済というところに至るまでには,被害に遭った人が多大な労力とか出費が必要となるケースがあります。端的に言えば,裁判を起こされて,裁判を受けるために弁護士を依頼すると,弁護士費用が掛かるというような問題などもございますし,その裁判で勝訴するためにいろいろと労力が必要となるということもございまして,なかなか規制の強化ですべてのトラブルがなくなるかというと,そういうことでもないのかなと思っております。   そういうわけで,現場で消費者被害の救済に取り組んでいる弁護士の立場としては,消費者被害がなくなる環境が整備されれば引下げはいいんだという議論についてはなかなかイメージできない部分があって,抽象的な意味合いとしては分かるんですが,なかなか賛同できないところではあります。 ○鎌田部会長 関連して,島野参考人,鎌田参考人にお伺いしたいんですが,先ほど来お話がありましたように,消費者被害は割合,少額多量の被害が出るケースが多いと。特に若年者の場合には,財産をたくさん持っていませんから,高齢者とは違って少額な被害を積み重ねていくというタイプのものが多くなるかもしれない。そうだとすると,事後的救済の充実で本当にうまくいくのかなということを直感的に感じるんですけれども,その点は現場の感覚としていかがでございましょうか。 ○島野参考人 消費者被害というものが全部なくなるということはまずないと思いますし,事後的にも,鎌田参考人がおっしゃったように,どこまでどうだと,そこを回復するには相当な時間も労力もいるだろうということなんですが,少額といっても,それは相対的なものであるから,その人にとっては非常に高額かもしれません。だから,それに対してどうこうというのは予防的な部分がかなり大きくなるんだろうと考えます。先ほど環境整備が整えば賛成ですと申し上げましたが,私は軽々に賛成ですよと言っているわけではなくて,あることができるというのがどういうイメージか,鎌田参考人とかなり似たことを答えていたのです。   そういう部分で予防と救済というのが消費者行政とか消費者問題を解決する中の一つですが,その中で若年層でも高年齢でも,予防というのが一番大切な気がしているんですね。ただ規制があまりにも行き過ぎるというのは,さてどうかなと思うのです。そういういろんな観点はあると思いますけれども,予防の部分でかなりそこには入っていけないという形で,例えば不招請勧誘でもそうだろうし,いろんなことで規制をする。そのときにトラブルに巻き込まれないという状況をつくればそれはそれなりの,具体的なイメージはなかなかわきませんけれども,それだったらいいのではないかと言ったまでであります。 ○鎌田部会長 分かりました。 ○鎌田参考人 鎌田部会長がおっしゃるとおり,正に事後的な救済では十分に救済できないということがあって,弁護士が消費者教育をなぜやるのかというのはなかなかよく分からないかもしれないんですが,やはり事後的な救済でいろいろやっていくと限界を感じることがございまして,被害に遭う前に何とか予防できればというようにだんだん考えてくると,消費者教育というのがやはり重要だということで,先ほど国民生活センターの方から報告がありましたが,弁護士が学校に出向いて出前授業をしたり,そういったことなんかも実はやったりしております。   今回の成年年齢の問題なんですが,これも先ほど島野さんからお話があったとおり,20歳になるとぽんと被害が生じているというところから見ても,未成年者取消ができるというのは業者にとっては一つの嫌なものというわけで,そのターゲットにする場合の抑止力の一つとなっているように感じております。消費者教育は重要なんですが,先ほど言ったようななかなか難しい問題もあって,一定の抑止力というところも非常に重要というか,頼らざるを得ないと考えておりまして,そこの部分を一切取り払うことについては,自分自身としては今はあまり賛同できないと考えております。 ○鎌田部会長 河岡参考人,髙橋参考人,関連して何か御発言ございますか。よろしいですか。   五阿弥委員,よろしいでしょうか。 ○五阿弥委員 これは島野参考人がもし御存じだったらお伺いしたいんですが,多くの国が18歳を成人としているわけですよね。例えば,欧米などですと,18歳から21,22歳ぐらいの消費者というか,若年層の消費者問題というのは,結構深刻な問題になっているのかどうか。あるいはそうした若年者に対して契約を結ぶ際の何らかの保護みたいなものがあるのか。あるいは消費者教育みたいなものがどの程度まで行われているのか。もし御存じだったら教えていただければと思います。 ○島野参考人 海外のものについては全く不案内でありまして,18歳だとか21歳だとかというのは,それなりの法制度などがあるのではないかということぐらいしか承知しておりません ので,それは大村先生とかいろんな先生にバトンタッチをさせていただきます。 ○大村委員 その点について,私は直接お答えすることはできないんですけれども,それに関連する質問をさせていただきます。   今回,島野さんから出していただいた資料は,20歳という年齢を境にいたしまして,数量の点でも,それから質の点でも,消費者被害に差があるということがある程度明らかになっており,大変貴重なものを拝見したと思っております。   そのこととの関連で質問が二つございまして,一つは正に今の質問とかかわるんですけれども,例えば部会資料13-2の2ページ目に件数のデータが出ております。これはどの年を見ましても,20歳のところがピークになっておりまして,18歳,19歳はそれより相当少ないと。21歳,22歳は,20歳よりは少なくなるけれども,18歳,19歳よりはかなり多いというようなことになっておりますけれども,このことの意味なんですね。   仮に成年年齢を18歳にした場合には,これがそのまま左に二つずれることになるのかということです。すなわち,18歳より前は被害が少ないけれども,18歳のところでピークになって,その後は減るというようなことになるのか。あるいは,今,21歳,22歳が多いんですけれども,これは試行実験ですが,成年を22歳にしたのならば,22歳のところがピークになって,その前は少なくて,その後は22歳よりは少ないというようなことになるのか,ということについての御感触を伺いたいと思うんですね。   質問の趣旨は,成年年齢ということで,何歳であれ成年ということで行為能力に差があるということで,この前後に差が出るのか,それとも,年齢に応じた判断力とか成熟度みたいなものが影響していて,今,私が申し上げたようには単純にならず,18歳,19歳はやはり判断力の点で問題があるのだというようなお考えなのかということを伺えればと思います。   もう一つは,年齢のいかんにかかわらず,さまざまな形で消費者被害の予防あるいは救済を図る措置が必要ではないかという御意見がございました。部会資料13-2の8ページのデータについてお伺いしたいんですけれども,どのような販売形態において契約をしたかということで,通信販売の被害の割合が,18歳,19歳で78.9パーセント,70.8パーセントと非常に多くなっております。このことの意味についてどのような理解をされているのかということを伺えればと思います。   先ほど鎌田参考人がおっしゃっておりましたが,対面でないと年齢確認などが必ずしも十分にされないということで,18歳,19歳であってもかなりの被害というか,相談が出ているということなのかなと,ちょっと印象としては思ったんですけれども,そういうことなのかどうなのか。もしそうだとすると,反対にクレジットの場合には年齢確認をしますので,20歳より前は少ないということになっていますので,これは年齢をどうするかということにかかわらず,この現状には問題があるのではないかなと思います。 ○鎌田部会長 それでは,島野さん,お願いします。 ○島野参考人 一点目は私から感触をお話して,二点目は河岡の方からお答えします。   個人情報保護法があったとしても,個人情報がある面ではあちこちに出ているという背景があるためか,実際,20歳になった誕生日の翌日にトラブルに遭うケースもあるのです。つまり,相当抑止力的な部分が民法にあって,20歳になったところを目掛けていくというところを見ますと,それが18歳になったとすると,このピークは,私の感触ではそちらに移るのではないかと思います。   一方,22歳の方にいったらどうかというと,トラブルに遭ったということで国民生活センターなり消費生活センターに来る20歳と22歳は,あまりそうは変わらないような感じがします。大学の2年生と大学の4年生というのとそんなに違うかなというのがありますので,やはりこれも18歳になったときほど山のピークは顕著でないかもしれませんけれども,22歳になってもやはりそちらの方に動く可能性が高いのではないかと思います。 ○河岡参考人 部会資料13-2の8ページの表6の通信販売の数字についてですか,確かに18歳の場合は78.9パーセント,19歳の場合は70.8パーセントと,20歳以降に比べて割合が高い。この点について,相談を実際に受けている立場の感触で申し上げますと,この相談の大半は架空請求絡みだと思われます。インターネットや携帯電話で一方的に請求されたというものが大半で,契約と言えるかどうかというものだと思います。とはいえども,この中には,12ページで出会い系サイトの相談を紹介しましたけれども,携帯電話やパソコンで,自分としては最初から出会い系サイトを利用するつもりはなかったのに,懸賞サイトを利用していたらいつの間にか出会い系サイトになったということで,ズルズルと引き込まれたというケースは,最近よく見られるパターンです。   年齢とのかかわりで申し上げますと,数としては多くないということはありますが,実際に幾つか相談を受けた中では,オンラインでのショッピング,それからオンラインゲームなどのサービスの利用で,年齢をパソコン上又は携帯電話の画面上入れるという作業があるんですが,そこで詐術したというケースもございますし,詐術はしていなくて,よく分からないまま入力したというような場合で,年齢確認があいまい又は偽ったというようなケースもあって,インターネットの世界の中では年齢について業者側の確認が不十分だということは,相談を受けていて印象として十分あります。   以上です。 ○鎌田部会長 鎌田参考人,御意見ございましたらお願いいたします。 ○鎌田参考人 成年年齢が18歳になった場合にピークがどうなるのかという先ほどのお話については,私も島野さんと同じようにそのまま移行するのではないかという予想はしております。先ほどお話があったとおり,誕生日を迎えた瞬間電話がかかってくるという話は私も何度も聞いたことがありますし,実際,私自身も20歳になって間もなくそういう電話がかかってきたのを覚えておりますので,自分の経験からしても,個人情報の氾濫とあいまって,成年になった瞬間を業者はねらっているという感じはいたします。 ○鎌田部会長 髙橋参考人,何か御意見ございますか。 ○髙橋参考人 私は本当にちょっと分からないんですが,多分,この制度論で動く部分は,先生がおっしゃるように恐らく一定割合あると思うんですけれども,ではそれが15歳に下げたらそのまま動くのか,13歳ならばどうかというと,多分どこかには成熟度との関連性というのはあって,それが,では18歳なら,22歳ならというのはちょっと私には分からないというのが正直なところです。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは,岡田委員,お願いします。 ○岡田委員 現実に地方の消費生活センターで相談を受けている感触なんですが,部会資料13-2の8ページの18歳,19歳のパーセンテージが高いという部分なんですが,これは契約者は未成年なんですが,相談自体は親からされた場合でも未成年の年齢に計上しますので,もしかしたらそれもここに出てきているのかなと思います。 ○鎌田部会長 通信販売の比率が高くて,20歳になるとぐっと下がるんですが,件数自体は20歳になれば増えるわけで,そうすると,通信販売以外での巻き込まれ方が未成年者は現実には少ないということなんですね。対面型だとなかなか未成年者を相手にしにくいということがこの数字になるんだろうと思います。 ○岡田委員 親自体が20歳と20歳未満とをそれなりにちゃんと頭に区別して入れているためだと考えます。 ○鎌田部会長 それでは,ここで休憩を取らせていただきたいと思います。           (休     憩) ○鎌田部会長 それでは会議を再開させていただきます。   引き続き,委員,幹事の方々からの御質問,御意見等を御自由にお出しいただければと思います。   それでは,平田幹事,お願いします。 ○平田幹事 先ほどの成年年齢を18歳に下げたら消費者被害が増えるかという問題ですけれども,知的障害者の権利擁護の現場での経験からすると,知的障害を持った方は20歳になっても消費者被害にねらわれやすいというところがあって,では,どういう方がねらわれるかといったら,判断能力だけではなくて,自由財産をどれだけ持っているかということと,親と同居しているか,要は身近にいて,そんなのやっちゃ駄目よと言う助言者がいるかどうかというのに大きく左右されているような気がするので,その辺,高齢者取引の問題も先ほど出ていましたけれども,島野理事にお聞きしたいんですけれども,そういう周辺的な環境によって左右されるところが,消費者相談の中から見えるのかどうかというところと,もう一点,確かに未成年取消権というのは,もし取り消されれば,業者が現存利益の返還にとどまるというので,業者にとって,とてもインセンティブを欠くことになるので抑止力になるという理解だと思うんですね。業者がやればやるほど自分が損をするかもしれないということだと。そうすると,その抑止力の代替というのを,島野理事のお話だと,業法の方がスパッと解決するんだというお話が先ほどあったんですけれども,むしろ鎌田弁護士の御意見で,表示・勧誘に弱いところがあるんだったら,強力な業法規制を加えることによって抑止力の代替になり得るのかどうかですね。そういうアイデアとかあったらお教えいただきたいと思います。 ○島野参考人 近くにそういう助言をやれる人がいるかとか,判断力の問題だとか,いろんな指摘があると思いますけれども,これだけ件数があるとさまざまで,一つのタイプでこれこれこうだというのはなかなか言えないと思うんです。悪質業者といいますか,私は企業・事業者,虚業者,塀の上を歩く人と,今までは業法違反みたいな人が多かったわけです。ところが,最近,非常に悪質化してきたと思うんです。彼らのやり方というのは,だれかに助言を求める時間を与えず,即契約をさせるというのが一つのやり方なのです。たまさか近くにだれかいたとしてもどうかなと。周りにこれこれこういう人に話をしてみますよとかというのはありますよ。 だけど,そういうことをさせない部分があるので,先ほどの非常に悪質化しているというので,それはどうなったら,周りにそういう人がいたらするかと。高齢者の場合でも,昼間は一人だけれども夜はだれかがいる,日中独居なんていう言葉もありますけれども,そういう人たちはやはり,かなりねらわれますよね。特に金融デリバティブみたいなものなんかもそうですけれども,損を出してもそういうものは家族に内緒にする。だから,必ずしも周りにそういう人たちがいるとそうでもないとかというのはあまりないような気がします。   それから,業法の話ですけれども,今,先生がおっしゃったように,取消しという効果はどうかと言いますけれども,業法の中でもかなりいろんな面で民事ルールが入ってきたりしていますよね。だから,我々のところだとどうしてもクーリングオフが相当の力を持っているんだと思うんです。東北大学の河上先生がクーリングオフのことを「時間という名の後見人」と言っていますが,業法の方を我々はよく使っている。そうすると,民法の未成年者取消権というのは,みんな,20歳云々というのはそういう業者でも知っているんですよね。ただ,我々の業務は業者に対する指導という部分もあるから,業法ではこうなっているんだと。これこれ業法であなた方はこうしなくちゃならないんだよという,ある面の教育というか指導というか,そういう部分を負わされている部分があるので,やはり業法を多く使っているのが現場だと思います。 ○鎌田部会長 よろしいですか。   ほかの参考人の方,関連して何か御発言ございますか。よろしいですか。   それでは,ほかの御質問ございましたら,出していただければと思います。   では,始関委員。 ○始関委員 先ほど大村委員からの20歳の成年年齢を18歳に引き下げると,18歳にピークが移るかという御質問に対して,イエスという島野参考人,鎌田参考人のお答えだったんですけれども,その場合,部会資料13-2の2ページで言いますと,例えば2007年で18歳だと6,557件,20歳は1万8,215件ということになっているんですけれども,20歳以上の被害の数自体には変更はなくて,18歳,19歳の分だけがどっと増えるというイメージなんでしょうか。それとも,18歳,19歳が増える一方で,20歳以上の方は減るという,つまり経験するのが早くなるので,後の方は二度,三度の被害に遭う人もいるでしょうけれども,一回被害に遭って,痛い目に遭って,二度と引っかからないという年代が早くなるというふうに考えるのか,そこらあたりはどうなんでございましょうか。 ○島野参考人 数的に増えるかどうかというのは分かりません。18歳にしたら,ピークがそっちに移るのではないかという意味で言ったわけです。   それでは,21歳,22歳は数的には同じようなのかと。18歳が山になると,こういうのが同じかどうかというと,そこはなかなか分かりませんけれども,やや18歳,19歳をねらってくるというのがやはり多くなると思うので,やや減り方が,20歳,21歳というのは減ってくるのかなというような感じだけです。これは全くの感覚であります。 ○鎌田部会長 ほかの参考人の方,何かございますか。   河岡参考人,相談の現場の印象ではいかがですか。特にございませんか。 ○今田委員 2歳若くすればという仮定の議論として,要するに簡単に言えば,この山が2歳平行移動するという可能性は一つある。けれども,今,髙橋先生のお話を伺っていると,子どもの成熟との関連でいうと,2歳若くなると,ピークが2歳若くなって,山が平行移動するだけではなく,2歳若くなることによって,成熟度も低い子どもたちがターゲットになるということから,単なる2歳の平行移動では済まないんではないかという議論も,重要な点として出てくるのではないかと思います。   22歳以降の件数はどのように推移しているのか。要するに成熟度とか経験に応じて下がっていくのか,それともほぼそこでこの状態でずっと推移していくのでしょうか。 ○島野参考人 どんどん増えていくんです。部会資料13-2の3ページのところで,相談,苦情全体に対する割合というと,この辺はそんなにパーセント高くないんですよね。なぜなら,30代,40代と,家庭にいる主婦などの割合が高いためです。今回は18歳から22歳までというのが事務当局からのオーダーだったものですから,この表しかないんですけれども,年次報告書ですと,刻みが10歳刻みぐらいになりますが,一番多いのが40歳代ですね。その次が20代となっておりますから,二十何歳からまた少しずつ上がっていくわけです。 ○今田委員 年齢の上昇とともに率が上昇するのですね。全年齢のデータがあると分かりやすいのですが。 ○島野参考人 まあ,そういう格好でこうなっていて,ずーっと低くなってくるわけではない。むしろ上がっていくと。だから,成熟度とかそういうことで。 ○今田委員 それは,成熟だけではなく,環境要因,生活要因等々,いろいろな要因が関係すると思います。 ○島野参考人 ねらっているターゲットが,相手がどこにいるかというのが多いと思います。 ○今田委員 髙橋先生にお伺いしますが,成熟との関連で2歳下げると,平行ではなく,より危険度が高いという御議論ですか。 ○髙橋参考人 そこは専門家ではないので,感覚で言えば,少年事件で会っている子どもは,16,17歳で会うのと18,19歳で会うのとは全然印象が違いますので,それは単純な平行移動ではないだろうというふうには,そこは個人的には思っています。 ○鎌田部会長 鎌田参考人,いかがですか。 ○鎌田参考人 同じようにピークは成年年齢のところに来るというのは,島野さんがおっしゃったとおりだと思うんですが,やはり成熟度との関係はあると思うので,単純な平行移動ではない気はします。 ○青山委員 今日は4人の参考人の方から,「ヒアリングをさせていただきたい事項」に沿って,非常に詳細なお話をいただきまして,大変参考になりました。それで一つ御質問と,事務局に対しても一つ御質問があります。   島野参考人と鎌田参考人にお伺いさせていただきたいんですが,今日のお話は,他の現行法の制度がそのままであるという場合を前提とすると,成年年齢の引下げには賛成できないというお話だったと思います。先ほどから,ではどういうことがなされればいいかということもちょっと議論がありましたけれども,参考資料12の読売新聞の記事によりますと,6割が反対で,あとは賛成のところも4割ぐらいあるということですが,賛成の方は,理由としては,引き下げることで大人としての自覚を促せるというのが多数を占めているんですね。私は必ずしも賛成とか反対ということはまだ分からないし,それを言う立場ではありませんけれども,このことについて,引き下げれば大人としての自覚を促せるということについては,どういう感触をお持ちなのかということをお伺いさせていただければと思います。   もう一つは,これは事務当局に聞いていいかどうか分かりませんけれども,今日の参考人の話の中には,20歳にしておく場合に,親権が子どもの福祉に対して障害になる場合があるのではないかというお話があったと思います。そうすると,法制審議会のこの部会としては,仮に20歳に据え置くと。しかし親権からの解放ということを議論して,そういう答申をするということも,この部会の権限の中に入っていると考えていいのかどうかという点を確かめておきたいのですが。 ○鎌田部会長 今の後者の点に関しては事務当局から説明をさせていただきます。 ○佐藤幹事 親権からの解放の点を議論の俎上に乗せるかというお話でしたが,第1回の部会において,部会資料5で今回の議論の対象ということを御説明したかと思いますが,その中で,親権から解放するというような制度についても考えられないかということも御説明させていただいたかと思います。したがいまして,親権解放の制度の是非についても,本部会における検討の対象となっているものと考えております。 ○鎌田部会長 それでは,最初の質問に関連して,島野参考人,鎌田参考人の御意見をお願いいたします。 ○島野参考人 大人の自覚を促せるかということですけれども,その辺は私はあまり分からない部分があります。我々は消費者相談の現場からの話しかできませんので。18歳になるとやはりいろんな面で,先ほどから何回もお話しているように,ターゲットになるのが早くなるわけですね。そうすると,我々の言葉の中に,次々販売とか,一回誘引された人にまたどんどんいくというのがあるんです。一回ひどい目に遭ったからもうやらないと,そういう教育的指導とかができればいいんですけれども,またそういう人は引き込まれるという,同じ人が何回もというのが多いんですね。   だから,18歳になるとそれだけその後の年齢が長いわけだから,何回も何回もやるのが多くなるということで,大人の自覚というのは,国民投票法案ではないけれども,別個のことでいろいろ考え方があると思いますけれども,消費生活センターあるいは消費者問題での大人の自覚というのが必ずしも,18歳になったらこれこれこういう契約ができるから云々といって,きちんとできる人はもちろん多くいると思いますけれども,いかがなものかなという気はいたしますね。 ○鎌田参考人 私もあまりよく分からないんですが,私が接する18歳の子が,例えば未成年者取消権を知っていて,自分は契約しても取り消せるから契約しちゃえとか,そういうふうに思っているかと言えば,そうではないと思います。ですから,未成年者取消権があることで,子ども自身が何かそれに甘えているということはあまり感じられないです。   ただ,親の方はむしろ,もしかしたら未成年者だから何とかならないのかというような形で言ってくる親は多いのかもしれない。そういう意味では,成年年齢が20歳であることによって,十代の子の親が何か保護しようというか,そういった考えを持ちすぎているような面はあるかもしれないので,引き下げることで子どもの自覚を促すというよりは,親の方の自覚はもしかしたら促されるのかもしれないですけれども,子ども自身はどうなんだろうなという感じは,直感ですが,しております。 ○宮本委員 二点あります。一点目は,今のお話の続きですが,18歳から22歳までの状況が知りたいという要望の中でこういう表が出されたかと思いますが,成年年齢が18歳の国だとこの表が16,17歳から来ると思うのです。つまり,18歳が成年なら,その前の数年くらいから助走段階に入るわけですね。成年になるための準備やそのための支援も始まります。去年イギリスに行ったとき,若者支援のいろいろなセンターで聞いた話では,16,17歳くらいの子の借金のトラブルとかをそこで扱っているんですね。年齢的にいうと高校生年齢です。そこで言われた話では,若い子の場合は,お金を持っていないので,金額は極めて少ないと。しかし,被害には遭うということで,その年齢の場合にはかなり教育的な意味合いも含めてサポートするわけですね。ということは,つまり,成年年齢が20歳であると助走は19歳くらい,18歳の成年年齢ならば16歳くらいから成年年齢に向けた体制が作動するという面はあるように思います。という意味で言うと,日本の場合には,あらゆる面で20歳という大台があるために,仕組みそのものが20歳に合わせて作られているということは自覚する必要があるという感じがしております。   髙橋先生に伺いたいことなんですけれども,先ほど18歳を過ぎると,例えば教育費を出さない親が出てくるというような懸念があるとのことでした。そういう意味で,今の状況の中で成年年齢を18歳に下げることは危険であるというお話でして,前回の部会でも私はそういう問題はあるのではないかという発言はしたのですが,もう一方でこういう問題はないのでしょうか。成年年齢が20歳であっても出さない親は出さないのではないかと。そのときに,現状では,例えば20歳前の子どもを持っていて,しかし出し渋っている親を,成年年齢は20歳だからということで,親に責任を持たせることができているのかどうかということですね。   なぜそれを申し上げるかというと,20歳までは親が責任あるということになりますと,親が責任を果たさない子どもに対して公的に支援するのが遅れるわけです。これは18歳を成年年齢としている国であれば,18歳を超えて親がお金を出さない,本人は生活できなければ,それは公的な責任だということで発動するわけですけれども,日本はとにかく20歳でありますし,しかも慣習としても「親がかり」が強いので,一向に子どもというか若い人たちの困難というのが見えにくいことになると思うんです。そういう点では,18歳に引き下げることの危険性と,もう一方では20歳で留め置くことのデメリットと,両面があるのではないかと思います。 ○髙橋参考人 私の知っているケースで言うと,まず20歳未満で親が教育費を出さないと言ったときに責任追及できていることがあるかということで言えば,できているケースもあります。親子関係調整の調停というような形で子どもから親に調停を出して,そこで学費なり一定額を出してもらうという解決をしたことはあります。それと,成年年齢は20歳なので,逆に20歳未満で親が出さないときに公的保護がいかないのではないかというお話なんですけれども,これも18歳とか19歳で生活保護を掛けてもらっているケースもあります。   これは先ほどの発言がちょっと中途半端だったかもしれないんですが,成年年齢と扶養義務の問題というのは法律上は必ずしもリンクはしていないので,未成年者の養育義務と成年者の養育義務は民法上は多分,同じ条文を同じように使っていくので,理論上は成年であっても,生活保護を掛けるには親族にまず,扶養する気はないですかという書面による確認をするんですけれども,未成年の場合でも同じような形になりまして,DV事案だと,例えば旦那さんの方にはそれはいかないんですが,それと同じように,虐待事案ですと,親にそういう書面の確認はいかないで生活保護を掛けるということは,実務上は,私は幾つかやってもらっているケースがあります。   ですので,今の扶養義務の問題とこの成年年齢の問題というのは,そう単純にはリンクしていないので,私が今ここで中途半端に話すよりは,一度きちんと議論していただくべき課題かなということで,導入の部分だけちょっとお話をさせていただいという経過です。 ○鎌田部会長 親権関連につきましては,改めてその議論をする機会をつくりたいと思っております。 ○大村委員 先ほどの島野さんの御発言の中で出た次々販売の事例で,だまされる人は次もだまされますというお話があったんですけれども,個人差についてどういう認識をお持ちなのか,国民生活センターの方と弁護士の先生方,両方に伺えればと思います。高齢者の被害の話が先ほど引き合いに出されておりましたけれども,我々は,高齢者というのは,同じ年齢であっても,判断力は人によって全然違うと,個体差が大きいという意識を持っていて,それに対して,若年者についてはそれほどではないだろうというふうな認識を持っているわけですが,同じ18歳,あるいは同じ20歳だとして,個人差についてどのような認識を持っていらっしゃるのかということを伺いたいと思います。 ○島野参考人 やはり高齢者の方がそういう個体差は大きいのではないかと思います。   ただ,若年層であってもそんなに差がないかというと,やはり相当差はあると思うんですね。全員がみんな引っかかるわけでもないですし,特にマルチ商法なんていうのは,一度経験してこりごりだなと普通は思うのではないかと思うのですが,破綻するのは確実なようなものなんですが,それにまた同じ人が,また相談に来るというのはあるんです。だから,とても難しい問題かもしれないし,次々販売に遭う人が若年層ではどのくらいの人たちがいるという統計は今ありませんが,それが何人と出なくはないので,後でまた勉強してみたいと思いますけれども,多分,割合個人差,個体差はあるのではないかと思います。 ○河岡参考人 今の大村先生のお話ですけれども,次々販売というと二回ぐらいの被害に遭うのかと一般的にお感じになるかもしれないんですが,五回も六回も一人の人が被害に遭っています。それは業者の巧みな話術にいつもだまされるんですね,18,19,20歳ぐらいの子が。それは大体,大人から見ると皆共通の手口なんです。前の被害を回復してあげる,前に払ったお金は取り戻してあげる,今回は弁護士がつくから安心だとか,大人から見るとばかなことを言われているなと思うんですけれども,若年層は,弁護士なんていう名前が出てきたらもうお願いしようという気になって,50万円ぐらいのお金はぽんと払っております。   それから,先生の御質問に答える形ではないんですが,日ごろ相談を受けていて思うのは,若年層は被害に遭ったことすら気付かないということがあります。最近の相談なんですけれども,長崎県警がある事業者を逮捕しまして,書類を押収したところ契約者リストが出てきたと。長崎県警が契約者に電話をして,初めて自分が被害に遭っていたと気付いた若者が多かったということもありまして,警察では民事的な救済はしてくれないので,消費生活センターに相談するようにということで,相談が多くなった。センターに相談することで,今,多分,各地のセンターで救済に向けてあっせんしてくれているところだと思うんですが,それも一回目の被害,二回目の被害と立て続けに遭っている人たちが多くて,若い人は被害に遭っていることの自覚というか,気付くのが遅いという印象を私は持っています。自分がだまされたということに気付きにくいんだと思います。 ○鎌田部会長 岡田委員,何かございますか。 ○岡田委員 高齢者の場合は,判断力がだんだん不足してきているという部分と,それから,もしかしたらだまされているかもしれないけれどもそれを認めたくないという部分と,両方に分かれるんですね。圧倒的に多いのが,やはり判断力が落ちてきているということと,それから,子どもたちに知られたくないとか,いろんなそういう事情があるんですけれども,若者の場合は,傾向として言えるかというと,やはりしっかりしている子はものすごくしっかりしている。そうでない子は被害に遭っていくと。それで学習をしないという傾向はあるのかなと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは,出澤委員,お願いいたします。 ○出澤委員 島野さんにお尋ねいたします。部会資料13-2の2ページの相談件数ですが,2003年,2004年と非常に数が多くなっている。ところが,2005年になると相当少なくなっている。部会資料13-1の9ページを拝見しますと,架空請求が2003年,2004年と相当増えている。この数字がかなり上乗せされているとは思うのですが,ちょうど2003年,2004年頃は消費者関係の法律が非常に厳しくなってきたということが原因としてあるのではないかとも考えられます。例えば2004年を見ますと,18歳で2万6,412件,これは2007年でいくと22歳の約2倍にもなっています。   そういう意味では,法律の改正なり対応によってこれだけの人数を減らすことができたのかなと。そうすると,成年年齢を下げても,法律の対応の仕方によって,相談件数を減らすこともできるのではないか。そのようにも読めたんですが,そのような読み方をしてよろしいものかどうか。ちょっとこの統計のことを教えていただきたいと思います。 ○島野参考人 確かに先生がおっしゃるように,次々と消費者保護法の改正なり改定なりがされています。ただ,それは非常に予防にも,あるいは民事ルールが業法の中に入ってきたりとかというのがいろいろあると思うので,それはやはりそれなりの効果はもちろんありますよね。   先ほどの質問ともやや重複すると思いますが,これが現行のままでいくのと,20歳を18歳にするのとを比較すると,やはり4歳の刻みの中でピークが成年年齢のところにくるだろうというのが考えられるので,あまり賛成できないという話をしているので,その予防なり何なりというのがどういうところまでされたら,それがきちんとされたというのは非常に難しいことだけれども,それなりのことをされれば,別に18歳に引き下げるということに全く反対だということではないというのは,それは先ほど説明したとおりであります。   それと,2004年が一番多かったというのは,架空請求というのが圧倒的な数だったわけですね。だれかれ構わず架空請求というのはターゲットにしました。その中で子どもたちも結構多かったという,それだけの話だと思うんです。 ○鎌田部会長 ほかの参考人の方から何かございますか。   それでは,松尾関係官,お願いします。 ○松尾関係官 国民生活センターの関係で,ごく短い質問を二,三いたしたいと思います。   休憩前の議論で,学校教育に消費者教育を組み込むことは非常に大事だけれども,現状においては困難が大きいというお話が出ました。センターの仕事の御説明を伺っておりますと,パンフレットの出版であるとか,あるいはリーフレットの刊行であるとか,そういうことも業務内容の一つとして伺いましたが,そういうのは今の学校教育の空白を補うのに有力な手法ではないかと思いますが,その点いかがでしょうか。   もう一つは,国民生活センターと同じような活動をしている組織は諸外国にもあるのかどうか,もしあれば,そういうところと連携しておられるかどうかということをお尋ねします。   最後に,相談現場の感触についてですけれども,御紹介いただいた事例を拝見していますと,それは確かにだます方が悪いですけれども,しかしだまされる方もあまりにも愚かではないかとお考えになるようなケースが,しばしば,あるいはときどきあるものかどうか,その辺を教えていただきたいと思います。 ○島野参考人 学校教育の中において,消費者教育というのはとても大切だということで,そういうことを専門的に行う機関もあります。内閣府と文部科学省が共管で,消費者教育支援センターといいますか,そういうところで学校教育の中で消費者教育をというものもあります。国民生活センター自身もその団体と協力しながら,定期的に先生に対する消費者教育をやっております。   ただ,リーフレットとか,いろんな我々が出している豆知識というのもあるんですけれども,そういうものをかなり学校にも送付していますし,何か問題があって,学校の中で,例えば○○大学の中で急にマルチが出てきたと。それについては文部科学省にお願いしながら,そういう情報を出していくとか,そういうのはよくやっているんですが,私の思うのは,ある程度大きくなってからではなくて,小学校の教育において,お金というのはどういうものだよとか,そういうことから始めるべきなのではないかなという気はしています。だから,やっていることは不十分かもしれませんけれども,やっております。   あと,外国でこういう国民生活センターみたいなものがあるかという点については一番近くは,韓国に国民生活センターをまねて消費者保護院というようなものがあります。我が国では2004年6月2日には消費者基本法となりましたけれども,その前に消費者保護基本法というのが昭和43年5月30日に制定されたものでありますが,これを韓国は見て,それで消費者保護基本法というのをつくって,その中で国民生活センターみたいなものがよろしかろうといって消費者保護院を設立しました。   また,アメリカですと,消費者団体とかいろんなものがある。あるいは,父権訴訟なんかも入っているとか,いろいろな形であります。   それで,各外国とそういう連携をしているのかという御質問ですが,例えば日中韓政策会議という消費者問題の会議なんていうのも2年に一遍ぐらいずつやっておりまして,私も一昨年でしたか,中国に行っていろいろ見学してきましたけれども,そういうものとか,ICPENとか,そういういろいろな国際会議があります。だから,国境を越えた消費者トラブルというのがだんだん出てきまして,そういう問題についてどう対処するかというのは,情報交換はしています。   それから,最後のはなかなか難しい御質問でありまして,確かにこれでだまされるのかなというのが,私の本音の面では,やはりなくはないです。あるいは製品関連事故であっても,例えば洗濯物がグルグル回っている中に手を入れてしまい指を切断したとか,そういうのも,どこまでどうなのかなと。通常予見される使用形態かどうかとか,いろいろあります。確かにだまされる人が,こんなことでというのがあります。   私が国民生活センターに入ったときにある先輩から言われたのは,だまされる方も悪いけれども,だます方が絶対悪いんだと。それが消費者問題の基本だと。そういう人もいると。だから,そういう人の目線で消費者問題というのは解決するようにしないといけないと教えられました。確かに本音は先生ご指摘の部分はありますけれども,やはりだます方が悪いんだと。特にこのごろは悪質化しており,全く詐術を用いて云々というのが多いので,それは許さないという対応をしているつもりです。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。それでは,まず氷海委員からお願いいたします。 ○氷海委員 髙橋弁護士に伺いますが,お話の中で,年代にプラスにならなければ引き下げない方がいいという話が最後にあったので,その年代の本人にプラスになるという,そこのお話をもう少し膨らませてお聞かせ願います。 ○髙橋参考人 先ほどの話で私が申し上げたかったのは,やはり子どもにも自己決定権はあるはずで,未成年者保護といって親権者の同意が必要というのは,逆に言えば,子ども本人の意向だけでは物事が決められないという制度なんだと思うんですね。ですから,本当に成熟度の問題で子どもにとって利益の方が高いのであれば,むしろ親の同意というのは外してあげて,子ども自己決定権を尊重してあげる方が利益だろうという,そういう趣旨で申し上げました。 ○氷海委員 ありがとうございました。 ○鎌田部会長 山本委員,お願いします。 ○山本委員 部会資料13-2の2ページと3ページに関してですが,消費生活相談の相談件数,あるいは被害に遭われた件数と言ってもいいのかもしれませんが,この問題で18歳から22歳までという枠の中で議論したときに,議論の立て方として,年齢に照応した人間的な成熟度の問題と,民法で20歳成年と規定することによる抑止力。これいかんという議論がされましたけれども,追加的に島野参考人から御提供いただいた次の3ページとの絡み,つまり被害に遭われている全体,あるいは相談されている全体の中に占めている割合というものは40代が圧倒的に多いという情報の御提供をいただいたわけですけれども,もしそうだとすると,この問題は年齢に照応した成熟度の問題である以前に,社会的な財産の処分能力であるとか等々のところに主たる原因があって,その中でさらにそのことを前提として,冒頭申し上げたような問題を立てるとすれば,そういう立て方もできると理解していいのかどうか,そのあたりについて島野参考人に是非御意見をお聞かせいただければと思います。 ○島野参考人 消費者問題といいますか,消費者被害のトラブルの申出率の話をしましたけれども,これが有為な統計かどうかというのは,まず顕在化したのが4パーセントなので,その意味では管見した程度だと思うのです。ただ,ほかにはこれだけ大きいデータは日本にはないと思いますので,それは40代が多いとか30代が多いとかいうのは,やはり自宅にいるとか,そういう人が多いわけですよね。そういう人たちがねらわれやすくなって,トラブルに引き込まれやすくなるということの証左だと思います。小さいスパンで見ると,20歳になったときにこれだけぽんと出るというのは,やはり20歳までは民法による抑止力がかなり強いためにこうなるんでしょうということしか言えないと思います。   質問に対する答えになっているかどうか分かりませんけれども,全体的に見れば,18歳から22歳までの相談割合はそんなに大きくないわけです。というのは,持っている金額があまりないものだから,彼らからすると,だましがいがない。それよりも,やはりお金をいっぱい持っている人のところを主たるねらいにするのだと思うのです。   再度繰り返しになりますけれども,20歳になったときに,その中でも小さいスパンで見ると,20歳になるとぽんと上がることは民法なり何なりが非常に有効に彼らの中にも抑止力となってあるんだろうということだと思います。 ○山本委員 ということは,年齢に照応した成熟度が,まず第一義的な原因としてこういうものが出ているということではなくて,社会的な諸関係の中でこういう結果が出ているというふうに理解すべきではないかと,こういう理解でよろしいでしょうか。 ○島野参考人 ええ,私はそういうふうに思います。 ○山本委員 はい,分かりました。 ○鎌田部会長 ほかによろしゅうございますか。   おおむね予定の時間になってまいりましたので,各先生方への御質問はこの程度にしたいと思います。   島野理事,河岡統括調査役,鎌田弁護士,髙橋弁護士,本日は,長時間にわたりまして,大変有益なお話を賜りまして,誠にありがとうございました。   本日の審議はこの程度にしたいと思いますが,前回の会議で木幡委員から御提案がありまして,皆様から御意見も頂だいしたところでございますが,高校生等との意見交換会につきまして,事務当局から検討状況を報告させたいと思います。 ○佐藤幹事 前回の会議におきまして皆様に御議論いただきました高校生等との意見交換を行うことにつきまして,御提案いただきました木幡委員,高校の校長先生であります氷海委員,及び部会長とも御相談いたしました結果,氷海委員が校長先生をしておられる千葉県立八千代高校と,前回ヒアリングにお招きいたしました本多先生が校長先生をしておられる東京都立芝商業高校に御協力いただけることになりました。また,19歳,20歳,21歳の若者や,外国の若者とも意見交換をできればという御意見もございましたので,部会長が所属しておられます早稲田大学にも御協力いただき,大学生や留学生とも意見交換会を行うこととなりました。   皆様には,前回部会終了後に,メールなどで御参加の御希望を伺ったところでございます。日程といたしましては,各高校や大学の御都合もお聞きして調整させていただいているところですが,東京都立芝商業高校には5月30日,千葉県立八千代高校には6月2日,早稲田大学には,まだ日は確定しておりませんが,6月下旬又は7月下旬ころに訪問させていただき,意見交換会を実施したいと考えております。今後どの委員,幹事,関係官の方にどちらに行っていただくかにつきましては,皆様の御希望に添えるよう,事務当局の方で調整をさせていただきたく存じますが,日程が合わず御希望に添えない場合もございます。その場合は何とぞ御容赦のほどよろしくお願い申し上げます。   なお,意見交換会が終了しました後に,その直後又はその次の部会におきまして,意見交換会に出席されました方に意見交換会の結果,感想などの簡単な御報告をお願いしたいと考えております。 ○鎌田部会長 それでは,ただ今説明のありましたような方向で,事務当局に今後とも準備の作業を続けてもらいたいと思いますが,意見交換会の準備等につきまして,皆様から何か御意見があれば,御発言いただければと思います。   よろしゅうございますか。   それでは,最後に事務当局に次回の議事日程等について説明してもらいます。 ○佐藤幹事 次回の議事日程について御連絡いたします。   次回の日程は,平成20年6月3日火曜日,午後1時30分から午後4時30分まで,場所は法曹会館2階「高砂の間」を予定しております。   次回は,雇用・労働関係のヒアリングを実施したいと考えておりまして,トヨタ自動車株式会社法務部主査の藤井孝司様,東京電力労働組合中央執行委員長の種岡成一様,独立行政法人労働政策研究・研修機構の小杉礼子統括研究員の3名にお越しいただき,ヒアリングをさせていただくことを予定しております。 ○鎌田部会長 それでは,法制審議会民法成年年齢部会第3回会議を閉会させていただきます。   本日は御熱心な御審議を賜りまして,ありがとうございました。 -了-