法制審議会民法成年年齢部会           第8回会議 議事録 第1 日 時  平成20年9月30日(火) 自 午後1時31分                       至 午後4時47分 第2 場 所  法務省20階 第1会議室 第3 議 題  民法の成年年齢の引下げの当否について 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ○鎌田部会長 予定した時刻がまいりましたので,法制審議会民法成年年齢部会の第8回会議を開催いたします。   まず,事務当局から配布されている資料について説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 それでは,事務当局から配布させていただきました資料について御説明させていただきます。   本日は,席上配布資料はございませんので,第8回会議のために配布させていただきました資料の目録は,先日送付させていただきました資料目録のとおりでございます。   また,今回配布させていただきました資料は,いずれも部会資料でございまして,資料番号31-1と2,32から34まででございます。   それでは,部会資料につきまして御説明いたします。   資料番号31は,いずれも内閣府が実施いたしました民法の成年年齢に関する世論調査についての資料でございます。資料番号31-1が,内閣府大臣官房政府広報室が作成しました「民法の成年年齢に関する世論調査」と題する報告書でございます。また,資料番号31-2は,法務省が作成しました世論調査の概要をまとめた「世論調査の結果概要」と題する3枚の資料でございます。世論調査の結果につきましては,これらの資料に基づきまして,後ほど詳しく御説明させていただきます。   資料番号32,33は,いずれもこれまでの当部会における調査審議結果をまとめたものでございます。   資料番号32は,事務当局が作成しました「ヒアリングの結果について」と題する資料でございまして第2回から第7回までの部会で実施されましたヒアリングの結果をまとめたものでございます。   資料番号33は,事務当局が作成しました「高校生等との意見交換会の結果について」と題する資料でございまして,当部会のメンバーが参加しました高校生等との意見交換会の結果をまとめたものでございます。   資料番号34は,事務当局が作成しました「今後検討すべき論点について」と題する資料でございます。本日から,委員,幹事相互間で民法の成年年齢の引下げについて御議論いただくことを予定しておりますが,その際の参考資料として,今後皆様に検討していただきたい論点につきまして事務当局が整理したものでございます。   資料32から34までにつきましても,後ほど詳しく御説明させていただきます。   以上,配布させていただきました資料について,御説明させていただきました。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは,引き続き事務当局から,資料の内容について説明をさせたいと思いますが,最初に,前回の部会後に発表されました民法の成年年齢に関する世論調査の結果について,報告をさせたいと思います。 ○神吉関係官 民法の成年年齢に関する世論調査が内閣府大臣官房政府広報室により実施され,その結果が公表されましたので,御報告いたします。   民法の成年年齢の引下げは,国民生活に重要な影響を及ぼすことになるため,その検討に当たっては,国民の意見を幅広く聴取する必要があるものと考えられます。そして,国民投票法の国会審議においても,世論調査を行い国民の意見を十分に反映させる必要があることが指摘されていたことに加えまして,当部会の第1回会議におきましても,委員から,国民はどう考えているのかということを把握する必要があり,何らかの形で国民の意見を聴取すべきであるとの意見も出されましたので,内閣府に民法の成年年齢の引下げについて世論調査の実施を要望し,本年7月,内閣府により世論調査が実施されたものでございます。   なお,世論調査につきましては,実施担当府省庁であります内閣府からの要望により,正式な発表が行われるまでは実施をすること自体も公にすることができない扱いとされておりましたため,これまで当部会で御説明することができませんでしたことを御容赦いただきたく存じます。   部会の資料といたしましては,部会資料31-1の内閣府大臣官房政府広報室が作成いたしました「民法の成年年齢に関する世論調査」という題名の報告書,部会資料31-2の法務省が作成いたしました「世論調査の結果概要」という3枚紙の資料を配布させていただいておりますので,これらの資料を御覧いただきながら,結果の概要につきまして御説明させていただきます。   まず,部会資料31-1の3ページを御覧ください。   こちらに,今回の世論調査の概要が記載してございます。今回の世論調査は,民法の成年年齢の引下げについての国民の意識を把握し,今後の施策の参考とすることを目的として,調査対象を全国18歳以上の者5,000人といたしまして,調査員による個別面談聴取の方法で,本年7月10日から27日まで18日間行われました。有効回収数は3,060人となっております。   なお,世論調査は,全国20歳以上の者3,000人を対象として実施するのが通常でございますが,民法の成年年齢の引下げは国民生活に重大な影響を及ぼすものですので,対象者を5,000人に,また成年年齢を18歳に引き下げるかどうかについて調査するものですから,18歳以上を対象にするようにしていただきました。   調査項目といたしましては,まず,18歳,19歳の日本人に関する意見,成年年齢の引下げに関する認知度等について聞きました上で,成年年齢の引下げに直接関連する調査といたしまして,契約を一人でできる年齢,親権に服する年齢,養子をとることができる年齢,婚姻適齢に関する意識をそれぞれ調査いたしました。   なお,ここで部会資料31-1について御説明いたしますと,最初から59ページまでが調査の概要と調査結果の概要が記載されております。その後ろの61ページ以降に調査票というものがございます。これは実際に調査対象者に対して調査員が行った質問が記載してございます。そして,73ページ以降が集計表となっておりまして,個別の質問とその回答分布につきまして,諸要因ごと分析できるようにクロス集計を行っております。   それでは,具体的な世論調査の結果について御説明をしていきたいと思います。   部会資料31-1の4ページ,5ページを御覧いただきたいと思います。   世論調査では,まず最初に,18歳,19歳の日本人に関する意見が聞かれました。民法の成年年齢は,行為能力が制限されることによって取引における保護を受ける者,親権に服する者の範囲等を画する基準となっており,また,民法以外の多数の法律で,成年を基準として特定の行為を制限していることにかんがみますと,法律の世界においては,いわゆる子どもと大人の範囲を画する基準となっているものと思われます。   そこで,成年年齢の引下げの検討に当たっては,18歳,19歳の若年者を大人として扱ってよいのか,大人として扱うに足りる成熟度を有しているのかを検討する必要があります。   ところで,何をもって大人と考えるかは,個々人の価値観によって異なるものと思われますところ,18歳,19歳の若年者を大人として扱ってよいのかを分析・検討する前提として,子どもが大人になるための条件として国民が何を重視しているのかを調査する必要があります。   そこで,問1では,子どもが大人になるためには,どのような条件が必要かという質問が行われ,問2では,現在の18歳,19歳の日本人に当てはまることは何かという質問が行われました。   具体的な質問といたしましては,63ページを御覧いただきたく存じます。   問1といたしましては「あなたは,子どもが大人になるためには,どのような条件が必要であると思いますか。」,そして問2として「あなたが,現在の18歳,19歳の日本人にあてはまると思われることは何ですか。」という質問がされました。   その結果につきましては,再び戻っていただいて,5ページを御覧いただけますでしょうか。   子どもが大人になるための条件としては,「自分がしたことについて自分で責任をとれること」と回答した方が74.4パーセント,「自分自身で判断する能力を身に付けること」と回答した方が71.1パーセント,「精神的に成熟をすること」と回答した方が70.7パーセントと多かった一方で,「肉体的に成熟をすること」と回答した方は22.6パーセント,「結婚をすること」と回答をした方は11.8パーセント,「子どもを持つこと」と回答した方は9.9パーセント,「一人暮らしをすること」と回答した方は5.9パーセントと,少なかったという結果でした。   国民の多くは,大人になるための条件として,肉体的な成熟度や婚姻,一人暮らしなど,特定の行為を行うことは重視しておらず,責任をとれることや,判断能力を身に付けることなどの精神面を重視しているものとうかがえます。   また,現在の18歳,19歳の日本人に当てはまることは何かという質問に対しては,8ページの図2を見ていただくと分かりやすいのですが,「肉体的に成熟をしている」と回答した方は52.7パーセントと一番多く,「社会人として最低限の学力・知識を身に付けている」と回答した方は23.7パーセント,「自分自身で判断する能力が十分ある」と回答した方は20.2パーセント,「自分がしたことについて自分で責任をとることができる」と回答した方は17.0パーセント,「精神的に成熟をしている」と回答した方は11.9パーセントという結果になりました。   このように,国民の多くは,大人になるための条件として,責任がとれることや判断能力を身に付けることなどの精神面を重視している一方で,現在の18歳,19歳は,これらの条件を満たしていないと考えていることからすると,18歳,19歳の若年者は,大人であると思われていないものと推測されます。   続きまして,問3から問5について,御説明いたします。   問3から問5まででは,成年年齢の引下げの議論の認知度,関心度について質問がされました。   まず,問3の「成年年齢の引下げの議論について,どの程度知っているか」という質問につきましては,10ページを御覧いただきたく存じます。   結果といたしましては,「議論されていることを聞いたことがあり,議論の内容も知っている」と回答した方が25.7パーセント,「議論されていることを聞いたことがあるが,議論の内容までは知らない」と回答した方が57.1パーセント,「議論されていることを聞いたことがない」と回答した方が17.2パーセントでした。議論の中身までは知らないまでも,議論されていることを知っている方は,回答者の8割を超えており,成年年齢引下げの議論の認知度は相当高いものと考えられます。   次に,問4で,成年年齢の引下げの議論にどの程度関心があるかについて質問がされました。12ページを御覧いただけますでしょうか。   その結果,「関心がある」と答えた方が25.6パーセント,「ある程度関心がある」と答えた方が49.9パーセント,「あまり関心がない」と答えた方が17.5パーセント,「関心がない」と答えた方が6.5パーセントでした。「ある程度関心がある」と回答した方を含めれば,約75パーセントの回答者が引下げの議論に関心があると答えており,国民的関心の高さをうかがわせます。   また,次の問5では,民法の成年年齢と,飲酒・喫煙年齢,投票権年齢との関係の認知度に関する質問がされました。   65ページを御覧いただけますでしょうか。   この質問の際に,資料2という枠の中にありますように,「民法の成年年齢の引下げが議論されていますが,民法の成年年齢を引き下げても,お酒を飲んだり,タバコを吸ったりすることができる年齢は,当然には引き下がるわけではありません。また,民法の成年年齢を引き下げることなく,選挙で投票することができる年齢を引き下げることも理論的にはできると考えられています。」と記載されたカードを対象者によく読んでもらってから,民法の成年年齢と,飲酒・喫煙年齢,投票権年齢との関係について知っていたかどうかについて質問がされました。   この結果につきましては,戻っていただいて恐縮なのですが,15ページを御覧いただきたく存じます。   こちらを見ますと,「いずれの関係についても知っていた」という回答が43.9パーセントと一番多く,「いずれの関係についても知らなかった」という回答が28.3パーセント,「投票権年齢との関係についてのみ知っていた」という回答が16.6パーセント,「飲酒・喫煙年齢の関係についてのみ知っていた」という回答が11.2パーセントと続きました。   民法の成年年齢の引下げの議論は,飲酒・喫煙年齢の引下げ,投票権年齢の引下げと混同して議論されることもあるところ,今回の世論調査でも相当数の国民が,民法の成年年齢の引下げの意義を正確に認識していないことがうかがわれるという結果が得られました。   それでは,民法の成年年齢の引下げに直接関連する質問について御説明いたします。   まず,今回の世論調査の質問の構成,すなわち,今回の世論調査では,契約を一人ですることができる年齢,親権に服する者の年齢,養子をとることができる年齢をどうするか,個々に質問しており,民法の成年年齢をどうするか,直接に質問が行われていない理由について簡単に御説明いたします。   民法の成年年齢は,行為能力が制限されることによって取引における保護を受ける者,親権に服する者,それから,養子をとることができる者などの年齢を画する基準となっているなど,民法においても複数の意義を有しております。   民法の成年年齢の引下げに関する国民の意見を調査する方法といたしましては,成年年齢の引下げに賛成か反対かと直接質問する方法も考えられますが,先ほどの飲酒・喫煙年齢,選挙年齢との関係についての調査結果からもうかがわれますように,民法の成年年齢の意義について正確に理解をしていない方も相当数存在するものと考えられます。   そういたしますと,成年年齢の引下げについて,直接賛否を問うよりも,契約を一人ですることができる者,親権に服する者,養子をとることができる者の年齢について,それぞれどうするかを質問するほうが,適切な回答を得られやすいものと考えられます。   そこで,今回の世論調査では,成年年齢の引下げについて直接賛否を問うのではなく,契約を一人ですることができる者の年齢,親権に服する者の年齢,養子をとることができる者の年齢について,それぞれ変えるべきか否かを質問していただくことといたしました。   それでは,問6の契約を一人ですることができる者の年齢を18歳に引き下げることの賛否の結果について御説明させていただきます。   65ページを御覧いただけますでしょうか。   問6の質問の際に,資料3として,「民法では,20歳以上の者(成年者)は,一人で高額な商品を購入するなどの契約(パソコンの購入やクレジットカードの申込みなど)をすることができます。一方で,20歳未満の者(未成年者)が契約をするためには,親などの同意が必要で,親などの同意を得ないでした契約は取り消すことができます。」と記載されたカードを対象者によく読んでもらってから,「あなたは,18歳,19歳の者が,親などの同意がなくても一人で高額な商品を購入するなどの契約をできるようにすることに賛成ですか。それとも,反対ですか。」という質問がされました。   現行の民法のもとでは,お小遣いの範囲の買い物など,小額な商品の購入につきましては,未成年者であっても親の同意なく契約をすることが可能とされておりますので,ここでは成年者が通常行うことが想定されるパソコンの購入やクレジットカードの申込みなど,高額な商品の購入などを具体例として提示しながら,高額な商品の購入などの契約を18歳,19歳の者にさせることの当否について質問をしてもらうようにした次第でございます。   その結果につきましては,戻っていただいて恐縮ですが,17ページの図6を御覧いただきたいと思います。   こちらを見ますと,「賛成である」と回答した方が7.2パーセント,「どちらかといえば賛成である」と回答した方が11.8パーセントでして,これらを合わせると,賛成と回答した方は19.0パーセントでした。   一方,「どちらかといえば反対である」と回答した方は33.5パーセント,「反対である」と回答した方が45.3パーセントでして,合わせると反対と回答した方が78.8パーセントでした。   性別で言いますと,女性の賛成が12.0パーセントであるのに対し,男性の賛成が26.9パーセントと高くなっています。   また,年代別に見ますと,年代別に賛成と回答した方の割合は,18歳,19歳で20.5パーセント,20歳代で29.0パーセントと,そこが一番高くなっておりますが,30歳代で23.4パーセント,40歳代で17.9パーセント,50歳代で19.2パーセント,60歳代で17.1パーセント,70歳以上で12.5パーセントとなっております。   また,資料の97ページの上のほうを見ていただきたいのですが,少し字が小さくなっていて恐縮ですが,こちらは,問6の賛否と,回答者に子どもがいるかどうかの結果をクロスしたものでございます。こちらを見ますと,子どもがいる方につきましては賛成が16.9パーセントであるのに対し,子どもがいない方につきましては賛成が25.4パーセントと高くなっているという結果が出ております。   資料19ページの図7を御覧いただきたいと思います。   こちらに,年齢の引下げに賛成する理由が書かれてございます。年齢の引下げに賛成の理由といたしましては,「働いて自分で稼いだお金は,自分の判断で使えるようにしてもよいと考えられるから」という回答が一番多く,「権利を与え,義務を課すことによって,大人としての自覚を促すことができるから」,「自分自身で判断する能力が十分あるから」,「自分がしたことについて自分で責任をとることができるから」と続いております。「諸外国の多くでは,18歳から契約を一人ですることができるから」と回答した方は9.3パーセントにとどまっております。   また,年齢の引下げに反対する理由といたしましては,23ページの図8を御覧いただきたいと思います。   こちらによりますと,「経済的に親に依存をしているから」という回答が一番多く,「自分がしたことについて自分で責任をとることができないから」,「自分自身で判断する能力が不十分であるから」,「高校3年生でも18歳となるが,高校生が親などの同意なく高額な商品を購入することができることになると不安であるから」,「浪費や消費者被害などの問題が増加すると思われるから」と続いております。   次に,問6のサブクエスチョンのbの2の結果について御説明いたします。   当部会では,第1回会議の際にも御説明いたしましたとおり,仮に現時点では民法の成年年齢を引き下げるような状況にはないといった結論になった場合でも,いかなる条件,環境整備,例えば中学校や高等学校における法教育の徹底などが考えられますが,いかなる条件,環境整備が行われれば,成年年齢を引き下げてよいかといったことについても検討の対象としていただいております。   そこで,問6のサブクエスチョンのbの2では,問6で,契約を一人ですることができる年齢を18歳に引き下げることに「反対」又は「どちらかといえば反対」と回答した方に対して,どのような条件を整備したら契約を一人ですることができる年齢を18歳に引き下げてよいと考えるかという質問をしていただくことにいたしました。   その結果が,26ページの図9でございます。38.9パーセントの回答者が「どのような条件が整備されたとしても,年齢を引き下げることには反対である」と回答いたしましたが,「18歳になる前に,契約の意味や,契約に伴う責任など,法的なものの考え方を身に付けるための教育をより充実して行うこと」と回答した方が38.4パーセント,「18歳になる前に,消費者問題や金融に関する教育をより充実して行うこと」と回答した方が26.8パーセント,「消費者保護の施策などを強化充実すること」と回答した者が19.7パーセントでした。   この結果をどのように分析するかというのはなかなか難しいところではございますが,部会資料31-2を御覧いただきたく存じます。   部会資料31-2の3枚目のペーパーは,問6と問6のサブクエスチョンのbの2との関係を明らかにしたものでございます。   問6の契約を一人でできる年齢を18歳にすることにつきましては,全体の19.0パーセントの方が賛成し,78.8パーセントの方が反対いたしました。「わからない」と回答した方は,全体の2.2パーセントでした。   そして,反対と答えた78.8パーセントの方に,サブクエスチョンといたしまして,どのような条件整備をしたら18歳に引き下げてもよいか複数回答で質問いたしましたところ,「どのような条件が整備されたとしても,年齢を引き下げることには反対である」と回答した方が38.9パーセントいましたので,こちらを計算いたしますと,これは全体の30.7パーセントということになります。このサブクエスチョンで「わからない」と回答された方が5.2パーセントいましたので,こちらも計算いたしますと,これは全体の4.1パーセントということになります。そのほかの回答をした方々が,条件が整備されれば18歳に引き下げてもよいという回答をしたことになりますので,これは引き算をいたしますと全体の44パーセントということになります。   この資料の下に書かれている円グラフを御覧ください。これは今申し上げたところをまとめたグラフでございます。紫の19と書かれたところは,契約を一人でできる年齢を18歳に引き下げることに賛成と回答された,全体の19パーセントの方をあらわしております。   次の赤紫の44と書かれたところは,契約を一人でできる年齢を18歳に引き下げることについては反対と回答したが,条件整備がされれば18歳に下げることに賛成であると回答した方でございますが,こちらは全体の44パーセントであるということをあらわしております。   次のクリーム色の部分は,条件整備の質問については分からないと答えた方で全体の4.1パーセント,次の水色の30.7とある部分が,どのような条件が整備されたとしても,18歳に引き下げることに反対と回答された方で,全体の30.7パーセントを占めていることをあらわしております。   濃い赤紫の2.2の数字は,契約を一人ですることができる年齢を18歳にすることについて,わからないと回答した,全体の2.2パーセントの方を示しております。   このグラフを見ますと,賛成の方と条件整備が整えば賛成という方を合わせますと,全体の約63パーセントを占めていることになります。   このように,国民の約6割強の方は,教育の改革など,一定の条件整備が行われれば,契約を一人ですることができる年齢を18歳にすることに賛成であるとも考えられます。   次に,問7の結果について御説明いたします。   当部会では,仮に現行制度を変える場合,単純に成年年齢を引き下げるという結論をとるほかに,フランス民法が採用しているような,裁判所等による審査を条件に未成年者が服している親権からの解放を認めるという制度や,成年・未成年に二分するのではなく段階的に権利を付与する制度を採用することも検討の対象としていただいております。   そこで,問7では,これらの制度の導入の可否について質問を行っていただきました。   部会資料31-1の28ページを御覧ください。   問7の(1)では,年齢の区分を3つ以上設けて,一人で結べる契約の範囲を段階的に広げる制度の導入の賛否について質問を行いましたところ,「賛成である」と回答した方が12.5パーセント,「どちらかといえば賛成である」と回答した方が26.1パーセントでして,合わせると賛成は38.6パーセント,「どちらかといえば反対である」と回答した方が29.2パーセント,「反対である」と回答した方が23.2パーセントでして,合わせますと反対は52.4パーセントという結果でした。   次に,1ページめくっていただきまして,30ページを御覧ください。   問7の(2)では,契約を一人でする必要性が高いなど,一定の条件が認められれば,18歳,19歳の未成年者であっても20歳以上の成年者と同様に一人で契約をすることができるようにする制度の導入の賛否について質問を行いましたところ,「賛成である」と回答した方が13.1パーセント,「どちらかといえば賛成である」と回答した方が26.5パーセントでして,合わせると賛成は39.5パーセント,「どちらかといえば反対である」と回答した方が27.4パーセント,「反対である」と回答した方が26.6パーセントでして,合わせると反対は53.9パーセントでした。   このように,いずれの制度についても導入に賛成と回答した者が約4割,反対と回答した者が約5割あり,契約を一人ですることができる者の年齢を18歳に引き下げることの当否について質問をした問6の結果に比べますと,やや賛成が多くなっていると言えるかと思います。   このような結果になった理由については必ずしも明らかではありませんが,18歳になったらどのような契約でも一人ですることができることにするということについては抵抗は強いが,18歳,19歳であっても,契約を一人でする必要性が高いなど一定の条件を満たす場合や,余り重要でない契約をする場合については,18歳,19歳の若年者に契約を一人でさせてもよいと考えている国民が少なくないとも考えられます。   それでは,続きまして,親権に服する年齢に関する意識について御説明いたします。   部会資料31-1の32ページを御覧ください。   問8では,子どもが親権に服する年齢を18歳に引き下げることの賛否について質問が行われました。   なお,親権の概念を適切に理解いただいた上で回答をしていただけるよう,民法では20歳未満の子については,親権に服するとされており,親権とは,20歳未満の子どもを育て,教育を受けさせるとともに,子どもの住む場所を決めたり,子どもの財産を管理することである旨の説明が記載されたカードを提示した上で,質問が行われました。   この結果,18歳,19歳の者について,父母の親権を及ばなくすることに「賛成である」と回答した方は9.4パーセント,「どちらかといえば賛成である」と回答した方は17.3パーセント,合わせますと賛成は26.7パーセントという結果でした。また「どちらかといえば反対である」と回答した方は35.3パーセント,「反対である」と回答した方は34.1パーセントでして,合わせると反対は69.4パーセントという結果でございました。契約を一人でできる年齢の回答に比べますと,反対と回答した方が,やや少なくなっております。   親権に服する年齢の引下げに賛成の理由といたしましては,資料の34ページ,35ページを御覧いただきますと分かりますように,「親権を及ばなくすることで,大人としての自覚を促すことができるから」という回答が一番多く,「自分自身で判断する能力が十分あるから」,「自分がしたことについて自分で責任をとることができるから」,「社会人として最低限の学力・知識を身に付けているから」という回答が続きました。   また,年齢の引下げに反対する理由といたしましては,資料の38ページ,39ページでございますが,「経済的に親に依存をしているから」という回答が一番多く,「自分自身で判断する能力が不十分であるから」,「自分がしたことについて自分で責任をとることができないから」,「親権を及ばなくしても,大人としての自覚を持つとは思えないから」という回答が続いております。   続きまして,養子をとることができる年齢に関する意識について御説明いたします。   部会資料31-1の42ページを御覧ください。   問9では,養子をとることができる年齢について質問いたしました。   養子をとることができる年齢については,問6や問8など,契約を一人ですることができる年齢や親権に服する年齢に関する質問とは異なりまして,年齢を現行法の20歳よりも引き上げるべきであるという選択肢も加えてもらっていただいております。   その理由につきまして,若干御説明させていただきます。   国民投票法では国民投票の投票権者の範囲が18歳以上と定められておりまして,国民投票法の附則において,民法の成年年齢の引下げの検討が求められておりますが,この附則が設けられた理由といたしましては,公職選挙法の選挙年齢と国民投票法の投票権年齢は同じ参政権であることから一致すべきであること,そして,公職選挙法の選挙年齢を戦後20歳に引き下げた理由として,民法の成年年齢が20歳であることが挙げられており,民法上の判断能力と参政権の判断能力は一致すべきであることなどが挙げられております。   したがいまして,民法上,完全な行為能力を与えられることになる年齢である「契約を一人ですることができる年齢」や,それと密接な関係がある「親権に服する者の年齢」に関しては,これらを20歳以上に引き上げるという議論は,国民投票法の附則が成年年齢の引下げの検討を求めた趣旨にそぐわないと考えられます。   これに対しまして,養子をとることができる年齢につきましては,現在は成年年齢と一致しておりますが,契約を一人ですることができる年齢や親権に服する年齢と必ずしも一致させる必要はなく,また,実際に諸外国の立法例を見ましても,契約を一人ですることができる年齢よりも上に養子をとることができる年齢を設定している国も数多く見られます。前回の会議の際に御説明いたしました参考資料19を御覧いただきますとお分かりになるかと思われます。   したがいまして,養子をとることができる年齢につきましては,これを18歳に引き下げるか,現状のままに維持すべきかという選択肢のほかに,引き上げるべきであるという選択肢を設けていただくことにいたしました。   その結果,「18歳に引き下げるべきである」という回答が6.7パーセント,「現在のまま20歳とするべきである」という回答が51.6パーセント,「引き上げるべきである」という回答が34.8パーセントでした。   18歳に引き下げるべきだと考えた理由については,資料の45ページでございますが,「自分自身で判断する能力が十分あるから」,「18歳,19歳の者も結婚することができるから」,「自分がしたことについて自分で責任をとることができるから」という回答が多くございました。   また,現在のまま20歳とするべきであると考えた理由については,資料の49ページでございますが,「20歳になれば,自分がしたことについて自分で責任をとることができる者も多いから」,「20歳になれば,自分自身で判断する能力が十分ある者も多いから」,「20歳になれば,社会人として最低限の学力・知識を身に付けている者も多いから」という回答が多くございました。   また,年齢を引き上げるべきであると考えた理由については,資料の53ページでございますが,「子育てに関する知識・理解が不十分であるから」という回答が一番多く,「自分自身で判断する能力が不十分であるから」,「自分がしたことについて自分で責任をとることができないから」という回答が続きました。   このように,契約を一人ですることができる年齢や親権に服する年齢を18歳に引き下げることよりも,養子をとることができる年齢を18歳に引き下げることには反対が多かったという結果となりました。   このような結果になった理由につきましては必ずしも明らかではございませんが,契約を一人ですることができる年齢や親権に服する年齢については,若年者自らが親の保護から離れて契約をしたりすることに適した年齢を問うものであるのに対して,養子をとることができる年齢は,他人の子どもを法律上自分の子どもとし,その子どもを育てることに適した年齢を問うものであり,これを18歳に引き下げることには,より抵抗が強いものとも考えられます。   最後の質問といたしまして,問10で,婚姻適齢に関する質問が行われました。   資料の57ページを御覧いただきたいと思います。   現行民法では,未成年であっても父母の同意を得れば,男性は18歳から,女性は16歳から婚姻をすることができるとされておりますところ,成年年齢を18歳に引き下げた場合,男性は成年にならなければ婚姻をすることができないのに対し,女性は16歳,17歳の未成年者であっても,親の同意があれば婚姻することができることになり,婚姻適齢に関する男女間の差異がより顕在化するとも考えられます。   そこで,問10では,成年年齢を18歳に引き下げた場合に婚姻適齢をどうすべきか,すなわち現状のままでよいのか,それとも,女性の婚姻適齢を引き上げて,男女とも父母の同意なく18歳(成年)で婚姻ができることにすることがいいのか,それとも,男性の婚姻年齢を引き下げて,男女とも父母の同意を得て16歳(未成年)でも婚姻できることにするのがよいかについて質問が行われました。   この結果,「現状のままでよい」と回答した方が60.9パーセント,「男女とも18歳にするのがよい」と回答した方が30.3パーセント,「男女とも16歳にするのがよい」と回答した方が4.2パーセントでございました。   なお,婚姻適齢に関しましては,平成18年12月に実施されました「家族の法制に関する世論調査」におきましても同様の質問が行われております。   資料の59ページを御覧ください。   そこでは,女性は16歳になれば婚姻をすることができるということでよい,すなわち現行法どおりという意見が23.3パーセント,女性も男性と同様に18歳にならなければ婚姻をすることができないものとした方がよい,男女とも18歳にすべきという意見が41.8パーセントであり,今回の世論調査の結果と比較いたしますと,今回の世論調査では,男女とも18歳にすべきという意見が少なくなっております。   その理由につきましては必ずしも明らかではございませんが,平成18年の世論調査では,婚姻適齢の男女間の差に焦点を当てて,女性の婚姻適齢をどうすべきかと質問したのに対し,今回の世論調査では,成年年齢を18歳に引き下げた場合に婚姻適齢を見直すべきか否かと質問しており,この質問の仕方の違いが調査結果の違いに影響しているとも考えられます。   以上,やや長くなりましたが,世論調査についての結果の御報告を終了させていただきます。 ○鎌田部会長 どうもありがとうございました。   ただ今の報告につきまして,委員,幹事の方々から御質問がございましたらお伺いしたいと思います。どの点に関してでも結構ですので,御発言をお願いいたします。 ○仲委員 全体として,女性のほうが少し,コンサバティブといいますか,保守的という感じがするのですけれども,これは年齢構成が少し違うことなどを反映しているのでしょうか。それとも,やはり性差によるものなのでしょうか。 ○神吉関係官 事務当局から御説明させていただきますと,今回は,内閣府による世論調査ということでございますので,男女差や年齢差に余りばらつきがでないように内閣府に調整していただきまして,適切な結果が得られるように配慮していただいております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。   それではまた,この後の討論の中でもこれに関連して御発言いただいて構わないと思いますので,先に進ませていただきます。   これからの時間は,成年年齢の引下げに関する委員,幹事相互間の議論に充てたいと思いますが,その前提といたしまして,まず,事務当局からこれまで部会で実施してきましたヒアリング,高校生等との意見交換会の結果について報告をしてもらい,また今後検討すべき論点について説明をしてもらいたいと思います。 ○佐藤幹事 それでは,事務当局から報告と説明をさせていただきます。   先ほど御説明いたしました部会資料の32,33,34を使って御説明させていただきます。   まず,ヒアリングの結果でございますが,部会資料32に基づきまして,当部会で実施しましたヒアリング結果を事務当局でまとめさせていただきましたので,御報告させていただきたいと思います。   これは,なるべくヒアリングで出されました御意見等を網羅できるようにまとめさせていただきましたが,漏れている点やまとめ方の当否につきまして,御意見等ございましたら後ほど御指摘いただければと存じます。   当部会では,本年4月15日の第2回会議から本年9月9日の第7回会議までの合計6回にわたり,教育関係者,消費者関係者,雇用・労働関係者,若年者の研究をしている社会学者・発達心理学者・精神科医師,親権問題の関係者等から,民法の成年年齢を引き下げた場合の問題点の有無及びその内容,引下げの是非等に関する意見を聴取いたしました。   ヒアリングの結果,成年年齢の引下げに関する意見は賛否両論に分かれましたが,現在の若年者は様々な問題点を抱えており,成年年齢を引き下げるためには一定の環境・条件整備をする必要があるとの点では,ほぼ認識を共通にしていたものと思われます。   順に御説明いたします。2の若年者が抱える問題点のところに入ります。   ヒアリングでは,現在の若年者は,次のような問題点を抱えているという指摘がございました。   まず,全体的な特徴といたしましては,次のような指摘がございました。   自主自律的に行動することができず,指示待ちの姿勢をとる若年者が多い。服装の乱れや公共交通機関における乗車マナーの悪化,万引き等の増加などに表れているように,規範意識が低下している。感情を抑制する力や,根気強さが不足している。身体的には,早熟傾向があるにもかかわらず,精神的・社会的自立が遅れる傾向にあるが,これは幼少期からの様々な直接体験の機会や異年齢者との交流の場が乏しくなったこと,豊かで成熟した社会のもとで人々の価値観や生き方が多様化したことが理由であると考えられる。ゲームや携帯電話の影響により,人間関係をうまく築くことができない若者や,バブル崩壊の影響で,自分の人生に夢を見ることができないなど,将来に希望を持つことができない若年者が増加している。いわゆるモラトリアム傾向が強くなり,進学も就職もしようとしない若年者や,進路意識や目的意識が希薄なままとりあえず進学をするなどの若年者が増加している。ニート,フリーター,ひきこもり,不登校など,若者の非社会化(社会や他人に無関心な状態)が進みつつある。リストカットや自傷行為など心の病を持つ若年者が増加している。   次に,若年者が抱える消費者関係の問題として次のような指摘がございました。   若年者に関する消費者関係事件の相談としては,パソコン及び携帯電話の購入に関するもの並びにキャッチセールスに関するものなどが多く,「無料」,「格安」,「儲かる」などの言葉を安易に信じ,だまされやすい。アルバイトをするなどして稼いだお金を,本来は貯蓄をするなど計画的に管理をしなければならないのに,外食や遊興費などに費やしてしまうなど,財産管理能力が低い。   労働関係の問題としては次のような指摘がございました。   従前は高校などを通じて若年者にも適切な職業紹介が行われ,正社員として就職しキャリア形成が行われてきたが,近年,若年者がパートやアルバイトなど非正規雇用に就く機会が増加している。非正社員と正社員の待遇格差は, 年齢上昇とともに拡大し,10代で非正社員になることはキャリア形成上大きなリスクがある。また,非正規雇用は,学校あっせんの仕組みとは異なり,応募内容と実際の労働内容が異なっていたり,劣悪な労働条件が隠されていたりするなど危険性が高い。   親権関係の問題としては次のような指摘がありました。   高度経済成長の結果,核家族化が進行し,子育ての負担が父母のみにかかるようになったことなどから,両親から虐待を受ける子が増加している。親から虐待を受けた結果,自分を大切な存在であると思えなくなり,自傷他害などの問題行動や,他者とのコミュニケーションに問題を抱え,社会的自立が困難な若年者が増加している。   続きまして,3の引下げに賛成の意見の概要のところに入りますが,成年年齢の引下げに賛成するという方々の意見の概要は次のとおりでございました。   高校3年生で成人を迎えるとすることによって,高校教育の場で,成人の意味や大人になるための教育を,現実味をもって指導することが可能になる。高学歴化が進む中,大人への移行期が長期化しているが,だからこそ成年年齢を引き下げ,若年者が早期に社会の一人前の構成員となるという意識づけを行うべきである。従前の我が国の若者政策は雇用対策が中心であり,若年者の自立を促すためにはどうしたらよいのかという視点が希薄であり,若年者が経済的,社会的,職業的に自立を果たせるよう若者に関する施策を充実させる必要がある。成年年齢の引下げを,日本の若者政策の転換の契機とすべきである。両親が離婚した場合,その子の親権の帰属をめぐって争いがしばしば生じるが,このような争いから18歳,19歳の子が解放されることになる。親からの虐待を受けている18歳,19歳の子が親権から解放され,自由に居所等を定めることができる。なお,この点については,児童虐待の対象は低年齢児であり,成年年齢引下げによって得られる効果は小さいとの指摘もありました。   次に,成年年齢の引下げに反対するという方々の意見の概要は,4に書かれたとおりでございました。   国民生活センター等に寄せられる相談件数は20歳になると急増することや,20歳になった誕生日の翌日をねらう悪質な業者も存在することなど,現在の消費者トラブルの状況からすると,民法第5条の未成年者取消権が悪質な業者に対する抑止力になっていると考えられるが,成年年齢を18歳に引き下げると,消費者トラブルが若年化するおそれがある。若年者の消費者被害の特徴として,被害が学校などで連鎖して広がるという特徴が挙げられるが,成年年齢を18歳に引き下げると,マルチ商法などが高校内で広まる危険性がある。成年年齢を引き下げると高校生でも契約ができるようになり,借金をしたり,借金を返すために劣悪な労働に従事する若者が出てくるおそれがある。高校において,進路指導や生活指導をする場合,現在は親を通じて行っているが,高校3年生で成人になると,親との関係が切れてしまい,高校が直接生徒の指導をしなければならず,生徒が指導に従わない場合など困難な事態が生じる可能性がある。消費者被害が生じないような環境ができれば,成年年齢の引下げも可能ではあるが,悪質な業者は,法の規制の間隙をねらうはずであり,そのような環境整備が実際にできるか疑問である。現在でも親の保護を十分に受けられていない層の若者が,ますます保護を受けられず,困窮するおそれがある。精神医学の世界では,若者が成熟する年齢は30歳であるとか,35歳から40歳くらいであるという意見があり,法律上の成年年齢を引き下げると,法律上の成年年齢と実際上の成熟年齢が現在よりも乖離することになり若者のシニシズム(成年年齢に達したとしても,どうせ子どもだし,自立できないという意識)が進む可能性がある。精神医学的には,成熟度を「コミュニケーション能力(会話能力のみならず,相手の感情を読み取ったり,それに応じて行動できる能力)と欲求不満耐性(欲求や欲望の実現を待てる能力)により測ることができ,両者がバランスよく取れていることが大切であるが,日本の若者は,ひきこもりなど非社会化の傾向が進んでいることを考えると,「欲求不満耐性」は強いが,「コミュニケーション能力」を欠く若者が多いと思われる。このような若者に対しては,成年年齢の引下げをして,自己責任を強調することは,若者たちを追い込むことになり,突発的に凶悪犯罪を敢行するなどの暴発を起こす危険性がある。成年年齢の引下げに必要となる教育の充実は,授業時間数の制約から困難であり,若者の自立を促すための政策も後回しになる可能性が強い。離婚後の養育費の支払期間は20歳までとするのが一般的であるところ,成年年齢の引下げに伴い,養育費の支払期間も18歳までに短縮されるおそれがあり,その結果,子の大学進学機会が狭められたり,経済的に困窮する家庭のもとで子が虐待を受けることが増加するおそれがある。   続きまして,ヒアリングにおいて,成年年齢を引き下げるために必要となる条件整備として,次のような指摘がございました。   経済活動の基本である民法や商法の基本や,電子契約のシステム,ルールなどに関する教育の充実。若年者が消費者トラブルに巻き込まれないように,お金や契約の問題に関する教育の充実。インターンシップ等の労働実践教育や,仕事の探し方,さらには働くことの尊さ,喜び等,労働の意義などに関する労働教育,いわゆるキャリア教育などの成人教育の充実。多様な価値観や文化で構成される現代社会において,個人が自己を守り,自己実現を図るとともに,よりよい社会の実現のために寄与することができるよう,社会の仕組みを学び,また,社会における自己の権利や義務などを学ぶことができる教育(いわゆるシティズンシップ教育)の導入,充実。若者の自立に関する世間・親の意識改革。例えば通常のレールに乗れなかったニート,ひきこもり等の人々に対して周囲が寛容になることなど。虐待を受ける子や,虐待を受けた結果,社会的自立が困難となった者を減らす必要があることから,児童福祉施設の人的,物的資源の充実,子育てを社会が支え合って行うという仕組みの充実。以上のような条件整備の指摘がありました。   そのほかの意見として,ヒアリングで出された意見として次のようなものがございました。   高校生が18歳になるとともに順に成人になるというのでは,高校における指導・教育に支障を来すおそれがあるので,高校卒業時から4月1日までの間の適切な日をもって,一斉に成人になるものとするか,あるいは19歳を成人とするべきである。欧米諸国で成年年齢が引き下げられた主な理由として,日本には存在しない徴兵制が影響していることや,成年年齢が引き下げられた1960年代,70年代は,児童虐待が深刻化する前であったことも考慮する必要がある。選挙権年齢を引き下げることは,若年者に選挙権を付与するだけであるが,民法の成年年齢の引下げは,18歳,19歳の若年者に契約を一人ですることができる権利等を付与する一方,親の同意を得ないでした契約が取り消せなくなるなど,保護の切下げにもつながる。したがって,選挙権年齢の引下げと,民法の成年年齢の引下げは切り離して議論すべきである。   以上のような指摘がございました。   続きまして,高校生等との意見交換会の結果につきまして,部会資料33に基づいて御説明いたします。   皆様御存じのとおり,本年5月から7月までの間,3回にわたり,部会のメンバーが高校,大学に赴き,高校生,そして留学生を含む大学生との間で,成年年齢の引下げについて意見交換を行いました。   この意見交換会を実施しましたのは,成年年齢の引下げを検討するに当たり,成年年齢の引下げによって一番影響を受けることになる18歳,19歳前後の若者の率直な意見を聞きたいという意見が部会で出されたことからであります。   今回の意見交換会は,ある特定の高校及び大学の生徒・学生と意見交換を実施したものであり,必ずしも若者全体の意見を集約したものではありませんが,その中でもなるべく幅広い意見を聴取できるよう,高校における意見交換会につきましては,普通高校のみならず商業高校にも御協力いただき,また,大学における意見交換会につきましては,特定の学部及び出身国に偏らないよう配慮しつつ,日本人学生及び外国人留学生との意見交換会を実施することとしました。   なお,本意見交換会は,対象者が高校生や大学生であり,議事を記録すると自由な発言が阻害されるおそれが高いことや,意見交換会の目的が若者の意見を集約することにはなく,逐語の議事を残す必要がないことなどから,議事録の作成はしないこととし,その代わりに意見交換会に出席した部会の委員,幹事から,部会において,その結果,感想等を報告していただくことにしました。   それぞれの意見交換会における結果,感想等の概要につきましては,部会資料33に記載いたしましたとおりでございます。既に部会で御報告をいただいた内容ですので,ポイントとなるところにつきまして御説明いたします。   まず,本年5月30日に,部会委員,幹事,関係官,10名に御参加いただきまして,都立芝商業高校におきまして,高校生15名との意見交換会を実施しました。その際に出ました高校生の意見の概要といたしましては,次のようなものがございます。   成年年齢の引下げについては,まだ高校生なのに急に大人と言われても困る,社会のことをもっと学んだ上でないと成人という自覚は生じないなど,多くの高校生が反対でありました。もっとも,すぐに自分が大人になることについては不安であるが,数年前から18歳で成人であると言われていれば心の準備はできると思う。18歳で成人となっても対応できるし,自覚も持てるので賛成であるという意見もございました。   また,契約につきましては,成年年齢が下がると高校3年生でも契約をすることができるようになるが,マルチ商法に巻き込まれたりするのではないかという不安があるという意見があった一方,20歳でもだまされる人はだまされるし,18歳でも賢い人はいるのであって,成年年齢の引下げには余り関係がないのではないかという意見もございました。   次に,本年6月2日に,部会委員,幹事,関係官,7名に御参加いただきまして,千葉県立八千代高校におきまして,高校生17名と意見交換会を実施しました。その際に出ました高校生の意見の概要としましては,次のようなものがございます。   成年年齢の引下げにつきましては,社会を知らないので18歳で急に大人だと言われても困る。同じ高校生に成年者と未成年者が混じるのはよくないのではないか,受験の最中に成人式を行うのは困るなど,多くの高校生が反対でございました。また,日本は戦争しない国で徴兵制もないのであるから,そのあかしとして成年年齢は20歳のままでよいのではないかとの意見もございました。   一方,悪い人にだまされないように勉強するなどの十分な準備期間があれば18歳でもよい,制度を変える場合には,分かりやすい制度にしてほしいという意見もございました。   契約に関しましては,携帯電話を購入するなど簡単なものであればよいが,土地取引など難しいものについては,18歳は無理ではないかとの意見が出されました。また,現実問題として,小遣いの範囲内であれば,親に相談せず洋服などを購入しているが,高額な商品を購入する場合は親と相談しないとできない,契約は親にしてもらっているので自分でする必要性を感じないとの意見も出されました。   続きまして,7月3日に,早稲田大学におきまして,留学生,日本人大学生との意見交換会を実施いたしました。   まず,留学生との意見交換会につきましては,部会委員,幹事,関係官,10名に御参加いただきました。その際に出ました留学生の意見の概要といたしましては,次のようなものがございます。   日本人学生のイメージとしては,同世代と比較して大人に見えるという意見もあったが,日本ではいい大学に入れば就職することが難しくないため,やりたいことがはっきりせず,自立心が足りない学生が多いという意見もありました。   日本において,成年年齢を引き下げることにつきましては,大半の留学生が問題がないという意見でありましたが,成年になる前にいろいろチャレンジして失敗しても許される期間を保障するという意味で,引き下げることには反対であるという意見もございました。   日本人大学生との意見交換会につきましては,部会委員,幹事,関係官,10名に御参加していただきました。その際に出ました大学生の意見の概要は,次のようなものでございます。   成年年齢の引下げにつきましては,どちらかといえば反対の学生が多く,高校を卒業しただけでは社会を知らないので成年といわれても無理である。高校では大学受験のための教育しか行われておらず,高校教育だけでは判断能力を身に付けられないという意見がありました。一方,引下げによって判断力や自立心が醸成される,18歳にしてもそれほど問題は起こらないのではないかとして,引下げに賛成する方もおられました。   なお,賛成,反対いずれの立場の方も,成年年齢を引き下げるためには,契約に関する教育や責任感を醸成するための教育など,教育を充実させる必要があるという点では共通しておりました。ただし,現状の高校教育は受験一辺倒であり,そのような教育を行う余裕があるのか疑問であるという意見もございました   以上で意見交換会の結果についての報告を終わります。   引き続き,部会資料34に基づきまして,今後,委員,幹事,関係官の皆様にこれから議論していただく際に検討すべき論点につきまして,事務当局で整理いたしましたので,この資料の内容について御説明させていただきます。   まず,第一に,民法の成年年齢を引き下げるべきか否かという論点がございます。   これは諮問の内容そのものでございますが,ヒアリングの結果,高校生との意見交換会の結果などこれまでの審議結果や,世論調査の結果を踏まえまして,成年年齢の引下げについてどう考えるかが論点となります。   これまでの審議結果や世論調査の結果によりますと,成年年齢を引き下げるためには,教育の改革など一定の条件整備が必要であるとの意見が多く出されておりますが,この点についてどのように考えるかも御議論いただきたく存じます。   また,憲法改正の国民投票の投票権年齢が18歳と定められ,これに合わせて選挙権年齢を18歳にするとすれば,民法の成年年齢も18歳にすべきであるという意見につきましてもどう考えるべきか,先ほどヒアリングで出された意見として御説明いたしましたが,選挙権年齢と成年年齢は切り離して議論すべきだという意見がありますところ,この点につきましても御意見をちょうだいできればと考えております。   次に,2ですが,仮に成年年齢を引き下げるためには一定の条件整備が必要であるという結論をとる場合,どのような条件整備が必要と考えるべきかにつきましても御議論いただきたいと思います。   先ほど,部会資料32の5ページ,5のところで,ヒアリングで提言のありました整備が必要となる条件について御説明いたしましたが,こちらも御参照いただきながら御意見をちょうだいできればと存じます。また,そのほかにも整備が必要と思われる条件がありましたら,御提言いただきたいと思います。   本日は時間の関係上,以上の論点1,2に関する御議論が中心になるかとは思いますが,そのほかにも幾つか御議論していただきたい論点がございますので,御説明させていただきます。   まず,3のところですが,これまでのヒアリング結果を踏まえますと,仮に成年年齢を引き下げる場合,成年年齢は何歳とすべきかという論点もあるものと考えております。一番素直な考え方といたしましては,国民投票の投票権者の範囲に合わせて18歳にするという考え方であります。   しかしながら,ヒアリングにおきましては,成年年齢を18歳とし,満18歳になるとともに順に成年となるというのでは,高校3年生に成年者と未成年者が混在してしまい,高校における教育・指導に支障を来すおそれがあり,問題があるという指摘がございます。この御意見を踏まえますと,成年年齢を19歳にするという考え方や,18歳に達した直後の3月の一定の日,例えば3月31日などに一斉に成年にするという考え方があり得るものと考えられます。   続きまして,4のところですが,第1回会議の際にも,御説明させていただきましたが,仮に現行制度を変える場合,単純に成年年齢を引き下げるという結論を採るほかに,一定の要件のもとで未成年者が服している親権からの解放を認めるという制度や,成年・未成年で二分するのではなく,段階的に権利を付与する制度の創設も考えられるのではないかと思われます。そこで,これらの制度につきましても,どのように考えるべきか御議論いただきたいと思います。   続きまして,5のところですが,養子をとることができる年齢をどうするかという論点もございます。   現在の民法におきましては,養子をとることができる年齢は,契約を一人ですることができる年齢と一致しておりますが,理論的には必ずしも一致させる必要がないものと考えられます。また,先ほど世論調査の御説明の際にも申し上げましたが,諸外国の立法例を見ましても,私法上の成年年齢,すなわち契約を一人ですることができる年齢より上に養子をとることができる年齢を設定している国も多いところでございます。   したがいまして,成年年齢を引き下げる場合,養子をとることができる年齢についても連動させて引き下げるべきという考え方,現状のまま20歳とすべきという考え方,現状より引き上げるべきという考え方があり得るところでございますが,どのように考えるべきか御議論いただきたいと思います。   続きまして,6ですが,婚姻適齢をどうするかという論点もございます。   現在の民法におきましては,婚姻適齢は,男子は18歳,女子は16歳とされておりますが,未成年者は父母の同意を得て婚姻することができるとされております。仮に成年年齢を18歳に引き下げた場合,男子は成年にならなければ婚姻することができないのに対し,女子は未成年でも親の同意を得れば婚姻をすることができることになります。   仮に成年年齢を18歳に引き下げた場合,婚姻適齢をどうすべきか,現状のまま,男子18歳,女子16歳とするという考え方,男女ともに18歳にそろえるという考え方,男女とも16歳にそろえるという考え方があり得るところでございますが,どのように考えるべきか御議論いただきたいと思います。   その他,諮問事項に関連して議論すべき事項がございましたら,御自由に御提案いただきたいと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ただ今,事務当局から部会資料の32,33,34に基づきまして,これまでの審議結果,今後検討すべき論点について御説明をいただきました。資料の内容あるいはまとめ方につきまして,御意見,御質問等がありましたらお伺いしたいと思います。なお,成年年齢の引下げの是非あるいは個々の論点についての委員,幹事の方々の御意見につきましては後ほどお伺いしたいと思います。   どうぞ,大村委員。 ○大村委員 質問ということではなくて単なる印象なのですが,今御紹介いただきました高校生等との意見交換会の結果なのですけれども,これは委員や事務局の方々に大変御苦労をいただいて意見交換をしていただき,今ここで報告をいただきまして,大変興味深い結果が出ているのではないかと思います。   これについては統計的な処理がされていないので,こういう意見の人がいたということだと受け止めているかと思います。それは確かにそうなのですけれども,この意見交換会で意見を聞いた学生の数は,4回合計すると62名になっているかと思います。他方,世論調査のほうは,全国的にやった世論調査なので,何となく全体を代表しているような気がするのですけれども,18歳,19歳について言いますと44名ですので,そのあたりのことを考えながら議論していく必要があるのではないかなと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   事務局から何かありますか。 ○佐藤幹事 今の大村先生の補足ですけれども,部会資料31-1の3ページの下に年齢別の回収結果が書いてございまして,18歳,19歳の方につきましては,男性が,標本数が45で回収数が22。女性が,標本数が52で回答数が22ということで,これで合わせると,18歳,19歳だけで見ますと回答数が44ということになります。ただ,大学生の関係は,21歳からの中にも該当者が入っていると思われますので,それは少しロスが増えるかと思います。 ○神吉関係官 今の点でございますが,世論調査につきまして,なるべく18歳,19歳の人たちの意見を把握できるようにということで,我々も内閣府にお願いをしていたところでございます。   ただ,機械的に,年齢に応じてサンプルを割り当てていきますので,なるべく回収数を多くするためには標本数を多くすることしかできないのですけれども,今回,通常の標本数は3,000人なのですけれども,それをお願いして5,000人という形にして,なるべく多くするように努力したということでございますが,残念ながら44という結果になってしまいましたが,事務局といたしましては,できる限り努力をしたということでございます。 ○大村委員 内閣府でやっていただいた調査は,これで完全な調査だと思います。おっしゃったように,通常の調査よりも多くのサンプルをとっていただいて,十分な御配慮をしていただいていると思いますけれども,全国の世論調査というものが,そういう性質のものだということを御配慮いただければということです。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。 ○今田委員 質問ですが,事務局から出していただいた部会資料32の5ページの必要となる条件整備についての提言というところですが,これは,18歳に引き下げる場合の提言という意味なのですか。それとも,若者の現状と課題について議論されたことを整理した結果なのでしょうか。 ○佐藤幹事 基本的には18歳に引き下げるかどうかを議論していただいて,引き下げるための条件ということで,ヒアリングの中で出てきたものをまとめたということでございます。 ○今田委員 必ずしも引き下げる議論の中だけでなく,今の若者の状況を踏まえて,そういう若者にとって成人になるための支援等の整備が必要だという議論であったと思います。もちろん,18歳に引き下げるためには,こういうことがより必要になるという議論はあったとは思いますが。 ○神吉関係官 今田委員のおっしゃるように,18歳に引き下げるための条件整備のみならず,若年者はいろいろな自立に向けた諸問題を抱えており,それを克服するためにいろいろな条件整備が必要だという中で出されたものも含まれているかもしれません。   ただ,我々といたしましては,若年者がいろいろな問題を抱えている状況で,すぐに18歳に引き下げることはいろいろ問題があるだろう。だから,若年者が抱えている問題を克服するために,いろいろな条件整備をしていかなければいけないだろうという御意見を出されたことをまとめたものでございますので,確かに今田委員がおっしゃったように,必ずしもヒアリングの先生方の御意見といたしまして,18歳に引き下げるためにはというのが入っていなかったかもしれませんが,事務局の方で,18歳に引き下げるための条件整備ということで,まとめさせていただいたということでございます。 ○倉吉委員 これは私の印象なので,皆様方はそれぞれ一人一人違うものかもしれないのですが,基本的には18歳に引き下げるべきか否かということを議論しております。その観点から御意見をお願いしますとヒアリングの際に聞いておりますので,ヒアリングを受けて発言している方は,基本的には18歳にすることに賛成か反対かということとあわせて,こういう条件整備がされないと下げるのは無理ですよというニュアンスと,こういう条件整備がされればいいのではないでしょうかという,そこのニュアンスの差はあったと思うのです。   一つ一つ議事録を検証してみないと分からないところがあるかもしれませんが,基本的には,18歳に引き下げるのであれば,これだけの条件がやはりないといけないのではないかという観点からお話しになっていた方が多かったような気はいたします。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。   どうぞ,五阿弥委員。 ○五阿弥委員 細かいことなのですが,18歳,19歳がどう考えているかというのは非常に興味あるのですけれども,20代,30代よりも引下げについては消極的な声が世論調査によって見られるのですが,こうした人の職業の割合は,どのようになっているのでしょうか。また,例えば契約を一人でできる年齢について,少ないですけれども賛成する人がいて,賛成する理由のトップは,働いて自分で稼いだお金は,自分の判断で使えるようにしてもよいと考えるからというのが多いのです。そうすると,働いている18歳,19歳の人は引下げについては賛成が多いとか,何かそういう関連性みたいなのがもし分かるのであれば,教えていただければ有り難 いと思います。 ○佐藤幹事 部会資料31-1の96ページにある集計表というところでクロスというのがしてございまして,典型的に契約が一人でできる年齢についてのもので見ますと,賛成,反対というのが大きなところでございまして,下に行くにしたがって,どういう方が賛成した,どういう方が反対したということが書いてございます。例えば一番下の欄を見ていただくと,既婚者の方と未婚者の方がどのくらい賛成している,反対しているかが分かるようになってございます。これで見ますと,既婚者で有配偶の方は賛成が17.8パーセントで,反対が80.4パーセント。未婚者の方で見ますと賛成は27.4パーセントで,反対が69.8パーセントとなっております。要するに未婚者の方のほうが賛成する方が多い,反対する方が少ないという結果になっております。   先ほどお話がありました有職者というところでいきますと,下から9行目に無職という欄がございます。仕事を持っておられない方は,賛成の方が15.1パーセント,反対の方が81.8パーセントと,賛成が少なくて,反対が多いという結果になっており,有職者はそのほかということになるのかとは思います。   また,学生の欄を見ますと,賛成が26.6パーセントで,反対が72.2パーセントという関係になっております。 ○神吉関係官 今の五阿弥委員の御質問なのですけれども,恐らく職業と年齢とのクロスと問6の結果のクロスができるかどうかという話だと思います。今回の結果では,職業と年齢とのクロスと問6の結果のクロスは出しておらず,年齢と職業との関係を明らかにした問6の結果というのは,この表上にあらわれておりませんので,そこは今回の調査から把握するのは難しいということになります。ですので,今,佐藤幹事から申し上げたように,学生という欄と,あと無職という欄とそのほかの欄で比べるしかないのかなというふうに考えております。 ○鎌田部会長 よろしいですか。 ○五阿弥委員 分かりました。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。   どうぞ,大村委員。 ○大村委員 先ほど私が人数のことを申し上げたのは,部会資料31-1の30ページに「一定の条件を満たした未成年者に権利を付与する制度の賛否」という表がございます。これを年齢で見ますと,18歳から19歳の間で,賛成であるというのが他の年齢層に比べて多くて25.0パーセントございました。   その25.0パーセントの人たちというのは,自分について,一定の条件を満たしたら,やはり権利を付与してほしいと考えているのだろうかと思ったのです。では,そういうふうに考えている人たちというのはどういう人たちなのか,働いている人たちなのだろうかという疑問を持ちまして,31ページの表11の下のほうに,先ほど御指摘になったのと同じ職業属性別のパーセンテージが出ておりますが,賛成であるというのを見ていくと,雇用者というのが小計で13.9パーセント,学生というのが26.6パーセントというのが出てまいります。学生は多分若い人だろうと思うのですけれども,雇用者というのは年齢層を通じての雇用者なので,18歳から19歳の間とは限りません。そのため,この問について,未成年者に権利を付与する制度に賛成か反対かという点について,賛成している25パーセントの人たちの内訳が,働いている人なのか,働いていない人なのかは,知りたいけれども分からないと思いました。   ただ,考えてみると,先ほどふれましたように18歳から19歳の回答者は44人でありまして,その25パーセントは11人です。11人について,どういう事情があるかということが個別に分かっても余り意味がないのかなという気もいたします。そこまで問うてみても仕方がないのかなと思いまして,先ほどのようなことを申し上げたというわけです。 ○松尾関係官 一人で契約できるかという点が問題になっておりますが,後で同意権者が取り消すということが残るだけで,同意がなくても契約自体はできるのではないでしょうか。したがって,この設問は,正しくはというのは言い過ぎかもしれませんが,親が反対していても契約できるかという形のほうがより正確で,そうなれば,恐らく反対のほうがもう少し増えたのではないかと思うのです。 ○神吉関係官 事務当局から説明させていただきます。   確かに松尾先生がおっしゃるとおり,親が反対していても,一人でも契約ができるわけでございまして,親が反対していても契約できるかどうかというのが,成年年齢の意義と言えば意義でございます。ただ,いろいろそういった前提条件も書きますと,世論調査は一般の人たちに説明するものでございますので,少し分かりにくくなってしまうということでございますので,余り長々とした質問はつくれないといった制約もございます。   ですので,我々といたしましては,部会資料33-1の65ページにある資料3というカードを調査対象者に示しまして,「民法では,20歳以上の者は,一人で高額な商品を購入するなどの契約をすることができます。一方で,20歳未満の者が契約するためには,親などの同意が必要で,親の同意を得ないでした契約は取り消すことができます」といった民法の成年年齢の行為能力の意義について先に御説明をして,理解を得た上で質問をしておりますので,確かに親の反対があってもというのは,入っておりませんが,そこで一応,皆さんには分かっていただけるのではないかなと思って質問させていただいた次第でございます。 ○大村委員 同じ資料の64ページの資料1に,「民法では,現在,成年の年齢を20歳と定めており,20歳に達した人は,親などの同意なく契約を一人ですることができ」というふうに示されておりますので,同意がない,親は反対なんだというところまで,これで読んでくれるかどうかは分かりませんけれども,同意がなくても契約をすることはできるということで,一応の説明はされているのかなとは思います。 ○鎌田部会長 ほかに御質問等ございますでしょうか。   なければ,ここで休憩をとらせていただきます。休憩後は,また御質問も含めてでございますけれども,委員,幹事の皆様方の成年年齢引下げ等にかかわる御意見を率直にお出しいただいて,次回以降の審議のもとになるものをつくっていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○鎌田部会長 それでは,再開したいと思います。   ここからは,委員,幹事相互間で成年年齢の引下げの是非等について議論を行いたいと思います。お手元の部会資料34の論点1と2を中心に御議論をいただければと思います。   それぞれの委員,幹事の皆様方の御意見を率直にお出しいただければと思います。よろしくお願いします。 ○木村委員 これから,成年年齢を引き下げるべきか否かが議論となるということですが,まず,今までのいろいろなヒアリングなどの結果を踏まえ,そもそも引き下げなければならないかという点をどのような結論とするかがあると思うのです。日本の場合,引き下げねばならない状況にあるのかということです。  親権と児童虐待などいろいろな問題があることを参考人が言われていましたが,それは,それぞれの問題として,法制度も含め対応していけば良いのではという感じがしており,根本的に民法上の成年年齢を引き下げないと解決できないという問題でもないのではと思います。  それから,国民投票法との関係,やはり選挙あるいは参政権との関係があると思います。これは権利として認められるという面が強くありますが,一方で,民法上の成年年齢の話になると,どなたか言われていましたが,やはり権利と同時に義務というものが生じるわけですので,一方的に,引き下げれば権利が拡大して良いというだけのものではありません。むしろ,義務が生じることに伴い,どの程度保護をするかという問題も出てくるわけです。したがって,参政権や国民投票権との問題があるから,こちらも引き下げねばならないということにはならないと思います。  そのほかに,外国との関係について疑問があります。すなわち,外国は,多くの先進国を含め18歳などに成年年齢を設定していますが,グローバル化している今の社会の中で,日本が成年年齢を合わせていないために生じる法制度上の問題といったものが存在するのかどうか,この点は,まだ十分に吟味されていないのではという感じがしています。  ですから,まず,引き下げたほうがいいのか悪いのかという前の段階として,引き下げなければならない状態にあるのかというところを,もう少し検討する必要があるのではないかと感じております。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ただ今の問題点の御指摘は非常に重要だと思いますけれども,関連して何か御発言ございますでしょうか。   どうぞ,出澤委員。 ○出澤委員 ただ今木村委員から,引き下げなければならないかどうかという問題提起がございましたが,もう一つ,これは,当初申し上げたのですが,ここではあくまでも民法の範囲ということではございますが,事実上ほかの法律にも影響するということは,やはり念頭に置いておかなければいけないことではないかと今でも思っております。   その点も,個々の法律に任せるというのは,理論的にはそのとおりだと思いますが,やはり事実上,今回は国民投票法との関係もございますけれども,国民投票法も理論上は投票年齢と成年年齢は異なると思います。しかしながら,ここで関連づけて民法の年齢を議論しているということは,やはり民法の年齢というのは,大きな影響をほかにも及ぼす可能性がある,そこのところも十分配慮した上で,検討していく必要があると考えております。 ○鎌田部会長 大村委員,お願いします。 ○大村委員 2点申し上げますが,一つは今まで御指摘があった点ですけれども,これまでいろいろな方の御意見を聞いた結果として,現状の認識としては,現在,成年年齢が20歳であることに伴う不都合というのは余りないのではないかという御意見が多かったように思います。   反面,これを18歳に引き下げるというのは,これまで未成年者が享受していた保護を言わば切り下げることになるのではないかというような御懸念が示されたように思います。   いずれももっともなところがあると思いますけれども,他方,20歳,21歳,22歳というような人たちが現在十分な保護を受けているのかというと,それは必ずしもそうではないということもあろうかと思います。   これは先ほど今田委員が休憩の前に指摘された点かと思いますけれども,引き下げるか引き下げないかということとは別に,若年層に対する何らかの配慮が必要だということについては,この部会の意見として取りまとめのどこかに含めることが必要なのかなと思います。   それから,もう一つは,直前の御意見ともかかわりますけれども,国民投票の関係の年齢と民法の成年年齢を合わせる必要があるかという問題ですけれども,皆様の御指摘のように,理論上はこれを合わせる必要はないだろうと思います。理論上はないのですけれども,以前お示ししていただいた資料が示しているように,多くの国では,選挙権の年齢と成年年齢が連動する形になっています。そのことの意味というのは,やはりあるのではないかと思うのです。   実際上の問題として,政治社会において選挙権を持つフルメンバーであるということと,経済社会・市民社会においてやはりフルメンバーとして立ちあらわれるということが,可能ならば一致するというのが望ましいのではないかと思います。ただ,そのためには,様々な環境整備というのが必要ですので,ある時期それが不一致であるということはあり得ることだろうと思いますけれども,ずっとばらばらでいいかというと,そこは一考を要するのではないかと思います。   それから,選挙の問題と民事の能力の問題とを比べたときに,確かに選挙のほうは投票するということで,そのことによって何か具体的な義務が課されるということではないわけですけれども,政治社会の中において権利を持つということは,同時に,選挙に限らず一定の義務を負うべきだという議論を,必ずや誘発するだろうと思います。そういう意味では,いずれにしても,ある権限が認められるということは,他方で義務を伴うということになるのではないかと思います。 ○鎌田部会長 諸外国との関係については,何か御意見はございますか。 ○大村委員 現在の法制のもとでは国際私法の問題になるだろうと思いますけれども,行為能力の問題は,日本法のもとでは本国法によるという扱いになっていて,基本的にはそれぞれの国の本国法でどうなっているかということで対応するということだろうと思います。ただ,年齢が違うときに,それぞれの国でそこを調整するような規定というのが設けられている場合があろうかと思います。そこには,国籍にかかわらず,一つの社会で暮らす人について,成年年齢は一致していたほうが便利だという思考が働いているのだろうと思います。国際私法によって対応できる問題というのもありましょうけれども,実質法をそろえることができるならばその方がよいかもしれないと思います。 ○鎌田部会長 それでは,宮本委員,お願いします。 ○宮本委員 18歳か20歳かという議論でギャップが生まれる一つ大きな理由というのは,経済的な自立年齢が遅いんですね。20歳ですらまだ早いという実態があって,そうすると,経済的,職業的な自立年齢に合わせて大人だということになっていくと,年齢はどんどん上がっていくという問題になり,では,それに合わせてフルのメンバーシップを認めるということが妥当なのかどうなのかということがあると思うのです。   18歳に下ろすときに一番重要なポイントは,国民投票というような意見を表明する権利,これを20歳でなければ認めないのか,もう少し若い年齢で認めるのかという問題ではないのかということで,国際的な流れからすると,できるだけ早期に意見表明ということを認めていく流れにあると思うのですね。だから18歳というよりはむしろ,住民投票などではもう16歳くらいまで下ろすという議論をやっている国もあり,全体としては,第5回会議のヒアリングのときに私がお話しさせていただいたとおり,できるだけ小さい子どものころから,あらゆる場面で意見を表明させ,当然18歳になったら選挙等に関しては認めるという流れがある中で,日本だけ20歳にならなければ意見をフォーマルな形で認めないということが通るのかどうなのかということではないかと思うのです。   しかし,意見表明権を18歳に下ろしたとしても,実際に完全な自立状態になる,経済的にも,職業的にも親に頼らずにやっていかれる年齢というのはもっと遅いので,先ほどの契約等に関しては,何らかの保護というのがもう少し遅くまで必要になるだろうということで,18歳とかもっと若い年齢に下げようというような議論をしている国でも,職業とか雇用に関してですと,例えば18歳までの人に対する処遇と,それから21歳くらいまでと,それから25歳以降とかいうふうにして,年齢によって変えているわけで,何らかの保護なり,配慮なり,教育的なスタンスといったものを残すんだと思うのですね。   そういう意味では,この問題というのは,やはり18歳で意見表明をして社会に参画する第一歩ということをやるかどうかということではないかと思っております。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○木幡委員 これは私がずっと疑問に思っていることなのですけれども,何人かの方が引き下げることで若者の自立を促すですとか,社会性を身に付けるですとか,自覚を持ってもらえるといった,引き下げることの前向きな効果を指摘する声があったのですけれども,必ずしも変えたらそうなるのか分からない中で,法律を,特に民法を,何かそういった目的を持って変えるということは,私は法律家でないので分からないのですが,そういったケースがあるのかどうかというのを教えていただけたらと思います。 ○神吉関係官 普通,法律を改正する場合,例えば成年年齢を引き下げる場合も,今まで問題があるからその問題や弊害を除去するために18歳とか19歳に引下げをしようとか,今ある問題を何か変えなければいけないといった問題意識があって法律は改正するのだと思います。自覚を促すことは,成年年齢を引き下げた場合の間接的な効果になるかと思うのですけれども,そこは通常の法律の改正とは違う点なのかなとは思います。そういった例が具体的にあるのかどうかというのは,私も不勉強であり,御説明できず申し訳ありません。 ○倉吉委員 今,木幡委員のおっしゃったことは非常によく分かります。自覚を促すためにとか,18歳に引き下げることによって,社会のそのほかの法整備も進むのではないか,その先頭を切るためにやるんだというような意見は確かにありました。でも,それは,考えようなのですけれども,今,神吉関係官からも言いましたけれども,何らかの立法事実があって,そして変えなければいけない。だから法律を変えていくんだというのが,特に民事の基本法ではそれが原則であります。   しかしながら,今の世界情勢とかいろいろなことから変えていくべきだという意見があることも事実でして,それに対して日本の現状がどうかという議論を通じて,要するにあるべき事態としては変えるべきなんだと。変えることによってこういうメリットがまた生まれてくるんだという議論もあり得るのだろうとは思います。   必ずしも,これまで意見を言われた方のうち積極的な意見を言われた方が,常に啓蒙的観点から言っているというだけではなくて,ある程度それを必要とする社会的な実態もあるのではないかと思います。それが完全に目に見える状態にあるかどうかという評価はもちろんここで議論していただくことになりますが,そこのところは,ある程度ニュートラルで見て議論をしたほうがいい気がいたします。   ですから,今の御質問に対する答えは非常に難しいのですけれども,何がしか社会的にそれを変えたほうがいいという事情があれば,それで変えることはあり得る。ただ,その事情が非常に少ないということになれば,それはまた違うのだろうということだと思います。   だから,これまで意見を述べられた方が18歳に引き下げることによってこういうことが起こるだろうと言っているのは,それは事後的なメリットということもあわせて発言をしているのだろうというふうに受け止めていただいて議論をするのがいい感じがいたします。 ○木幡委員 世論調査の結果も反対意見が多かったですし,また引き下げてほしいという当事者からの強い要望も特にない中で引き下げるのであれば,よほどの理由が必要かなと思っていまして,今私が申し上げたことがその一つになり得るのかどうかというのがちょっと知りたかったのです。 ○仲委員 今のと関連するかもしれないのですが,その必要性ということに関して,私自身いろいろ調べてみて,きちんとしたデータが得られていないので,できればまた調べていただければと思うのですけれども,結婚をしている年齢というのは,やはり年代とともにだんだん後のほうになっており,今,結婚産業関係の資料ですと,29歳とか30歳ぐらいが,結婚年齢になっているんですね。   それから,地方自治体などが出している資料で投票率を見てみますと,40,50代の投票率はまだいいのですけれども,20代,30代,40代,50代というふうに見ていきますと,20代が一番悪いのです。契約はちょっとまた,今までの議論にもあったように,後のほうでもいいとかというふうになると,何か必要性というのも実際ないのではないのかなというふうに思ったりいたします。 ○鎌田部会長 大村委員,どうぞ。 ○大村委員 先ほど,民事立法の目的にかかわる非常に重い御質問がありました。それについて答える能力はないのですけれども,今までに民法関係で行ってきた立法を振り返ってみると,例えば10年ほど前に,成年後見に関する立法というのがございました。そのときも実際上の様々な不都合を解消するという目的があったわけですけれども,他方,当時の言葉で言いますと,禁治産者というレッテルを張られている人たちに対する社会の見方を変えようということで,禁治産という名前をやめて,よりニュートラルな呼称を使うように意を用いたということがございます。   その他,特に人や家族にかかわる立法については,直接の効果だけではなくて,法制度が変更されるということに伴って生ずるメッセージみたいなものをどう考えるかということも,場合によってはあるのだろうと思います。   今回の場合に,具体的にどういう必要があって,またどのようなメッセージを発するべきかというのは別個に考えるべき問題だろうと思いますが,一般論としてはそういうことはあり得ないことではないと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○始関委員 今非常に重要な御議論をいただいていると思うのですけれども,その関係で,部会資料32の3ページにある引下げに賛成の意見の概要の中で,「高学歴化が進む中,大人への移行期が長期化しているが,だからこそ成年年齢を引き下げ,若年者が早期に社会の一人前の構成員になるという意識づけを行うべきである」というのがあります。   改正というのは,現行法が現代社会に適合していないので改める必要があるというのが最も典型的な改正ですけれども,そうではなくて,よりよくするための改正というのもあると思うのです。今もそれなりにいいのだけれども,よりよくしていくためという観点からの御意見なのかなと思いまして,こういう政策論的な,つまり高学歴化を支える若年者を早く一人前にすべきだというような政策論についてどうお考えになるかということも御議論いただけると有り難いと思います。 ○鎌田部会長 かなり間接的で,しかも計測困難な事柄をもって立法を必要とする根拠と言い切れるかというところが木幡委員の御質問の前提なのだろうと思いますけれども,確かにそういう側面のある議論であることは間違いないだろうけれども,そうした立法もありうるということですね。   ほかにいかがでしょうか。 ○宮本委員 先ほどの仲委員の投票率の問題についてですけれども,これは資料を集めればすぐ分かると思うのですが,日本の若い人の投票率は先進国の中で著しく低いのです。他の国も,いわゆるフォーマルな投票率に関しては若干落ちていると言われているのですけれども,日本ほど低い国というのはないのです。   それから,海外で若者の投票行動に関してよく言われるのは,例えば国政への投票率等に関してとか,あるいはフォーマルな政治に対する関心に関しては必ずしも高くない傾向が見られるとは言いながらも,例えば環境に関してですとか,フェミニズムに関してだとか,動物の権利に関してとか,いろいろな意味でのシングルイシューに関する関心に関しては,若者の意識は決して低くないといわれています。   そういう意味で,海外では,いわゆる選挙という投票行動を見ても,放置しておけば下がっていくけれども,実際のところ,社会に対する主張はある。それをどうやって掘り起こしていくのかということで,特に人口構造的に言って少子高齢化なので,若い世代の声をどうしたら社会に反映できるかということで,意見表明権に関する年齢をできるだけ下げ,表明させるための装置をつくっていくというのが今の流れだと思うのです。   そういう意味で,日本における著しく低い投票率と,一見,社会的関心がないかに見える若者の現象をどうするかということと,やはり少子高齢化というのは日本も海外も共通しているので,若年層の声を掘り起こすという課題については,恐らく国民投票法の議論の中でも出てきたと思われるのですけれども,ここでも議論すべきことではないかと思います。 ○始関委員 今の宮本委員の御指摘ですけれども,若者の意見表明権ということを考えるのであれば,直接的には選挙権がございますよね。   先ほど来,別の委員からは,選挙権だけ下げればいいのであって,成年年齢は,若年者の保護という問題とかかわるから,そのままにしておいてもいいのではないかというお話も出たと思いますし,ヒアリングでもそういう話もあったわけですけれども,その点についてはどのようにお考えになるのでしょうか。 ○宮本委員 この作業自体が民法からいきなり入ってきているので,いろいろな意味で難しいところがございます。つまり,これだけ世論が18歳に下げるという点で盛り上がっていない状況の中で,まず若い世代の意見表明を実現するにはどうしたらいいのかという議論をやって,次に全体としての政治年齢引下げ議論というようなことが,現実的には妥当なのかもしれません。ところが今の要請はそういう形で来てないわけです。ということでありまして,私自身は,その順序をどうするかというのは,なかなか申し上げにくいところであります。 ○鎌田部会長 岡田委員,お願いします。 ○岡田委員 契約に関して言えば,やはり未成年か成人かというので一番苦労するのは消費生活センターかなと思うのです。確かに20歳ないしは20歳間近になると,途端に勧誘が始まるというのは,もう前からあるところなのですが,それはむしろ受け身の部分なのですね。   一方で,未成年であっても,自分でお金も稼いで持っているという立場になると,いちいち親の同意を得なくても契約ぐらいさせろという積極的な未成年もいるわけなのです。   そのような中で,よく事業者とすったもんだやるのが,アルバイトして得たお金でバイクを購入し,それを親が取り消す場合なのですけれども,事業者は,アルバイトのお金を親が管理しているのかというと,自由に使わせているんだろう,それは,基本的に処分を許しているのではないかという言い方をしてくるのですね。また,親の方も,バイクはやはり危険だから反対したい,それ以外のもの,例えばパソコンなどであれば反対もしない,取消しの問題にもならないということで,本当に悩ましいのです。   その辺を考えると,やはり20歳という成年年齢というのは,時代に沿っているかというと,もしかしたら沿っていないのではないかなとも考えます。   その一方で,これを18歳に下げると,途端に悪質な業者が来るだろう。その辺で,悩ましいのは,今,消費者保護の関係で,適合性の原則というのがあります。それと年齢的な部分をうまくリンクさせてやれば,ここでの問題,段階というか,年齢に差をつけるとか,それから本人の判断能力に考慮するとか,そういうことができるのかなと思うのです。だから,若い人の中でも2割ぐらいの人間が,いや,18歳にしたっていいんだという声もあるというのは,やはりそういう時代に来ているのではないかなという気もするのです。かといって,積極的に18歳にすべきであるというのは,ちょっと言えないのですけれども,何かそんな状況でいます。   ただ,もう消費生活センターでは苦労します。きちんとした事業者は応じてくれるのですけど,なかなか難しい問題があるかなと思います。 ○大村委員 今の岡田委員の御発言についてですが,仮に18歳に下げるとした場合に何が必要かという御議論がありますけれども,様々な意味での教育を充実させるべきだという御意見が出ております。   それは,一方で大変重要なことだろうと思いますが,高校生の段階で,実際に取引もしたことがないときに学校で教わる教育には,方法を工夫してみても,やはり限界がございますので,今岡田委員がおっしゃったような,成年であるかどうかということとは別に,経験の乏しい若年層に対する保護のための方策というのを考えていかないと,十分とはいえないのではないかなと思います。   他方,今18歳がいいか20歳がいいか分からないけど,というお話だったのですけれども,未成熟だからいつまでも保護しておくというのではなくて,今申し上げたような一定の保護の下で社会に出て,その中で自己教育をするというのも有効なことなのかなと思います。   先ほど御紹介のあった世論調査もそうでしたけれども,これまで,成年というのは大人である,では,大人になったというのはどういうことなのかということを考えてまいりました。大人というので何をイメージするかは人によって違うと思いますけれども,完全な成熟した大人というのを考えますと,それは非常に高い年齢が出てきてしまうことになろうかと思います。   20歳にせよ18歳にせよ,そういうことではないのだろうと思うのです。成熟に向けて,ふらつきながらも一人で歩き始める年齢をどこに設定するのかということで,大人になったから成年で行為能力がフルに与えられて,あとはすべて自力でやってもらうというのではなくて,成年はより高いレベルの成熟に向かってスタートする地点である,確かに市民社会のメンバーであるけれども,サポートは必要なんだというスタンスが必要なのかなと思います。 ○鎌田部会長 今田委員,お願いします。 ○今田委員 部会資料32の3ページの引下げに賛成の意見にある「高学歴化が進む中,大人への移行期が長期化して,だからこそ成年年齢を引き下げ」について,冒頭の「高学歴化が進む中,大人への移行期が長期化する」というところまでは私も考え方は一緒です。しかし,「だからこそ成年年齢を引き下げ」というのは,どうも私にはよく理解できないのです。長期化しているので,成人になるための支援が必要だ,というのがこの筋から言ったら帰結になるのではないでしょうか。先ほども申したように,5ページの必要となる条件整備に書かれていることです。高学歴化が進み,産業社会が複雑化し,移行期が大変になっている。だから,条件整備でふれているような改革が必要だという主張です。   社会の結論が18歳への引き下げになるかどうか分かりませんが,仮に引下げという結論にならない場合でも,大人への移行期の長期化に伴う支援制度の拡充について,この部会で有益な議論がされた訳ですから是非取りまとめる報告書で触れていただきたいと思います。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。   出澤委員,どうぞ。 ○出澤委員 私も結論としては消極論というか,慎重論と言ったほうがよろしいかもしれませんけれども,今までのヒアリングで,現場の問題のある人たちにかかわっている方々は,ほとんどと言っていいほど慎重論であったと思います。ただ,積極的にどうしてもだめだと言っているわけではなくてということではありましたけれども,社会の現状や施策なりの現状から考えたら,問題点が広がるのではないかという御意見でございました。   日弁連の中でもいろいろ議論をしたのですが,特に消費者関係の弁護士は,問題点が急激に広がるだろうという,ここでもヒアリングで御意見が出ましたけれども,そういう意見は強くございまして,実際にそういう御相談を受けている中では,未成年者の取消権は非常に強い若者の武器として存在している,これは疑いない事実ではないかという意見もありました。   それから,先ほどの立法の趣旨の問題でございますが,民法の改正としては,何か積極的にこうしなければいけない問題があるということではなくて,こうしたらこういう効果も生じるだろうという消極的な目的は,民法の基本法を改正する理由としては余り好ましくないのではないかと思います。   やはり国民の多くが改正する必要があるという認識,そういう認識ができるような問題,世論調査で8割近くが反対しているということもあるのですけれども,それとは別に,こういう問題があるのだけれども,年齢を下げることについてはどうしても反対でしょうかと形で,そういう問題が提起できるのであれば,それはそれで検討すべきだと思いますが,今までのヒアリングの議論等を聞いてみますと,それだけ積極的に下げるという理由がどうしても私には理解できなかったということでございます。   もちろん民法は,最初に,明治の時期,太政官布告で20歳と決まったわけです。このときからずっと変わらなくて,余り議論もされていなかった。ここに来て,ちょうど国民投票法の関係で議論をするといういい機会ではあったのですけれども,大分やはり文化に根づいているというか,20歳という年齢に関連して様々な制度ができてきてしまっている。そういうところも考えますと,やはり私は法的安定性というものも少し考えたいというところがございます。   それから,引き下げるに当たって必要となる条件というのはなかなか整いにくいと思います。こういう抽象的に実証されないようなことを言うのも何ですけれども,教育と一言で言いますけれども,高校生といったら受験勉強で忙しい時期,それから社会経験をほとんどしていないというか,むしろ学校がさせないという状況において,どれだけ社会に出てだまされないような消費者教育ができるのかということになると,これまたちょっと疑問です。   ただ,もちろん,個々の問題点において親権を濫用する親もいるというようなことはございますので,そちらのほうの問題点の改正に注視すべきであって,全体的な年齢の引下げということにまでは,ちょっと結び付けては考えにくいというのが私の意見でございます。   以上でございます。 ○鎌田部会長 五阿弥委員,お願いします。 ○五阿弥委員 私も大体同じような意見なのですが,基本的に普通の人から見ると,なかなか分かりにくい議論をしていると思うのです。国民投票の年齢を18歳に下げるのにあわせて選挙年齢を18歳に下げるというのだったら,そこまでは多分分かるのですけれども。   先ほど宮本委員からありました若者の意見表明というのは,私も非常に大事だと思います。とりわけ,こういう高齢社会の中で,赤字財政のツケを回されるのは若者ですから,逆に若者には一人2票ぐらいあげてもいいぐらいのものなのですが,そこは多分,賛成なさる方は多いだろうと思います。   ところが,なぜそれが民法のほうに行って,ましてや養子をとることができる年齢を18歳にするということは,非常にみんな違和感があると思います。あと,やはり契約年齢についても,高度な消費社会の中で,昔以上に若者を保護することが難しい状況にあると思います。それで,ここで様々な問題点が出ましたけれども,あれは確かに引き下げる場合どういうことが必要かということがあったと私も思いますが,そこで出てきたことは,今の日本の消費者保護というのが非常に脆弱であると。消費者庁構想がようやく今出てきているような段階ですから,基本的には,今の日本社会の問題点が出てきたということだと思います。これは虐待の問題もそうです。   ですから,これも何人かの方が指摘なさっていますけれども,引き下げるか引き下げないか,確かにそれは条件になりますが,それ以外でも,やはりそうした問題は今の日本社会にとっては喫緊の課題であって,取り組むべき問題なんだということは,最終的な報告書の中ではきちんと指摘なさっていただきたいと強く思います。 ○鎌田部会長 氷海委員,お願いいたします。 ○氷海委員 今日説明をいただいたアンケートの結果は,非常に私は,そうだろうなと思います。   私が今やっている仕事は18歳の今の年齢をずっと,私は36年間見てきまして,18歳という年齢をどう国民全体がとらえているかという,正にそうだと思います。要するに高校生としてとらえているんですよね。   今の高校生はどういう形で生活をしているかというと,これは完全なる親の保護下です。だから,もし18歳で成人にする場合には,子育ての概念を変えていかなければいけない。親側も完全に18歳まで,国民の約90パーセント以上は今高校生ですから,日本における18歳というのは特殊な環境にあると考えているのだろうなと思います。中にはバイトをしながら,自分の小遣いではなくて,今授業料免除をやっている家庭が増えてきまして,そこに支援をしているという高校生もいますけど,これはかなり少ないです。   だから,18歳という年齢から来るイメージは高校生なのですね。高校生が民法の三つの柱を背負うとなったときの国民のイメージは,今アンケートで出てきているパーセントだと思います。   だから,私は,20歳と19歳の違いと言われるとあれですけれども,高校という一つのフィルターを通るというのが今,日本の中で大きな違いがあると思うんです。だからやはり,18歳というのはかなり,私自身も18歳をずっと見てきていますし,民法のこれが背負わされているというのは,やはりみんな理解しにくいなという感覚です。   今日の世論調査を見てますますその意を強くしたのですが,多分そう見ているだろうし,実際そうだということで,私は,引き下げるのであれば19歳にすべきだと考えます。というのは,日本では一つのフィルターを越えているということで,18歳よりは理解がされるのかなという感想です。   以上です。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   こちらの論点の中にある,18歳に達した直後の3月31日という提案も,似た発想なのだと思います。   ほかにいかがでございましょうか。   自由に御意見をお出しいただいて,それを事務局でまた次回に向けてまとめるということですから,できるだけ自由な御発言をいただいておいたほうがよろしいかと思います。   平田幹事,お願いします。 ○平田幹事 民法を変える必然性があるかという議論は当初から出ていたのですけれども,そこの必然性はないだろうと考えざるを得ないと思うのです。   ただ,必然性はないけれども,今の18歳,19歳の現状で満足できるのかといったら,そうではないという話なのだろうとは思います。ですから,目的を持って民法を改正するということは,当初の太政官布告のときも,一国の立法政策として決めるということですから,そういう発想はあっておかしくないと思いますし,国民投票法との関連で,民法も連動させたほうがいいのではないか,それから国際化の問題でもそろえたほうがいいのではないかという議論があって,それも前提にして議論していいと思うのですけれども,そうなってくると,民法改正というよりは,年齢の規定を,法の適用に関する通則法に移したほうがいいような議論にもなってくるような気はします。ただし,フィクショナルなものであれ,18歳をもって成熟した存在として社会が扱いますよということになってくると,やはり少年法に与える影響というのが非常に大きく出てくるのです。   日弁連内でも,先ほど出澤委員がおっしゃったように,消費者問題と少年法というのは,やはりこの議論から外しておけないような状態なのではないかという認識の弁護士が非常に多いです。   ですから,法政策的な考え方で議論するというのはいいとは思うのですけれども,その弊害というか,影響というのも非常に多岐に及ぶとなってくると,18歳が是か非かいう問題だけではなくて,そのままでもいいんだという議論をしたとしても,今までのヒアリングの,変えるべきではないという議論の中にも,やはり一種の社会的な閉塞感というのはあると思うのです。そこは民法に絡む改正の議論として,変えないけれども23歳ぐらいまでは消費者被害の問題があって,なかなか対処できないのであれば法的な手当を行うとか,そういう議論の在り方をしても,私はいいのではないかなと考えております。   以上です。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。   部会資料34の今後検討すべき論点の1と2を中心に御意見を伺ってまいりましたけれども,3の成年年齢は何歳とすべきかという御意見も出てまいりましたので,ついでと言っては何ですが,親権解放制度あるいは段階的成年制度という考え方,それから養親となることのできる年齢,婚姻適齢等についても御意見がございましたらお出しいただければと思います。   宮本委員,お願いします。 ○宮本委員 先ほど日本では,18歳という年齢がイコール高校生だというイメージがあるという御発言がありましたが,正に社会的なイメージはそうなのだと思いますけれども,そのことによる弊害というのもあるのです。つまり,多くの人は,18歳というのは高校生で,親がみんな守っていると考えていますけれども,具体的な数字がないところが問題なのですけれども,恐らく高校在籍の16,17,18歳でも,親から保護されていない,それから経済的に親を頼るよりも,むしろ親に頼られているような人たちが少なく見積もっても10パーセント以上いると思います。   その後,19,20歳になったときにも,もう既に親に全然頼れない人というのが,一,二割はいるはずなんですね。一つの証拠は,今,若年者支援の厚労省のプログラムの中でみる光景は,多くは親が自立できない子どもを抱え込んで,30過ぎまでいますけれども,もう抱え込むどころか,親が全然保護していない人たちもいるのです。日本の場合には親が守っているというふうにされていて,とりわけティーンエージャーの場合には親が完全に見ているんだから問題ないという,この事実誤認の常識のために保護されない若者なのです。   そういう意味で言うと,やはり18歳になったら親の責任は終わり,そこで親から保護されていない人は,親ではない者によって支援されるというようなことをきちんとする必要があると思います。 ○鎌田部会長 水野委員,お願いします。 ○水野委員 皆さんの御意見というのは,例えば今の宮本委員の御発言のように,日本の社会の様々な保護が足りないということについては,どなたも御異論はないのだと思います。   つまり,例えば若年者の雇用対策についても,格差社会が発生するような形ですし,消費者保護というのも非常にお粗末ですし,それから何より本当に深刻なのは児童虐待で,この点についても非常に情けない状態ですので,その結果,病んでしまった子どもたちが大人になったので,精神的なサポートが大人になってもずっと手厚くする必要がある人たちが育ってきているという状況であります。   これらの保護が全部必要だということについては恐らく,様々な御意見を伺いましたけれども,どなたも異論はないのだろうと思います。この保護をどのように求めていくかということなのですが,私は,今現実に20歳までの取消権が武器になっているのだから,それを失うことのデメリットはとおっしゃるのもとてもよく分かるのですが,基本的にはこれらは個別の対応をしていくべき問題ではないかと思います。   それに対して,成年年齢と申しますと,もう少し観念の問題で,我々の市民社会のメンバーとして,この年になったらあなたは大人だと,そして我々の社会を一緒につくっていきましょう,そしてそれらの保護を求めることについても,与えられるのではなくて,積極的にその保護を主体的に求めていく立場になってくださいという,そういうものとしては,18歳に下げるというのも今後,社会の制度設計としてはいいような気がしております。   世論調査の結果や法的安定性とおっしゃるのも非常によく分かるのですが,大村委員が成年後見の例を挙げられて,やはり非常に上手な例を挙げられるなと思ったのですが,私は,反発を覚悟で申し上げますと,戦後の改正をふっと思い浮かべておりまして,戦後の改正の段階で,家制度の廃止を,世論調査をしたら絶対に通らなかったと思っております。妻は夫のもとで保護されて,戸主のもとで保護されていないと,むき出しでこの社会の中に出ていったらどういう目に遭うのか,彼女たちは社会経験もないし,訓練もないし,経済力もないのだという意見がすごく強かったろうと思うわけですが,それでも踏み切って今日があるわけです。男女差別の問題と未成年の問題を一緒にするなという反発,また私もこれを並べることが妥当ではないということは非常によく分かります。でも,それでもあえて,ちょっとそれを連想してしまいました。   18歳で一人前という形で認めて,ここから先はあなたたちが自分で,まず,こんな不当な目に遭っているということを言っていきなさいという形で切り替えていくというのも,一つの社会のつくりかえの方法なのかなと思います。   それから,婚姻適齢の問題について少し情報提供をさせていただきますが,こういう年齢というと観念の持つ力がすごく大きくて,観念の持つ力というのを法律はとても大事にしますので,細かくは場合分けはしないほうがいいという判断があります。ですから,私がそちらに振れたのも,一つはやはり投票権という問題があって,18歳になったときに民法の18歳もやはり当然考え直さなくてはならないだろうという,精神年齢,大人とは何なのかということの観念の持つ力というのは,余り何段階にも分けないほうがいいと思うのです。   それの関連で言いますと,では,あらゆる場合に一律でなくてはいけないかといいますと,例えば婚姻適齢の問題は,私は必ずしもそうではない一つの例だろうと思います。婚姻適齢の問題は,もう10年以上前になってしまいますが,婚姻法の改正のときにどういう議論をこの法制審議会でなされたかということについて御紹介をさせていただきます。   婚姻適齢は今現在,男は18歳,女は16歳ということで,男女差別があります。このときに一つの大きな,正に観念の持つ力というのを働かせて平等にすべきだという圧力がございました。これは結論的にも,当時の改正要綱を提案した法制審議会の合意ができたのは18歳に合わせるという結論になっております。   では,満場一致だったかと言いますと,中での議論はものすごく割れました。そして,どういう議論がされたかといいますと,やはり現場で家庭裁判所の判事をしていらっしゃる方々が,16歳から18歳までの間の婚姻適齢,婚姻が可能であるということは非常に大切だと強く言われました。それは,そのジェネレーションで妊娠をする少女たちというのは,やはり家庭である程度虐待を受けてきて,これまでもお話が出たような,うまく大人になれなかった,非常に自傷行為が多かったり,依存的であったり,きちんと大人になれていない少女たちが,その結果,妊娠してしまう。   だけど,家裁の実務家たちは,少女たちが立ち直るきっかけというのは二つだけあるというふうに言われて,非常に鮮明に覚えているのですが,一つは結婚する,もう一つは母親になる。その二つのきっかけをとらえて人生を立て直すことができるんですと。そして,16歳から18歳までの間に自分の恋人との間に妊娠をして,そして祝福されて,彼と結婚することができるということになると,彼女たちはそれで大きく立ち直っていけますと。そのときに,やはり結婚できないので,おろしてしまえということになりますと,その機会を失いますし,そのこと自体の精神的なダメージも大きい。だから,16歳から18歳までの間に妊娠した少女たちを結婚させてあげる必要があるのですというふうに言われました。それは非常に説得力がありました。   結論的には,やはりこの男女平等の時代に,どうして女の子だけ16歳なのかという反発が強く,18歳に合わせるという結論になったのですが,私自身は,その意見というのはとても大切だと思っていて,ここでこそ少し柔軟性を持たさなくてはならないと思っておりました。   それまでフランス法も婚姻適齢の男女差を維持していたのですが,2006年の改正法によって,これを同じ18歳にいたしました。それがどういう法律で18歳になったかといいますと,DV対策といいますか,結婚外の男女関係でもですが,そのような暴力に対応する法律の中で,ついにこの民法の改正がなされたのですが,どういう動機かといいますと,若い少女たちに対して性的な接近をして,強制的な結婚をさせてしまうと。そういうインセンティブを与えることに対する抵抗として,少女たちも,やはり18歳まで結婚できないということにしようというので18歳にしましたが,同時に,特別の許可がある場合には,もっと若くても結婚できるという柔軟性を持たせております。それは何を意味しているかというと,正に少女が妊娠してしまって,結婚をしたほうがいいという場合には,それができるようなニーズを持たせようというものです。   ですから,観念の力と,それから,それを時として本当にギリギリのときには緩めるという,そういうことが必要だと思うのですが,この成年年齢につきましては,私はできれば一本化したほうがいいと思っておりまして,特に場合によって,あなたはおくれているから,大人になるのは先ですねなどということはできないだろうと思います。それは,むしろ,精神年齢ではない形の保護でサポートをしていくという形で対応したほうがいいのだろうと思います。   今回,婚姻適齢について改正が及ぶのかどうか分かりませんが,もしそこまで及ぶとすれば,日本の民法としても,そのような救済策を入れ込むような形で18歳に上げていただければと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでございましょうか。 ○木村委員 今の水野委員による「法制度の改正によって意識を変えていく」,あるいは「社会を変革していく」という御発言につきましては,私も非常に魅力を感じてはいます。  しかし,そういう場合,セーフティーネットといいますか,被害をこうむる可能性のある人たちを支えていくような仕組みというものを,相当作っていかなければならない。そのことが,今までの議論でなされた,引き下げる場合に必要とされる条件になると思うのです。  いろいろな意味の教育,あるいは社会経験を積ませるということが,セーフティーネットになるのではないかと思うのですが,例えば,学生さんたちも言っていましたように,今の教育の世界,高校教育とかそういう世界の中で,実際に,社会経験を積ませたり,今行われている学校教育以外の知識・経験を18歳までに大いに教育していくということが,本当に可能なのかということです。  この点に関し,私自身,多くの若い人たちの意見を聞き,教育制度として実効性のあるよう組み込んでいくのは難しいのではないかと懸念を抱いています。やはりセーフティーネットとして成人教育みたいなものをやらなければいけないけれども,それを18歳までに実行するのは難しいので,現時点では20歳という今の成年年齢を維持した中で,そういう教育を充実させることを,むしろ考えたほうがいいのではと感じているのです。  そういう意味で,成年年齢を引き下げるということについては,消極的にならざるを得ないと思います。社会意識を変えるためにも法制度を変える,このことに非常に魅力を感じるのですが,そんな思いを抱いています。 ○鎌田部会長 大村委員,お願いします。 ○大村委員 今の御意見ともかかわりますが,現時点で成年年齢を18歳にして,18歳以上の人に何の保護も与えないというのに踏み切るというのは難しい状況なのではないかと思います。   ただ,中長期的に見たときに,水野委員がおっしゃったように,18歳に引き下げるということはあってよろしいことなのではないかと思っております。   引下げに向けて様々な環境を整備することも必要だろうと思いますけれども,同時に,現在の段階で,仮に20歳という線を維持するとして,場合によって18歳あるいは19歳に下げる必要がないのかということは,もう一度考えてみる必要があるのではないかと思います。   どうもいろいろな方々から伺っていると,大きな必要はなさそうだということだったと思うのです。 しかし,必要な場合は本当にないのか。先ほど水野委員から婚姻年齢について,18歳にするとしても例外的な場合はあるかもしれないというお話がありましたが,成年年齢は20歳を維持するとして,もっと低い年齢で,完全な行為能力を付与すべき場合は全くないだろうかということは,念のために考えておく必要があるのではないかと思います。   そのこととの関連で2点申し上げたいのですけれども,1点は,少ない需要に対して,民事立法がどの程度まで応じるべきなのかということにかかわります。これは考え方次第だろうと思います。先ほど成年後見立法の話をいたしましたけれども,そこからさらに10年ぐらい前に,私は直接は存じませんけれども,特別養子という制度を導入したことがございます。   特別養子は現在どのくらい使われているかというと,年間300件ぐらいです。1年間に300人ぐらいの人の需要に応じるために,この制度をつくったわけです。300人であっても,必要な制度であればそれを整備しておこうというのは一つの考え方なのではないかと思います。数の多寡にかかわらず,正当な需要というのがあればそれに応ずるというのは,基本的な考え方としてあり得ると思います。   では,当面,理念の問題を離れて,18歳,19歳で行為能力を認めておくべき場合というのはあるのかないのかということですけれども,これはよく分かりません。先ほど国際化という話が出ましたが,日本人の若者が外国に出ていったときにいかがかということでしたが,もう一つ,日本人の若者の御両親が,海外赴任等で外国で暮らしているという状況も増えているかと思います。子どもは日本の大学に進学するので日本に残し,親は長期で外国に行っているという場合に,大学生の子どもに対して,その都度同意をする負担はどの程度なのかというようなことは,考えてみてよいと思います。   実はこれは明治時代に,行為能力について立法する際に,なされた議論であります。この審議会の御議論で言うと,親権解放制度を何らかの形で導入したらいかがかという提案が出ておりますけれども,現在の民法をつくるときに出た議論というのは,こういうことでした。例えば郷里の学校を卒業して,東京の学校に進学する。今と環境が違うわけでして,郵便が往復するのにもかなりの時間がかかりますし,東京から京都まででも10何時間かかるというような時代に,東京で暮らしている子どもがその都度同意を求めるというのは煩雑ではないかという観点から,当時は自治産と言っていましたけれども,親権解放にあたる制度をつくったらどうかというような議論が出ました。   最終的には,煩雑だからということで退けられているわけですけれども,現在,国内であれば,郵便が往復するのも簡単でしょうし,本人が行くのもそんなに時間はかかりませんが,先ほど申し上げたような,国際的に人の動くことが増えていますので,そこから生じる問題に対応する必要があるのかないのかということも考えたらいいかなと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでございましょうか。 ○宮本委員 もう一つ考えるべき事実ということで申し上げさせていただきますと,20歳までは基本的に親が保護していると認識されていますけれども,西欧諸国は,70年代になると,そういう標準的なライフコースパターンというのが崩壊して,非常に多様化して,早い人は15歳くらいでもう親の手を離れてしまう,あるいは,離れてしまうというよりも,親が保護してくれない。一方では,30歳になっても親がかりであるというような具合に非常に多様化した時代に入って,それに合わせてできるだけ早期に彼らをエンパワーしながら社会に参画させていくという政策に転じていくという流れがあるわけです。   日本の場合には,ついこの間までは,非常に標準的だったので,まだその常識が多くの人の頭の中にこびりついていて,20歳までは親が守ってくれているだろうと人々は信じ,15歳から18歳までの子は,みんな高校生であるというふうに常識として思い込んでいるところがありますけれども,事態は急激に変わっています。   そういうことを前提にした上で,基本的なところで大人になるめどを何歳にするかというのは重要で,それは,みんな20歳まで親がかりであるという常識を変えないと,年齢の再検討はできないと思うのです。   15歳くらいで,親が面倒を見てくれないような子は,もっと早くに大人になることを保障しながら,18歳になったら親に頼らずに自分の力で,大人としての権利行使ができるという選択肢を用意する必要もあるように思います。先ほど「能動的」とおっしゃいましたけれども,西欧諸国では,学校を卒業して仕事がなければ,直ちに福祉事務所に駆け込み,まず登録をするというやり方をしているわけです。それが,日本の場合には,そのような道は思いもつかないので,いつまでも親のところでじっとしていなければいけない。   そういう意味では,受動から能動へとスタンスを変える必要があると思います。これは,保護を解くということではなくて,しかるべき保護は社会的にはするけれども,彼ら自身は能動的に自分の生活を守るために動くというような形に変えていく必要があると思うのです。   そういう意味で言って,現行通り20歳を前提にという議論は,やや保守的であるのかなという感じはいたしました。 ○今田委員 宮本委員の御意見は非常によく分かるのですが。ただ,日本とかアジアの国には,家族主義的な論理や哲学などが残っていることが考えられるわけです。   学費にしろ,生活費にしろ,親が子どものそうした面にコミットメントしている傾向がアジアの国には強いですよね。ヨーロッパやアメリカは,親が金持ちであろうがなかろうが,大学生が一人で生活をする。そのかわり,奨学金の制度も整備されている。ある意味では親離れをする社会である。そういう意味で,家族主義的な色彩が強いアジアの国と西洋の国に違いがあるというのは,ここの部会でも何人かの先生が御指摘されたところです。   それは事実なのですが,それと成年年齢が,日本が20歳で諸外国が18歳だからということとの因果関係は,私は余り明確ではないのではないかと思うのです。   なぜならば,西洋の国においても,成年年齢は,70年代ぐらいまでは二十数歳であった。その時代には,親がかりだったかというとそうではないわけで,社会の構造とか,家族の構造とか,地域社会というのは,長い歴史的な,文化的な,そういうものを背景にしているということがあるわけで,そういう点で,宮本先生がおっしゃるような日本と,アジアも含めてですが,それと西洋との違いというのも非常によく分かるし,日本の制度のいろいろ問題点,そのことがゆえに,今の社会で,日本の若者の問題がより深刻になっているということもよく分かるのですが,それと,民法の成年年齢が18歳か20歳かということを直接的に結び付けるというのは,やっぱり,無理があると思いますが。 ○鎌田部会長 大村委員,お願いします。 ○大村委員 先ほど,実際上の必要がある場合もあるかどうか,精査する必要がないかと申し上げたのですが,もう一つ,先ほど宮本委員がおっしゃったこととかかわるのですけれども,実際に一人で自活していて,成年と変わらないような生活をしている,だから,社会においても,民事上も成年として扱ってほしい,あるいは成年に準ずる形で扱ってほしいと考える人が,少数であってもいるのならば,それに応ずるということは必要ではないかという気がいたします。   確かに,そういう場合には保護が切り詰められるというところもあるわけですけれども,それとの関連で,一つ考慮する必要があると思いますのは,先ほど来,水野委員が結婚のことをお話しになっておりますけれども,未成年者が結婚しますと成年擬制が働くわけです。年齢にかかわらず成年者と同じ扱いがされる。それは,未成年者取消権などの保護がなくなることを意味するわけですけれども,にもかかわらず,結婚した二人というのは,親から独立して生活していくべきものだろうという理念に基づいて,成年擬制の規定が存在するわけです。かつて,旧民法の時代には,これが親権解放の一つの例であって,結婚したら当然に親権解放される。それからもう一つ,必要があると認められる場合に,手続によって,親権解放が認められる場合がある。そういう二本立てでやろうとしたわけですが,先ほど申し上げたように,二つ目が,明治民法をつくるときに,煩雑だからということで除かれたわけです。ですが,18歳でも自立して生きている人がいるのだということであれば,親権解放という選択肢を当面開いておいて,あとは,そういう人たちがどれだけ増えるかということを見ながら,全体としての成年年齢の引下げについては,改めて考えるというのも一つの方策かと思います。 ○始関委員 水野委員と大村委員に質問させていただきたいのですけれども,まず水野委員への質問ですが ,先ほど,婚姻適齢について,18歳でそろえることを原則とするけれども,特別の場合には,柔軟な措置がとれるようにするという抽象的なお話をされたのですけれども,ちょっと具体的なイメージがわかなかったのですが,今は親の同意というのが特別の事柄になっていると思うのですけれども,それとは異なる何か特別な,柔軟な要件というんですか,あるいは実体的要件ということを示していると思うのですが,そこについてどういうふうにお考えなのかというのを教えていただければと思います。   それから大村委員には,今,自治産の話をなさったわけですけれども,今おっしゃられたのは,18歳を一つの過渡期的なものとして,20歳から18歳に引き下げることを一般にしないのであるならば,18歳以上の人に,少数でもそういう必要性のある人に自治産というものを認めたらどうかと,こういうふうにおっしゃられたように聞こえたのですけれども,先ほどの宮本委員のお話からしますと,そういうニーズのある人は必ずしも18歳以上とは限らず,15歳以上の人もあり得るのかなと思ったのですけれども,その辺についてどうお考えでしょうか。また,その自治産なるものについて,不勉強でよく分かっていないのですけれども,そういうものを認める 具体的な要件についてどのようにお考えなのかについて可能であれば教えていただければと思います。 ○水野委員 具体的には,親の同意ではないと考えております。   親の同意と言いますと,正にフランスとかのように,おびえたような強制的な結婚ということもあり得るわけですから,これは児童虐待などと同じですけれども,こういうときのために第三者の判断をかませる必要があるというふうに考えております。それは,フランスでは検事だったでしょうか。恐らく日本だと家庭裁判所の許可で,子どもの氏の変更と同じような枠組みで考えるのかなと思っております。 ○大村委員 水野委員の今の話との関係で一言付け加えますと,フランス法の場合は近親婚の例外扱いの問題があるかと思います。近親婚の範囲が定められておりますけれども,その中に入るケースであっても,例外的に近親婚が認められるという取扱いが従前からされていたと思います。   それで,今の18歳以下の者について例外を認めるというのは,考え方としては,その考え方の延長線上にあるのではないかと推測します。正確な記憶ではありませんので,必要ならば,御確認をいただければと思います。   それから,私自身に対する御質問ですけれども,始関委員がおっしゃるような需要というのはもしかするとあるのかもしれない。15歳以上というところで線を引くということが,もしかすると必要かもしれないとも思います。ただ,それは効果との見合いで考えるべきことのようにも思います。旧民法の自治産というのは,親権者がある場合には15歳以上で自治産が可能,後見人がついているときには17歳以上だったと思います。   15歳という年齢はちょっと低いように思うのですが,自治産の効果というのが,当時は,100パーセントの行為能力ではなくて,保佐人がついたのと同じ状況になるというものでした。つまり,重要な財産については処分ができないけれども,あとのことはできるというような状態になるのです。その程度の効果であれば,18歳よりも下の線というのが考えられるかもしれませんけれども,現在,婚姻の場合の成年擬制の場合にはそういう制約がなくて,100パーセントの行為能力になります。これと同じ効果を認めるということになると,15歳が果たして妥当なのかということで,効果との見合いで考えていくことが必要かと思います。   それから,要件については,実体的な要件,特に必要があると認められる場合はというようなことを書いて,特に必要な場合というのはどんな場合かというのを議論するという方向が一つありましょうが,旧民法は,親の許可で自治産を認めるという制度でした。   先ほど例に挙げました,親が海外に赴任したというケースを考えると,日本で一人で暮らしているのだから,しかるべき財産は自分で管理しなさいということで,親が許可をするというような制度が考えられるだろうと思いますけれども,そのほかにもいろいろな仕組み方があるのではないかと思います。 ○宮本委員 これは例になるかどうかはっきりしないのですけれども,生活保護世帯の10代の子どもに,ニート状態の子が非常に多い,学校に行かない,仕事についていない状態で,うちに半分引きこもったような状態でいるわけです。もっと早くにその子に外部から手を差し伸べて,家から引き出して,自立の道を歩ませるということが重要なのですけれども,それがなかなかできない。20歳までは親権があって,親がなかなか手放さないのです。   というのは,親の利益にとって子どもというものが重要だということで問題の多い環境の中に押さえ込みますので,発見されると20代後半になっているというようなことがあって,昨年から,そういう家庭に,アウトリーチという形で,出向いてサポートするようなことが開始されたのですが,親の力が極めて強く,なかなかその子の独り立ちをサポートすることができないということで,こういうケースの場合には,本人のウェルフェアのためには,早く親の家を出て自立できるようにしたほうがいいと思われます。これは西欧諸国はもう既にやっていて,思春期くらいから,場合によっては家庭から引き離して,自立のためのレールに乗せていくということをやっているわけですけれども,日本みたいに成年年齢が遅い上に,社会的な規範としては20歳よりももっと遅いですよね,30歳くらいまでは親がかりという状況にありますので,非常におくれてしまう。   そういう意味で貧困の再生産になっていると思われます。そういう意味で言うと,成年年齢を引き下げることは,保護を解くという意味だけでなくて,むしろ若者自身にとっては力になる部分というのもあるということだと思います。 ○岡田委員 私の周りにも,高校卒業して就職している生活保護世帯の子どもがおりますが,そういう子は大変優秀なのですよね。ところが,18歳ですから,全部親の管理になってしまうので,給料を全部親に持っていかれてしまうのです。解決する方法としては,別居させるとか,いろいろな方法があるみたいなのですが,そういう実態というのは結構,私は知っています。 ○鎌田部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○始関委員 先ほど,大村委員に自治産の話を教えていただいて,それは段階的な成年制度を一定の要件にかからしめて,一定の者だけ18歳になると被保佐人並みにするというものだと理解いたしました。また,成年年齢を今直ちに引き下げることには問題があるという御指摘が多かったわけですけれども,国民投票の投票年齢を18歳にするのに合わせて選挙権年齢を下げる必要はあるのかもしれないが,国民投票の投票権年齢と選挙権年齢を下げるために民法の成年年齢まで下げる必要は必ずしもないのではないかというのが,ここでも大勢の御意見ではあったように思いますけれども,それが決まるのは,実はこの審議会ではないのですね。   今,選挙権がどのようになっているかというと,成年の被後見人と未成年は選挙権を有しておらず,被保佐人は選挙権を有するということになっていて,要するに,行為能力の程度が多少弱くても,被保佐人クラスならば,選挙する能力はあるという評価に今なっております。若者の自主性,意思表明の機会を確保するために選挙権を与える必要があって,そのために民法の制度がこのままだと不都合だということに仮になるのだとするならば,それに対処する方策として,これは私の全くの個人的意見でございますが,私は,被保佐人と今の18歳の一般の学生を見たときに,どちらのほうが能力あるのかというと,それは,18歳以上の普通の若者のほうが能力があるのではないかという気もいたしますので,もしそういう観点でニーズがあるのであるとするならば,せめて段階的成年制度を導入して,18歳以上の者については被保佐人並みの能力を与えるということを次善の策として考えることはどうかなと思っているのですけれども,いかがでしょうか。 ○大村委員 始関委員の仮の御提案というのは,18歳なら18歳に達した段階で,すべてが被保佐人と同じ能力を持つという御趣旨ですか。 ○始関委員 そうすることが,選挙権を18歳以上の人に与えるために,もしも本当に必要ならばという仮定の話ですけれども。 ○大村委員 それはあり得る考え方だと思います。ただ,成年年齢ということとの関係で言うと,成年年齢は,その場合にも20歳なんだと考えることは両立することだろうと思います。   先ほどから,親権解放のようなものを部分的に認めるということも考えたらどうかと申し上げているのは,20歳を動かすというのが時期尚早だという前提に立つ場合,直ちに現状維持という結論も一つあり得る結論ですけれども,そこに着地する前に,中間的な案があり得るかどうかということをこの審議会で検討したらよろしいのではないかということです。私自身は限定的な案を申し上げましたけれども,より広く,始関委員がおっしゃるような案を考える余地もあるだろうと思います。 ○始関委員 言い出しておいてこんなことを言うのは恐縮なのですけれども,そうしますと,今2段階のものが3段階になるということがあって,何かややこし過ぎないかということと,取引上,何か不都合が起きやしないかということが前から気になっているものですから,そこらあたりについても御意見を伺えればと思います。 ○大村委員 細かくすればするほど取引が面倒になるというのは,それは確かにそうだろうと思います。   現在,成年・未成年という線が引かれているだけで,既に面倒なわけでして,あとどのくらいの線を引くのかということで,様々な理念から言って,もう一本線を引くということが望ましいということになれば,あとは取引を攪乱しないような対応策を考えていくということになるのではないかと思います。 ○鎌田部会長 個々の人に着目した親権解放的な対応と比べれば,まだ年齢で画一的だという意味では,クリアではないかと思います。   世論調査でも,一定の条件の下ならば,引き下げていいという意見がかなり多いですし,部会におけるこれまでの議論の中でも,一定の条件の下でならとか,あるいは前提条件の整備が必要だというお話があったのですけれども,前提条件にかかわる部分では,今日の御議論では,いろんな意味での教育ということが言われていたのですが,消費者法的な観点から言えば,あるいは民法の契約法的な観点から言えば,年齢を引き下げるということは,一番使いやすくて一番強力な未成年取消権を奪うということになりますね。   これは,多分,教育でカバーできるものではないので,そういう広範な取消権ではなくてもいいから,やはり消費者保護的な制度の拡充は多分必要で,これは18歳から20歳だけではなくて,今の20歳以上にも実はそれが欠けているのだというような提案,これも多分,条件なのですね。何らかの制度が条件の中に入ってくることもあるでしょうし,それからシステム的,教育的なものが入ってくることも,あるいは社会環境みたいなものもあるのだろうと思うのですが,その辺のところをまた,今後の議論の中で少し整備できればというふうに思いますが,何かこの機会に御発言があれば,お伺いいたします。 ○岡田委員 現場の声なのですが,国民生活センターの発表でもありましたけれども,未成年の契約取消しといいますけれども,金額的にはそう高くはないのですけれども,それが20歳を過ぎると途端に高くなるというのは確かにあります。また,未成年の取消しというのは,契約トラブルの全体から見るとそれほど多くはないですし,契約数について も,高齢者の契約からすれば数字は少ないのです。ですから,教育などをきちんとすれば,それは徹底するのかなと思っております。   では,未成年の契約自体に裁判所とか弁護士さんがかかわってやってくれるかというと,そのような事例というのは本当に少ないのです。弁護団とかができれば別ですけれども,弁護士さんも金額的に余りやってくれない。そんなにたくさんの事件としても出てこないという部分では,消費者センターが一生懸命やっているからなのではないかと思います。 ○鎌田部会長 未成年取消制度があるから,そこの網にひっかかるような契約は,もともと余りなされていないということかもしれないですね。   ほかによろしいですか。   仲委員,お願いします。 ○仲委員 今日出てきていた議論の根拠となるようなもの,例えば18歳から20歳の間で親権解放ができなかったために,こういう被害があったというような事例がどれぐらいあるのか,親権というふうなことでひきこもりの問題が悪化しているようなケースというのはどれぐらいあるのかとか,それからあともう一つ,水野先生がおっしゃったような婦人参政権と18歳に選挙権を与えるということの,似ていると言えば似ているのだけれども,でも女性は男性になれないけれども,18歳は20歳になれるので,何かそこら辺,同じなのか違うのかというようなことですとか,今日出てきていたような論点をもう少し詰めたものを,また次回,伺えればと思いました。 ○鎌田部会長 分かりました。その辺は,事務局で調べられる限りのことは調べさせていただくようにしたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,本日の審議はこの程度にしたいと思います。   次回以降も引き続き,成年年齢の引下げの是非,その他の論点について議論をしていきたいと考えておりますが,成年年齢の引下げにつきましては賛成・反対,両方の立場がありますし,先ほど申し上げましたように,一定の条件整備という点についてはかなり共通の御理解があろうかと思います。その条件整備の中身につきましては,必ずしも明確,具体的とはいえないところでございますけれども,これまでの審議の中で出されました議論を踏まえて,事務局の側で条件整備の内容も含めた整理をさせていただきたいと考えております。   それから,今日ちょうだいしました宿題についても事務局に調べていただきたいと思いますけれども,そういう進め方で次回以降もよろしゅうございましょうか。   それでは,事務局から次回の議事日程及び次回以降の議事日程について説明をしていただきます。 ○佐藤幹事 次回の議事日程について御連絡いたします。   次回の日程は,10月21日の火曜日,午後1時30分からで,場所は本日と同じ法務省20階の第1会議室で行います。   審議内容につきましては,本日と同様,これまでの結果を踏まえて,委員,幹事相互間で,成年年齢の引下げ,その他の論点について御審議いただきたく存じます。   次回も一応,会議時間としましては午後4時半までということで御連絡を差し上げているところですが,本年末までには中間取りまとめをしなければならない関係上,場合によりましては1時間以上の延長の可能性もございますことを含みおきいただきたく存じます。   当面の予定としましては,12月16日の第11回会議におきまして,成年年齢の引下げについて一応の方向性を決定し,その後,パブリックコメント等の手続に付した上,来年1月以降の部会においてパブリックコメントの結果も踏まえて,再度御審議をお願いしたいと考えております。 ○鎌田部会長 年明け以降も会議は続くことになりますが,何とぞよろしく御協力のほどお願いいたします。   本日の法制審議会民法成年年齢部会第8回会議をこれにて閉会させていただきます。   御熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。 -了-