法制審議会民法成年年齢部会           第9回会議 議事録 第1 日 時  平成20年10月21日(火) 自 午後1時31分                        至 午後5時42分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民法の成年年齢の引下げの当否について 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ○鎌田部会長 予定した時刻が参りましたので,法制審議会民法成年年齢部会の第9回会議を開催いたします。   それでは,まず事務当局から配布されている資料について説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 それでは,事務当局から配布させていただきました資料について御説明させていただきます。   本日は,席上配布資料はございませんので,第9回会議のために配布させていただきました資料の目録は,先日送付させていただきました資料目録のとおりでございます。   また,今回配布させていただきました資料は,いずれも部会資料でございまして,資料番号35と36でございます。 資料番号35は,事務当局が作成しました「必要となる条件整備として,これまでの審議で提言された事項」と題する資料でございます。資料番号36は,事務当局が作成いたしました「今後検討すべき論点について(改)」と題する資料でございます。これらの資料はいずれも本日,皆様に御議論いただくために事務当局が作成したものでございます。後ほどこれらの配布資料のうち,特に部会資料36に基づきまして,本日,皆様に御議論いただきたい論点について御説明させていただきます。   以上,配布いたしました資料についての御説明を終了いたします。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   これからの時間は,前回に引き続き成年年齢の引下げに関しまして,委員・幹事相互間で御議論いただきたいと思います。   本日は,先ほど事務当局から説明のありました部会資料36の各論点の順番どおりに御議論いただきたいと思います。まず,論点1の民法の成年年齢を引き下げるべきか否かについて事務当局に説明してもらい,その後,御審議いただきたいと存じます。 ○佐藤幹事 それでは,説明いたします。   本日も前回に引き続きまして委員,幹事の皆様に,これから成年年齢の引下げに関する御議論をしていただきたいと考えておりますが,部会資料36は,前回配布いたしました部会資料34をベースといたしまして,前回,委員,幹事の皆様方から出されました意見などを踏まえまして,今回,皆様方に御議論いただきたい点を事務当局で改めて整理させていただいたものでございます。   そこで,第1の論点であります民法の成年年齢を引き下げるべきか否かについて御説明いたします。   前回,御審議いただきました際には,まず成年年齢を引き下げる必要性があるのか,成年年齢を引き下げることによってどのようなメリット,デメリットがあるのかということが主に議論となりました。成年年齢を引き下げる必要性としまして,①成年年齢を引き下げることにより,若年者の保護についての施策の転換をはかるべきである,また,成年年齢を引き下げることによって若年者に社会人としての自覚を促すべきであるという意見がございました。この意見に対しましては,成年年齢を引き下げることによって,若年者に社会人としての自覚が促されるかどうかは分からず,このような効果が不明確かつ計測困難な理由によって,基本法である民法を改正することはできないのではないかという意見がありました。   また,当部会で行いましたヒアリングでは,成年年齢を引き下げ,法律上の成年年齢と精神的な成熟年齢がこれ以上乖離すると,法律上の成年年齢を迎えても,どうせ大人にはなれないという若者のシニシズムが進行するおそれがあるとの意見もございました。   また,前回の部会では成年年齢引下げの必要性として,②少子高齢化の現状でなるべく若い人たちに意見表明権を保障する必要があるという意見もございました。この点につきましては,確かに少子高齢化の現状にかんがみれば,なるべく早期に若者の意見表明権を保障する必要があるかもしれないが,若者の意見表明権の問題は参政権の問題であり,民法の成年年齢を引き下げることの理由にはならないのではないかという意見もございました。この点は(2)の論点,民法の成年年齢と憲法改正の国民投票年齢,選挙権年齢との関係とも関連していると思われますので,あわせて御意見を賜りたいと存じます。   次に,前回の部会で指摘されました成年年齢引下げのメリット,デメリットについて御説明いたします。   まず,前回の部会では,①近年,親から虐待を受けたり,金銭的な搾取を受けている子どもが増加している,また,ニート対策を行政機関が行おうとしても,親から拒まれて適切な対策がとれないことがある,成年年齢を18歳に引き下げることによって,18歳,19歳の者を親の親権から解放することができるという御指摘がございました。この点に関しましては,児童虐待の対象となっているのは低年齢児が中心であり,18歳,19歳の子どもが虐待の対象となっている事例は少なく,児童虐待の問題については,成年年齢を引き下げることによって対応するのではなく,別途,対応策を検討すべきであるという御意見もございました。   また,前回の部会で複数の委員から,18歳,19歳の子どもが虐待の対象となっているケースやニート対策を行おうとしても,親から拒まれるケースがどの程度あるのかという御質問がございましたので,事務当局で調査をさせていただきました。まず,18歳,19歳の子どもがどの程度虐待の対象となっているかについてですが,第7回会議のヒアリングにお招きいたしました遠山弁護士にお願いをして,日弁連の関係委員会に調査をしていただきましたところ,データはとっておらず,分からないということでした。また,ニート対策を行おうとしても,親から拒まれるケースがどの程度あるかについてですが,厚生労働省の担当部局に問い合わせて調査をしたのですが,そのような話は聞いたことはあるが,どの程度の実例があるかは調査をしておらず,分からないとのことでした。   次に,成年年齢引下げのメリットといたしましては,②既に実質的には親から独立して生活をしている18歳,19歳の者が親の同意がなくても契約をすることができるという御意見もございました。この点につきましても,事務当局で御参考までに調査をさせていただいたのですが,18歳,19歳のうち,働いていて,親と同居していない者,一人で契約をする必要性が高いが,親と同居しておらず,同意をとるのに手間がかかると思われる者の人数は平成17年のデータですが,18歳,19歳の総人口の約6.7パーセントというデータがございました。   また,成年年齢引下げのメリットとして,③成年制度を諸外国と一致させることにより,国際取引がスムーズにいくようになるという意見も出されました。この点につきましては,前回の会議の際に,委員,幹事の方から,一義的には法の適用に関する通則法の問題であるという御意見もあったかのように記憶しておりますが,通則法がどのように定めているかということを少し御説明申し上げますと,通則法は,第4条第1項で人の行為能力は,その本国法によって定めるという原則を定め,第4条第2項で法律行為をした者がその本国法によれば行為能力の制限を受ける場合であっても,行為地法によれば行為能力者となるときは,一定の要件のもとで,行為能力者とみなすという取引保護の観点からの規定を置いております。   やや分かりにくいので具体例で申し上げますと,例えばシンガポールの成年年齢は21歳とされておりますが,20歳のシンガポール人が日本において取引を行う場合は,日本においては成年年齢が20歳とされており,行為能力者となりますので,一定の要件のもとで親の同意なく取引をすることができるということとなります。このように通則法では各国の成年制度が異なることを前提に,取引における保護の観点なども考慮して調整規定を設けており,どのように調整を行うかは通則法の問題であるとも考えられます。   他方,成年年齢を引き下げた場合のデメリットといたしまして,④成年年齢を引き下げると消費者問題が増加したり,18歳,19歳の若年者の消費者トラブルが増加するなどのおそれがある,⑤今回の法制審議会における検討は,民法のみの検討を行うということであるが,民法の成年年齢を引き下げると,少年法など他の法律の年齢の引下げに事実上つながるおそれがあるという意見が出されました。そのほか,前回の部会では成年年齢は20歳であるという文化が我が国には根づいており,多くの国民が引下げに反対という現状を重視する必要があるという意見も出されました。   そこで,これらの意見についてどのように考えるか,御意見を頂だいできればと考えております。前回の委員,幹事の皆様方の御意見を拝聴しておりますと,どちらかというと現時点で成年年齢引下げの必要性はなく,メリットよりもデメリットのほうが大きいという議論のほうが大勢を占めていたかのように思いますが,本日も前回の御議論を踏まえまして,さらなる御審議を賜りたいと思います。   次に,部会資料36の2ページの(2)という箇所を御覧ください。   前回に引き続き,憲法改正の国民投票権年齢,選挙権年齢と民法の成年年齢との関係につきましてもどのように考えるべきか,御意見を頂だいできればと考えております。前回の御議論の中では,多くの国で憲法改正の国民投票権年齢,選挙権年齢と民法の成年年齢とを一致させており,社会の完全なメンバーシップを取得する年齢という意味で,一致させることが望ましいという意見がございました。他方,国民投票の投票権年齢と選挙権年齢は,何歳以上の者に参政権を与えるかという問題であり,一致させる必要があるが,民法の成年年齢は何歳までの者を契約や身上面で保護すべきかの問題であり,必ずしも一致させる必要がないという意見もございました。この二つの意見は必ずしも矛盾するものではありませんが,部会意見として取りまとめをしなければなりませんので,いずれの意見が部会意見として相当か,委員,幹事の皆様の御意見を頂だいしたいと存じます。   なお,御議論の参考としていただくため,注4で成年年齢と選挙権年齢を不一致にさせている国,州を記載させていただきました。詳しくは第7回会議の際に配布いたしました参考資料19を御参照いただきたく存じますが,アメリカ,カナダの一部の州や韓国,インドネシア,マレーシア等では,私法上の成年年齢と選挙権年齢が一致しておりません。   以上で説明は終了します。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは,ただ今説明がありました論点1の民法の成年年齢を引き下げるべきか否かにつきまして,御意見をお伺いしたいと思います。   では,大村委員,お願いします。 ○大村委員 質問を二,三させていただきます。   今,御説明の中で部会資料36の注2の②のところに,働いていて親と同居していない者の数の割合が約6.7パーセントと出ておりますけれども,実数でいうとどのくらいになるのかというのがもし分かりましたら,お教えいただければと思います。それが第1点です。   それから,同じページの注2の③のところで通則法の話がございます。これは前回,私も通則法で調整規定が設けられているのではないかというようなことを申し上げました。御確認をいただいたということだと思いますが,ここで挙がっている例は,本国法では行為能力の制限を受けるとしても,行為地法によれば行為能力者となるときには行為能力者とみなすという例で,本国法で20歳以上の成年年齢を定めている場合には,日本では20歳から成年として扱うということですけれども,本国法で18歳が成年年齢の場合には,本国法に従うということで,日本でも18歳で成年として扱われるということになりそうですけれども,そういうことなのかどうなのかを確認したいというのが第2点です。   第3点は,同じ資料の2ページの注4ですけれども,成年年齢と選挙権年齢が一致しない国が幾つかあるというのは,ここに書かれているとおりなのだと思いますけれども,それは積極的に一致させないという判断がされた結果なのかどうなのかというところについて,伺いたいと思います。というのは,ここに挙がっている例でいいますと,韓国は今は確かに一致していないのですけれども,一致させようという方向の立法論があるやに聞いておりますので,そのあたりについて何かございましたら,補足いただければと思います。 ○佐藤幹事 では,事務当局からお答えさせていただきます。   第1の点ですが,注2で書きました18歳,19歳の総人口の約6.7パーセントということですが,第1回の際にお配りしました参考資料5,こちらは平成18年のデータですが,こちらに18歳,19歳の人口というのがございまして,正確な数字はそちらを見ていただくと分かるのですが,大体130万前後ですので,それの2歳分の6.7パーセントということでございます。   第2点の通則法の議論は,大村委員がおっしゃったとおり,基本的に本国法で18歳と定めている場合は,18歳になるのではないかと考えております。   第3点の注4の諸外国で積極的に一致させていないかどうかという点なのですが,必ずしもすべて調べているわけではないのですが,大村委員がおっしゃるとおり,韓国では,今選挙権年齢が19歳,そして私法上の成年年齢は20歳なのですが,私法上の成年年齢を19歳に下げ,選挙権年齢と一致させる法案を出す準備をしているというふうに聞いております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。 ○山本委員 質問でございますけれども,いわゆる国民投票法の附則第3条は,18歳以上の者が国政選挙で投票できるよう,公職選挙法の選挙権の年齢や民法の成年年齢などの規定について検討し,必要な法制上の措置を講じ,18歳以上の者が国政選挙で投票することができるように改正するまでは,国民投票の投票権者も20歳以上とするという規定内容だと思うのですが,その理解としては,成年年齢を検討した結果,変えないということであっても,公職選挙法の選挙年齢が引き下げられれば,国民投票法に規定されている投票年齢は18歳になるという理解でいいのでしょうか。 ○始関委員 今の点でございますが,国民投票法の立案過程にかかわったわけではないので,伝聞なのでございますけれども,自民党の憲法審議会において立案に関与されました衆議院法制局の方が来られて,この附則の説明をされたのでございますが,どこまでやれば18歳に引き下げる要件が満たされるのかというのは,この規定上,必ずしもはっきりしないので,18歳で国民投票を実施することとするためには,もう一度法改正をする必要があるという説明をされておられました。ですから,民法の成年年齢まで下がらないと18歳にできないのか,民法の成年年齢は下がらなくても,公職選挙法の選挙権年齢だけ下がれば,18歳で国民投票になるのかというのは,また別途,国会で御議論がされて,そこでこれでいいんだということになれば,その段階で法改正をもう一回して,18歳ということで確定させるということになるようでございます。 ○鎌田部会長 よろしいですか。 ○山本委員 要するに,少なくとも公職選挙法の選挙権年齢は18歳に下がっていないと駄目ですねと。民法の成年年齢が変わったかどうかにかかわらず,国民投票法の投票権を行使できる年齢を18歳にするかしないかは国会の判断であり,新たに法律を出して決めることだという理解でいいのですか。 ○始関委員 先ほどの説明については,そのように理解をいたしました。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。   特にないようでしたら,論点2の成年年齢を引き下げるための条件整備の必要性とその内容について,事務当局に説明をしてもらいまして,そことあわせてまた御意見,御質問等をお伺いするようにしたいと思いますが,よろしゅうございましょうか。   それでは,事務当局からの説明をお願いします。 ○佐藤幹事 それでは,続きまして論点2について御説明させていただきます。   論点2は,成年年齢を引き下げるためには条件整備が必要か,また,仮に必要だとするとそのための条件の内容は何かという論点でございます。   これまでのヒアリングの結果や世論調査の結果によれば,成年年齢を引き下げるためには,教育の改革など一定の条件を整備する必要があるように思われますが,成年年齢を引き下げるためには条件整備が必要であるかどうか,また,条件整備が必要であるとすると,具体的にどのような条件整備が必要と考えられるかにつきまして,御意見を頂だいできればと考えております。   ここで部会資料35を御覧いただきたいと思います。   部会資料35は,前回の部会におきまして,部会長から条件整備の内容について考えられる事項を整理するようにという御指示をいただきましたので,これまでの審議の中で必要となる条件整備について,提言された事項を事務当局でまとめたものでございます。   まず,教育内容の充実という提言がございました。教育内容の具体的な提言といたしましては次のようなものがございました。   契約に関する教育の充実,すなわち契約の意義,契約の成立要件,契約を解消することができる場合とできない場合などの理解を深めること。   消費者問題に関する教育の充実,例えばクーリングオフの制度や国民生活センターの役割等消費者保護の制度の基本や悪徳商法の特徴,対策などを教えること。   経済や金融に関する基礎知識と,日々の生活の中でこうした基礎知識に立脚しつつ適切な意思決定をする能力を身に付けさせるための教育の充実。   インターンシップなどの労働実践教育や仕事の探し方,さらには働くことの尊さ,喜びなど労働の意義などに関するキャリア教育の充実。   多様な価値観や文化で構成される現代社会において,個人が自己を守り,自己実現を図るとともに,よりよい社会の実現のために寄与するという目的のために,社会の意思決定や運営の過程において,個人としての権利と義務を行使し,多様な関係者と積極的にかかわろうとする資質を獲得することができるようにするための,いわゆるシティズンシップ教育の導入や充実。   この教育内容の充実に関する提言につきましては,これらすべての教育を各別に行うことは,授業時間数の関係で困難ではないかと思われますし,相互に関連性があるものも少なくございませんので,できる限り,一まとめにした形で整理することができないかにつきましても,御検討いただく必要があるのではないかと考えております。   続きまして,消費者関係につきましては,消費者保護施策のより一層の充実,例えば若年者の社会的経験の乏しさにつけ込んで取引等が行われないよう,若年者と一定の重要な取引をする場合には,事業者に重い説明義務を課すなどの手当てが必要であるという提言がございました。   さらに,労働政策につきましては,若年者がキャリアを形成することができるようにするための施策の充実,例えば若年者に対する教育訓練制度や就労支援の制度の充実が必要であるとの提言がございました。   その他の施策といたしまして,次のような提言がございました。   虐待を受ける子や,虐待を受けた結果社会的自立が困難となった者を減らす必要があることから,児童福祉施設の人的,物的資源の充実,子育てを社会で支え合って行うという仕組みの充実。   若者の自立に関する世論,親の意識改革,つまり通常のレールに乗れなかったニート,ひきこもり等の人々に対して周囲が寛容になること等でして,具体的にはニート,ひきこもり等の実態や援助の方法等についての社会的理解を深めること等が考えられます。   以上がこれまでの審議の中で,成年年齢を引き下げる場合に必要となる条件整備についての提言があった事項をまとめたものでございます。ほかにも成年年齢の引下げをする場合に,整備が必要となる条件がございましたら,御提案いただきたいと存じます。また,これらの条件がすべて整わなければ成年年齢の引下げをすることができないと考えるのか,それとも,これらの条件はあくまでも例示にすぎず,大人になるための教育や若年者の保護の施策が充実すれば,成年年齢の引下げをしてもよいと考えるのか,この点についても御意見を賜りたく存じます。   それでは,部会資料36の2ページの注5を御覧いただきたいと思います。前回の部会では大人になるための教育というものを行うことは,現在の日本の高校教育の現状にかんがみると難しいのではないか,成年年齢を引き下げる場合であっても,引き下げない場合であっても,消費者保護の施策の充実や教育の改革など,若年者の自立に向けて一定の条件整備が必要であると意見も出されましたので,ここに注5で注記してございます。これらの意見につきましてもどのように考えるべきか,あわせて御議論をお願いしたいと存じます。 ○鎌田部会長 ただ今説明のありました論点2の成年年齢を引き下げるための条件整備について,御意見をお伺いしたいと思います。先ほどの論点1にかかわる御意見も,あわせてお出しいただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○宮本委員 条件整備の中で教育内容充実についてたくさん盛り込まれているのですが,これはこれでいいと思うのですけれども,将来起こることを想定して教育的準備をするということは,限界があると思うのです 。そのことは,この間の議論の中でもたびたび出されたことだと思います。   そこで,日々生活をしながら支援をしていく仕組みが必要だと思います。西欧諸国などを見ていますと義務教育終了まで,つまり15歳とか16歳の年齢までは子どもということで保護中心になりますけれども,義務教育が終わってから成年年齢までの2年とか3年の間は,どういうふうに環境整備しているかということに関してですけれども,例えばカウンセリング,ガイダンス,情報提供というような分野がかなり充実しているように思われます。   この間も消費者保護の問題が随分議論されましたけれども,例えば義務教育を終了すると,多くの国ではアルバイトをやっているわけで,一方で経済的に依存期間が長くなっているけれども,もう一面で見ると,アルバイトが普及するという形で半分自立しているという状態があるのがどこの国も特徴としてありますので,そういう意味では経済人として,あるいは労働者として,この年齢層特有の形でサポートする仕組みをつくっていると思われます。   具体的に申し上げますと,いろいろな町の中にワンストップショップで若者対象のサービス機関があって,そこへ行けば困ったときにカウンセリングが受けられる,情報提供があるというような形で,例えば消費者センターは日本なんかを考えても,ここで議論されているような10代なり,20代の初めぐらいの子が大人と同じような形で消費者センターに行くということがいいかどうかというか,使いやすいかどうかという問題があると思います。そういう意味で,若者特有のニーズに対してこたえるべき社会的な仕組みというのが必要であり,それは教育だけではカバーできないと思います。   そういう意味でもう一度繰り返しますと,義務教育終了後から成年年齢に達するまでの期間と,成年年齢に達した後の数年くらいのヤングアダルトの時期に関しては,その年齢特有のニーズに対する社会的なサポートが必要ではないかと思います。 このサポートの種類に関しましては,かなり多様なニーズにこたえるという性格を持っているように思いまして,例えば15,6歳で学校を中退する子は,学校に依拠していないで,社会に出ているわけで,その人たちの持っている特有のニーズに対してこたえるということも必要ですし,それから,この間も何度も出ていましたとおり,既に親に十分に保護されない若者の存在に関しても何らかのサポートができるよう多様で総合的なサービスをこの中間的な年齢層に対して行うことが必要で,学校教育での充実だけでは多分ニーズにこたえられないと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   どうぞ,松尾関係官。 ○松尾関係官 最近,様々な刑事の立法に関与しておりますと,非常に自立した積極的な人たちと,甚だ弱いといいますか,傷つきやすい人たちと両方に二極分化しているという感じを受けます。   それが典型的にあらわれましたのは,性犯罪等の被害者をどう扱うかであります。被害者に証人をお願いするときに,法廷で被告人と顔を会わせることさえ嫌だということで,被告人との間につい立てを立てるとか,あるいは場合によっては,隣の部屋からテレビのサーキットで連絡して証言をしていただくなどの配慮を一方でしております。しかし,他方で,法廷に出て積極的に意見を述べたいという被害者の人たちもおられて,そういう方向の法律改正も最近実現したことは御承知のとおりであります。   非常に保護を必要とする人たちと,そうではなくて自立した積極的な,それに対応する権利あるいは地位を認めたほうがいい人たちと両方あるということで,このことは恐らく未成年者に対しても当てはまるのではないか。一方において世の中は複雑になってきておりますので,ますます保護をしなければならないという側面と,積極的に意見を述べ,社会に参加してもらいたいという面と両方がある。それをうまく切り分けることがなかなか難しいのでありますけれども,どうも一元的な解決にはなじまないという現象が増えているのではないかという感じを持っております。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   岡田委員,お願いいたします。 ○岡田委員 不当請求の問題が発生したときは,小学生,中学生,それから今まで消費者センターを使ったこともないような年代からも相談がたくさん寄せられました。消費生活センターでは未成年であっても相談は受けております。親の話を聞かなければいけない場合は,もちろん,本人に話をして親から話を聞くという形をとりますので,もっと消費生活センターの存在を知れば,年代にかかわらず利用してくれるのかなと思います。   それから,トラブル件数なのですが,確かに未成年と成人になった20代,30代ということで考えますと,未成年の場合,契約の取消しというのがかなり事業者にも知られていますので,勧誘は積極的にしないというのがあるのですが,かといって20歳になったからすぐ勧誘されているかというと,やってはいるかもしれないけれども,統計的には年代としては30代が一番トラブルに遭っています。   そういうふうに考えますと,今,松尾関係官のおっしゃったように年代に関係なく,個人の能力によって,トラブルに遭うか遭わないかが決まると多分に思われるということと,今の消費者保護の関連の法律でクレジット契約に関しては,仮に30代であれ,40代であれ,収入がなければ契約はできない形になってきていますので,そうすると今度また年齢とは関係なく対応されていくのかなと思います。   あともう一つなのですが,確かに消費者教育や法教育は,いずれも学校教育の中に入ったのですが,実際に行われているかというと時間がないとか,専門家がいないという理由でまだ遅々として進んでおりません。そうなると単発でやるしかないのです。ところが,消費者教育も法教育も単発でやったとしても効果は上がらないと思いますので,根気よく時間もかけてやらなければ駄目なのではないかと思っています。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   先ほど宮本委員から御指摘のありました若年者に対するサポートのようなもので,弁護士会としては何かやられているものはありますか。   では,平田幹事,お願いします。 ○平田幹事 消費者教育とかの点については,今までのヒアリングで話されたことを大きく超えるものはありません。   論点が変わってしまうのですが,前回,少年法ということで問題を出させていただいたところが弁護士会で議論になっているものですから,弁護士会内の意見を申し上げたいと思います。   必要な条件整備として,これまでの審議では扱われてこなかったわけですけれども,弁護士会内のアンケートによって出てきた意見で一番大きいものの一つが少年法であります。民法の成年年齢を下げれば,少年法も同じにしなければいけないという論理的な必然性はないかとは思うのですけれども,ただ,民法上,成熟していると扱うべきだとなると,少年法も同じように繰り下がる可能性が非常に高いと思うのです。   マスコミで出てくる若年者の非常に凶悪な重大犯罪というのはありますけれども,我々弁護士が直接付添人等としてかかわる圧倒的多くの事案は非常に微罪なもので,それを刑事手続に乗っけて刑事処分で終わりというのではなくて,少年法の精神とは,少年の可塑性というのを信用して,更生のための支援というのを考えていくものなので,それを年齢によって大きく切り下げて,なくしてしまうおそれがあるところは問題があるので,やはり今までの議論と同じように民法の成年年齢を下げるのであれば,少年法が変わろうが変わるまいがやはり未成熟であるがゆえの刑事手続上は更生のための支援という条件整備が必要なのではないかという意見が出ております。   私個人の話をさせていただくと,私は障害者福祉にかかわってきているものですから,障害者の自立が自己決定の尊重とか重大なテーマとして掲げられているのですけれども,特に知的障害,精神障害を持った若年者というのは,だれの関与もなくて自立できるかといったらできるはずがない。やはりオートノミーというのも社会的トレーニングを受けて,初めて獲得できるものであるから,まず,自立を考えるときは支援付き自立という社会的支援があって初めて自立できると。自立できている人と自立できていない人というのは大きく二極分化されるのかと。割と障害者福祉では連続して支援付きの自立という観念を立て社会的支援が不可欠なんだと。それで,社会的支援が必要でなくなった段階というのはあるというふうに観念します。   ただ,消費者問題でも被害に何度もあう人がいるというのは,その者に微少な欠陥があるかどうか,器質的な問題があるかどうか,よく分からないのですけれども,どれだけトレーニングをしても失敗してしまう人がいるということになると,社会的支援というのをそう簡単に外すわけにはいかない。やはり成熟した者として扱っても,それまでの社会的経験が乏しいということになると,教育まで含めた社会的支援というのをどの場面でも考えていかないと,年齢問題というのは解決しないのではないかと考えております。   以上です。 ○鎌田部会長 五阿弥委員,お願いします。 ○五阿弥委員 非常に取りとめのない話で恐縮なのですが,先ほど宮本先生がおっしゃったように教育現場というか,学校だけではやはり無理だと,私も本当にそう考えます。部会資料35を見ていても,確かにこういう教育内容の充実というのは必要かもしれませんが,多分,座学では駄目だと思うのです。私の高校のときを振り返っても,座学でこういうことを教えられたとしても,聞いて終わりだと。例えばインターンシップなどは意味があるかもしれません。ですから,教育内容に盛り込んでもいいのですけれども,やはり学校だけではなくて地域社会,あと企業ですよね,大学に行かない若者たちというのは,働くということを通してやっぱり大人になると思うのですけれども,そこをきちんと企業もサポートする。   私が常々思っているのは,日本というのは社会が子育てしようという意識が乏しいと思うのです。全部家庭の責任にされてしまう。社会保障費の分配を見ていても7割は高齢者に関するものが占めており,子育て関連は4パーセントしかありません。ヨーロッパなどに比べると,子育ては本当に2分の1から3分の1でしょうか。一時,年金改革の中で,年金積立金が百数十兆円あるけれども,それをもう少し子育てに回したらどうかという議論がありました。そして,そのときに出されたのは奨学金です。奨学金をもっと出そうではないかと。日本の場合は全部親のすねをかじっていますけれども,そうではなくて,子どもが自分で借りたお金であれば,もう少しやはり大人としての自覚が出てくるのではないかという意見がありました。結局,その改革案は通りませんでしたけれども,やはり社会全体で子どもを育てていくといういう観点がもう少しやっぱり私は必要だと思います。   それと,今ドロップアウトする子どもたち,社会的に排除されてしまう子どもたちが非常に多い一方で,例えばインターネットで様々な情報をとり,自分で世の中を切り開いていくという若者たちも少なくありません。そういう二極分化していく中で,やはり落ちこぼれていく若者たち,これは若者に限らずですけれども,やはりそこのセーフティーネットがやはり弱いと思うのです。   ですから,18歳に引き下げる場合にこうしたことが必要だと思います。これは私がこの場でも繰り返し言っていることですが,消費者保護とかは,少年だけではなくて大人にも必要なことなのです。とりわけ高齢者に今振り込め詐欺に注意するよう幾ら言ってもやはり続出してしまうという。やはり,そういう悪徳商法をいかに防いでいくか,あるいはこれは犯罪ですけれども,そういうものに対してどういうふうに被害を防止していくかというのは,社会全体で考えていかないといけない。でも,まだまだやはり弱いというところがあります。   あと,取りとめのない話でもう1点言うと,一番最初にかかわりますけれども,民法の成年年齢を引き下げるべきか否かについては,新聞社もそうですけれども,世論調査をやると圧倒的多数は反対です。その理由は18歳はまだ大人としては未熟であるという。ただ,私が考えるに,完成された大人あるいは成熟した大人というと,確かにそれは無理だと思うのですが,30歳だってそういうのは無理かもしれない。少なくとも大人というか,成年への入口の年齢は何歳なのかというふうに聞けば,もう少し違う答えが出たのかなと思いました。   やはり今の時代というのは,社会参加するため,幅広い人たちの意見を集約していく,それが民主主義の基本だと思うのですが,そういう意味では,参政権が18歳からになったとしたら,やはり民法もある程度変わらざるを得ないのかなと思います。ただ,だからといって養子やたばこや酒も18歳からにするというのは,確かになかなか認められないのではないかと思います。また,そこら辺は年齢によってもう少し違いがあってもいいのかなと思っております。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,大村委員,お願いします。 ○大村委員 宮本委員や五阿弥委員がおっしゃったサポートについてですけれども,これまでにこの審議会の中でしばしば法教育ですとか,あるいはより広くシティズンシップ教育ということが言われてきたかと思います。私も,学校の枠内でこれを推進するというのは本当に重要なことだろうと思います。   実は,私は法務省の法教育推進協議会の座長を仰せつかっておりますが,法務省はこれまでいろいろな検討をしてまいりました。カリキュラムの面では文科省に各方面を通じて要望が伝えられているものと思いますが,多くのことを盛り込むというのには現状ではそう簡単なことではなかろうと思います。時間数が本当に限られていて,現場の先生方は御苦労されている中で,既存のカリキュラムと関連づける形で盛り込んでいただくことを考えておりますけれども,どうしても限界があるのだろうと思います。   これが現状であるとして,その先はどうなるのかということなのですけれども,やはり学校だけに頼っていては法教育,それから市民教育というのは進んでいかないと思います。様々な場で法教育あるいは市民教育の試みがされることによって,学校の現場でもその重要性が認識され,浸透していくという相互関係があるのだろうと思います。ですから,学校で,今は余り時間がとれないとしてもあきらめるのではなくて,その他様々な機会を利用できるような方策を考えていくとよいのではないかと思います。法務省もそのためにできることがあれば,何かお考えいただくということもあってよいのかと思っております。   それと,座学では限度がある,という御指摘がありました。本当にそうだろうと思います。法教育ということになりますと,今日も出ておりましたけれども,契約に関する法技術的なことを学校で教える必要があるのかということがよく話題になります。必要があるとすると,何と何を教えればいいのですかと聞かれるわけですけれども,お話がありましたように,そうしたことは実際に契約トラブルに直面してみないと,なかなか具体的なリアリティーを持って,感じることはできないんだろうと思います。   小中学校で行うべき法教育というのは,そういうものではなくて,約束というのが一体どういうものなのかということを日常の生活の中で身に付けていく。それがあって初めて法技術的なものが生きてくるのではないかと思います。その法技術については,先ほど宮本委員がおっしゃいましたことと重なりますけれども,社会に完全にあるいは半分出た後に,必要に応じてサポートが受けられることが重要であって,そのときにいろいろ説明されることを理解するための基礎あるいはセンスというのが,学校教育の法教育で培われるべきものなのではないかと思っております。   それから,松尾関係官から今の若い人は両極化しているのではないかというお話がありましたが,多分おっしゃるとおりなのではないかと思います。先ほど統計との関係で伺いましたけれども,18歳,19歳の6.7パーセントが働いていて親と同居していないということでございました。総数を言っていただきましたので計算いたしましたけれども,約17,18万人ではないかと思います。この約17,18万人の方がすべて自立して,親の援助を要らないという形で生きているとは思いませんけれども,この中に少なからぬ人たちが自分の力で生きていけるということで含まれているのではないかと思いますので,そういう人たちもいるということを織り込んだ制度設計というのが要るのかなと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   今田委員,お願いします。 ○今田委員 委員の皆様方の御議論を聞いて,頭の中が少しずつ整理されてきたのですけれども,社会には様々な制度がある中で,我々は報告書で,この条件整備ということの範囲についてどの辺までを対象にするのでしょうか。皆さんの御議論を聞いていて明らかになったのは,今,成人として成長する過程が非常に難しくなっていることです。   その原因は社会の広範囲にわたるものであって,例えば雇用の現場が崩れている,社会全体が,若者をゆっくり育てるのではなく,成果主義だの,競争だのがかなり激しくなって,勝ち組,負け組の人をつくり,親からも地域からも学校からも援助を受けられないような若者を生み出し格差が拡大しているといったことを言われてきました。事務局がいろいろな参考人の方をお招きしてくださった結果として,我々はそれを学んできたわけですが,そういう議論の中で若者の窮状を救うために整備されなければいけ ない対象は,非常に広いわけです。   今,議論になっている学校だけではなく,本当は企業がもっと頑張ってきちんと若者を育ててくれと言いたいけれども,そういう問題までもここで問題とするのかどうかということです。法律をどう議論するのかというのは,非常に難しい問題だということ私は今回学習いたしました。というのは,労働の問題だと労働の範囲内でこういう問題が起きて,この制度をこうするという議論ができるのですけれども,今,言ったように起こっている原因が非常に広い,ある意味で産業社会全体のいろいろな問題と絡んできているということを我々は学習したわけで,そういうことからすると,この条件整備という問題について,どの範囲を想定して我々は議論したらいいのかということについて,やはり少し整理が必要なのではないかと思います。 ○鎌田部会長 範囲に特に限定はないと思います。ただ,個別具体的な施策になると,この審議会の権限外のことのほうが圧倒的に多いということになりますので,余り個別的な施策の具体的提案は難しいところがあるかもしれませんが,現代の若者の置かれている状況と将来どういう方向性を持って様々な施策を進めていくべきかというレベルでは,必要なこと,本質的なことは枠を意識しないで語っていいのではないかと思います。 ○佐藤幹事 事務局から御説明いたします。   今田委員の御指摘はごもっともでございまして,この部会の審議で条件整備として出たもののうち,主立ったものについてこちらのほうで整理させていただいたのですが,成年年齢を18歳に引き下げるためには,このような条件も必要であるということで,これまで議論していただいたもの一つ一つの条件について意味はあるのだと思います。   ただし,全部の条件が整わなければ引下げができないのか,あるいはその中の重要なところ,あるいは幾つかの施策がとられて,ある程度の条件整備が図られれば,つまり100パーセントでなくても例えば50パーセントの段階でも,あるいは20パーセントの段階でも,一定程度条件が満たされた段階で,下げていいということはありうると思います。その場合の条件というのはどのようなものかというのは,条件の中身にもよりますし,皆様のお考えにもよると思いますので,どの程度の条件があればいいのかというところについて,率直な御意見を伺いたいと思います。結論は一つではないのかもしれませんので,御自由に御発言いただければと考えております。 ○鎌田部会長 今田委員,どうぞ。 ○今田委員 提案ですけれども,今の若者の非常に厳しい状況を生み出している原因という社会的背景ということと,もっと限定的にこの条件が整えば18歳に下げてもいいというレベルの制度の問題点とを切り分けることができれば,うまく整理ができるのではないかと思います。大きな産業社会のいろいろな問題と成年年齢の問題とが一緒に議論されると,幾らでも何か理論としては関連するというか,問題として指摘できるという思考になってしまうというような気がいたします。 ○佐藤幹事 現代の若者にどういう問題点があるか,現段階で若者にこういう問題がある,だから,それを解決するために必要な施策ということで,いろいろ整備をすべき条件が出ております。ですので,これらの条件は基本的にそれぞれ意味はあるものだと考えています。ただし,条件の中で確かにおっしゃるとおり,強弱があるだろうと思います。   もちろん,全部というとなかなか現実的に難しい部分,あるいは条件の中には,これが達成できたのかが計測が難しいという部分ももちろんございます。例えば,意識改革がどの程度できたかというのは,世論調査をやったとしても,分かるかどうか分かりませんし,教育についても,一定限度は実施されたとしても,どの程度まで実施されたら整備されたといえるかどうかは,計測が難しいと思われます。事務局としては先ほどの御質問についていいますと,基本的に若者の問題点を解決するための条件だから,その条件は基本的にそれが整ったら下げてもいいということにつながるのだろうということで,一応,条件として全部挙げましたが,おっしゃるとおり,強弱はあるということでございましたら,そこは御議論いただければと考えております。 ○神吉関係官 補足して説明させていただきますが,今田委員は,今,若者たちが抱えている問題の背景には,社会的ないろいろな問題があるということをおっしゃっているのだと思いますが,現在の産業構造とか,非正規雇用が進んでいるという労働慣行の問題とか,いろいろあるかと思うのです。しかし,今,我々が議論しているのは,若年者が抱えている問題を具体的に解決するにはどういったことをしたらいいのかということで,条件整備の案として出させていただいているのですけれども,本来的には根本的な原因を探って,議論していかなければいけないのかもしれません。ただ,産業構造全体を変えるとか,非正規雇用が進んでいる現状を変えていこうとか,そういった提言はなかなか難しいのかなと思いまして,我々といたしましてはもう少し具体的に若年者が抱えている問題ということに着目して,それを解決するにはどうしたらいいのかと,18歳に引き下げるためにはどういったことを最低限していかなければいけないのかということで,問題提起をさせていただいたということで,我々といたしましてはそこは一応切り分けて,今回,条件整備ということで整理をさせていただいたという次第でございます。 ○鎌田部会長 仲委員,お願いします。 ○仲委員 先ほどからも出てきているお話と重なるのですが,やはりこういう整備をしなくてはいけないとなると,簡単なのは家庭に任せるとか,教師に教育をさせるとか,または,学校に任せるということだと思うのですが,そうではなくて,先ほど五阿弥委員などもおっしゃったように,社会で面倒を見ていくということが基本的に大切なのだと思います。若者がどうやってスムーズに社会に入っていけるかということを考えると,トライアル・アンド・エラーができるということが必要だと思うのです。   そもそも,まずトライアルができるかというところなのですが,先日ある研究会で児童自立支援施設の方が,退園生の方たちが約10年後どういうふうに過ごしていらっしゃるかという報告をされました。私もうろ覚えで言っているので,数字がちょっと正しいかどうか分からないのですが,200人ぐらいの方たちが今20から30代ぐらいになっていらっしゃるということなんですが,すでに何人もの方が亡くなっている。自死なさった方もいるし,危険なところで働いているということだと思うのですが,事故に遭って亡くなっている方もいる。また,結婚されている方の離婚率も高いとのことでした。職業を持っている人は6割で,失業中の方も多いということでした。これは定型的に高校や大学に進み,その後,社会に出ていく人たちの割合とは異なるように思います。青年といっても一様に支援したらよいのではなくて,こういう困難な状況にある方たちに主たる支援が必要なのだと思います。   どういう支援が可能かということなのですが,一つはこういう施設を出て社会に出ていっても,経験や生活環境が違っていて,なじめなくてやめてしまうということも多々あるわけで,何があればもう少しスムーズに企業などにも入っていけるかというと,一つは施設自体にもっと人手があったり,お金があったりして,社会的な活動を経ながら,そういう施設から社会にいけるという体制がつくられるということだと思うのです。もう一つは,このような方たちを受け入れた企業に例えば節税・減税など恩恵を与えるようなメカニズムがあって,そういう人たちをどんどん受け入れることで,その企業が何らかの利益を得られるようにするということが一つあるのかなと思います。これがトライアルの機会を増やす,というところで考えたことです。   次に,エラーのほうなのですけれども,そうやって一応トライアルができるのだけれども,トライアルしている間に今度は失敗することもあるわけで,そのエラーをどこまで社会が面倒を見て,外れたとしてももう一回,もとに戻るようなチャンスを与えられるかということがあると思います。例えばせっかく稼いだお金のうちの多くを税金で取っていかれることがないようにするとか,税金をしばらく払わないでいいようにするとか,あるいは消費者問題で何かひっかかったとしても,18歳から22歳までの間は何らかの特別の手続のもとに,70パーセントぐらいは戻ってくるようにするとか,あるいはいろいろな仕方で,エラーから復帰できるような形を設けておくことが必要かと思います。このトライアルとエラーのところを社会がもうちょっと面倒を見る,それも一般的に見るのではなくて,やはり必要なところに手厚いケアをするということが重要かなと思いました。   以上です。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   氷海委員,お願いします。 ○氷海委員 私はどうしても高校生を対象に考えることが中心になるのですが,今,20歳から成人ということで高校を卒業して1年間,この1年というのは特にそこで成人教育をしているわけではないと思います。しかし,この1年というのはかなり大きな心の準備,要するに20歳からですから,大学へ行くか,就職するか,中学から出ていってずっとその年齢になる人もいますけれども,この1年というのはかなり大きな準備期間だと思います。   それで,今,問題になっているのは,今度は18歳にした場合に,私は高校からしか見えないのですけれども,準備期間がない中で準備をさせる手段として何かありますかというのが今の議論だと思うのです。学校教育の立場からすると,文科省が実際にやるときの指導要領の中に位置づけるのか,位置づけないのかというのはものすごく大きな問題なのです。それと,一番新しい話題としては総合的な学習の時間として教育が今行われているのです。数学とか英語とか教科ではないのです。この時間を使ってある目的を果たしなさいという教育が行われている。   その中で,やはり学校教育で行われるときに準備の中身を指導要領に位置づけるかどうかというのは,ものすごく学校教育の中で大きいです。学校教育だけでは教育できないというのは当然ですけれども,しかし,裏を返すと高校生の人数というのは圧倒的に多いわけですから,これだけではないですけれども,かなり重要なことだろうと思います。したがいまして,20歳のときは19歳という1年間の準備期間が今現在あって,スムーズにいっているかどうかは分かりませんけれども,今度はないとしたら,それにかわる準備を指導要領に位置づけるかどうかは大きな問題だと思います。   以上です。 ○鎌田部会長 出澤委員,どうぞ。 ○出澤委員 条件の枠組みにかかわる問題でもあるのですけれども,例えば消費者教育ということでは,消費者基本法が2004年6月に制定されておりますが,その中では消費者に対し必要な情報及び教育の機会が提供されなければならないとうたわれております。   ですから,消費者基本法できちんとうたわれているにもかかわらず,消費者教育は,このようにあるべきだという議論がなぜ再び行われなければいけないかというと,現実はそのとおりになっていないという非常に大きな問題があるわけです。そして関連するわけですが,今,氷海委員がおっしゃったとおり,学校教育の中での消費者教育,これにつきましても消費者基本法では,国は学校,地域,家庭,職域その他の様々な場を通じて消費生活に関する教育を充実する等,必要な施策を講ずるものとすると高らかにうたわれているわけなのです。   それにもかかわらず,なぜ学校できちんとした消費者教育ができていないかということこそが問題でありまして,世の中で問題となることについては,基本法なり,いろいろな法律の中で理念がうたわれているわけですけれども,この理念と現実との整合性,それから具体的に現場での実効性,教育の面では学習指導要領の中で,消費者教育というのは余り重要視されていない。   だから,ここのところの非常に整合性のなさが問題となるものであって,この審議会でこういう条件を整備すれば引き下げてもよろしいでしょうということに仮になったとしても,その条件は,理念的なものではどうしようもないのですね。それは既に消費者基本法でうたわれているのだから問題ないでしょうという話になりかねない。もっと掘り下げたところで,具体的な施策として何をすればよろしいのかという方向性まで検討する必要が出てくるのではないかなと感じております。   以上です。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   水野委員,どうぞ。 ○水野委員 できればやっていただきたいことを一つ付け足したいと思います。   部会資料35の2ページのその他の施策として,ここに二つ書いていただいております。一つ目は,虐待を受けている子どもたちの救出の枠組みで,もう一つは周囲の親の意識改革というふうに,自立に関するニートなどの意識改革と書いてあるのですけれども,むしろ現在の家庭が孤立した家庭の中で,今,どういうふうに家庭内暴力やあるいは精神的な暴力を含むメカニズムが,どういう子どもたちを育ててしまうかということについての社会全体での知識と認識が足りないのではないかと思います。   どうしても,それまで前の時代,歴史の中で得た発想でしか物を考えられない傾向があります。私もまだまだ御近所の力があったり,それから子どもたちは放課後,集団遊びをしているようなジェネレーションで育ちましたので,日本の社会が急速に,余りにも急速に共同体を失って,そして消費社会が進行して,家庭がコンクリートの箱の中で閉じ込められてしまって,そこで子どもたちが育っていってしまったときに何が起こるのかという知識をまだ我々の社会は共有していないように思います。   大昔から,それこそ近ごろの若者はというふうに大人は文句を言うのだそうですが,そういうレベルのものとは違うある種の異質な子どもたちが育ってしまっていて,人と交わりができないといいますか,共感力を持たない,病んでしまった子どもたちが育ってしまっている。そして,そういう人格障害者が突然犯罪者としてあらわれたようなときに,日本の社会というのはそれに対して非常に過剰な反応をします。例えば犯罪者が出たので,子どもたちが危ないから見回りをしよう,監視をしようと,そういう形で過剰な反応をするわけですが,余りコスト意識を考えない場当たり的な過剰な反応に思われます。もうちょっと構造を知らないと,我々の社会の枠組みを立てられないのではないかと思います。   教育というときに消費者教育だけではなくて,むしろ本当に,もっと必要なのは,子どもたち自身に力を付けていくような教育が必要なのではないかと思っております。CAPプログラムというのでしょうか,自信,安心,自由だったでしょうか,世の中に満ちている暴力から,あなたたちの尊厳をいかにして守るかというような教育のプログラムがあるようですけれども,そういうプログラムを子どもたちに幼いときから与えていくという種類の教育も必要でしょう。それから我々自身,大人たち自身ももう少しそういうこと,それが一体どういう社会を生み出してしまって,どういう大人をつくっていってしまうのかということについての社会全体での知識の共有と認識の共有というのが必要だろうと思います。それがあって,初めて児童虐待を受ける子どもたちにどれだけのお金をつぎ込んでいかなくてはいけないのか,そのほうが我々の社会にとっても,ずっと効率的であるということについての認識もできるだろうと思います。   少し18歳と20歳の議論とは離れるかもしれませんが,今の日本社会の中での教育ないし我々の共有すべき認識としては,非常に深刻に大きな問題だと思っておりますので,付け加えさせていただきました。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見はいかがでしょうか。 ○始関委員 水野委員にお伺いしますが,今,おっしゃられたことは,引き下げるための条件なのでしょうか。 ○水野委員 いずれにせよ,非常に必要な問題だとは思います。子どもたちに対する教育というのがどうも今まで伺ったところですと,消費者教育に力が入ったまとまりになっているような感じがするものですから,それよりは,そういう家庭の中で例えば自分がどういう暴力を受けてきたのか,そうではなくて人間との関係というは,そういう形ばかりではないのだということを子どもたちが知る機会があったときに,より健全な18歳が育つ可能性が増えてくるだろうと思います。   家庭の中でのゆがんだ人間関係だけがすべての人間関係なのだ,人間とのコミュニケーションのとり方なのだと考えてしまう子どもたちがそのまま18歳になるよりは,もう少し多様な人間関係というものがあるのだ,あなたたちの尊厳というのは守られなくてはならないのだということを教育としてまず一番教えなくてはいけなくて,そこから健全な18歳が育つ可能性が増えてくるだろう。どちらも大切ではあるのですが,消費者教育よりもそちらのほうが教育としては大切という気がいたします。 ○神吉関係官 出澤委員に御質問させていただきたいのですけれども,今,消費者基本法で消費者教育の充実というのをうたっているけれども,現実には余りされていないような現状があるというので,単に理念としてうたうのではなくて,もう少し具体的な施策についてということをおっしゃったかと思います。私もそういうふうに理念としてうたうだけではなくて,現実にそういった教育とか,施策の充実ということはやらなければいけないのだとは思うのですけれども,出澤先生の御趣旨としてはそういう実際にやらなければいけないという御趣旨なのか,もう少し条件整備の内容として,具体的なものを定めたほうがいいという御趣旨なのか,教えていただければと思います。 ○出澤委員 私自身は慎重論でございますので,直接,下げるための条件というようなところで申し上げるつもりはございません。ただ,下げるかどうかにかかわらず,やはり下げるに際して問題となっているような条件,そういうようなものはあるわけで,そういう認識はどなたもお持ちであると思います。そういうところをどのようにして解消していくかという中で,理念だけでは足らないのではないでしょうかと。それが何で現実の施策としてみんなが実感できるようなところまでいかないのかというところについて,検討していただければと考えております。 ○鎌田部会長 木村委員,お願いします。 ○木村委員 正に今の出澤先生の御発言に関連しますが,正直申しまして,今言われている条件整備の中身として,この法制審議会あるいは法務省の所管をはるかに超えてしまっているものを扱うことになるわけです。そのため,提言として,言わば漠とした理念型みたいなものを掲げることで済むのか,それとも更に具体策まで踏み込んでいくべきなのかという根本問題があると思うのです。また,それが,そもそも法制審議会の権限として与えられた領域なのかどうかということ自体も,もう一度きちんと整理しておく必要があるのではという気がします。 ○始関委員 今のは非常に大事な御指摘だったと思うのですけれども,確かに部会資料35で挙がっているもの,あるいは今日御発言があったものは,いずれも法務省の所管事項ではありません。ただ,なぜそれをここで議論していただいているかというと,民法の成年年齢を今引き下げるべきか,あるいは引き下げていいかということについてのここでの議論の今までの大勢は現時点では問題があり難しいということだったと思うのですね。そうすると,次に御議論いただかなければいけないのは,どういう条件整備が行われれば引き下げてもよくなるかでありますので,その限度において,つまり民法の成年年齢を引き下げるために必要な条件は何かという観点からにおいては,所管事項とかかわるわけであります。それが行われなければ引き下げられないという話になるわけですので,そういう観点から御議論いただくことに意味があると私は個人的に考えております。 ○木村委員 そうしますと,先ほどの消費者基本法の問題もそうですが,例えば学校教育法第51条に,高等学校における教育の目標があります。その第1号では,義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展拡充させて,豊かな人間性,創造性及び健やかな身体を養い,国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと,また,第3号では,社会について広く深い理解と健全な批判力を養い,社会の発展に寄与する態度を養うことが掲げられており,今議論している条件に該当するものが,既に理念として記載されているわけです。それにもかかわらず,今なお,大人になるための準備教育みたいなものが,なぜなされていないのか。大いにやるべきだと言ってみても,既にやることになっているとされかねず,なされない原因やその具体的な対策についてではなく,今言われている理念のようなものを提言とするのであれば,本当に整備すべき条件と言えるのかという感じがしております。 ○始関委員 そのようなことはないのではないでしょうか。現になされていないので,例えば今の指導要領の内容では駄目だということは,ここで言ったって構わないはずで,仮定の話として,例えば氷海委員の言葉を借りれば,指導要領でこういうものが盛り込まれるようにすべきであり,そうなったときに初めて引き下げられますという提言をすること自体は何ら差し支えないものと思います。もちろん,そういうものを指導要領に盛り込むかどうかというのは,文科省さんがお考えになることとなるわけですけれども。 ○鎌田部会長 木幡委員,どうぞ。 ○木幡委員 今のお話を伺っていますと,結局,たくさんの条件を出して,これができなければ変えないというようなトーンになるのか,これが全部できたら変えますというトーンになるのか。つまり,今,これができれば変えますと出したとしたら,それも「変えない」と言っているようにとれるのでは,と思うのですが。 ○始関委員 それはおっしゃるとおりでして,ですから,冒頭の佐藤幹事の説明の中で,このすべてが整わなければ駄目だということにするのか,それとも,このうちのこれとこれは必須であるということにするのかについても御意見を伺いたいと申し上げたのです。次回に報告書の原案をお示ししなければいけませんから,是非とも今日伺えればと思います。 ○木幡委員 先ほどの神吉関係官が,ある条件が整ったかどうかをはかるのは難しいとおっしゃっていましたが,確かにそうだと思います。そうなると,どうしたらよろしいのでしょうか。 ○神吉関係官 個人的な見解になりますけれども,教育の充実というのはどの程度やれば充実したのかというのはなかなかはかるのは難しいのだろうと思います。ただ,世論調査の結果から明らかなように,今の国民の多くは現状ではいろいろ若年者は問題を抱えていて,成年年齢を20歳から18歳に下げることは問題があると恐らく思っているのではないかと思います。私の個人的な見解ですが,そういった教育の充実とか,そういったものをやっていっていけば,この程度になれば皆さんきちんと教育も受けて,ある程度消費者教育も受けてきちんと成長しましたと,国民の多くが18歳になったら契約を一人でさせても大丈夫だという国民的な合意がもう少し高まっていくのかなと思います。そういった意味でも,数としては,最終的にはそういった国民的な合意といったものではからざるを得ないのかなと思っております。 ○松尾関係官 教育というのは,平たく言えば的確な情報を提供して,判断力を高めてもらうということだろうと思いますけれども,それに関連して,今頭の痛い問題は,振り込め詐欺について犯罪防止のための努力を重ねているにもかかわらず,被害額が増える傾向がありまして,今年などは,たまりかねてATMに制服の警官を配置するというようなことまでやっておりますけれども,それもいつまでも続けることはできないのだろうと思いますが,要するに情報の提供による的確な判断力の行使ということをお願いするのがこんなに困難なことかというのを,実感を持って感じている次第でございます。 ○鎌田部会長 大村委員,どうぞ。 ○大村委員 始関委員や佐藤幹事が最初におっしゃったことなのかもしれませんけれども,ミニマムの条件というのは何なのかということかと思います。いろいろなことが条件になる,様々なことが必要だというのは,私は報告書には書いたほうがいいと思いますが,現在の成年年齢を引き下げて,そこから生ずる弊害を除去するために,最低限必要なことは何なのかということも,区別してやはり書いたほうがいいのではないかと思います。   それで,いろいろなことが危惧されているわけですが,今の直前の松尾関係官のお話ともかかわりますけれども,やはり悪質商法の被害に遭うのではないか,今まで未成年者取消権というのが一定限度では大きな機能を果たしていたのではないかというところがあると思うのですね。教育の力に待つというのは正論ではありますけれども,教育の力は短期的には効果が出にくいでしょうし,教育してもだまされるときにはだまされるということがありますので,年齢にかかわらず,若年者あるいは高齢者などで取引の経験あるいは判断力などについて問題があるという人について,一定の保護をする制度,未成年者取消権を機能的に一部代替するようなものというのがないと,なかなかそこは難しいのかという気もいたします。   それから少年法の話が出ておりますけれども,少年法と切り離されていて,かつ消費者保護について一定程度の対応がされるということであるとすれば,あとは大人というのはいかなることかというような原理的な議論になるのではないかと思います。ですから,法律論で近いところで考えたときには,ここのところが皆さんの関心事なのかと思います。 ○鎌田部会長 山本委員,お願いします。 ○山本委員 私自身は基本的には成年年齢を引き下げるべきだという考えを持っております。その際,まず一つは完成された大人論みたいな立場に立つべきではなく,一定の範囲の社会的支援というものが当然なければいけないのだろうと考えます。   二つ目に,現在,日本の成年年齢は20歳となっているけれども,果たして社会的な目的意識的営みとして,成年になるための働きかけというものが行われているのかと。実際には高校を卒業して20歳になるまで,それぞれ生活している。成年年齢を引き下げるかどうかにかかわらず,もう一度社会全体として成年になるということに向けた社会的な共同の営みのようなものをしっかり日本社会で設計していく,あるいはありようを見直してやっていく必要があるのではないかと思います。   三つ目に,成年年齢は何歳がふさわしいのかということについては,大村先生も論文に書かれておりますけれども,私は結論から言うと,基本的にそれは決断の話だろうと。幾つかの要因があると思うのですが,現行の民法で,成年に求められる行為能力という基準が一つあるのかなと。その際,現実に日本の若者たちを見たときに,そういう能力が20歳未満の若者たちに備わっているのかいないのかという判断が一つの判断要因としてある,あるいは国民の意識も成年年齢を下げた方がいいかどうかということの判断材料として重要だろうと思います。   さらには,民法の成年年齢を下げた際の少年法とか他の関係への波及効果,あるいは諸外国の実態を考慮したときにどうかとか,さらには日本社会の少子高齢化の中で,若者たちにできるだけ早い段階で社会の形成者として,あるいは担い手として権利も与えるかわりに責任も持ってもらうという方向にいったほうがいいのではないかとか,様々な諸要因を総合的に考えたときに,18歳に成年年齢を下げても一定の社会的合意と,それに向けた教育のありようであるとか,様々なシステムを整備することが結果としては日本社会に活力をもたらすだろうし,そういうシステムを形成する上での努力をしたほうがいいだろうと思います。   国民意識を調べたとき,あるいは実態を見たときに,18歳の今の若者たちがそういう行為能力を持っているかといえば,持っていないのがむしろ当たり前だと思うのです。というのは,20歳で成人とすることを前提に,様々な社会の働きかけが行われているわけですから,下げるということはそれを変えようということだろうと。したがって,そういう意味での社会的合意形成を直ちにやるかどうかは別として,何年かのスパンをかけて,5年後なら5年後に向かって日本社会で合意形成を図りながら,条件整備していくというのが一つ提言としてはあり得ることなのではないだろうかと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   平田幹事,どうぞ。 ○平田幹事 消費者教育の点で具体的な条件として,どういうものがあるかというので,今,日弁連で意見書を取りまとめているのですが,御参考までに日弁連の中で議論した具体的な消費者教育のための客観的な必要条件として,何が挙げられているかというのを御紹介したいと思います。   先ほど氷海委員がおっしゃられたように,学習指導要領の中に科目と授業時間を明確に盛り込むべきであるというのが第1点。それから第2点として,教員に対する消費者教育の研修をする制度をきちんとつくるべきである。3番目として,学校と消費者問題の専門家との交流というのを継続的に設けるべきだというのが第3点で,第4点に消費者教育のための適切な教材の作成と配布。こういったものが客観的な必要条件として,日弁連の中では議論されております。 ○鎌田部会長 ほかに,いかがでしょうか。 ○宮本委員 ある条件を満たせば引き下げてもいいという議論というのは,余り意味がないように思います。と申しますのは,挙がっている条件というのは,どれもそれほど短期間でできることではありません。その条件を付けて下げるか,そのままにするかという話というのは,結局,意味のないことになるだろうと思うのです。そういう意味ではもう少し変えなければ,この議論というのが意義のないことになってしまうのですけれども,そこで18歳に下げるかどうかというときには,例えば国民的な議論を巻き起こしたり,合意形成する上では幾つかポイントがあって,必ずしもそのポイントというのは,それぞれ共通しているわけではないと思うのです。   それで,少し整理してみると,例えば第1点はいろいろなハンデを持って保護されていない若者たちをどうやって救済するかという話の中で成年年齢を何歳にするのが妥当なのかというような話になっているんだと思います。今の消費者保護とか消費者被害なんかもその線だと思いますが,もう一つ,全く真反対の,それから今のにかかわり,例えば虐待の問題であるとか,親から保護されない状態の若者とか,そういうような話があると思いますけれども,もう一つの論は,この前のヒアリングのときに私がお話しさせていただいたとおりで,もっとポジティブな問題,つまり若い人口を社会の中枢に入れていくという話で,先ほどのいかにして若者を保護するかとか,保護されない若者をどうするかというのとはかなり違う話でありまして,ヨーロッパ的にいえば若者の社会的な影響力を高める,その人口を社会の資源として積極的に位置づけることで,この社会の活力を維持していくという話になると思うんですね。どの線で国民の合意をつくっていくかということをある程度決めないと,あれもあるよ,これもあるよというと条件整備も難しいですし,結局,議論したけれども,何にもないことになってしまうのではないかと。   それで,私は一つの戦略的な方向としても国民の合意を取り付ける意味では,むしろ少子高齢化の中で若い人たちをエンパワーして,より早期に社会に参画させると。そのために今の成年年齢の18歳は妥当か,それをやるためにはどういう条件整備が必要なのかということを中心にして提起して,それに附帯事項として保護されなければならない若者の存在とか,消費者問題とか,そういうようなことを附帯条件として入れると。これのほうが合意をつくる点では効果があるのではないかと。そのあたりの方針といいますかね,戦略を決める必要があるのではないかという感じがします。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   多数意見がどちらの方向を向いているかによっては,まとめ方がかわってくるのですけれども。   五阿弥委員,どうぞ。 ○五阿弥委員 少し関連しているかもしれませんが,高校生にヒアリングしたときに,ほとんどの高校生が18歳に引き下げることについては反対でした。その理由として,やはり親から離れていくことへの不安感,社会に自分が参画していくということがどうしてもイメージできない,まだまだ自分はそうことに能力が足りないと思っているのです。   ここで議論していることは,一方で民法ということもあるかもしれませんが,契約のことが主なのですよね。宮本委員がおっしゃったようなことをすごく私も思っていまして,もし契約を中心にこういうような条件でといっても,普通の人は何かとんちんかんなのではないかなと思うのかもしれません。やはり例えば18歳が責任と義務をきちんと果たせるのかどうかということに対して,やはり彼ら自身も疑問を持っているし,そして大人もまた未熟だと思っている。それをやはりどうやって高めていくのか,そして社会に参画する能力,態度をどうやって養っていけるのか。ここは大きなかぎを握ると思います。   先ほど20歳になるときには19歳が準備,今度は18歳になる場合は17歳が準備というふうにおっしゃいました。そのときに本当に契約の問題かなというふうに私は思うのです。もう少し幅広い,人格形成も含めて,そういう若者をいかに社会参画の道に導いていくか。ですから,宮本委員がおっしゃったことは, 非常に重要なことだと思いました。 ○鎌田部会長 木幡委員,どうぞ。 ○木幡委員 宮本委員におうかがいしたいのですが,選挙権年齢を下げることだけではやはり不十分というお考えですか。 ○宮本委員 この議論というのは,国民投票年齢を18歳にしたというところからきていますので,直接的には選挙年齢なのだと思います。ですけれども,もう少し長期的に見れば選挙年齢を下げても,この前,仲委員からもありましたように,これだけ投票率が低い状態というのを解決することはできないわけです。そういう意味で言うと,選挙年齢を下げるのだったら,投票率を高めるという営みをしない限り,意味がないわけです。   だから,なぜ選挙年齢を下げるとか,国民投票を18歳に下げたのかというもとの議論に戻れば,やはり若者を社会に参画させたいわけで,高齢者ばかりで支配する社会では駄目だというところからきているし,それから若い世代の利益というものを反映するために投票権を下げて,彼らの利益を守るようにということできたものだと思います。   ですから,そのことを考えれば,社会に参画し,影響力を高めるためにどういう条件整備をしたらいいのか,そのときに成年年齢も今の20歳というのではなく,18歳に下げるのが妥当だということを問題提起して,国民の中で議論を起こすのだったら,若者をそうやって参画させることに意味があるかどうかという議論を巻き起こすほうがより積極的な議論になるのではないか,そのような提起をしていなければ,半分以上の人が反対するというは当然といえば当然だと思います。 ○鎌田部会長 今田委員,どうぞ。 ○今田委員 宮本委員のおっしゃりたいことはよく分かるつもりなのですけれども,やはり保護される対象ということが極めて重要な区切りの意味だと思うのです。要するに一人前として扱うか,社会的に保護される対象とするかを峻別する一つの尺度が成年 年齢であると思います。   宮本委員がおっしゃっていることは,木幡委員がおっしゃったようにやはり参政権とか,もっと別の社会の参画の権利という枠組みでとらえるべきではないでしょうか。民法の場合はやはり保護される枠組みをどうつくるかということなので,この二つは一緒にするのはどうか。自立するという点についても,前回も納得できないと言ったのですが,極端に言えば,野に放てば自立するんだというそのようにとられかねないような議論だと思うのです。やはり民法はそういう保護というものが基本的に前提になった議論であるというふうに思うので,ちょっとそこは私からすれば,なるほどというふうには乗れないと思います。 ○宮本委員 ということになりますと,ここの審議会としての提言にもかかわるのですけれども,そもそも成年年齢を下げるかどうかという議論の手順として,この部会にこういう形で諮問されて,民法の角度からまず議論をするということ自体が大きな理念というものを議論せずに,民法の保護の問題だけやるということになるので,無理があるように思います。   やはり,なぜ成年年齢を議論するかという大きな目標が共有された中での民法であり,それ以外のものであるということでありますので,それを保護だけに限定して議論すると,結局のところは非常に限定付きの議論になり,一体何のために年齢を問題にするかということが分からないということになるので,もし提言をするのだと,一つの方向としては成年年齢引下げ議論の問題意識として,この部会がではなくて,日本としての共有すべき問題意識はこれであると。そこのところを押さえた上で,各関係法を検討すべきだということになるのではと思います。 ○今田委員 私もその意味では賛成です。民法の年齢を18歳に引き下げるとすると,どういう条件が必要かという一般論から議論をし,整理して,報告書をまとめるという方法ですと,最初から引下げはどうかと頭に出てきますので,その中にいろいろなものを盛り込むと話がごちゃごちゃになってしまうので,今宮本委員がおっしゃったように,全体の大きな枠組みの中で,民法も全部含め,引き下げるか引き下げないかもすべて包摂するような若者が置かれている今の現状の問題性というのを整理して,その上で民法の年齢を今の現状のまま,20歳でいいのか,18歳に引き下げるのかということを検討して,引き下げるならばこの条件というふうな形で,全体を整理すれば,ここの皆さんがいろいろ熱心に議論したものが無駄にはならないと思います。 ○鎌田部会長 水野委員,どうぞ。 ○水野委員 おっしゃっていることの御趣旨に全体としては全く反対するつもりではないのですが,民法を少し狭くとらえている点が気になります。民法は未成年者飲酒禁止法のように細かいある種の保護の法律ではなくて,我々の社会をどのように構成するかという基本法です。正に議論すべきだと言われたものを議論する対象が民法です。日本の市民社会において,成年を何歳にしようかということを議論するために,この部会でこれだけ多方面からの議論をしてきたものですので,親権から外れる保護の問題だけというのではなくて,正に大人になるということは,何歳にしようか,大人にして我々の社会の成人,一人のフルメンバーとしてインテグレートするのは何歳にするのがいいのだろうかということを議論するために,民法の成年年齢を議論しているんだと私は理解しておりました。 ○佐藤幹事 宮本委員からの話がありましたので,一言申し上げておきますが,基本的にスタート時点で,まず社会参画をするために民法も使おうという発想ではなくて,水野委員からも御発言がありましたように,基本的に民法は,私人と私人との法律関係を規定する基本法でございますので,民法の中で成年というのは20歳だというふうに定めていまして,その20歳に幾つかの意味がある。   その意味の一つが未成年者の保護とか,あるいは親権の話ということになるのですが,民法は選挙年齢が20歳になる前から20歳ということで決まっています。その20歳を今下げようかどうかという議論なので,選挙権の議論と一緒にするかどうかというのは一つ論点ではございますが,基本的には民法で定めている成年という年齢を下げるべきかどうかというのを皆さんに御議論していただきたいのです。まず出発点が選挙権というわけではないので,そこのところは一言申し上げておきます。 ○鎌田部会長 それでは,ここで休憩をさせていただきたいと思います。           (休     憩) ○鎌田部会長 それでは,再開をさせていただきます。   休憩前の御議論が期せずして,部会資料36,今後検討すべき論点の2ページの1の(2)というところに議論が集中していたように思いますので,論理的には(1)に先行するのかと思いますけれども,1の(2),さらに,それを前提にして(1)の中での整理がこのような整理で果たしていいのかどうかという点について,そこが一番中心的な論点になろうかと思いますので,改めて御意見をお伺いしておきたいと思いますけれども,いかがでございましょうか。 ○松尾関係官 休憩前の御議論を承っておりまして,民法における成年年齢の引下げが波及する可能性を持つ関連法令として,公職選挙法と少年法の二つが時々話題に上りました。公職選挙法が選挙権を20歳としておりますのは,恐らく民法を基準にして,それに合わせたものだろうと思います。にもかかわらず,部会での御意見は民法と公職選挙法とはセパレートに考えるべきであるというお考えが強かったように思えます。   私が申し上げたいのは,少年法はもっとセパレートだということでありまして,もともと少年法は大正時代につくられまして,そのときは18歳だったのであります。それを戦後,改正した際に20歳に引き上げたのでありますが,その理由は民法と合わせるということではなくて,もっと実質的なと申しますか,家庭裁判所で保護手続で保護処分を行うことのほうが,少年の健全育成のためによりよい効果があるという実質的な判断,保護主義の尊重ということでそうなりましたので,その意味で民法を基準にしてということではなかったわけであります。   ただ,少年法の年齢問題はその後,いろいろ波紋を呼びまして,特に1970年からしばらくの間,法制審議会の少年法部会で主としてこの年齢を対立軸として激しい論議が展開され,5年ほど議論して,結局,現行法を維持するということで終わっているわけでございますが,そのような過去の事情があったということを申し上げさせていただきます。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。 ○神吉関係官 今の松尾関係官から,公職選挙法が20歳と定められているのは民法と関係があるのではないかというお話がありました。少し補足して説明させていただきます。公職選挙法は,御存じのように戦前は25歳で男子のみというふうにされておりまして,それが戦後に改正されて,普通選挙ということで男女とも20歳に引き下げられた経緯がございます。   なぜ20歳かと申しますと,そのときの提案理由といたしましては,民法で行為能力が20歳で与えられているということが一つの理由としては挙げられておりますけれども,若い人たちが社会的にも十分成長してきて,国政参与と責任観念についても欠けるところがないというふうに説明されて,20歳に選挙権が与えられたとされております。ですので,民法の行為能力が20歳に与えられているからというのが一つの理由としては挙げられておりますけれども,必ずしも行為能力がない人に選挙権を与えてはいけないという趣旨でもないと思いますし,そこは必ずしも一致する必要はないのかなと個人的には考えております。 ○鎌田部会長 ほかにこの1の(1),(2)に関連しての御発言をいただければと思います。   大村委員,どうぞ。 ○大村委員 前回申し上げたことの繰り返しになりますし,先ほども申し上げたことの繰り返しでもあるのですけれども,民法の成年年齢の問題と選挙法等の年齢の問題と少年法上の年齢の問題ということですけれども,少年法の問題は松尾先生がおっしゃったようにこの問題とは連動しないということ,そういう認識をここで取りまとめることができるのならば,そうしたほうがいいのではないかと思います。残る民法の成年年齢の問題と選挙法等の問題ですけれども,これも御説明があったように,理論上は必ず一緒でなければいけないという要請はないと思います。ただ,ばらばらであることがよろしいのかというと,必ずしもそうとはいえないと思います。先ほどの韓国の例もそうでしょうし,ヨーロッパの諸国の例もそうだと思いますけれども,選挙権の年齢を下げるとともに,成年年齢を下げるということを行ってきたわけです。   それは先ほど休憩の前に出ていたこととかかわりますけれども,政治社会のメンバーであるということと,経済社会ないし市民社会のメンバーであるということの関係とをどのように考えるのかということで,どちらについても権利を持つフルメンバーシップの年齢をどこに置くかと考えたときに,参政権が例えば18歳ならば,民事の能力のほうも18歳というのが望ましいという力は働いているのだろうと思います。ですから,現在条件が整わないということで,暫定的にこの二つがそろわないというようなことは幾らでもあり得ることだろうと思いますけれども,全く独立に考えたほうがいいという積極的な理由はないのではないかと思います。 ○鎌田部会長 諸外国の例で,選挙年齢のほうが先に引き下がって,民法上の年齢が後追いというケースはありますか。 ○神吉関係官 確かドイツが選挙権年齢を先に引き下げて,その数年後に成年年齢を引き下げたように記憶しております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。   おおむねこれまでの審議の中で,それぞれの委員の御意見は頂だいしたと思いますけれども,なお,まとめ方によっては大分全体のニュアンスが変わりかねないところがありますので,今の部会資料36にあるようなことでは,少し自分の意見が正確には反映されていないというふうなことがあれば,この機会に御発言いただいておいたほうがよろしいかと思います。   青山委員,お願いします。 ○青山委員 発言していいかどうか迷いながら,少し個人的に意見を述べさせていただきたいと思います。この部会にどれだけの権限があるのかという問題は確かにありますけれども,引下げのための条件を幾つか付けるというのは,先ほど宮本委員がおっしゃったように引き下げないということと同じではないかと思います。もしそういう条件整備という言葉で先ほどから言われているようなことは,法制審議会としてはそれが望ましいということを言いっ放しにする以外にないのではないかと考えております。   私の考え方は,先ほど山本委員がおっしゃった考え方と割合近い考え方でございます。民法は今田委員がおっしゃったように決して保護だけの体系ではなくて,市民社会におけるフルメンバーシップを持つ者はだれかということを前提とする権利の体系であるわけでございますから,保護の体系だけと考えるのはやはり先ほど来何人かから御発言がありましたように,少し民法のとらえ方が狭過ぎるのではないかと思います。   それで,条件整備の点をどうするかというと,私は山本委員の言われたように,5年というのがいいかどうかはともかくとして,一定の猶予期間を置くということ以外にはないのではないだろうかと,もし引き下げるという結論を出すとすれば,その条件整備に向けて5年というのが短過ぎるのならば10年の施行期間だって,私は決して長過ぎるということはない。法制審議会としてはそういう意見をまとめて,あとは国権の最高機関である国会の審議に任せるということでよいのではないだろうかと思っております。   以上です。 ○鎌田部会長 条件についてもいろいろな理解の仕方ができます。とりあえず下げるけれども,こういうこともきちんと整備してくださいというだけだと,それに対しては先ほど出澤委員が御懸念になったように,過去の前例では,周辺環境の整備だけは置いていかれるようなこともあるでは ないかというふうなこともありますが,それもやはりある意味では条件整備だと思いますし,完全にこれがクリアされない限り,次に進みませんという意味で強い効力を持った条件という考え方も他方ではあると思いますので,条件というものについて,どれぐらいの意義を持たせたいとお考えなのか,ここもそれぞれの委員,幹事の御意見を承っておいたほうが事務局としてはまとめやすいかと思います。   岡田委員,お願いします。 ○岡田委員 高校生のヒアリングのときも,今のままがいいという声がもちろん圧倒的に多かったのですが,でも,下げるとすればやはり大人になるための教育をしてほしいとか,悪質商法についてもっと勉強したいとか,そういう声が圧倒的に多かったように思います。   私が大学にて,大学4年生と短大生,短大生がちょうど19歳と20歳になりたてなのでレポートを書いてもらったのですが,いわゆるほかのアンケートと全く同じ割合で,2割ぐらいは下げるべきだというのがありまして,下げるべきだという理由としては,18歳で社会人になっている人もいっぱいいるし,田舎に帰れば家庭を持っている人もいるし,もちろん結婚すれば成人になるわけですけれども,彼女たちはまだそこまでは分からなかったらしくて,それにもかかわらず親の同意が要るというのはやはりおかしいと,自分で働いたものを自分で使えないというのはおかしいのではないかという,集約するとそういう意見なのですね。   それでありながら,すぐ18歳にするというのは不安で仕方がない。だから,時間が欲しいと。その時間の間でいろいろなことを勉強したいという意見が圧倒的に多いので,それからすると,私もやはりすぐ18歳というのは無理かもしれないけれども,今のままでいいという形で持っていくのはどうなのかなと思っています。今,青山委員がおっしゃったように5年とか10年とかスパンを置くのであれば,やはり下げるべきではないかと思っています。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。   下げる場合の年齢等についても,御意見の中には入ってきているような気がいたしますけれども。 ○佐藤幹事 今,山本委員や青山委員や岡田委員から,期限を区切ってというお話が出たのですが,例えば5年なり10年を区切って全く条件整備をしないで,ただ,5年たてばということだと,それはいかがかなものかと考えます。やはり5年なり10年の間にせよ,何らかの条件整備を行う必要があるのではないかと思います。何も条件整備にふれないで単に一定の期間だけ置くという提言というのは,いささかどうなのかなと考えておりますので,期間を置くという方は条件は要らないんだというお立場なのかどうかお考えをお聞かせいただきたいと思います。 ○青山委員 裁判員制度の場合には5年という期間を置いて,その整備について法務省も最高裁も日弁連も,それが実現できるように膨大な予算をつぎ込んで,着々と準備して来年の施行を待つということになっているわけです。それは国民的合意が整って,そういうことになっている。   民法の成年年齢を仮に引き下げる場合には,法務省だけでそういう条件整備ができるわけではありませんから,全省庁に向けて文部科学省にしても総務省にしても,それぞれの省庁が管轄しているそれぞれの事項について,仮に18歳なり19歳に引き下げても大丈夫なような条件整備をするということを閣議決定した上で,国会で法律を制定してもらう以外にない。具体的な施行時期は多分5年なら5年の施行期間の間にそういうことができたかどうかきちんとフォローしながらということだと思います。そして施行時期をいつにするかというのは,政令にゆだねられるのでしょうから,適切な時期に政令で定めて施行するということになるのではないかと思います。   先ほど私は言いっ放しということを申し上げましたが,その言いっ放しというのは条件という意味ではない,それができなければ,こちらはやれないという意味ではないという意味で申し上げたので,これは私の言い方が悪かったなと気が付いた次第でございます。 ○鎌田部会長 山本委員,どうぞ。 ○山本委員 私の意見もただ5年なら5年,猶予期間を置けばいいというのではなく,条件整備が必要であると考えております。例を挙げれば,先ほど学校教育法の高等学校教育の目的であるとか,中等学校教育の目標が紹介されました。非常に立派なことを書いてあるわけですけれども,現実の教育活動の中では私自身も中学校の教員を長くやっていたのですが, 学校教育法の目標を目指しているというよりも,実際にやられているのは教科教育の総和みたいな部分が多いのです。あの教育目標に基づいた教育課程が組まれて,日々の営みが本当に行われているのかというと甚だ不十分である。そういう意味からすると,高校教育の在り方を含めて,社会全体としてそういう条件をつくっていく必要があるのだろうと考えます。   二つ目に,具体的に例えば何歳が望ましいのかということについていえば,私自身は高校の卒業証書が大人の一つのあかしという社会的な合意を得ていくほうがいいのではないかと考えます。   三つ目に,少し行儀の悪い言い方をしますと,民法の成年年齢を引き下げるべきではないというのは現状維持でいいではないか,あるいはそうではないと弊害が多いという意味で聞こえてくるのです。むしろ積極的に成年年齢は引き上げるべきではないかという答えが出てこないと,何か論理的に現状でいいではないかという議論というのが結論があって,その後というふうに聞こえてくるのです。様々な理由で引き下げるべきでないというのは,裏を返して言うと,もっと積極的な表現をすれば,今の20歳では成熟していない,行為能力が備わっていないと,そうだとすればもっと上げるべきではないかとおっしゃっていただけると,論理的には理解できるのですけれども,そこら辺がちょっと行儀の悪い言い方で恐縮ですが,積極的に引上げを主張されたほうがいいのではないのかなという感じもしないでもありません。 ○鎌田部会長 木幡委員,お願いします。 ○木幡委員 では,逆にお伺いしたいのですけれども,なぜ下げるのかということには,どうお答えになりますか。 ○山本委員 先ほども申し上げましたけれども,完成された大人論の立場に立つべきではなく,何歳まで引き下げることが可能なのか,一定の社会的条件整備や社会システムを何歳まで下げることであれば,そういう世の中をつくっていけるのかというふうに問題は立っている。この先,日本社会のありようを考えたときには,宮本先生もおっしゃっていましたけれども,そういう意味で若者を積極的に社会参加をさせ,責任も持たせ,権利も与える。そういう社会にすることが活力のある社会になっていくのではないか。そして,そのことは諸外国でも,日本が初めてやる話ではなくて,18歳を成年年齢としている国は諸外国に多くあるわけです。そのことは十分国民的な議論と合意形成がなされれば可能であるし,新しい日本社会に向かって進んでいくことができるのではないだろうかと,そういう意味で私は下げるべきではないかと考えております。 ○木幡委員 大人の入口は18歳で可能であるとのことですが,それはどうしてですか。 ○山本委員 一つには肉体的な成熟の問題,それから歴史的にも18歳を大人としてきた時代もあった,それから学校教育法も書かれているように,そういう教育の営みとして少なくともあるべき日本社会の教育の在り方としては書かれているのですね。そういうことからすれば十分可能であると。 ○木幡委員 18歳に下げると決めた場合,ではなぜというふうな疑問がわいてくる。その疑問を自分自身に問いかけたときに,なかなかきちんとした答えが出てこないのです。だから,国民投票法がうんぬんですとか,社会参加を促すためにというのが,20歳が成人ということが誰もが認識する事実であるこの国で,その事実を変えるに足るほどの理由になり得るのかというのが,いつも分からないのですが。 ○鎌田部会長 そういう意味では完成した大人論ではなくて,現在の制度を変える必然性があるのかというところが中心的な……。 ○木幡委員 なぜ今変えるのかということです。 ○鎌田部会長 出澤委員,お願いします。 ○出澤委員 今の一連の引下げ賛成の方々のお話を聞いていますと,理念としては確かに共感するところがあるのですが,非常に抽象的です。本当にそうなるのか。片や引き下げるべきではない,引き下げるのは時期尚早ではないかと考えている方々は,やはり具体的な問題が起こるのではないかというところの非常に大きな危惧を持っている。具体的な問題は起こりませんよということが本当にあればいいのですけれどもこれまでの参考人の御意見を聞いていますと,うまくいくのかなとも思いますし,それから先ほど発言させていただきましたけれども,消費者基本法の理念を見ても,法律としてはできているけれども,施策としては現実の実感がない。そうすると,問題はやはり大きくなるのではないかと考えるほうが現実的ではないかと思います。   それから,山本委員の引き上げるべきではないかという御発言ですが,ここではそもそもそういう議論をしているわけではありません。引き上げるべきかという問題提起をされたら,それはそれでまた別に考えることですから,理論的にそのほうが理解ができると言われても,ここでは議論する対象ではありませんからどうしようもないのです。それに,例えば虐待の問題なり,やはり各法律で保護の年齢を上げたほうがいいものもある。それは事実だと思います。むしろそういうところでは保護の対象年齢を上げていくべきではないかと思います。   以上でございます。 ○鎌田部会長 大村委員,お願いします。 ○大村委員 民法の成年年齢は,様々な問題に波及する非常に重要な問題でありますけれども,スタートのところは民法上の行為能力ということで,単独で契約等をすることができるに足りるだけの判断力を備えているかどうかというところだろうと思います。その観点から考えたときに,18歳で駄目なのだろうかということについて,この場でも盛んに議論をしてきました。その際に注意すべきことは,様々な悪質商法があるので,その被害者になってしまうのではないかという話が出てくるのですけれども,確かに18歳,19歳で被害者となることはあるでしょう。ですが,20歳でもなりますし,30歳でも,40歳でもなるという状況なわけです。   にもかかわらず,18歳,19歳が問題になるのは,未成年者取消権というのが単に個別の取引において,十分な判断を尽くしていなかったからというのではなくて,成年に達していないということだけで契約を取り消せるということで,これを手放すことへの不安がつきまとうということなのではないかと思うのです。消費者保護の領域ではクーリングオフという制度が幾つかの法律にセットされておりますけれども,クーリングオフというのは消費者にとっては非常に強力な武器で,クーリングオフが認められているものについては,一定の期間内であれば理由なく契約の効力を否定することができる。未成年者取消権も,年齢に達していなければ,理由なく契約を取り消すことができるというところに非常に魅力があるのだろうと思います。   これに代わりうるものが未成年者取消権という形でない形で設けられるという前提で考えるとすると,なお18歳の人々に一般的にいって自分で契約をする能力がないと私たちは思うのかどうかというところがポイントだろうと思うのです。仮に18歳であっても,20歳や22歳の人と同様に,通常の契約について締結することができる。私たちは,そう考えているのではないか。ただ,今まであった未成年者保護の制度が全くなくなってしまうということが心配なのであれば,これに代替するものを考えるというのが筋なのではないかと私は思います。 ○神吉関係官 今のお話で一つ大村委員にお伺いしたいのですけれども,具体的な代替策がどういったものかというのが一番大事になってくるのだと思うのですが,大村委員のほうで何か私案というか,そういったものはお持ちなのでしょうか。 ○大村委員 未成年者取消権がクリアな要件を持っているのに匹敵するような制度を考えるのは,かなり難しいと思うのですけれども,そういう武器がなぜ未成年者に与えられているのかというと,基本的な判断能力はともかく,取引の経験が足らないということが根本なのだろうと思うのです。そうだとすると,そのようなことを要件化したような規定というのを消費者保護の観点からつくる。それを民法に置くかどうかというのはまた別でありますけれども,そういう対応がされるというのが取消権との関係であらわれている危惧に対する応答ということになるのではないかと思います。それをつくって成年年齢を下げろとここで言うつもりはないのですけれども,下げるのならば,そういうものが必要なのではないかと思います。 ○始関委員 今,言われたような制度というのは,18歳に引き下げた諸外国の中にはあるのでしょうか。 ○大村委員 18歳引下げのときにそういうことをやったという具体例があるとは聞いていません。ですから,18歳に下げるということで何の対応もしないということもあり得ると思います。ただ,ここで出てきた議論というのは,18歳,19歳について今まで未成年者取消権で保護されていたではないか。その保護が切り詰められるということに対する危惧だったと思います。これを前提にするならば,今のような形で対応することになるのではないかということです。それは18歳,19歳に限らないことでありますので,この年齢に限らずに立法する,今回の問題とは切り離して考えるということもあり得るだろうと思いますけれども,これまでの危惧との関係でいうと,成年年齢を下げて,それに対する代替案をとるというのは,十分に考えられる方策なのではないかということを申し上げただけです。 ○始関委員 大村委員のおっしゃったことを十分理解できていないのかもしれないので,更に御教示いただければと思うのですけれども,大村委員のお話を伺っていると,何か取消権だけは残すみたいな感じにも受け取れたのですけれども,今は取消権と親の代理権というのがセットなわけですよね。ここで取消権があるものだから,相手方は取り消されるかもしれないと思うから,その人とは取引しないので親に代理権があるというセットになっているわけなのです。だから,親権と取消権,代理権というのは裏表の関係になっているわけですけれども,そこら辺,行為してしまったものを取り消せるというのだけを残してしまうと,それでは心配だからというので,相手方は取引に応じないということになってしまうような気もいたしまして,そこら辺の制度設計をもう少し具体的に教えていただけると有り難いのですが。 ○大村委員 そのように立法せよということでは全くないですし,ここで検討すべき事柄なのかどうかも分かりませんけれども,行為能力との関係では始関委員が前提とされているように,仮に18歳のところで線を引くのだとすると,そこからはもはや親権に服さない成年者になりますので未成年を理由とする取消権の問題も生じないし,代理権の問題も生じないということになるのだろうと思います。   その上で,しかし,若年の人たちが消費者被害に遭いやすい。これは20歳未満の人もそうでしょうし,20歳以上になっていてもかわらないわけです。以前に,20歳を過ぎると消費者被害の数がぽんと跳ね上がるという御紹介がありました。それが全体の中での割合としてどのぐらいなのかという問題はあると思いますけれども,あそこには若年の成年者についても解決しなければいけない問題が現れていると思います。20歳を18歳に繰り下げれば,ぽんと跳ね上がるところが18歳になるのではないかと前に申し上げましたけれども,この点に対する危惧は,成年者であるということを前提として,あとは取引の在り方に応じた救済策を講ずるという方向で考えるというのが筋ではないかということでございます。 ○鎌田部会長 行為能力制限型ではなくて,契約のタイプに応じて脱出する権限を与えるという,むしろクーリングオフの拡充のような発想でいくということでしょうか。 ○大村委員 クーリングオフのようなクリアカットな要件を定めるのは難しいと思うのですけれども,むしろ民法第90条や消費者契約法第4条の延長線上に取引の経験が足らないというようなことを組み込むことを考えて,あとはその規定の運用でいくというのが一つの方策なのだろうと思います。   先ほどの話はちょっと分かりにくかったかもしれませんけれども,私が申し上げたいことは2点ありまして,一つは消費者被害ということとの関係で能力ということを考えると,多くの人が十分な能力を持っていないということになってしまいますので,そうではなくて,一般に考えられる平均的な取引において,どのくらいの判断能力が期待されるのかということで考えたらいかがかということです。それから,そうはいっても悪質商法はあるので,それに対する特別な救済が必要だということならば,成年年齢を下げるのに伴い,何らかの方策をとるということになるのではないかということです。 ○鎌田部会長 少し年齢の問題にもかかわってきますので,仮に成年年齢を引き下げる場合,成年年齢は何歳とすべきかという3番目の論点についても,事務局から説明をしていただいて,この点も含めて議論をしていただきたいと思います。 ○佐藤幹事 それでは,第3の論点について御説明いたします。   第3の論点は,仮に成年年齢を引き下げる場合,成年年齢を何歳とすべきかというものでございます。前回と同様,18歳とするという考え方,19歳とするという考え方,18歳に達した直後の3月の一定の日に一斉に成年とするという考え方があり得るところですが,どのように考えるか,御意見を頂だいできればと考えております。   なお,注6に参考となる事項を記載してございますので,そちらも御覧いただきたいと思います。諸外国の立法例を見ますと,成年年齢を18歳としている国が多いのでございますが,19歳を成年年齢としている国や州も存在することや,一定の年齢に達した時点ではなく,一定の時期を基準時として権利を付与する制度を採用している例もございます。また,我が国の立法例を見ましても,スポーツ振興投票権,いわゆるサッカーくじですが,この購入等につきましては高校生にサッカーくじを購入させるのは相当ではないとして,19歳未満の者の購入を禁じているという例もございます。ただし,年齢条項で19歳に設定しているものは極めて少数でございます。   この点につきましては,国民投票法の法案審議の際にも,国民投票の投票権者の範囲を18歳と定めるのが相当か否かということについて議論が行われており,高校というのは義務教育ではなく,20歳の高校生というのも現実に存在すること,普通自動車の運転免許については18歳からとなっており,高校3年生で運転免許を取得することができる人とできない人が混在していることなどから,国民投票の投票権者の範囲は,諸外国の例にあわせて,満18歳以上の者とされたという経緯がございます。民法の成年年齢についても同様の趣旨が当てはまるものと思われますが,委員,幹事の皆様の御意見を賜りたく存じます。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ただ今の説明を踏まえて,仮に引き下げるとしたら何歳が妥当かという,既に御意見も出されておりますけれども,その点も含めてお願いいたします。   宮本委員,どうぞ。 ○宮本委員 この年齢の根拠なのですけれども,やはり成長過程の中で大多数の青少年,若者の大きな転換の時期というのは,高校が終わる段階だと思うのです。なぜかと申しますと,地域によって違いますが,進学率が非常に高くなっているけれども,半分弱の人は高校が終わると働くことがメインになります。やはり労働市場に出るということは,大人になる一歩として非常に重要なものであるということがまず第1点だと思います。   それから,もう一つは高校を卒業して例えば進学をする場合でも,今,全体で約4割の人が一度親の家を離れております。しかし,その後また戻ってくるというような行動をとっていますけれども,やはり親の家を離れるということは非常に重要なことなので,そういう意味で,労働市場に出ること,親の家を離れる人たちがかなりの割合に達する18歳というよりも高校が終わる段階が重要ではないかと思うのです。だから,高校生在学中に18歳の誕生日になるからそこからというよりは,高校を大多数の人が終わる時期にしたほうがいいのではないかということで,場合によって少数例ですが,18歳を過ぎて高校生も存在するわけですけれども,圧倒的多数の人の行動を根拠にして,社会人の第一歩ということで決めるのがいいのでないかと思います。 ○鎌田部会長 高校を卒業する3月31日とかあるいは4月1日とか,そういうところに一律に定めるということですね。 ○宮本委員 混乱が起こらない時期を選べばいいのだと思います。 ○神吉関係官 宮本委員にお伺いしたいのですが,国民投票の投票権につきましては,18歳と定められたわけですけれども,国民投票とか運転免許については,18歳の誕生日を迎えたときにできるということになるわけですけれども,契約については高校を終わる段階になるとすると,そこに若干そごが生じてしまうのかなと思うのです。仮に成年年齢が引き下げられた場合,誕生日を迎えて自分は成人したんだというほうが,若い人たちにとって成人という意味が理解しやすいのかなと思ったりもするのですけれども,その点はいかがでしょうか。 ○宮本委員 それも確かにあると思います。しかし,その場合,危惧されることは,契約の問題というのは経済的な地位とかかわっておりますので,やはり大多数が働き始めていない18歳未満の段階から成年年齢を開始するというのは,少し現実的に妥当なのかという感じがいたします。   例えば大学に進学する場合にも,今,奨学金をだれの名前で契約するかというときに,かつては全部親でしたけれども,今は,本人の名前で契約することがかなり増えておりますし,銀行ローンを借りる場合にも本人が契約するということも増えているので,必ずしも学生であるから未成年であるという状況ではなくなっておりますし,18歳を超えて在学する場合にも,大多数がアルバイトをやっているという状況からすると,やはり高校時代とそれ以降では大きな違いがあるのではないかと思います。しかも,経済主体として契約できるということからすれば,高校が終わった段階というほうが妥当で,そうすると意見表明権が若干早くなりますけれども,本当はもし投票の年齢を今変更できるのならば,そろえたほうがいいと思いますけれども,決まってしまっているわけですよね。そういう点でいうと若干の数か月の差が出るということになりますけれども,成年年齢はもっと広く関連するとすれば,高校が終わってからのほうがいいのではないかという感じがいたします。 ○鎌田部会長 平田幹事,どうぞ。 ○平田幹事 ライフサイクルで考えると,高校卒業時点というのは多数にとって分かりやすい議論だとは思うのですけれども,極めて少数だとはいっても中学を卒業して働いている子がいて,その子たちこそ行為能力をきちんと与えて,行動してもらいたい人たちなような私は気がいたします。そうすると,中学を卒業して働いているのに,18歳になったときの3月31日というのは何の意味も持たない日付になって,そこから区切りになるということになると,マイノリティーである働いている18歳の子に対して,君たちは外れているんだよというような意味を持たないかどうか,私はその辺がとても気になるので,18歳の誕生日というのはニュートラルな判断であり,むしろそのほうが私はすっきりするのかなと思います。 ○鎌田部会長 氷海委員,どうぞ。 ○氷海委員 運転免許のことが話題に出ていますけれども,高校では18歳になって免許を取らせている学校は少ないです。2月の入学試験の時期になりますと,登校しないで自宅学習という形になりますが,そこから免許を取ることを許可している学校が多いので,事実上,18歳になったからといって,高校生の生活を課業中に運転免許を許可している学校は事実上少ないです。   それと同時に,例えば自動二輪のオートバイは16歳からですが,よく3ない運動といいますけれども,これもいろいろな問題を抱えており ,大半の学校は保護者との合意の中で,卒業するまでは,法律では許されているけれども免許を取らないで無事に高校だけは卒業したほうがよろしいのではないかということで,親とそういう約束を交わしながら,卒業の本当間近に教習所に通うというやり方をしていますので,18歳から運転免許が取れるというのは,事実上,現場ではそのとおりになっておりません。だから,現場でもやはり卒業という本当に近いところで法律を執行しているという苦肉の策なのですけれども,現場ではやはり高校生活中は,免許を取って事故に遭うことがないようにすることに力を入れているというのが現状です。 ○鎌田部会長 婚姻年齢とかもやはり3月31日にそろえさせるというふうにしないと,民法の中でもばらばらということになりかねないおそれがありますが,その点について何かございますでしょうか。   大村委員,お願いします。 ○大村委員 今の氷海委員の御発言ですが,満18歳から免許取得が可能であるけれども,制限をしたいというお気持ちはよく分かります。そのときには制限をするための手続というのが多分あって,本人あるいは親権者の同意を調達するような形で制限をかけておられるのだろうと思います。   以前に学校現場からの御意見として,高校3年生で,ある人は成年であり,ある人は未成年であるというのでは,画一的な扱いに困るところがあるという指摘があったと思いますが,今の免許の問題はそういう問題なのだろうと思うのです。学校現場で行われていることを合理的に整理していただいて,例えば,親権との関係では仮に18歳で成年になるとしても,高校在学中については18歳までは親権者であった人に様々な事柄について連絡をするという仕組みをつくる。3年生のときの扱いを均質化するような工夫をしていただくということを前提にすれば,18歳になった段階で成年になるというのも,何とか耐えられるのかなという感じがいたします。   他方で,3月31日か4月1日というのも宮本委員がおっしゃったように,そこから学校に行くとか,あるいは就職するということであるとすごく分かりやすい。ですから,十分にあり得る考え方だろうと思うのですけれども,他のところでは18歳になったところで線が引かれるのに,ここだけはそうでないというのを法制度の整合性という観点から考えたときには,やや難しいところがあるという印象は持ちます。 ○宮本委員 日本の場合には3月末卒業でありますが,多くの海外の場合には6月卒業であります。その時点で何歳になっているかというので,少しずれる可能性もありますが,この前,オーストラリアで聞いたときには,卒業したそのときがちょうど18歳とかで,だから,学校卒業と成年年齢とが同時にやってくるという話を聞いたことがあります。 ○佐藤幹事 今,宮本委員からいろいろお話があったのですが,基本的に事務局ですべて調べているわけではないのですけれども,外国の例だと成年年齢に関しては基本的には暦どおりというか,満年齢で計算しているのが普通だというふうに聞いております。 ○神吉関係官 補足して説明させていただきますが,確かヒアリングの教育編のときに,ICUの藤田先生をお呼びしましたが,そのときのお話として,海外の高校において成年年齢に達するとたばこを吸える国があるのだけれども,高校の中でたばこを吸えるエリアと,たばこを吸えないエリアというのを分けてやっているというお話も聞きましたので,恐らく国によって違うのかもしれないのですけれども,藤田先生が挙げたような例の中では,高校で成年を迎えるという国でしょうし,外国だから違うというわけではないのかなという気はいたします。 ○鎌田部会長 仲委員,どうぞ。 ○仲委員 私自身は引下げに賛成というわけではまだないので,その段階での意見なのですけれども,引き下げるとしたらやはり18年間生きてきて,その18年目になったときに与えられるのがいいのではないかなと思います。その理由は,同じ平等な国民ですから,ある人は18年とちょっととか,ある人はもうちょっととかということではなくて,やはり18年生きてきたというところで与えられるのがいいのではないかということです。あと現実的な問題としては,例えば悪徳商法の人たちは,きっと3月31日にいろいろなダイレクトメールを送るであろうし,例えば結婚式場も4月1日にみんなが結婚式に殺到するみたいなことがあったり,半分冗談ですけれども,そういうようなことがあったりするのではないかと思うと,成年年齢に達するときはばらばらであり,クラスの中で投票に行く人もいない人もいるというほうが自然なのではないかなと思います。 ○鎌田部会長 出澤委員,どうぞ。 ○出澤委員 法的な整合性というのは,やはり非常に重たいのかなと感じております。ただ,高校3年生の最中に18歳になり,そして契約ができる。高校生の場合は高校での指導というのがありますけれども,あくまでも指導にすぎませんので,そういう意味では親としてみれば,18歳,高校3年生で契約ができる,携帯の契約を勝手に締結してくるとか,また,悪質商法にひっかかる人が出てくる。そうすると受験も控えた中で,そういうことがあっていいのでしょうかということで,成年年齢を下げる,それも18歳だということになりますと,国民の意識としては少なくとも母親は猛反対ではないかという気がいたします。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。 ○神吉関係官 出澤委員の御発言に関連して補足して御説明させていただきますが,今,議論しているのは仮に成年年齢を引き下げる場合ということで,今後,条件整備をして,いろいろな若年者の諸問題というのが解決した後に引き下げるのかもしれませんし,そういったときに18歳にすべきかということで議論をしていただければと思います。消費者教育など,いろいろな教育をしていって,そういった悪徳商法の危険性が少なくなった後に,18歳に下げるかどうかということも議論の対象なのかなと思います。 ○鎌田部会長 今田委員,どうぞ。 ○今田委員 そこが難しいところで,今,議論されているのは,要するに下げることに一応賛成で,整備される条件の各項目もこれで問題ないという前提での話なんですか。 ○鎌田部会長 仮に下げるとすればという議論です。 ○今田委員 仮定の話ですね。そういうのをここで延々とやることの意義はあるのでしょうか。つまり,下げるかどうかの結論が出ていないのだから,非常に抽象論として,理論的に成年年齢というのは大村先生の御議論のようないろいろな仮定を置いてこうすれば,こういう年齢の設定がありますよというような,そのレベルではないのでしょうか。   あえて言うならば高校にするかとかしないかとか,高校が義務教育でもない状態で中学卒の人もいれば中退する人もいる。そういうレベルで高校がいいとかいう議論もほとんど説得力が感じられないですし,そういう議論を延々とすることも,余り生産的であるとは思えないのですが。 ○鎌田部会長 しかし,そこまで含めて一つのスキームが出て,初めてそれに賛成するか反対するかという最終的な意見を決めようという委員,幹事の方もいらっしゃると思いますので。 ○今田委員 前のところが決まってからの議論になるのではないでしょうか。 ○始関委員 今,最終の取りまとめをしていただくための議論をしているわけではなくて,次々回に中間取りまとめをしていただくための議論をしていただいております。今日の御議論が前回とかなり変わったと思いましたのは,引下げをすべきかどうかということを,前回はどうも引き下げないほうがいいという御意見のほうが圧倒的に多いのかなという感じだったんですが,今日はほぼ半々になったのかなという感じもしました。   もちろん,それは皆さん条件が整えばということではあったとは思いますけれども,どちらにしても,一本化した意見という形での中間取りまとめは,今日の御議論を伺っていると難しいのだろうなと思っています。しかし,仮に引き下げるとしたら,どうあるべきかということについても,今も18歳でいくべきだという方と,高校卒業した後の一定の日にすべきだという方に分かれていますので,両論併記という形になるのかなと思うのですけれども,今,法制審議会の民法成年年齢部会での議論の状況は,こういう状況ですということを示すのが中間取りまとめですので,引き下げることに反対の方は,議論しにくいかもしれないのですけれども,やはり引き下げるということになった場合に,何歳がいいですかということについても,もう少し意見分布が分かるようにしていただけると有り難いなと思います。 ○鎌田部会長 岡田委員,どうぞ。 ○岡田委員 先ほどから悪質商法ばかりが何か出てきているのですが,現場にいる人間としては,先ほどの大村委員の意見にすごく賛同いたします。確かに未成年の取消しというのは伝家の宝刀的な認識でおります。むしろ成人になっていようが,未成年であろうが,説明義務とか詐術だとか,消費者契約法とか特商法とか,その辺を駆使しまして取消しと同じような効果は出しているのですよね。ですから,民法の成年年齢というのはいわゆるそういう契約だけではなくて,親権の問題とか何かいろいろ考えたときに,20歳のままでいいのか,18歳がいいのか,19歳がいいのか,その辺の議論をすべきではないかなと思います。むしろ消費者契約だけで議論されるとすれば,どうも現場にいる人間としては,そこまで20歳にこだわる必要はないのではないかなと思っています。 ○鎌田部会長 若年者の契約は,悪徳商法にひっかかったというケースだけではなくて,携帯電話で月10万も20万も費消してしまったのを取り消せるかとか,高価なバイクを友達から購入したのを取り消して返せるかとかという,取引自体としては普通のものについても,未成年を理由にして,そこから脱することができるかという形であらわれてくる問題も少なからずあると思うんですね。 ○岡田委員 そこの部分は判断力とか経済力とか,いわゆる適合性の原則で対応している状況であります。 ○鎌田部会長 携帯電話でいえば,18歳未満のときに親の許しを得て,一定の限度額付きで契約したのを18歳になった途端に限度を撤廃したけれども,やはり後悔したというときに,18歳になると後戻りはできませんよという話になるかどうかという,そういう次元の問題もあると思います。 ○岡田委員 その問題もあるし,一方で20歳未満の子どもが詐術を,つまり自分が成人であるとみせかけたりとか,友達を親に仕立ててとか,そういう問題も最近,とても増えてきているのです。 ○鎌田部会長 それと,未成年者は全く一人で何もできないかというとそういうわけではなくて,処分を許された財産については全く成年と同じように取引ができますし,営業の許可を受ければ,その範囲内では成年と同じようになるし,結婚すれば成年になってしまうということで,現行は20歳未満については例外的に一人前になれる場面というのがある。これを逆転させて18歳になったら原則一人前で,例外的に保護をしてもらいたいときは何か特別の制度に乗せようという,そこの切りかえが妥当かどうかというふうに,契約の部分というのは,なるのだろうと思います。 ○金子幹事 今の18歳をもって成年とするか,あるいは高校卒業時をその基準とするかということなのですけれども,人それぞれで成熟度は違いますし,それから高校へ行っている,行かない,あるいは中退したとか,高校へ行っていてもアルバイトをしているとか,状況は人それぞれで違うのですけれども,どこかで一律に線引きするとすれば,やはり一定の期間生きてきたことをもって,成熟したというふうに見るということなのではないかと思うのです。そうすると365日掛ける18年,うるう年を入れるとちょっと違うのですけれども,それだけ生きてきたということをもって成人とするというのが全員共通のルールであり,それは状況に変わらず一定なので,やはりそれが理論的には一番説明がしやすいのではないかと思います。   それから,宮本委員がおっしゃった外国では実際は18歳といっても,高校を実は卒業している人が多いのではないかという御趣旨の御質問だったと思うのですけれども,もしそうであれば,19歳に設定するというほうが同じ理屈では合理性があるのではないかと思いました。 ○鎌田部会長 氷海委員,お願いします。 ○氷海委員 高校生のときの問題が今出ていますけれども,現場の私はやはりここにもあるように混乱があるというのは,抽象的に言いますと,日本の学校は私もアメリカとかいろいろなところを見ていたのですが,日本の学校は言葉では丸抱えの形が多いのです。諸外国ですと,学校を一歩出ると,学校はほとんどかかわらないですね。しかし,現実,我々の学校だと万が一,子どもが万引きしたら,学校が一緒に行って頭を下げるという文化なのです。   そういう形の中で例えば成人が同じ学校の中にいて指導をするとき,例えば我々は悪いほうにしか考えないのですが,何か事件が起こったときに扱いが違いますよね。そうしたときに,その子どもたちの対応というのが学校が非常に難しくなる,ここも抽象的な言い方になってしまうのですけれども,日本の学校というのは,子どもたちにかかわる量が諸外国より多いのです。例えば諸外国みたいに学校以外はすべて家庭ですよと,学校ではありませんよという文化だとやりやすいのですが,日本の場合は,どこまでいってもやはり学校が子どもたちの面倒を見るという文化ですので,その辺が私が現場にいてこだわるというか,それの背景はそういうことなのです。 ○鎌田部会長 出澤委員,どうぞ。 ○出澤委員 先ほど引き下げるとしたらと,条件整備がなされた後というお話がありました。それはもちろんそうなのですが,振り返って考えると,そんなことが現実にあり得るのかなということを逆に思ってしまいました。18歳に引き下げたらどうなるかなということを条件整備がなされれば問題がない。でも,なされるかどうか分からないから,こういうところでも議論しているわけでありまして,そうすると,やはり先ほどお話ししたように18歳である高校3年生で契約ができる,クレジットカードの契約ができるかもしれないし,携帯電話の契約ができるかもしれませんし,場合によっては18歳では契約ができませんよという特別法ができるのかもしれませんけれども,成年年齢を引き下げる以上は基本的には無理ではないかと思います。そういうことを考えると,やはりそういう姿というのが現実のものとして見えてこないんですね。やはりどうしても仮にという仮定というのはかなり現実的には無理があるのではないかなと,神吉関係官の御質問,御意見を踏まえて考えた後,改めてそう思いました。 ○鎌田部会長 19歳案という方はいらっしゃらないということですか。 ○氷海委員 私は19歳と,ここに書いてある3月31日というのは,現場としては同じ意味なのですね。 ○鎌田部会長 大部分の人が高校を卒業した後に成年になるようにしてほしいということですね。 ○氷海委員 はい。 ○鎌田部会長 年齢の点については,ほぼ御意見は出尽くしたと思いますけれども,よろしゅうございますか。引下げをすることの賛否についての意見をまだおっしゃっていない方にもきちんと言っていただいて,大勢を判断したいと思います。 ○神吉関係官 先ほど成年年齢の引下げの是非ということで,最初の論点に戻って議論をもう一度していただきたいと思っているのですけれども,一番の話題としては成年年齢を引き下げる必要性をどう考えるのかと。皆さんの議論をお聞きすると,民法の成年年齢を引き下げる必要性として,若い人たちの社会参加を促すことをどう考えるのかということが一番大きなところなのかなと思うのですけれども,このあたりについてもう一度,皆さんの御意見をお聞かせ願えれば有り難いのですが,いかがでしょうか。 ○鎌田部会長 木村委員,どうぞ。 ○木村委員 現時点での感想といいますか意見ですが,私自身も山本委員が言われたような,少子化社会へ向かう今後の日本の中で,早く社会への参画を促していく,そして責任感のある若者たちを育てていくということは,ものすごく良いことですし,大いに賛成しております。ただし,そのために,民法成年年齢を引き下げるのかというと,いろいろな条件整備が必要となってくるであろうと思います。条件としては,学校教育だけではなく,企業も含めた社会の中でいろいろな教育をしていくことも重要だと思いますし,そういった教育を何年かかけて実施し条件が成就した暁に,成年年齢を下げるということも確かに良いとは思います。しかしながら,現実には,先ほど来話が出ているとおり,学校教育法も含めていろいろな理念が既にできているにもかかわらず,現実にはそれがなかなかできていないのです。消費者教育も含めて。   そういうことを考えた時,今の段階において直ちに,条件を付けて民法の成年年齢を18歳に引き下げるとの結論を出して良いのか,その条件の成就が,既に理念があるにもかかわらずできていない理由を,本当はもっと掘り下げて検討しなければいけないのではという気がします。確かにそれは,国会などで決めてもらう話だということになるかもしれませんが,私自身は,そこまでもっと掘り下げて議論すべきなのではないかと思います。それがない中で,条件を決め,それを整備すれば,成年年齢を引き下げて良いと結論付けるのは,時期尚早という感じがしております。 ○鎌田部会長 岡田委員,どうぞ。 ○岡田委員 今まで私は下げるべきだととられるような発言をしたかもしれないのですが,実際はそうではなくて,やはり20歳で救済されるのであれば,それがベターなのですが,ただ,今のままどこまでいけるかと考えた場合に,やはり下げる必要性が出てくるだろうと。そのためには条件ということで,いろいろな教育をする期間が必要であり,それが多分高校生も大学生も,下げるとすればいろいろな教育をしてほしいという声に含まれているのではないなと思います。   それから,毎日相談を受けていて感じることは,果たしてこのまま若者を甘やかしていいのかなという相談員の心情もものすごく日に日に感じるものですから,その辺でやはりどこかで自立させなければいけないのではないかという気持ちが多分にあることは事実です。 ○鎌田部会長 今田委員,どうぞ。 ○今田委員 一般論として,今日の産業社会では若者になる期間がますます長くなっている。これはだれもが異論のないところだと思います。そういう状況で若者の自立が非常に難しく,なおかつ重要になっている。これも皆さん共通するところかと思います。   この先から議論が紛糾するのですが,まず,早く自立させるべきであるといった場合,その早くというのは,どのような基準をもって早くなのか。現状よりも早くなのか。30歳のフリーターとか,30歳代後半のフリーターも出るようになり,そういう長期化の傾向の中で歯止めをかけたいというようなことで早くということなのか。20歳を2歳若くすることが早くなのか,その辺,議論がごちゃごちゃしているように思うのです。それが一つ。   それから,もう一つ,諸外国の成年年齢が18歳であり,今後の趨勢としては,いずれ18歳にならざるを得ないのではないかという予測についてです。私自身が言っていることは,要するに大人になるのが長期化する状態で支援が現状以上に強化されなければいけないということです。そのために成年年齢を下げるなんてとても同意できないという議論にまだ私は立っています。18歳に下げるときの制度設計が示されていますが,20歳のままであったとしても,今後これらのことは,日本がやっていかなければいけないと考えるので,下げるための条件整備と言われた前回も,何となしにしっくりこないと申し上げたわけです。   ということで,若い人の社会参加を促さなければいけないとの宮本委員の議論は一般論としては分かります。自立はきちっとしたほうがいい,社会参加を促したほうがいい。これには反対はない。ただし,だからといって,今,2歳下げることに直接論議としてはなかなか結び付かないということで,分かれるのではないかと思います。私は,一般論としては自立をしっかりさせるような社会的なメカニズムが強化されるべきだということに賛成ですが,結論としては,ここで言うような形での2歳下げるという結論には,今の現状の中では至らない,むしろ現状では,現状の20歳でももっと支援制度を強化するという実態ではないかと思います。 ○鎌田部会長 氷海委員,どうぞ。 ○氷海委員 先ほど高校卒業という基準という考え方を示しましたけれども,総括的に見て私の個人的な意見としては,19歳がすべてを網羅するだろうなと思います。例えば高校卒業という条件にしたら,高校へ行っていない人もいるわけで,何かそれが根拠になるのも少しなじまないかなと思っております。それから,学期が今4月で諸外国は9月からが多いという話がありましたが,それが我々が留学させるときにいろいろな問題も出ており,日本がいつまでも4月とは限らないので,万が一,引下げが決まったときに,高校という一つの学校の入学の制度の根拠はちょっと弱いのかなと。そうしますと,19歳というのであればすべてを網羅するので,一つ下がって何の意味があるかと言われますと,やはり下げることで先ほどから話をしているメリットの部分を私も思っています。そして,自分の立場のいろいろな問題点も抱えている人は,19歳というのがすべてを私個人の中では網羅した年齢かなと。入学というのはちょっと変更する可能性があるので,もっと大きなルールですので,変更させて19歳ということでお願いします。 ○神吉関係官 前回の部会において,成年年齢を1歳か2歳か下げることによって,若い人たちの社会参加とか自立といったものが促されるのかどうかということについて,果たしてそうなのかという御意見もあったかと思います。諸外国では1970年代に成年年齢を引き下げておりますが,当時はいろいろ学生運動やベトナム戦争の影響があって,若い人たち自らが権利を欲しいという流れがあって,それで成年年齢の引下げというのがすんなりいったのかなという気もいたします。しかし,今の日本の現状で高校生や大学生,あと世論調査の結果を見ても分かりますように,そんなに若い人たち自身が権利が欲しいという形ではないのかなと思うのです。   そこで,宮本先生にお伺いしたいのですけれども,そういった若い人たちの現状の中で,成年年齢を引き下げることによって,社会参加とか自立といったものが本当に促されるのでしょうか。 ○宮本委員 一言で結論を言えば,年齢を下げただけでは事態は変わらないと思います。ただ,年齢が重要だというのは,まず第1点としては今20歳で成年年齢になりますけれども,18歳というか,多くの人が高校を卒業する時期から20歳までの約2年間,この2年間の空白状況というのがあると思うのです。かなり多くの人が大学なり専門学校へ行くわけですけれども,未成年の状態で入っていくわけですね。ですけれども,かなりの人は親の家を離れて,仕送りされているとはいいながらも,半分生活的には自立して教育を受けているのですけれども,社会的には未成年であると。   そういう意味で,未成年の状態のまま20歳でいくことによって,せっかく大人になるいいチャンスが社会的に位置づけられないという問題があるので,やはり高校を終了したくらい,高校と余り言い過ぎては本当はいけないのですけれども,実態としては高校を卒業してから成人式を迎えるまでの空白状態を,きちんと大人になるプロセスとして位置づける必要があるのではないかと思いますので,そういう点でいうと,年齢を下げるということも重要な一要素ではないかということで,私は年齢を下げるだけでは全く事態は変わらないと思っております。   この間,若者の自立政策にかかわってきて,どういう形で進んできたかというと,まず,雇用対策をやったんですよね。つまり,仕事に就けない若者を仕事に就けると。 これは労働市場への参画という意味では参画政策なんですけれども,就けない困難を抱えている若者に対しては,支援という形だったと思うのです。それで,近年はよりハンデを持っている若者を社会に参画させるとか,生活をサポートするという,やはり支援中心でやってきたのですけれども,完全にこの流れの中で抜けてしまっているのが若者の社会参画,とりわけ政治参画とか意思決定の参画とかいう,世界的には大きな流れのあるこれが流れに全くなっていない状況にあるわけで,幾ら諸外国をまねする必要はないといっても,これだけやっぱり意思決定の参画というのが20年前からの大きなうねりになるところで,全く雇用対策とハンディキャップを持っている若者の支援だけでいいのかということがあるので,支援というよりも,もっと積極的な社会への参画政策に転換すべき時期だということがありまして,そういう流れの中でこの年齢の問題も出てきたということなので,私の中では年齢問題と参画ということをここで整理をして,大きな流れにすべきではないかと思っているということなので,年齢を何歳にするかということはそれほど非常に重要だとは思いません。けれども,できれば高校をみんなが出たその段階から大人になるスタートを切るというほうが,すっきりするのではないかと思います。 ○松尾関係官 年齢を下げても何が変わるだろうかというお話もございましたが,社会に対する積極的な参加という面からいえば,選挙権を与えるのが最も効果的ではないかという気がします。18歳で選挙権を与えた場合,高校3年生では選挙に行く生徒と行かない生徒が出てくるわけですが,それは特別お困りでないでしょう。いかがでしょうか。 ○氷海委員 選挙に行くか行かないかのいろいろと運用面はありますけれども,そう数は多くないと思いますので,それはどうにか対応し切れるかなと思いますが。 ○鎌田部会長 逆に民法の成年年齢が社会参画を促すてこにどれぐらいなるのだろうかということも,ちょっと測定がなかなか難しいかもしれないのですけれども,意識面では大分違うというなのでしょうか。 ○宮本委員 待っていても起こらないのですね。ですから,やはりこの年齢規定を変えるということは,ここから起こさない限りは起こりにくいのだと思うのです。ですから,これは単なる法律改定というよりは,大きな若者の位置づけを変える,出発点をここが起こすというくらいの,そういう決心といいますか,覚悟が必要なことで,恐らくそれをやらなければ年齢が変わったというだけになる可能性もあるのではないかと思っております。 ○木村委員 正に,私は,宮本先生の言われるとおりだと思うのです。だからこそ,それを実行していくためのセーフティーネット,条件整備を,どのようにやっていくかというところを掘り下げていかなければ難しいのではないかというのが,私の感想です。 ○宮本委員 私がかかわっている今動きの中では,内閣官房が中心になって様々な困難を持っている若者支援の仕組みを,今の縦割り行政を取っ払って横に横断した地方自治体レベルと国レベルをきちんとした形で整備するという検討をやっていて,この10月に最終提言を出すということになっております。できれば来年の国会に名称は分かりませんけれども,子ども若者総合支援法みたいな形で提出して,この間の若者対策というのは3年予算を出したら終わりみたいな基盤が極めて弱いんですけれども,そうではなくて法的な根拠を持って支援を国の責務として位置づけようということで,もう具体的に動いていて,省庁横断的に勉強会でやっているわけなんですよね。   そういう動きを考えれば,そこにもう一つ参画政策を加えると,ハンデを持っている人の支援とは違って参画政策ですから,非常に対象は広くというか,もっと積極性のある取組になると思うのですけれども,両方がそろったところで初めて日本の子ども若者政策というのが総合政策になるのだと思っております。ですから,法務省だけで責任を持つ必要もなくて,もっと広い動きがあるので,そこを前提にして,ここで議論したことを例えば内閣府に返して,青少年行政を中心にして,若者参画政策としてきちんと 柱を立てるという取組になっていけば,可能性はあると思います。 ○鎌田部会長 そういう意味では,子どもから青年にかけてのいろいろな法制度がかかわっているわけですけれども,既に御指摘があったように児童福祉法と民法との間にも2年の空白期間みたいなものがあったりしますので,若年者に係る全法体系をきれいに整備する,その一環の中で考えていかないと,一つ一つの法律で個別に独自に年齢を考えていっただけでは,解決が難しいかもしれないですね。   氷海委員,お願いします。 ○氷海委員 私が19歳と言った中のもう一つの考え方は,選挙が18歳で始まりますね。そうすると,18歳でその体験をして1年間かかって成人というのがタイミング的に非常に準備期間という形で,心の教育からするとリズムがいいかなと思うのです。選挙はそこで一回で参画して,あと1年後に成人が来ると。それは大きないろいろな要素が大きく変わるわけですね。そうすると,選挙で経験し,心の準備をして1年間で成人というのは,学校に勤めているからかもしれませんけれども,心の準備としてはいいかなと思っております。 ○鎌田部会長 どうぞ,宮本委員。 ○宮本委員 私たちのほうの議論で言われているのは,成長過程の中で二つの非常に問題の時期があると言われていまして,一つは義務教育が終了した段階で,次の段階にうまく乗れない青少年の存在です。高校へ進学できないとか,高校へ入ったけれども,中退する部分で,義務教育からその後の接続で問題を抱えている人たちがかなり問題が深い。これは児童虐待とか,そういう私企業の世界ともかなり結び付くと思います。   あと,もう一つは18歳で児童福祉法が切れた後,実際にはその後も保護なりの必要な人たちがかなりいるのだけれども,制度的には18歳で切られてしまうと。そういう意味で,そこらあたりまで含めますと,多分,18歳というのと今の20歳という成年年齢の間にもかなり問題があると思いますので,そこらを全部整理する必要が本来あるかと思います。 ○鎌田部会長 部会資料36の4から7までについても一応御説明をいただいて,それを踏まえて総合的な御意見を伺いたいと思いますので,説明をよろしくお願いします。 ○佐藤幹事 それでは,論点4から7までについて御説明いたします。   第4の論点は,親権解放制度についてのものでございます。仮に現行制度を変える場合,単純に成年年齢を引き下げるという結論を採るほかに,一定の要件のもとで未成年者が服している親権からの解放を認めるという制度を創設すること,例えば旧民法の自治産のように,親の許可を得て未成年者に被保佐人と同様の権利を付与する制度も考えられますが,どのように考えるか,御意見を頂だいできればと考えております。   なお,前回の部会では,両親が海外赴任をしており,子どものみが日本に居住し,契約をするに当たり,両親の同意をいちいちとるのが面倒であるという事態も想定されるが,一定の条件のもとで親の親権から解放される制度の創設で対応するということも考えられるといった意見が出されたところでございます。   第5の論点は,段階的成年制度についてのものでございます。仮に現行制度を変える場合,単純に成年年齢を引き下げるという結論を採るほかに,成年と未成年で二分するのではなく,三つ以上の区分を設けて段階的に権利を付与する制度の創設も考えられますが,どのように考えるか,御意見を頂だいできればと考えております。   前回の部会では,18歳未満の者は現在の未成年者と同様にし,18歳,19歳の者に被保佐人と同じような権利を付与し,20歳以上の者に完全な行為能力を与えるという段階的成年制度を採用すれば,被保佐人には選挙権が付与されておりますので,選挙権年齢との不整合という問題は解決されるのではないかという意見が出されました。なお,この意見に対しましては,この制度を採用したとしても,成年年齢が20歳であるという事実は変わらず,また,やや複雑な成年制度になるので,取引の安全性を害しないかという懸念があるという意見も出されたところでございます。   第6の論点は,養子をとることができる年齢についてどのように考えるかというものでございます。前回に御説明しましたとおり,考え方としましては成年年齢を引き下げる場合,養子をとることができる年齢も引き下げるべきであるという考え方,現状のまま20歳とすべきという考え方,現状よりも引き上げるべきという考え方の三つがあると思われます。この点につきましては,前回の審議の際には御意見が出されませんでしたので,委員,幹事の皆様の御意見を頂だいしたく,よろしくお願いします。   第7の論点は,婚姻適齢についてどのように考えるかというものでございます。仮に成年年齢を18歳に引き下げた場合,婚姻適齢を現状のままとするという考え方,男女とも18歳にそろえるという考え方,男女とも16歳にそろえるという考え方があり得ると思われます。なお,婚姻適齢は男女とも18歳にしつつ,妊娠をした場合など特別の事情がある女子については,18歳未満でも婚姻できるという考え方も前回の審議の際に出されましたので,これらの考え方につきましてどのように考えるか,御意見を頂だいできればと存じます。   そのほか,12月の中間取りまとめに向けて議論すべき事項がございましたら,御提案いただきたいと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   1から3までについてまた御意見をお出しいただくことは一向に妨げはございませんけれども,4番の親権解放制度についてはどのようにお考えになるか,御意見をいただきたいと思います。前提としてはむしろ成年年齢を引き下げないで,20歳以下であっても完全な能力あるいは一定の成年に準ずる能力を付与するという個別的な制度を認めていこうということだろうと思いますが,仕組み的には親から独立しているので親権者から親権を解放してあげるという場合と,児童虐待等の場面で出てきた言わば公益的見地から親権から解放してあげるという発想と,従来の議論の中に二通りのものが出てきたと思うのですけれども,制度の設計は相当違うものになりそうな気がするのですが,その辺のところについて御意見がございましたら,頂だいできればと思います。   それでは,大村委員,どうぞ。 ○大村委員 一般論として引下げをするかどうかということについては,前回は世論調査の結果の御披露もありまして,質問の立て方等々について留意すべきところがあるとしても,少なくとも現状では国民の圧倒的な多数が成年年齢の引下げに反対であるというときに,直ちに現状のままで引下げをするというのは,少し無理があるのかという認識を得ました。青山委員がおっしゃったように,5年というような経過期間を設けて,政府のレベルで根本的な対応をしていただくということであれば,また,別論でありまして,個人としては青山委員がおっしゃるような方向に賛成でございます。しかし,何もしないということであるのならば,引下げは無理だろうと思います。   その上で将来的に考えたときには,私は宮本委員がおっしゃるような方向が単に若年者政策という問題だけではなくて,民法が人というものをどのようにとらえるのかという観点から見たときにも,望ましいものを含んでいるのではないかと思っております。しかし,現状で引下げが困難だということであるとしても,最低限,やはり引き下げてほしいという人,そして引き下げてもやっていけるという人たちについて,選択肢を開いておくということはあってよいのではないか。この選択肢の仕組み方はいろいろありますけれども,適切な人を選び出して,その人について考えられる手続のもとで行為能力を通常の未成年よりは高いものにする。これも効果もどうするかということがありますけれども,考えられてよいだろうと思います。   そういう発想からいきますと,自分で財産を管理することができるだろうし,それにふさわしいという人を選び出すというのが中心になる。先ほどお話に出た児童虐待等の場面で,親との関係で親権から解放する必要があるからというのは,確かにそういう場合もあると思いますけれども,理由としては副次的なものになるのではないか。むしろそちらは親権の制限との関係で考えたほうがよろしいのではないかと思います。 ○鎌田部会長 ほかに何かこの点についての御意見はございますでしょうか。   出澤委員,どうぞ。 ○出澤委員 ここで検討の対象としている親権解放制度というのが必ずしもよく分からないのですけれども,今まで考えていたのは親権の濫用者から,裁判所の許可なりで解放するというイメージを持っていたのですが,今回,部会資料36を拝見しますと,どうも一定の財産について親権を解放するということのようにも見えるのですが,ここのところはどういう理解をすればよろしいのでしょうか。 ○佐藤幹事 事務局から説明します。   部会資料36の4のところで説明したのは,前回,大村委員から話が出ました旧民法の自治産の制度のようなものでして,親が許可を与えて未成年者に被保佐人と同様の権利を与えるということです。従前,御説明したのは親権解放制度ということで,フランスの制度を御説明したかと思います。あれは裁判所が一定の条件のもとでそれを認めるという制度だったかと思います。ここで書いてあるのは親の許可を得て,その場合に親権を解放するという制度です。   少し分かりづらいので申し上げますが,考えられるニーズというのは幾つかございまして,一つ目が例えば児童虐待を受けているような方がいて,その中で例えば18歳,19歳の方がいるとして,その人を親権から解放したいという場合が一つでございます。これは先ほど大村委員からも御説明がありましたけれども,ある程度,御本人というか,親のほうからの同意というのは余り期待できない事態でございますので,そういう場合はある公権的な制度ということで,公的な機関なりがこれを認めるという制度になるかとは思います。先ほど大村委員からも話がありましたが,例えば児童虐待を受けているような人というのは,どちらかというと低年齢児が多いということで,その数がそれほど多いのかという問題と,児童虐待の問題について,やはり児童虐待についての個別の対応をしたほうがいいのではないか,あるいは親権喪失であるとか,そちらの制度の運用等でやるべきではないかという議論があるので,この場合はこういう制度をとる必要は余りないのかなと思っています。   あとは前回出た例でいいますと,海外に親がいる場合で,いちいち親の同意が必要だという場合に,ここで御説明しています自治産のような制度というのがもちろん考えられるところですが,そういう事例が多いのかどうかというのはちょっとありまして,いちいち親の同意を得るというのが,そう事例としては多くないし,そういう場合に今現代社会で通信手段も発達している中で同意をとるのがどの程度難しいのか,あるいは実質的には親の同意があるような場合がほとんどではないかということで,現実でどれほどその必要性があるのかという問題がございます。   三つ目のニーズとして考えられるのが先ほど大村委員からも御説明がありましたけれども,実際は18歳,19歳で仕事をして,ある程度収入もあるが,いちいち親の同意をとって契約をするのは,手間がかかるというような場合に,そういう人について例えば権利を与えて,その人については自分から親権の保護を受けないでいいということで,自分で契約をできるというふうにしたらどうだと先ほど御説明がありました。それについてどのように考えるかということかとは思いますが,ただ,そのような事例で現実にどの程度,問題になっているのか,実態としてあるのかと思っています。   例えば,第4回会議にトヨタの方を参考人としてお呼びした際も,未成年者で労働されている方に直接,お金を振り込んでいるけれども,その方についてどれだけ問題があるのかというと,余りなかったということだと思いますので,それについてどのくらいのニーズがあるのかというのは,分からないのかなと事務局としては考えています。 ○神吉関係官 大村委員にお伺いしたいのですけれども,現行の民法の解釈の問題として,処分が許された財産については自由に処分できると規定されておりますけれども,未成年者が法定代理人から離れて生活をしていて,特に扶養が不十分の場合については,その生活費について処分が許された財産として,自由に処分できるという解釈論もあるようなのですけれども,そういった解釈論があるとすれば,自分で財産を管理ができていて,親から離れていて働いているというケースについては,親権者から黙示的に処分を許されたとして,自由に親の同意なく使えるのかなという気もするのです。したがって,親権解放制度を設けるのではなくて,現行法の解釈の中でもいけるのかなという気もするのですが,その点はいかがでしょうか。 ○大村委員 御質問の点ですけれども,この問題は前回は海外赴任の例を挙げましたけれども,あれは海外の話題が出たのでついでに挙げたという話でして,実例がどのくらいあるかという点について具体的な認識を持っているわけではありません。   それから,親元を離れて働いている17,18万人の中で,どのくらい不自由があるのかというのも,実際には余り不自由がないのかもしれません。企業の方はそのようにおっしゃっていたわけです。ただ,未成年者として本来はとるべき手続があるのに実際にはその手続をとっていないから,働いている未成年者にとって制約が生じないような扱いになっており,我々はそれを追認しているということなのではないかと思うのです。   それから,神吉関係官がおっしゃった処分を許された財産についてですが,そこは解釈論の分かれるところだと思いますけれども,非常に包括的な形で処分を許すということについて,果たしてそれが可能なのかというところは議論があると思いますし,それから一定の範囲であるとしても,その範囲に入っているのか入っていないのかということで,解釈論上の疑義が生じてくると思うのです。現在も生ずる問題だと思いますけれども,規定を緩やかに運用するということになりますと,そういう問題は出てくるだろうと思います。   そうしたことよりも重要だと思われるのは,未成年の規定をうまく運用することによって19歳,20歳の人に事実上の自治,自立を認めるというのではなくて,仮に結果が同じだとしても,通常の未成年者とは違う形で自分がより高い程度の自立を手にしているという意識を持てるということではないでしょうか。そういう自立した地位に立ちたいと考える人たちが少数かもしれませんが,いるのではないか。その人たちに権限を与えてはどうか。彼らが社会生活において円滑に暮らしていくということであるとすると,自分もやってみようという人が出てくるかもしれません。   反対に,18歳になって,自治産なら自治産ということでやってみたけれども,思わしくない。この制度を使おうという人も余りいない,使ってみたけれども,トラブルに巻き込まれているということだとすると,制度はつくってみたけれども,必ずしも機能しないということになりますが,現在の段階でドラスチックに制度を変えることはできないという前提に立ったときに,この先,我々がこの制度についてどう考えるかということについて,選択肢を広げることによって,それを手掛かりにして社会の行方をうかがうということは,理念の面でも,実践的な面から見ても,あっていいのではないかと思います。 ○鎌田部会長 一つの可能性として十分考慮に値すると思いますけれども,他方,実際にやるとなると,現在でも未成年の営業の許可をすると,商業登記簿に登記をして能力を証明するということがあるので,バックアップのための制度をどう整備するかとか,要件をどうするかなど,少し時間をかけた検討は必要ですね。大きな行き方として当面,検討の対象にするというところだということでしょうか。 ○大村委員 おっしゃるように公示の問題が必要になると思います。それで,親権解放というかあるいは自治産というか,いろいろな言い方がありますけれども,本来ならば未成年であるけれども,一定の要件を満たしたときに,通常の未成年者よりも広い範囲で財産管理ができる。実は,婚姻による成年擬制というのが旧民法では自治産の一つの例だったわけですけれども,これは結婚したということが戸籍に書かれます。同様に,18歳だけれども,行為能力があるということを示せと言われれば,戸籍抄本等を本人がとって相手方に提示するということになると思います。仮に親権解放のような制度を考えるのであれば,親権解放されているということを戸籍に記載する等の対応をとって,婚姻に基づく成年擬制が働いている場合と同様になるような手当てをすることが必要かと思います。 ○鎌田部会長 平田幹事,どうぞ。 ○平田幹事 親権解放については,身上監護権が問題になる場面と財産管理権が問題になる場面で全然意味が違ってくるだろうと思います。財産管理権の問題に関しては18歳で選挙権をもらえて仕事もしているとなってくると,ある程度,自治産的な考え方を導入すればいいとなってくるはずだと思うのです。   そうした場合に問題になるのは,民法上は財産管理権の喪失制度,辞任喪失の制度がありますから,それを促すという方向もあって,申立ての範囲も許可する権限者はだれかといったら,管理権喪失規定がある限りは家庭裁判所の許可等ではなくて,親の同意等を挟まないと整合性が多分なくなってくるだろうと。そちらとの兼ね合いで考えなければいけないというのがある反面,身上監護,性的虐待を18歳,19歳になっても受け続けているという問題は,データ上は出てこないのですけれども,非常に少数ながら深刻な問題を持っており,こちらの解放が必要だということになってくると,今度は本人に申立権を付与しても,本人が申し立てられないこと自体が問題なので,どういう端緒でどういう手続になっていくか,親の関与というのは認めてはいけない場合になるので,家庭裁判所の許可など全然違う要件と申立権も含めて,考えなくてはいけない問題なのだろうなと考えております。   それから,7の婚姻適齢なのですけれども,日弁連内では18歳で統一すべきであるという議論が前々の決議から出されておりまして,ただ,前回も水野委員からお話があったように,結婚というのが大きなモーメントになってくるということもあり得るし,それは女性にとっても男性にとっても同じであろうというのがあるので,一定の要件を踏まえれば婚姻を許可できるような体制を,原則は18歳以上で統一して,例外的に裁判所の許可等で,ただ,許可といっても監督するわけではなくて,何が大事なのかといったら,妊娠したとか,そういう問題でしょうから,若年者にとって必要なのはやはり妊娠したとき,どうやって子育てをしていけばいいのかという手掛かりがないから児童虐待につながっていくという問題が多いわけですから,18歳以下で子どもをつくりながら支援が受けられない状態が最も問題だろうと思うので,許可というチャンスにどういう支援を付けられるかという発想で,婚姻適齢の問題は考えるべきだろうというのが一応日弁連内の意見でありました。 ○脇村関係官 大村委員にお伺いします。平田幹事から濫用事例について親権解放はどうかというお話が今あったかと思うのですが,親権濫用事例については親権に服していること自体が問題ではなくて,親権を行使することは適切ではないということから,だれに親権を託すべきかというのが議論の中心になると思うのですけれども,親権の解放というのは正に親権からの解放が問題になりまして,だれが親権を行使するかという問題ではなくて,親権に服するかどうかというのが問題になると思うのです。それで先ほど先生から親権制御は副次的な問題ではないかとおっしゃっていたのは,そういったこととも絡むということになるのでしょうか。 ○大村委員 ここは親権解放という見出しになっており,自治産という制度を主体的にお話をしておりますけれども,婚姻能力との関係で財産管理ということを念頭に置いてお話をしているからです。それとの関連で申しますと,先ほど平田幹事から管理権について親権者が辞任すればいいではないかという話がありましたけれども,現行法のもとでは辞任して受け皿がなければならないということなので,それでは問題の解決には多分ならないのではないかなと思います。   あと,もう一つの御質問の点ですが,虐待事例については財産管理権がどうとかということではなくて,虐待をする人が親権を持っているということ自体が問題なので,その親権をどうするか。しかも,それは解放すれば済むということではなくて,平田幹事もおっしゃったところですけれども,その後をどうするのかということとセットで考えなければいけないと思いますので,問題の性質というのはかなり異なっているということはそうだろうと思います。ここで考えるべき事柄というのは,私はむしろ前者の財産管理のほうの問題なのかなと思っているということです。 ○始関委員 私も大村委員と全く同じように感じておりました。先ほど平田幹事が挙げられた事例というのは正に親権喪失の典型例で,親権喪失という制度があるのに,さらに別のことを考えなければいけないのかと思います。この親権喪失で賄えるという先ほど事務当局の説明で,そのとおりなのではないかなと平田幹事のお話を聞いていて改めてそう思ったのですけれども,どうでしょうか。 ○鎌田部会長 恐らく正に親権喪失の問題なのですけれども,現在の親権者の親権を喪失させた後に,ほかの後見人を付ける必要があるのか,一人でやっていけるという人には一人でやっていかせてもいいのかというところで,親権解放的なものとの絡みが出てくるけれども,親が子どもの成長に応じて財産管理権を与えていくというのとは全く別系統の発想になりますから,似ているけれども,全然違う制度として構想した方が良いということですね。それで大村委員の御提案は,専ら要するに親対子の関係で処理できるものを当面考えていこうということだろうと思います。 ○大村委員 今,部会長がおっしゃったように当面ということで,現在の状況で考えたときにこれが一つ考えられるのではないかということです。これがベストだという気はございませんし,成年年齢を引き下げるとこの部会で決断がされるのならば,それはそれで結構なのではないかと思います。 ○鎌田部会長 段階的成年制度というのも比較的似た発想で,同時に成年年齢に達した後のケアも含めた発想として,もともと大村委員の御提案の中にあるわけで,関連して御説明をいただければと思います。 ○大村委員 段階的成年制度という見出しになっておりますけれども,私はこの部会の最初のほうで発言の機会を与えていただきましたが,成年年齢というのはやはり一つのところで区切ったほうがいいと思っています。しかし,成年以前であっても相対的に自治自立の程度を高いところに設定することがあってよいのではないか。それから成年年齢に達した後でも,ある種の保護が必要な場合があるのではないかということを申し上げました。これはもともと試みの議論として書いたもので,現実の立法をするときにそれがベストだという趣旨ではないということをそのときにも申し上げました。   この部会でも言及していただきましたが,成年年齢は確かに切れ目ではありますけれども,その前と後というのを連続的に見るという視点が必要ではないかということを申し上げるという点に主眼がありまして,これを現時点での立法論としてそのまま主張するというつもりは必ずしもございません。繰り返しになりますけれども,今までの御議論との関係でいうと,何か手を打つということであるとすると,4の括弧付きの親権解放制度の線で何か考えたらよいのではないかと思っております。   付言しますと,5の段階的成年制度は,私が考えていたものとは中身が異なりますが,資料に書かれている内容は,一つの考えられる選択肢だろうと思います。ですから,現在の状況で成年年齢の引下げというのは時期尚早だろうという前提に立ったときには,4や5を考える余地はないかということは,なお少し御検討いただけるとよいかというのが個人的な意見です。 ○鎌田部会長 この4番,5番についての御意見はございますでしょうか。   水野委員,どうぞ。 ○水野委員 どちらも非常に精緻な議論だと思います。ただ,私自身は先ほどの質問,つまり年齢を下げると自立化するのかという質問に戻りますと,私は一定の意味で年齢を下げると自立化すると思っております。つまり観念の持つ力というのはとても大きくて,昔から元服すると一人前になるとか,あるいは歌舞伎で襲名すると芸が広くなるとか申しますけれども,人間の持つ観念の力というのは非常に大きくて,その観念の力というのはできれば一つになったほうが選挙権も,それからほかのすべてのところでも,ここで僕は大人になったのだという,そのことの持つ力というのはすごく大きいと思います。   ですから,精緻な議論ではありますし,先ほど氷海委員からありましたように,まず18歳で選挙権で19歳でその次にというようなのは,実際の現実には適合的なのかもしれませんし,更に選択肢を広げて社会の対応を見るという意味でもあるのかもしれないのですが,一番の欠点は観念の力を一挙に弱めてしまうということだと思います。   私自身は,ほかのところの保護もいっぱい必要なのですけれども,そこの保護がなかなか進まない状態で,この観念の力を利用することによって,彼ら自身が自己主張していけるような社会を,もちろん,そういう要求をしていくというほうが必要な保護というものに対して,社会に求めていく力を持つような気がいたします。そういう意味では宮本委員と少し発想が同じなのかもしれませんけれども,一挙に踏み切る,あるいは準備段階として一定の年限を区切るということはあってもいいかもしれませんが,一挙に踏み切って観念の力を使って18歳の若者たちに自己主張してもらうというほうがいいように思います。 ○始関委員 4や5は先ほど大村委員がおっしゃられたように,今,20歳から引き下げるということができないとした場合の過渡期的な策として提示されているわけなのですけれども,今,引き下げることには非常に慎重であるべきだと言われた今田委員や出澤委員あるいは木村委員は,この4や5についてはどんな御感触でしょうか。 ○鎌田部会長 では,出澤委員。 ○出澤委員 これについては特に日弁連で検討しているというわけではないですけれども,私個人の意見としましては賛成でございます。というのは,やはり成年年齢を引き下げることの問題点というのは,いろいろな現状では弱い子どもたちに被害が及ぶであろうというような観点でございますので,決して若者みんな社会に参加する機会を早めてはいけないということは全く考えていないわけでございまして,そういう意味では適切な能力を持った人はもちろんいるわけであります。そういう方が一定の要件のもとに社会に参加できるということは好ましいことだと思います。ただ,要件として一回親権を解放した後,何かまた問題があったらどうなるかとか,いろいろな立法技術上の問題はあると思いますが,基本的な考え方としては賛成でございます。 ○鎌田部会長 今田委員,御意見はございますでしょうか。 ○今田委員 親権について18歳か20歳かという議論の場合に,効果について両面あると思っていました。というのは,虐待されているという側面からいうと,親権から解放されるという面で20歳よりか18歳に下がるほうがプラスの効果を持つ。だけれども,親権というのは,藤田参考人が随分詳しく議論されたように,やはり親が子どもを扶養する,簡単に言えばそういう義務と権利を負わされている親子の関係からいうと,18歳に下げるということは早く自立しなさいということになる。   それは比較的恵まれた人たちはいいのだけれども,恵まれていない家庭環境の劣悪な子どもたちにとっては,あなたはもう成人なんだからということで,解放されるというのか,親の義務が放棄された状態になる。比較的恵まれた家庭では,いつまでも親から子どもへの扶養があるという意味で,格差を生み出すという面がある。親権に服する年齢を20歳に下げるかどうかは両面持っていて,どちらかというわけにはいかないなと考えていました。だから,現状の20歳のままだったら,やはりマイナスの面をできるだけ何か制度的にケアするような新制度を考えるべきだと思っていました。   そういう意味で,こういう提案がされているということは,私は法律家ではないので,詳しい細かな効果についてとかいうようなことは議論できませんが,何らかのそういう親権解放についてのマイナスの効果を除去するような制度の創設ということを,是非お願いしたいと思います。 ○鎌田部会長 木村委員,何かございますか。 ○木村委員 基本的に,親権解放制度,また段階的成年制度,すなわち段階的に権利を与えるということは,あり得るのではないかと思っています。特に,親権解放制度については,十分あり得るのではないかと考えます。ただし,極めてつまらない話ですが,段階的成年制度は,一般の人から見ますと,成年年齢が二つも三つも出て来たような感じで,成人式を何度もやるのかといったように,なじみにくい面もあるのではないかと思います。成年制度という名称の問題なのかも知れませんが。ただ,段階的に権利を与えていくということについては,あり得るのではという感じがします。 ○鎌田部会長 養親年齢に関してはいかがでございましょうか。前回はほとんど御意見がなかったところでございますが,成年年齢を仮に引き下げた場合に連動させるのか,やはり養親は別でしょうという考え方になるのか,あるいは現状よりも更に引き上げるべきだという考え方もあり得ると思いますけれども,この点について御意見があればお出しいただければと思います。変更する必然性が見いだ せないということになると,現状のままとなるのかもしれませんし,あるいは仮に成年年齢を引き下げるとしたら,できるだけ単純明快な制度がいいというふうに考えると,連動して養親年齢も引き下がるということにもなろうかと思いますが,御意見があればお伺いしたいと思います。   それでは,水野委員,お願いいたします。 ○水野委員 結論だけでございます。養子をとるというのは生半可なことではありませんので,私は観念は一つにまとめたほうがと言いましたが,これは別だと思います。 ○鎌田部会長 むしろ現状のままとお考えでしょうか。 ○水野委員 そのように考えます。 ○鎌田部会長 分かりました。   ほかにはいかがでしょうか。   先ほど来の成年年齢引下げの議論からいっても,養親年齢まで引き下げなければいけないということは,余り必然的には出てきませんですね。   婚姻適齢はいろいろと難しい議論もあるところでございますけれども,先ほど日弁連は18歳に男女ともそろえ,一定の要件のもとで16歳まで女性については下げてもいいという意見だとお伺いいたしましたけれども,そういう理解でよろしゅうございますか。 ○出澤委員 そもそも法制審の平成8年2月26日の総会で,民法の一部を改正する法律案要綱が決定されており,そこでは婚姻は満18歳にならなければこれをすることができないものとするとなっておりますが,そういう意味では再度,ここで議論するのは,どういう意味合いなのでしょうか。 ○佐藤幹事 御指摘のとおり,既に法制審議会の総会において,18歳という答申を出したという経緯はございます。しかし,第1回の検討事項にも書きましたが,現段階でまだ変わっておりませんので,仮に成年年齢を下げた場合に,男性は成年者でなければ婚姻できず,女性の場合は未成年者でも親の同意があれば婚姻できるというところで差が出てきますので,それがよろしいのかどうかという点について,皆さんの御意見を伺えればということで,俎上に上げたということでございます。 ○山本委員 平田幹事の意見に基本的には賛成です。ただ,疑問なのは18歳に満たない女子が妊娠したなどの特別の事情がある場合については婚姻できるということなのですが,その場合,父親が17歳だったら認められることになるのでしょうか。 ○出澤委員 日弁連のほうはあくまで男女平等と考えております。女性が16歳で,男性が18歳というのは,女性としては男性の稼ぎによって生活すると。つまり,16歳ではそれだけの独立した生活能力というのはなかなか認めにくいということで,女性の年齢が下がっているというのは,男性の稼ぎによって家庭に入るという考え方でございまして,これはやはり男女の平等には反するだろうという考え方を持っております。   ただ,男女が平等であればよろしいわけでして,そして,参考資料7などを見ますと,16歳,17歳の女子の出産が非常に多いのですね。合計すれば年間3,000以上あります。そういう状況で,こういう子どもたちが嫡出子になる機会を奪われていいのだろうかという問題も片やございます。   そういうことを考えますと,男女平等ということでございますので,男女を問わず16歳にそろえるとして,16歳から18歳までは例えば家裁の許可によって婚姻することができるという形で,個々の生活力,それから女性としてだまされていないかなど,いろいろな要素を家裁のほうで調べて,その上で許可するという制度も考えられるのではないかと思います。 ○大村委員 私は一般論として男子18歳,女子18歳にするという平成8年の要綱には賛成です。もっとも,今回,成年年齢との関係でこの点を改めるかどうかを考える場合には,成年年齢を18歳に下げるのならば,この機会にこれを処理する必要があるのではないかと思います。男子については,未成年の間の婚姻というのはなくなり,父母の婚姻同意権はないけれども,女子についてはそれが存在するという状況は,未成年者については父母の同意権があって,ただ,婚姻適齢が18歳,16歳となっているという現在の状況よりも男女の格差が広がるように思いますので,そこは手当てする必要があるのではないかと思います。しかし,成年年齢を引き下げないということであれば,一般論として18歳にそろえたほうがよろしいというだけのことになるのかと思います。 ○鎌田部会長 その他という項目については,中身は何も用意してございませんけれども,この機会に今までの議論した部分について,あるいは議論のテーマに上がっていないけれども,この点も考慮したほうがいいだろうというようなことがございましたら,御意見をいただければと思います。 ○仲委員 権利としては例えば投票できるとか,結婚もしようと思えばできるということがあるわけですけれども,義務としてどういうことをしなくてはいけないのかというのを少し教えていただければと思います。例えば納税の義務とかはどうなるのでしょうか。 ○神吉関係官 税金につきましては一個人,担税力に注目して恐らくかけておりますので,所得税につきましては若い15歳とか10歳ぐらいのタレントとかいるようでしたら,所得税は恐らくその人にかかってくるという形でございます。基本的には成年か未成年かということで,若干相続税の関係で例外があるようなのですけれども,基本的には差異はないということでよろしいかと思います。 ○仲委員 国民年金の保険料はいかがでしょうか。 ○神吉関係官 国民年金の保険料につきましても,現在,20歳からということになっているようでございますが,そこは成年と恐らくリンクしない形で,20歳からという形で書かれていると思います。 ○仲委員 それが18歳からになるのでしょうか。 ○神吉関係官 そこにつきましては,国民年金法を所管しておりませんので,何とも申し上げられません。40年という何か期間があるようでございますので,42年に延ばすと若干社会的批判もあると思いますので,恐らくは厚労省のほうで議論されるのだと思います。 ○鎌田部会長 ほかによろしゅうございますか。   それでは,検討すべき論点に関する委員,幹事の方々の御意見を一通りお伺いすることができましたので,本日の審議はこの程度にしたいと思います。   これまでの審議結果を踏まえますと,成年年齢の引下げについて,直ちに引き下げるということについては慎重な御意見が相対的に多かったかと思います。一定の条件整備と組み合わせることで,将来的に考えていくべきだというものと,もう少し慎重にという御意見がそれぞれ拮抗した状態であったかと思います。次回までになかなかまとめるのが大変苦しい状態ではありますけれども,御意見を整理して本年中には中間取りまとめをし,それをパブリックコメントに付すということにしたいと思いますので,次回の部会におきまして,今日までに頂だいいたしました御意見を踏まえて,報告書の素案を事務当局にまとめていただき,それをもとに議論を行いたいと考えておりますが,よろしゅうございましょうか。   取りまとめをする事務当局も大変難しい状況にあると思いますので,場合によってはまた委員,幹事の皆様方に補足的に御意見や,あるいは本日頂だいした意見の詳細を重ねてお伺いするというようなことがあるかもしれませんけれども,その場合には御協力のほどをよろしくお願いいたします。   では,最後に事務当局に次回の議事日程等について説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 次回の議事日程について御連絡いたします。   次回の日程は,日時平成20年11月18日火曜日午後1時30分から,場所は本日と同じ法務省の第1会議室で行う予定でございます。審議内容は本日と同様,これまでの結果等を踏まえて,委員・幹事相互間で成年年齢の引下げについて御審議いただきたく存じます。次回も一応会議時間といたしましては,午後4時30分までということで御連絡を差し上げているところですが,次回が中間取りまとめに向けた実質的に最後の審議となりますことから,本日と同様,議論の状況次第では大幅に延長する可能性もございますので,お含みおきいただきたく存じます。 ○鎌田部会長 それでは,法制審議会民法成年年齢部会第9回会議を閉会にさせていただきます。   本日は大変長時間にわたりまして,熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。 -了-