法制審議会民法成年年齢部会 第10回会議 議事録 第1 日 時  平成20年11月18日(火) 自 午後1時30分                        至 午後4時57分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民法の成年年齢の引下げの当否について 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ○鎌田部会長 予定した時刻がまいりましたので,法制審議会民法成年年齢部会の第10回会議を開催いたします。   それでは,まず事務当局から配布されている資料について説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 それでは,事務当局から配布させていただきました資料について御説明させていただきます。   第10回会議のために配布させていただきました資料の目録は,本日席上に御用意させていただきました資料目録のとおりでございます。部会資料といたしましては,事前に送付させていただきました資料番号37のみでございまして,参考資料といたしましては事前に配布させていただきました資料番号20と21,それに加えまして本日席上に配布させていただいております資料番号22と23がございます。   まず,部会資料について御説明いたします。   部会資料37は,事務当局が作成しました「民法の成年年齢の引下げについての中間報告書(第1次案)」と題する資料でございます。その内容につきましては既に御覧いただいていると存じますが,後ほど各論点ごとに順次御説明させていただきます。   次に,参考資料について御説明させていただきます。   参考資料20は,日本弁護士連合会から法制審議会に提出されました民法の成年年齢引下げの是非についての意見書でございます。この意見書につきましては,私の説明の後に出澤委員から御説明いただく予定でございます。   参考資料21は,総務省統計局が作成しました平成17年国勢調査・第3次基本集計・報告書掲載表第25表の抜粋でございます。前回の部会におきまして事務当局から18歳,19歳の若者のうち,契約を1人でする必要が高いと考えられる働いていて,かつ親と同居していない者の比率は約6.7パーセントであると御説明いたしましたところ,大村委員から具体的にどの程度の人数がいるのかのお尋ねがあり,正確にお答えできませんでしたので,参考資料21はこれを明らかにする資料でございます。   資料を御覧いただきたいと思いますが,資料の1枚目の左側の列に年齢の記載がございます。この18歳,19歳のところを見ていただきますと,18歳の総人口が135万7,096人,19歳の総人口が139万572人ということですので,合計いたしますと18歳,19歳の総人口は274万7,668人ということになります。   次に1枚めくっていただきまして,2枚目の左側の列を見ていただきますと,半分よりやや上の部分に就業者についての統計がございまして,その18歳の欄を見ていただきますと,その行の右に二つ目の列が親と同居していない者の人数となりまして,18歳につきましては5万5,422人ということになります。その下の19歳の親と同居していない者の人数は,12万8,094人ということになりまして,合計で18万3,516人となります。したがいまして,18歳,19歳で就業しているが,親と同居していない者は18万3,516人であり,18歳,19歳の総人口である274万7,668人の約6.7パーセントということになります。   続きまして,参考資料の22と23は,いずれも宮本委員からちょうだいいたしました資料でございます。参考資料22は「若者の自立支援とキャリア教育」と題する資料でございまして,参考資料23は「スウェーデンの若者政策」と題する資料でございます。   以上で配布いたしました資料についての御説明を終了いたします。 ○鎌田部会長 ただ今,事務当局から参考資料20の日本弁護士連合会から出されました意見書について説明がありましたが,出澤委員から補足して説明があるようですのでお願いいたします。 ○出澤委員 参考資料20を御覧ください。   参考資料20は,日本弁護士連合会が2008年10月21日付けで「民法の成年年齢引下げの是非についての意見書」として提出させていただきました。この意見書は日弁連の関連委員会及び各弁護士会に意見照会をした上で大勢の意見を集約したものです。   結論としましては,現時点での引下げには慎重であるべきであるということでございます。理由としましては,参考資料20の1ページに要約されていますが,まず,1として,消費者被害の拡大が予測されること。2として,少年法等の他法への現実的な影響が無視できないこと。3として,国民的なコンセンサスが成り立っていないこと。4として,条件の未整備等ということでございます。   もちろん年齢引下げによって意見表明権,自己決定権,これを早期に実現して自立可能な大人としての社会的処遇を受けることは本人の利益にもなるものですので,引下げの意義を否定するものではありません。そこのところは2ページに記載されているところでございます。このような賛成の意見も踏まえた上で,なおこの結論をとらせていただいておりますので,その理由を簡単に説明させていただきたいと思います。   まず,3ページの2のところですが,消費者被害の拡大が予想され,これに対する適切・有効な対策が見いだせないということです。判断力の弱い若年層を狙った悪質商法は後を絶ちません。資料の4ページから6ページにかけて述べておりますが,消費者教育,若年成年者保護の法制度の充実については検討をしたのですが,これだけでは対応できない,不十分であると考えました。   現在の未成年者取消権に代わる実効性のある若年層の保護の制度は見当たらないということ,そういう適切な有効な手段が考えられないということでございます。   次に,6ページの3のところですが,民法の成年年齢引下げによる他法への影響を無視できないということです。諮問の対象はあくまでも民法ですが,民法で大人ということになりますと,通常の社会生活において大人としてとらえられるということになるわけです。そうしますと他の法律においても保護という観点が薄れてくるということは現実の問題として出てくるであろうということでございます。   そもそも,国民投票法,選挙の投票年齢と民法の成年年齢が一致しなければならないという理論的根拠,それから実際上の必要性も特段ないのではないかと考えております。   次に7ページの4のところですが,十分な国民的議論を踏まえた上で慎重に検討・判断すべきことということでございます。世論調査では契約年齢の引下げの反対が約8割,親権の引下げ反対が約7割です。それから,内閣に設置された青少年育成推進本部が平成15年2月に青少年育成施策大綱を公表しております。ここでは,30歳未満の者を青少年ということで対象としていますが,その社会的自立が遅れているのではないかという認識が示されています。   このように政府,それから世論を見ましても,若年層の保護をより充実させるという方向では考えているわけですが,現時点で引き下げる根拠が見いだせないのではないかと思います。   以上のとおり,簡単に御説明させていただいたわけでございますが,現時点での引下げは慎重ということでございます。ただ,将来の引下げについて現時点で否定するわけではもちろんございません。9ページの5に引下げに必要な条件ないし準備を掲載しております。まず,消費者被害の拡大を防ぐために,高校生までの課程で十分な法教育及び消費者教育を実施すること,それから,若年成年者保護のための法制度を整備することが必要と考えております。   それから少年法の対応というものも繰り返しになりますが,民法の成年とリンクした部分も結構ございまして,影響は免れないだろうと思われます。社会生活上,大人になるということは刑事手続上の保護を後退させることにつながるおそれが大きいのではないかと思われますので,対象年齢層に一定の保護が必要であると考えております。成年年齢の引下げによる少年法に与える具体的弊害は9ページから12ページに詳しく論じているところです。   かいつまんでいくつかの点を申し上げますと,少年法は対象者の保護を基本としております。そこで例えば大人であれば執行猶予になったり,また実刑で刑務所に入るというような場合につきましても,少年の場合は少年院に入所させて教育的観点から更生を図るということがございます。大人であれば初犯で執行猶予ということで社会に出て自立して更生を図るという場合においても,やはり年少者にはそれ以上に少年院に入所させて,そこで更生を図るほうが適切な場合も多々あるのではないかと考えられます。それからもう一つ例を挙げますと,虞犯少年,犯罪を犯すおそれのある少年ということで,大人の場合はおそれがあるからといって事前に補導なり保安処分なりをするわけにはいかないわけです。ところが,子どもの場合は保護という観点から一定の犯罪を犯すおそれのある少年についてまで審判が開始できる,保護処分ができるという形になっております。   その虞犯少年の要件ですが,これは選択的ではありますが,例えば保護者の正当な監督に服しない性癖のある子となっております。そうしますと保護者というのはあくまでも被保護者がいて存在する概念ですので,大人になったら被保護者でなくなるでしょうということで,ここのあたりは直接的に民法の親権の概念と絡んでくるのではないかと思われます。   それから,正当な理由がなく家庭に寄りつかない子ども,大人であれば正当な理由なく寄りつかないというも自己責任でございますけれども,子どもの場合はそれが犯罪に結び付くおそれがあるということで,こういう場合においても補導して保護処分の対象になるという法の仕組みになっております。やはりここにも民法の成年年齢の直接的な影響が出てくることも考えられます。   次に12ページの(3)に移らせていただきます。子が20歳に達するまでの親の養育費負担の義務化と若年成年者が社会的自立を果たすために必要な法制度あるいは法運用を整備することが必要ということでございます。現実の社会では社会の変化によって若者の自立が遅れているということは先に引用した青少年育成施策大綱でも述べられているところで,そのギャップを解消する施策として福祉,教育制度の充実,それから20歳までの養育費の義務化といったものは必要不可欠ではないかと考えます。   最後に14ページになりますが,付論として,直接民法の成年年齢の議論と関係してくるものではないかもしれませんが,関連性のあるものということでこの機会にこの大きく二つの点を申し上げたいと思います。   一つは,親権者による親権の不適切な行使から子どもを救うための法改正についてです。部会では,親権解放の制度が議論されておりますけれども,親から強制的にその親権を剥奪する制度は今もあるのですが,親権を一時停止をするような制度等,もう少し柔軟な運用ができるような制度を設けるべきではないかという提言をさせていただいております。   それから,もう一つは,婚姻年齢の男女差別撤廃を早急に行うべきではないかという提言をさせていただいております。   以上でございます。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   これからの時間は,前回に引き続きまして,成年年齢の引下げに関しまして部会資料37の中間報告書(第1次案)に基づき委員,幹事相互間で御議論をいただきたいと思います。 まず,中間報告書(案)の概要について事務当局に説明してもらいます。 ○佐藤幹事 事務当局から中間報告書第1次案の構成について御説明いたします。この報告書(案)は,これまでの御審議の結果をできる限り正確に整理して記載しようとしたものでございます。その記載内容につきましては,既に皆様にお読みいただいていると存じますが,この報告書(案)におきましては,第1として,検討の経緯等について説明をした上で,第2としまして,仮に民法の成年年齢を引き下げることにした場合にどのような影響が生じるのか,また,それに伴い生じる問題に対してはどのような政策を講じるべきかについての検討結果を説明しております。そして,第3において,民法の成年年齢の引下げの当否等について,第4において,仮に成年年齢を引き下げることにした場合の年齢,第5で養子をとることができる年齢,第6で婚姻適齢について論じております。   この報告書(案)では,成年年齢の引下げの当否について一定の方向性を打ち出してはおりませんが,これまでの審議の状況に照らすと賛否両論であり,いずれかの見解が大勢を占めているような状況ではないと思われますので,第3以下で意見の対立がある論点につきましてはこれまでの審議の中で出された意見を両論併記するという形で作成しております。   もちろん本日の御審議の結果,部会として意見をまとめることができる論点があれば,それを反映させたいと考えておりますので,闊達な御議論をお願いいたしたく存じます。なお,報告書(案)には本日特に御議論いただきたい点を,ブラケットで要議論という形で記載させていただきました。本日が中間報告書を作成するまで実質的に御議論をお願いすることができる最後の機会ですので,十分に御議論いただきたく存じます。 ○鎌田部会長 ただ今説明がありましたとおり,本日はこの報告書(案)をたたき台として御議論をいただきたいと思いますが,次回に中間報告書を取りまとめる予定ですので,本日中間報告書全体について効率的に議論をするためにも,これまで十分に議論が尽くされていない論点や意見の対立がある論点を中心に御議論をお願いしたいと考えています。   まず,報告書(案)中にブラケットで【要議論】としている箇所を御議論いただきたいと思います。まずは報告書18ページ,第3の6から議論を行いたいと思いますが,その前提となりますのが7ページ,第2の4のどのような施策を行うべきかということでございますので,第2の4から御意見を伺います。初めに事務当局から説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 報告書の7ページを御覧いただきたいと思います。報告書の第2で記載してありますように,成年年齢を引き下げることにすると,若年者の消費者被害が拡大したり,ニート,フリーターなど自立に困難を抱える若年者がますます困窮化するおそれがあるという懸念が示されており,このような懸念を払拭するため若年者の消費者被害が拡大しないような施策の充実,若年者の自立を援助するための施策の充実を図る必要があるものと考えられます。   具体的な施策の中身につきましては,これまで部会で出された意見を中心に報告書の第2の4に記載してあるとおりでございますが,そのほかにも付け加えるべき施策があれば御提言をお願いしたいと思います。   なお,報告書(案)には記載しておりませんが,部会におけるヒアリングではニート等,通常のレールに乗れなかった若者に対して周囲が寛容になることなど,世間や親の意識改革を行うべきである,また,児童福祉施設の充実や子育てを社会が支え合って行うという仕組みを充実すべきであるという指摘もございました。   しかしながら,前回の部会において抽象的な条件をたくさん設けすぎると結局は成年年齢を引き下げないことにすることと等しいという御意見もございました。また,成年年齢の引下げをするために必要となる施策としては,やや間接的なもののように思われますので,この報告書(案)では掲げないことにしました。この点につきまして特段の御意見等がございましたら,併せてお伺いできればと存じます。 ○鎌田部会長 それでは今の説明に関連しまして御意見があればお伺いしたいと思います。   宮本委員,お願いいたします。 ○宮本委員 まず,消費者被害の件につきましては,先ほどの日弁連の意見書と直接かかわっていると思いますので,まず日弁連と申しますか,出澤委員から御説明いただくと議論が明確になるかと思います。   日弁連の意見書を拝見させていただいてよく整理されていると思いました。ただ,何点かいろいろな意味で疑問あるいは質問をさせていただきたいことがありました。その中の一つが消費者問題に関してです。日本の場合には,18歳に引き下げると消費者被害がその年齢層で拡大するおそれがあるということを強調しておられるわけですけれども,多くの国々で既に18歳に引き下げているわけです。その引下げをしている国と日本とを比べた場合には,若年者の消費者被害を防止するための取組がもちろん不十分であるということは議論してきたわけですけれども,いろいろな国を見渡したときに学校教育の消費者教育が極めて充実している国があるとも思えないわけです。しかし,それにもかかわらず多くの国は18歳となっている。それにもかかわらず,あえて日本が18歳に引き下げることに,消費者被害拡大の非常に大きな懸念があるとまで言われるのはなぜなのかということが十分説明できないと思われます。もし,このことについて更に日弁連として意見を出されるのであれば,他の国では18歳に引き下げたときに,危惧されるその年齢層を保護するためにどういうことが法的にあるのかということをもう少し調査されれば,専門の団体でありますので分かるはずで,それが分かれば日本でも,それを直ちに手当てすることも可能ではないかと思います。 ○出澤委員 宮本委員の御質問として,他国との比較というのがございますが,他国とはやはり法制度のみならず,社会制度の違いというものもかなり大きいのではないかと思います。そこで,ほかの国でそういう被害が起こらないのはなぜかということを調べることによって何らかのヒントが出てくることはあるとは思いますけれども,日本の場合はどうなのかということが重要だと思います。日本の場合,例えば振り込め詐欺が多いのですが,こういったことが英米で起こっているとはあまり耳にしません。   ですから,他国と比べることにはあまり意味がなくて,現実問題として成年年齢を18歳まで引き下げることによってどのような被害が生じ得るだろうということで現実の今の日本の社会の被害実態を考えるべきというのが我々の立場でございます。   そうしますと,国民生活センターの参考人の方から御紹介がありましたように20歳からボンと相談件数が増えている。それから,この審議会でも,参考人として,いろいろな若年者の消費者被害の実態を把握している鎌田弁護士,それから髙橋弁護士からヒアリングを行いましたが,やはり被害者は20歳になってから,すなわち成人してからが極めて多いということでございます。   そして,それはなぜかというと,悪質事業者としては取消しだと言われる,これが自らの目的を実現するには非常に大きな阻害原因となっているということがあるのではないかと考えております。例えば,20歳になった途端に電話が来るという報告もありました。また,悪質な事業者もそれで仕事をしているわけですから書面をきちんととるとか,ここにサインするんだよということで若年成年者がそこに簡単によく見ないでサインをしてしまうとか,そういう形で書面をとる,形を作るということを非常にうまくやっておりますが,我々弁護士が被害を救済しようという場合には,未成年者ということだけで取り消せる。だましたんだということであれば,事業者がだましたという立証をしないといけないということで立証の手間についても未成年者に大変有利にできている制度である。それらを考えますと,やはり18歳,19歳は思慮が足りないということは社会的な認識になっておりますので,大人と同じような契約の在り方ということになりますと,それだけ被害が大きくなるであろうということは現実の問題としてなるのではないかと認識しております。 ○宮本委員 そうしますと,20歳でボンと増える。そうすると,成年年齢を19歳に引き下げれば19歳でボンと増える,18歳に引き下げれば18歳から増えるという論理かと思います。20歳なら増えても致し方ないけれども,18歳だと思慮分別がない。1歳,2歳ぐらいのその年齢で思慮分別が20歳からなら妥当であり,18歳,19歳だとそれが著しく欠けるから保護だという,その根拠を考えてみると,それほど明確に科学的に証明できる話ではないように思われます。   更に考えますと,今18歳以上を議論していて,消費者被害ということでやっていますが,最近の情報化に伴う青少年に対するいろいろな影響というのは18歳,19歳ではなくて小学校,中学校の子どもがインターネット等でどんどん情報化による被害を受けています。そこからどうやって防衛するかという議論が行われているので,そういうことから考えると,情報化とか消費者問題というのは18歳以上ではなくて,もっと低年齢化しているということから考えると,成年年齢にこだわらずそれぞれの危険性に対してどうすれば防衛できるかという検討が可能ではないかという感じもいたします。そのあたりはいかがでございましょうか。 ○出澤委員 20歳と18歳がどれだけ精神的成熟度において異なるかというのは,私はよく分かりません。ただし,今20歳である成年年齢を上げるのだったら,いくつにしようかという話ですと,それはその年齢の成熟度,被害の状況を調査した上でいくつが妥当ですという形での議論になると思いますけれども,今20歳であるものを下げようかどうかという議論については,20歳と18歳がそれほど変わらないのではないかといってもあまり意味がない。要は2年間被害がさかのぼってしまうということしか私は申し上げることはできません。   それから,情報化の影響の点については正におっしゃるとおりで,国民生活センターのほうでもインターネット詐欺の問題については年齢を問わず送信されてくるというところで未成年者の相談件数が大幅に増えたということ,これは御紹介にあったところで,そこはそこでまた対応すべきであるということは事実だとは思います。ただ,20歳が18歳になって消費者問題としてそれほど変わらないではないかということについては,2年間分の被害が増えるのではないかというふうに,単純に増えるかどうかというのはなってみないと分からないことですが,蓋然性としては高いのではないかと考えております。以上でございます。 ○大村委員 今のお二人の委員の御議論に関して,既にこれまでの会議で出たことではありますが2点改めて付け加えさせていただきたいと思います。私は基本的には宮本委員の状況認識に賛成です。現在,20歳,21歳あるいは22歳といった年齢についても消費者被害はございますので,それについては目をつぶり,18歳,19歳だけを考えればいいのかというと,そうではないだろうと思います。   ただ,出澤委員がおっしゃることを私なりに解釈いたしますと,20歳,21歳,22歳というところに被害がある。そのことについて何ら対応しないで18歳に下げるということは18歳,19歳に被害を拡大するということになるのではないかという御趣旨なのだろうと思います。私は18歳,19歳について一定の対応措置をとることが必要だと思いますが,20歳,21歳,22歳といった年齢層についても同様に必要なのではないかという認識を持っております。それが1点です。   もう1点は,どの程度の被害があるのかということについての確認ですが,これは以前に岡田委員が御発言になったと記憶しておりますけれども,確かに若年者の消費者被害は問題としてございます。しかし,高齢者等の消費者被害に比べますと,数の面でも金額の面でもそれはそれほど大きな問題ではない。全体として見た場合には確かに若年層のところに小さな山はございますし,そこが問題であることは確かではございますが,その意義あるいは重要性を過大評価するのはどうかという印象も持っております。 ○鎌田部会長 岡田委員。 ○岡田委員 まず,20代と10代を比較した場合,確かに20歳になると,相談件数が上がるのですが,年代別に見ると相談の一番多いのは30代です。   それはどうしてかというと,やはり20代より30代のほうが収入があるためだろうと思います。ですから,その意味では20代というのは働き始めたり成人になるけれども,収入面でクレジットを組まないと契約ができない。そのクレジットの審査がこれから厳しくなるということを考えると,20代と18歳,19歳のトラブルがそれほど深刻になるということはないのではないかという感じはしております。むしろお金を持っている高齢者に対する被害は,一向に減っておりません。やはり事業者もドンと入ってくるところを狙うという部分では20代を境にうんぬんというのには現場にいる人間も少し違和感を感じております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。   平田幹事,お願いします。 ○平田幹事 参考資料20の日弁連の意見書を補充して説明させていただきたいと思います。基本的には,日弁連の消費者委員会でも20代の被害を放っておいてもいいという趣旨では決してございませんで,基本的には20歳になったから被害があるのですが,数自体は30代,40代が一番多くて,高齢者がその次に多いという図式になっているので,全体の消費者被害はどうするかという発想から規制しなければいけないと思います。国民生活センターでも一昨年でしたか,調査研究事業で不招請勧誘の形で勧誘された場合の取消権を消費者契約法に盛り込むかどうか検討した経緯があり,日弁連の消費者委員会でも不招請勧誘規制で何とかできるかという検討もされたそうです。ただ,どういう形で規制していっても脱法は容易に行えるところでもあるし,そう簡単に実効性のある手段が見いだせないというのがこの結論です。   18歳,19歳が被害にあうという問題は,先ほど出澤委員がおっしゃったような振り込め詐欺みたいな被害が多い状況では,18歳,19歳の人がターゲットにされたときに親を巻き込んだ形での被害が出てくる危険性があるのを,未成年者取消権が抑止力となっているところがあるのではないか。そういう認識で意見書を書いたところだと思います。 ○鎌田部会長 今,消費者被害の問題について議論が集中しておりますけれども,この点に関連してほかに御意見があればお出しいただければと思います。 ○大村委員 私は直前に全体の中で見れば消費者被害が若年者にそれほど多いとも思えないということを申し上げたのですが,消費者被害はあることはあるわけでして,それに目をつぶって年齢だけ下げるというのではなかなか納得を得られないのではないかと思っております。   弁護士の先生方がおっしゃったように,未成年者取消権がこれまで非常に強力な武器であったということも確かではないかと思っています。ですから,これに代わるものを何か手当てすることが条件としては必要だろうと思います。   ただ,未成年者取消権と同じだけのものを考えることができるのかというと,両先生がおっしゃったようになかなか難しいだろうと思います。しかし,考えてみますと未成年者取消権と同じだけのツールが本当に必要なのかという気もいたします。というのは前にも申し上げましたし,今日も御指摘があったところですが,未成年者取消権は理由を問わず年齢要件だけで取消しができるというものであります。ですから,十分な判断力を持っていなかったから契約を取り消したいということではなくて,やはりやめたということで取消しができるという制度であるわけです。これは一種のクーリングオフ権です。   18歳,19歳の人たちにやはりやめたということを言わせる必要があるのか。20歳になったらそれはないと考えるべきなのかというと,私は必ずしもそうではないと思います。しかし,契約の中には締結過程が妥当でない,あるいは内容が妥当でないものがあり,そのターゲットとして若年者は含まれているという事情がありますので,そのような契約について取消権を認めるということであれば,未成年者取消権に実質的に代わるものとして考えることができるのではないかと思います。   以上は一般論ですが,その上で消費者保護の施策の充実として,具体的にどのようなことが考えられるのかをもう少し挙げたほうがいいのではないかというお話だったかと思いますので,その点について少し触れさせていただきたいと思います。   報告書の8ページから9ページにかけまして,この点につき,消費者教育は別にいたしますと,制度の問題としては二つの事柄が記載されております。8ページの下に①といたしまして,若年者の社会的経験の乏しさにつけ込んで取引等が行われないよう,若年者と一定の重要な取引をする場合には,事業者に重い説明義務を課すことということで,説明義務というのが一つ挙がっております。   もう一つ②といたしまして,若年者の社会的経験の乏しさにつけ込んで取引が行われた場合には,契約を取り消すことができるようにするということで,取消権を何か考えようというのが挙がっているかと思います。これらを踏まえつつ,いくつかのことを補足的に申し上げたいと思います。   まず,①の若年者と取引をする場合については特に重い説明義務を課すということですが,これはなかなか難しいところがあるのではないか,慎重な検討を要するのではないかという感じがいたします。若年者に限らずに十分に取引の内容について説明をすべき場合というのがあると思いますが,若年者だけを取り出した形で説明義務の程度を加重する,特に具体的な説明すべきことを定めるというのは少し難しいところがあるという気がしないでもありません。   しかしながら,別の観点から取引の類型によっては若年者,高齢者を引き込んではいけないというタイプのものがあろうかと思います。そういうものについては適合性原則の考え方を及ぼすべきだろうと思います。現在,とられている適合性原則の中で,未成年者は相手にしてはいけないとか,あるいは成年被後見人は相手にしてはいけないということがそれぞれの企業の勧誘方針の中で定められるような方向付けがされているかと思います。   仮に成年年齢を引き下げるということになった場合には,未成年者だけではなくて若年者,特に一定のカテゴリーに属する若年者,例えば定期的な就労をしておらず,一定の収入を得ていない若年者については,適合性原則の観点からこれを考慮に入れるということはあり得ることかと思います。   なお,説明ということについては,事業者に個々の取引内容を未成年者に説明させるということもさることながら,制度が変わって仮に成年年齢を18歳に引き下げるとすると,18歳,19歳は既に成年なのだから十分に気をつけて取引をすべきだということを従来未成年者だった人に分かってもらうということが必要なのではないかと思います。   そのための広報活動を十分にしていただくということが必要だろうと思いますが,その一環として例えば消費者センター等について若年者のための相談窓口を設ける。成年年齢の制度が変わりました,若年者の方は注意してくださいということで相談窓口を設けるということも有益かと思います。制度が普及するまでの間,時間を区切ってそういうものを設けることも考えられるのではないかと思います。   更にもう一つ申し上げますと,現在,特定商取引に関する法律の中には高齢者を相手方とする場合についての規定が法律のレベルでは出てこないのですが,規則等を見ると盛り込まれております。特商法第7条は,「主務大臣は,販売業者又 は役務提供事業者が第三条から第六条までの規定に違反し,又は次に掲げる行為をした場合において,訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益が害されるおそれがあると認めるときは,その販売業者又は役務提供事業者に対し,必要な措置をとるべきことを指示することができる」と規定しており,「指示」という見出しがついております。   そこに1号,2号があって,最後に3号として,「前二号に掲げるもののほか,訪問販売に関する行為であって,訪問販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益を害するおそれがあるものとして経済産業省令で定めるもの」と規定されております。   この特商法第7条第3号を受けまして,施行規則第7条第2号は,「老人その他の者の判断力の不足に乗じ,訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結させること」と規定しております。これは高齢者を相手にしたリフォーム詐欺等に対応した規定だろうと思いますが,「老人その他の者」というところについて,老人だけではなくて若年者というのを加えて,若年者の判断力の不足に乗じて訪問販売に係る契約を締結させるということを規制対象として盛り込んでいくことは考えられるだろうと思います。   このあたりは個別にできるところでやることをやったらいかがかという話でありまして,比較的容易なことなのではないかと思いますが,他方でそれだけでは不十分ではないかという御意見もなお出るところかと思います。   そこで更に立ち入って,先ほどの報告書に戻りますと,②の取消権をどうするかを考える必要もあるのかと思います。取消権につきましては,いくつかの考え方があり得るかと思います。一つは,先ほどございました判断力の不足に乗じて,あるいは判断力の不足を利用して契約を締結したという場合に,この契約の取消しを認めるという一般的な内容の規定を民法ないし消費者契約法に設けるという方向でございます。   この種の規定は消費者契約法の立法のときにも検討の対象となったところです。状況の濫用というような外国の法理が引き合いに出されまして,詐欺あるいは強迫に当たらないけれども当該当事者が置かれている状況を濫用して契約を締結したときには,取消権を認めるべきではないかといった議論がされたところでございます。世界的な立法のすう勢を見ましても,この種の規定を盛り込む立法例が次第に増えているということができるのではないかと思います。   日本の現行法の状況に即して見ましても,このような考え方は全く存在しないわけではございません。民法には公序良俗違反という考え方がございます。他人の置かれている状況,軽率ですとか無経験といった状況に乗じて過大な利得を得た場合にはこれは暴利行為である,公序良俗に違反し無効になるというのが戦前からの一貫した判例の考え方でございます。   ただ,この判例理論では軽率あるいは無経験というのが簡単には認定されない。ですから,これだけでは必ずしも十分な保護にはならないと思いますが,軽率ですとか無経験をもう少し拡大いたしまして,先ほど無思慮という言葉も出ましたが,思慮の不足ですとか経験の不足を利用して利得を得たという場合には,契約の効力が否定されるという制度を盛り込むということが考えられるのではないかと思います。それが一つでございます。   ただ,これは一般的な射程を持つ規定です。ですから,若年者についてだけ適用されるという規定では ございません。様々な状況を勘案して総合的に判断して取消しを認めるというものです。   今のような規定を設けますと,結果として,契約が取り消されるということはあって,若年者が保護されるということもあろうかと思いますが,事前に契約の取消しが可能なのかどうかというのは必ずしもよく分からない。争ってみないと分からないというところがどうしても残ってしまいます。   先ほどの御指摘もございましたけれども,未成年者取消権は年齢の要件さえ満たしていれば取消しができるというところに強みがございますので,それに完全に代替する制度にはなり得ないのではないかと思います。   そこでこれとは別に,年齢を勘案して,年齢要件を満たしていればそれで一定の保護が得られるという制度を考えることはできないだろうかということも考えてみる必要があります。以前に少し申し上げたことがあったかもしれませんけれども,一定の年齢層に属する人々を対象とする例えば若年層でいいますと18歳から20歳,あるいは18歳から25歳,いろいろな線引きが可能かと思います。若年層だけでなくて高齢層も入れるということも考えられるかもしれません。何歳以上という一定の年齢層に属するということを客観的な要件とする。   このように一定の年齢層に属するということを要件とし,かつ当該契約の締結によって見過ごし難い不利益を被っていることをもう一つ要件として加えるということで取消権を設けることが考えられるのではないかと思います。   先ほどの繰り返しですが,取引として客観的に何もおかしいところがないのに後でいやになったということで簡単に取消しを認めるというのは,当事者が成年者であるということと両立し難いところがあるのではないかと思います。そこで,不利益が生じているという要件をかけた上で,年齢との組合せで取消権を認めていくという制度があり得るかと思います。   ただ,このような制度をとりますと,一定の年齢の人,例えば18歳から20歳,あるいは70歳とか75歳以上については適切な内容の契約が締結されていれば相手方は恐れることはないわけですが,それにしても契約が取り消されるのではないかという危惧が生じるだろうと思います。   また繰り返しになりますけれども,成年者であると認めた以上,ある年齢層に属するというだけでこのような取消権を認めるということについて疑義も生ずるところでございます。そこで18歳から20歳までとか,あるいは75歳以上等の年齢に属することを要件とした上で,今のような取消権の付与を望む人についてはそのような取消権を行使し得る地位を認めるという制度も考えられるかもしれないと思います。   一定の手続きをすることによって今のような取消権を持つことができる,それは言わば裁判所によって今のような規定を適用してもらって保護されることができるという地位を認めるということでございます。   今,最後に申し上げました新しい取消権の制度というのは,我々の法制の下ではなじみのないもので,お聞きになった法律家の先生方はそのようなものはあまり聞いたことがないという印象を持たれるかもしれません。類似の立法例があるのですかという御質問が出るかもしれませんが,単に取消権を認めるというのではなくて,一定の損害が生じていることを要件として取消権を認めるという制度は外国に例がございます。   それから,原則としては能力者であるけれども一定の手続きを踏むことによって法的な保護を受ける地位に服するという制度も具体例があります。それを組み合わせて新しい取消権を構想するということが可能なのではないかというのがここまで申し上げたことです。   ほかにもいろいろな対応策はあるかと思いますが,消費者保護のための施策を講ずる必要があるということで,何段階かの施策というのは考えられるのではないかということを申し上げておきます。長くなりましたが以上です。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はいかがでしょうか。   報告書の第2の4は今御議論いただきました消費者被害が拡大しないための施策の充実が一つの柱でございますが,それと並んで若年者の自立を援助するための施策の充実という柱も立てておりますが,こちらにつきましても御意見があればお伺いいたしたいと思います。 ○出澤委員 先ほども御紹介しましたが,政府の青少年育成推進本部が平成15年12月に公表した青少年育成施策大綱の重点課題として,社会的自立の支援ということを述べております。ここで参考になりそうなものですから,御紹介させていただきたいと思います。  「青少年が就業し,親の保護から離れ,公共へ参画し,社会の一員として自立した生活を送ることができるように支援するものとする。若者の就業を支援するため,職業相談及び職業訓練の機会を充実するとともに,インターンシップの充実,実務教育連結型人材育成システムの導入,地域における就労支援のためのワンストップサービスセンターの整備など,教育施策と雇用施策の連携を強化する。また,親からの自立を支援するため,奨学金や若年子育て家庭向け社会保障施策の充実を図る。さらに,人生設計,教育,職業選択,職業訓練,生活保障等に係る包括的な若者の自立支援方策を検討し,推進する。」,また, 「幼児期から社会性を育成するため,創造的な遊びの機会の提供,コミュニケーション能力の育成,ボランティア活動の振興等を行う。特にボランティア活動については,ドイツなどの例も参考にしつつ,多くの青少年が定期的に又は相当程度の期間にわたって活動に参加できるよう必要に応じた法的措置も含めて,振興施策を推進する」。このように述べられております。   5年前に内閣に設置された機関がこのような公表をしている。このとおりなぜできていないのかということが問題ではありますが,ただこの内容としてはやはり非常にいいもの,やるべき施策ではないかということは今現在でも同様だと思いますので,是非こういうところを具体的に実行し,計画を立てて実行していただきたい。そんな思いがいたします。以上です。 ○鎌田部会長 宮本委員,お願いいたします。 ○宮本委員 今の御発言にかかわってですけれども,平成15年の青少年育成施策大綱は平成20年に次の新しい大綱ということで,去年から関係大臣の聞き取り調査があって,今中間までできていて,5年間の中で見ると例えば相談機関,訓練,ワンストップサービス等は特に就労でつまずいている人々に関する方策は5年間の中でかなり作られてきたということは,私はそこに関係しておりますので申し上げることはできるかと思います。   ただ,それはつまずいている人に対する対策としてあることで,その年齢は中心が20代の中ごろから30代に差し掛かっているようなかなり年長でありまして,今のここでの議論のような18歳,20歳,そこでの自立を保障するような対策としてはまだまだ非常に手薄だという問題が残っているかと思われます。   それにかかわりまして意見を申し上げさせていただきますと,これも日弁連の提言で,この提言に関しては中間報告書(案)の中に盛り込まれていないのですが直接かかわると思いますので,これをお借りしたいと思いますが,参考資料20である日弁連の意見書の13ページ(エ)のところですが,民法の成年年齢を引き下げるに当たっては,20歳までの養育費を義務化する法制度を整備することが不可欠であるということで,親の養育責任を20歳まで義務化するという提言をされていて,これはかなり強い提言になっていると思います。私はこれは今日議論すべきことだと思うのですが,この親の責任を何歳にするかということは成年年齢を何歳にするかと直接かかわる非常に重要なものだと思っておりまして,欧米諸国ですと成年年齢は18歳で親の義務は18歳までだと思われますが,実際のところは高学歴化が進んでいるので欧米諸国でも18歳で親の義務が終わらなくなっているという実態はありますが,法的には18歳で終わりになっているのだと思います。   日本の場合には成年年齢は20歳ですので,おそらく親の義務は20歳かと思われるのですが,日本の場合はその問題よりもむしろ社会慣習のほうが大きい問題があって,それは,20歳と18歳ということではなくて,親の責任というのはもっと長くなっている,高等教育の普及に伴って親の責任が慣習的に長くなっているという状態にあるわけです。そういう中で20歳までの養育費義務化を法制度化したときにどうなるかというと,子どもの養育費,とりわけ高等教育の費用負担は20歳までは親の責任にするということを制度化するということで,これは非常に大きな問題ではないかと思います。   つまり今でも大学教育は親がほとんどやっているという日本の問題で,このことのために大学教育を受けたくても受けられない人たちを救済する制度が確立していかないわけです。ですから,私はむしろ親の養育責任は18歳までとして,そこから自立困難な人に対しては社会的な支援の仕組みを整えるべきである。そういう意味で言いましても成年年齢を20歳にするということは自動的に親の責任が20歳になっているという現状ですので,むしろ成年年齢を18歳にして親の責任はそこまでとし,そのかわり18歳までは親の責任は,特に母子家庭の問題などにかんがみて言えば,父親の責任を強化する,これは日本だけでなくどこの国でも非常に大きなテーマだと思います。それを超えてまで親の責任を義務化するということはむしろ問題ではないかという感じがいたします。 ○鎌田部会長 これは日弁連の提言を巡る議論ということになりますけれども,成年年齢の引下げと極めて密接な関連のある課題でもありますので,御意見があればお伺いしたいと思います。 ○出澤委員 社会的な支援の整備,例えば奨学金なりそういう形でのきちんとした整備があればよろしいのですけれども,そういうものが今のところない中で離婚事件をやっておりますと子どもの養育費が非常に大きな問題となります。   そうすると子どもを引き取る,主に母親のほうになりますけれども,母親としてはやはり自分の子どもを大学に入れたいということから,それは社会的な支援整備がきちんとできていれば18歳でいいですよということにもなると思いますが,それが不充分なので大学に入れるために,父親なのだから大学を卒業するまできちんとした支援はすべきでしょうというところで問題となってくる,それが現実です。   そうすると,それでも22歳が本来望ましい姿ではあるのですが,せめて成年まではということで20歳までは子どもを引き取る母親が求めるのであれば,それは父親に養育費を援助する義務を認めてもよろしいのではないか。そういう考え方です。以上です。 ○鎌田部会長 これは意見書の12ページの下から始まる部分で,中心的に考えられているのは離婚に際しての養育費という理解でよろしいですか。 ○出澤委員 そのように考えております。 ○平田幹事 補足しておきますが,この義務化の法制度というのは,今,家事審判で調停や審判のときにこの養育費の支払終期を一応その子が20歳の誕生日を迎える月までというのが一般的な形になってきています。そういう認識の下に離婚をきっかけとした貧困化を生まないためには,そこのしばりはかけておきたい。そういう趣旨にすぎません。   ただ,高等教育を受ける者が増えているからということであって,基本的に扶養義務の問題だと思うので,権利者の扶養の必要性と義務者の扶養の可能性を踏まえたらそうすべきだというだけで,すべてが20歳をもとに切らなければいけないという話ではなくて,もともとの認識としては知的,身体的な障害があって,扶養の必要性が高ければ20歳を超えても養育費の支払を認めた審判例もたくさんある話ですから,一律にという趣旨ではございません。 ○鎌田部会長 成年年齢の引下げとの関係では,成年年齢を引き下げることによって離婚の場合の養育費給付の終期も早まるようなことがあるのは好ましくない,そういう認識だということですね。   ほかにいかがでしょうか。 ○神吉関係官 今日,宮本委員から参考資料22,23として諸外国の自立支援の施策について紹介をする参考資料をいただいたのですが,その点について,少し御説明していただければと思います。先ほど出澤委員からワンストップサービスのお話が平成15年の青少年育成施策大綱にも書かれているという御指摘がございましたので,そのあたりの制度の状況等についても簡単に御説明していただければと思います。 ○宮本委員 参考資料22は,つたない講演録でお恥ずかしいところがありますが,特に今日の議論に関連いたしますのは,10ページからの部分で,フィンランドのことを紹介させていただいています。フィンランドは,北欧諸国で最も自立支援というか,若者の社会参画施策が北欧諸国で一番早くに手がつけられて,それがヨーロッパ全体に広がってきているという状況だと思います。   例えば,15ページに分かりにくい写真がでていますが,これはヘルシンキのオープンフォーラムあるいはユースフォーラムということもありますが,年に3回か4回,これは中学生ですが,ヘルシンキの青少年局が主催しまして,各中学校から2,3人ぐらいずつ代表が出てきて,この日は400名の中学生が集まりました。それまでに数か月にわたってヘルシンキ市に対する要望をまとめてくるわけです。そのまとめる作業に学校の先生がというよりは,地域のユースセンターのユースワーカーがコーディネート,場合よっては指導しながら取りまとめます。そういう形で年に3回か4回ぐらい,2時間の会議ですけれどもそれぞれが要望を出す。それに対して話を受けるのは各政党の市会議員と青少年局の局長です。市の行政に青少年の声をきちんと反映させるという仕組みです。   これは1985年の国連の世界青年年以降,国連の政策にもなって広がっていったのですが,日本の場合にはどういうわけかこういう動きが途中で弱くなってしまいまして,今全国でいくつかの自治体がやっておりますけれども,なかなか広がるというところまではきておりません。   それから,参考資料23は,スウェーデンのことを紹介させていただいています。159ページあたりにスウェーデンでの若者参画の取組をいくつか具体的に紹介させていただいています。学校民主主義の取組ですが,学校が青少年にとって最も身近な社会環境であるということで,学校運営に生徒たちを参加させ,そこで社会的な力を身に付けていく場にしようということで,そこで意見を言うこと,学校というものに対する影響力を彼らのために高めること,そのことが民主主義の第一歩であるという考え方でやっております。   これに関しましても,北欧諸国は学校民主主義という標語で各地でやっておりますし,西ヨーロッパから今EU諸国にずっと広がっているものだと思います。   次のページでは,まちづくりへの若者の参画ということで,地方自治体レベルのまちづくりへの参画というのは,若い人たちを育てる意味で,学校に次いで重要な環境であるということで,ここに書かれているのは例えば公共交通への発言とか,彼らが日常的に使う駅の駅舎の整備のための活動であるとか,都市計画への参加というような形でまちづくりへの参画を通して彼らは発言ができ,影響力を行使できるのだということを学ばせていくということです。小学校ぐらいからやっていますけれども,一番育つ可能性があるのが中学生だと言われております。中学生ぐらいのところできっちりと指導することによって高校生ぐらいになればかなりのことまでやれるようになると言われております。   162,3ページのところに「若者の手で,若者のために」という標語で全国青年組織協議会,これはスウェーデンのストックホルムの中心街にあるNGO組織なのですが,全国の100近くの青少年,若者の諸団体を傘組織としており,国の様々な補助金で40名の30歳までの若者がきちんと給料をもらって,若者の影響力を高めるための諸活動をやっているのですが,学習,研修,情報提供,これは若者のために彼らの力でやるということ。それともう一つは議会へのロビー活動をやっております。   もう一つここに,本日の部会では著作権の問題があって配布することができなかったのですが,若者向けの情報を提供するワンストップサービスが10年ぐらい前から欧米諸国各地でオープンして,中学を出たぐらいの年齢から20代の前半期ぐらいまでの年齢の若者が,そこへ行けば彼らが知りたいと思っている情報が全部そこにあって,相談を受けるスタッフがいるという機関がたくさん登場して,現在動いております。日本の場合に,その年齢を対象にした機関は非常に手薄であります。それというのも,そういったことを学校と会社が今まで果たしてきたからだと思われます。先ほどの青少年育成施策大綱で言う若者の自立支援というのは,そういうものを含めて必要であるということを平成15年に言って,この5年間の中で一番やってきたのは,なかなか仕事に就けない,学校にも行っていないという若者への地域の支援機関がいろいろと登場したということだと思います。日本でもっと必要なのは,より普通の青少年たちに対して情報提供や相談が,学校はもちろん,学校以外のどこへ行ってもそういうものがあるという環境を作ることではないかと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。 ○神吉関係官 今,宮本委員からワンストップサービスとユースフォーラムの御説明がありましたがこういった施策は成年年齢の引下げに伴って行う必要があるとお考えなのかどうかについても宮本委員のお考えを教えていただければと思います。 ○宮本委員 これを行うことの意味というのは,少子・高齢化の中で,若い人たちの人口規模が小さくなる中で,現在起きている将来の不安というのは一番ダメージを受けるのが人口規模の小さい人なので,その人たちの発言を保障するということは,大人としての責任ではないかという感じがいたします。   そういう意味では,国際的には人口規模の小さい人たちには発言権を倍与える必要があるという議論さえ出ているわけで,そういう点で国際的には成年年齢を18歳に引き下げるだけでなく,投票権を更に18歳よりももっと下に引き下げるべきだという議論さえあるわけで,選挙権は18歳だとしても,先ほどのまちづくりへの参画や,青少年育成施策大綱,これなどは意見聴取は多分大人にやっているわけですが,欧米諸国では青少年育成施策大綱のようなものや,自治体の青少年行動計画を作るときにも,もう幼稚園ぐらいの年齢にまで意見を聞くことが義務化されており,そういう意味で,日本は非常に出遅れているというのが一つです。   もう一つはそれを実際にやったときにどういう効果が上がるかということですが,効果は極めて高いと言われております。つまり若い人たちは変わるということで,やらないから変わらないだけのことであるということだと思います。   先週,日本で投票権を18歳に引き下げようという若い人たちの組織の集まりがあって聞いたところ,日本でも数は多数にはなっておりませんが,既に模擬投票,地方自治体での意見表明という活動が行われていて,その事前と事後の評価をやっておりますけれども,その結果で見ると,事前のときには参加した若者たちは,この審議会での高校生の聞き取りと同じことで,とても自信がない,18歳でとても選挙できないとみんな言っているのですが,実際に学習をやり,投票をやった結果は自分たちにはできるという形で,成果は非常に大きく上がっているということを話されておりました。そういう点では日本でもやれば変わると私は確信を持っております。 ○佐藤幹事 同じような質問になるかと思いますが,宮本委員のお話ですと,確かに若者に意見表明権を認めるべきだということですので選挙権年齢の引下げについての意義はあるのかなと思います。しかし,それが直接民法の成年年齢の引下げに結び付くのかというところで多分皆さんどうなのかなと考えているものと思います。そこで,お話のような施策によって契約の関係でもより大人としての自覚が出てくるとか,そういう影響があるのかないのかについて宮本委員がどのようにお考えかをお聞かせいただければと思います。 ○宮本委員 以前のヒアリングでお話しさせていただいたのは,年齢というのはやはり整合的であるべきであるということで,したがって投票権を持つ18歳というのは,投票して意見を表明すると同時に経済的,社会的,あるいは職業的に何らかの形で一歩踏み出す,そういう整合性がとれているべきだと思います。   その点で先ほど親の養育義務を何歳にするかというのは非常に大きなことで,日本の場合に成熟が遅くなる理由の一つは,親の養育義務が非常に長いということにあると思います。このあたりに手をつけない限りはなかなか成熟はしないと思います。もちろん就職年齢が遅くなっていますし,経済的な自立を完全に果たす時期は遅くなっていますが,これも前に申し上げましたように,経済的自立というのは賃金,給料だけで自立するわけではなくて,それ以前の様々な経済的な給付を自分自身で得るかどうかということもあって,ひとつひとつのステップを踏んで,最終的には自分の働きにより給料や賃金を得るということで自立していくのだと思いますが,最終的な賃金,給与によってしか自立できない社会というのは,その段階まで親が扶養するということになりますので,そういう状態の中で本当の意味の社会的な認識,自覚ができるかどうかは疑わしいと思います。   そういう点で言うと,整合性をとるためには基本的には18歳で親の責任を離れる。しかし,そこで経済的に自立するというのは,どこの社会でも先進国では難しいので,移行の途上は彼らの名前で何らかの給付を受けるなり,奨学金を得るなり,ローンを借りるなりすることができるというような仕組みを作っていくことによって,そこが社会的な訓練のプロセスでもあるということなのではないかと思います。   そういう点で言えば極論のようではありますが,18歳に引き下げれば当然消費者被害も起こる。それをいい教育機会だととらえて条件を整備していくということも考えるべきではないかと思います。 ○今田委員 日本の若者の支援制度は貧弱である,今後は支援を充実させることが重要だという宮本先生の御議論は,私も同意します。ただ,貧弱であったのには理由があったと思います。日本の場合は,西洋などの諸外国と違って,企業社会が若者の育成に大きな役割を果たしてきた。企業の貢献によって,家族と学校と企業がうまく連携しあって,若者を職業人として育成し,自立させる仕組みがうまく機能した。しかし,近年の社会変化の中で,企業社会はこれまでのような若者を育成する役割を担い続けることが困難になっており,また,家族も子どもの養育力において低下してきている。こうしたことから,若者を支援する制度を,従来の家族や学校や企業以外で,諸外国で実施されているような第三セクターとかNPOなどの活動として活発になるような制度改革や法律の改正が必要である。この議論は非常に説得力があると思います。   ここまでは,多くの人は同意すると思います。しかし,この議論の延長として,宮本先生は,親からの解放,親との切断を早めることを主張され,それが,若者の自立を促すことにつながり,更にそのためにも民法の改正が意味があるという議論をされる。そこの論理が私としては理解できないというか,つながらない。 ○鎌田部会長 それでは,大村委員。 ○大村委員 今の御議論との関係で2点申し上げたいと思います。一つは,今田委員がおっしゃった家族のサポートをどのように考えるかということですが,先ほど平田幹事だったでしょうか,18歳を過ぎたとしても実際上,養育の必要があるような場合があるだろう。かつ義務者のほうが払えるし,払うべき場合があるではないか。そういう場合について扶養義務を認めるということは場合に応じて今後もあり得ることだと思います。   18歳を成年だとして,そこまでは義務的な高いレベルでの扶養義務があるとしても,その後,何歳になるか分かりませんけれども,現在の就学構造からいって若年の子に収入がない場合には学校教育を終える程度のところまでは未成年者に対する扶養義務とは違う形で親には一定程度の扶養義務が認められるのだという議論はあり得ると思います。   ただ,そうした扶養はできないという人がいますので,それについては,社会的な対応が必要だということになります。社会的な対応の充実を図るとしても,そのことによって今のような家族的な支援が否定されることにはならないので,そこは両立させるような制度を考えていくことが望ましいのかなと思います。これが第1点です。   第2点は,宮本先生のお話とも関係するのかもしれません。これまでにも出たところですが,民法の成年年齢の問題は行為能力にかかわる問題でありまして,いわゆる経済活動における自立性ということを念頭に置いているわけです。それに対して若者の社会参加というときには,言わば政治的な側面に重点が置かれているように思います。この二つの事柄は別の事柄ではないかという御意見がこの審議会の中でも何度か出たかと思います。別のことだと言えば別のことですが,他方,この間をつなぐフィールドというのでしょうか,あるいはリングというのもあるのではないかと思います。   それはどういうことかと申しますと,直前に出ておりましたけれどもNPO,あるいは第三セクターという言い方もされましたけれども,市民活動がこの先ますます社会的に重要な意味を持ってくるかと思います。その市民活動の中身というのは,幅広いものがあるわけですが,その中には投票とは別の政治的な活動も含まれるわけです。そうした市民活動を行うためにNPO法人を作る,そのメンバーになるということを考えますと,そのためには行為能力が必要だということになります。現行法の下で,20歳以上であれば法人の構成員になることについて何の制限もないわけですが,18歳,19歳の人たちについて言うと,これは親権の下にあり,かつ制限行為能力ということですので,理屈の上から考えると法人のメンバーになるということが全く自由にできるというわけではないということになります。これがいいことなのかどうなのかという問題があるのではないかと思います。   高校を卒業して大学生になると,様々な活動をし,団体を作ることもあると思います。現行の日本法の下では法人格を取得しなくても団体はできてしまいますので,何となくやっているわけです。親が目くじらを立てることもあまりないということであれば,結社の自由は保障されているように見えるわけですが,法的な意味で法人を構成するということになると,未成年者には紐がついているという状況になるわけです。果たしてそれがいいのかという問題があるかと思います。   仮想の議論をしているようにお感じになる方もいらっしゃるかもしれませんが,これはしばらく前にフランスで議論された問題です。フランスは18歳が成年でございます。NPOに当たる団体は比較的簡単に作ることができますが,現在の社会にとっては非常に重要な役割を占めております。結社の自由は1971年以来,広い意味での憲法的な価値を持つと認められております。   そこで問題になったのは,18歳になれば自由に団体は作れるのだけれども,18歳未満の人々,高校に行っているような人々が自由に団体を作れなくていいのだろうかということです。高校生になった以上団体を作って政治活動も含めて市民活動をしたいというときに,団体を作ることができない。その能力が制限されているというのは果たして妥当なのかということが話題になりました。   2001年が結社にかかわる法律の100周年だということもありまして,この問題の見直しが行われました。団体設立に限って早い段階から行為能力を認めるべきだという立法論が出まして,他の法律行為は別にして15歳以上から団体を作ることができるというのはどうかという立法案が検討されました。   実際には,これは成案には至っておりません。団体の設立についてだけ15歳以上にして,他の法律行為は18歳というのは,いかにもバランスが悪いわけでありまして,なかなか案としては成り立ちにくいわけであります。   ただ,ポイントは若い人々が自分たちで自発的に団体を作って社会に参加をしていくということを妨げるべきではないという議論です。これは私たちの社会の将来についても当たる議論なのではないかと思います。   今20歳以上であれば自由にそういうことができるわけですが,学校を卒業して大学に入ったという段階で,20歳になっているかどうかにかかわらず一緒に団体を作る,NPOを作るということができるということも望ましいことなのかもしれない。   そう考えてみますと,経済活動の問題と政治活動の問題というのを全く別に考えるというのは必ずしも適切ではない。今申し上げましたような市民活動,これは機能的には政治活動につながるわけですが,法的には経済活動と共通の行為能力の問題と結び付いている。そういうことがあるのではないかと思います。   これは外国の例でございますが,一つ付け加えさせていただきます。 ○鎌田部会長 日本の現行民法においても,処分を許された財産とかあるいは営業の許可の柔軟化という方法で対応することもあり得るかと思いますが,水野委員どうぞ。 ○水野委員 今田委員の御意見は認識としては私もそのように思っておりますが,宮本委員が言われたことは必ずしも家族支援を切るということを提言されていると私は受け取りませんでした。今田委員の認識と同じように家族のサポートというのは今までの日本の社会でも大きなものでしたし,これからもまた重要なものだと思いますが,ただ家族のサポート,家族の力を引き出すためにも社会,公的な支援が必要でございます。日本の社会にはそれがなかったということが我々の社会の非常に大きな問題点だろうと思います。   1点例を上げますと,例えば,経済力のある父親が自主的に支援をしていればいいわけですが,支援をしない場合に強制力を持っておりません。諸外国における扶養料の支払の手当ては,行政執行が非常に簡便に行われるよう社会的なサポートがありますし,それを怠りますと刑事罰が待っております。日本ではそういうことにはなっていません。   それから,第2に家族に任せておくと,その担わされてしまった家族がその重荷に耐えきれなくなったときに壊れてしまって,どのような深刻な被害を生じるかということについて日本社会の認識は非常に甘い。それがために我々の社会では深刻な被害が生じていると思います。   中間報告書案の31ページを御覧いただきますと,虐待を受ける子や,虐待を受けた結果,社会的自立が困難となった者を減らす必要があることから児童福祉施設の人的,物的資源の充実,子育てを社会が支えあって行う仕組みの充実が必要となるという条件整備についての提言が上げられております。本日の御説明でようやく私は認識したのですが,ここには書かれておりますが,7ページ以下の4の成年年齢を引き下げるために必要な施策についてのところからはこの提言が落ちております。できれば私はこれは付け加えていただけないかと思います。   日本の社会で家庭が孤立化してしまうという状態,つまりかつて持っていた地域やコミュニティの安全弁が失われてしまう状態が急速に進行したために,日本の社会にまだ十分な危機感がないわけですが,児童虐待のような問題についてはこのような支援に多額の費用をかけて子どもを救出しなくては社会は深刻なことになってしまうというのが先進諸国の常識になっています。   子どもが脳に虐待を受けてしまいますと,不可逆的な変性を受けてしまいますから,社会にとっても子どものうちに助けるほうがトータルとしてもはるかに費用対効果がいいということでございます。その意味では13ページの2の親権からの解放の第2パラグラフの記述も私が受けたここでの議論の印象とは少し違った印象のまとめ方になっているように思います。   親権のところでヒアリングを行ったときに,18歳に下げることについて児童虐待の現場の方々,あるいは親権法についての研究者などは消極的な御意見を述べられました。しかし,ここで書かれているような18歳,19歳の子が虐待の対象となっている事例は少ないからという理由ではなくて,虐待を受けて,そのことによって自尊感情を持てずに育ってしまった子が自傷や他害をするような深刻な人格障害,つまりきちんとした成人になれていないがためにまだ成人にするには心もとない,そういう虐待を受けて脆弱に育ってしまった子どもたちの問題というものをむしろ強く言われたように思います。   かつては貧困ゆえに収容されていた子どもたちが児童福祉施設にいたわけですが,今現在では児童福祉施設は9割以上が被虐待児になっています。しかし,現在の児童福祉施設の体制は,非常に手のかかる被虐待児を育て直すという体制になっていない。そういう様々な不備がございます。ここのところに力を入れることによって,少し迂遠のようかもしれませんけれども,成年年齢を18歳に引き下げるために正に一番必要な施策なのではないかと私は思っております。   結論的に現場で被虐待児たちと対応しておられるヒアリングの対象の方々がその現場の声として,20歳を18歳に下げることはちょっと待ってくれという御意見を言われたことについては,重く受け止めざるを得ないと私は思います。ただ,私個人の意見といたしましては,この際我々の社会が子どもを育てるということについて大きな欠陥を抱えていて,ここで大きく舵を切らなくてはならない時期に到達していることを,この法制審議会が20歳から18歳に下げるときに併せて議論をして,そういう認識を持ったということをアピールし,結論的には宮本委員が言われたように我々が子どもたちをどのように支えていくかということを考えてもらうために,あえて18歳に今の段階で下げるという結論のほうが私自身はいいだろうと思っています。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ここで休憩をとらせていただきまして,その後,今御議論いただきました必要となる施策が実現できるのかどうか,その実現可能性と関連づけて引下げの可能性という18ページ以下のところの議論に入らせていただきます。休憩後はそこから議論を再開させていただきたいと思います。           (休     憩) ○鎌田部会長 それでは再開させていただきます。先ほど報告書の第3の6から休憩後の議論を再開すると申し上げましたけれども,報告書の記載内容に関する水野委員の先ほどの御提案に関して,神吉関係官から発言があるようです。 ○神吉関係官 先ほど水野委員から報告書案の31ページにあります児童福祉施設の人的,物的資源の充実や子育てを社会が支え合って行うという仕組みの充実を成年年齢の引下げをするための施策として付け加えてほしいといった御要望がありました。それに関して御質問させていただきたいのですが,その施策と成年年齢引下げとの関係性なのですけれども,今議論しているのは成年年齢を引き下げた場合にある問題が生じる可能性があるため,その問題を解消するためにはどういう施策を講じなければいけないのか,そういったことを検討していただいているかと思うのですが,成年年齢を引き下げて,31ページのような施策を講じないとどういった問題が生じるのかということについて理解が不十分なので先生に教えていただきたいと思います。そもそも虐待を受けている子どもたちというのはあまり親の保護というのを従前から受けられていないのかなと思うのですが,そうすると成年年齢の引下げをして親権に服する年齢を18歳に引き下げたとしても,あまり現状としては変わらない,18歳,19歳の若者たちが困ることはないのではないかという気もするものですから,御質問させていただいた次第でございます。 ○水野委員 繰り返しになりますが,人間はオオカミに育てられるとオオカミ少年に育ってしまうという,そういう存在であるということが基本的にあると思います。ついこの間まで,日本の社会は家庭もこのように閉じられておらず,近所の人々も子育てにかかわってきましたし,子どもたちはがき大将に連れられて集団遊びをしていた,そういう社会であったわけです。   成人化のモデルでも,勉強だけして大人になるのでなくて,例えば身近に大工さんがいて,こういう形で自分は将来生きていくんだというモデルもたくさん見られたわけです。   それが急速に社会が変化してしまったために大人たちは昔は放っておいてもきちんと大人になれたではないかという幻想を持っていて,社会がこれだけ変わってしまって,放っておいても大人になれてしまうような条件が失われてしまったことについての認識が我々にはないのだと思います。   そこで,カプセル化した家庭で非常に子どもたちが不健康に育ってしまうという事態になっていて,先ほどの発言の繰り返しになりますが,そういう子どもたちに集中的に接している現場の方々は18歳や19歳の子どもたちは,問題を抱えていて,あまりにも脆弱なので成人とするには心もとない,まだまだ保護が必要な子どもたちなんだと言われたわけです。それでもあえて私が18歳に下げたほうがいいと言いますのは,そういう状態にあるということを気がついていただいて,そして社会が,家庭が介入して支援しなくてはならないのだということを分かっていただきたい。   もし,そういう支援なしに18歳に下げてしまうことになりますと,現場の方々が危惧しておられたように非常に脆弱な子どもたちが大勢保護が必要なのにいきなり大人にされてしまう問題性と,ここであえて政策を転換して,自立した子どもたちを支援する,自立させて大人にさせて,そして彼らを支援するという方向に舵を切るメリットを比較すると,後者のメリットをとるほうがいいだろうと思います。   そして,今の御質問に端的に答えるとすれば,この施策なしに18歳に下げてしまいますと成人とするにはあまりに脆弱な子どもたちがたくさん成人にされてしまうということだと思います。 ○鎌田部会長 まだ先ほどの第2の4に関連した御発言もあろうかと思いますが,本日,中心的に議論をしなければならない第3の6の成年年齢を引き下げる場合に必要となる施策の実行の論点にからめて御議論をいただければと思います。   まず事務当局から説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 報告書の18ページ,第3の6の成年年齢を引き下げる場合に必要となる施策の実行について御説明をいたします。   まず,(1)の成年年齢を引き下げるために必要な施策の実現可能性についてから御議論をお願いしたいと存じます。成年年齢を引き下げた場合に若年者の消費者被害が拡大するおそれがあることや,ニートやフリーターなど,自立に困難を抱える若年者がますます困窮化するおそれがあることなどが指摘されており,これらの問題を解消するためには消費者被害が拡大しないような施策及び若年者の自立を援助するための施策の充実が必要となるということは先ほど検討していただいたとおりでございます。   そして,これらの施策の実行につきましては,受験のための教育が中心となっている現在の高校教育の現状にかんがみると各施策の実行は現実性がないのではないかという御意見も出されました。しかし,将来の我が国を活力のあるものとするには将来の我が国を支える若年者が一人前の消費者として,また一人前の市民として自信を持って社会で活躍することができるよう育てていく必要があるものと考えられ,これらの施策は現状の教育事情にかんがみると困難であるとしても,実現に向けて取り組むべきであるとも考えられます。   確かに法制審議会は教育行政や消費者行政等に対して何ら権限を有するものではなく,消費者保護施策の充実や若年者の自立を援助する施策の充実については,それぞれ所管の府省庁で取り組むべき問題ではありますが,法制審議会としてただ単に必要であることを論じるにとどまらず,若年者の将来,我が国の将来を見据えてこれらの施策の実現に向けて政府全体で取り組むことを期待したいというメッセージを発信することが必要ではないかと考えられますので,報告書(案)ではこのような記載ぶりとさせていただきました。   ただし,この部分につきましては期待したいというのでは弱く,より強調して強く要望すると記載することなども考えられますので,御意見を伺えればと存じます。 ○木村委員 ここを記載した趣旨は私も賛成です。先程来議論されているように,単に民法第4条の20歳を18歳にするという単純な問題ではなく,しかもそれは,決して法制審議会だけで解決できるような話ではないということも分かってきたので,正にここに書かれているように,しっかりと政府全体で取り組んでもらいたいということを記載していただくことは,極めて重要なのではないかと感じています。   言葉遣いの問題としては,「期待したい」というのは少し弱いのではと感じており,「強く望みたい」といったように,もう少し強く言ってもいいのではないかと思います。   いずれにせよ,趣旨としては,このようなことを,しっかりと報告書の中に盛り込んでいただけたらという感じがしております。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   ほかにこの6の(1)の部分に関連して御意見はございますでしょうか。 ○岡田委員 若者たちの相談を受ける立場からしますと,何が何でも救済してあげなければいけないという気持ちとしっかりしてほしいなという気持ちとがありまして,最近は後者のほうがものすごく強くなっています。このままいったら将来日本はどうなるのかな,そのぐらいに思っています。ですから,ここで大きなきっかけが必要かなとも思います。   でも,そのためには絶対にこういう施策が必要であるということで,可能性うんぬんではなくて,成年年齢を下げる以上はこの政策が絶対に必要なのだというぐらいのコメントを発信したいなと思います。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。これは(2)の部分とも密接に関連する事柄でございますので,(2)の部分についての御説明もお願いいたします。 ○佐藤幹事 施策の実行と引下げの先後関係について御説明いたします。   施策の実行と引下げの先後関係については,成年年齢を先に引き下げ,若者政策の転換を図るべきという意見,成年年齢を引き下げるための民法改正は行うが,施行まで5年,10年など相当の猶予期間を置き,その間に各施策の充実を行うべきという意見が出されました一方,各施策の充実が図られたこと,又はそれらが確実になったことを確認した上で,成年年齢の引下げを行うべきという意見が出されました。   この点につきましては,部会において大勢を占める意見は得られておらず,またこれまで十分に議論することができませんでした。そこで,いずれの立場をとるべきか,再度御意見を伺えればと存じます。 ○鎌田部会長 ここではⅠ案,Ⅱ案,Ⅲ案が書いてあって,いずれが多数かが決まらないという認識を持っておりますけれども,実際のところ,それぞれの委員,幹事がどの案を支持しているかを克明に伺ったわけではございませんので,今御意見がございましたら是非お出しいただいて,仮にどれかが多数であるということがこの場で分かるようでありましたら,それに応じて記述の仕方も変えたいと思います。 ○宮本委員 Ⅱ案についてどうかということを考えてみたのですが,5年,10年というかなり長期的な期間を設定していますが,この問題は先ほど水野委員から出されたような虐待一つをとってみても,それから現象を上げてみればきりがないのですが,例えば貧困家庭に育つ子どもがこの5年ぐらいで急激に上がっています。それからその年齢の上のほうでいうと,引きこもりの数は100万人とか,非正規雇用は減らない。そういうふうに子どもから青少年ぐらいのところに起こっている急激な変化を考えると,5年,10年という期間はあまりにも長すぎる,時代が変わるぐらいの長さだという感じがします。そういう点で猶予期間と言えばもっと短期であるべきであると思います。   また,Ⅲ案のように実際に行われるかどうかが分からないので,全体状況の充実が図られたということを確認してからということになると,これはほとんどここでの提案は提案力がないということに近いので意味がないという感じがいたします。   そうこう考えますとやはり私はⅠ案を支持します。しかしⅠ案だからといっていきなり来年からというわけではなく,一定の期間は準備が当然必要であると思いますので,そのことを含めてここで強く提言をする。省庁横断的にこれを議論するような場を再度作っていただきながら,ここでやったような広い議論をもう一度仕切り直ししてやっていただいて実行に移すというような,時間の幅からするとそんな感じがいたします。 ○鎌田部会長 Ⅰ案でも法律になった途端に施行されることはなく,通常1年とか2年の猶予期間があるので,それと区別する上でⅡ案が5年とか10年という長いタームになっていると理解してよろしいですね。 ○神吉関係官 事務当局としては,そのつもりで案を書かせていただきました。 ○鎌田部会長 ほかに関連して御意見はございますか。   それからⅢ案は次の(3)で,どこまでいけば実現された,前提条件が整えられたというふうに考えられるかという点とワンセットにならないと,今,宮本委員がおっしゃられたように言っただけだというふうなことになるというので,(3)の項目が出ていると理解ししてよろしいですか。それともまたちょっと違うのですか。 ○神吉関係官 Ⅲ案を取った場合には,施策の充実をしなければ引下げはできないことになりますので,(3)とかなり密接に関連しているのかと思います。ただ,Ⅰ案,Ⅱ案を取った場合にも若者施策の充実をやらなくていいと言っているわけではございませんので,施策の充実を図る必要があることには変わりがありませんが,成年年齢引下げの法律を作るかどうかということとの関係では必ずしも条件とはなりませんので,そういった意味で若干レベルが違ってくるのかもしれないと感じております。 ○鎌田部会長 出澤委員お願いいたします。 ○出澤委員 私の立場は現時点では慎重であるべきだということなものですから,ここの議論をどのように加わっていいのかというのは非常に難しいものがあります。Ⅲ案に近いといえば近いのかもしれませんが,現時点では慎重で,それなりの前提ができた場合には,そのときにまた判断いたしましょうということです。Ⅲ案に近いかどうかは分かりませんが,いずれにせよそういう立場からなかなか議論に乗りにくいというのがあるのですが,ここのところはどのように議論に入っていけばよろしいでしょうか。 ○始関委員 Ⅲ案というのは,今の時点で引き下げるのは妥当ではなく,条件の整備をまず先に行うべきであって,それが整備されたことを確認した上で引下げに踏み切るべきだということですから,出澤委員が先ほどおっしゃられた考え方とほぼと同じことをⅢ案は言っているのではないかと私は思っていたのですが。 ○出澤委員 ただ踏み切るべきだというのはちょっと引っかかるところであって,そのとき再度検討すべきであるというニュアンスです。 ○鎌田部会長 分かりました。今田委員がおっしゃっているのもそういう趣旨だったと思います。そこは整理の仕方あるいは表現の仕方を工夫させていただくようにいたします。 ○山本委員 Ⅰ案とⅡ案ですが,私は多分Ⅱ案の立場で前回発言させていただいたと理解をしています。18歳に成年年齢を引き下げる。これをいつからやるかという目標年次の取り方,あるいはⅡ案で言うと猶予期間の取り方によってはⅠ案とⅡ案はどちらですかという議論ではないような気がするのです。対立する案としては成立していなくて,目標年次をどの程度のスパンで設定するのか,猶予期間をどれぐらい置くのかという点のとりようによってはほとんど重なってしまう。そういう意味からしますと,今の日本社会の置かれている状況を考えたとき,あるいは今後を考えたときに,若者がより広く積極的に社会に参画ができて活力のある社会にしていく必要があるということなども含めて,あるいは若者支援,あるいは家族支援が日本社会は緊切に求められているという中で日本社会を18歳成年型の社会にシステムを変えていく必要があるというメッセージが一つは明確に打ち出される必要があるのではないか。   その上でそのシステム改革のためには主要には単に民法の成年年齢を変えるだけではなくて,文教施策にかかわることであるとか,社会福祉政策にかかわることであるとか,様々な多面的なものが正に内閣が中心となって整理がされた上で,それらを目標年次を定めて,ドッグイヤーと言われる時代ですから,どう考えても10年と言う選択肢はあり得ないと思っています。どんなに長くても5年が限度だろう。できれば3年ぐらいの目標年度を定めて社会的な合意形成を図るという提言が必要なのではないだろうかと思っております。 ○鎌田部会長 確かに5年,10年という期間が妥当かどうかということは御指摘のようなところがあると思いますが,Ⅰ案とⅡ案は条件付けの程度が少し違うというのでしょうか,Ⅰ案はともかく引き下げて,それをきっかけにしていろいろなものの整備はその後に続いてもらおうという発想なのに対して,Ⅱ案は5年後にやるから,それまでにこれこれのことを整備せよという,ある意味で周辺環境の整備が前提となって初めて引き下げられるのだという発想に相対的でありますけれども,より傾斜しているという違いでⅠ案,Ⅱ案があるような気がします。 ○木幡委員 そもそもこの(2)は6という大きな項目,成年年齢を引き下げる場合に必要となる施策というふうに言っているので,慎重論を唱えている人たちの考えはこの中には入らないので,Ⅲ案という人はいるのでしょうか。Ⅲ案というのはもちろんあってもいいのですが,Ⅲ案を前提に,成年年齢の引下げを押し進めたほうがいいという委員はいないのではないでしょうか。 ○鎌田部会長 当面引下げの必要はないが,仮に引き下げるとしても条件整備が先ですよという,その予備的な主張は,Ⅲ案に近いものだと考えておりますが,どうでしょうか。 ○神吉関係官 前回の部会において,木村委員から,成年年齢を引き下げるためにいろいろなセーフティネットを作っていかなければいけないという御意見をちょうだいしたかのように記憶しているのですが,そういたしますと木村委員はⅢ案なのかなと考えてはいたのですが,その辺はいかがでしょうか。 ○木村委員 Ⅲ案は,そういう条件整備をして,それを確認して踏み切るとなっています。そこは,出澤委員と同じように引っかかるところです。むしろ,そういう条件を整備して,その段階で再度検討をする,そのようなことではないかという感じがしています。 ○始関委員 今の出澤委員,木村委員の御意見を伺っていると,Ⅲ案の書き方に問題があるのかなという感じがします。原案は,確実になったところを確認した上で成年年齢の引下げに踏み切るとあり,こういうどちらかというと引下げに踏み切ることが前提のような書き方になっているところが問題ということですから,施策の充実が図られたことが確認することができるまでは,引下げに踏み切るべきでないとか,そういう書き方なら木幡委員や木村委員,出澤委員のニュアンスに合っているということなのでしょうか。 ○木幡委員 そもそも引き下げる場合のという項目の中なので。 ○始関委員 これは「引き下げる場合に」で切れるわけではなくて,「引き下げる場合に必要となる施策」まででワンタームなのです。「場合」で切れますと確かに引下げを支持する人にしか関係がないのですが,施策の実行ですので,施策の実行が先なのか,引下げが先かという話です。 ○鎌田部会長 五阿弥委員,お願いします。 ○五阿弥委員 少し混乱させてしまうかもしれませんが,私が違和感を持っているのは,これらの施策は,成年年齢の引き下げる場合に必要となるというのでなくて,引き下げなくても必要なのです。これは皆さん御存じなわけです。虐待の問題だって,契約の問題だって,あるいは一人前の消費者教育,これらは全部必要なのです。だから引き下げるためにこれをやるのではなくて,日本で今子どもたちが置かれた状況,企業と親頼みではない,もう少し社会全体で子育てをしよう,また自立した成年を作っていこう,そういうことだと思うのです。だから,何となくこの表現に正直言うと戸惑いがあります。   それと成年年齢を引き下げる場合にどういう条件でという議論がありますが,もともと何のために引き下げるのかというと,国民投票法が最初にあるのですが,そこの議論というのがここではあまり煮詰まっていないのです。そうすると,当然20歳でいいではないかという声も世論調査では多いわけですが,一方で18歳といった場合,私は正直言うと宮本委員の意見に非常に賛同しているのですが,国民投票法が18歳まで引き下げたということは,政治への参画というものに対して広く門戸を開く,また,若者に早くからそういうような意識を持たせたいということだと思います。しかも超高齢社会が目の前なわけですから,やはり若い人たちの声を社会に注入していかないと社会全体が非常にまずい方向にいってしまう可能性もある。大きな枠組みの中で多分20歳を18歳に引き下げるべきかどうかという話は本当は前提として,もっと深くあって,その場合にいろいろな問題が出てくるかもしれない,その問題についてははどのように対処すべきかという,何となく本当はそういう順番だったのかなという気がしております。 ○神吉関係官 今の五阿弥委員の御発言にございました先に成年年齢を引き下げるかどうかという当否論が先にあってというお話ですが,それは確かにあるべきだと思いますが,それは報告書案でいいますと11ページの第3以下で書いているところだと思います。少子高齢化の中で若い人たちの社会参加,自立を促進させるべきだという議論が最初にあってという話かと思いますが,その点については第3の1でふれてあるとおり,意見の対立があり,民法の成年年齢とあまり関係がないのではないかという御意見もあるという部会における議論の状況をそのまま書かせていただいたところでございます。   確かにそこの結論が出ていないので,その後の議論をする必要があるのかどうかという御意見はあるかと思いますが,この点については議論がまとまらないという現在の状況にかんがみますと,その後の論点についても一応検討した上でパブリックコメントをして,国民に意見を伺う必要があると思います。ですので,その後の第3の6以下の議論はあまり意味がないということはないと事務当局としては考えております。 ○大村委員 議論の整理についてですが,先ほど始関委員がおっしゃったのが,ここの文章の趣旨ではないかと私は思っておりました。また,それが確実になったことを確認した上で,というのは確実になったことが確認されなければ成年の年齢の引下げはしないというのが我々の受け止め方なのではないかと思いまして,そういう御趣旨だろうと思いました。   ただ,そのことが明確になったほうがよろしいということであれば,始関委員が御提案になったような形で書き直しをすればよいのではないかと思います。   その前提として,この部会の中でいかなる条件があっても成年年齢の引下げには反対だという意見がないということを確認する必要があるように思いますが,それさえ確認されれば,この三つの案のどこかに委員・幹事の皆さんの意見は配置されるということになるのではないかと思います。 ○鎌田部会長 今,大村委員がおっしゃられたように,事務当局の受け止め方としては現時点で引き下げる必要はないという意見も,どんなに条件が整備されても永遠に引き下げないということまでは言っていない。それは今引下げを必要とするような状況がないという御意見であるのだから,そういう条件が整ったのならばその時点で,木村委員の御発言で言えば,その時点でもう一度改めて考えましょうということだと思います。その意見よりもっと強硬に絶対引き下げるなという意見は多分ないのだろうなという整理ですけれども,いかがでしょうか。 ○木村委員 成年年齢を引き下げる意味というか,目的につきましては,前々から山本委員も言っておられますが,私も賛成です。ただし,そのためには,いろいろな条件が出てきていて,しかもそれはここに書いてあるように,いろいろな分野と関係してくるものですから,引下げに簡単には踏み切れないのではないかということも懸念されます。そのため,条件の充実が図られたこととか,確認できたこと,こういうことを前提にして,成年年齢を引き下げることもあり得るということは言えると思います。   しかし,今の段階で,もう下げる,踏み切るという言葉は強すぎるのではと思っています。下げることを前向きに検討するとか,そのような言葉遣いになるのかどうか分かりませんが,少なくとも踏み切るというのは何か断定的なイメージを与えてしまうと感じています。 ○鎌田部会長 その辺は事務当局と相談して表現を工夫させていただくようにします。 ○出澤委員 今の議論に関連してですが,施策ということにどこまで入るのかという問題があります。というのは今現時点で下げるには慎重であるという中には,例えばほかの法律に対する影響,それから世論がそこまでに至っていないというところも根拠にしているわけでございまして,そうすると,いろいろな施策が実現することによってこれらの問題も解決できるというところまでを前提としてということであれば,それはそれでよろしいのですが,そういった問題を抜きにして施策だけでということでは必ずしもございませんので,そこのところは御留意いただければと思います。 ○氷海委員 今ここで話をしている部分と,それから前のところの5番だとか,そういうところの言われている部分と行ったり来たりしてしまうので,ここは大きな流れの中の6番ですよね。第3の6,その中での表現だと私は理解しております。今ここで出ている議論は第5のところでうたわれているところの意見も自分はそうですよと言っている,ここでうたわれているので,これ全体の流れの中の第3の6という位置づけを事務局のほうでもう少しきちんと説明されて,そこの項目の表現としていかがでしょうかという議論にしていかないと,根本的なここの部分だけで取り上げて今のⅢ案の議論をすると,全然違った意見を持っている人は,ここだけ独立してみると違うんです。表現が違うだろう。しかし,6の中の一つのここの部分の流れからしてどうでしょうかという形で問うていったほうが流れがいいのかなという感想を持ちました。   全体で前のところでうたっているんですね。見ると大きく割れていて,反対意見もある,下げない意見もあるという中でこれは第3の6ですよね,今議論している。そこの位置づけをはっきりさせながら進めたほうがいいのかなという感想を持ちました。 ○鎌田部会長 事務当局もずいぶん苦労していて,これも全体として引き下げるべきだという方向性が固まっていれば,引き下げる必要性というところから始まってきれいにまとめられるのですが,ありとあらゆる意見が全部あるというのをうまくまとめてパブリックコメントに出すのにどういう順番で整理していくのがこの会議の雰囲気を一番よく伝えられるかということで大変苦労していますけれども,今日いろいろお出しいただいたものを斟酌させていただいて,少し工夫をさせていただきたいと思います。   先ほど五阿弥委員から御指摘がありましたように,6の(1)の部分も前のほうに出てきているところでの記述の工夫のほうが妥当かもしれませんけれども,仮に引き下げられなくてもやるべきだという内容も含まれているわけで,そういうこともうまく反映できるように少し表現の工夫はさせていただくようにいたします。 ○神吉関係官 先ほど五阿弥委員から御指摘のあった仮に引き下げないとしてもやるべきだということにつきましては,報告書の11ページの第3の前の4行あたりで書かせていただいておりまして,若年者の自立を援助するための施策については仮に成年年齢を引き下げないとしてもやるべきだという意見もあるということで書かせていただいている次第でございます。   また,第3の6のほうで書いていないのかということにつきましては,成年年齢を引き下げる場合にとるべき施策ということでこのところは論じる必要がございますので,成年年齢を引き下げるためには少なくともこういうことをする必要があるだろうということで整理をさせていただいているというところですので,位置づけとしてはこういった形にならざるを得ないのかなという気はしますが,次回部会までに整理をさせていただきたいと思います。 ○五阿弥委員 引き下げるか否かにかかわらず実施すべきであるとの意見もあったというのはちょっと弱すぎる気がいたします。多分,これは皆さん共通の声だと思いますので,そういうことも書くときに反映させていただければと思います。 ○鎌田部会長 それでは今の御議論の中でも出てきましたけれども,この20ページの(3)のところ,これも今のままの書き方ではちょっと迫力がないので,事務当局側としても,もう少し最低限この程度のことはやるべきだというふうなところまで御意見をいただけたほうが(1),(2),(3)のまとまりができやすいかなということで,特に御議論をお願いしている部分でございますが,この点につきまして事務当局から少し説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 (3)について御説明します。成年年齢を引き下げるために必要となる施策の実現の程度の論点についてですが,これまでに議論してきましたとおり,仮に成年年齢を引き下げることにする場合ということで,仮にということでございますが,若年者の消費者被害が拡大しないような施策や自立に困難を抱える若年者の自立を援助する施策の充実を図る必要があるという点では皆さんの御意見が一致しているというふうに思われますが,この施策がどの程度講じられれば施策の充実が図られるだろうかと言えるのかにつきまして御議論をお願いしたいと思います。   これまで法律に理念としてうたわれるだけでは不十分であって,例えば教育内容の充実につきましては,学習指導要領において授業科目や授業時間の中に組み込まれ,実際に行われる必要があるものと考えられるという意見が出されたところでございますが,消費者保護の施策の充実の分野,あるいは若年者の自立を援助する施策の充実の程度につきましては,先ほど御議論いただきました具体的施策のうち,どの程度の施策が講じられれば,施策の充実が図られたと言えるのかにつきまして,これまであまり議論されませんでした。   したがいまして,消費者保護施策の充実や若年者の自立を援助する施策の充実につきましても消費者関係教育の充実と同様,報告書に記載できるよう,どの程度の施策が実現すればよいのかについて御議論いただきたいと思います。   先後関係のところでも少し議論になりましたが,どちらを先にやるかという問題とここはリンクして,どの程度実現すれば今後引下げについて検討する,あるいは見直すということになるのかについて,ある程度具体的なところを出さないと報告書としてまとまりがつきませんので,そこまで議論していただければと思っております。 ○岡田委員 消費者教育に関して学習指導要領に入ったということで,大変効果が上がるかなと思って,私も期待をしていたのですが,実際は授業の中身と時間の関係で全然効果は上がっていないと思っています。   それはなぜかというと,いわゆる学校教育における消費者教育というのは悪質商法に引っかからないためにはというハウツーなのです。これは学校だけでなくて社会人に対してもそうなのです。いわゆる本当の意味の教育ではなくて,その意味で言うと法教育とリンクするのではないかと思います。ですから,ただやればいいという問題ではなくて,実際に消費者が悪質な商法に引っかからないとか,自分が本当にほしい契約をするためにどう対応すべきだとか,そういう自立した判断ができるような教育というところに視点がないという感じがしています。   今,消費者庁の議論の中で,一元化と言われていますが,これも悪質商法と製品被害のほうに重点がいっていて,教育というのは柱にはなっているけれども,そこに文科省がどうかかわってくるかというのがもう一つ見えないという部分で,まだまだ消費者教育はスタートラインではないかと思っていまして,法教育が今回学習指導要領に入りましたので,これをうまくミックスして確実な時間をとるとか,内容を確実なものにするとか,そういうことを是非検討してしなければいけないのではないかと思います。   それから,今回のこの成年年齢に関しては法務省だけではなくて内閣府が中心でやるということは,各省庁が全部そこに入ってくるという部分では,是非制度的な部分に関しても大いに提言をして,その上で内閣府として考える。先ほどもそういう意見がありましたが,そういう意味ではこの審議会というのは今までの法制審議会と違うような気がするのです。こういうものが何年後にまたできるのかというと,それも私はどうなのかなと思っております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。   消費者教育あるいは消費者保護施策との関係では先ほど大村委員からかなり具体的な御提案がありましたが,何かここの部分で特にございましたらお願いいたします。 ○大村委員 先ほど何段階かのことを申し上げましたが,事実の問題として様々な広報活動を行うとか,消費者センターで特別な窓口を開くというようなことは制度的な対応が比較的しやすいのではないかと思っております。それから,特商法についても施行規則の改正ということならば,これも実現の可能性は比較的高いのではないかと思っています。   ただ,それだけでは不安なところがあって,取消権に関する規定がほしいなという気がしますが,最後に申し上げた年齢要件を設けてという考え方はちょっと敷居が高い。これに対して,一般的な取消権について民法ないし消費者契約法に,要件がどうなるかはともかくとして規定を置くということは,かなり実現の見通しがあることであり,求めてよい事柄ではないかと思います。   ですから,3段階ぐらいのものがあるとすると,2段階ぐらいのところを目標にすべきであって,未成年者取消権により近づくためのクリアカットな要件を持った制度というのは,必ずしもそこまではということなのかなと思っています。 ○鎌田部会長 若年者の自立という観点から宮本委員からも大分具体的なお話をちょうだいしていますけれども,何かこの部分でこういうことを書くといいのではないかという御提案がございましたらお出しいただければと思います。 ○宮本委員 例えば先ほどの内閣府の青少年育成施策大綱とか,それから各地方自治体の青少年行動計画というものがあると思いますが,その行動計画等に若者の参画を必ず入れる。そして,その具体化の検討を各自治体がやる。これはその気になれば例えば来年からというふうにして先進的な自治体を中心にして1年やり,2年目に広げていくという形でやることは可能ではないかと思います。   その点で早急に内閣府に,青少年育成施策大綱が完成する前にこの議論を持っていって,参画という一語をきちんと入れることがまず大事ではないかと思います。この時期を逃すと5年後になるのですね。やはり方向付けをしない限り進めず,また,青少年育成施策大綱というのはやはり各自治体の取組に非常に大きな影響を与えるので,そこに青少年,若者の参画,とりわけ意思決定への参画,これを青少年施策の重要な柱にするということを入れることが力になるのではないかと思います。 ○鎌田部会長 その場合の若者というのはどのぐらいの年齢を想定していますか。 ○宮本委員 これは実現性がどうかということは分かりませんが,子どもから若者,若者ということは20代ぐらいまでといっていいのかなと思います。つまりあらゆるレベルでというのが重要で,いきなり若者になって意思決定,参画をやろうとしてできないのが日本の問題なので,小さいときから絶えずそういう環境を作り,そこに参画させていくという取組の中で10年ぐらいたてば成果が上がってくるというような性格のものだと思います。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。あるいは事務当局からこういう点を聞きたいということはございますでしょうか。 ○神吉関係官 宮本委員に教えていただきたいのですが,青少年育成施策大綱の位置づけということですが,それに盛り込まれれば内閣府なり,各地方自治体かもしれませんが,実際に施策としてやられているのか,それとも単に理念だけで終わってしまうことが多いのかについて,その実情が分かりませんので,もし御存じだったら教えていただければと思います。 ○宮本委員 先ほど御紹介があった平成15年の青少年施策施策大綱が初めて青少年,若者の社会的自立というキーワードを大きく柱に立てたのです。その後,どういうことをやったかと言いますと,包括的自立支援に関する検討会が翌年行われ,私はその座長だったのですが,要するに大綱があったことで動いたのだと思うのです。   包括的自立支援という提言を出し,それがいろいろな自治体に波及しまして,それとこの時期は失業,フリーター問題がちょうど重なっていた時期だったので,厚生労働省の施策とかなり連動した形で各地でフリーター,ニート対策,ワンストップショップ,それから文科省のキャリア教育というものと同時並行で動いたと思います。   しかし,そのときには多分参画というのは一語ぐらい入ったかもしれませんが,やはり自立支援,特に困難を抱える青少年,若者の自立支援が核になっていたので,意思決定への参画というのはむしろ陰に隠れてしまったところがあったように思います。   したがって,今回,その柱をもう一つ入れればそれによって地方自治体の流れが一つ大きく方向づけられる可能性はあると思います。 ○鎌田部会長 ほかにはいかかでございましょうか。   結局,先ほどの(2)のⅠ案,Ⅱ案,Ⅲ案も相変わらず優劣つけ難いという状況のままでありますけれども,その点についての御発言はございますか。 ○大村委員 Ⅰ案,Ⅱ案については相対的な差ではないかという御指摘もあり,それを前提にしてですが,私自身は下げるということならばそれなりの措置は必要だろうと思いますので,皆さんがおっしゃっているところの中では比較的長い猶予期間が必要なのではないかと思います。宮本委員も直前にお触れになりましたが,教育等々は効果が出るのになかなか時間もかかりますので,いつまでも待っているというわけにはいかないのですが,ある程度のことをして,その実績が共有されることが前提になるだろうと思います。   出澤委員も御指摘になりましたが,社会意識があとからついてくるということがないと制度があるだけで実効性を持つということにはならないと思いますので,それほど 短くない期間,法律ができてから5年程度の期間は必要なのかと私自身は思います。   ただ,これは報告書に書いてあることですが,民法の改正は行うということですので,5年たてば施行されるということはこの考え方ですと決まるわけです。それを前提に条件整備をする,条件整備を早くできれば早くするに越したことはありませんので,5年じっくりかけてということではなくて,5年の中でどんどんやる必要があると考えます。しかし念のために5年ぐらいのものを設けるというのが穏当なところなのかなと思います。 ○神吉関係官 大村委員にお伺いしたいのですが,大村委員の御意見はⅡ案でも大体5年ぐらいではないかというお話でしたけれども,確かに法務省ができることであればⅡ案を採用して,5年ぐらいの間に法務省の関連施策としてやっていこうということでいいのかもしれませんが,ここに挙がっている施策は法務省だけでできることはほとんどないということで,教育の問題についても算数とか国語とか基礎的なものに重視をしていっていますので,消費者教育が今あまり重視されていないのが現状だと思います。そういった状況が続いてしまって5年が経過して,やはり何もやられなかったという状況になってしまうと,成年年齢の引下げが施行されて消費者被害が増大してしまうということになってしまうのかなと思うのですが,そういった懸念があってⅢ案が出てきているのかなと思います。   そういった現実可能性もあるのかもしれませんが,その点について大村委員はどのようにお考えか,お聞かせ願えればと思います。 ○大村委員 Ⅱ案で5年程度は必要なのかなと申し上げましたのは,以前この猶予期間をおっしゃったのは青山委員だと記憶しているのですが,青山委員の御発言を前提にしてのことです。そのときに青山委員がおっしゃったのは,政府でしっかりとした態度表明をして,施策を講ずるのだということで,その施策を実現するための期間を設けるべきだという御意見だったと思います。その期間が短いのが望ましいのですが,短いということになりますと,今,神吉関係官がおっしゃったように実際に短い期間ではできないではないかということになりますので,実効的な施策を講ずるのに必要な期間は可能な範囲で十分に設けたほうがいいのではないかというのが私の意見です。ですから,きちんと手続的に政府内での意思決定をしていただいた上で,しかし必要な期間は長めにとるということでございます。 ○青山委員 Ⅰ案とⅡ案は相対的と言えば相対的ですけれども,かなり内容は違うのだと思っております。Ⅰ案というのは普通の法律の施行期間,公布から3年なら3年,2年なら2年とするということですが,Ⅱ案は私が10年というのをこの前口に出しましたが,相当長い期間を置いて,その中でどういうふうに施策が実現できるかということをきちんと見ていこうということですから,単に施行期間という意味ではなくて,その期間が閣議決定なら閣議決定を前もって行い,文科省はどういうことをやる,厚生労働省はどういうことをやる,内閣府はどういうことをやるということをきちんと決めて,その推進本部みたいなものを作って,そのフォローをしていって,そしてこれならばできるという見通しをもって施行するというぐらいの慎重さが必要ではないかという意味で10年と申し上げました。10年というと世の中変わってしまうと先ほど御意見がありましたが,10年は長すぎるにしても私の気持ちとしてはそういうことなのです。   ただ,そういうとその期間が過ぎて判断できないということになると,施行できないかということになると,それは法律の作り方としてはやはりおかしいのではないか。目標としては,5年なら5年,7年なら7年という期間で全力をもってやるんだということで,一番長くても,その期間の最終日にはそれが施行されるという法律の建前がいいのではないかという意味で申し上げたので,Ⅰ案は私としては少し違うのではないかと思って,私はⅡ案を申し上げた次第です。 ○鎌田部会長 この点について,それぞれの御意見を承れればと思いますが,いかがでしょうか。   どちらかというと消極論の方はこの中でどれかと言えば,先ほどのような書換えをしたⅢ案,すなわち条件が整備されない限りは踏み切るべきでないという案に一番近いということではないかと思います。そういう意味ではⅠ案,Ⅱ案,Ⅲ案は拮抗しているとしか言いようがないでしょうか。 ○岡田委員 私はⅡ案を支持いたします。というのは,5年は今の青山委員の話を聞いていて短いかなという感じがしますが,かと言って10年はちょっと息切れするかなという感じがするので,法律できちんとめどはつけておいて,その中で関係のところはきちんと整備していくという,それが法律ではないかと思うからです。 ○木幡委員 参考人としてお越しいただいた斎藤環氏がおっしゃったことがメモしてあるのですが,引き下げるのであればまず世間の意識改革が必須というふうにおっしゃっておりました。ここではどうしても施策だけなので,そういったことも含めて書いたほうがいいのではないかなと思いました。ですから,この施策が実施されればOKというだけではないので,この3の書き方は非常に難しいですね。   施策であれば,この施策は必要だとまずこの部会で決めた上で,それがどの程度それぞれが実行されたか,これはちょっと漠然としたままなので,ある一部だけを書くと,ほかはやらなくていいような誤解が生じてしまうのでしょうか。 ○鎌田部会長 その点は出澤委員からも世論の形成ということも含まれているという御指摘があったところです。制度作りをする側からは,制度の枠内で語れることしかなかなか言えないという限界もあると思いますが。 ○佐藤幹事 今,木幡委員から成年年齢を引き下げる場合に必要となる施策として,ヒアリングでお招きしました斎藤参考人から御指摘がありました世間の意識改革ということが出ましたが,世間の意識改革というのは,その効果が出たか調べるのはなかなか難しく,どういう状態になったら世間の意識が変わったか調査するのはなかなか難しいところもありますし,だれがどういうふうに判断するかという問題もありますので,それを成年年齢を引き下げる場合の施策なり条件という形にするのはこの場合はなかなか難しいかなということで,報告書案から落とさせていただいたのですが,木幡委員の御意見も踏まえて検討をさせていただきたいと思います。 ○木幡委員 施策にしても,それが盛り込まれたからといって実際に本当に若者たちに浸透したかというのはまた分かりづらい,測りづらいですよね。 ○佐藤幹事 御指摘の点はおっしゃるとおりかもしれません。そのために報告書案の第3の6の(3)におきまして,どの程度施策が講じられれば,各施策の充実が図られたといえるのかを皆様に具体的に議論していただきたいと思います。具体的な施策ということでお挙げいただきましたので,すべて講じられることが必要だというのはおっしゃるとおりですが,ではどこまで施策が講じられたら成年年齢の引下げが可能になるかという観点で見ると,全部ではなく,どれとどれかというところを御指摘いただきたいと思います。 ○五阿弥委員 制度が変わると意識が変わるのか,意識が変わると制度が変わるのか,難しいと思うのです。介護保険制度が導入されたときに,地方では絶対に家によそ者は入れないだろうと言われていました。それが多分介護保険制度を進める上で一番の壁だろうと言われていたのに,蓋をあけてみると地方でもどんどんヘルパーさんを家に上げる。かなり急速に制度ができて意識が変わったという大きな例だったと思うのですが,ここも意識が完全に変わるまで制度を変えないということは,それはなかなか難しいと思いますが,多分いろいろな施策をやっていく中で人々の意識も変わってくるのかなと思います。   その場合,Ⅱ案の5年から10年というのは,やはり僕は長すぎるのではないと思います。だから,これを作るときにはアクションプランみたいなものを作って,早急にやるもの,消費者保護とか,あるいは時間がかかるもの,そうしたアクションプランみたいなものを多分作るのだろうと思いますが,それでも最大5年かなという気がします。   5年と書いてしまうと,緊急にやるべきものも多分5年かかってしまうのです。だから,ここの書き方というのは例えば一定の猶予期間とかそういう形でごまかすというか,ぼやかすということは可能なのでしょうか。 ○鎌田部会長 それは可能ですし,先ほど青山委員,大村委員から御説明があったような内容をもうちょっと反映することができたら,どうしてこういうのがⅠ案と別の形で提案されるのかがもう少し分かりやすいような表現になりそうですが,おっしゃるように年数のほうにばかり関心が向くと本来の提案の趣旨からずれて理解されるおそれもありますので,その点も含めて事務当局に検討をしてもらうことにします。 ○今田委員 この報告書全体の構成は,下げる場合,上げる場合をかなりニュートラルに,上げる場合にはこういうメリットもあるしデメリットもある。下げる場合にもメリットがある,デメリットがある。二つの選択肢に関してニュートラルに論述していきているわけです。第3のところで,当否についてということで,ニュートラルに下げること,上げることの当否を非常にクールにきちんと議論されてきている。にもかかわらず,この第3の6の(3)では,下げた場合の施策は,となっているものですから,違和感があるのだと思います。   両論併記をずっとやってきたわけですから,ここで下げるべきことを議論するならば,下げることのメリット,意義を一度体系的に整理した方がいいのではないでしょうか。   私がどうしても引っかかるのは,どうしても下げなければいけないという積極的な意義が分からないからです。下げたらいろいろいいことがありますよという議論は出てきていますが,なぜ下げなければいけないのかということについての説得力がない。なのに下げるためにどのような政策が必要かという議論につながっていくから皆さんなんとなくしっくりこないのだと思うのです。   要するに下げる積極論ということの説得性をもう少しきちんと説明できれば,それにのっとって引下げをして,下げるために施策はこういうものが必要だという,こういう筋立てになるのだと思います。   私は下げることに積極的にどうしてもなれない。積極論の根拠は若者の自立と参画の二つだと思います。若者の自立の重要性はだれも否定しない。だけど,早くというのはどういう意味かということが問題です。前回も申し上げましたが,どんどん若者の自立年齢は遅くなっている。いつまでも大人にならないで自立しないから早く自立しなさいという意味の早くというのは,どの辺になったら早いのかというのが問題で,18歳なのか,16歳なのか,何なのか。そこもあいまいなのです。   そういう意味で,自立ということは重要だという点は,みんな異論はないと思うのですが,早くというのがどのレベルか。20歳という制度を採用していますが,それが遅いのか,早いのかという議論もされていない。20歳であるから,遅くなっているのかということがよく分からないわけです。ということで早くの概念規定が非常にあいまいであるといえるかと思います。   もう一つは,参画ということについて言うと,それは政治の問題なのではないかと思います。選挙制度など,別の制度の問題として本格的に取り組む課題であると思います。また,社会参画の必要性について,だれも異論がないと思います。ただ,成人を18歳にするか19歳にするかといった議論と結び付かないのではないか。 ○鎌田部会長 全体のストーリーが分かりやすいような工夫は可能な範囲内でしてきたつもりですが,何か事務当局からございますか。 ○佐藤幹事 御指摘の点はよく分かります。報告書案の第3の1におきまして,社会参加につきまして,今田委員御指摘のとおり,若年者の社会参画が必要であるものの,これが民法の成年年齢の引下げと直接結び付かないのではないかという意見が出されたことも書いてあります。報告書案は,基本的にニュートラルに書いてございまして,引下げ賛成の立場からの意見も,反対の立場からの意見も記載していますので,引き下げるべきであるという理由を全体としてまとめて書いておらず,多少分かりづらくなっているかと思います。国民投票年齢,選挙年齢との関係,諸外国の成年制度と一致させる必要性についても両論あったということで,そのまま記載しています。それぞれについても引下げ賛成の立場から,あるいは引下げ反対の立場から書いてありますので,確かにそれは分かりづらくなっているかとは思いますが,事務局としてはこういう書き方でやむを得ないのかなと思っております。   6のところだけ引き下げる場合お話だけであるという御指摘ですが,先ほどの議論でもございましたように,皆さん将来的に引下げに絶対反対であるという御意見ではないということですので,まず成年年齢を引き下げるが,施策の実現のため一定の猶予期間が必要であるという方も,今の段階では引下げには反対であるが,一定の条件が整えば引き下げてもよいという方もおられるので,その場合の条件というか,必要な施策ということで書きました。ですので,ここだけは確かに引き下げる場合に必要となる施策ということで一方側から書いたように見えますが,そこは記載上やむを得ないのかなと思っています。 ○竹下関係官 報告書の19ページには,三つの案が出ておりますが,Ⅰ案とⅢ案は法制審議会として法務大臣から民法の改正をするかしないかという諮問に対する答えとしてできることだと思うのですが,Ⅱ案は,法制審議会でこういう答申をしたときにどういう意味を持つのかというのが少し疑問です。   先ほどの青山委員のお話のように,ほかの省庁が所管している法律等が整備されたら,あるいは5年までに整備されることを条件としてという趣旨ですと,そのような答申は今まで少なくとも法制審議会ではなかったのではないでしょうか。今の段階は中間報告でパブリックコメントに出すということですから,このままでもよいのかもしれないのですが,最終的にこういう形の答申というものがあり得るのか。あるいは,そのような答申がどういう意味を持つことになるのかというあたりのことを事務局としてもし詰めておられるのだったら伺いたい。 ○佐藤幹事 お答えします。Ⅰ案でしたら当然すぐ引下げという形になるかと思います。Ⅱ案は一定の猶予期間を置きながらも,それは引き下げるという結論にこの場合だと答申としてはなるのかなと思っています。問題は多分Ⅲ案だと思いますが,Ⅲ案についてはもちろん諮問としてこれこれの施策がされた場合に引き下げるべきであるという答申自体はあり得るものと思っております。 ○竹下関係官 Ⅲ案は答申としてはノーになるわけですよね。ですから,これはあり得る案であると思います。Ⅱ案というのが法制審議会の答申として,あるいは法務大臣がそういうことを言われたとして,どういう意味になるのか少し疑問に思うのです。言うまでもないことですが,裁判員法のときは内閣府でやっている話ですね。閣議決定した司法制度推進計画ならば,各省庁が計画に従って自分の所管する法令の整備をすることになる。ところがこれは法務省の話ですから,法務省が,ほかの省庁がこういう施策を実施したら5年後から施行になるのですよと決めても,それが一体どういう意味を持つのかというあたりがよく分からないのです。   今すぐにお答えいただかなくてもいいのですが,そういう問題がありそうなので,詰めていただければと思います。既に詰まっているというのならそれでも結構ですし,少しお考えいただく必要があるのではないかという気がいたします。 ○神吉関係官 詰めているわけではないのですが,イメージ的にはⅡ案とする場合には成年年齢の引下げをする,猶予期間としては5年なり10年置く。それが最初にあります。そのほかの各施策を行うというのは法務省ではできないことがたくさんありますので,要望事項としておそらく書くことになると思います。要望事項というのは法制審の答申でこれまでも例がございますので,そういったイメージなのかなと思っております。   Ⅱ案を採用すれば,5年,10年の間にこういった施策を行うということを条件にということは,おそらく竹下関係官がおっしゃるとおりなかなか書きづらいのかなと思いますが,そこは技術的なことかと思いますけれども,今後も検討してまいりたいと思います。とりあえず私の今のところのイメージを申し上げさせていただきました。 ○鎌田部会長 周辺環境の整備が重要であるから,一定の長期の猶予期間をもって施行せざるを得ないぐらいしか,こちらとしては言えないですね。その猶予期間中にいろいろやってもらえることが望ましいとか,期待されるぐらいの表現になるのかもしれないですね。 ○竹下関係官 仮に5年後ということにして,その間に各省庁がここで述べているような施策を実施してくれることを要望するとしますね。しかし,その要望が満たされないとしたときに,一体5年後から施行になるのかならないのかということになってしまうわけです。 ○神吉関係官 おそらくⅡ案を採用した場合は5年で施行するという話をしていますので,施策が十分にされなかったとしても施行せざるを得ないのかなと思います。ですので,本当に各省庁でやられるかどうか不安だということで今の段階では何とも言えませんねということでⅢ案が出てくるのかなというイメージで整理をしていたのですが。各省庁に対する信頼をどこまで置くのかということによってⅠ案又はⅡ案をとるか,それともⅢ案をとるかが分かれるのかなというところかもしれません。 ○竹下関係官 そうなると,先ほど何人の方から出ていたようにⅠ案とⅡ案との差が非常に相対的なものになってしまう。要するに1年,2年になるのか,5年になるのかという話になってしまいますね。だから,Ⅰ案と違うというと,Ⅱ案は踏み切るのだという御趣旨だったけれども,踏み切ったことにならないということですね。つまりこの答申の外にある条件が満たされれば踏み切ったことになるけれども,満たされなければ踏み切らなかったことになるという話になりそうに思うのですが,事務局で考えていただければ結構です。 ○鎌田部会長 その点は事務局での検討をよろしくお願いいたします。 ○木村委員 聞き漏らしたと思うので確認したいのですが,報告書案18ページの6は,成年年齢を引き下げるか引き下げないかをとりあえず置いておいて,成年年齢を引き下げる場合に必要となる施策の実行について議論をしたら,こういう3種類の意見がありました,いかがでしょうか,という趣旨と理解してよろしいですか。 ○神吉関係官 そのような理解でよろしいかと思います。 ○木村委員 ありがとうございました。 ○鎌田部会長 全く両論併記状態のままでここまで進んできてしまいましたので,この先どちらに進むにしろ,ありとあらゆる可能性をすべて議論しておかなければいけない。それから,パブリックコメントでも,いろいろな意見が現にあるのですから,いろいろな意見についての御意見を伺うため,検討すべきことは全部検討されているというところまで,専門の審議会としてはやっておかなければいけないということになります。いろいろなことが出てきていて,通して読むとあっちへ行ったりこっちへ行ったりという印象を受けるかもしれませんが,当面御容赦をいただいて,できるだけそのような関係が分かりやすいような整理の仕方,表現の仕方,今関係官から御指摘があったような実務的な問題についての対処ということをこの後集中的に事務局で検討していただくようにいたします。   あともう1点,ブラケットが付いている部分といたしまして,第5の養子をとることができる年齢というところについてもブラケットが付いておりますので,事務当局から説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 報告書(案)の22ページでございます。養子をとることができる年齢につきまして,部会では成年年齢を引き下げたとしても引き下げるべきではないということで意見が一致したものと考えますが,現状のまま20歳とすべきという乙案か,現状よりも引き上げるべきとする丙案かにつきましては大勢を占める意見はございませんでした。この論点につきましては,これまであまり意見が出されませんでしたが,いずれの案を支持するのか御意見をいただきたく存じます。 ○鎌田部会長 現時点までの議論の認識といたしましては,養親年齢について引き下げるべきだという積極的御意見はなかったと認識しております。そうなると現状維持か,あるいはむしろこれは引き上げていいではないかということなのか,その点について御意見がありましたらお聞かせ願えればということでございます。 ○大村委員 私の印象を申し上げますと,この点について両論あったということはそうだと思いますが,ここでどうであるということを議論するのはかなり難しいことではないかと思います。というのは,ここで言っている養親年齢は普通養子縁組を想定されていると思いますが,普通養子縁組には他にも様々な問題があるのではないかと思います。それについてどういう見通しを持つかということとの関連で,この年齢問題も議論されるべき事柄でありまして,年齢だけを取り出して議論をするというのは必ずしも適当ではないのではないかと思います。   ただ,そのことは現在の年齢でよいということは含意しない。ということで,年齢は問題であるかもしれないけれども,今ここで議論することは適切ではない。下げることだけはしないということではないかと思います。 ○鎌田部会長 これは実際に法改正が俎上に上ったときに成年と書いてある部分をそのままにしておくわけにはいかない。そのままにしておくと,仮に成年年齢を18歳に引き下げる場合には,自動的に18歳になってしまう。そこの部分を成年から何かに書き換えるとなると,20歳と書くのか,25歳と書くのかということをやらざるを得ない。本来であれば養子制度全体を見直す中で決めるべきことなのですが,成年年齢の引下げをするとなると実際上連動して同時に定めなければいけない問題ということです。 ○大村委員 その観点からは20歳なのではないでしょうか。それは繰り返しになりますが現状を維持し,将来の検討にゆだねるということではないでしょうか。 ○鎌田部会長 ほかに御意見はいかがでしょうか。   水野委員の先だっての御意見も基本的には20歳ということでしょうか。 ○水野委員 そういうことでございます。20歳が積極的にいいということではありませんが,議論できる場ではないので下げることはしないという,大村委員と同じ認識でございます。 ○鎌田部会長 引き上げるべきだという御意見の方がいらっしゃればお伺いしたいと思います。   特になければ,現時点では現状維持という意見以外の積極的御発言はないという整理になると思いますが,それでよろしゅうございますか。   これまで,ブラケットのついたところにつきましては御議論をいただきましたが,その他の点についてここだけは発言しておきたいということがございましたら,御発言いただければと思います。いかがでございましょうか。   よろしゅうございますか。それでは,報告書(案)に対する委員,幹事の方々の御意見は出尽くしたものと解させていただきます。   本日の審議はこの程度にしたいと思いますが,次回以降の進行について申し上げますと,次回の部会におきましては本日の審議の結果を反映した中間報告書を御決定いただいて,それをパブリックコメントに付し,年明け以降パブリックコメントで出された意見を踏まえて最終的な部会意見を取りまとめるべく更なる審議を行っていくという予定にいたしております。 ○出澤委員 確認ですが,パブリックコメントは今年中に付すということですね。 ○佐藤幹事 はい。 ○出澤委員 分かりました。 ○鎌田部会長 最後に事務当局から次回の議事日程等について説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 次回の議事日程について御連絡をいたします。次回の日程は平成20年12月16日(火曜日)午後1時30分からで,場所は本日と同様,法務省20階の第1会議室で行う予定でございます。   議事内容につきましては,先ほど部会長からも御説明がありましたとおり,次回は中間報告書を確定していただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。 ○鎌田部会長 それでは法制審議会民法成年年齢部会第10回会議を閉会にさせていただきます。本日は長時間にわたり御熱心な御審議を賜りまして誠にありがとうございました。 -了-