法制審議会民法成年年齢部会 第13回会議 議事録 第1 日 時  平成21年3月27日(金)  自 午後1時31分                        至 午後4時10分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民法の成年年齢の引下げの当否について 第4 議 事 (次のとおり)           議 事 ○鎌田部会長 それでは,定刻となりましたので,法制審議会民法成年年齢部会第13回会議を開催いたします。  本日は,内閣府,総務省,文部科学省及び法務省大臣官房司法法制部の担当官に,関係官として御出席いただいておりますので,御紹介いたします。  まず,内閣府からは,政策統括官(共生社会政策担当)付参事官(青少年育成第1担当)の大塚幸寛参事官に御出席いただいております。  続きまして,総務省からは,自治行政局選挙部選挙課荒川敦課長,嶋一哉理事官に御出席いただいております。  続きまして,文部科学省からは,初等中等教育局教育課程課の小幡泰弘課長補佐に御出席いただいております。  続きまして,法務省大臣官房司法法制部からは,中川深雪参事官に御出席いただいております。  それでは,まず事務当局から配布されている資料について説明してもらいます。 ○佐藤幹事 事務当局から御説明させていただきます。  第13回会議のために配布させていただきました資料の目録は,事前に送付させていただきました資料目録のとおりでございます。  部会資料といたしましては,事前に送付させていただきました資料番号42,43-1から43-3まで,44-1から44-6までと45がございます。  参考資料といたしましては,事前に送付させていただきました資料番号26-1,27及び28がございます。また,参考資料26-2,26-3として,本日席上に本を2冊御用意させていただいております。  まず,部会資料について御説明いたします。  資料番号42は,総務省からちょうだいいたしました国民投票法・選挙権年齢に関する資料でございます。この内容につきましては,荒川関係官から後ほど御説明いただきたく存じます。  資料番号43-1から43-3までは,内閣府からちょうだいいたしました青少年育成施策等に関する資料でございます。この内容につきましては,大塚関係官から後ほど御説明いただきたく存じます。  資料番号44-1から44-6までは,法務省大臣官房司法法制部からちょうだいいたしました法教育に関する資料でございます。これらの内容につきましては,中川関係官から後ほど御説明いただきたく存じます。  資料番号45は,「今後検討すべき論点について(改)」と題するものでございます。前回の第12回会議におきましては,今後御検討いただきたい論点として,事務当局において作成した部会資料40に基づき御議論をお願いしましたが,この部会資料40に,前回の部会で出されました皆様の御意見を反映させまして,作成し直したものが部会資料45でございます。その詳細につきましては後ほど御説明させていただきます。  続きまして,参考資料につきまして御説明いたします。  参考資料26-1から26-3までは,法務省大臣官房司法法制部からちょうだいいたしました資料でございます。これらにつきましては,中川関係官から後ほど御紹介があるものと存じます。  参考資料27は,衆議院法制局からちょうだいいたしました「世界各国・地域の選挙権年齢及び成人年齢」と題する資料でございます。この資料は,題名のとおり,世界各国における選挙権年齢と成人年齢がどのようになっているのかを記載したものでございます。世界各国196か国を対象として調査しました結果,選挙権年齢については,データのある192か国中170か国におきまして18歳以下となっております。成人年齢については,データのある187か国中,141か国におきまして18歳以下となっております。  この表を見ますと,選挙権年齢は18歳の国が圧倒的に多く,成人年齢も18歳である国が多数を占めていること,選挙権年齢と成人年齢が同じ年齢である国が多数であること,ただし選挙権年齢は18歳であるが,成人年齢はそれより高くしている国も相当数あることが読み取れるものと思われます。  参考資料28は,青少年総合対策推進法の法案と提案理由です。大塚関係官から後ほど御説明があるものと存じます。  以上で配布させていただきました資料について御説明させていただきました。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。  それでは,本日予定をしていた議事に入ります。  まず, 内閣府の大塚関係官から御説明をお願いいたします。 ○大塚関係官 内閣府の大塚でございます。 お手元の資料43-1を御覧いただきたいと思います。新しい「青少年育成施策大綱」の概要でございます。 この大綱は,閣議決定により設置された青少年育成推進本部において,昨年12月12日に決定されたものでございます。平成15年12月に最初の大綱を作りまして,それから5年たったということで見直しを行い,新たな大綱となったものでございます。 中身でございますけれども,大きく色分けで,黄色の部分と緑の部分,ここが一番中身の部分でございますので,ここを中心に御説明いたします。 この黄色の部分は,まず(1)ということで,上に左から,乳幼児期,学童期,思春期,青年期及びポスト青年期という四つの成長ステージごとに,それぞれの施策が書いてございます。私どもが青少年という場合には,0歳からおおむね30歳未満,20代までを青少年ととらえまして,その上でさらにここにお示ししたような四つの年齢ステージに分けて,それぞれの施策をまとめております。 乳幼児期は,小学校に入るまでのところ,学童期が小学校,思春期が中学校・高校相当,そして最後の④が18歳以上というふうにお考えをいただければと思います。 まずは,その四つのステージごとにそれぞれ施策をここにお示ししたような形でまとめております。 乳幼児期は,どちらかといえば青少年本人というよりは,その親御さんなり家庭も含めたトータルとしての支援策ということで,子育て家庭の支援なり,あるいは子育てをしやすいような仕事と家庭の両立環境の整備なり,さらには保育所等々での養育環境の整備といったことが中心でございます。 それから,学童期に入りますと,もちろん学校教育は当然のことですが,さらには食生活と基本的生活習慣,規範意識,それから最近,集団で外で遊ぶ機会がなかなかないと,こういったことが青少年の成長にも影響を与えているのではないかということが言われております。そういった集団の遊びの機会の提供についても今回書いております。 それから,思春期に入りますと,この辺から,自立・就業を意識した部分がだんだん色濃くなってまいります。あるいは,社会の一員としての認識を高めるようないろいろな社会奉仕あるいは国際交流といったことが課題となりまして,そして青年期に入りますと,ここは高等教育もございますが,就職・就業・自立といったようなことをかなり意識した施策をまとめております。 今回特徴的なのが,この青年期の後に「ポスト青年期」を位置づけた点でございます。先ほど申し上げたように,この大綱は,一応30歳までを考えておりますが,特にこの欄に書きました就業や社会的自立にかかわる部分というのは,最近遅れが指摘されておりまして,いろいろな若年者の雇用とか就業の対策も,若年者というくくりで,もう30代までを念頭に置いたような施策が進んできておりますので,なかなかそこまでを青少年に含めるのは厳しいわけですが,そういった実態を考え,ポスト青年期ということで,そういった自立にかかわる問題を20代から引き続き抱えているような場合には,30代に入っても当然それは支援をするべきではないかと,そういったような考え方で,ポスト青年期と位置づけたものでございます。 それから,(2)としまして「困難を抱える青少年に対する施策」を書いてございます。今,申し上げた四つの年齢期については,言ってみれば問題のあるなしにかかわらず,それぞれの成長期に応じて行う取組を取りまとめたのに対し,この(2)は逆にいろいろな青少年が抱えている困難の態様ごとに分け,それぞれ必要な施策を取りまとめたものでございます。これも大きく①,②に分かれておりますが,①のほうがⅰからⅵまでということで,簡単に申し上げますと,例えば障害,少年非行,不登校やひきこもり,あるいは労働市場で様々な不利な条件下にあるようなケース,そして虐待や犯罪など,被害者としての様々な青少年,そして最近,外国人の青少年の問題も出てきておりますので,こういったことを個別の態様ごとに位置づけたのが①でございます。さらに②ということで,困難を抱える青少年を総合的に支援するための取組を今回新たに設けました。 これは,これまでに申し上げた個々の態様ごとの取組もさることながら,特に最近の問題であります,ニートやひきこもりといった問題の背景をたどっていきますと,例えば不登校,ひきこもり,あるいは障害の話,さらには虐待と,いろいろな要素が複合的に絡み合って,そういった自立に困難な状況が生まれているというようなことが少しずつ分かってまいりましたので,個々の取組はもちろん,全体の総合的な支援を推進するような,そういう取組をきちんと今回の大綱で位置づけようということから,②を位置づけました。例えばいろいろな支援のメニューが地域でもそろいつつあるわけですが,そういったものも有機的に連関させてトータルとして提供できるような,そういう地域における支援ネットワークを作るというものです。あるいは,そういったネットワークの中で,一人一人の困難を抱えている若者に対処するためには,どうしてもその生の個人情報を扱わなければいけないわけですが,そういった個人情報等にも配慮しながらどのように共有していくかといった問題にも対応しようということを考えております。さらに,「訪問支援(アウトリーチ)」と書いてございますが,特にひきこもりの若者あるいはそういう困難度の高い若者ほど,例えば市町村に相談窓口を設けても,なかなかその窓口に来てくれないので,むしろこちらから積極的に出掛けていく,そういった訪問支援的な発想も必要だということで,こういったことについて,新たな法的措置も含めた検討をしていこうということを今回新たに盛り込みました。実はこの部分が後ほど御説明いたします青少年のその法案にもつながっていく部分でございます。 それから,緑の部分が右下にございますが,黄色の部分が青少年本人に対する施策であるのに対し,この緑の部分というのは,青少年をめぐる周囲の環境にどうやってアプローチし,必要な対策をとっていくかという部分でございます。これも(1)から(3)までございますけれども,(1)というのは,家庭なり学校なり地域にどういう施策を講じていくか,そして(2)が,そういった様々な地域の要素を,ここもやはりネットワークというのがキーワードになっておりますが,いかにつなぎ合わせてトータルとして相乗効果を上げていくか,そして(3)が,特に最近こういった青少年の周辺の状況変化の中でも,情報化の進展あるいは消費環境の変化というようなことが言われておりまして,そういった点に特に注目いたしまして施策を取りまとめたものでございます。 続きまして,資料43-2の御説明に移らせていただきます。 これが青少年総合対策推進法案の概要でございまして,本体が参考資料28としてお配りをしているものでございます。 この法案につきましては,先ほど既に幾つか背景を御説明いたしましたが,一番上が背景でございます。ニートなど若者の自立をめぐる問題といったことが,特にこの5年間ぐらいの間にますます意識され,深刻化してまいりました。先ほど申し上げたように,その背景をたどっていくと,いろいろな複雑な問題が背景に存在していることも見えてきたわけでございます。 あわせまして,青少年にかかわる問題というのは,こういった問題以外にも,例えば虐待,いじめ,情報化の進展の中での有害情報の問題あるいは青少年自身による重大事件等々,全体で見ても非常に厳しさを増しているというふうに考えております。 そういう中で,その右の矢印の先の「趣旨・目的」というところでございますが,青少年というのは,非常に幅広い年齢幅で,また教育,保健・医療,福祉,雇用あるいは矯正・更生保護等々の分野にいろいろ分かれており,そういった個々の分野ではそれぞれ必要な法律が制定をされ,取組がなされているわけでございますが,青少年という切り口でトータルにその施策を推進していくための枠組みがこれまでなかったということが,実は前々から言われておりました。そういった意味で,総合的に対策を進めていくための大きな枠組みとしての,いわゆる基本法的なものをこの際きちんと作ろうではないかといったことが一点目でございます。 それから,もう一つは,その中でも特に今日的な問題として指摘されておりますニートなどの自立をめぐる問題については,基本法的なものからもう少し踏み込んで,具体的にどういう施策を更に講じていったらいいのか,そういったことを法律に盛り込もうということで,ポイントとしましては,その地域地域で既にいろいろな分野で講じられている施策をうまくつなぎ合わせて,それぞれのひきこもりなりニートなりの方の状態に合った支援のメニューをうまく提供していけるような,そういう地域のネットワークを整備しようと,そこに主眼を置いて今回作った法律でございます。 こういったところが資料中に書いてございますが,青色の下地の部分が言ってみれば基本法的な部分,そしてオレンジないしはクリーム色の楕円の部分がニート,ひきこもり等のネットワークの部分でございます。 この基本法的な部分というのは,既にいろいろな基本法がメニューとしてあり,その他の基本法と類似の部分が多くございますが,例えばこの一番左側の真ん中あたりに「青少年総合対策推進本部」というのが書いてございます。こういった総合的に施策を推進するための枠組みとして,新たに法律によって総理をヘッドとする本部を作り,その本部が,既に閣議決定している青少年育成施策大綱をさらに法律に位置づけて,青少年総合対策推進大綱としてより強力に推進し,そしてここからが新しい話になりますが,都道府県,市町村についてもこういった国の大綱を勘案して,それぞれの中で総合的な視点からの計画を作っていただくということで,青少年計画について規定しております。 それから,左下の青色のところに,こういった全体としての青少年施策を進めていく上での基本理念,あるいは国としての基本的な施策の方針といったようなものも書いております。 それから,オレンジの部分でございますが,先ほど申し上げたように,ここは特にニート,ひきこもりを念頭に置き,自立した社会生活を営む上での困難を有する青少年を地域で支援する,そのためのネットワークづくりということでございます。 資料中,真ん中に「地域協議会」と書かれたオレンジの楕円を見ていただくと,その周りに,「雇用」とか「保健,医療」とか「教育」とか「福祉」という文字を御覧いただけるかと思いますが,こういう個々のパーツは既に地域に存在をしていて,それなりの役目を果たしています。 しかし,こういったものが言ってみれば今はばらばらで存在しているがために,先ほど申し上げたように,いろいろな複合的な要因を抱えている若者には,例えばいきなりハローワークとか雇用の話に行くのではなくて,まず最初は場合によっては保健,医療できちんと手当てをし,そこから福祉のほうにつながって,そういった必要な手当てをした上でハローワークにつなげるといったことが必要になるわけですが,そういった一人一人に合った支援メニューを段取りよく提供していけるような仕組みとして地域協議会というものを作ることとしております。そこに関係機関,それぞれのところにまた線が伸びて点線でくくってあるのが,それぞれの分野ごとにこのような機関が地域にあるだろうといったようなものを書いたものでございますが,こういった関係機関を一つの法定のネットワークの中にきちんと入れた上で,この地域協議会の下に全体のコーディネートを行う「調整機関」を置き,そこが中心になって,このネットワークに来るその一人一人の状況に応じて,この人に対してはまず教育と保健,医療と雇用を組み合わせようとか,そういうことを決めた上で支援をして,最終的には一番右に書いたような「就業」とか,あるいはもう一回学び直しの「修学」といったようなことにつなげていく,そういった地域のネットワークを作っていこうという,ここが今回の法律の主眼に置いているところでございます。 この法律は,3月6日に閣議決定をしていただきまして,国会での御審議を待っているという状況でございます。 最後に,資料43-3は,今の法案に関しまして,内閣府として先取り的に行っている事業でございます。今申し上げた地域のネットワークをきちんと整備するのは難しいというのが現実です。そこで,平成20年度は,千葉県市原市を始め9か所で,内閣府がある程度音頭をとって,それぞれの地域でこの資料に書いてあるようないろいろな関係機関に入っていただいて,最初は試行的ながらこういったネットワークを作り,若者支援をしていただく。あわせて,我々のほうでもいろいろな研修の場を設けるといったようなことをやっておりまして,こういった取組をさらに来年度以降広げてまいりたいと考えております。 以上,駆け足でございましたが,青少年育成施策大綱,そして青少年総合対策推進法案,最後に内閣府の関連の取組につきまして御説明をいたしました。 以上でございます。 ○鎌田部会長 どうもありがとうございました。  ただいまの大塚関係官の御説明に対しまして御質問等ございますでしょうか。 ○五阿弥委員 子供にかける予算が日本は非常に少ないというのが非常に私は気になっています。大綱には様々なメニューが盛り込まれておりますが,新年度でどれくらいの予算が組まれているのか,そして前年度に比べてどれくらい増えているのか,分かれば教えていただければと思います。 ○大塚関係官 今,細かい予算の額の資料を持ち合わせておりませんので,恐縮ではございますが,正確な額というのは,お答えをすることができません。御容赦をいただきたいと思います。 ただ,やはり非常に幅広い分野でございますので,例えば乳幼児期の予算が増えたりする一方で,思春期は逆に言うと減っているといったようなこともございますので,トータルとしては若干の増ぐらいであったかと認識しております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○神吉関係官 本日はお忙しい中,民法成年年齢部会にお越しいただきましてありがとうございました。私からも, いくつか質問をさせていただきたいと思います。  これまでも,この部会においては,若年者の自立をどのように促進していくのかについて,本日は御欠席されておりますけれども,放送大学の宮本委員などを中心にして議論を行ってきました。  そして,宮本委員からは,今回の青少年育成施策大綱の改訂の中心は,ニートやひきこもりの対策など,自立に困難を抱える青少年に対する施策が中心になりまして,欧米諸国で進んでいるような若年者の社会参加をどのように進めていくか,例えば,欧米諸国では若者が街づくりなどの意思決定に参画するという施策も採用していると聞いておりますが,そういったものについては今回は,言葉が悪いかもしれませんが,余り重視されていないというふうにも聞いております。まず,この点について,そのような問題意識が正しいのかどうかについて御教示いただければと思います。  そして,そのような問題認識が正しいとすると,それはこれからの課題,例えば,次の青少年育成施策大綱の改訂の際の課題と位置づけてよいのかについても併せて御教示いただければと思います。 ○大塚関係官 一点目のお答えでほぼ尽きるかと思いますが,確かに今回我々が意識しましたのは,やはり現に困難に直面している青少年,若者をどうするかといったところであり,そこにウエートがあったのは事実です。ですから,先ほどのネットワークの話にしても,やはり現にもう困難を抱えている,そういう意味では対処療法と言えば,確かにそういう部分がございます。ですので,法案についても,確かにそういうところを意識して作っているように見えるのも事実でございます。 一方で,そういうニートにならないための事前予防的な施策も,これは決しておろそかにしているわけではございません。ただ,どうしてもそれは,今の大綱で申し上げれば,最初に御説明した各年齢期ごとに,結局どういう施策に取り組んでいくのかという中に入ってきてしまいまして,今回の大綱では,宮本委員がおっしゃるシチズンシップ教育的なものは必ずしも明確に出ていないかもしれません。しかし,やはり社会の一員としての例えば規範意識ですとか,そういう意識をつけてもらう必要があるだろう。そのためには,漠然とした意識の育成もあれば,ボランティアとか社会奉仕といった活動への参加,あるいは,国際的な視野を持ってもらうための国際交流活動ですとか,それから最近よくキャリア教育ということが言われると思うのですが,中学校あるいはもっと早い段階,小学校ぐらいから仕事とか,あるいは自分がこういう学校で教育を積んでいった先にどういう社会なり世界があるのかといったようなことをその年齢段階に応じて早い段階から少しずつ勉強してもらう,そういった取組も文部科学省などと連携をして,この大綱にも極力盛り込んだつもりでございます。もちろんまだまだ不十分という面はあるかと思いますが,我々としてはそういった意識で今回の大綱も既にある程度作ったつもりでございます。 ○神吉関係官 ありがとうございました。 ○鎌田部会長 よろしいですか。  それでは,大塚関係官に対する質疑応答はこれで終了することにしたいと思います。  大塚関係官,お忙しい中,ありがとうございました。  次に,総務省から選挙年齢の引下げの検討状況について御説明を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○荒川関係官 選挙課長の荒川でございます。  お手元の資料42に基づいて御説明をさせていただきます。  まず,選挙権年齢の引下げについてでございますけれども,この資料の始めは,日本国憲法の改正手続に関する法律の附則の部分を抜粋したものでございます。この附則の第3条は,「国は,年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう,選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法,成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え,必要な法制上の措置を講ずる」ということで,義務付けがなされております。  したがいまして,少なくとも選挙権年齢につきましては,18歳に引き下げるという方向性が国会の意思として法律に示されているものと考えられるところでございますので,現時点におきましては,私どもといたしましては,この選挙権年齢を引き下げるべきか否かと,その是非につきまして検討することについては考えていないところでございます。  ただ,私どもは,この選挙権年齢の問題につきましては,民法上の成年年齢ですとか刑事法などとの取扱い,法律体系全般との関係,関連も十分に考慮しながら検討しなければいけないと考えているわけでございまして,まずはこの法制審議会におかれます民法の成年年齢の引下げにつきましての審議を注視させていただいているところでございます。  資料42の2ページ以降で,これも今さらではございますけれども,立法過程の議論のエッセンスを持ってきてございますので,御覧いただきたいと思います。  まず,この最初のページは,平成19年3月29日の日本国憲法の改正手続に関する法律の国会審議の状況でございます。  重要なところに横線を引いてございますけれども,船田委員の答弁で「少なくとも公職選挙法,民法の改正はきちんとしなければいけない。と同時に,特に民法に関係するものとしては少年法や刑法があると思いますけれども,特に民法と関連するところでやはり十八にしなければ整合性が合わないということについては,これはできるだけ改正を試み,改正の努力をする。」と,あるいは左のほうに目を移していただきまして,同じく船田委員の答弁でございますけれども,「公選法,民法,これは二十の年齢に非常に密接に関連をした法令であります。この国民投票法案が十八にする大前提として,少なくともこの二つは改正をしなければいけないと思っております。」という答弁がなされております。  また,引き続いて,次のページでございますけれども,「この二つの法律を含めて改正をした上で,さらに関連する法律の改正をある程度必要なものは行いまして,」と言われております。  また,1枚めくっていただきまして,平成19年4月18日のやり取りでございますけれども,葉梨委員の答弁で「少なくとも公選選挙法,民法,そして国民投票の年齢,これはそろえていくことが必要だと。そして,私どもの立法判断として,」と,3行ぐらい飛びまして,「十八歳ということを立法上の政策として提案をさしていただいておる」ということで,立法政策でこうしたものだということがはっきり述べられているわけでございます。  「ですから,」となりまして,4行目ぐらい後ですけれども,「これは一体のものである。」と,公選法が先取りとか民法が先取りという議論ではなくて,これは一体のものであるということがはっきり述べられているわけでございます。  また1枚めくっていただきまして,翌日,平成19年4月19日の参議院の委員会でございますけれども,丸の二つ目でございますけれども,憲法第15条のところ,成年者というところに関しまして,下線の部分でございます。「この成年者というのは民法の成年と同じであることが望ましいという趣旨で申し上げた」とはっきり述べられてございます。  また,下のほうの船田委員の発言でございますけれども,「諸外国ともやはりいわゆる公選法に定められた選挙権の年齢,これと国民投票の年齢はほとんど同一でございます。」,「その二十歳というのは,民法における,先ほど来話のありました成年年齢とも一致をしているということで,これはもう密接なものであって切り離すことができない」ということで言われてきております。  また,1枚めくっていただきまして,「選挙権年齢の推移」と題するものでございますけれども,これも皆様方は御案内のとおりかと思いますが,我が国の選挙権年齢につきましては,明治22年,衆議院議員選挙法におきまして,25歳と定められていたわけでございますけれども,昭和20年の衆議院議員選挙法の改正におきまして20歳になったと, 民法に合わせて25歳から引き下げたわけでございますが,このときの提案理由説明をそこに掲げさせていただいております。教育文化の普及状況,一般民度の向上うんぬんなどの実際に徴しまして,近時青年の知識能力著しく向上し,満二十年に達しました青年は,民法上の行為能力を十分に持って居りますのみならず,國政参與の能力と責任観念とに於きましても,缺くる所がないものと存ぜられるということで20歳にしたということでございまして,沿革的に見ましても,選挙権年齢を20歳に引き下げた理由といたしましては,民法上の行為能力を有しているということが挙げられていたわけでございます。  先ほど申し上げましたように,国会で提案者のほうからも,選挙権年齢と民法の成年年齢が密接不可分でございまして,立法判断といたしまして両者を引き下げるとの考え方が示されているところでございますし,また今ほど申しました沿革にかんがみましても,民法の成年年齢あるいは刑事法での取扱いなど,法律関係全般との整合性が確保される場合におきましては,もちろん国会におけます議論ですとか各党各会派の議論を踏まえながらではございますけれども,選挙権年齢を引き下げる方向で所要の準備を図ってまいる考えでございます。  以上でございます。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。  それでは,ただいまの総務省の御説明に対して御質問等ございますでしょうか。  委員の方の御意見がなければ,私から質問をさせていただきます。  今の御説明で,少し分かったような分からないようなところがあるのですけれども,18歳に引き下げるということは,この国会審議といいますか,特別委員会の審議等を通じて明らかにされていて,言わばそのこと自体の是非についてはあえてもう検討する必要がないという御趣旨であったと同時に,民法・刑法等との関連づけといいますか,調整が必要だということでこの法制審の審議に注目されているというお話だったのですが,それは民法の成年年齢を18歳に引き下げるという結論が出ないと公職選挙法も動きませんよという御趣旨なのでしょうか。 ○荒川関係官 少なくとも,民法の成年年齢の状況を無視した形で,選挙権年齢だけを検討するということは無理であろうと考えております。 ○鎌田部会長 その理由は,先ほどの資料の一番最後に書いてあるようなことで,選挙年齢は行為能力が前提になっているという御理解なのでしょうか。 ○荒川関係官 沿革的にもそうでございますし,また国会での議論でも,それは密接不可分なものだと。やはり社会一般の成年概念でありますこの民法の成年年齢というのは,当然踏まえるべきであろうと考えております。 ○鎌田部会長 私どもの議論の中では,必ずしも民法上の行為能力がない人が選挙権を持つのはあり得ないという考え方を逆にとっておりません。現在の法令上も,成年には達しているけれども,制限行為能力者として,十分な行為能力がないとされている被保佐人,被補助人も選挙権はあるわけですから,民法上の行為能力が選挙権の大前提という考え方をこれまでとらずに議論をしてきたので,少し意外の感がありました。そうすると,やはり民法の成年年齢が引き下げられないことには選挙年齢は引き下げられないという御判断を現時点ではされていると理解してよろしいのですか。 ○荒川関係官 理論的に一致する必要がないということはもちろん承知してございますけれども,そういうことを申し上げたいのではなく,今までの国会での審議から考えまして,民法上の成年年齢と選挙権年齢が異なるということであれば,これはまた一つの議論が必要であろうと思っているわけでございます。この法律の成り立ちからいたしまして,密接不可分で同じであるべきだという議論がなされてきたものと承知をしているということでございます。 ○鎌田部会長 今ちょうだいした資料の中でも,後ろから2枚目の葉梨議員の御発言の中にも,民法と選挙年齢が一緒であるということを憲法が定めているわけではないけれども,民法の成年と同じであることが望ましいという御発言もあるわけで,こちらの法律の附則第3条自体も,読み方がかなり微妙ですから,必ず民法の成年年齢が下がらないと選挙年齢が下がらないということは,もう既定の方針として,立法者の意思として決まっているという前提は,本当にそうなのかということが,個人的には疑問があるのですけれども,総務省の側では,今御説明があったような認識のもとで政策的な検討をされているということで理解してよろしいですね。 ○荒川関係官 はい。 ○鎌田部会長 青山委員,どうぞ。 ○青山委員 先ほど,附則第3条第1項の御説明がありましたけれども,同時に第2項があるわけです。この第2項について,国民投票法の国会の審議の中ではどういうふうに位置づけられているのかをお伺いしたいと思います。 ○嶋関係官 議員立法でございますので,その正確な解釈というのはなかなか難しいところがございますが,第2項につきましては,第3条第1項で必要な法制上の措置は期限内に講じると。ただ,その施行時期につきましては,その3年間にできない場合があるので,その場合に備えた措置だという説明が審議過程ではなされていたと承知をしております。   また,先ほどの荒川関係官の説明に補足をいたしますと,法律上の議論として,両者が必ず一致しなければならないということではなくて,この日本国憲法の改正手続に関する法律の審議過程におきましては,両者を引き下げることが立法政策の問題として言われていました。まず第3条第1項の規定振りで「年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう」となっており,国政選挙で18年の者が投票するということは選挙権年齢を引き下げると読まざるを得ませんので,選挙権年齢については引下げの是非を検討する余地はないのだろうと考えているところでございます。  したがいまして,これに沿って検討するということでございますが,ただ民法と公選法は密接不可分だという考え方が同時に示されていますので,仮に民法が別の取扱いになるということであれば,立法政策としてそういう方向性が議論されていたわけでございますので,その前提が変わるということになろうかと思いますので,改めてどうなるかということが政治的に立法政策としても議論になるのではないかと考えているということでございます。 ○松尾関係官 附則第3条第1項で,公職選挙法と民法と,二つが顔を出しているわけですけれども,それぞれの法律の立場というのは,問題に即して考えれば違うのではないかという気がいたします。  公職選挙法を改正すれば,これは端的にここで書かれている事態が実現するわけですが,民法を改正するということは,それは憲法を経由して,成年者の選挙権を保障しているがゆえに18歳になるという,言わばこの迂回路を通る話になりますので,その点で違ってくるのではないか。したがって,公職選挙法をどうするかということを端的に国会で審議されるということが本来のルートではないかという気がいたしますが,そういうふうに考えてはいけませんでしょうか。 ○荒川関係官 先ほど来申し上げておりますように,選挙権年齢を18歳に引き下げることについては,国会審議の中で明らかにされているものと理解をいたしております。  しかし,何度もくどいようですけれども,この立法の趣旨といたしましては,ほかの法律と整合性をとる,特に民法との整合性をとるということがうたわれてきておるので,公職選挙法だけが先というのが立法者の趣旨,意思ではないのではないかということを申し上げてきているわけでございます。 ○鎌田部会長 民法の成年年齢が引き下がらなければ,公職選挙法上の選挙年齢は引き下げないというわけではなくて,選挙年齢を引き下げるのだから,民法の成年年齢も引き下げてほしいと,そういうふうに理解すればいいということですか。 ○荒川関係官 そういうことではないと思うのですけれども,とにかく法律の整合性をとるという意味におきまして,公職選挙法だけというのでは,また別の議論が必要になってくるのではないかということでございます。 ○鎌田部会長 先ほどおっしゃったのは,政治的にはという意味であり,法制上,民法の成年年齢より低く選挙年齢を定めることはあり得ないという御理解ではないですね。 ○荒川関係官 そうでございます。 ○鎌田部会長 ほかに御意見ございますでしょうか。 ○大村委員 附則第3条の読み方についてのお考えを伺いたいと思いますけれども,附則では「この法律が施行されるまでの間に,年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加することができること」,これは明確に示されておりますけれども,その他のことについては,言わば「等」という形で示されているかと思います。  ただ,その後に「選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法,成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え,」というふうに,公職選挙法と民法がその他の法令の例示として挙がっていますので,この「等」の中でまず出てくるのが民法だろうという御理解なのでしょうか。 ○荒川関係官 「等」でなくても,公職選挙法と民法は頭出しがされているということです。 ○大村委員 検討の対象となる法令として頭出しされているというのは,そうなのですけれども,公職選挙法については,その法令名が挙げられる前に「年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加することができること」というのが明示的に示されているわけですけれども,民法についてはそのような書き方は必ずしもされていないと思うのですけれども。 ○嶋関係官 民法と,それからその他の法令,これは必要なものが検討されるというふうに立法過程で議論はされていると承知していますが,その民法とその他の法令の関係がこの前段のほうの「等」で記述をされている,そういう趣旨であると承知をしております。 ○大村委員 そういう理解ですね。公選法については明確に何をするということが示されているけれども,民法を含むほかの法律については「等」ということで,これからどのようになるかを考えようと,こういう趣旨だという理解でよろしいでしょうか。 ○嶋関係官 そのように理解しております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○山本委員 くどいようなのですけれども,先ほど嶋関係官の御説明ですと,仮に民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下がらない場合は,この立法政策の前提が変わるので,この法律自身が執行される前提条件が成立していないから,もう一度国会の意思として,そういう新しい前提条件のもとでの議論が必要になるという理解でよろしいのでしょうか。 ○嶋関係官 そこまでのことは申し上げたつもりはないのですが,我々が審議過程を拝見したときには,先ほど荒川関係官から御説明しましたが,選挙権年齢と成年年齢を密接不可分だという前提で議論されていたと承知しています。ですから,それが変わった場合については,果たして公職選挙法だけで下げるのかどうかということを立法政策としてやるのかどうかということについては議論になるのではないか。それを踏まえてやはり検討する必要はあるだろうと考えているということでございます。 ○鎌田部会長 まだ十分に理解できていないのですが,この法律の附則第3条第2項の「前項の法制上の措置が講ぜられ,年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加すること等ができるまでの間」と,これは ,端的に言えば,公職選挙法が改正されて,選挙年齢が18歳になれば,この「年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加すること」というのはできるようになるわけですね,民法が変わろうが変わるまいが。  では,この国政選挙に参加すること「等」ができるとは,どのようなことを意味するのか,また,だれがこれを判断すると考えたらよいかということは,どうでしょうか。 ○嶋関係官 第2項については,第2項で言っている条件が成就したかどうかという判断は国会において行うという趣旨の議論が日本国憲法の改正手続に関する法律の審議過程で言われております。ですから,前項の法制上の措置が講ぜられて国政選挙に参加すること等,「等」も含めてできるというふうなことになった状態であるかどうかというのは,国会には憲法審査会がこのときの国会法の改正で設けられることになっておりますので,そういった場での審議で判断をして,条件が整ったという段階で,国会においてそのリミッターを外すというやり方になるというふうな考え方が審議過程で述べられていたと承知しています。 ○鎌田部会長 先ほど来,仮に民法の成年年齢が変わらないとしたら,新たな立法政策上の議論が起きることになるだろうとおっしゃっているのは,そのことをおっしゃっているのですか。 ○荒川関係官 特に第2項の解釈ということではなくて,この法律の立法者の意思として,根本として公選選挙法,民法は密接不可分だと述べられておりますので,それが異なるということであれば,再度の国会での議論というものがなされるのではないかと考えております。 ○鎌田部会長 その再度の国会での議論が何をめぐる議論というふうにおっしゃっているのかを確かめたいということです。 ○荒川関係官 成年年齢と選挙権年齢が異なることについてでございます。 ○鎌田部会長 それがいいことか悪いことかという一般的な議論ではないですよね。 ○荒川関係官 憲法上の議論ではありません。 ○嶋関係官 選挙権年齢と民法の成年年齢は,密接不可分であることから併せて引き下げることが望ましいということで議論をされてきた。ただ,民法は下げられない,下げないということであれば,公職選挙法の選挙権年齢だけでも下げるのかどうかという判断が,そのときに政治的に立法政策として議論になるのではないかと考えております。 ○鎌田部会長 出澤委員,どうぞ。 ○出澤委員 まだよく分からないところがあるので教えていただきたいのですが,資料42として出していただいた船田委員,それから葉梨委員の抜き書きでございますけれども,確かにお二人の国会での 議論がここに記載されているのは分かりました。  それでも,先ほど密接不可分とおっしゃっていたのですが,密接であることは分かるのですけれども,どこで不可分かというのが,このお二人の話からその立法者全体の意思だということが判明するのかという点と,葉梨委員のほうは少しニュアンスが違って,望ましいという趣旨で申し上げたということで,大分ニュアンスが違うような気がいたします。  こういうところを拝見して,結局立法化されたのがこの附則ということでございまして,附則は,あくまでも「できること等」とあるように,民法その他の法令の規定というように,民法は,頭出しはされていても,例示でございます。「その他の」ですから。そういうようなところを拝見すると,必ずしも今御説明があったような形で両者が一致しなければいけないというところまでは読めないような気が私はいたします。  それから,もう一点教えていただきたいのですが,附則第3条第2項の解釈として,条件が成就したと認められるかどうかは,もう一回国会で議論するということでございましたが,そういう意味では,もう一回国会で,例えばここで成年年齢を引き下げるという結論が仮に出なかった場合でも,その答申書の中で,どうしてそうなのかと,それと国会の憲法改正手続に関する法律とちょっと趣旨が違うというような,そういう付記がなされる,仮にですよ,そういうような場合においては,それを踏まえた上で,さらに立法者が検討した上でどのようにするかというようなところ,こういう手続になるのではないかと思うのですが,そこのところはいかがでしょうか。 ○荒川関係官 再度の御質問でございますけれども,どういう形で国会で議論されるかということを私どもが確たることを申し上げるわけにはいかないのですけれども,立法者の趣旨としての御判断が示されれば,それはそういうことで,我々はそのもとで検討していくということになるのだと思います。  それから,密接であって不可分ではないのではないかという御趣旨でしょうか。それは,立法者といいますか,提案者の議論として密接なものであって,切り離すことができないということが述べられているものですから,密接不可分な関係であると申し上げたところでございます。 ○鎌田部会長 ほかに御意見,御質問等はございますでしょうか。  私から何回か御質問申し上げましたが,これは民法は18歳に引き下げるつもりがないということを申し上げようとしているわけでは決してございません。  ただ,先ほど来の御説明でいくと,恐らく公職選挙法のほうがもう18歳に引き下げる以外の選択肢はないという態度決定をしていて,それを実現するために民法を下げてもらわなければできないではないかというふうに言われると,我々は何のために審議しているのだろうということになりますし,参議院の特別委員会におきましても,成年年齢に関する公職選挙法,民法等の関連法令については十分に国民の意見を反映させて検討を加えるという附帯決議が出ているわけで ,そういう趣旨を踏まえて委員,幹事の御意見を伺っているだけではなくて,いろいろと幅広く御意見を伺いながら,少なくとも民法の側では検討を続けているわけでありまして,そういう意味で,当然民法を引き下げてもらわないと公職選挙法は動けないというふうな論法で議論されて,そうですか,それに従ってここで審議をしていますというわけではないということは御理解いただきたいと思います。 ○荒川関係官 私どももそういうことで申し上げているわけではございません。やはり法律関係全体との整合性をこれから慎重に検討していかなければいけないということを申し上げたところでございます。 ○鎌田部会長 ほかに御意見,御質問等ございますでしょうか。 ○木幡委員 昭和20年に20歳に選挙年齢を変えた理由のところですけれども,そうしますと,今度また18歳にするということは,その昭和20年と比べても,更に教育・文化が普及し,民度も上がって,成年の知識能力も著しく向上したからということなのでしょうか。今度下げるとしたら,その理由はどういったことになるのでしょうか。 ○嶋関係官 資料として御紹介しました昭和20年のときのものは,過去の経緯として,過去はこういう理由で検討されていて,説明をされているという例として御紹介をした趣旨であります。  今回,引き下げるときについては,日本国憲法の改正手続に関する法律の中で,国民投票法との関連等々について御説明がされているところでございますので,そういったことが下げることになった場合の改正理由ということになろうかと思います。 ○木幡委員 では,今回はその成年自体の能力が上がったからという理由ではないのですかね。 ○荒川関係官 私どもが決める話ではないということだと思います。 ○木幡委員 そちらは盛り込まれていないということですね。 ○鎌田部会長 それは,法律案を内閣が提出するときも,国民投票法で選挙年齢の引下げが決められたからという理由で提案されるのですか。 ○荒川関係官 そういったたぐいにはなるのかなとは思いますけれども,分かりません。 ○鎌田部会長 ほかに御質問等ございませんか。  特にございませんようですので,ここまでで総務省に対する質疑応答を終了することにしたいと思います。荒川関係官,嶋関係官,お忙しい中,ありがとうございました。  それでは,次に,法務省大臣官房司法法制部の中川参事官から,法教育の現状等について御説明を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○中川関係官 法務省司法法制部で参事官をしております中川と申します。よろしくお願いいたします。  本日は,司法法制部で推進をしております法教育の関係につきまして説明の機会を与えていただきましてありがとうございます。  この法制審議会民法成年年齢部会におかれましては,平素より法教育についての御理解を賜っており,特に大村委員には,当省の法教育推進協議会の座長もお務めいただいておりますので,私から御説明するのも恐縮ではございますが,よろしくお願い申し上げます。  それでは,お配りした資料に沿って御説明をさせていただきます。  まず,資料44-2を御覧いただけますでしょうか。  法教育は比較的新しい教育分野でありまして,当省において検討を進める契機となりましたのは,平成13年6月12日の司法制度改革審議会の意見書でございます。この意見書におきまして,国民の期待にこたえる司法制度の構築,司法制度を支える法曹の在り方の改革,司法の国民的基盤の確立という三つの柱が出されましたが,この三つ目の柱であります国民的基盤の確立の中で司法教育の充実が提言されました。この意見書の抜粋は資料44-3としてつけさせていただいております。  この審議会の意見書を受けまして,平成15年7月に法務省に法教育研究会が設置されました。この研究会の活動や構成員等につきましては,資料44-6としてつけさせていただいております。後で御覧いただければと思います。  この法教育研究会において調査・研究・検討を行いました結果,平成16年11月に法教育の意義等について取りまとめた報告書を作成し,そしてその内容を具体化した中学校3年生向けの四つの教材例を作成しております。この報告書の内容と教材例につきましては,お手元に参考資料として配布させていただいております「はじめての法教育」という冊子になっています。  この報告書の中で法教育がどういうふうに定義をされたかということですけれども,資料44-2の頭のほうに書かさせていただいておりますが,「法律専門家ではない一般の人々が,法や司法制度,これらの基礎になっている価値を理解し,法的なものの考え方を身につけるための教育」と定義されております。  そして,この法教育が様々な社会的要請が背景となって必要とされてきているところですが,この報告書におきまして,目指すべき法教育の内容につきましては,資料44-1に記載されているとおり,法は共生のための相互尊重のルールであること,日常生活を支える私法の基本的な考え方,人権と国の仕組みを定める憲法及び法の基礎にある基本的な価値,司法や裁判の意義と役割を実感として理解し,身に付けることができるようにするということが挙げられております。  資料44-2に戻らせていただきますが,この中学校3年生を対象とした四つの教材例というもので,この目指すべき法教育の内容を現行の学習指導要領の中で具体化するということになるわけですが,第1としては,ルールづくりの教材ということで,これは町内会でのごみ出しやマンションでのペット飼育というような身近な事例に基づきましてルールを作る,そして評価するということを体験させることを通じて,法やルールの意義を理解させようというものであります。  2番目としましては,私法と消費者保護ということで,日常生活に関係する身近な契約を結んだり解消したりすることについての体験をさせることを通じて,私法の基本的なルールとこれを支える考え方を理解させるものであります。これにつきましては,後ほど詳しく御説明いたします。  そして,第3としては憲法の意義です。この中身としては,みんなで決めるべきこと,みんなで決めてはならないことというようなものを身近な事例を通じて考えさせることにより憲法の意義を理解させるというものです。  4番目が司法というもので,身の回りで生じる紛争を題材として司法を考えさせることにより,法に基づく公正な裁判の仕組みや機能を実感として理解させるとともに,司法への参加意欲を高めようというものであります。  法教育研究会がこの報告書を作成した後でありますが,この研究会の後継的な協議会としまして,平成17年5月に法教育推進協議会が発足いたしました。この開催要領等につきましては,資料44-4としてつけさせていただいたものであります。  法教育推進協議会におきましては,これまでの「はじめての法教育」という冊子で出しているものについて,教育現場から寄せられた意見や要望を踏まえまして,教員向けに,お手元に2冊目として御用意させていただいております「はじめての法教育Q&A」というものを作成したり,あるいは裁判員制度を題材とした教育教材を作成しております。  現在は,この協議会のもとに,私法分野における法教育の在り方に関する検討を行う私法分野教育検討部会と小学生を対象とした法教育教材の作成などを行う小学校教材作成部会が立ち上げられております。本年5月までにその取りまとめをするべく,現在精力的に検討を行っているところであります。  このような法務省の取組でございますが,法務省はこのような法教育研究会や法教育推進協議会における活動の様々な局面におきまして,文部科学省や教育関係者,最高裁判所,日本弁護士連合会,日本司法書士会連合会などの法律関係者とも連携をして,法教育を推進してきたところであります。  特に,私法分野における法教育ということで,今回こちらの民法成年年齢部会におかれては,満20歳をもって成年とする民法の成年年齢を引き下げるべきか否かを御検討されているということでございますが,特に法教育の関係では,私法分野における法教育というものが関連しているだろうと思われます。  先ほど申し上げましたとおり,教材の一つとして,私法と消費者保護という教材が法教育研究会では作成されております。具体的な中身につきましては,お手元の「はじめての法教育」の76ページから97ページに具体的な教材例が記載されておりますので,御覧いただければと思います。  この76ページを御覧いただきますと,この授業のねらいが書いてございますが,要するに法が日常生活において身近なものであることを理解して,日常生活においても十分な法知識を持って行動し,法を主体的に利用できる力を身に付けるために,身近な契約問題を題材として,市民社会における契約の自由と責任などの私法の基本原則を理解させるとともに,企業活動や消費者保護などの経済活動に関する問題が法と深くかかわっていることを認識させようとするものであります。  単元の構成としましては,77ページにありますとおり,3時間の構成として二つのプランを示しております。いずれも,第1時限では契約が成立する要件について学び,第2時限で,契約が成立した場合には,原則として契約は解消できないけれども,例外的に様々な事情によって契約が解消できる場合があるということを学ぶということになっています。第3時限目で,第1プランのほうでは外部講師として法律実務家を招くことを想定しておりますが,私的自治原則の例外として,消費者が不利な条件のもとで契約を結んだ場合,消費者保護の観点から,国や地方公共団体がこのような契約を解消できる制度を設けたり苦情を相談する場所を置いたりしていることを学ぶというものであります。  そして,学生には,具体的に契約書を作成させたり,また89ページから載っておりますとおり,具体的な事例を題材として使用しながら,主体的に考えさせる内容になっております。  この授業に関する生徒の感想が,同じ冊子の21ページに記載がされておりますが,契約を身近なものとして意識できたといった感想が寄せられております。  この消費者保護に関する学習との関連では,だまされた場合の対症療法的な視点で学習するというのではなくて,自由な意思で行った約束は守られなければならないという原則を十分に確認し,そのような責任が発生するのだから,契約をするときには熟慮しなければならないということを理解させた上で,こうした原則を覆してでも消費者を守る必要があるかどうかを具体的な事例を通じて考えさせるというものになっております。  以上,御説明をさせていただきましたとおり,法教育というのは法律の条文を記憶しなければならないとか,法律学を習得しなければならないといったようなことを目指しているものではございません。日常生活が法に支えられているということを実感として理解し,自由で公正な社会を支えるものの考え方を身に付けることを目指しているものであります。  もっとも,法教育は,先ほど述べさせていただいたとおり,歴史が浅く,発展途上にありますし,また,その具体的な内容についても更に詰めていかなければならない状況であります。そして,教員の方々の御理解も今後得ていく必要があり,多くの課題があると認識をしております。  また,適切に法律行為を行うといった実生活において生きる力を身に付けるための特効薬になるような教育があるわけではありません。私どもとしましては,教育関係者の方々や法律関係者の方々の協力も得ながら,少しずつではありますけれども,着実に法教育を推進していきたいと考えているところでございます。  法教育についての御説明は以上でございます。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。  ただいまの中川関係官の御説明に対して御質問等はございますでしょうか。 ○五阿弥委員 これは3時間教えるのですか。どのくらいの時間教えるのでしょうか。 ○中川関係官 プランとしましては3時間をとっておりますが,現実に学校教育の場で3時間とることはなかなか難しいであろうという声もあります。「はじめての法教育Q&A」では,例えば2時間で構成してみるというような場合などいろいろな場合を想定しております。あくまでもこれは一つのモデル例でありまして,学校のいろいろな学生のレベルあるいは学校の教育内容に応じて先生方が加工していただいて使っていただくことを前提にしております。 ○五阿弥委員 これは最近こういうことが導入されたと思うのですが,教えられている先生方からはどのような意見が今寄せられているのでしょうか。 ○中川関係官 学校の先生方とそれほどお話しする機会もありませんけれども,やはり一つとしては,まず中身として,自分たち教員のほうがまだどういうことを教えていいのかどうかがよく分からないということで,まずはそのQ&Aのようなものをもっと充実させてほしいというような意見でありますとか,やはり時間のほうがなかなか足りないといった意見でありますとか,あるいはもっと専門家の人においでいただきたいのだけれども,どういう形でそれをお願いしたらいいのか分からないとか,やはり現場の先生方の声としましては,まだ始まったばかりということもございまして,どういうふうに取り組んでいけばいいのかということについては,かなり戸惑っていらっしゃるというのが現状だと思われます。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○神吉関係官 本日の御説明で,法教育について様々な取組が行われ,いろいろな工夫がされていることが分かり,ありがとうございました。法教育というのは知識を与えるだけではなくて,実感として理解して,身に付けることが非常に大切なのではないかという御説明があり,私自身も本当にそのとおりであると感じているのですが,ただ,今まで,授業時間が少ないとか,教材が少ないといったことで,これまで十分に実施されてこなかったという実情があるかと思うのです。前回の部会において,文部科学省の担当官にお越しいただき,学習指導要領が改訂されて,法教育についても,授業時間等も含めて,大きく拡充されたとうかがったのですけれども,学習指導要領の改訂に伴いまして,法教育についても今後更に充実していくのではないかという期待というのはお持ちでしょうか。 ○中川関係官 資料44-1でもつけさせていただいておりますが,学習指導要領でこの法教育に関連する中身が位置づけられたということは非常に大きな進展だろうと思っております。  具体的な中身につきましては,これから具体化をされていくのだろうと思っておりますが,今,法教育推進協議会の部会において,小学校の部会でありますとか私法の部分で,正にこの学習指導要領を踏まえた形で中身を検討しております。ですから,その教材も一つの参考例にはなると思われますけれども,今後は各種の教科書とかいろいろな出版等々で,いろいろな教材例がこれから出てくるのではないかということで,私どもとしては非常に期待をしているところであります。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。  岡田委員,どうぞ。 ○岡田委員 法教育が始まったころ,弁護士や裁判官が,学校に出向いて法教育をするというのが新聞で一時期取り上げられたことがあるのですけれども,やはりこういうテキストにしろ何にしろ,学校の先生が教えるというところが大事だろうと思うのです。ついては,法務省として,夏休みとか学校の先生方のお休みの時間に研修みたいなものをやるとか,そういう計画というのはないのでしょうか。 ○中川関係官 今,法務省として取り組んできたものの中で挙げさせていただけるとすれば,まず,裁判員制度の中身につきましては,学校の先生方にそういう研修の機会を設けていただきたいということで取り組んでおります。  あとは,各学校側の教育委員会から法教育についての説明をしてほしいという要請があれば出向くことはございますが,今後は私どものほうも,こちらから学校の先生方にさらにこの法教育の中身につきまして御理解を賜るべく,出向いていくことを検討していきたいと思っております。 ○岡田委員 そうしてください。  赤れんがまつりはすごい人気があるみたいですけれども,赤れんがまつりのような場でも,裁判員裁判の紹介については盛り込まれていますけれども,法教育というのはあまり充実していないように感じられますので,次回以降,是非入れていただきたいと思います。 ○鎌田部会長 大村委員,お願いします。 ○大村委員 現場の先生方に積極的に関与していただけるように,分かりやすい教材を作っていくことが大事だと思っておりますけれども,今日お話しされております「はじめての法教育」というのも,これは実際の作成に当たりましては,現に法教育を実際にされている先生方に御協力をいただいて作成されたと伺っております。  それから,法務省のほうでもいろいろ努力をされていると思いますけれども,ほかに日弁連のほうでも積極的にこれに取り組んでいただいておりまして,各地の弁護士会などでも,地元の学校や大学等と協力をして取組を進めていただいていると認識しております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。  よろしいですか。  ほかに御質問がないようでしたら,中川関係官に対する質疑応答はこれにて終了ということにさせていただきます。中川関係官,お忙しい中,本当にありがとうございました。  なお,前回会議におきまして文部科学省からヒアリングをさせていただきましたが,その後,高校の学習指導要領につきましては大臣告示が行われた旨伺っております。  本日は,文部科学省から小幡関係官にも御出席いただいておりますが,前回の髙橋関係官の御説明に付け加えるべき事項等はございますでしょうか。 ○小幡関係官 特にございません。 ○鎌田部会長 特にないようでしたら,これで関係府省庁に対するヒアリングを終了することにしたいと思います。  本日は,お忙しい中,本当にありがとうございました。  それでは,ここで休憩をとらせていただいて,その後は委員・幹事相互間の議論に当てたいと思います。          (休     憩) ○鎌田部会長 それでは,再開したいと思います。  これから,委員・幹事相互間で御議論いただきたいと思いますが,本日の部会におきまして,最終報告書に向けて一定の方向性を出したいと思いますけれども,今後検討すべき論点ということで,部会資料45が出されておりますので,まず,これについての御説明をちょうだいし,それに基づき議論をしていきたいと思います。 ○佐藤幹事 それでは,部会資料45,「今後検討すべき論点について(改)」に基づいて簡単に御説明させていただきたいと思います。  まず,1から6まで論点がございますが,1から3までの論点につきましては,相互に関連しており,まとめて御議論いただきたいと思いますので,最初にまとめて説明させていただきます。  まず,1の「国民投票の投票年齢,選挙年齢等との関係」についてでございます。  前回,今田委員から選挙年齢と一致することが望ましいか否かという問題提起は,議論を行う観点によって結論が異なるので,どのような観点で検討するのか整理をする必要があるという御指摘をいただきましたので,まず前提となる事実を整理させていただきました。  (1)のところでございますが,まず,国民投票法附則第3条の趣旨について,繰り返しになりますが,整理をさせていただきたいと思います。 この附則が設けられた趣旨としましては,国民投票法案の国会審議 における提出者の答弁等において,一つに,公職選挙法の選挙年齢を戦後20歳に引き下げた理由として,民法の成年年齢が20歳であることが挙げられており,民法上の判断能力と参政権の判断能力が一致すべきであること,二つに,諸外国においても,成年年齢に合わせて,18歳以上の国民に投票権・選挙権を与える例が非常に多いことが挙げられております。  今回の成年年齢の引下げの検討はこの附則を契機とするものでありますので,附則第3条が設けられた趣旨を十分に踏まえる必要があるものと考えられます。  また,成年年齢の引下げの検討に当たりましては,選挙年齢の引下げの検討状況も踏まえる必要もありますが,これにつきましては先ほど総務省から御説明のあったとおりでございます。   また,参考資料27の説明をさせていただきましたとおり,諸外国の大勢は成年年齢を18歳とし,選挙年齢と一致させております。すなわち,成年年齢のデータがある187か国・地域のうち,成年年齢を18歳以下としている国・地域は141か国となります。また,選挙年齢と成年年齢を一致させている国・地域は134か国となります。これらの前提事実を踏まえて,国民投票年齢及び選挙年齢と成年年齢の関係をどのように考えるべきか,御議論いただきたく存じます。  憲法との関係では,選挙年齢と成年年齢を一致させる理論的必要はないということは,部会の一致した意見ということで承っておりますが,以上御説明した前提事実をもとに,選挙年齢と成年年齢は,社会的,経済的にフルメンバーシップを取得する年齢ということで一致させたほうがよいのか,それとも全く別個に検討したほうがよいのかについて御意見を賜りたく存じます。  部会資料では,「特段の弊害がない限り」と書かせていただきましたが,成年年齢を引き下げると消費者被害が拡大するといった問題点も生じるとは思いますが,そういった弊害,問題は,解決策とともに議論すべき問題ということで,そのような弊害,問題等はとりあえず抜きにしてここでは御議論いただければと思います。  なお,前回,水野委員から御指摘いただきましたとおり,民法の成年年齢は,契約年齢,親権に服する年齢を定めているのみならず,多数の法令において各種行為の基準年齢とされており,事実上,大人と子供の範囲を画する年齢となっているものと思われますが,成年年齢の引下げは,事実上,18歳をもって我が国の若年者を大人の入口に立たせることになるものと考えられます。若年者の社会参加,自立を図る必要があるとの点につきましては,部会として異論のないところであると思われますが,18歳をもって大人の入口に立たせ,様々な権利行使,社会参加を行わせることは,若年者の自立促進に資するところが大きいとも考えられます。これらの点も踏まえ,どのように考えるべきか,併せて御議論いただければと思います。  ここまでは,国民投票法,選挙年齢との関係ですが,2以下では,民法の観点で考えた場合に,成年年齢の引下げについてどのように考えるべきか御議論いただきたいと思います。  まず,契約年齢を引き下げる必要性についてですが,成年年齢を引き下げると,18歳,19歳の若者も,親の同意なく一人で契約をすることができるようになります。18歳,19歳の若者の多くは,アルバイトを含めて働いており,自ら稼いだ金銭は自らの判断で処分することができるようにすべきであるという意見がありますが,これについてどのように考えるべきか,御意見があればお出しいただきたく存じます。  また,親権に服する年齢を引き下げる必要性については,親の不当な親権行使から18歳,19歳の子を解放する必要性が指摘されておりますが,中間報告書どおり,親の不当な親権行使の問題は親権喪失等で対応すべき問題として整理してよいか,御意見がございましたらお出しいただきたく存じます。  次に,3では,成年年齢を引き下げた場合の問題点及びその解消策について御議論いただきたく存じます。  成年年齢を引き下げた場合に生ずる問題点として,最も指摘されてきましたのが,若年者の消費者被害が拡大するおそれがあるという点でございます。この点につきましては,成年年齢を引き下げても,被害の山が18歳に移行するだけであり,被害の総量は変わらないという意見もございましたが,中間報告書どおり,成年年齢を引き下げた場合の問題点として位置づけてよいか,御意見がございましたらちょうだいしたいと思います。  次に,成年年齢を引き下げた場合に,自立に困難を抱える若年者がますます困窮するおそれが生ずるとの指摘がされていますが,この点につきましては,中間報告書に付け加えるべき事項があれば御意見をいただきたく存じます。  さらに,成年年齢が引き下げられた場合,親が扶養義務を負う年齢が18歳に引き下げられるおそれがあるという点についてですが,前回,水野委員から御意見がございましたように,成年年齢が引き下げられても,民法上,親が扶養義務を負う年齢が引き下げられることにはならないものと考えられますが,事実上,離婚の際の養育費の支払義務の終期が18歳となり,子の進学の機会が奪われるおそれがあるとの意見があります。これらの問題につきましては,成年年齢を引き下げても,民法上,扶養義務の負う範囲が切り下げられることにはならない旨の周知徹底を図ることで一定程度解決が可能のようにも思われますが,どのように考えるべきか,御意見があればお出しいただきたく存じます。  成年年齢を引き下げる場合に生ずる弊害,問題を解消するために必要となる環境・条件整備の内容につきましては,消費者被害が拡大しないための施策の充実として,中間報告書に消費者保護施策の充実,消費者関係教育の充実について各種の施策が挙げられ,若年者の自立を援助するための施策の充実についても中間報告書に各種施策が挙げられておりますが,これに付け加えるべき事項はあるか,御意見をいただきたく存じます。  最後に,成年年齢の引下げを行う場合,これらの施策の充実と成年年齢の引下げの先後関係についてはどのように考えるべきか,御意見をいただきたく存じます。 ○鎌田部会長 ただいま事務当局から御説明をいただき,幾つか御意見を伺いたいという問いかけがございましたが,その中身に入る前に,まず今の御説明自体についての質問があればお伺いをしておきたいと思います。 ○五阿弥委員 審議も最終段階に入ってから言うのもなんですが,先ほどの総務省の御説明を聞いていると,国民投票法の附則第3条に関して,要するに公職選挙法の選挙年齢については当然引き下げるけれども,民法については,18歳に引き下げることを前提にどういうところが問題になってくるのかと,それをいじって,あと附則の条件というか,必要条件を整えていくという感じなのですが,しかし,ここの部会で検討していることは,18歳に引き下げるべきか否かということを話しているわけです。  私がお聞きたいのは,法務大臣がどういう諮問を法制審にして,法制審ではどういう議論でこの部会を設置したのか,どうも総務省の理解と部会の理解が少し違うような気がするのですが,そこら辺のところを御説明いただければと思います。 ○佐藤幹事 御承知のとおり,法制審議会に対する諮問は,民法の成年年齢について,若年者の保護と精神的成熟度の観点から,成年年齢を引き下げるべきか否かについてということで諮問がされているのは間違いないところでございます。それが先ほどの総務省の見解と違うのではないかという御指摘ですが,ここは難しいところで,先ほど総務省の方もお話しになりましたが,国民投票法は議員立法でございまして,政府として明確に立法趣旨を説明することは困難な状況にございます。  そして,国民投票法の附則の読み方も,民法の成年年齢の引下げを行うことが義務として規定されているのか,明文上必ずしも明らかではなく,法務省といたしましては,引下げの是非も含めて,白紙の状態で御議論をお願いしたいということで,引き下げるべきか否かという諮問が行われたということでございます。  ただ,第1回会議から何度か御説明させていただいておりますように,附則第3条が設けられた趣旨についての国民投票法の提出者の先生方の御答弁もありますので,そこは尊重する必要があると考えております。 ○神吉関係官 補足で御説明させていただきます。  第1回部会において事務当局から御説明させていただきましたとおり,今回,成年年齢を引き下げるべきか否かということの検討とともに,成年年齢を引き下げる場合にはどういった施策が必要かといったことも検討の対象としていただくようお願い申し上げました。  検討の結果,どのような環境整備を図っても,成年年齢を引き下げるべきではないという結論もあろうかと思います。一方で,一定の環境・条件整備が図られれば,成年年齢を引き下げることができるといった結論も考えられます。このような観点から,今回,法制審議会に対し,引下げの是非について諮問が行われた,このように考えていただければと思います。 ○鎌田部会長 先ほども少し申し上げましたけれども,法制的には,成年者には選挙権を与えなければいけないのですけれども,未成年者に選挙権を与えてはいけないという縛りは全くありませんので,選挙年齢を18歳に引き下げるためには,民法の成年年齢を18歳にしなければ いけないという縛りは法制的にはないと考えております。したがって,民法は民法の観点で20歳を18歳にするのが適切かどうかを議論すればいいことになります。  ただし,国民投票法の関連で,できれば公職選挙法上の選挙年齢と民法上の成年年齢も一致させることが望ましいという議論が審議の経過の中で出されていましたので,そのことも意識した上で,この部会においては,民法の側から成年年齢を引き下げるべきか否か議論をしなければいけないと考えているところでございます。 ○五阿弥委員 その立法過程で公職選挙法と民法は,密接不可分という議員さんは多いわけですが,それ以外の議論というのは,いや,密接不可分ではなくてもいいんだみたいな議論というのはあったのでしょうか。 ○神吉関係官 御説明させていただきます。  第1回部会において,参考資料1-1として国民投票法の法案審議の抜粋をお配りさせていただいたかと思うのですけれども,確かに今回,総務省の方から御説明いただいたとおり,成年年齢と選挙年齢は密接不可分だというような答弁もございます。  一方,提出者の先生の御答弁を仔細に検討しますと,民法と公職選挙法は引き下げるべきだが,最低限必要なのは公職選挙法の引下げであるといった御説明もございました。選挙年齢と成年年齢は一致すべきであると法律で明確に書かれたわけではありませんので,何をもって国会の意思ととらえるのかというのはなかなか難しいところがあると個人的には思っております。 ○鎌田部会長 よろしいですか。  ほかに何か質問ございますでしょうか。  それでは,これから委員・幹事の皆様方の御意見をお伺いしたいと思いますが,これまでもこの課題については,もう何度も御意見をいただいてきたところであります。また,1年近く議論してきたところでございますので,本日の部会におきまして最終報告書に向けた方向性を出す必要があるのではないかと考えております。  これまでのところ,成年年齢の引下げにつきましては,賛否両論拮抗しておりまして,最終報告書につきましても,中間報告書同様,両論併記とすることも考えられるところでありますが,専門の部会を設置して1年以上議論を重ねてきたわけですから,できることならば,結論を一本化した上で総会に報告することとしたいと考えております。  そこで,どのような結論にするかでありますが,賛否両論が拮抗しており,なかなか一本化することは難しいように見えるのではありますが,これまでの議論を整理して見ますと,引下げに積極的である委員の方と消極的な委員の御意見の底流には共通するものがあるのではないかと考えています。  まず,選挙年齢と成年年齢との関係について考えてみますと,本日の総務省の御説明では,選挙年齢については18歳に引き下げるという方向でお考えのようです。選挙年齢と成年年齢は,先ほども申し上げましたように,法理論上は必ずしも一致させる必要はないと考えられるところでありますが,社会的・経済的にフルメンバーシップを取得する年齢ということで,特段の弊害がない限りは両者を一致させることが望ましいという点についても,恐らく一般論としては異論がなかったのではないかと考えるところでございます。  成年年齢の引下げに対する消極の御意見につきましては,現時点で成年年齢を引き下げると,消費者被害の拡大など,様々な弊害が生じる可能性があるということが引下げに反対するという結論に至る大きな理由になっているものと思いますが,法教育や消費者教育の充実を初めとして,若年者の自立,とりわけ取引社会において自己責任原則のもとで適正に取引行為をなし得る能力をかん養するといったことを支援する様々な施策が図られ,またそれらが実際に実現され,成年年齢を引き下げても,消費者被害などが拡大して新たな社会問題を引き起こすおそれが極小化されるということであれば,御懸念は解消あるいは非常に小さなものになるのではないかと考えています。  また,成年年齢の引下げに積極の御意見を述べられている委員の方々も,成年年齢を18歳に引き下げるだけで若者の社会参加や自立が直ちに実現されるとは考えておられず,18歳成年制を導入する場合には,やはり教育の充実を初め,若者の自立を促進あるいは支援する様々な施策をパッケージとして実施する必要があると考えておられるように受け止めました。  このように考えてまいりますと,積極派と消極派の委員のお考えは根底においてそう大きく異なるところはないと思われます。すなわち,選挙年齢が18歳に引き下げられるということであれば,特段の弊害のない限り,民法の成年年齢についても18歳に引き下げることが望ましい。ただし,現時点で成年年齢を引き下げると消費者被害の拡大などの問題が生じるおそれがあることから,教育の充実など,一定の施策が講じられた段階で成年年齢の引下げを実施すべきであると,そういうことでありましたら意見の一本化を図ることができるのではないかと考えているところであります。  私としてはこのように考えてはおりますが,そもそもこの部会のこれまでの意見の分布状況等に照らしまして,意見の一本化をあえて図る必要はないという御意見もあろうかと思いますので,この点も含めまして,先ほどの事務当局からの説明の部分あるいは問題提起の部分につきまして忌憚のない御意見をいただければと思います。  仲委員,どうぞ。 ○仲委員 私も,ずっと引下げに関してはすごく不安を感じている立場であったわけなのですけれども,やはり今こうやって青少年をどうするかというところが注目の的になっているということ自体がすごく大きいことなのかなと思います。そこにてこ入れをするという形で,例えば引下げを,どちらか一つの形に,下げないにしても下げるにしても一本化することで青少年に注目を集めさせるということが大きい意義を持つのかなと思います。  今日お話を伺って,内閣府の方のいろいろな青少年に焦点を当てた法の施策ですとか,教育の話を伺って,少しずつそういうところに注目が集まりつつあるのかなという感じは持ちました。  法教育なども,では,こうやってルールのこととか規則のことを学んだからといって,例えばお母さんが面倒を見てくれない子供とか,あるいは仕事がないといったときに,自分をどうやって守っていけるのかということにすぐつながるのかどうかというのは,すごくまだ不安があるわけなのですけれども,少なくともそういう法教育の基盤を作られつつあるというのは大きいことなのかなと思いました。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○松尾関係官 この部会は民法部会でありますので,言わば節を守ってといいますか,それ以外の法律の関係については議論をほとんどしないで今日に至っているわけですけれども,しかし実際上,民法の成年年齢が引き下げられますと,いろいろなところに影響を生ずることは否定できないのではないかと思います。  例えば,お酒を飲む,たばこを吸うという問題になりますと,現在の法律は,「満二十年ニ至ラサル者」となっておりますので,民法の規定にかかわらず,満20年で制限されることになりそうですけれども,法律の題名は未成年者飲酒禁止法,未成年者喫煙禁止法と「未成年者 」という言葉を使っておりますので,やはり成年が20歳ではなく18歳であるということになれば,この法律の題名は少なくとも何とかしなければならない,そういう意味での変化が起こるのではないか。  先ほど,国民投票法との関係で,整合性というお言葉もありましたけれども,その辺の整合性をどう考えていくのか,ほかの法律は無関係であるというだけで,この部会の結論を出していいかということについて,少し気になる次第であります。 ○神吉関係官 事務当局から御説明させていただきます。  この点につきましても,第1回部会において御説明させていただいたとおりでございますが,確かに松尾関係官御指摘のとおり,民法の成年年齢は多数の法令において使われており,各種行為の基準年齢となっております。民法の成年年齢を引き下げますと,特段の措置を講じない限り,多数の法令におけるその基準年齢も引き下がることになりますので,社会一般に大きな影響を与えることになるというのは事実であろうかと思います。  ただし,民法の成年年齢を引き下げると,ほかの各種法令はどうなるのかということを踏まえて民法の検討を行うことを考えますと,かなり幅広い検討が必要になりまして,法務省の所管法令以外の事項についても実質的検討を行わざるを得なくなり,果たしてそれが適当かという問題が出てまいります。また,内閣に設置されました「年齢条項の見直しに関する検討委員会」においては,各府省ごとで,その各府省の所管の法令ごとに検討するようにとの指示が出ております。したがいまして,法務省におきましては,法務省所管の法令のうち最も基本になると思われる民法から検討をすることとしたということでございます。  民法の成年年齢を引き下げて各種法令の基準年齢が引き下がって問題があるということでありましたら,各府省において,例えば成年を20歳に改める,また,松尾関係官御指摘の未成年者飲酒禁止法のような法令については,そのタイトルを改めるなど,そういった措置が講じられることになるだろうと考えております。 ○鎌田部会長 この点につきましては,前回法制審の総会にこの部会の審議状況を御報告申し上げたときにも同様の御指摘があったところですが,今回の検討は,あくまで民法の観点での議論であって,飲酒・喫煙の問題については,飲酒・喫煙について何歳からにするのが妥当なのかという観点でそれぞれ所管の府省において検討してもらえればいいと,ほかの法令もそうなんだということについて,やはり皆さん懸念される部分だと思いますので,最終報告書の中にもその旨は入れるようにしたいと考えております。 ○大村委員 今の松尾関係官の御指摘は大変もっともなことだろうと思います。この改正をいたしますと,いろいろな点で影響が出るかと思います。  同様の例は,我々の専門領域と近いところでは,成年後見のときにも生じておりまして,相当多数の関係法令について関係省庁に御検討いただくことを行ったのではないかと思います。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。  ほかに御意見ございますでしょうか。 ○水野委員 私も,先ほど部会長がおっしゃいましたように,まとめたほうがよいと思っております。両論併記ということでは我々のかなえの軽重を問われることになるかなと思います。つまり,学会ではありませんので,ここは何らかの結論を出さなくてはならないでしょう。  私自身は,これまで申し上げておりましたように,18歳にまとめたほうがいいと思っております。本日,文部科学省の関係官もいらっしゃって,始めたばかりの法教育について伺いました。それはとても工夫されていらっしゃることは分かりますし,感心もするのですが,でもやはり一番基本的なところがどうも教えられていないような危惧がございます。  それは,法律,法体系というのが我々の社会の共存のルールであることが肝心だと思うのですが,それが伝わっていないように思われます。近代法の法体系は矛盾のない一つの体系を作っていて,そのことによって国家権力も制限するし,市民相互の,人間のどうしようもないような欲もお互いに制限して,そしてそれらが全体として矛盾がないことによって我々の社会が安定的に成立していくのだという,そういう法イメージです。もともとほっておくと,日本人は中国法文化圏ですから,法は国家の道具だというイメージをもちがちで,法は為政者の道具であって,その道具の使いようによって矛盾があっても構わないんだという発想になってしまいがちなのですけれども,そうであるべきではないのです。  我々の共存の作法,正に公教育といいますか公民教育といいますか,パブリックの教育の一番根幹のところが法であると思うのですが,そういうところをもうちょっと伝えたいと思います。道徳とか,そういうものではなくて,正に法による共存のルールを伝えていくのが公教育ではないか,公民教育ではないかと私は前から思っています。  そういう観点から考えますと,その18歳と20歳という違いが大きな問題になります。つまり,フルメンバーシップとしてこの我々の社会を作っていく,法体系として矛盾のないルールを作っているんですよといったときに,そこの違いをどのように説明するかという問題です。もちろん説明はできると思うのです。 そして,例えば先ほど松尾先生がおっしゃいましたように,アルコールなどはもっと高くしてもいいという判断はもちろんあると思うのですが,でもできるだけ矛盾のない法体系を提示して,そのルールに従って我々はこの社会を作っているということを言うためには,できれば選挙年齢と成年年齢は一致したほうがよいように思います。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。  もし大筋で反対がないようでしたら,先ほど申し上げたような基本方針に従って,最終案の取りまとめの作業を事務局のほうで準備していただき,それをめぐって次回御議論いただくことにしたいと思います。個々の中身につきましては,今,佐藤幹事から資料45に基づいて御説明がありましたように,なお論点としては,これまでも議論してきたところですけれども,幾つも重要な論点がございますので,そこに盛り込むべき内容についての御意見がこの場でいただけましたら,それを踏まえて最終報告書の取りまとめに着手したいと思いますので,よろしく御発言をいただければと思います。  事務局側から,これまで随分長く議論をいただいたけれども,もうちょっと意見を詰めておいてもらったほうが,最終報告書の草案を作る上で助かるというポイントが特にありましたら,焦点を絞って問題提起をしていただければと思います。 ○今田委員 最終報告に対しての期待ですが,この部会では,成年年齢が何歳であるべきかを検討してきました。最終報告では,民法の成年年齢がなぜ18歳でなければいけないのかについて,ここで総合的・多面的に議論をして出した結論であることを丁寧に示していただきたいと思います。  もちろん,事務局の前提としては,国民投票法があったと思います。でも,民法の成年年齢が今の日本の社会において何歳であるべきかについて議論し,その結論として,以下の報告内容があることを明確に示していただきたい。  そういう意味で,再三議論されたように,なぜ18歳なのかという議論は,やはり若者の自立・参画が今 の社会にとって大きな課題であることと深く関わっている。成年年齢を18歳に下げたからそれが達成されるわけではないけれども,諸外国の例もあるように,若者を社会全体で自立させ,若者の参画を促すような仕組みに変えていかなければという問題意識,課題に直面している。この課題を民法から考えた場合に成年年齢がどうあるべきかということの問題として,報告書の結論になったと思います。委員の先生方が一生懸命知恵を出して議論されたことなので,是非その点を格調高く,事務局の腕に期待しますが,書いていただきたいというのが希望です。 ○鎌田部会長 大変貴重な御意見,ありがとうございました。  易しくはないと思いますけれども,最大限御趣旨を生かせるようにお願いいたします。 ほかにいかがでございましょうか。 ○出澤委員 部会長の御提案は,選挙年齢と成年年齢は必ずしも一致する必要がないかもしれないが,特段の弊害のない限り一致することが望ましい,特段の弊害を除去してから成年年齢を引き下げるべきであるというものであったと思いますが,そうだとすると,今田委員がおっしゃった格調高くというのとは,若干ニュアンスが違う気が致します。先ほどの総務省への意見ではありませんが,理論的にはこの選挙年齢とは違うということで検討しているものですから,そこのところは出していただきたいと思います。 ○鎌田部会長 大村委員。 ○大村委員 先ほどの今田委員の御指摘はもっともだと思って伺いました。  それで,今の点ともかかわるのですけれども,国民投票年齢が18歳に設定され,そして選挙年齢も18歳に下げられるから民法もそうするということではなくて,今田委員が御指摘になったような,青少年の社会参加ということを背景に出てきているわけですので,そのような基本的な考え方に立つのならば,民法の成年年齢についても引き下げることが考えられるというような仕切りになるのかなと思って伺いました。 ○鎌田部会長 ほかの点はいかがでしょうか。  事務局から何かございますか。 ○神吉関係官 最終報告書に盛り込むべきかどうかということを御相談させていただきたいのですけれども,成年年齢を18歳に引き下げると,高校3年生の中に成年に達している者とそうでない者がいるということで,中間報告書の取りまとめの際に,氷海委員から,高校における教育指導上の問題があるのではないかという御指摘をいただいたかと思います。そのあたりについては,今回最終報告書に盛り込んだほうがいいかどうかという点についてはいかがでしょうか。 ○氷海委員 その組織の中で,高校が一番それに影響を受けるので,いろいろな学校でのそうなったときの対応があろうかと思いますけれども,やはり一番大きなそういうものが決まりますと,それに対する考え方というのが,それぞれいろいろな考え方があるのではないかと思います。   本日は,文部科学省の方がおられるのでお伺いしますが,我々現場で単純に,問題はやはり今までよりはあると思います。それを,学校独自の,入学当時に保護者等との話の中でいろいろなルールづくりを,学校を卒業するまでというようなことで保護者・本人たちに話をしていったときに,ちょっと見当がつかないのですけれども,いろいろな考え方をする人がおられるので見当がつかないのですが,高校を運営していく中で,学校が決めたルールと学校の中に成人が存在するというそのギャップで,できるだけ学校としては統一した形の中でやっていきたいという思いがあるのですけれども,その辺のイメージはどうでしょうか。学校の中で作ったルールをどこまで運営上理解していただけるものなのでしょうか。 ○小幡関係官 学校で作る校則とか,そういうルールについて,文部科学省から細かく指導したりしているわけではございませんけれども,例えばオートバイとかバイクは18歳になっているというようなことがある中で,学校でもそれに基づいて,学校としてのルールを作っているというようなこともありますが,もっと複雑な例が幾つか出てくるのかもしれませんが,それはしっかり,もし18歳になったとしたら,それに応じて対応していく必要があるのではないかなと思っております。 ○氷海委員 そこのところが,現実に今までないのですけれども,成人の者とそうではない者が高校の中で存在すると。今,すべて予測はできませんけれども,その辺の課題はあるというような形は,もし入れていただけられれば入れてほしいなと思います。  それは,今言ったように,どういう形でその課題に取り組むかというのは今ちょっと想像つかないのですが,今の18歳はほとんど今高校生になりますので,そこでの一つの課題はあるのではないかなというようなものが入れば入れていただければと思います。 ○鎌田部会長 仮に引下げが実現された場合に生ずるであろうところも,新たに対応が必要となるであろう事柄の一つとして,検討といいますか,対策を考えておかなければ いけないものという方面からも取り上げるということですね。分かりました。  はい,大村委員。 ○大村委員 教育学の教授をヒアリングにお招きしたときに話題になったかと思いますけれども,大学は現に未成年者と成年者が交じっておりますので,それでどういう問題が生じ,どのように対応しているかというようなことも含めて,文部科学省その他で御検討いただけるのではないかなと期待しております。 ○鎌田部会長 よろしく文部科学省のほうにもお願いいたします。  高校の場合は,大学以上に生活の場に近い実質を持っているので,難しい問題が少し多いかもしれませんので,文部科学省も各高校と協力して対応を考えていただけると助かるだろうという気がいたしますので,よろしくお願いいたします。  ほかにいかがでございましょうか。 ○神吉関係官 この場で議論するのが相当なのかどうか分からないのですが,今,部会長から御提案いただいた内容が,18歳成年制の方向は打ち出すけれども,すぐに引き下げるといろいろな問題があるので,様々な施策を講じてから成年年齢を引き下げましょうといった御提案だったと承知していますが,それと選挙年齢の引下げとの関係についてどのように考えるべきかということについて御相談させていただきたいと思います。これまで部会の委員・幹事の皆様の御議論を拝聴しておりますと,選挙年齢については引き下げても大きな問題は生じないので,先に引き下げてもよいのではないかというようなお話が多かったかなと感じております。そういたしますと,その選挙年齢については先に引下げをし,その後,消費者保護施策の充実など様々な施策を実施し,それらの施策が充実すれば,若者の自覚や自立が高まり,成年年齢の引下げをするだけの立法事実ができると思うのですけれども,そういったようなことについては最終報告書に盛り込むべきかについて御意見を伺いたいと思います。選挙年齢の話もあり,報告書で言及することは,越権のような感じもいたしますが,若者,青少年の自立についてどう考えていくべきかということを真剣に検討をしている部会でありますので,個人的には,盛り込んでおきたいという思いはあるのですが,皆様の御意見をお聞かせ願えればと思います。 ○出澤委員 その点は,今の神吉関係官のおっしゃった方向で盛り込んでおいたほうがよろしいかなという気はいたします。というのは,先ほどの総務省の方のお話もございましたけれども,いつ民法の成年年齢が引き下がるか分からないというような中では,また非常に複雑な議論が起こってくる可能性もございます。こちらとしては,ここの部会では従前から,この選挙年齢と民法の成年年齢は理論的には違うんだと,別扱いでも構わないんだという議論が大きくなされてきたところでもございますので,そこのところは触れておいていただいて,いろいろな施策が成年年齢を引き下げるには必要だけれども,選挙年齢と一致するということはこちらとしては考えていませんよということは,議論があったわけですから,触れておくべきかなという気はいたします。 ○鎌田部会長 ほかに御意見はいかがでしょうか。 ○青山委員 最終報告書という言葉が使われておりますけれども,イメージがどういうものか分からないので,事務当局が考えておられることをお伺いしたいのですが,従来,法制審議会の部会では要綱案を作成し,総会に提出した上,総会ではそれを審議して法務大臣に答申をし,法務省がそれに基づいて,法文化するという作業だったと思うのです。したがって,各部会でまとめるものは,結論だけまとめて,その実質的な理由は部会長が口頭で総会に報告されるというのが従来の形だったと思います。  今回はそれとは異なり,少し実質的なものまで含んだ文章をきちんと作るということを前提として議論が進んでいるという理解でよろしいでしょうか。 ○佐藤幹事 結論から申し上げると,青山委員御指摘のとおりでございます。  今回の諮問自体が成年年齢の引下げについてということでございますので,ただ結論だけ書くというのでは,なかなか意が伝わらないと思われます。この審議会で審議した事項については,引き下げることについてどのように考えるか,そして仮に引き下げるためにどういう条件が必要かというあたりについても議論してきたところでございますので,当然その内容自体が結論の中に入らないといけませんので,報告書の中で,単に結論だけでなくて,その経緯やどういう施策が必要だというあたりの議論を,要綱という形ではなくて,報告書の形で示す必要があると考えております。 ○青山委員 私もそれが望ましいと思います。どういう結論になるかということが,後世問われた場合に,きちんとした報告書が出て,その議論の過程も透明になっておくことが必要だと思います。  先ほど両論併記という言葉がございましたけれども,両論併記ではなくて,やはり一本化した形で,しかも先ほど今田委員がおっしゃいましたように,なぜそうなのかという積極的な理由を明らかにしたものを出していただくことが最も望ましいのではないかという意味で,私は今田委員の考え方に全面的に賛成でございます。 ○鎌田部会長 今,事務当局からも御説明がありましたように,この問題の性質といいますか,またこの部会でも審議してきたことの中身は,どちらに結論がなるにせよ,現在の若者の問題に対してこういう形での取組が必要だということをかなり詳しく多角的に議論しましたので,その中身はできるだけ盛り込んで,いろいろなところでいろいろな形で活用していただけるようなことを目指したほうが,1年間にわたる委員・幹事の皆さんの御努力を社会に定着させることができるのではないかと思っておりますので,そういう意味で要綱案型ではなくて,報告書という形で取りまとめをさせていただきたいと思っております。  ほかにいかがでございましょうか。  よろしいですか。特にほかに御意見がないようでしたら,方向性といたしましては,18歳成年制を採用すべきであるが,現時点で引き下げると消費者被害の拡大などの問題が生じるので,様々な施策を講じてから成年年齢の引下げを実施に移すべきであるといった方向性で取りまとめるということでよろしいでしょうか。  具体的な書き振りにつきましては,事務当局と相談して報告書案を取りまとめて,次回,最終報告書のたたき台をお示しするという手順にしたいと思いますので,その起案につきましては事務当局にお任せいただけますでしょうか。ありがとうございました。  特に御意見がなければ,残りの論点がまだ少しありますので,その点につきまして事務当局から御説明をいただきます。 ○佐藤幹事 それでは,その他の論点について,部会資料45の3ページの4,5,6の論点についてまとめて御説明いたします。  まず,4の「成年年齢を引き下げる場合の年齢等について」でございます。  仮に成年年齢を引き下げる場合,成年年齢を何歳とすべきかにつきまして,中間報告書では18歳とするA案,18歳に達した直後の3月の一定の日,例えば3月31日などに一斉に成年とするB案,19歳とするC案に分かれておりました。パブリック・コメントに寄せられた御意見には,A案を支持する意見とB案を支持する意見がございました。  これまでの議論を拝聴しておりますと,成年年齢を将来的に18歳に引き下げる方向性については御意見が一致したものと思われ,必然的に結論はA案ということになろうかと思いますが,御意見があればちょうだいいたしたく存じます。  次に,5の「養子をとることができる年齢について」でございますが,仮に成年年齢を引き下げるとしても,養子をとることができる年齢につきましては,現状維持の20歳とすることでこれまで特に異論はありませんので,この結論でよいのか,御意見があればちょうだいしたく存じます。  なお,前回,五阿弥委員から,これまで養子がとることができる年齢を20歳としていたことに何か問題があったのか,問題がなかったのであれば現状維持でよいのではないかという御意見をいただきましたが,事務当局において把握している限りでは,現状の年齢で特に問題があるとは承知しておりません。したがいまして,養子をとることができる年齢については現状維持でよいと思われますが,御意見があればちょうだいいたしたく存じます。  次に,6の「婚姻適齢について」でございますが,仮に成年年齢を引き下げる場合には,男女とも18歳とすることでよいか,御意見をいただきたく存じます。  なお,中間報告書では,注にございますように,男女とも18歳を原則としつつ,16歳,17歳の場合であっても,妊娠した場合など特別の事情がある場合には,家庭裁判所の許可を得れば婚姻することができるようにすべきであるという御意見も本文で記載しておりました。  しかし,平成8年2月の法制審議会総会の決定である民法の一部を改正する法律案要綱では,婚姻最低年齢を男女18歳とし,その例外を設けないという答申を出しております。その理由としまして,一般に低年齢での婚姻については,離婚に至る割合が高いという傾向が窺われること,法定の婚姻年齢に達しない者であっても例外的に婚姻を認める制度を採用するとすれば,国家機関,例えば,家庭裁判所が,特定の当事者について,婚姻を認めるに足りる社会的・経済的成熟があることを判断する仕組みが必要になるが,そのような判断のための客観的基準を見いだすのは難しいことなどが挙げられております。このように,最低婚姻年齢に例外を設けるという御意見につきましては,今回の成年年齢の引下げの議論と直接には関係いたしませんので,部会意見としましては採用しないこととしていただきたく存じますが,この点について御意見がございましたらお出しいただきたく存じます。 ○鎌田部会長 それでは,ただいま説明のありました点につきまして御意見をいただければと思います。 ○大村委員 最後に御指摘のあった婚姻年齢についてなのですけれども,男女とも18歳にするということに私自身は賛成です。  ただ,例外を認めるべきではないかということについてなのですけれども,それも,今回はそれについては触れないということであれば,それは結構だと思うのですけれども,ただ平成8年の決定がこうであるということで,このままでいいのだというふうに積極的にコミットするという必要はないのではないかなと思います。ここで挙がっている理由が,今日そのまま妥当するのかどうか,再考を要するところもあるように思いますので,ただその問題は別途の問題だというほうがよろしくはないかと思います。 ○佐藤幹事 分かりました。他の皆様から御異論がなければ,婚姻最低年齢の例外を設けるかどうかについては,最終報告書ではふれないこととしたいと思います。 ○鎌田部会長 木幡委員。 ○木幡委員 婚姻年齢のことなのですけれども,これは結構さらっと書いてありますが,男女とも18歳になるというと割とみんなびっくりするのではないかなと思います。これは,やはり成人が18歳になるとともに,なぜ男女とも18に合わせるのかという理由はどのようになるのでしょうか。 ○佐藤幹事 現在の婚姻年齢は,男子18歳,女子16歳で,未成年者が婚姻するときは親の同意が必要になっているということになっています。今,成年年齢が20歳ですが,18歳になったときに,男子の場合は,これは親の同意が要らなく,成年であれば婚姻できると,ただ女子の場合は未成年である16歳,17歳でも婚姻ができるということで,男女の差異がクローズアップされるというところでございます。また,法制審議会といたしましては,平成8年に既に答申を出していることもありますので,今回も従前の結論のとおり,男女とも婚姻適齢は18歳としたいというところでございます。 ○木幡委員 参考までに,実際に16歳で結婚する人というのは今どのくらいいるのでしょうか。 ○神吉関係官 数につきましては,第1回会議の際に配布いたしました参考資料7に,婚姻関係に入る年齢の状況ということで統計資料がございますので,そちらを参照していただければと思います。それなりに数としてはいらっしゃるようには聞いております。  ただ,結婚したい人ができなくなるのではないかという御指摘につきましては,今16歳になっているから16歳,17歳でも結婚をしているが,その年齢が変われば,それに従って社会規範のようななものが醸成されていくだろうというような説明が,当時法制審議会の議論の際にはされていたと聞いております。 ○木幡委員 分かりました。 ○鎌田部会長 よろしいですか。  ほかにいかがでしょうか。  特に御意見がほかにないようでしたら,ただいま説明のありました4から6までの論点につきましては,事務当局の説明のとおりの内容で部会意見として取りまとめをすることとしたいと思います。  本日予定をしておりました議事は以上のとおりでございますけれども,ほかに御意見等ございますでしょうか。  特にないようですので,本日の審議はこの程度にしたいと思います。  最後に,事務当局から次回の議事日程等について説明をさせます。 ○佐藤幹事 次回の議事日程について御連絡いたします。  次回の日程は,5月19日火曜日の午後1時30分から,場所は本日と同じ法務省の第1会議室になります。  議事内容につきましては,事務当局が作成いたします最終報告書のたたき台に基づいて御審議をいただきたいと思います。 ○鎌田部会長 それでは,法制審議会民法成年年齢部会第13回会議を閉会にさせていただきます。本日は御熱心な御審議を賜りまして誠にありがとうございました。 -了-