法制審議会民法成年年齢部会 第14回会議 議事録 第1 日 時  平成21年5月19日(火)  自 午後1時30分                        至 午後5時10分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民法の成年年齢の引下げの当否について 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ○鎌田部会長 それでは,予定した時刻が参りましたので,法制審議会民法成年年齢部会第14回会議を開催いたします。   本日は,部会資料46の「民法の成年年齢の引下げについての最終報告書(第1次案)」に基づきまして,委員・幹事相互間で御議論いただきたいと思います。   まずは事務当局から部会資料46の説明をしていただきますが,全体を一気にではなく,第1,第2をまず御説明いただいて,御議論をちょうだいするという形で,少しずつ分けて議論をしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○佐藤幹事 それでは,部会資料46の「民法の成年年齢の引下げについての最終報告書(第1次案)」について御説明させていただきます。   第1及び第2の御説明に入ります前に,全体の構成につきまして簡単に御説明させていただきます。   最終報告書案の全体構成は,中間報告書とやや異なっております。第1の「検討の経緯等」と第5の「その他の問題点」を記載している場所は同様でございますが,中間報告書におきましては,「検討の経緯等」の後に,まず,民法の成年年齢を引き下げた場合の影響及びとるべき施策について記載した後に,民法の成年年齢引下げの当否について,各種論点について記載し,その後,成年年齢の引下げをする場合に必要となる施策の実行について記載しておりました。   これに対し,最終報告書案では,第2といたしまして「国民投票の投票年齢,選挙年齢等との関係」を論じ,次に第3として「民法の成年年齢の引下げの意義」として引下げのメリットを論じ,次に第4として「民法の成年年齢を引き下げた場合の問題点及びその解決策」として,引き下げた場合のデメリット及びその解決策について論じるという全体構成になってございます。   それでは,続きまして,第1及び第2について御説明いたします。報告書案の2ページ以降になります。   第1の「検討の経緯等」につきましては,法制審議会に民法の成年年齢の引下げが諮問されるに至った経緯として,国民投票法の成立から,内閣に設置された「年齢条項の見直しに関する検討委員会」の設置・決定,そして,この部会における調査審議の経過の概要を記載しています。その記載内容は中間報告書とほぼ同様でございますので,詳しい御説明は省略させていただきます。   ただし,1点だけ御説明させていただきたいのは,2ページの注1でございます。この部会では,民法の成年年齢の引下げのみの検討を行い,飲酒や喫煙等に関する未成年者飲酒禁止法,未成年者喫煙禁止法や少年法等の他の法令については検討の対象としておりません。これらの法令につきましては,年齢条項見直しに関する検討委員会の決定に沿って,それぞれの法令を所管する府省庁・各部局において検討が行われるべきものであります。民法の成年年齢の引下げについては,ややもすると,飲酒・喫煙年齢の引下げや少年法の適用年齢の引下げと混同されがちですので,これらの年齢の引下げについては,この部会で議論の対象となっていないということを明示しておくべきという前回の部会の御意見を踏まえまして記載させていただきました。   続きまして,3ページの「第2 国民投票の投票年齢,選挙年齢等との関係」について御説明いたします。   まず,1では,国民投票法附則第3条の趣旨について記載させていただきました。   民法の成年年齢の引下げの議論の契機は,平成19年5月に成立いたしました国民投票法の附則第3条において,民法の成年年齢の引下げの検討が求められたことですので,まずは附則第3条の趣旨について踏まえる必要があると考えられるためです。   この附則が設けられた趣旨につきましては,これまで何度も御説明させていただきましたが,国民投票法案の国会審議における提出者の答弁等において,①公職選挙法の選挙年齢を戦後20歳に引き下げた理由として,民法の成年年齢が20歳であることが挙げられており,民法上の判断能力と参政権の判断能力とは一致すべきであること,②諸外国においても,成年年齢に合わせて18歳以上の国民に投票権・選挙権を与える例が非常に多いことが挙げられております。   続きまして,4ページを御覧ください。   2の国民投票年齢,選挙年齢と民法の成年年齢の関係につきまして御説明いたします。この部分は,中間報告書を御決定いただいた後に重点的に議論を行ってきたところですので,詳しく説明させていただきます。   憲法は,第15条第3項で「公務員の選挙については,成年者による普通選挙を保障する」と規定しておりまして,成年者に対して選挙権を保障しております。しかし,それ以外の者に選挙権を与えることまでは禁じておらず,理論的には,選挙年齢と民法の成年年齢は必ずしも一致する必要はないということで部会の意見が一致したことは中間報告書でも同様でございました。   そこで,理論的には一致する必要がないとしても,選挙年齢と民法の成年年齢が一致することが望ましいかどうかにつきましては,中間報告書でも御意見が分かれたため,御議論いただいたところでございます。   この点につきましては,5ページの①から③までに書いてあるとおりでございまして,参考資料27にありましたように,① 諸外国におきましては,大多数の国において私法上の成年年齢と選挙年齢を一致させていること,②社会的・経済的にフルメンバーシップを取得する年齢は一致している方が,法制度としてシンプルであり,また,若年者に「大人の入口」に立つことの意味を理解してもらいやすいこと,③先ほども御説明しましたように,国民投票法の法案審議の際の提出者の答弁等において,民法上の判断能力と参政権の判断能力とは一致すべきであるとの説明が行われていることなどからして,特段の弊害がない限り,選挙年齢と民法の成年年齢とは一致していることが望ましいということで意見が一致したものと考えております。   この点につきましては,これまでの部会における御議論を踏まえて事務当局が記載したものでございますが,御異論あるいは表現の点で修正すべきであるという御意見がございましたら,お出しいただきたく存じます。   なお,特段の弊害につきましては,第3以下で検討することとなるものと考えておりますので,ここでは,一致することが望ましいという点について御議論いただきたく存じます。 ○鎌田部会長 それでは,ただいま説明がありました最終報告書案の第1及び第2について御質問,御意見があれば,お伺いしたいと思います。 ○出澤委員 本日,参考資料29として,報告書案について,気づいたところの私的なメモをお配りさせていただきました。これに基づいて若干,今の点についてお話ししたいと思います。   その前に,関連するところですので,この報告書案の全体の構成についても若干触れておきたいと思います。   本部会は,「若年者の精神的成熟度及び若年者の保護の在り方の観点から,民法の定める成年年齢を引き下げるべきか否か等について御意見を承りたい」という諮問に基づいております。   この経緯としましては,国民投票法から来てはおりますが,あくまでも民法ということで当初から議論がされてきたところです。最終報告書案になって,選挙年齢が18歳に引き下げられるとすれば,特段の弊害のない限り,民法の成年年齢についても18歳に引き下げることが適当であるという最初の結論の流れが,私としては,民法からして,成年年齢を引き下げるべきか否かというところとどうもそぐわないと考えております。民法の観点から成年年齢の引下げが適切かどうかというものは,もっと積極的な理由づけができるのであれば,そのようにすべきであって,選挙年齢と一致させるのが弊害がないからというような消極的な理由で,この基本的な法律である民法の成年年齢の方を動かすということは,これまでの議論とはそぐわないと思いますし,個人的にも,この考え方はとり得ないと考えております。   ここのところは,参考資料29の「全体について」の(1)のところを見ていただきたいのですが,最後の「したがって……引き下げることが適当である」の一文については,例えばですけれども,「したがって,選挙年齢と民法の成年年齢は必ずしも一致する必要はないこと及び両者は一致することが望ましいことという観点を踏まえながらも,民法の成年年齢の引下げの意義,問題点及びその解決策等を検討する」という流れの方が適切ではないかと思います。   次に,一致させるのが望ましいという,報告書案の5ページのこの理由づけは,余り説得力がありません。ここのところは,私のメモに記載させていただきましたけれども,諸外国との比較,これはこれでよろしいのですが,これが積極的な理由になるのかということになりますと,これは必ずしもそうなるということではないという議論がここでも行われてきたのではないかと記憶しております。   私の方は,5ページの②が近い理由ではありますけれども,この理由づけも,まず,フルメンバーシップという用語を使っていいかどうかの検討をお願いしたい。また,意味合いとしてはよく分かるのですけれども,「年齢は一致している方が,法制度としてシンプルであり」という部分は果たしてどういう意味合いなのか。ほかの法律と整合性があった方がいいということであれば,せっかく,ほかの法律には関係しませんよということをうたっていながら,場合によってはシンプルな方がいいのかなというように読めたものですから,ここの言葉遣いについては,私は賛成いたしかねます。   それから,「若者に「大人の入口」に立つことの意味を理解してもらいやすい」,ここが非常にあいまいで,これが果たして理由になるのかどうか。私の方の対案ですが,「原則として自分の行為だけで,完全な権利義務を生じさせることができ,また,結婚ができるといった,私法上も社会的・経済的に大人という立場にあることが,政治への参加意欲を高めることになり,また,より責任を伴った選挙権の行使を期待できることから,選挙年齢は私法上の成年年齢と一致することが望ましい」と,私はそう考えます。そのような積極的な意味,若年層の政治参加,選挙権を通じての選挙参加も,未成年の立場よりも成年の立場の方がより一層責任感を持って,かつ,参加意識も伴うのではないか,そういう理由から,私としては,一致することが望ましいとは考えております。   以上でございます。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   御指摘いただきました第1の点は,前回,今田委員からも同様の趣旨の御提言をいただいたところでございますが,報告書案の中ではなかなか積極的にうまく書き切れていないところがございますので,事務局から何かありましたらお答えいただきたいと思いますし,また,ほかの委員からも御意見をいただければと思います。 ○神吉関係官 事務当局から,まず,国民投票年齢,選挙年齢の関係について論じた理由について,簡単に御説明させていただきます。   確かに出澤委員御指摘のとおり,今回の諮問の内容としては,民法の成年年齢を引き下げるか否かということを検討していただきたいということでございます。ただし,法制審議会の総会,また,この部会の第1回会議の際にも御説明させていただきましたとおり,あくまでこの問題というのは,国民投票法の附則第3条において,成年年齢の引下げの検討が求められている,そこが検討の契機となっております。したがって,そこの観点は無視することができないだろう,また,この観点についてどう考えるべきかということも部会の皆さんにも御議論いただきましたので,まずはこの点を押さえる必要があるだろうということで,報告書案の冒頭に書かせていただきました。民法の観点における成年年齢の引下げの積極的な意義につきましては,第3以下で,書かせていただきました。 ○鎌田部会長 今の出澤委員の第1点の方の御提案に関連しまして,ほかの委員・幹事の方から御意見ございましたら,是非お願いいたします。 ○木村委員 最終報告書案を読みまして,中身それぞれについては確かにそうであろうと思うのですが,全体として見た時に,最初に国民投票の投票年齢とか選挙の話が出てくると,もちろん経緯はそうなのですが,どうしてもそれに引きずられて民法を下げるのか,何かそちらが中心であったかのように読めてしまうのです。民法は民法でしっかりと検討して,引き下げていくという方向性を検討したのだということを,やはり前面に出すべきではないでしょうか。その中で,国民投票だとか参政権の問題との関係ではどうだったのかというと,こうですという順番になっていく,その方がむしろ,これを読んだ一般の国民の人たちは分かりやすいのかなという感じがします。選挙の関係で引っ張られて,そちらを事前に理詰めで検討して,その次に民法という順番は分かるのですが,報告書を見たとき,先ほど出澤委員が言われたような印象になってしまうのではという感じがしております。 ○鎌田部会長 ほかに御意見ございますか。   これは全体の構成を,木村委員が御提案のように組み替えるようにするか,あるいは,経緯は経緯なので,しかしそこに余り引きずられて,やむを得ずやっているような雰囲気にならないように,出澤委員の御提案も,どちらかというとそういう御趣旨だったかと思いますので,そこをうまく調整できるか,更にまた事務当局と私の方で検討させていただくということでよろしいでしょうか。   それと密接に関連する事柄ではございますけれども,出澤委員からの第2の御提案も,選挙年齢と民法の成年年齢が一致していることが望ましいとする理由づけについて,もう少し具体的かつ積極的な理由が必要だということで,代替案の御提案も含めて御意見をいただいているところでございます。この点に関して,委員・幹事の皆様方から御意見がありましたら,お出しいただければと思います。   まず,事務当局から何か説明はございますか。 ○佐藤幹事 それでは,事務当局から少し御説明させていただきます。   出澤委員から,「法制度としてシンプル」という表現の部分と「「大人の入口」に立つことの意味を理解してもらいやすい」という部分が分かりづらいというか,適切でないのではないかという御指摘をいただいたかと思います。   法制度としてシンプルというのは,皆さん御理解いただいているとは思いますが,選挙年齢と民法の成年年齢がこれまでずっと一致しており,国民にもかなり浸透もしております。そこで,民法で言うところの大人と,選挙で言うところの選挙権を持っている人が大人という観念について,国民の間ではかなりそこは浸透しているところである。そうすると,民法の成年年齢と選挙年齢が分かれることになると,どちらの年齢になったら大人なのだろうというところが国民から見ると分かりづらいだろう。そこについてはやはり,大人ということであれば,選挙年齢についても,民法の成年年齢についても同じ方がシンプルかつ分かりやすいというところで,シンプルという言葉を使わせていただいたということでございます。   また,「大人の入口」というのは,確かに若年者の精神的成熟度が昨今おくれているという御指摘もありましたが,部会の中でも,大人というのは幅の広い概念で,最終的に成熟して大人になるのは確かに20歳でなくて30歳ということもあり得るのだけれども,大人として扱う入口としてそれを何歳にするかというのは,別の議論であり,何歳からを大人として取り扱うのかということを考えるという意味で,「大人の入口」という言葉も,部会で何度か出ました。そこで,事務当局としましても,この言葉が適切なのかなと考えて,ここでは「大人の入口」という言葉を使わせていただいたところでございます。ただし,表現ぶりにつきましては,皆さんの御意見も踏まえて,よくすべきところがあればそこは修正していく必要もあるかと思いますので,御意見をいただければと思います。 ○神吉関係官 補足して私の方からも御説明させていただきます。   法制度としてシンプルであるという点につきましては,高校生にヒアリングをした際に,もし法改正などをする場合には分かりやすい制度にしてほしいといった御意見もあったかと思います。また,そういった若者から見た場合の分かりやすさということも大事であるという御意見も,この部会の中で出されたかと思いますで,その辺を踏まえて書かせていただいたということでございます。   それから,大多数の国において私法上の成年年齢と選挙年齢を一致させていることは,理由にならないのではないかという御指摘をいただきましたけれども,この点につきましては部会でも御議論いただいたところではあるかと思います。注5にも書いてありますように,187か国(地域)のうち134か国で選挙年齢と成年年齢を一致させておりますが,このことには,それなりの意味があるのではないかといった御意見も部会の中で出されたかのように記憶しております。 ○出澤委員 他国と比べてというところは理由にならないとは申し上げておりません。1番目の理由にはならないのではないかということでございますので,理由付けの順番を工夫していただければ結構です。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。是非いろいろ御意見をいただいて,少しでもいい表現に変えていきたいと思います。   平田幹事,どうぞ。 ○平田幹事 今回,この原案を読ませていただいて,5ページの一致させる意義というところと,7ページには,若者政策として,「我が国の将来を支えていかなければならないのは現在の若年者たちであり,将来の我が国を活力あるものとするためにも」というようなくだりで書いてあって,その次に,8ページには,「18歳をもって大人の仲間入りをさせることを意味し,若年者を国造りの中心としていくという,国としての強い決意」なのだという,後ろに行くほどトーンが上がっていって,前の方がトーンが弱いといったら,読んでいて,今田委員が前回言われた「格調高く」というのがひっくり返っているような感じがするので,むしろ,シンプルだというところも,高校生たちが言っていたのは,取引とか,民法の枠内でシンプルであるべきであって,すべてに対してシンプルであるべきだと言っていたわけではないような印象を私は持っているものですから,逆に,喫煙だとか少年法とか,シンプルだといったら全部18歳でいいではないかという議論になりかねない,それはやめましょうという議論だと思いますので,むしろ社会的な参加だけではなくて,経済的にも社会のフルメンバーシップを与えて,将来の日本を担っていく存在として,国の強い決意を示す上で一致させた方が望ましいというのが前回までの議論の趣旨ではないかなと思うので,ここをひっくり返していただければすんなり通るような気がします。 ○今田委員 コメントされた委員の方たちの共通の感想は,選挙年齢と一致させるうんぬんから議論を始めていることによるものだろうと思います。民法の枠組みで成年年齢を18歳に引き下げることの意義について後ろの方ではしっかり議論されてますが,そのことを議論する前に,選挙年齢と一致うんぬんという議論を先にするので,報告書の趣旨がうまく伝わらないのかと思うのです。だから,もし大きく変えるのは厳しいとしたら,簡単な修正で,直接選挙年齢の一致うんぬんに入る前に,民法の成年年齢はかくかくしかじかあるべきという議論を前に入れれば,今のいろいろな委員の先生方の御懸念は解消されるのではないかなという感じがします。 ○鎌田部会長 どちらかといえば,むしろ構成全体を変えた方が趣旨がよく伝わるということですか。 ○今田委員 構成全体を変えるのはなかなか大変な作業なので,修正作業として可能ならば,そういうことができるかということなのですけれども。 ○鎌田部会長 ただ,新聞で報じられているように6月に何としてでも決めなければいけないというわけでもございませんので,それよりもむしろ,せっかく1年以上やってきた中で,きちんとしたものができた方がいいと思いますが,ただ,余り積極的に民法上引き下げるべきであるというのを前面に出していいほど意見が一致していたかどうかは問題になると思います。選挙年齢の問題もあるから仕方がないというところで何となく一本化できたような部分もあるので,そこをどうしようかというのが少し事務当局の側でも悩んだところだと思いますが,構成全体を組み替えた方が,確かに最終的には非常に積極的な提言をするのだとしたら,その方がいいことは間違いないのですけれども,この場で,ではこうしましょうというのとは少し違う難しさがありますので,少し引き取らせていただいて検討させていただくということでよろしいですか。 ○神吉関係官 もう少し御議論いただいても。先ほど部会長からもお話ありましたけれども,この部会では意見の一本化を図るといった観点で,選挙権年齢が引き下がるのであれば成年年齢もといったところで,その方がシンプルだということで,前回の部会では議論がまとまったのかなという認識をしておりましたので,こういった原案を出させていただきました。先ほど民法の成年年齢の引下げの意義について,もう少し積極的な位置づけをすべきだという御意見がございましたが,仮に国民投票法の話がなかった場合に,民法の観点だけで検討した場合に,18歳に引き下げるべきという結論に至ったのかどうか,これまでの議論の経緯からすると,確信を持てませんでしたので,こういった構成にさせていただきました。ただ,部会の総意として,もう少し積極的な位置づけをした方がいいということであれば,構成を含めて少し検討させていただこうとは思いますけれども,いかがでしょうか。 ○岡田委員 2のところは「国民投票年齢,選挙年齢との関係」というタイトルですよね。そうだとすると,最後のところの「したがって,選挙年齢が18歳」うんぬんというのをここに入れなくて,これは民法のことを議論して,そして後に入ってくる方が落ち着きがあるような気がするのです。これが入っているから,何かもうここで決められたような気がするのではないかと思うのですけれども,違うでしょうか。 ○神吉関係官 先ほど,出澤委員から「したがって」の一文を「したがって,選挙年齢と民法の成年年齢は必ずしも一致する必要はないこと及び両者は一致することが望ましいということという観点を踏まえながらも,民法の成年年齢の引下げの意義,問題点及びその解決策等を検討する。」,こういった形で修文した方がいいのではないかという御提案をいただきました。選挙と国民投票の観点ではこういった議論があったけれども,あくまで民法の成年年齢の引下げの意義,問題点及びその解決策等を検討するためのまくらとして書いているのだというような形であれば,ここで結論が決まったというわけではなくて,その後もちろん検討するための材料であるという位置づけ,表現であれば,よろしいでしょうか。 ○岡田委員 はい。 ○神吉関係官 それであれば,それほど全体の構成も修正せずにすみますので,事務当局としても非常に助かります。もしそれでよければ,そういった形で,修文をさせていただきたいと思います。 ○岡田委員 選挙年齢が引き下げられるとすれば,民法の成年年齢も引き下げるという結論の部分は,もし書くとすれば,もっと民法の成年年齢のことを議論した後で書くものではないかなと思うのですけれども。 ○鎌田部会長 全部取ってしまうと,「一致する必要がない」というのが結論になってしまうので。 ○岡田委員 民法に入るイントロのところをここに書けば,次の第3につながるのかなと思ったのですけれども。ここに「適当であると考える」と結論を入れてしまっているから,順序がこう逆転しているという印象を与えるのではないかと思います。 ○鎌田部会長 ここは,出澤委員の御提案も,次の民法上の検討こそが重要なのだという意味での導入として非常にうまくまとめられていると思いますので,岡田委員,今田委員,出澤委員,平田幹事から御指摘いただいた点を踏まえて少し修文をさせていただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございました。   ほかの点,第1,第2に関連してございますでしょうか。   では,また追ってお気づきであればお出しいただくということで,次に第3について説明をしていただくようにいたします。 ○佐藤幹事 では,続きまして,第3の「民法の成年年齢の引下げの意義」について御説明します。第1次案では5ページ以降になろうかと思います。   ここでは,民法の成年年齢を引き下げた場合にどのようなメリット,必要性が生じるかについて検討を行っております。   1の「民法の成年年齢の意義」の部分は,中間報告書から修正しましたところを中心に御説明させていただきます。   民法の成年年齢が契約年齢及び親権の対象となる年齢の範囲を画する基準となっており,民法の成年年齢を引き下げることは,民法上,契約年齢及び親権の対象となる年齢の引下げを意味するという部分は中間報告書と同様でございます。   今回,付け加えました部分は,民法が成年年齢としている年齢20歳が,法律の世界のみならず,一般国民の意識においても,大人と子供の範囲を画する基準となっており,民法の成年年齢を引き下げることは,一般国民の意識の上でも,20歳までを子供として扱ってきた現在の扱いを変え,18歳をもって大人の仲間入りをさせる,18歳をもって「大人の入口」に立たせることを意味するとしたところでございます。この点は,中間報告書では,「第3 民法の成年年齢引下げの当否等について」の1の「若年者の社会参加,自立の促進」の部分で記載しておりましたが,民法の成年年齢は,契約年齢や親権の対象となる年齢といった意義に矮小化すべきではなく,法律上も事実上も大人と子供の年齢を定めている,より大きな意義を有しているという御意見を踏まえまして,民法の成年年齢の意義として,まず初めにここの部分で記載させていただきました。   次に,2の「若者政策の転換の契機となることへの期待」について御説明いたします。   まず,民法の成年年齢を引き下げ,18歳をもって「大人の入口」に立たせることは,我が国の若者政策の転換の契機となることが期待されると整理させていただいております。   これまで実施したヒアリングによりますと,近年の若年者の特徴として,精神的・社会的自立がおくれている,人間関係をうまく築くことができないなどの点が指摘されました。我が国の将来を支えていかなければならないのは現在の若年者たちであり,将来の我が国を活力あるものとするためにも,社会全体が若年者の自立を支えていくような仕組みを採用し,若年者の自立を援助するような様々な施策を実行していく必要があるものと考えられます。   なお,若年者の自立を援助するような施策には種々のものが考えられ,その具体的な内容は所管省庁において詰められるべきものではありますが,部会における調査審議の過程におきましては,7ページの下の方から書いてありますように,若年者がキャリアを形成できるような施策の充実,いわゆるシティズンシップ教育の導入,充実,欧米諸国のように,若年者が必要な各種情報提供や困ったときに各種相談を受けられるようなワン・ストップ・サービスセンターの設置,青少年が早期に社会的経験を積み,社会人としての知識やスキルを獲得することができるような社会参画プログラムの提供,虐待を受ける子や虐待を受けた結果社会的自立が困難となる者を減らす必要があることから,児童福祉施設の人的,物的資源の充実や,子育てを社会全体で支え合っていく仕組みの充実が必要であるといった意見が示されたところです。   ところで,民法の成年年齢の引下げとこれらの若年者の自立を援助するような施策の充実との関係を考えてみますと,若年者の自立を援助するような施策の充実は,民法の成年年齢の引下げの有無にかかわらず必要なものでもあり,また,民法の成年年齢を引き下げたからといって,論理的にこれらの若年者の自立を援助する施策の充実が図られるという関係にあるものではなく,民法の成年年齢の引下げは,これら若年者の自立を援助する施策の充実と必ずしも連動するものではありません。しかし,民法の成年年齢の引下げは,20歳になるまでの若年者を子供としてきた現在の取扱いや一般の国民の意識を変え,18歳をもって大人の仲間入りをさせることを意味し,若年者を国造りの中心としていくという,国としての強い決意を示すことにつながると言えます。そうすると,民法の成年年齢の引下げは,これら若年者の自立を援助するような施策を更に推進していくことの原動力となることが期待されます。   さらに,参考資料27で御覧いただいているところではございますが,諸外国の多くでは18歳成年制を採用しており,特に欧米諸国におきましては1960年代から70年代にかけて,選挙年齢とともに私法上の成年年齢も引き下げてきたところです。このような欧米諸国におきましては,成年年齢等を18歳に引き下げるとともに,若年者中心の国造りをしていく必要があるとして,若年者の自立を援助するような様々な施策を導入してきたということであります。部会における調査審議の過程でも,我が国における民法の成年年齢の引下げも,若年者の自立を援助するような施策を欧米諸国並みに充実させるべきである,それこそがグローバルスタンダードに合わせることの意義であるとも考えられるとの意見が示されたところでございます。   このように,民法の成年年齢を引き下げ,18歳をもって「大人の入口」に立たせることは,若者政策の転換の契機となることが期待されるという積極的な意義もあると考えられます。   この点につきましては,民法の成年年齢引下げの意義を検討する上で,部会で最も対立があったところと思われます。前回の部会におきまして,今田委員から,引き下げる方向の結論を採用するのであれば,積極的にその意義を記載すべきであるとの御意見をいただき,事務当局におきまして,これまでの御議論を踏まえてこの第1次案を作成したところでございますが,その内容や表現につきまして皆様から御意見を伺いたく存じます。   次に,3の「契約年齢の引下げの意義」のところは中間報告書とほぼ同様でございます。   契約年齢が引き下げられますと,18歳,19歳の若年者でも,親の同意なく一人で契約をすることができるようになります。   現在の日本社会においては,18歳に達した大多数の者は,何らかの形で就労し,金銭収入を得ていると言えますので,18歳に達した若年者が自ら就労して稼いだ金銭を,法律上も自らの判断で費消することができるようになるという点でメリットがあると言えます。   4の「親権の対象となる年齢の引下げの意義」につきましては,中間報告書とほぼ同様でして,親権の対象となる年齢を引き下げ,親から不当な親権行使を受けている子を解放するという点は,民法の成年年齢を引き下げることによるメリットとは言い難いということで御意見は一致しているものと思われます。これらの記載につきましても,御意見がございましたら,ちょうだいいたしたく存じます。   以上の検討のまとめとしまして,11ページの5におきまして,民法の成年年齢の引下げは,18歳をもって大人の仲間入りをさせることを意味し,若年者を国造りの中心としていくという,国としての強い決意を示すことにつながり,若年者の自立を援助する様々な施策の推進力となることが期待できる,また,18歳に達した若年者が,自ら就労して得た金銭を,法律上も自らの判断で費消することができるようになるといった点で,有意義であるとまとめさせていただいております。この点につきましても,表現などを含め,御意見があればお出しいただきたく存じます。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   それでは,ただいま説明がありました最終報告書案の第3につきまして御質問,御意見をいただければと思います。 ○出澤委員 こちらのところも,参考資料29の2ページ目の(2)のところを見ていただきたいと思います。「若者政策の転換の契機となることへの期待」,これはこれでよろしいのですが,ここの中に書いてある事柄が,そういう政策への期待という部分とともに,下げることによって国の活力,こういうものを上げるのだというような実質的な意味合いのことも結構書かれています。私の個人的な意見としましては,そういうところは一つ成年年齢を引き下げる意義ということで端的にとらえて,ここの部分について,このような意義が考えられるというところで抜き出すべきであると考えました。   それで,どういう要旨になるかということで少し長く書かせていただいているところでありますけれども,「現代の情報化及びグローバル化した社会においては,一般的に社会における活動の機会が広がっているのであり,社会・経済的活動に参加できる年齢層を引き下げることにより,若年者に対し早期に大人として社会に参加することができる機会を与えることが望ましいものと考えられる。また,高齢化が急速に進行している日本の社会においては,将来を担う若年層が,社会・経済において,積極的な役割を果たすことが期待される。したがって,大人としての社会参加の時期を早めることによって,より大きな活力を個人的にも社会的にももたらすことができる。そして,成年年齢の引下げに伴い,大人になるための教育による準備段階を経て,また,大人としての社会における実践により,大人としての自覚を早期から涵養できることは,社会・経済に関する意識の強い若年層を育てることになり,このこともまた個人及び社会に大きな活力をもたらすことになる。社会の複雑化・高度化によって自立の年齢が高まる傾向にはあるが,大人としての意識を涵養し能力を高めるための教育や弱者保護等の環境・施策が整備されれば,若年者が早期に社会に参加することを拒む必要はないものと考えられる」。この「若者政策の転換の契機となることへの期待」の中からこういう趣旨の事柄を述べているのではないかなと考えたものですから,そこのところはやはり実質的な意味合いがあるものというところで一つ抜き出すのがよろしいかなと考えました。   以上です。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   出澤委員からの御発言に関連する御意見がありましたら,お出しいただければと思います。 ○仲委員 なるほどなと思いながら伺ったのですけれども,一方で,ここでの議論の中では,契約年齢などを引き下げることによっていろいろなデメリットもあるであろうというようなことがかなり大きな問題として議論されたと思うのです。それを,例えば,今おっしゃった,時期を早めることによって,より大きな活力を個人にも社会にももたらすことができるという,比較的バラ色的なことだけが前面に出てきますと,懸念とか問題とか,どのように対処するかというところが少し薄まってしまうのではないかなと思いました。 ○出澤委員 正におっしゃるとおり,そこが非常に懸念されるところで,そこのところもきちんと充実した施策,それから,それが社会的に弱者保護という目的をきちんと達成するためにはどのくらいの期間が必要か,どういう準備が必要か,そういうようなことも含めて,そこのところは非常に重要な問題ですので,充実した内容を最終報告書には記載する必要があるのではないかと私も思います。 ○鎌田部会長 今,出澤委員の御提案になりましたのは,第1次案で言えば,2のむしろ冒頭に,こういうことがあって,その次に,それを実現するための施策的なものをその後ろにつけていく,そういったことになりますか。 ○出澤委員 構成としては「民法の成年年齢の引下げの意義」ということになりますので,総論的なところかと思います。 ○鎌田部会長 事務当局から何かございますか。 ○神吉関係官 確認させていただきたいのですけれども,「民法の成年年齢の引下げの意義」の中に今御提案のあった内容を盛り込むことは可能かと思うのですけれども,具体的には7ページの2の前あたりにこういったことを書いた方がいいのではないかという御趣旨ということでよろしいでしょうか。 ○出澤委員 どの位置に記載をするかということについては,特に意見はないのですが,ともかく,引き下げるという方向性を示すのであれば,きちんとした積極的な理由というものが必要であって,選挙年齢にそろえる必要があるからということとか,それから,若者に対する様々な施策が期待できるというような,そういうような消極的なものではないのではないかと考えている次第でございます。 ○鎌田部会長 大村委員,どうぞ。 ○大村委員 前回申し上げたことの繰り返しになるかもしれませんが,基本的に,私は,出澤委員がおっしゃるのは大変ごもっともなことだと思って伺いました。   それで,今日話題になっている国民投票法との関係についてですけれども,直前に出澤委員がおまとめになった認識というのは,国民投票法における投票年齢を18歳に設定するという事情の背後にある実質だと思うのです。ですから,ここに今おまとめになったようなことが国民投票法の方における投票権を広い範囲で認めようという方向を打ち出していると。民法についても同様のそのことを配慮すべきだというのが大きな流れなのではないかなと思います。ただ,実際の本部会の審議の経緯から考えますと,国民投票法からスタートしているということでございますので,その辺の経緯と実質をどのように書き分けるかということが修文の問題になるかと思いますけれども,経緯の問題は経緯の問題,実質については,それは大きな社会の流れの中で若年者の社会参加を促そうという流れができている,民法もそれを考慮に入れる必要がある,そういうことではないかと理解いたしました。 ○鎌田部会長 私からも出澤委員に確認させていただきたいのですが,現在の第1次案の2というのは,引下げの積極的な意義を強調すると同時に,しかしそれには自立支援策が伴わないとという,そういう構成になっているので,その後者の部分をどういうくっつけ方にするのかという部分について,もし出澤委員にお考えがあれば,それに従って,原案で言いたかったことがうまくまとまるかなと,そのような趣旨で事務当局は質問したのだと思いますけれども。 ○出澤委員 その後者の流れに関連するのですが,参考資料29の1ページ目の「1.全体について」の(4)のなお書きなのですが,第3回会議で参考人としてヒアリングの対象となった鎌田弁護士とお話ししたのですけれども,この記載では消費者被害拡大に対する施策が不十分ではないかという御意見を持っていらっしゃいま す。参考人としてこちらでお話をした経緯もあるので,そこのところについての意見を是非出したいとおっしゃっていらっしゃいます。そういうところも踏まえて,具体的にどのような施策,どういうものが必要なのか,それから,今日文部科学省の方もいらっしゃっていますけれども,学習指導要領,こちらの方から具体的に,どれだけの法教育なり消費者教育なり,又は労働,それから家庭,そういうようなことについての教育が可能なのかどうか,そういうようなところも,学習指導要領が実施されてから少し時間のスパンが必要だというのは前にもお聞きしましたけれども,実効性があるものとして,年齢を引き下げるとするならば,その年齢引下げに伴う弱者の救済,こちらの方がきちんとできる,そういうような施策,そういうところのものがきちんとできている,できていないといけないというところで,そのような方向性についてどのように考えるか,具体的にどういう施策,どういう時期,そういうものも含めての話だと思います。 ○鎌田部会長 それは主として,むしろ報告書案の第4に関する御提案になるのでしょうね。 ○神吉関係官 先ほど部会長が御発言したことにも関連するのですけれども,報告書案の7ページの2の構成というのは,成年年齢を引き下げるだけでは若者が自立していくわけではない,そういったことが今までのこの部会の審議の中で皆さんの共通認識なのかなと事務当局は思っていたのです。成年年齢の引下げの法改正,民法の改正をするだけでは何も変わらない,実際に必要となるのは,7ページの「なお」以下で書いているような,若者の自立に向けたいろいろな施策なのだ,そういった議論の流れなのかなと認識していたのです。ですので,出澤委員の御提案自体を入れることは可能だとは思うのですけれども,成年年齢を引き下げただけでは,大人としての自覚が涵養されるとか,そういうわけではない,あくまでいろいろな施策自体が大切であって,成年年齢の引下げというのはそれに対する契機となる,そういった位置づけなのかなと思っていたのですけれども,いかがでしょうか。 ○出澤委員 私はそのようにとらえております。正におっしゃるとおりだと思います。 ○鎌田部会長 出澤委員の要旨で言えば,下の3~4行のところにその趣旨が入っていて,その部分はこの第1次案にもう少し詳しく書いたようなのを盛り込んでも,それは出澤委員の趣旨に合致こそすれ,反するわけではない,そのように理解してよろしいですね。 ○出澤委員 こちらの方がむしろ重要というか,引き下げるという方向性を出す以上は,どういう理由づけをするのかということで議論している中では,積極的な意味合いというものがなければ,民法の成年年齢として引き下げるにはふさわしくないであろうという結論も出るわけです。ただ,引き下げるといっても,もちろん,ただ引き下げるだけでは全く意味がないという共通理解で私もおりますので,そこのところもやはり非常に重要な問題として,その条件整備が必要であるということでございます。ですから,条件整備については,報告書という形で法制審議会の総会に上げるという異例の形をとるというのも,その条件整備,そういう制度をどうすべきなのかというようなところをきちんと記載しないといけないということも一つその目的だったのではないかと思いますけれども,ここのところはきちんと書いて,最終報告書にしておく必要があると思います。 ○松尾関係官 若者政策の転換という大変次元の高い御議論が続いておりますときに,大変マイナーな論点のようで恐縮ですけれども,成年年齢が引き下げられた場合に,日本の社会生活で最初に起こる変化は成人式だと思います。各地方自治体が今20歳で成人式をやっているのを18歳でやることになる。国民の祝日に関する法律によれば,それこそが大人としての自覚を与えるための祝日でありますから結構なのですが,さて,今日の事務当局からのお話の最初の方に,少年法とか未成年者飲酒禁止法などについては,検討を加えていないという注記を施したというお話でありました。それは検討を加えていないということだけであって,そういうものは現在の状況を維持するという趣旨では必ずしもないわけですけれども,さて,どうなりますでしょうね。成人式の帰りに,大人になったといって祝杯を上げることをとめることができるかどうか。もちろん,外国の立法例では,ドリンキングエージというのは別途決めている国もあることはあるわけですけれども,私の近辺などで見てみますと,何か法制審議会で議論をしていらっしゃる,場合によっては思っていたより早くお酒が飲めるようになるのではないか,楽しみだという反応もありますので,その辺どう考えたらいいかというのが,先ほど申したマイナーな論点でございます。 ○佐藤幹事 繰り返しで恐縮ですが,この部会はあくまでも民法の成年年齢部会ですので,先ほども説明しましたが,飲酒や喫煙が下がることを考慮して,ではこの部会で民法の成年年齢を下げるかという検討はしないということで,そこは,そういうことで事務当局からも御説明して,皆さん御理解いただいて,御審議いただいていると考えているところでございます。 ○鎌田部会長 山本委員,どうぞ。 ○山本委員 この間の議論の経緯について私の理解するところでは,20歳大人社会を18歳大人社会に変えていくことが必要ではないか,しかし,そのためには,年齢を変えるだけではそういう社会は実現しない,社会的混乱が生まれてくることさえ危惧される,必要な政策を総動員していく必要があるという理解なのです。そうしますと,これは出澤委員も指摘されておりましたけれども,論理が逆転してしまっている。年齢を引き下げることによって若者政策の転換の契機となることを期待するのではなくて,これはむしろ必要不可欠な条件だと思うのです。若者政策の転換という表現になるのか,若者政策を抜本的に強化する必要があると言うのかは別として,期待で済むものではなくて,必要不可欠な条件なのだろうと私は理解しています。そうすると,2の「若者政策の転換の契機となることへの期待」という見出しと,そこの本文で書かれていることがロジックにかなり無理があるというのでしょうか。ですから,基本は,20歳大人社会を18歳大人社会に変えていくことが日本社会にとって非常に意味があるのだ,その社会にするためには,若者にかかわる様々な政策をより一層強化する,あるいは転換する,そういうことが必要な条件ですということなのではないだろうか。その意味からすると,このタイトルの意味というもの,あるいはこのタイトルによって恐らく規定される「まず」から最初の2行までのところですね,そういう論理の展開は整理をし直した方がいいのではないかと思います。 ○佐藤幹事 先ほども説明しましたが,20歳を18歳に引き下げただけで,では必要な自立のための準備がそれでできるか。18歳に引き下げなければできないのか。条件づけというのはそういうことですよね。18歳に引き下げないと若者の自立が促進されないというのであれば,それは条件関係になるかと思うのですが,これは,引き下げたからといって,それだけで若者の自立が促進されるかというと,それだけではないというのが部会での御意見だったと思いますので,引き下げるのが必要最低限の条件だというところにはならないのかなと。 ○鎌田部会長 山本委員がおっしゃったことは逆ですよね。 ○山本委員 今,必要なことは,20歳大人社会の日本を18歳大人社会に変えていくことによって,社会の活力や,そういう日本社会にとってプラスの面が多く出てくるのではないか。しかし,それをやるためには,可能ならしめる,教育を初めとした様々な条件整備が必要である,そういう関係ではないだろうかということを述べたわけです。 ○鎌田部会長 若者政策の転換ということで書かれているのはそういうことなのだと思いますが,いろいろな政策をとることが,18歳に引き下げること,あるいは18歳に引き下げたことが期待された効果を生ずるような社会の体制を整える上での条件だという,施策の方が条件だということですね。   宮本委員,どうぞ。 ○宮本委員 今日ここで議論していることは,私にとっては非常に歓迎ですけれども,前半までの議論は,ここまで踏み込んで議論になっていなかったと思います。そして,中間の提案を含んで今回事務局から出されたものは,かなり大胆に踏み込んで,18歳うんぬんということよりも,もっと大きな,若者政策転換というようなところまで立ち入った形で出されているので,そのスタンスに本当に立つということになれば,この文体全体にもっと工夫の仕方があるという感じもするわけなのですけれども,委員の皆様が,若者政策の転換なのだというところで一致できるかどうか,そこのところがかなり重要です。   なぜかというと,ヒアリングのときにもお話しさせていただいたことがありますけれども,18歳の成年年齢を既にとっている例えばEU諸国でも,2001年の「ユースレポート2001」を見ると,早期に社会の主人公にしていくということが社会にとってどうしても必要なことなのだということをうたった上で,更に続けて言っていることは,若者を大人にする時期というのを移行期とすると,移行期を支援するための環境整備として,何が必要かということを具体的に出していて,例えば必ず出てくるのが,教育と職業訓練,情報提供,住宅政策,社会保障,ソーシャルネットワークの拡大など10くらい挙がるわけです。今回は民法に限定しているものですから,話が消費者教育とかと,限定された具体的なテーマにすぐいくわけですけれども,その消費者被害の懸念というのも,言ってみれば,教育,職業訓練と挙がっていくものの中の一つであると思うのです。ですから,書き振りとしては,出澤委員の御指摘を入れることには賛成なので,そうしますと,そこに更につなげて,移行期を支援するための柱としてはこのようなものがある,その中の民法にかかわるものに関してはこれとこれというような具合に記述すれば,もっとすっきりと,しかも格調の高い提言になるのではないかという感じがします。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでしょうか。   事務当局から何かありますか。 ○神吉関係官 先ほど山本委員から御提案があった,いろいろな若者政策をやっていくことが条件ではないかというお話ですけれども,確かにそうなのかもしれないですが,その点については,第4以下で,成年年齢を引き下げた場合の問題点及びその解決策の中で,これらの施策は必要な施策ということで書かせていただいております。第3の2のところは,成年年齢の引下げのメリットは何かということで整理をした箇所です。一応第4以下で,成年年齢を引き下げるために必要な条件,環境整備ということできちんと書いてありますので,山本委員の御発言の趣旨には反しないとは思います。ただ,18歳大人社会を実現するのだというところが最初にあるべきだというのはもっともな御指摘だと思いますので,その点は御意見を反映できるように検討させていただければと思います。 ○鎌田部会長 少し検討をお願いします。   平田幹事,どうぞ。 ○平田幹事 今の点に関してなのですけれども,やはり大きな制度を変えていくということで態度決定なわけですから,態度決定をした上で,生理的な対処が必要な部分と,態度決定したことによって病理的な現象が出てきたところに対処しなければいけない部分,これは両方とも山本委員がおっしゃったような条件としてとらえてきたのだろうという気はするのです。余り細かい議論はしていないかもしれないですけれども。成年年齢を引き下げる意義がある,こういう非常に大きな意義があるのだと書いたら,それに伴う生理的な対処としてこういう施策があるのだというのはここへ出てきてしかるべきだろうと思うのです。消費者被害だとか家庭内の被害だとか,病理的な現象に対する対処としては,こういう問題点に対する対処が必要なのだというのを次に書くということになると思うのですけれども,多分,教育施策というのは両方にかかわる部分で,社会の主体を育てるための教育と,被害者にならないための教育と,両方にまたがっているのを第4の後ろの方に一緒に書いてしまうと理解しにくくなるので,そこは前と後ろに書き分けておけば,それほど誤解が生じないのかなという印象を持ちました。 ○鎌田部会長 この後説明してもらうことになる第4は,どちらかというと,今の平田幹事の説明で言えば,病理現象に対する対処であって,基幹政策ではないということになるので,この(2)の中に書いてあるものの位置づけをもうちょっと,山本委員の御指摘も踏まえて整理するというか,分かりやすく提示できるように,それを具体的に表現するタイトルも含めて,事務当局に検討していただくことにしたいと思います。再検討すべき点がすごく増えてきています。事務当局で,中身を少し組み替えたり,構成を組み替えたりすることに踏み込むような再検討をお願いするようなことになっていますけれども,むしろその方が委員・幹事のお考えを報告書の中に盛り込めることになると思いますので,御苦労をおかけしますけれども,今までの御指摘も踏まえて,また,これから提案されるであろう御指摘も踏まえながら整理をしていただければと思います。   今,7ページ,8ページぐらいを中心に御意見をいただいておりますけれども,9ページ,10ページがもう少し民法に引きつけた内容になってきて,民法に近いと言った方がいい内容が並んできていますけれども,この辺のところについても御意見をいただければと思いますが, ここで,いったん休憩とさせていただき,休憩後に,引き続き議論を行いたいと思います。           (休     憩) ○鎌田部会長 それでは,再開させていただきます。   第3の部分についていろいろと御意見をいただいたところでございますけれども,更に追加の御意見,御質問等ございましたら,お出しいただければと思います。   特にないようでしたら,先ほど来ちょうだいしました有益な御意見を踏まえて,事務当局におきましてまた文章を少し工夫していただくということでよろしいでしょうか。   それでは,次に,最終報告書案の第4につきまして御説明をお願いいたします。 ○佐藤幹事 第3では民法の成年年齢の引下げによるメリットを記載しましたが,第4では,民法の成年年齢の引下げによってどのような問題が生ずるのか,そして,これらの問題を解決するためにはどのような対策を講ずるべきかの検討を行っております。これらにつきましても,基本的には中間報告書と同様の記載をしておりますが,中間報告書の御決定をいただきました後に,各施策に関係いたします内閣府,文部科学省及び法務省大臣官房司法法制部から関係官をお招きしてヒアリングを実施いたしまして明らかになった部分もございますので,修正をしています。   まず,第1として,「契約年齢を引き下げた場合の問題点」として,若年者の消費者被害が拡大するおそれがあるということが考えられます。この部分につきましては,中間報告書と記載はほぼ同様でございます。   中間報告書に対するパブリック・コメントに寄せられた意見には,民法の成年年齢を引き下げても,被害の山が18歳に移行するだけであり,被害の総量は変わらないという意見があり,部会におきましても同様の意見がございましたが,大多数の御意見といたしましては,民法の成年年齢が引き下げられ,契約年齢が引き下げられると,18歳,19歳の若年者が悪質業者のターゲットとされ,不必要に高額な契約をさせられたり,マルチ商法などの被害が高校内で広まるおそれがあるなど,若年者の消費者被害が拡大する危険があるものと考えられるということであったものと考えられます。したがいまして,このように整理させていただきました。   次に2の「親権の対象となる年齢を引き下げた場合の問題点」について御説明いたします。   このうち,(1)の「自立に困難を抱える若年者の困窮の増大」の部分は中間報告書とほぼ同様でございますので,御説明は省略させていただきます。   (2)の「高校教育における生徒指導が困難化するおそれ」につきましては,新たに加わった部分でございます。   氷海委員から,現在の高校における生徒に対する生徒指導は,原則として親権者を介して行っているところ,民法の成年年齢を18歳に引き下げると,高校3年生で成年に達した生徒については,親権者を介しての指導が困難となり,教師が直接生徒に指導せざるを得なくなり,生徒指導が困難になるおそれがある,高校3年生という時期は,大学進学や就職など生徒にとって重要な時期であり,このような時期に適切な指導ができなくなるとすると,大きな問題があるとの御意見が出されました。そこで,この点を記載させていただきました。   続きまして,3の「民法の成年年齢を引き下げる場合に必要となる施策」について御説明します。   1及び2で検討しましたとおり,民法の成年年齢を引き下げると,若年者の消費者被害を拡大させるなど様々な問題を生じさせることが懸念されております。そこで,これらの問題を解決するため,どのような施策を講じていくべきかの検討を行っております。   まず,消費者被害が拡大しないための施策の充実につきましては,中間報告書と同様,消費者保護施策の充実と消費者関係教育の充実を挙げております。   消費者保護施策の充実についての具体的内容につきましては,部会における調査審議の過程において出ました意見として,第1次案の14ページから15ページにかけて①から⑤までを挙げてございます。いずれも中間報告書に挙げたものと同じでございます。   なお,現在,国会におきまして,消費者庁設置に向けた法案の審議が進められているところでございます。消費者庁の設置が決まりますと,若年者の消費者被害に関する対策も含め,消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に向けた関係施策の充実を期待することができますので,このことを付け加えております。   消費者被害が拡大しないための施策の充実のもう一つが,若年者に対する消費者関係教育の充実です。これにつきましても,その具体的な内容として,法教育の充実,消費者教育の充実,金融経済教育の充実が挙げられていることは中間報告書と同様でございます。そして,部会での審議を踏まえ,「これらの教育については,単に知識を与えるのでは不十分であり,ロールプレイングや生徒相互間の議論を行うなどして,契約をすることの意味を実感をもって学習させ,若年者の一人一人が,本当に望む契約をするにはどうしたらよいかなど自立した判断ができるように行っていく必要がある」と記載させていただきました。   さらに,第12回会議で文部科学省及び法務省大臣官房司法法制部から教育関係の現状及び今後につきましてヒアリングを実施した結果を踏まえまして,そこに記載しています。少し詳しく読みますが,「この点について,平成20年3月に改訂された小中学校学習指導要領(小学校については平成23年度から,中学校については平成24年度から全面実施),平成21年3月に改訂された高等学校学習指導要領(平成25年度から全面実施)においては,社会科・公民科や家庭科等において,消費者教育や法教育,金融経済教育等の充実が図られたところであり,今後は改訂された学習指導要領の趣旨が学校現場で着実に実施されるよう,教科書の充実,教材の開発,教員の研修,先進事例の開発・収集・発信等の施策を一層充実させ,大人になるために必要な教育の充実を図られることが期待される」との一文を加えさせていただきました。この点は,中間報告書決定後に行いましたヒアリングにおきまして,文部科学省におかれまして既に学習指導要領の改訂作業が行われていること,そして,今後どのような予定であるということにつきまして明らかになったところでございますので,その点を記載させていただきました。この部分は新たに記載したところですので,このような内容,表現でよいのか等につきまして御意見をいただきたく存じます。   次に,(2)の「若年者の自立を援助するための施策の充実について」について御説明いたします。   先ほど,2の(1)におきまして,民法の成年年齢を引き下げ,親権の対象となる年齢を引き下げることにより,自立に困難を抱える若年者がますます困窮したり,若年者のシニシズムが蔓延し,「成年」の有する意義が損なわれるおそれがあると考えられますので,若年者の自立を援助するための施策を充実させる必要があるものと考えられます。   その施策としましては,様々なものが考えられ,その具体的な内容は所管省庁において詰められるものと考えられますが,部会における調査審議の過程におきましては,7ページから8ページ,先ほど議論になりましたところでございますが,「若者政策の転換の契機となることへの期待」のところで書かせていただきました①から⑤までの各施策が必要であるという意見が示されたところでございます。   この点につきましても,第12回会議におきまして内閣府の関係官からヒアリングを実施しました結果,平成20年12月,青少年育成に係る政府の基本理念及び中長期的な施策の方向性を規定した「青少年育成施策大綱」の改訂が行われ,ニートやフリーターなど自立に困難を抱える青少年を総合的に支援するための取組として,地域における支援ネットワークの整備や,情報を関係機関間で共有するための仕組みの整備等についての検討を行うことなどが盛り込まれたこと,平成21年3月,青少年育成施策の総合的推進のための枠組み整備を行うことや,自立に困難を抱える青少年を支援するためのネットワーク整備を行うことなどを定めた青少年総合対策推進法案が国会に提出されたことが明らかになりました。このような経緯を踏まえますと,今後,青少年育成施策大綱等の内容を踏まえた,若年者の総合的な支援に向けた一層の取組が期待されるところでありますので,このように記載させていただきました。この部分につきましても,新たに記載したところでございますので,このような内容,表現でよろしいか,御意見をいただきたく存じます。   続きまして,3の(3)の「高校教育の生徒指導上の問題点の解決策」について御説明いたします。   先ほど13ページのところで御説明しましたとおり,民法の成年年齢を18歳に引き下げると,高校3年生で成年に達した生徒についての指導が困難になるおそれもございます。   そこで,この問題の解決策としては,高校入学時に,在学中の指導等は親権者を介して行う旨の約束をするなどの方策が考えられますが,学校における学習指導のみならず,学校外における行動や生活に関する指導までも行っている現在の学校教育の現状にかんがみると,教師,生徒及びその親権者の意識改革はもちろんのこと,成年に達した生徒に対してどのような指導を行っていくかについてのルール作りも必要になるものと考えられるものと思われます。   教師,生徒及びその親権者の意識改革の内容といたしましては,18歳で成年に達し,法律上は親の親権から外れることを前提に,高校在学中は,学校側は親を通じて生徒指導を行い,成年に達した生徒も教師,親の指導に従うこととするということだと私は理解しておりますが,そのような理解でよいのかどうか,この点を報告書中に明記をすべきかどうか,また,これと関連いたしますが,成年に達した生徒に対してどのような指導を行っていくかについてのルール作りとして,どの程度のものが考えられるかにつきまして御意見をいただきたく存じます。   最後に,(4)の「一般国民への周知徹底等」について御説明いたします。   民法の成年年齢は,契約年齢及び親権の対象となる年齢を定めているとともに,民法以外の多数の法令において,各種行為の基準年齢とされており,その引下げは,国民生活に重大な影響を与えることになります。   現在,関係府省庁において,年齢条項の引下げについて検討が行われているところ,民法以外の法令の中には,民法の成年年齢と連動する方針のものと,そうでないものとが混在しております。民法の成年年齢の引下げが行われる場合,何が変わることになるのか,国民生活にどのような影響を及ぼすのかなど,一般国民,特に大きな影響を受ける若年者にとって理解しやすい形で周知徹底を図る必要があるものと考えられます。この点は,これまで余り触れられておりませんでしたが,高校生との意見交換会等におきましても,制度を変える場合には分かりやすい制度にしてほしいとの意見が出されたこともあり,記載しておく必要があるのではないかと考え,付け加えましたので,その内容等につきまして御意見をいただきたく存じます。 ○鎌田部会長 ただいま説明がありました最終報告書案の第4につきまして御質問,御意見があれば,お伺いいたしたいと思います。 ○氷海委員 16ページの「この点について」からの文言ですが,高校生とヒアリングして,私も高校生と話をしたときに,「いきなりはきついよ」という言葉なのですよね。やはり,年齢を引き下げるときにはそれなりの心構えといいますか,問題点をあらかじめ教えてもらってからでないときついなというような感覚でありましたので,是非ここのところを入れていただいて,それなりの形の,学校教育だけではないのですけれども,それを教え込んでいくという行動が必要かなと思います。   それから,17ページの(3)ですが,高校教育の生徒指導上の問題点というのは,ここでは民法を取り上げていますので,話もそこに限りますが,親の親権から離れる,そうなると,生徒指導だけではなく,例えば今の具体的な問題ですが,授業料を納めない形の状態が多い。そうすると,授業料を納めないで卒業させるかどうか非常に悩むことが現実にあるのです。それはすべて親権者に対しての接触の中で解決しているのですが,親が親権を,もう成人だからということで本人と一対一でやるとなかなか経済的なことの解決もしにくいということで,そういうような点で,やはり学校としては,卒業するまで親権者を介して教育を完結したいという思いは現在ありますので,ここのところは問題としてやはり入れておいていただきたいと思います。   あと,解決策の方ですが,先ほど言いましたように,教師,生徒及び親権者の意識改革,佐藤幹事が言われたように,やはり1点なのですね。民法だけで言うと,やはり親権者を介してすべて卒業まではやってもらいたいというルールをつくりたいなというところなのです。若しくは,成年年齢が18歳になってほかの問題がたくさん出てくると,すべてそれにも学校は対応しなければなりませんが,ここでは民法ということですので,やはり親権者を介してやっていることだけは守っていきたいなと。そうしないと,先ほど言ったような問題点が出てくるというところで,是非お願いしたいと思います。 ○宮本委員 氷海委員の御発言にかかわってですけれども,20歳の成年年齢をとる国と18歳の成年年齢をとる国との間にいろいろな違いがありますけれども,一つの違いは,子供に対する責任を親は何歳までとるかということとかかわっていて,これが子供の成長を守る社会的な仕組みに非常に大きくかかわっているわけです。現実には,20歳まで未成年である日本のような国は,20歳までは親が責任を持つということが前提になるので,親が責任をとれない子供は守られにくいわけです。今回の議論は,直接には国民投票権から出てきたものですけれども,別の分野で議論されていることは,20歳まで親が責任をとる制度をとっている国は,それで守られない青少年に対する代わりの仕組みがない。親が授業料を払えないとか,親がほとんど親としての責任を放棄したり,あるいはそうでなく,親権を強化する形で子供を不当に支配するような現象に対して救済する仕組みが弱い。20歳まで未成年だということを理由に,仕組みをつくらないということだったと思われます。   実際に今起こっている問題は,親に守られない,しかし社会的な仕組みがない中で,どこにも行きようのない青少年の問題というのが,この10年間で急増しているわけです。そういう点で言うと,18歳に引き下げることによって,親の責任の範囲を限定した上で,親に力がない部分を公的に支援する仕組みをつくっていくことが重要であります。民法にかかわるか,かかわらないかということはありますけれども,18歳成年年齢社会に転換するということは,若者に対する社会的な責任をとる仕組みを新たにつくるということだと思います。氷海委員の言われている例は,進学校では少ないから問題はないかもしれませんが,今,中退が半分出ているような高校では,この論理は通らない。だからこそ,成年年齢を18歳にして,社会的な仕組みをつくることを通して,ドロップアウトしそうな若者たちを救うということなのではないか。そういう意味の積極性を持っているのではないかと思うのです。これがここのところに何も書かれていませんけれども,もっと重要な社会的な転換だと思いますので,書き込む必要があると思われます。 ○神吉関係官 今の宮本委員の御意見に対して質問させていただきたいと思います。親にも守られない,社会にも守られない子供たちを,18歳成年年齢を実現することによって,社会が責任をとるような仕組みを採用すべきだという御意見だったと思うのですけれども,それと成年年齢の引下げというのが本当に関連するのかどうかという話がよく理解できません。現行の20歳成年制のままであっても,親に守られない子供たちを社会でどのように支えていくべきかという議論はもちろんあり得るかと思うのですけれども,18歳に引き下げたからといって,社会的に責任をとる仕組みというのを実現する必要性が出てくるのかどうかという論理的関係がよく分からないのですが。 ○宮本委員 これはストレートには一致しないと思います。イギリスは18歳成年年齢をとっているのですけれども,サッチャー首相の時代に一連の社会保障に関係する法律が成年年齢を事実上25歳まで引き上げたのです。したがって,成年年齢も制度によってかなりいろいろなバリエーションがあるということでありますけれども,社会保障関係を25歳に引き上げたときどういう問題が起こったかというと,もともとは18歳で大人だとして,それから以降の問題に関しては公的な保障の対象にしてきたイギリスのような国が,25歳まで成年年齢を引き上げると,25歳までは親が面倒を見なさいよということになる。そのことによってどういう問題が発生したかというと,親が責任をとれない家庭の若者が,学校も出られない,まともな仕事にもつけない,家庭も持てない,そういう状態になったということで,大きな議論になりました。とはいえ,成年年齢というのは,だれが基本的に責任を持つのかということにかかわっていて,日本の近年の若者の貧困の問題に関しては,親が基本的に責任を持つという規範が,制度的にもそうですし,慣習的にもそうで,それにかわるべき制度が弱い。こういう問題をクリアする上で,基本的な年齢を18歳に引き下げることは,ストレートにはかかわりないかもしれませんけれども,やはり社会の在り方を変えるだろうと思います。したがって,高校3年生の終わりまでは親に責任をとらせたいという学校側としての御事情は十分分かりながらも,親に責任を果たしてもらえない生徒たちが相当いるという事実に対して転換すべきだという問題を含んでいるのではないかと思うのです。 ○神吉関係官 それが成年年齢の引下げの問題として位置づけられるのかどうかというところなのですけれども,今,20歳だったとしても,親に守られない子供たちがいるわけであって,その子供たちをどうやって救済していくのか,社会的に支えていくのか,そういった問題として今でもあるのだと思うのです。現在,報告書案の第4で議論しているのは,成年年齢を引き下げた場合の問題点についてどう解決していくのかという議論です。宮本委員の御意見ももちろん分かるのですけれども,それを報告書の中にどのように位置づけたらいいのかというのが,よく分かりませんので,その点について御示唆をいただければと思います。 ○宮本委員 まず,社会慣習的に,18歳を過ぎて,本人が自立できないもろもろの困難を抱えたときに,公的責任があるのだという理念を確立するという意味で,年齢が重要ではないかと思います。20歳ということになれば,20歳までは親が基本的に責任を持つということになります。そうすると,公的責任は20歳を過ぎてから発生するわけです。今まで日本で20歳としても問題が少なかったというのは,親の家庭がかなり条件がよかった,それから,学校を卒業すると雇用で守られたのでうまくいっていて,家庭からも雇用からもドロップアウトする青少年の数が少なかったので問題が余りなかったと思われますけれども,この10年間にそこからこぼれる若者たちが急激に多くなっていて,そのときに公的な制度が非常に薄い。ほとんど親責任ですよね。そうすると,親の保護を受けられない人たちは路頭に迷う。この問題をどうしたらいいかというのが別の分野では非常に議論される状況にあるわけで,そういう意味で,原案はそういう議論に対して抵触する表現がいろいろあるのではないかという感じがいたします。 ○平田幹事 すべての制度を分かっているわけではないですけれども,基本的に親権があるということと扶養義務があるというのは別次元の問題で,親権がなくなっても扶養義務はある。前からお話ししているように,やはり扶養義務というのは個別に,扶養の必要性があるか,可能性があるかで判断すべきもので,親権がなくなったから扶養義務がなくなるというものではない。日本の民法の解釈は恐らくそのようになっているのだろうと思うのです。そうすると,親権がなくなったことによって,教育費を払わない親が出てくるのかどうか,これも必然的なのかどうかよく分からないのですけれども,今問題になっているのは,お金があっても,未成年で親権があって,扶養義務があるにもかかわらず払わない親が問題になっているのだという認識で私はいるものですから,そうすると,成年年齢を引き下げたことによって,親が対処しない新たな支援制度というのが本当に必要なのか,今までの制度でどこまで対応できるのか。単純に考えたら,生活保護法以下の所得保障法体系では,18歳でも,親権の庇護下にあるうちは家を出られないので,世帯分離規定の適用がなくて生活保護が受けられない状態にあるのを,18歳になって親権から解放されて,出ていければ,世帯分離規定の適用があって,生活保護も受けられる可能性も出てくるのではないか。それは微々たる可能性でしかないかもしれないですけれども,現状で対応できない,制度的な対応が必要なのかどうか,この辺については,日弁連内で議論しても,こういう制度があるべきだという具体的な議論というのは今まで一切なかったと私は思っています。私の個人的な意見では,それは制度で対応すべきものなのか,家庭裁判所の審判官たちの運用にゆだねるべきものなのか,その辺は,もう少し制度の全体像を見て議論しなければいけないと思います。何らかの支援策があった方がいいだろうというのは,異論はないところではありますけれども,では具体的などういうシステムがあり得るのか。18歳になったら親権から外れて,扶養義務からも外して,地方政府が責任をとるのだみたいな,マンチェスターなどでは,ローカルガバメントと親とが共同親という観念をつくって,一緒に支援するみたいな形をつくれれば,それはそういう形もとれるかもしれないですけれども,そこまでドラスチックな形に変えなければいけないのかどうか,そこをまず議論しなければしようがないのではないかという気がしております。 ○宮本委員 今の点について一言申し上げます。この部会では社会保障法に関しては触れないということでした。恐らくこの問題は,1年間,社会保障関係の部会で相当議論すべきことであります。私自身は法律に関しては全く素人なので,これ以上具体的にどういうところが問題になるかというようなことを言うことはできないと思います。それから,親子の関係というのは法律とはまた別の形で慣習で動いていると思いますけれども,それにもかかわらず,やはり18歳か20歳かという年齢が社会慣習に影響を与えていないとは言えない。どう与えているのか,いないのかというようなことも,今までこういう議論がどこでもされてこなかったので,十分に検討すべき課題として提起する必要があると思います。 ○大村委員 宮本委員がおっしゃることも平田幹事がおっしゃることもよく理解できるのですけれども,一般論として,18歳が成年だとして,18歳以後の修学にかかわる問題をどうするかという問題はあると思うのです。特に大学生をどのように支援していくかという問題はあろうかと思いますけれども,先ほどの報告書の該当箇所で問題になっているのは,氷海委員が前々からおっしゃっていることですけれども,高校3年次に未成年者と成年者が混在するということをどう解決するのかという問題だと思うのです。ここについては,そもそも高校であっても修学について親の負担と考えるべきではないのだという御議論もあろうかと思いますけれども,そこについては,現状を固定したとして問題が生じるのかどうか,生じたとしてどのように解決すべきなのかという問題が別途あるように思うのです。ですから,18歳以上になった人をおよそ一般的にどのように支援していくのかという問題と,高校3年生に生ずるであろう問題というのに当面どう対処するのかと,2段に分けて整理していただくのがよろしいのかなという印象を持ちました。 ○出澤委員 今の議論とどのように関連してくるか,必ずしも私自身よく理解できていない可能性もあるのですけれども,親権と扶養義務というものは一致するものではないということではありますが,ここでもいろいろ議論が出ましたけれども,実際,離婚の際の未成年者の子の扶養,養育費がやはり事実上20歳ということで,未成年の者については認めるけれども,その後についてはまた別に考えてというような形で終了するケースが多く見受けられると。それは運用の問題というのもあっても,運用の問題というのは,例えば裁判官の独立性からして,こちらの方で影響を与えるところではございませんので,そのような観点からすると,やはり子供の教育の機会なりが失われないようにしたいということで,宮本委員のおっしゃっている公的支援,こちらの方の18歳,今までどの程度20歳を過ぎても充実していたかどうかという全体的な議論をすると,成年年齢の引下げとは直接関係しないということにはなりますけれども,20歳を18歳にすることによって,現実的には養育費の支払いのような問題,そこから関連してきますけれども,教育の平等といった問題が出てくると思います。離婚をした場合は,子供は母親が引き取ることが多いわけですけれども,貧困家庭では,十分な養育費はもらえないというところで,高校を出てすぐ,または高校在学中に,養育費が打ち切られるなんていうようなことも想定できるわけでして,そこのところは,やはり制度的に国の支援策として考えないといけないのではないかなと考えております。昨日,日弁連のバックアップ委員会というのがありまして,そこで出た意見なのですが,是非ここでお話ししていただきたいということだったものですから,今こういう議論,懸念があるということをお伝えいたします。 ○鎌田部会長 なかなか国が支援する制度をつくれという提言をするのは,そういう直接的な表現は難しいかと思いますけれども。 ○佐藤幹事 私から説明させていただきます。この点は,この部会で中間報告書の後に一回論点として挙げたこともございますが,部会での議論では,先ほど出澤委員からもお話ありましたけれども,親権の問題と扶養の問題ということで,必ずしも法的に結び付いているものではないということで,いろいろな御意見が出て,確かに事実上裁判所の方で20歳を18歳にすると,影響はあるかもしれないけれども,成年年齢引下げによる影響としてここで書く必要はないのではないかという議論であったと私は認識しており,ここはあえて論点として書いていないということでございます。このような理解でよろしかったのではないかとは思いますが,いかがでしょうか。 ○神吉関係官 補足して説明させていただきます。もし,成年年齢の引下げによって,離婚の際の未成年者の子に対する養育費が早期に打ち切られる危険性が非常に高いという話になれば,では,そのための解決策としてどういった制度が考えられるのかという議論になるかと思うのです。これまでの議論を佐藤幹事から御説明させていただきましたけれども,これまでの議論は,理論的には連動しないのではないか,そこは裁判所の事実上の運用なのではないかという話で,特に対応策として書かなくていいのではないかと思って議論はまとまったのかなと思っておりました。こういった御意見があることは留意する必要があるとか,そういった話であれば,盛り込むこと自体は可能かとは思うのですけれども,是非盛り込む必要があるのかどうかについて,出澤委員の御意見をお聞かせ願えればと思います。 ○出澤委員 事実上の影響というのが恐らくあるだろうと考えている弁護士,実務家も多いと思われます。そういう意味で,一言何らかの形で触れていただければ大変有り難いと思います。 ○神吉関係官 それでは,検討させていただきます。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。   先ほどの,高校教育の生徒指導上の問題点につきましては,大村委員からおまとめいただいたところですけれども,その辺のところと,少し更に補充した方がいいようなものがあれば御検討いただくということで,基本的には大村委員の整理に従って再点検をさせていただくということでよろしいですか。 ○水野委員 氷海委員が御苦労なさることは非常によく分かるのですが,高校教育の問題についても,本部会の大きなスタンスが18歳からフルメンバーシップをということであれば,そちらの方向に向けて切り替える方がいいような気がいたします。つまり,現状というよりは,18歳という年齢で成人することによって,高校教育に大人と子供がいるという事態を直接的にとらえて,何らかのルールづくりというのを,むしろそれに沿う形で考えた方がいいように思います。   どのようにおまとめいただけるのか,また,ここでのコンセンサスが成立するのかどうか分かりませんけれども,大きな問題としましては,確かに宮本委員の言われるように,子供の貧困の問題,つまり,社会保障や税で是正した後,むしろ格差が拡大するという先進国にあるまじき問題も抱えておりますし,本当にいろいろと手を入れなくてはならないのですけれども,先ほどの大村委員の御示唆に従いまして,問題を縮減して,高校教育の中の問題に限りますと,高校生たちを,親権に服する子供たちという位置づけで,親権者を通じることによって教導していくというよりは,言わば,若いけれどもあなたたちは紳士淑女なのだという形で自立をさせて,そして,ここにいるうちにあなたたちは大人になっていくのだからということで,その間,子供たちの自立能力を高める,つまり一人前の大人に近いものとして,教育の対象として大人に育てていくという方針に切り替えるべきでしょう。もちろんそれは親を通じた教育を放棄することではないと思うのです。親のアドバイス,親の教育というのも,幼いときと思春期とは当然のことながら異なってきて,つまり,親の決定権限と子供自身の決定権限が事実上様々な領域によって重なってきているのも高校生だろうと思います。そして,そこであるとき,法的に言うと,親の決定権限が失われて,契約能力などは子供たちが完全に確立したものを持つということなわけですから,そこの時点で,先ほどの授業料のようなものであれば,これもルールづくりとして,当初は,法的な主体としては親が契約主体になるけれども,そこから先は,卒業までは子供が主体になるという仕組みでもいいでしょうし,その場合でも親が連帯保証をするとか,あるいは,最初から親に子供が卒業するまで主体的な責任を負わすという契約書の組み方でも,授業料についてはそのような工夫で何とでもなるもののように思います。そして,教育の仕方としては,あくまでも親を通じての教育というのではなくて,できれば15歳,16歳のときから一人前になるべく働き掛けて育てていき,そして18歳になったときに,あなたたちはいよいよ晴れて大人なのだというスタンス。そういう形で全体的に教育も切り替えていくという方が,18歳に引き下げるということのメッセージ効果はより大きくなるような気がいたします。 ○神吉関係官 今の水野委員の御提案ですと,教師,生徒及びその親権者の意識改革やルールづくりの内容といったものが,水野委員のお考えのものと氷海委員のお考えのものがかなり違ってくるかと思います。その点について今日御議論いただき,一つの方向性を出していただいても構わないのですけれども,非常に大きなテーマでもあると思いますし,今日ここで御議論いただいて結論が出るような問題でもないのかなと思いますので,この点については,こういった原文のままの表現,すなわち,単に「意識改革」,「ルールづくり」という言葉にしておきまして,その中身についてはその後の検討にゆだねるというのも一つの考え方かなと思うのですけれども,いかがでしょうか。 ○水野委員 部会の中に両論がある場合に,両方の意見を二つ書くなどといった見苦しいことをせずに,中間的な形でお書きになることがよいという判断も十分理由のあることで,それはお任せいたします。ただ,少なくとも今までの高校教育とは違うような,この際,切り替えた工夫をする方がいいと思う人間が一人いたということだけ残していただければと思います。 ○氷海委員 水野委員の言っていることはもっともで,当然今でもそういう方向ではやっているのですが,20歳というのはありますけれども,高校は本当に自立をさせていくことが大テーマですので,18歳になればそれがもっと加速するというのは,教育の方向としては当然だと思います。しかし,その中で,私が言っているのは,先ほど,病理的なという発言がありましたけれども,そういうこともフォローできるルールづくりというものは現場ではやはり必要かなという懸念から申し上げました。考え方は全く水野委員の方向で我々も今でもやっているのですが,なかなか効果はすぐには上がらないのですが,考え方としてはそれが加速されると思います。しかし,病理的ないろいろな問題も現場ではありますので,それもフォローしていくような物の考え方でルールづくりがやはり必要かなということのルールづくりという意味です。 ○鎌田部会長 現在の書き方は,いろいろなものが全部この中に入っていると言えるような書き方になっているわけですけれども,多少ただいまの議論の雰囲気が伝えられるような表現があれば工夫をするということでよろしいですか。なかなか難しいような気がしますけれども。 ○木村委員 私も,引き下げていくことに積極的な意義があって,引き下げることはいいと思いますが,そうであればあるほど,すべてバラ色だというような報告書とするのは,対国民との関係においてちょっと気配りを欠くことになってしまうのではという感じがします。  先ほど,出澤委員から,離婚の際の未成年者の子の扶養,養育費に関するお話がありましたが,これは確かに家庭裁判所の運用の問題だと一言で片付いてしまうため,書かなくてもいいのではということはあるかもしれませんが,しかし,そういう問題もあるということ,そして,それについて当部会はこういう意識をきちんと持っていたということは,やはり示していくことが世の中に対しての我々の責任でもあるという感じがします。すべてバラ色だと言わんばかりのレポートにするのは,極めて世の中をミスリードするのではという感じがしていますので,留意点としてお願いしたいと思います。 ○仲委員 私も同感で,特に高校生の学費の問題というのは,すごく小さいことなのかもしれないのですけれども,やはり18歳で成年になるということになると大きな問題だと思うのです。大学生であれば,20歳で親が経済的支援を打ち切っても,授業の数も限られているし,アルバイトで自分の生活を支えるということはできると思うのですが,高校生が本当に18歳になったところで支援を打ち切られてしまったら,それはできなくなってしまうと思うのです。この報告書ですと,生徒指導の困難というところがメーンに書いてあるわけですけれども,生徒指導だけではなくて,経済的な困難についても,1行でもいい,一単語でも入っているといいのかなと思いました。 ○鎌田部会長 それは少し工夫をして,できるだけ盛り込めるものは盛り込んでいただけたらと思います。   平田幹事,どうぞ。 ○平田幹事 私も,家庭裁判所に任せるというふうに割り切ってしまえばいいと思っているわけではなくて,危惧があるのは分かるのですけれども,ただ,新たな支援策をつくるべきだという,具体的なものがないのを言いっ放しにするというのは無責任だから,それはやめた方がいいというだけです。ただ,そういう危惧があるのであれば,親権を外したからといって,高校に行ったらそこでお金を払わなくていいということではないのだという注意喚起とか,そういう危惧に対しては対社会的にきちんと考えていかなければいけないのだということは私も書いた方がいいだろうと思うし,バラ色ではないから,即スタートでいいよというふうになっているわけではない。そのための,例えば消費者被害が拡大しないための施策の充実とか,こういうところでは,今まではやはり未成年取消権が非常に大きな抑止力となっていたのだとヒアリングの結果でも出てきて,これがなくなることによって被害が拡大する危険というのはやはり否定できない。だから,それほど簡単に代替策が出てこない難しい問題なのだという認識は,ここの議論をきちんと反映させて,もっと書き込んでいいのではないか,そういう印象を持っております。 ○鎌田部会長 ほかにいかがでございましょうか。   木幡委員,どうぞ。 ○木幡委員 こうやって見ていますと,半分以降は全部問題点のことが書いてあったりするので,何となく全体として問題点の方が多いように見えてしまう。やはり問題点を具体的に書けば書くほど,よりそれを上回るメリットというものがないと,何となく引き下げるという結論に至らないような気がいたします。ですから,問題点がすごく具体的なのに対して,メリットの方は少し抽象的な書き方なのかなという印象がありますので,もう少しその辺も議論して,具体的にどのようなメリットがあるのかという部分ももう少ししっかりと書けたらいいのではないかなと感じました。 ○鎌田部会長 これまでの議論で出てきたメリットの部分をかなり一生懸命拾ってもらったとは思うのですけれども,あとこういうことも書き足した方がいいのではないかというものがあれば,この場で御示唆をいただいた方が事務当局としては助かると思います。   またお気づきのことがありましたら,事務当局の方へ御連絡をいただくということで,残り時間が少なくなりましたけれども,第4の4と第6の「結論」がペンディングになっております。本来でしたら,次回の部会では取りまとめをするという日程になっておりますので,本日の時点で具体的な案文をお示しした上で御意見をちょうだいするのが筋であろうかと思いますが,前回の部会以降,事務当局との間で調整を様々行ってまいりました。第4の3まででもいろいろと御意見をちょうだいしましたし,様々な形で印象を語っていただきましたけれども,かなり大きな方針の転換を中間報告から最終報告の段階でいたしました。しかし,もろ手を挙げて,何の問題もなしにどんどん引き下げろというのがここの部会の意見とは書けないので,そういう意味で少し歯切れの悪いところが残っているという御印象を持たれたと思うのです。第4の4,第6は,言わば最終報告書の核心部分に当たるところで,事務当局との間で調整した段階では,なかなか自信を持って皆さんにお示しできるというところまで達しませんでしたので,この場で改めて委員・幹事の皆さん方に方向性を御議論いただいて,そしてできるだけ明確な形で方向性を打ち出していきたいと考えた次第でございます。そのために,大変失礼な形になっているかと思いますけれども,第4の4以下がペンディングの形のままで審議を開始させていただきました。   先ほど来御議論がありましたように,どれくらい積極的な方針でいくのか。国民投票法との関係でやらざるを得ないという部分があり,そして一定のデメリットも予想される中で,どういうスタンスでこの報告書をまとめ上げるか,なかなか難しいところでして,それが一番具体的に形になってあらわれるのが第4の4で,いつ引き下げるのか,これもある程度明確な形を出さざるを得ない。直ちに引き下げて,施行日は状況を見ながら決めていけばいいということでいくのか,やはりいろいろな前提条件の整備等を提案している以上は,そういうものがある程度形が見えたところで初めて具体的な法律改正の段階に至るのではないかという考え方もあるのですが,ここは余り玉虫色にするよりは,できる限りはっきりした形の報告書にまとめたいなと思っているところでございます。それが,我々の個人の考え方が違うだけではなくて,この部会全体がどちらの意見の方が有力だったのかという認識も微妙なずれがあるものですから,ここで御意見を伺った上で,それを踏まえて最終報告書の具体的な表現を決めていきたい,かように考えた次第でございます。そういう点も含めて,特に第4の4の時期の問題,それから第6の「結論」というところをどのような姿勢でまとめていくかについての御意見をいただければと思います。   時期の問題については,中間報告書の段階でも何案かを並べていて,いろいろな意見が出されてきたところですけれども,大方といいますか,一番多い意見はどの辺にあるかということ,あるいは,この部会として一本の意見に取りまとめるとしたらどの辺で取りまとめるのが最も部会の意見を公正に伝えたものになるかという点について御意見をいただければと思います。既に何度も御発言いただいていると思いますけれども,改めて御発言いただければと思います。   大村委員,何か御意見ございますか。 ○大村委員 部会長がおっしゃったように,中間報告のときに幾つかの案が出ていたかと思います。取りまとめる以上はやはり一本にまとめる必要があるのではないかなと思います。個人の意見は様々だろうと思いますけれども,どのあたりでまとめるかという選択肢を出していくことなのではないかなと思っております。   それで,質問のような形になるのかもしれませんけれども,法制上の問題として,法律をつくって,施行日だけを後ろに定めるというやり方と,何年後を目途に立法を考えるというやり方以外の選択肢というのはあり得るのでしょうか。中間の選択肢という意味ですが。 ○神吉関係官 今まで部会の中で,我々が考えられる選択肢を挙げて議論をしてきたわけですので,これ以上余り中間的な選択肢というのはないのではないかなとは思いますが。まずは,引下げの改正法を提出して,その施行日については別途政令で定めるなどするという方策と,あとは,今は引下げの法案を出さず,時期を見て法案を出すという考え方の二つなのかなとは思っております。ただ,前者の考え方でも,何年後にするのかというのはバリエーションがあり得るとは思います。 ○五阿弥委員 例えば条件が整い次第というような表現ですと,いつになるか分からないわけです。成年年齢の引下げ以上に,あるいは同じぐらい大きな社会制度の変革としては,多分裁判員制度があります。裁判員制度の場合も,やはり何年後にということがきちんと明記されて,今年からスタートするわけです。ですから,3年なり5年なり,ここはどれだけの準備が必要かがある程度分からないといけないと思うのですけれども,3年なり5年なりのうちに準備をして,そして施行するという文言が入らないとなかなか現実には動かないと思うのです。やはり,ある程度ここで時期をきちんと明記させることが不可欠だと思います。 ○大村委員 私も基本的には今の五阿弥委員のような考え方になるのではないかと思うのですけれども,中間的なところが考えられないのかと申し上げたのは,数字を入れたときに,その数字が固定するということだと,皆さんなかなかどの数字を入れるかというところで迷うかと思うのです。一応の数字を入れるけれども,その辺について再考の余地があるような,そういう選択肢というのはないのでしょうか。 ○團藤委員 おっしゃるように,改正法案を提出して,その附則でもって施行期日を定める。これは具体的な日にちを定める場合もございますし,別途政令で定める日とする場合もあるのですが,後者の場合でも,公布から何年以内ということで限定がつきます。その何年以内というのは,通常の場合は,例えば比較的期間が長いものとしては5年というのがあるのですが,例えば株券の電子化の場合,様々なインフラを整備しなければいけない。それに要する期間はこのぐらいでしょうというあたりを考えてその期間を定めているという例が多いわけです。裁判員制度につきましても,国民への周知徹底もありますが,他方におきまして,裁判所の施設面の手直し等々の物的な作業が必要になってくるというあたりも考慮されたのだろうというふうにも思われます。それらは,どちらかといいますと,いずれも政府の中では,その法律を所管する省庁の権限と責任においてその環境整備が整えられるものでないとなかなか責任ある年限が示せないという問題があろうかと思います。他方,条件整備が整ったら法案を提出するという御議論をいただく場合には,そこで具体的な何年というのをまたどういう基準で出せるのかという問題がございます。ただ,具体的に何年ということは難しくても,ではこういうメルクマールでそれを判断しましょうということを示すということは,大村委員がおっしゃる,中間的なというものになるかどうかはちょっと分かりませんが,つまり具体的な数字を示すのではなく,判断基準,考え方のようなものを示すことによって,一つの部会としての思いを外に伝えるということはあろうかと思います。   先ほどの繰り返しになりますが,具体的な年数ということになりますと,なぜその年数になるのかについてどのように考えるのかというあたりがかなりきつくなってまいろうかと。そういった点で,法案の附則でもって施行期日を定める場合に,そういうメルクマールだけで施行期日を決めることができるのかといいますと,法制技術的にそれは許されないことになるのではないでしょうか。森幹事いかがでしょうか。 ○森幹事 私もそう思います。法制的な話ということで,詰めた話ということではなくて考えられるのは,中間的なことになるのかどうかは分かりませんけれども,何年内に条件整備することをめどとする,これは法律でそうするというわけではなくて,部会の意見としてやって,そういうことならば理解できなくもありません。しかし,それでも,團藤委員がおっしゃったように,それは何年だというのはどうしてなのかということを説明することの困難は依然残るかもしれません。法律を作る場合の附則は,少なくとも何年以内というものがないと,なかなか苦しいかなと思います。 ○仲委員 学校教育というのはすごく大きいので,本当は小学校1年生に入った人が18歳になったときにはと言おうかなと思ったのですけれども,それは少し長過ぎるのかなと今の議論を伺っていて思いましたので,例えば,高校1年生に入る人が3年になるときにはとか,あるいは中学校1年生の人がとかという形で持っていく。例えば高校1年の人が3年になるときにはという,高校1年生のためのいろいろなガイドラインをつくることなどを考えると,それに2年か3年要するとかいうのは一つ考えとしてあるのではないかと思いました。 ○鎌田部会長 今のような話でいくと,最終報告書案の16ページにある指導要領の関係で言えば,高校の新指導要領は25年から実施ですね。それから3年たって,新指導要領に基づく教育を受けた人が高校を卒業するのは,7,8年後ということになりますが。   山田関係官,どうぞ。 ○山田関係官 それに関連いたしまして,文部科学省としての現状認識ということで一言発言をさせていただきます。文部科学省といたしましては,そもそも教育制度の在り方と成年年齢の在り方の議論というのは切り分けて議論すべきだろうと考えております。当然,今までの御議論がございますので,それらを踏まえて報告書で条件整備についても触れていただく分には恐らく必要なことだと思っておりますけれども,基本的には教育関係の諸施策が成年年齢の引下げの要件とするものではなくて,成年年齢が引き下げられるという結論をいただいた場合については,それに合わせて柔軟に教育制度の方も対応していくべきものと整理をしているところでございます。第1次案にも書いていただいておりますとおり,ちょうど時期を同じくして消費者教育の充実等々を含む学習指導要領の改訂をしておりますので,そういった教育の更なる充実に向けて,今後も必要な対応を文部科学省としてはしてまいりたいと考えております。 ○鎌田部会長 木村委員,どうぞ。 ○木村委員 そういう議論が今なされたので,基本的に引き下げることがメインになるわけですが,その時期について言えば,いろいろな条件が,法務省ではなくて,他の省庁の政策にいろいろかかわっているという部分もあります。それから,成年年齢を引き下げるからほかの省庁もやりますという話でもなくて,やはりそれぞれの省庁はそれぞれの目的を持って政策をやっているわけです。そうすると,そういうような関係する施策がどれだけできているのかというのを見て,引下げの時期を,あるいはそのための法的措置の時期も考えるというようなまとめ方でないといけないのではないでしょうか。法律をつくっているわけではないので,ここで何年でなければ駄目だというわけでもないのではないかと思うのです。私はむしろ,そういうまとめ方でいいのではないかと感じておりますが,いかがでしょうか。 ○鎌田部会長 おっしゃったように,我々が余りお役所のことを気にする必要はないと思うのですけれども,いろいろな役所のやる施策が整ってからということをだれが判断するのかということも含めて難しいところがあるのと,これは必ずしも制度づくりだけの問題ではなく,国民の意識の問題といったものも絡んでくるので。 ○今田委員 この報告書は法律案を提出することではないですよね。成年年齢が何歳であるべきかについて検討したことを粛々と述べればいいということですよね。結論としては18歳に引き下げることについて合意は形成された。でも,それには様々な社会変改が必要である。さらに,報告書案の第4の3にあるように,民法の成年年齢を18歳に引き下げるために必要となる施策として,関係省庁の動向もある。いろいろな省庁の施策上の整合性をとるようなアクションも必要になる。だとしたら,いつ変えますとか,いつ法律をつくり,引き下げますというようなことはこの時点で出せないというのが常識的な判断なのではないですかね。結論は「引き下げる」ということではあったとしても,諸条件が整った段階で下げるという,そういう一般的な言い方では問題があるのですか。法律改正の議論は法務省なりで行われるという手順ではないのですか。法制審議会に報告を出して,それを受けて法制審議会なり法務省でどうするかというのは次の段階ではないですか。 ○神吉関係官 もちろん,諮問の内容自体が引き下げるべきか否か等について御意見を承りたいということでございまして,法律案を出すかどうかという話ではありません。ただ,いつ引き下げるかということは成年年齢の引下げの議論で非常に重要な問題ですので,この点については部会の皆さんの御意見を承って,報告書に書くべきではないかということで,現在皆様に御議論いただいているところです。もちろん,それを踏まえて最終的に判断するのは法務省,政府全体ということになるかとは思います。 ○五阿弥委員 私が期限を盛り込むべきだというのは,それを書かないとやはり動かないと思うからです。それともう一つは,ここで課題とされている消費者保護にしても,若者支援にしても,本来はやって当たり前の話を日本は非常に今おくれているという実態があるわけです。だから,消費者庁が今度スタートすれば,消費者保護も少し改善するでしょうけれども,もちろん18歳に引き下げるということもあるのですけれども,既に関係省庁は着手して当然の話だと思います。ですから,条件整備された段階でという抽象的な文言だとなかなか進まないのではないかという危惧があるものですから。確かに,ここで,では,3年がいいか,4年がいいか,5年がいいかというのは,なかなか難しいと思う。難しいと思うのですけれども,できる限り早く,しかもこれは当然やっていて当たり前のことなのだというメッセージを,せめて年限が入らなくても,メッセージとしては伝えたいという気持ちです。 ○鎌田部会長 そういう意味では,条件が整備されたらやれというよりも,早くできるように条件を整備しろみたいな書き方にする。それぐらいの差でも全然違うということになりますかね。 ○宮本委員 ほとんど繰り返しになりますが,去年だったと思いますけれども,EUからレポートが出ていて,それを見ると,「若者の参画」という政策がより強化され,そこに雇用問題への対策が色濃く定められているという特徴があります。そういう国際的な流れを見ると,「条件整備したら」というような議論をしている国は先進国の中では非常に珍しいということを認識して,メッセージを発しないといけないのではないか。成年年齢の変更などは,景気対策とは違って,それを下げたから,状況ががらっと変わるというようなことでないと認識されれば,いつまででも先送りにされていくと。だから,これはいつやるということを決めたときに,それに合わせて条件整備をどういう日程でやるかということでなければ進まないと思います。それこそ例えば3年後とか。3年というのは,先ほど仲委員が言われたように,高校1年の子が卒業するときをめどにして大改革をする,そういうメッセージでないと単なる文章で終わるのではないかと思います。 ○今田委員 おっしゃりたいことはよく分かりますが,3年とか5年とか,高校1年生が入学してから卒業するまでの3年間経過後とか,そうした数字を出して説得力がありますかね。数字を出す方が,制度を動かすという意味もあるし,やはり明確であるというのも非常によく分かるのですけれども,だからといって,何年とかいう何年をどう客観的な,説得力のあるものとして出せるか。客観性のない数値ならば,数字は出すべきではないと思います。審議会の議論として,何年後に引き下げて大丈夫だと提案できるだけの議論もしていないし,根拠もないと思うのです。 ○宮本委員 3年と出して,それが4年になる可能性もあるということは十分織り込み済みで申し上げているのですけれども,例えば3年というのは,私の全く個人的な経験で言うと,若者の就労支援が始まって4年目くらいですけれども,3年間でいろいろ問題はあるとはいえ,相当進んだのだと思います。そういうテンポを見れば,やる気になれば,3年という年月は決して少な過ぎるとも思えないので,3年から5年くらいなのかなという感じはしますけれども,3年というような形で打ち上げないと多分動かない。なので,今日の新聞の記事にもいろいろ問題あったようですけれども,とにかく1面トップに出て,「あっ,18歳におろすのか」という,このあたりのインパクトというのはそれなりに大きなものがあると思いますので,やはりこれはインパクトを与える形でないと改革しにくいタイプのものではないかと思います。 ○鎌田部会長 水野委員,どうぞ。 ○水野委員 私も宮本委員と同じ立場でございます。それと,新しい論点として,我々が何をどこまで決める任務を負っているのかについての私の認識をお話ししたいと思います。つまり,法制審議会の民法部会は,民法の改正について,常に結論を事実上出してまいりました。決める権限があるのは,最終的にいけば国会でございますけれども,更に法制審議会が持っていたのは,ある種伝統の力による権威でした。婚姻法改正という例外はありましたが,法制審議会で出した結論は,政府から法案として出され,基本的には国会も尊重してそのとおり法律として実現するというのが,これまでの通例でした。これだけ専門家が熟度のある議論をして,その結果を国会が尊重してくれるという,この慣行の力というのは非常に大きなものであったと思います。ですから,我々は何となく意見を聴かれているのではなくて,主体的に決める決定権限を事実上持っているのだという認識で私はここの部会に参画しておりました。年限というのは,ここでだれにも解答の出ない問題です。でも,だれかが決断を下さなくてはならない。そして,ここで我々が決断を下さなくてはならないのだという意識を持っております。結論的には,今,宮本委員のおっしゃいましたように,今度高校1年生に入る子供たちが卒業するときには大人になっているのだという認識で,卒業するぐらいの年限が最もふさわしい年限ではないかと思っております。それ以上長くなりますと,いつの日にかというのに近くなってしまうような気がいたします。 ○鎌田部会長 ただ,いろいろな環境整備が一つの前提条件であるというように書いてきて,最後はともかく3年後には引き下げだということだと,論理的にもつながりがうまくおさまりがつくのかどうかという問題もあると思います。また,ほっておくというおそれが指摘されていますが,幸か不幸か国民投票法と連動しているので,棚ざらしになるような性質のものではないようにも思います。   山本委員,どうぞ。 ○山本委員 成年年齢を18歳に引き下げる理由をいろいろ議論してきました。そして,報告書に書きますよね。その中の一つに,若者を国造りの中心に参加してもらうのだということも一つの大きな理由になりますよね。そうしたら,できる限り速やかにそういう社会に行きましょうというメッセージを送らないと,何のために下げるのですかと。意味がなくなってくるような気がするのです。できる限り速やかにそういう社会に移行しましょう,諸般の状況からすれば,例えばどんなに長くても5年以内にそこには行きましょうというような言い方でないと,ここの部会が成年年齢を何のために引き下げるのですかということが逆に,やってもやらなくてもいいのかみたいな話になりかねないのだと思うのです。ですから,引き下げるべきだとして,そういう社会に移行していく必要があるのだというメッセージを送る限りは,そういう社会の方がいいわけですから,一日も早くそういう社会に行きましょうというのは当然の結論になるのではないかと思うのですが。 ○木村委員 速やかにというのは私も同感なのですが,そこに数字を出してくると,いつの間にか数字がひとり歩きして,その数字が来たから,その条件整備うんぬんもとりあえず棚上げして一気に進んでしまうという面もあり得るのではないかと考えると,速やかにするのはいいと思いますし,もちろん書いた方が良いに決まっているといえば確かにそうなのですが,法務省だけでどんなに頑張っても,大変申し訳ないですが,できる話ではないと私は思っています。そうすると,そういう状況をやはりしっかり見ていく必要があるのではないでしょうか。そのため,年限を明確にした言い方は難しいのではないかと思います。 ○出澤委員 私も木村委員と全く同じ意見で,具体的に何年ということでおしりをたたくという意味はあるのかもしれませんけれども,それが引き下げる目的と結び付くわけではないのです。かつ,120から130年続いてきたこの制度を3年程度の準備期間で変えてしまいましょうというのも逆に乱暴な議論でございます。それから,気になっているのは世論調査の結果でございます。7割,8割の国民が反対しているというような状況で,3年後,5年後にというような形で押し切るだけの理由が本当にあるのか。社会改革ということは,すぐにやりましょうというのは,理念としてはそのとおりですけれども,成年年齢を引き下げることによってそのような改革を起こすことはそれほど性急にする必要はない。むしろ準備期間を十分置いた中で意識を改革しながら,それで実行していくというような考え方をとりたいと思います。 ○平田幹事 私も,できるだけ速やかにということでは異論は余りないのですけれども,ただ,所管庁の施策を考えたとき,学習指導要領一つをとっても,平成21年に決定して,平成25年に全面実施というぐらい,仕込みに時間がかかる施策なのだろうという気はするのです。そうすると,25年より前に施行ということになると,君たちを見捨てたんだよということになりかねない気もするので,少なくとも論理的整合性からいったら,25年全面施行で3年ぐらい見ないと動かせないという数字が出てきてしかるべきなのではないかなと思います。教育の点については,学習指導要領が改訂され具体的なスケジュールも明らかになっているので,ある程度その成果は見越してもいいのかもしれないですけれども,消費者被害の点等については余り具体的な施策というのはまだ出てきていない段階で,消費者教育も,具体的な対応策もということになると,即という話にはなかなかなりにくいので,私は,期限を定めるにしても,ある程度の期間を置いてもいいのではないかという印象を持っております。 ○山田関係官 学習指導要領の関係で補足をしたいと思いますけれども,全面実施につきましては,第1次案に書かせていただいておりますとおり,小学校については平成23年度,中学校については平成24年度,高等学校については平成25年度ということでございますが,今,移行措置期間ということでございまして,各学校の判断で,少しずつ条件が整ったところについては先行して実施できるということでは周知徹底をしているところでございます。 ○鎌田部会長 なかなか御意見を伺っても一本化が難しいところでありますけれども,御発言があった範囲では,できるだけ速やかにという点では共通しているところだと思いますが,それを数字にあらわすかどうかという部分では,むしろ数字で固定させるよりは,様々な関係施策の効果が浸透したかとか,あるいは国民の意識がそういうものになじんできたかということをある程度踏まえて判断すべきであって,それは数字には書きにくいのではないかというのが相対的には多かったような印象を受けておりますけれども。   どうぞ,氷海委員。 ○氷海委員 この審議会でこれだけ話し合って,「速やかに」という考え方を打ち出し,数字は出さないとした場合,それを受けて,ここの考え方を形にするのはどこがするのですか。何年後にやりますみたいなのは。 ○神吉関係官 最終的に,民法改正について法律案を内閣が出す場合は,法務省が考えてやることになるかと思います。ただ,いろいろな施策自体は法務省だけでできることではありません。内閣府や文部科学省など,ほかのいろいろな省庁が関係することですので,それについては,関係府省がいつごろまでに整備をしていくのかということについては,我々は責任を持って言えません。したがって,民法の改正をする場合は,法務省が,各省庁と密接に連携をとって,具体的な法整備の時期を判断するということになるのだと思います。 ○氷海委員 分かりました。 ○鎌田部会長 出澤委員,どうぞ。 ○出澤委員 「速やかに」という言葉ですけれども,そこについては共通して異論がないとおっしゃったのですが,「速やかに」というと,2,3年というイメージを持ってしまうものですから,私は,「速やかに」という言葉が本当によろしいか疑問があります。 ○鎌田部会長 おっしゃるとおりです。   大村委員,どうぞ。 ○大村委員 私は平田幹事と基本的なスタンスは同じなのかなと思います。長く時間がかかっても仕方がないと思いますので,余裕を持って,しかし数字を出した方がいいのではないかなと思います。 ○鎌田部会長 それは,おおむね何年を目途としてみたいなものですか。例えば,その数字というのは。 ○大村委員 3年はやはりここでは一致はできないのではないかなと思いますので,5年以上だと思います。 ○氷海委員 私も個人的な意見としては,やはりこれだけ話し合った中で,数字を出しながら最終的に結論に持っていった方がいいかなと思っております。私も個人的には3年から5年かなと思って,今,3年か5年か決めかねていますけれども,数字ではやはり示した方がいいなという考えであります。 ○鎌田部会長 岡田委員,どうぞ。 ○岡田委員 少なくとも民法に関しては法務省が所管しているわけですから,やはり数字は出した方がいいと思います。私もやはり3年から5年の間で,5年に近いかなという感じがしています。 ○團藤委員 これまでの御議論で,引き下げることに伴う問題点をどのように解決していくのかということにかなりの時間が費やされていたのだろうと思っております。その中身を見てみますと,私ども法務省の部局といたしましても,法教育を大臣官房司法法制部が所管しておりますので,その部分は我がこととしてかなりできることだろうとは思っておりますが,ただ,官房司法法制部のヒアリングを聞きましても,学習指導要領に載せていただいたのが大きいということでありまして,その年数というものを,明確に示せるのか問題が残ると思います。法制審議会はあくまでも法務大臣の諮問機関でありまして,最終的に答申を受けて行動すべきは法務大臣なのですが,責任を持って数字がはじけるのだろうかというあたりがどうしても最後まで残るところであります。   それぞれ関係府省からヒアリングで伺った内容は,成年年齢の見直しの問題が言われる前から多分御検討になり,府省全体の大きな施策として取り組まれてきた中身なのだろうと思っております。その各種施策というのは,その実現に向けて様々な準備があり,手順がありということで,それぞれの府省は,それぞれの府省の権限と責任においてそれをきっちり進めていきたいとお考えになっていると思います。そのような中で,法務大臣の諮問機関としての法制審議会が,法整備に当たっては,他府省の施策により各種環境整備が図られることが必要といいながら明確な年限を区切るということがどういう意味を持つのか,そのことが,関係の各府省においてそれぞれ,各府省の責任と権限において進めなければいけない各府省の本来の所掌目的,行政目的の中で進めていかなければいけない各種施策について無用の混乱を招来させることにはならないのか,さらに,ひいてはそれが政府全体として,あるいは国民のために施策が行われていくわけですから,国民全体として果たしてそれが望ましいことなのかどうなのかということを,慎重に考えなければならないと思います。   関係府省が行っている各種施策が十分その効果を発揮して,その効果が国民の間に十分浸透して,国民の皆さんの間から,もう20歳が成年というのは時代おくれだ,もっと若年者に早く独立した権限と責任を負わせてほしいという声がふつふつとしてわき上がってきた,そういった局面でこの審議会が開かれているとすれば,正に我々として考えるべきことは,なるほど,そういう環境が整っているのだな,では民法の成年年齢を引き下げましょうと。ただ,この民法の成年年齢というのは,日本の社会の中において,大人と大人未満との間を画する一つの基準として多く国民の意識の中に定着している,それを少し変えていかなければいけないので,十分な周知期間と,啓蒙と言ったら変ですけれども,PRを図っていかなければいけない,そのためにはどのくらいの周知期間を置けばいいのだろうかという観点であれば,何年というのを出すことはできようかと思います。ただ,この問題は,起源は国民投票法の附則3条ということで,必ずしもふつふつとして一般の議論がわき上がってきたことを受けたものではないという部分が若干違うところであろうかと思います。そうであるがゆえに,この場での御議論も,弊害をどうやって除去するのだというところに多くの時間が割かれた。正にそこが象徴的なのだろうと思います。そういった点も考慮する必要があると思います。 ○五阿弥委員 やはり今ここで課題とされているものは即刻やるべき話なのです。つまり,18歳に引下げというのは,国民的な世論からすると反対が多いのだけれども,準備をする様々なものというのは即刻やっていい話なのですよ。それを各省庁の調整にこれからゆだねるわけですけれども,多分今のままだったら,文部科学省は違うかもしれませんが,法務省が言っていることだから,ほかの省庁は,まあいいやという,選択肢としてはかなり後回しになるかもしれない。それは省庁ごとの判断だと言ってしまうと,本来もっと早く条件整備すべき問題が後回しになってしまうのではないかという危惧というのはやはりあるわけですよ。それについてはどうお考えですか。 ○團藤委員 五阿弥委員の御指摘も,一般論としてはそういうこともあろうかなと思いますが,今,五阿弥委員がおっしゃいましたように,文部科学省は別かもしれないと。現に既に学習指導要領の改訂を行い,あとはその実施を着々と進めていかれるだけの状況に今いらっしゃるのだろうと思います。また,消費者被害の防止,いわゆる消費者問題,消費者対策に関しましては,今の国会で,この原案の中にも盛り込まれておりますが,消費者庁の設置が議論されております。正に,縦割り行政の中で各府省に分属されていた消費者関連の施策を集中的にとり行う機関として,消費者庁が設置されることになりますと,そういう機関が設置されていながら,そういう消費者問題を集中的に企画,実施をしていくという立場の役所としてつくられていながら,その役所が唯々諾々と,法務省の言っていることだからおれたちはやらなくてもいいんだよなどということをお考えになるとは到底考えられないところであります。そういった意味では,今回の御議論の中で非常に大きなウエートを占めておりました消費者問題,消費者被害に遭うのではないか,拡大するのではないかという問題点につきましては,ある意味,各種施策について矢は放たれているのではないかなという気はしているのです。ですから,委員のおっしゃる御懸念は,ではいつなのだということになるのだろうと思いますが,そういった意味では,関係の施策は既に着手されているとすれば,この成年年齢の引下げのための法整備というものをどのタイミングで実施するのが適当なのかを考えるメルクマールとしては,やはりそういった実施された各種施策がどれだけ国民の皆さんの間に浸透しているのか,それによって,20歳というものが大人の入口だという,長年の間にでき上がったそういった意識というものがどれだけ変わってくる素地ができているのか,あるいは現に変わってきているのかというあたりのところが一つの判断材料になるのではないかなという気もいたしているところです。そういった意味では,どの程度施策が浸透しているのかというのは,それぞれの関係府省においても我がこととしてやっておられる施策でありますから,それについての評価もなさるだろうと思いますし,また,国民の意識にどれだけ浸透しているのかということも,マスコミを始めとしていろいろな機会に国民の意識の調査も行われるところだろうと思います。そういったものを参考にしながら,この法整備のタイミングというものを図っていくということも,それは具体的に何年後ということにはなりませんけれども,一つ考えられるところではないかなと思うのです。 ○仲委員 各省の施策があるとすれば,次回までに,大体のところ,例えば5年以内で可能かとか,3年以内で可能かとかいうのを調査していただくようなことはできないものでしょうか。難しいですか。 ○團藤委員 可能かというのは,何が可能かということだろうと思うのですね。施策というのは,形だけやればそれで我々の目から見て十分だということになるのかどうか。先ほど申し上げましたように,その施策というのが本当に所期の目的を達成しているかどうか,すなわち関係各府省の思いを結実させるものとしてどれだけの効果が上がっているのかというところが割と重要になってくるのではないかなという気もするのです。そういった意味では,施策を行うのに何年というのを調べるだけで果たして足りるのかどうかという点は,問題かもしれません。 ○氷海委員 確認なのですが,今の第4の4のところの話に入るときに,部会長から話があって,話が進んできたのですね。我々のこの議論は,事務局がある程度の考えを示しながら,それに対して我々が議論をしていくというスタイルだったのです。今の話は,我々がいろいろな意見を出しておいて,事務局がぼーんと出す。これはちょっと今までとスタイルが違うなと。最初に今の説明があって,それに乗って議論して,いや,それではおかしいのではないのという議論でいけばいいけれども,わーっとやらせておいて,どーんと来たら,進まないですよね。 ○鎌田部会長 事務当局としてではなく,一委員の発言として受け取ってください。 ○氷海委員 そうなのですか。分かりました。 ○宮本委員 法務省としての微妙なお立場というのは理解した上でなのですけれども,この問題を議論し始めた最初からずっと違和感があったのは,18歳に引き下げる議論に,先ほどもおっしゃったとおり,世論の盛り上がりがないわけです。ところが,では,この青少年・若者問題は全体として非常に低調なのかといったら,そうではなくて,今や非常に重要な,日本の方向にかかわる重要政策になっていて,各省庁が議論しているわけです。ところが,やはり縦割り行政で,それらを総合した若者政策になっていない。そういう意味で言うと,18歳に引き下げるというのは総合的な若者政策のスタンスを示すものなのだと思うのです。そうしますと,世論の盛り上がりを出すためにはそれなりの仕掛けが必要ですし,その前に,縦割りでそれぞれやっている今の青少年,若者に関する議論を横にきちんとつなげる議論の場が必要で,これは法務省の手を離れるべきことだと思いますけれども,ここで議論したと同じようなことをもっと広く,若者政策を新しく転換するにはどうしたらいいかという形で,縦割りの行政を解いた議論がなければいけなく,かつ,それを本当に進めるのだったら,国民の世論を喚起するための仕掛けも必要だと思うのです。とにかく,この間何度か新聞の世論調査をやっても低調な中で,いきなり今日の新聞の1面に,「18歳に引き下げる」というような記事が出る,こういうのは非常におかしな話であります。しかし,若者をどうするか,このままだったら日本の将来危ないというところまで来ているので,あともう一歩なのだと思うのです。そういう議論のきっかけに,年齢を引き下げるというテーマで議論をし直す必要があると思います。つまり,世論をどうやって喚起するか,それから縦割り行政を解いて,この問題をもう一度きちんと整理し直して,その上で18歳年齢にさわるということをするために,どのくらい時間がかかるかということは事務局の方から出していただくことはできるのではないでしょうか。 ○今田委員 宮本委員のおっしゃることは非常にごもっともで,若者行政に関して,若者の現状に関して問題意識は同じです。正に宮本委員がおっしゃったことが今の問題につながっていて,そうした現状の若者について,全体的な,総合的な施策が必要だという現状がある。けれども,この部会はそういうことをすべて議論してきたかというと,ここではやはり選挙年齢に端を発して,成年年齢はどうあるべきかということを議論しました。確かに,たまたまというか,ここに参加された委員の先生方が非常に問題意識が深くて,視野も広く議論が活性化して,本当に,ある意味では成年年齢うんぬん以上の非常に広い問題が議論され,議論を深めることもできた。けれども,もともとの枠組みそのものは,成年年齢を何歳にするべきかということにあったわけです。そういう意味で,確かに我々は課題について真剣に議論したけれども,この程度の議論で総合的な今後の若年政策にかかわることを出せるかというと,私はやはりそうではないのではないかと。ということで,議論の蓄積あるいは情報量の範囲で結論を出すべきであると考えるならば,速やかにということはよくないので,できるだけ早急に,なぜならばこういう問題があるからという形で,期限については具体的なものではなくて,質的な感じの要望というような形で出すというのが,我々がこの議論をしてきた身の丈というか実績に見合った結論であるのではないかと思います。 ○宮本委員 1点だけ補足させていただきます。この部会で総合的に縦割り行政を解いて議論すべきだったと言っているわけではなく,ここで分かったことをもとにして,提言の中に,今度は横に並べた,法務省に限定しない横の議論の場を設けるべきという提案を入れて,そのことも含めて一定の期限を盛り込むというようなことかと思います。 ○鎌田部会長 大村委員,どうぞ。 ○大村委員 今日の報告書案ですと,今の項目が「民法の成年年齢を引き下げる時期」と書かれていて,我々が時期は何年だと言うということがどういう意味を持つのかというのが今まで議論になっていたかと思います。團藤委員がおっしゃるように,これが実際に法制的に見てどこまで可能なのかということがあるのだろうと思います。それはそうだろうと思うのですけれども,他方で,では一体どのくらいの時期を我々は想定しているのかということについて,速やかにがいいかどうかということについて御議論ありましたけれども,どのくらいの幅で我々は考えているのかということは何らかの形で示した方がいいのではないかと思うのです。ただ,それをどのように立法に落としていくかというのは,これまた別の問題だろうと思います。ですから,実際に様々な交渉がある中で,法制審議会に何年と言われたのでということになっては,できるものもできないということになろうかと思いますけれども,ここで多分皆さん一致しているのは,必要な対応措置が一定程度講じられることが必要だと。それは早い方がいいということなのですけれども,我々は何年ぐらいである程度の措置が講じられるべきだと認識しているのか,その認識を示すというようなことはあってもいいのではないか。それがないと,形容詞で示されていて,やった方がいいと言っているけれども,一体それはいつのことなのかというようなことにもなりかねないというのが,数字が出てきている背景にある御懸念なのではないかなと思います。 ○鎌田部会長 実は,個人的には,具体的な年数をどうするかということではなく,ともかく,ほかの施策がどうあれ,民法成年年齢は引き下げます,あとはほかの施策の進行状況を見ながら施行日を決めればいいだけだというふうにするのか,民法成年年齢を引き下げるための立法をするための前提条件の整備が重要である。ただし,それが完全に整わなければやらないというわけではなくて,もう少しいろいろな情況を見ながら,ある意味では政治的な判断にお任せした方がいいのではないかという,そこのスタンスの違いの方に個人的には関心があったのです。   ただ,年数との関係で言えば,役所の都合というのもあって,法務省が各省庁に対し,法制審の言ったことに従って3年以内に制度を直せなんて言ったら,かえって全部駄目になってしまう可能性があるというような,そういう力学があるのかもしれないのですけれども,それ以上に,私は,個人的には,この報告書のまとめ方が変わってくると思っております。何が何でも3年以内にこれを引き下げます,だから,ほかのところは,できればそれに合わせていろいろな施策を講じてくださいというお願いをするような論調でまとめていく,3年以内に引き下げる,それが若者政策実現のために必須の事柄なのですというトーンにしないと,3年というような年数を明示するのはなかなか難しいかなという感じがしています。でも,今までの議論の中で,全体として若者政策の一環として成年年齢引下げを率先してやっていくべきだという意見が部会の大勢を占めているとまで言えないのではないかなという感じを持っていたものですから,そういう意味で,最大公約数的なまとめをするとしたらどういう表現になるか。ある程度いろいろな関連施策,環境整備の状況を見ながら実施の時期を検討していくというぐらいが,早急にという人たちには非常に不満を残すかもしれないですけれども,大多数の人を包摂することができるのかなと考えています。この報告書案も,したがって,積極的意義があるけれども,しかし,そのためにはこういう条件をそろえながらやっていかなければいけないというトーンで書き進めてきましたので,条件整備をしてもしなくても,3年たてば必ず実施しますという書き方はしにくいなというのが率直な印象です。   引下げの法整備の時期についても,一本化を試みたいと思いますが,少し議論を整理したいので, 恐縮ですが,ここでいったん休憩とさせていただきます。           (休     憩) ○鎌田部会長 再開させていただきます。ただいままでの議論が,私自身も十分に理解していなかったようですが,私は,3年とか5年とかという議論というのは,直ちに法律を改正した上で,施行時期をいつにするか,こういう発想だと理解して,他方で,環境が整ったかどうかに依るという考え方,要するに,法律改正自体を周辺環境の整備と連動させるのだから年数は明示できない,この二つの考え方が対立しているかと思っておりました。しかし,3年とか5年とかというのは,3年ないし5年以内に一切の施策の整備をしろということで,今すぐ成年年齢引下げだけを必ずしも先行させてやれという御主張と違うものも入っているような気もいたします。そういう意味では,何通りかの議論,つまり,いつ法律改正するのか,いつ施行するのか,あるいは周辺環境整備とどういう条件関係にするのかという点で,多分今の委員の皆さんの御意見というのは二通りどころではない分かれ方をしているのだと理解しました。この場であと30分とか40分議論しても一本化するというのとはちょっと難しいなと思います。それで,今日出てきた意見をもう少し冷静に事務当局と私の方で,どういう趣旨の御意見があって,どこに対立点があるかということを整理した上で,意見の一本化を図ることができるか否か,検討をさせていただきたいと思います。そこで,恐縮ですけれどももう一回,最後に取りまとめの修文の確認のための会議を7月に1回入れさせていただく,そのような進め方にしたいと思います。また延びるので誠に申し訳ないのですが,そういう形にしないと,何となく皆さんが違うことを思いながら一つの表現の上で報告書ができていくというのは余りよくない。賛成であれ,反対であれ,中身は共通の理解としておかないといけないと思いますので,1回多くなりますけれども,そのような手続にさせていただいてよろしゅうございますか。   それでは,大変恐縮でございますけれども,7月29日水曜日,午後1時半ということで,1回追加をさせていただくということにいたします。   最終報告書については,両論併記ではなく,意見の一本化を図りたいと思っておりますので,期日間に,委員・幹事の皆様に御意見を個別に伺いに行くこともあるかもしれませんけれども,その際には是非ともよろしく御協力のほどお願いいたします。 ○山本委員 一つ質問をいいですか。いわゆる附則第3条の理解にかかわって,部会長がおっしゃるような,法律は改正した,実施時期については別途定めるという形の法律改正をした場合には,附則第3条が求めている条件はその時点でクリアされたということなのか,その法律が施行されることが,言わば公職選挙法等々の規定,国民投票法との関係で,それがクリアされるかどうかという,そこの理解はどういう理解をしておけばいいのですか。 ○佐藤幹事 附則第3条の法制上の措置をどの段階で講じたことになるかということの御理解かと思いますが,これは国会の審議の中の提出者の先生方の御答弁でも出ておるのですが,例えば民法につきましては,法律はつくったけれども,施行が3年以内に終わらない場合もあるので,その場合を考えて,附則第3条第2項がございます。法律が変わるまでは国民投票の投票年齢も20歳であるという規定もあるという答弁もされておりますので,法律自体がもし改正されて,施行時期が延びているということであれば,それは少なくとも法制上の措置は講じたことになるのではないかと思われます。 ○山本委員 法律が成立して,成年年齢を18歳にするという法律改正をすると。ただし,施行日については別途定めるという形になった場合は,どうかということですが。 ○神吉関係官 国民投票法附則第3条を読んでいただければ分かるかと思うのですけれども,「法制上の措置を講ずるものとする」というのが第1項でありまして,第2項が法制上の措置が講ぜられ,満18歳以上20歳未満の者が国政選挙に参加すること等ができることとなるまでの間はという形になっているかと思います。法制上の措置自体は,「等」の中に何を含めるかで解釈が分かれているようですが,民法改正若しくは公職選挙法の改正,そのほかの関連法令の改正ということで,法律の改正をすれば十分ということになるのだと思います。ただ,満18歳以上20歳未満の者が国政選挙に参加すること等ができることとなるというのは,実際に施行されて,例えば選挙年齢が18歳になり,成年年齢が18歳になることまでを求めていることになると思います。 ○山本委員 法制上の措置というのは,成年年齢が18歳に実際になるということまでは求めていないという理解でいいのですか。 ○神吉関係官 法制上の措置としては求めておりません。改正をすればいいということになるかと思います。ただし,「満18歳以上20歳未満の者が国政選挙に参加すること等ができるようになるよう」の「等」の中に民法の成年年齢の引下げが含むかどうかについては,議論があるようでして,含むとすれば,法制上の措置も必要ということになりますし,含まないとすれば,法制上の措置は附則では要求されていない,このように考えることになると思います。 ○鎌田部会長 解釈問題であって,確定していないということですね。 ○大村委員 問題は二つあって,成年年齢の引下げが附則第3条の求めるところなのかどうなのかという問題と,仮に求めるところだとして,改正法の提出で足りるのか,それとも改正法が施行されることまでが必要なのかということだと思うのですけれども,後の方については,神吉関係官のお答えは,施行されることが必要だというように書かれているのではないかというお答えだったということでしょうか。ただ,成年年齢の引下げが必要な措置に含まれるかどうかは解釈問題だということでしょうか。 ○團藤委員 仮にこれが附則第3条第1項に含まれるとすれば,改正法が成立しさえすれば,あるいは政府の立場からすれば,改正法案を提出しさえすれば,あとは立法府の問題でありますので,それで一応やるべきことはやったということになるだろうと思います。 ○佐藤幹事 附則第3条第1項の,法制上の措置を講じたかという点では,法案を出せば,そこはクリアしたことになりますが,実際に国民投票の投票年齢が変わるかどうかというところで言うところの,選挙すること等ができることとなる場合に,公職選挙法を変えて,かつ民法まで変えないと国民投票法が18歳に下がらないのかどうかについては,そこは解釈の問題で,我々として,どちらだとはお答えできないのかなと思っております。 ○山本委員 それは結局,国会が判断することだということですか。 ○佐藤幹事 そういう趣旨です。 ○鎌田部会長 よろしいですか。   次回以降の期日については,一応,6月22日と7月29日を御予定いただいておりますが,正式な日程については,後日,事務当局から連絡をさせることといたします。   本日は長時間の熱心な御討議ありがとうございました。 -了-