法制審議会民法成年年齢部会  第15回会議 議事録 第1 日 時  平成21年7月29日(水)  自 午後4時00分                        至 午後4時25分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  民法の成年年齢の引下げの当否について 第4 議 事 (次のとおり)           議        事 ○鎌田部会長 それでは,予定した時刻が参りましたので,法制審議会民法成年年齢部会第15回会議を開催いたします。    (委員の異動紹介につき省略) ○鎌田部会長 本日の議事に入る前に,5月に開催しました前回部会から本日の部会開催に至る経緯について私の方から説明をさせていただきます。   前回の部会におきましては,最終報告書(第1次案)に基づきまして御議論いただきましたが,特に民法の成年年齢の引下げの法整備を行う時期につきまして様々な御意見が出されました。そこで,事務当局に前回の部会で出された御意見を整理させた上,個別に委員・幹事の皆様の御意見を伺わせたところ,民法の成年年齢の引下げの法整備を行う時期については,おおむね意見の一本化を図ることができそうであるとの報告を受けました。そういたしますと,6月に部会を開催し,皆様にお集まりいただいて御議論いただくよりも,最終報告書案の前半部分についても多くの御意見をちょうだいいたしましたので,事務当局において,最終報告書の前半部分の修文も含めて,報告書案全体について慎重に案文を作成させた上,再度,委員・幹事の皆様と最終的な意見調整を行う方がよいのではないかと考え,6月には部会を開催しないこととし,本日の部会において最終報告書の取りまとめを行うこととしたものであります。委員・幹事の皆様には,大変お忙しいところを個別に御意見を伺わせていただく機会を設けていただきまして,ありがとうございました。   それでは,部会資料47としてお配りしております「民法の成年年齢の引下げについての最終報告書(第2次案)」について御審議いただきたいと思います。   まず,事務当局から部会資料47について説明をしてもらいます。 ○佐藤幹事 それでは,部会資料47の「民法の成年年齢の引下げについての最終報告書(第2次案)」について御説明させていただきます。   前回の会議におきまして,部会資料46の最終報告書(第1次案)に基づきまして皆様に御議論いただきました。本日は,前回の部会で出されました御意見等を踏まえて第1次案から修正しました部分及び第1次案ではペンディングとしておりました第4の4の「民法の成年年齢を引き下げる時期」,第5の「その他の問題点」及び第6の「結論」の部分を中心に御説明させていただきます。   なお,先ほど部会長から御説明がありましたとおり,本日,最終報告書を御決定いただく必要がありました関係で,委員・幹事の皆様には,大変お忙しい中,御意見を伺わせていただく機会を設けていただき,ありがとうございました。   部会資料47は,皆様からちょうだいした御意見等を反映させたものでございます。本日は,この最終報告書案を御決定いただきたいと思います。   それでは,順に御説明いたします。   報告書の2ページからですが,第1の「検討の経緯等」につきましては特に変わっておりません。   なお,国民投票法の趣旨について解説した注1を加え,また,部会の検討の対象についての説明である注2を適宜修文しております。   また,第2の「国民投票の投票年齢,選挙年齢等との関係」につきましては,1の「国民投票法附則第3条の趣旨」のところは第1次案とほぼ同様でございます。   4ページの2の「選挙年齢等との関係」につきましては,選挙年齢と民法の成年年齢が一致していることが望ましいかどうかについての理由づけを記載した箇所,具体的には報告書案の6ページのところを修文しております。前回部会における御意見を踏まえて,①の理由づけを追加するとともに,理由づけの順番を変更しております。また,最後のまとめの一文も,御意見を踏まえて表現振りを修正しております。   第3の「民法の成年年齢の引下げの意義」についてですが,1の「民法の成年年齢の意義」は特に変更しておりません。   2の「将来の国づくりの中心となるべき若年者に対する期待」のところですが,前回の部会において,もっと積極的に民法の成年年齢引下げの意義を記載すべきであるという御意見をちょうだいしましたので,御意見を踏まえて修文しております。   3の「契約年齢の引下げの意義」と4の「親権の対象となる年齢の引下げの意義」につきましては,委員の皆様から寄せられた御意見を踏まえて表現振りを修正した箇所等がございますが,実質的には第1次案と同様でございます。   12ページですが,5は第2及び第3で検討してきたところのまとめを記載しております。民法の成年年齢の引下げには一定のメリットがあり,国民投票年齢が18歳と定められたことに伴い,選挙年齢が18歳に引き下げられることになるのであれば,特段の弊害のない限り,民法の成年年齢を18歳に引き下げるのが適当であるとしております。   第3では民法の成年年齢の引下げによるメリットを記載しておりますが,第4では,民法の成年年齢の引下げによってどのような問題が生ずるのか,そして,これらの問題を解決するためにはどのような対策を講ずるべきかを取りまとめております。これらにつきましては,第1次案と基本的には同様の記載でございますが,前回の部会や,その後にちょうだいいたしました御意見を踏まえまして修正した部分がございます。   1の「契約年齢を引き下げた場合の問題点」につきましては,前回の部会における御意見を踏まえて,13ページの8行目以下に,民法第5条第2項の未成年者取消権が,悪質業者に対して,未成年者を契約の対象としないという大きな抑止力になっていることを明記させていただきました。   2の「親権の対象となる年齢を引き下げた場合の問題点」につきましては,(1)の「自立に困難を抱える18歳,19歳の者の困窮の増大」の末尾,すなわち14ページの最後の段落ですが,前回部会における御意見を踏まえて,民法の成年年齢を引き下げると,離婚の際に未成年者がいる場合の養育費が早期に打ち切られる可能性があるという意見について 付け加えさせていただきました。   その他の部分及び(2)の「高校教育における生徒指導が困難化するおそれ」につきましては特に変更しておりません。   3の「民法の成年年齢を引き下げた場合の問題点を解決するための施策」について御説明いたします。   (1)の「消費者被害が拡大しないための施策の充実について」につきましては,第1次案とほぼ同様でございますが,アの「消費者保護施策の充実」につきましては,17ページの10行目以下に,若年者の消費者被害が拡大しないように実効的に行われることが望ましいとまとめの一文を加えました。また,その下の部分でございますが,消費者庁及び消費者委員会設置法が本年5月29日に成立し,消費者庁がこの秋にも発足する見込みであることなどを加筆しております。   続きまして,イの「消費者関係教育の充実」の部分では,改訂前の学習指導要領において消費者教育が実際には十分に行われていなかったのではないかという御意見がございましたので,それを加えましたほかは特に変更しておりません。   (2)の「若年者の自立を援助するための施策の充実について」につきましては,第1次案とほぼ同様ですが,これにつきましても,国会に提出されておりました青少年総合対策推進法案が子ども・若者育成支援推進法と修正されて成立しましたので,適宜修文しております。   (3)の「高校教育の生徒指導上の問題点の解決策」,(4)の「一般国民への周知徹底等」につきましては第1次案と同様でございます。   続いて,第1次案でペンディングとしておりました第4の4以下について御説明いたします。   21ページの第4の4は,「民法の成年年齢を引き下げる時期」についてでございます。先ほど部会長から御説明いただきましたように,期日間に事務当局におきまして皆様の御意見をお聞きし,御意見を整理いたしましたところをまとめたものでございます。   まず,第1段落におきまして,民法の成年年齢の引下げを行う場合の問題点の解決に資する施策は,関係府省庁において検討され,実施に向けた取組が行われているところ,その効果が十分に発揮され,国民に浸透していくことが期待されるが,これらの施策はその性質上,直ちに効果が現れ,国民に浸透するものではなく,ある程度の期間を要することを記載しております。   第2段落では,そうであれば,現時点で民法の成年年齢の引下げの法整備を行うことは相当ではなく,法整備を行う具体的時期については,関係府省庁が行う各施策の効果等の国民への浸透の程度を見極める必要があり,国民への浸透の程度は国民の意識を踏まえる必要があること,このように考えることは世論調査の結果とも整合的であることを記載しております。   そして,第3段落では,国民の意識を適切に判断できるのは,国民の代表者からなる国会であり,法整備の具体的な時期は,関係施策の効果等の国民への浸透の程度やこれについての国民の意識を踏まえた,国会の判断にゆだねるのが相当であるとしております。   第5の「その他の問題点」について御説明します。   ここでは,民法の成年年齢を引き下げる場合に,成年に達する日をいつにすべきか,養子をとることができる年齢及び婚姻適齢はどうすべきかといった派生する論点についての検討結果を記載しております。   まず,1の「民法の成年年齢を引き下げる場合の成年に達する日」についてですが,部会では,18歳とするA案,18歳に達した直後の3月の一定の日,例えば3月31日などに一斉に成年とするB案,19歳とするC案に分かれておりました。この論点につきまして,国民投票の投票年齢及び選挙年齢と同様に,満18歳に達する日に成年となるとすべきであるとまとめさせていただきました。   次に,2の「養子をとることができる年齢」についてですが,民法の成年年齢を引き下げるとしても,養子をとることができる年齢については,現状維持の20歳とすべきという意見で一致しましたので,そのようにまとめさせていただきました。   次に,3の「婚姻適齢」についてですが,平成8年の法制審議会の答申と同様,男女とも18歳とすべきであるという意見で一致しましたので,そのようにまとめさせていただきました。   24ページ以下が第6の「結論」の部分でございますが,第2から第5まで検討してきたことの総括をしております。   前半部分では,民法の成年年齢の引下げには一定のメリットがあり,国民投票が18歳と定められたことに伴い,選挙年齢を18歳に引き下げることになるのであれば,民法の成年年齢を18歳に引き下げるのが適当であるとしております。   後半部分では,法整備をすべき時期について記載をしております。第4の4で記載しました,民法の成年年齢を引き下げるべき時期の記載と同様でございますが,民法の成年年齢を18歳に引き下げるのが適当であるとしても,引き下げた場合には,消費者被害の拡大などの問題が生ずるおそれもあり,これらの問題点の解決に資する施策が実現されることが必要で,そのために取り組まれている施策の効果が十分に発揮され,それが国民の意識として現れた段階において速やかに行うことが相当である。そして,国民の意識を十分判断できるのは,国民の代表者からなる国会であるということができるから,民法の成年年齢の引下げを行うべき具体的時期は,これら施策の効果等の国民への浸透の程度やそれについての国民の意識を踏まえた,国会の判断にゆだねるべきであるとしております。    以上が最終報告書(第2次案)の内容についての御説明となります。 ○鎌田部会長 ありがとうございました。   この最終報告書(第2次案)につきましては,事前に委員・幹事の皆様にお示しして,御意見をお伺いする機会を設けさせていただきましたが,事務当局からは,おおむね皆様の賛同を得ることができたと報告を受けております。また,本日御欠席の岡田委員,大村委員,仲委員,氷海委員,山本委員からは,最終報告書(第2次案)に賛成であるとの御意見をちょうだいいたしております。   その他,委員・幹事の皆様から,この最終報告書案について御意見,御質問等がございますでしょうか。―よろしいですか。   御意見,御質問がないようでありましたら,この案のとおり,最終報告書案を取りまとめるということにいたしたいと思います。よろしゅうございましょうか。―ありがとうございました。   なお,最終的に誤記その他訂正すべき事項が見つかりましたら,実質的内容の変更にわたらない範囲内で,部会長に御一任いただければと思います。よろしゅうございましょうか。―ありがとうございました。   これで最終報告書の取りまとめを終えることができ,この部会の調査審議は終了ということになりますが,部会の審議を終えるに当たりまして,委員・幹事の皆様から何か御意見等ございますでしょうか。 ○五阿弥委員 感想というか,要望なのですが,やはりこの会議は公開で行うべきだったというのを私は非常に強く思っているのです。これだけ国民的関心事ですし,そして,別に個人のプライバシーということもございませんので。確かに議事録については,だれが発言したかということが分かる形にはなっていますが,もしこれがもっとメディアに開かれた形で行われれば,もう少し様々な形で,もっと国民の目につくような記事が出たかもしれません。また,会議が終わった後に多分毎回メディア向けのブリーフィングが行われていたかと思いますが,やはり短いブリーフィングですと,何が行われたかというのがうまく伝わらないのですよね。私がこの前見たら,三つぐらいの新聞でそれぞれちょっとニュアンスが違う。18歳に引き下げるのだろうかどうだろうかという。やはりそういう伝わり方も不正確になってしまう懸念がございますので,今回の部会はこれで終わりですけれども,今後,法制審の議論などでも,やはりできる限り公開にしていくことが望ましいのではないかと思った次第です。 ○出澤委員 私は手続的なところをお尋ねしたいのですが,部会の方は本日で終了ということなのですが,これがどういう形で答申になるのか,その手続を教えていただければと思います。 ○鎌田部会長 それでは,それぞれ事務当局の側から説明してください。 ○佐藤幹事 では,事務当局からお答えさせていただきたいと思います。   五阿弥委員から御要望がありました点でございますが,法制審議会の議事規則の第3条において,「会議は,公開しない。」という定めがございまして,同規則の第7条第1項において,「部会の議事については,第1条から前条までの規定を準用する。」というふうに定められております。このことからいたしますと,部会の判断のみで議事を公開することはできません。法制審議会の議事を公開するためには,法制審議会議事規則を総会において改正する必要がございます。これにつきましては総会において決定される事柄であると認識しておりますが,事務当局を務める法務省といたしましても,五阿弥委員からちょうだいした御意見につきましては,今後の課題ということで真摯に受けとめて,検討してまいりたいと考えております。   出澤委員から御質問があった点についてですが,先ほど当部会で最終報告書をお取りまとめいただきましたが,その後,9月に開催される予定となっております法制審議会総会において,部会長から審議結果を御報告いただき,総会においても御議論いただくことになっております。最終的にどのように法務大臣に答申をするかは,総会で御決定いただくことになるものと認識しております。 ○鎌田部会長 それぞれよろしゅうございますか。   今後の予定につきましては,ただいま事務当局から説明がありましたとおり,9月に予定されております法制審議会総会に私から調査審議の結果を報告させていただいて,その上で,総会で最終的な御決定をいただくということになります。その総会での御報告の際には,五阿弥委員からの御要望も含めて報告をさせていただくようにいたします。   ほかに何かございますでしょうか。   特にないようでございましたら,原委員よりごあいさつをいただきたいと思います。 ○原委員 委員・幹事の皆様には,約1年半にわたりまして合計15回に及ぶ調査審議をしていただき,本日,部会としての最終報告書を取りまとめていただきまして誠にありがとうございました。   この成年年齢の引下げというテーマは,国民の日常生活に大きな影響を与えるテーマでございまして,先ほど五阿弥委員から御指摘がありましたけれども,国民的に非常に関心の高いテーマでございます。そこで,当部会においては,パブリック・コメントのほか,様々な専門家,有識者のヒアリング等をしていただいたと聞いておりますが,非常に難しいテーマでございますので,いろいろな意見が寄せられたと伺っております。そうした意見を踏まえて,当部会では,鎌田部会長の御指導のもと熱心に御審議いただきまして,本日,全会一致で報告書を取りまとめていただいたこと,本当に有り難く思っている次第でございます。事務当局を代表いたしまして,これまでの委員・幹事の皆様の御尽力に厚く御礼申し上げる次第でございます。本当にありがとうございました。 ○鎌田部会長 最後に,私からも部会長として一言ごあいさつを申し上げます。   先ほど来御指摘がありますように,この課題は大変社会的に関心が高いだけでなく,実際にも多方面に影響を及ぼす課題でありまして,それだけに価値判断も大いに分かれるところで,難しい判断をお願いいたしました。大変難しくデリケートな課題が多方面にわたる問題で,予定を超える長い審議をお願いすることとなりました。その過程で,幅広く,そして深い意見をお出しいただきまして,この問題に関するこれまでの議論をはるかに超える成果を共有することができたのではないかと思っております。   いろいろと進行上の不手際がありまして御迷惑をおかけしたかと思いますけれども,この場を借りておわびを申し上げるとともに,御協力に心からお礼を申し上げます。どうも本当にありがとうございました。   それでは,これで当部会の審議を終了させていただきます。約1年半にわたる御熱心な御審議を賜りまして本当にありがとうございました。 -了-