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宣言:犯罪に戻らない・戻さない~立ち直りを支える明るい社会へ~が犯罪対策閣僚会議において決定されました。

再犯防止に関する連載の第5回目として,平成26年12月16日に犯罪対策閣僚会議において決定された宣言の内容についてご紹介します。

宣言:犯罪に戻らない・戻さないとは

犯罪や非行をした人は,服役するなどした後,再び社会の一員となります。

犯罪や非行が繰り返されないようにするためには,犯罪や非行をした本人が,過ちを悔い改め,自らの問題を解消する等,その立ち直りに向けた努力をたゆまず行うとともに,国がそのための指導監督を徹底して行うべきことは言うまでもありません。

それと同時に,社会においても,立ち直ろうとする者を受け入れ,その立ち直りに手を差し伸べなければ,彼らは孤立し,犯罪や非行を繰り返すという悪循環に陥ってしまいます。

地域で就労の機会を得ることができれば,自分を信じることができる。住居があれば明日を信じることができる。彼らの更生への意志は確かなものとなり,二度と犯罪に手を染めない道へとつながっていきます。

犯罪が繰り返されない,何よりも新たな被害者を生まない,国民が安全で安心して暮らせる「世界一安全な国,日本」を実現するためには,ひとたび犯罪や非行をした人を社会から排除し,孤立させるのではなく,責任ある社会の一員として再び受け入れること(RE-ENTRY)が自然にできる社会環境を構築することが不可欠です。

このような社会の構築に向けた取組を進めるためには,国としてまず何を行い,その上で地域の関係機関や企業等の団体,ひいては広く国民の皆様に何をお願いしていくのか,その方針を明確に打ち出した上で,相互にその取組を積極化していくことが必要であることから,その第一歩として,政府としての宣言:犯罪に戻らない・戻さないが決定されました。

犯罪対策閣僚会議の画像

犯罪対策閣僚会議

法務大臣記者会見の画像

法務大臣記者会見

立ち直りを支える明るい社会の構築に向けた国の取組の方針

1 犯罪や非行をした者がより円滑に社会復帰することができるよう,矯正施設入所中から出所後に至るま で,これまで以上に社会とのつながりを持ちながら指導や支援を行える体制づくりを,地域社会の理解や協力も得ながら進めていきます。

2 立ち直りに関わる国や地方の関係機関が連携を密にし,犯罪や非行をした者が健全な社会の一員として定着するまで,シームレスな指導・支援を行っていきます。

3 犯罪や非行をした者の立ち直りを支える民間ボランティアや企業等が地域社会で活動しやすい環境をつくり,犯罪や非行をした者を受け入れることが自然にできる社会の実現に向けた活動の輪を広げていきます。

社会での「仕事」と「居場所」の確保に向けた国の取組

2020年までの数値目標

1 犯罪や非行をした者の事情を理解した上で雇用している企業の数を現在の3倍にする。

2 帰るべき場所がないまま刑務所から社会に戻る者の数を3割以上減少させる。

受刑者や非行少年が抱える問題 (保護司アンケート(平成24年版犯罪白書を基に作成))
仕事

・粘り強さや対人関係能力等の資質に問題がある

・求人・雇用情報や自分の問題に合った公的支援を見つけることができない

・基礎的な学力や仕事上求められる技能・技術が不足している

居場所

・本人の資質に問題があり家族のもとに住み続けられない

・家族の側に問題があり家族のもとに住み続けられない

・保証人や契約時に必要なお金がないため入居を断られる

社会に向けた指導・訓練

社会のニーズに合った職業訓練・指導

介護の訓練画像 介護福祉 建設の訓練画像 建設業

・人材不足が顕在化している業種において求められる技能・資格等を習得させるための職業訓練・指導の充実

職業観や社会常識の付与

・職業観やマナー等社会人として求められるスキルの習得

出所後のスムーズな社会適応を目指した指導

運動をする受刑者

刑事施設等における高齢・障害のある受刑者等に対する身体機能や生活能力の維持・強化のための指導及び支援の充実

社会での受け入れに向けた調整

求人・求職のマッチング

・ハローワークを通じた求人・求職のマッチングの更なる強化
・刑務所等収容段階では,1人1人の特性に応じた就労支援を実施し,出所後も職場定着に向けた支援を行うなど,寄り添い型の援助を行う体制の整備

自立が難しい受刑者等のシームレスな支援

矯正施設・保護観察所・地域生活定着支援センター等が連携して,生活環境の調整,支援を刑務所等収容中から社会復帰後まで切れ目なく実施できる体制の整備・充実

社会における居場所づくり

出所者等を雇用した企業に対する支援

出所者の雇用画像

・出所者等を雇用しやすくするための経済的支援策等の拡充
・企業が安心・継続的に出所者等を雇用できるサポート体制の構築

国・地方公共団体における雇用の促進

国(法務省,厚生労働省)における保護観察対象少年の雇用事例を参考に,国・地方公共団体における雇用を展開

社会での一時的な居場所の確保・拡充

施設の画像

更生保護施設の機能強化や自立準備ホーム等の拡充

出所者等の相談体制の充実

出所者等に対する公的支援に関する情報提供や,
生活上の悩み等の相談・助言を受けることができる体制の充実

ソーシャルビジネスとの連携

以上のような,「仕事」と「居場所」の確保に向けた取組に加えて,立ち直りを支える社会の構築に向けた広報・啓発活動を,政府一丸となって進めていきます。
こうした取組を通じて,企業や地方公共団体,更にはより多くの国民の皆様から御理解と御協力をいただけるように取り組んでいきます。

~“社会を明るくする運動”の強化~

厚生ペンギンのイラスト
更生保護のマスコット
更生ペンギン

“社会を明るくする運動”(主唱・法務省)を 政府全体の活動として力強く展開する。

・再犯の実態や対策の必要性等に関する広報・啓発活動を戦略的に進める。

・再犯防止活動の関係者が相互に情報交換し,交流する。活動が広がる。

経済界

出所者等の雇用先の拡大

経済界に対し,犯罪や非行をした者の立ち直りを支える雇用先の拡大に向けて,政府と緊密に連携を図りながら,経済界を挙げて,犯罪や非行をした者を雇用することの社会的意義や支援策等について周知を図るとともに,積極的な雇用の推進に取り組んでもらえるよう働き掛けを進めます。

地方公共団体

出所者等の円滑な社会復帰に向けた支援体制

犯罪や非行をした者の雇用,支援体制の構築,国の活動と連携した広報・啓発体制の強化に取り組むとともに,再犯防止のために地域で活動する民間協力者に対する支援を充実してもらえるよう働き掛けを進めます。

国民

再犯防止活動への理解・協力

あまねく国民に犯罪や非行をした者を社会で受け入れる必要性等について理解を求め,一人一人の立場に応じて,再犯防止に向けた活動に直接・間接的に参加・協力してもらえるよう働き掛けを進めます。

最後に

再犯防止は簡単ではない。しかし,絶対にあきらめてはいけない。
「犯罪に戻らない・戻さない」という決意の下,「世界一安全な国,日本」の実現に向けて,犯罪や非行をした人を社会から排除・孤立させるのではなく,再び受け入れること(RE-ENTRY)が自然にできる社会を目指して,国民の皆様の御理解と御協力を切にお願いいたします。

再犯防止対策専用ホームページが分かりやすくなりました!

→ 法務省「再犯防止対策」 をご覧ください

※お断り
前回の「あかれんが47号」では,再犯防止に関する総合対策の4つ目の柱となる「広く国民に理解され,支えられた社会復帰を実現する」を紹介する予定である旨告知していましたが,平成26年末に 当該部分と方向性を同じくする宣言がとりまとめられたことを受け,内容を変更させていただきました。