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日本の法制度整備支援を世界に発信するには

1 なぜ世界にアピールするのか?

法務総合研究所国際協力部(以下「当部」といいます。)は,アジア諸国での法制度整備支援を行っています。

法制度整備支援は,政府開発援助(ODA)として法務省が行う国際協力活動であり,国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)とも関連するものです。

とはいえ,世界には,法制度整備支援を含む開発支援を行っている国や機関が多数あります。日本の法制度整備支援活動は,国際的に見て,知名度が高いとはいえません。日本の国際的なプレゼンスを高めるとともに,他のドナーとの連携を深めてより良い支援につなげるためにも,対外的な広報の充実が必要です。

2 アメリカでの発信

当部では,国際的な発信の一環として,例年,ワシントンD.C.にある世界銀行が主催するLaw, Justice and Development Week(以下「LJDWeek」という。)という開発支援をテーマとするシンポジウムにおいて,当部の法整備支援活動を紹介するセッションを実施しています。

様々な国から開発支援関係者が集まるこのようなシンポジウムに参加することは,開発支援に関する最新の情報を得る機会として重要であることはもちろんですが,当部の具体的な活動を国際機関・関係者に広く認知してもらう場としても,非常に重要です。

本年度は,更に広く発信するために,LJDWeekだけでなく,これに先立って,ニューヨークのUNDP(国連開発計画)本部においても,当部の活動を紹介するセッションを実施しました。

UNDPは,世界170か国以上に事務所を有する国際開発援助機関であり,開発分野のビッグ・プレイヤーです。

3 「寄り添い型」と「SDGs」

国際機関で日本の法制度整備支援活動をPRする際に,最も重要なことは,開発協力の関係者が共有している視点を意識して発信することです。

日本の活動をただ羅列して紹介するだけでは,活動の意義や重要性を十分にわかってもらえないため,開発協力を担う国際機関で重要視されている共通目標やキーワードと,日本の活動との関連性を的確に示すことで,初めて,国際機関において,日本の活動の意義を理解してもらうことができるのです。

そこで,今回当部がアメリカで行ったセッションでは,裁判外紛争解決(いわゆるADR)に関する日本の支援を「Access to Justice(司法へのアクセス)」という,SDGsで取り上げられているキーワードに関連付けて紹介しました。すなわち,日本の支援が,「司法へのアクセスを確実にする」という世界の共通目標に向けても有意義であることをPRしました。

日本の支援は,相手国の歴史,文化的背景を尊重しつつ,相手国側の主体的な取組を促す「寄り添い型の支援」という長所を有しています。そうした長所を紹介する上で,他の支援機関に伝わる視点や言葉,すなわちSDGsに掲げられた目標に関連させるなどして語ることが,対外的なPRの場では益々重要になっていくものと思われます。

グローバル化が進む今日,法制度整備支援を含め,日本の支援活動を国際的に知ってもらうということは,非常に重要です。

日本の活動に関する情報を共有することで,他ドナーと連携した,より効果的な支援が可能になりますし,それは支援対象国にとっても大きな利益となり得るからです。

ですから,当部としては,引き続き,日本の法制度整備支援活動を積極的に国際的な舞台でPRしていきたいと考えています。

最後に,今回のセッションは,大阪大学高等司法研究科名津井吉裕教授(民事訴訟法)に多大なご協力を頂いたものであり,ここで改めて感謝申し上げます。

(法務総合研究所国際協力部教官 高梨 未央)

UNDPでのセッションの様子

UNDPでのセッションの様子