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第1節 高齢者又は障害のある者等への支援等

2 保健医療・福祉サービスの利用に関する地方公共団体等との連携の強化

(1)地域福祉計画・地域医療計画における位置付け【施策番号39】

 法務省、検察庁及び厚生労働省は、地方公共団体が地方再犯防止推進計画を策定する際に、地域福祉と一体的に展開することが望ましい分野については地域福祉計画(資3-39-1参照)を積極的に活用するよう、地方再犯防止推進計画の策定等のための協議会等の機会に周知している。

資3-39-1 地域福祉計画の概要
資3-39-1 地域福祉計画の概要

 厚生労働省は、都道府県が医療計画(資3-39-2参照)を策定するに当たって参考となるように、精神疾患の医療提供体制の構築に係る指針を定めている。当該指針では、推進法において、犯罪をした薬物依存症者等に対し、適切な保健医療サービス等が提供されるよう、関係機関の体制整備を図ることが明記されている点を紹介している。なお、都道府県の第7次医療計画において、薬物依存症に対応できる医療機関を明確化するよう要請している。

資3-39-2 医療計画の概要
資3-39-2 医療計画の概要

(2)社会福祉施設等の協力の促進【施策番号40】

 障害福祉サービス事業所が矯正施設出所者や医療観察法に基づく通院医療の利用者等である障害者(以下「矯正施設出所者等である障害者」という。)を受け入れるに当たっては、①きめ細かな病状管理、②他者との交流場面における配慮、③医療機関等との連携などの手厚い専門的な対応が必要であるため、業務負担に応じた報酬を設定することが求められている。

 厚生労働省は、このような状況を踏まえ、障害者総合支援法※3において、障害のある人が共同生活する場であるグループホーム等で矯正施設出所者等である障害者に対し、地域で生活するために必要な相談援助や個別支援等を行った場合に報酬上評価している。

 加えて、2018年度(平成30年度)障害福祉サービス等報酬改定において創設した「社会生活支援特別加算」では、訓練系、就労系サービス(就労定着支援事業を除く。)事業所が精神保健福祉士等を配置している場合や病院等との連携により精神保健福祉士等が訓練系、就労系サービス事業所を訪問している場合に、矯正施設出所者等である障害者を支援していることについて、①本人や関係者からの聞き取りや経過記録・行動観察等によるアセスメントに基づき、他害行為等に至った要因を理解し、再び同様の行為に及ばないための生活環境の調整と必要な専門的支援(教育又は訓練)が組み込まれた個別支援計画等の作成、②指定医療機関や保護観察所等の関係者との調整会議の開催等、③日中活動の場における緊急時の対応等の支援を行うことを報酬上評価することとした(【施策番号22】参照)。

(3)保健医療・福祉サービスの利用に向けた手続の円滑化【施策番号41】

 身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳※4については、矯正施設在所中の者であっても交付を受けることができ、出所後も有効に利用できることとなっている。また、障害福祉サービス等については、矯正施設在所中の者に対し、出所後の障害福祉サービス等の利用を目的として、市町村の認定調査員が刑務所を訪問するなどして入所中の者に関する障害支援区分の認定を行った後に、サービス等利用計画を作成の上で障害福祉サービス等の支給決定を行っている。さらに、生活保護については、生活保護制度における保護の実施責任が要保護者の居住地(要保護者の居住事実がある場所)又は現在地により定められるとされており、要保護者が刑務所又は少年院から釈放され、又は仮釈放された者の場合、帰住先が出身世帯であるときは、その帰住地を居住地とし、そうでないときは、その帰住地を現在地とみなすこととし、その取扱いを明確に示している。

 法務省は、住民票が消除されるなどした受刑者等が、矯正施設出所後速やかに保健医療・福祉サービスを利用することができるよう、2018年度(平成30年度)、矯正施設職員向けの執務参考資料を改訂し、職員に対して住民票の取扱いを含めた保健医療・福祉サービスを利用するための手続等の周知を図った。

  1. ※3 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)
  2. ※4 療育手帳
    児童相談所又は知的障害者更生相談所において知的障害と判定された者に対して、都道府県知事又は指定都市市長(一部の児童相談所を設置する中核市市長)が交付する手帳。