
第1節 特性に応じた効果的な指導の実施
法務省は、刑事施設において、罪の大きさや犯罪被害者等の心情等を認識させるとともに、犯罪被害者等に誠意を持って対応するための方法を考えさせるため、特別改善指導(【施策番号83】参照)として被害者の視点を取り入れた教育(資5-86-1参照)を実施している(2022年度(令和4年度)の受講開始人員は530人(前年度:468人)であった)。
少年院では、全在院者に対し、被害者心情理解指導を実施している。また、特に被害者を死亡させ、又は被害者の心身に重大な影響を与えた事件を起こし、犯罪被害者や遺族に対する謝罪等について考える必要がある者に対しては、特定生活指導として、被害者の視点を取り入れた教育(資5-86-2参照)を実施しており、2022年(令和4年)は、41名(前年:48人)が修了した。これらの指導の結果は、継続的な指導の実施に向け、保護観察所に引き継いでいる。
なお、矯正施設及び保護観察所では、家庭裁判所や検察庁等から送付される処遇上の参考事項調査票等に記載されている犯罪被害者等の心情等の情報を指導に活用している。
保護観察所では、犯罪被害者等の申出に応じ、犯罪被害者等から被害に関する心情、犯罪被害者等の置かれている状況等を聴取し、保護観察対象者に伝達する制度(心情等伝達制度)を実施しており、当該対象者に対して、被害の実情を直視させ、反省や悔悟の情を深めさせる指導監督を徹底している(2022年(令和4年)中に、心情等を伝達した件数は170件(前年:182件))。また、被害者を死亡させ若しくはその身体に重大な傷害を負わせた事件又は被害者に重大な財産的損失を与えた事件による保護観察対象者に対し、しょく罪指導プログラム(資5-86-3参照)による処遇を行うとともに、犯罪被害者等の意向にも配慮して、誠実に慰謝等の措置に努めるよう指導している(2022年(令和4年)に、しょく罪指導プログラムの実施が終了した人員は373人(前年:371人))。
さらに、「第4次犯罪被害者等基本計画」(令和3年3月30日閣議決定)、「更生保護の犯罪被害者等施策の在り方を考える検討会」※24報告書、法制審議会からの諮問第103号に対する答申(【施策番号80】参照)を踏まえ、しょく罪指導プログラムの内容を充実させるとともに実施対象を拡大するなど、犯罪被害者等の思いに応える保護観察処遇の一層の充実を図っている。
加えて、一定の条件に該当する保護観察対象者を日本司法支援センター(法テラス)※25に紹介し、被害弁償等を行うための法律相談を受けさせ、又は弁護士、司法書士等を利用して犯罪被害者等との示談交渉を行うなどの法的支援を受けさせており、保護観察対象者が、犯罪被害者等の意向に配慮しながら、被害弁償等を実行するよう指導・助言を行っている。



- ※24 更生保護の犯罪被害者等施策の在り方を考える検討会
犯罪被害者等の心情等を踏まえた保護観察処遇を実現させるための方策等を検討することを目的に、2019年(平成31年)に法務省保護局長が設置した検討会であり、2020年(令和2年)に提言内容を含む報告書を取りまとめた。 - ※25 日本司法支援センター(法テラス)
国により設立された、法による紛争解決に必要な情報やサービスを提供する公的な法人。