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第1節 民間協力者の活動の促進等

4 民間の団体等の創意と工夫による再犯防止活動の促進

(1)再犯防止活動への民間資金の活用の検討【施策番号96】

 法務省は、2019年度(令和元年度)に、「再犯防止活動における民間資金を活用した成果連動型民間委託契約方式※10の案件組成のための調査研究」(【施策番号97】参照)を行った※11。同調査研究の結果も踏まえ、2021年度(令和3年度)からソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)※12により、少年院に在院している少年のうち、学習意欲のある者について、少年院在院中に学習支援計画を策定し、その出院後に継続的な学習支援を行う事業(資6-96-1参照)を開始することとしている。

 また、更生保護女性会やBBS会を始めとする更生保護関係団体は、保護観察対象者等の立ち直り支援に加え、広く地域社会の安全・安心に資するため、子ども食堂や学習支援セミナーの実施など、犯罪予防や再犯防止に関する活動を行っている。しかし、これらの取組は更生保護関係団体の自己資金や身近な関係者からの寄付を財源としていることが多く、継続が困難である場合も少なくない。そこで、法務省は、2019年度に、不特定多数の人々からインターネット経由で必要な資金や協力を調達するクラウドファンディングを活用した民間資金調達に関する実践研究を行い、更生保護関係団体による効果的な民間資金の活用、更には更生保護や再犯防止の取組に対する国民の理解促進を図ることを目的とした実践マニュアルを作成した(資6-96-2参照)。さらに、BBS会員に対しては、クラウドファンディングをより身近に感じてもらうために、クラウドファンディングに挑戦したBBS会員が出演する教材動画をBBS会の各種研修用に作成した。その結果、2021年3月末までに、4つのBBS連盟又はBBS会、3つの更生保護法人、1つの更生保護女性連盟がクラウドファンディングに挑戦した。

 さらに、2020年(令和2年)8月には、更生保護法人日本更生保護協会において、「立ち直り応援基金」が創設された。これは、民間資金を活用する方策の一つとして、犯罪や非行からの立ち直り支援に賛同する個人・企業・団体等から、インターネット等を通じて広く寄附を集め、集められた寄附金を、全国で行われている草の根の立ち直り支援活動に助成する仕組みであり、法務省がその広報を担っている(詳細について、【コラム9】参照)。

資6-96-1 再犯防止分野におけるSIB事業について
資6-96-1 再犯防止分野におけるSIB事業について
資6-96-2 更生保護関係団体のためのクラウドファンディング実践マニュアルの概要
資6-96-2 更生保護関係団体のためのクラウドファンディング実践マニュアルの概要

COLUMN9 立ち直れる。その思いをツナグ~立ち直り応援基金の創設~立ち直り応援基金のqr

法務省保護局

 2020年(令和2年)8月、更生保護法人日本更生保護協会において、「立ち直り応援基金」が創設されました。この基金は、犯罪や非行からの立ち直りに賛同する、個人・企業・団体等からインターネット等を通じて広く寄附を集め、集めた寄附金を、全国の草の根の立ち直り支援活動に助成するものです。日本更生保護協会が運営を行い、法務省保護局が広報を担う、という役割分担で実施しています。

1 創設の経緯

 「再犯防止推進計画」(平成29年12月15日閣議決定)や、「再犯防止推進計画加速化プラン」(令和元年12月23日犯罪対策閣僚会議決定)においては、更生保護に携わる民間協力者の活動基盤をより強固なものとするため、クラウドファンディングや基金等を含め、民間資金の活用を促進していくこととされています。その背景には、犯罪や非行からの立ち直りを支援する民間協力者の財政基盤の脆弱さがあり、その活動の多くにおいて、関係者の熱意によるところが大きいことが挙げられます。

2 立ち直り応援基金の仕組み

 これらのことを受けて創設されたのが、「立ち直り応援基金」です。インターネットを通じて誰もが一口1,000円から参加することができる、最も身近な立ち直り支援のカタチです。現在、日本では、コロナ禍の影響もあり、様々な募金やクラウドファンディングが行われ、かつてないほど寄附の機運が高まっていますが、その中でも、「犯罪や非行からの立ち直り」を一つの社会的価値とし、その価値への賛同を募る立ち直り応援基金は、大きな挑戦であると考えています。寄附募集の取組を通じて、これまで更生保護とのつながりが少なかった個人や企業等と一緒に取り組んでいく雰囲気が生まれることが期待されます。写真にありますとおり、賛同を募る方法においても、食堂での寄附メニューの展開や、寄附型自動販売機の設置等、創意工夫を凝らした多様な取組に挑んでいます。

 そして、集めた寄附金は、全国各地の立ち直りに資する居場所づくりの活動や、更生保護に携わる草の根の活動に助成されます。助成により安定した基盤において、民間協力者が安心して活動に臨むことができるようになれば、そこから新たな着想に基づく活動や、これまでにはなかった新たな連携等が生まれてくることも期待されます。

3 立ち直り応援基金のホームページ

 本基金のホームページは、独立行政法人福祉医療機構の御協力により、福祉・保健・医療の総合情報サイトである「WAM NET」に掲載されています。サイトを開いてクリックしていくことにより、一口1,000円からクレジットカード決済で寄附をすることが可能です。

4 未来に向けて、持続可能な「立ち直り支援」を

 2021年度(令和3年度)に2年目を迎えた立ち直り応援基金は、その取組をますます充実させるとともに、より多くの企業・個人・団体等とパートナーシップを結び、草の根の立ち直り支援活動を、持続可能なものとして未来につないでいけるよう、チャレンジを続けてまいります。新たな被害者も、新たな加害者も生まない社会づくりを担っている全国の民間協力者の活動に賛同してくださる皆さま、「立ち直り応援基金」への御賛同と応援を、どうぞよろしくお願い申し上げます。

法務省の省内に寄附型自動販売機を設置
法務省の食堂にて寄附メニュー「立ち直り応援カレー」を提供

(2)社会的成果(インパクト)評価に関する調査研究【施策番号97】

 法務省は、2019年度(令和元年度)に実施した、「再犯防止活動における民間資金を活用した成果連動型民間委託契約方式の案件組成のための調査研究」において、社会的成果(インパクト)※13を含む成果指標やその評価方法についても検討を行い、その調査研究結果の報告を公表した(【施策番号96】参照)。

 また、「成果連動型民間委託契約方式の推進に関するアクションプラン」(2020年(令和2年)3月成果連動型民間委託契約方式の推進に関する関係府省庁連絡会議決定)(資6-97-1参照)において、再犯防止を含む3分野が重点分野とされたことも踏まえ、法務省では、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)を活用した再犯防止事業(【施策番号96】参照)を実施するとともに、地方公共団体が再犯防止分野で同様のスキームを活用する際にいかすことができるよう、前記事業を通じて得られる知見を蓄積・共有することとしている。

資6-97-1 成果連動型民間委託契約方式アクションプランの概要
資6-97-1 成果連動型民間委託契約方式アクションプランの概要
  1. ※10 成果連動型民間委託契約方式(Pay For Success、PFS)
    国又は地方公共団体が、民間事業者に委託等して実施させる事業のうち、その事業により解決を目指す行政課題に対応した成果指標が設定され、地方公共団体等が当該行政課題の解決のためにその事業を民間事業者に委託等した際に支払う額等が、当該成果指標の改善状況に連動する方式。
  2. ※11 「再犯防止活動における民間資金を活用した成果連動型民間委託契約方式の案件組成のための調査研究に係るコンサルティング業務調査等結果報告書」URL(http://www.moj.go.jp/content/001318667.pdf「再犯防止活動における民間資金を活用した成果連動型民間委託契約方式の案件組成のための調査研究に係るコンサルティング業務調査等結果報告書」URLのqr
  3. ※12 ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)
    PFSの一類型であり、PFS事業を受託した民間事業者が当該事業に係る資金調達を金融機関等の資金提供者から行うもの。
  4. ※13 社会的成果(インパクト)
    事業や活動の結果として生じた、社会的・環境的な変化や効果。