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第3節 京都コングレスの成果と今後の展望

1 京都コングレスの成果展開(レガシー)における3つの取組

 1つ目は、世界各国の再犯防止施策の推進のための国連準則の策定である。

 京都宣言においては、再犯防止に関する詳細な記載が設けられ、再犯防止に関する各国の関心の高さが明確となった。

 この分野は、再犯防止推進計画を策定し、官民連携やマルチステークホルダー・パートナーシップにより就労支援等を含む再犯防止に取り組む我が国の知見を生かせる分野である。

 また、これまで刑事司法分野においては、国連被拘禁者処遇最低基準規則(通称「マンデラ・ルールズ」)や非拘禁措置のための国連最低基準規則(「通称「東京ルールズ」)のほか多数の国連準則が定められ、各国における立法や政策立案の際に参照されてきたところである。

 そこで、京都コングレスの成果として、再犯防止に関する国連準則である「再犯防止国連準則」(通称「京都モデルストラテジー(仮称)」)を策定し、さらに、京都コングレスで再犯防止についてのワークショップを運営したアジ研においてこの準則を活用した研修を行うなどして、アジア・アフリカ等の途上国における再犯防止関連施策の充実に貢献することを目指すこととしている。

 2つ目の成果展開の取組は、ユースフォーラムの定期開催である。

 京都コングレスの約1週間前、我が国はコングレスの関連イベントとして京都コングレス・ユースフォーラムを開催した。同フォーラムには35の国と地域から約150名が参加し、同フォーラムでの議論の結果として採択された「勧告」は、京都コングレス初日に国連に提出された。また、京都宣言においては、犯罪防止の取組を支援するため、ユースフォーラムを開催するなどして、若者のエンパワーメントに努めるべきことが指摘された。

 そこで、ユースフォーラムをコングレス後も毎年開催することにより、国内外における若者の国際感覚を養い、将来につながる若者のパートナーシップを築く機会を提供するともに、法の支配に根ざしたリーガルマインドを有する人材の育成・確保に取り組み、更には司法分野における国際分野に対する若者の関心を喚起していくこととしている。

 2021年度(令和3年度)には、東京国際フォーラムにおいて、「第1回法遵守の文化のためのグローバルユースフォーラム(The 1st Global Youth Forum for a Culture of Lawfulness)」を開催する予定である。

 全体テーマは、多様性と包摂性のある社会に向けた若者の役割(The role of youth in achieving a diverse and inclusive society)、2つある分科会のテーマはそれぞれ、成年年齢に達することと社会への参画(Reaching the age of adulthood and participation in society)とコロナ後の犯罪防止・刑事司法(包摂的社会の実現に向けた若者の役割)(Crime prevention and criminal justice in the post-COVID-19 world – youth participation in achieving an inclusive society)で、国内外の学生等約120人程度の参加を見込んでいる。

 3つ目の成果展開の取組は、国際協力の促進のための実務家ネットワークの創設である。

 京都宣言では、刑事に関する国際協力の一層の促進が宣言された。

 しかしながら、我が国が属するアジア太平洋地域においては、捜査共助の制度・運用に対する各国相互の理解不足により、十分な国際協力ができているとは言い難い状況にある。

 また、我が国が積極的に進めている東南アジア諸国における刑事司法分野の技術支援についても、効率的な国際協力を推進するため、他の支援国との情報共有や意見交換を実施することが極めて有効である。

 そこで、アジア太平洋地域において司法当局のプラットフォームを新たに構築し、司法関係者等が、刑事共助に関する情報共有・意見交換や、国際協力(技術支援)を行う上で相手国の真の問題に対処するための情報交換を行うための場を提供したいと考えている。

 2022年(令和4年)2月14日及び15日には、東京都内において、「第1回アジア太平洋刑事司法フォーラム(The 1st Criminal Justice Forum for Asia and the Pacific)」を実施することを計画しており、国連や各国とそのテーマや議論の進め方等について協議・調整を開始したところである。

 今後、京都コングレスを新たな出発点と捉え、その成果展開を通じて、国際社会における法の支配の確立を目指す「司法外交」を次のステージに進めていきたい。