コラム
シリア反政府派におけるイスラム過激組織などの動向
米国国防総省情報局副長官は,シリア国内に約1,200の反政府組織が存在すると指摘した(注1)。これら組織の多くは,シリア軍からの離反者を指導者として2011年7月に創設された統一武装組織「自由シリア軍」(FSA)に加盟しているとされる。
FSAに加盟していない反政府組織の間では,厳格なイスラム法の施行などを掲げるイスラム過激組織が勢力を伸長させている。特に,「イラクのアルカイダ」(AQI)(注2)や,AQIのシリアにおける分派組織として結成された「ヌスラ戦線」(注3)といった「アルカイダ」に忠誠を誓う組織は,FSA加盟組織などと共闘しつつ,その高い士気と結束力で,政府軍に対する自爆攻撃を活発化させるなど,戦闘において主導的な役割を担っているとみられる。また,これら過激組織は,シリア北部の広範な地域を支配下に置き,北アフリカや他の中東諸国から流入した外国人戦闘員(注4)の受け皿となってきたとされる。
AQIは,本年4月の声明で,「ヌスラ戦線」の統合を一方的に宣言したものの,分派組織としての形態維持を求める「ヌスラ戦線」側から拒絶を受けたとされる。しかし,AQIは,7月以降,「イラク・レバント(注5)のイスラム国」(ISIL)の名称を声明等で用い始め,「ヌスラ戦線」と連携する別組織という形で,シリア国内でも活動しているとされる。また,最近,AQIは,FSAとの間で,支配地をめぐり衝突するようになってきた。特に,同国北部のアレッポ県では,検問所の支配権などをめぐりFSAとの間で戦闘を交えた(本年7月)ほか,FSAの支配下にある町を襲撃・占拠(本年9月)するなどしている。
一方,シリア北部のクルド人居住地域では,「クルド労働者党」(PKK)(注6)のシリアにおける分派組織「民主連合党」(PYD)が,同地域を事実上の支配下に置いている。PYDは,同地域での自治権の確立を企図した活動を展開し,本年7月には,独自の議会や憲法を有する自治政府構想を発表した。また,PYDは,政府軍と散発的な衝突を続けているものの,FSAやイスラム過激組織への協力には消極的な姿勢を示しているほか,同国北部では,AQIなどとの間で戦闘(7月)も発生している。