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オウム真理教の歴史
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1. 誕生
団体の教義は、原始仏教など各種宗教を混交した独自のもので、麻原彰晃こと松本智津夫が発する言葉、すなわち麻原の説法がそのまま教義として扱われている。その教えは独善的かつ暴力的であり、麻原の生い立ちから派生した個人的資質が大きく影響している。
麻原は、1955年3月2日に熊本県八代郡金剛村に生まれ、県立盲学校を卒業後、大学受験の失敗を経て東京や熊本県内を転々とする生活を送る中、結婚し、二男四女をもうけた。
麻原は、結婚を契機に千葉県船橋市に薬局を開業したものの、1982年6月に薬事法違反で逮捕され、その経営が頓挫する。こうした中、1983年夏頃までに自らを「麻原彰晃」と名乗り、学齢期の者を対象にした能力開発教室を立ち上げ、1984年2月に同教室を「オウム神仙の会」と名称を改めてヨーガ道場とした。 -
2. 急拡大
「オウム神仙の会」は、折からのオカルトブームに便乗して、「空中浮揚」などと称した写真を雑誌等に売り込み、構成員数を増加させた。その後、出家制度を取り入れるとともに、布教活動や麻原の著書の販売活動に取り組み、支部の開設を進めた。1987年7月には、組織の名称を「オウム真理教」に改め、麻原の呼称も「麻原先生」又は「麻原大師」から「グル」へと変遷するなど、麻原の絶対性が徐々に強まった。団体は、その後も入会者を増やし続け、真理に基づいた生活をする「ロータス・ヴィレッジ構想」の設立をうたった「日本シャンバラ化計画」(理想郷建設計画)を進めるため、静岡・山梨両県下に「サティアン」と称する大規模な出家した構成員の活動拠点兼居住施設を複数建設したほか、国内及び海外に本支部・道場等30施設以上確保し、1993年3月頃には、組織勢力が約1万人となった。
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3. 先鋭化
団体は、1990年2月の衆院選で惨敗(麻原を含め25人全員落選)したことを契機に、反社会的傾向を強めた。その後、政治力による目的実現から武力による目的実現への戦術転換を図り、ホスゲン、VX、サリン等の化学兵器や自動小銃を大量製造するための大規模な施設を建設し、その研究・開発及び製造に着手するなど、大掛かりな武装化を推進した。麻原は、「武力による世界支配」を説く教えに基づき、その障害となるあらゆる勢力を排除・抹消するとの方針の下、1990年3月頃、ボツリヌス菌、炭疽菌等の生物兵器の研究・開発にも着手した。
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4. 無差別大量殺人等の実行
団体は、1989年以降、麻原の指示に基づき、複数の構成員や、脱会の支援を行っていた弁護士一家らを殺害した。こうした殺人は麻原が確立した殺人を肯定する「ポア」の概念や教義「タントラ・ヴァジラヤーナ(秘密金剛乗)」などに基づき行われたもので、団体の武装化と歩調を合わせるように、無差別大量殺人行為である松本・地下鉄両サリン事件等の多数の凶悪事件を引き起こしていった。
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1955.3.2麻原彰晃こと松本智津夫、熊本県八代郡金剛村で出生
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1978.1.7麻原、婚姻届出、船橋市の自宅で「松本鍼灸院」を開業
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1978.9麻原、船橋市に「亜細亜堂」を開業
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1982.7.13麻原、薬事法違反で罰金20万円の略式命令(東京簡裁)
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1984.2.14「オウム神仙の会」設立
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1986.8麻原、最終解脱を自称
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1986.9サンガ制度(出家制度)を導入
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1987.1. 4麻原、グルが指示する殺人の正当化(ポア)を説く
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1987.7「オウム神仙の会」を「オウム真理教」に改称
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1987.11
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1987.12.12麻原、タントラヤーナについて説く
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1988.6麻原、「日本シャンバラ化計画」を提唱
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1988.8〜9麻原、タントラ・ヴァジラヤーナの教えを説く
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1989.2
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1989.4
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1989.4.7
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1989.4.25麻原、日本のオウム真理教化を説く
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1989.6.22オウム真理教被害対策弁護団発足
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(提供:竹内精一氏) -
1989.8.25東京都、オウム真理教を宗教法人として認可
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1989.8.29宗教法人「オウム真理教」設立登記
麻原、修行者による政治の必要性を説く -
1989.10.21オウム真理教被害者の会発足
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1989.11.4
(提供:「坂本弁護士と家族を救う全国弁護士の会」) -
1990.2.7
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1990.2.18
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1990.3上旬ボツリヌス菌の培養実験を開始
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1990.4頃麻原、選挙では救済できないとして、全世界にボツリヌス菌をまいてポアする旨説く
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(提供:竹内精一氏) -
1990.9毒ガス・ホスゲンの製造開始
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(提供:竹内精一氏) -
1992.3麻原、ロシアでロボフ大統領諮問委員会議長、ルツコイ副大統領、ハズブラートフ最高会議議長と会談
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1992.4.1ロシアで「エウアンゲリオン・テス・バシレイアス」のラジオ放送を開始
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1992.9
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1992.9.27麻原、1997年から2001年のハルマゲドン勃発を説く
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1993.2旧ソ連製自動小銃「AK-74」の部品を持ち込む
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1993.3
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1993.3.20麻原、ハルマゲドンの勃発を1997年に繰り上げる
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1993.3.28麻原、生物・化学兵器・核兵器、千年王国への道に言及
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1993.4.8麻原、戦うことの必要を説く
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1993.4.9麻原、サリンに初めて言及
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1993.6上旬構成員死体損壊事件
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1993.6東京・亀戸道場から炭疽菌噴霧
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1993.6麻原、毒ガス・サリン製造指示
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1993.7東京・亀戸道場から炭疽菌噴霧
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1993.8少量の毒ガス・サリンの製造に成功
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(提供:竹内精一氏) -
1993.11中旬宗教団体関係者の関連施設周辺にサリンを噴霧
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1993.12旧ソ連製ヘリコプター「ミル17」購入
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1993.12中旬宗教団体関係者の関連施設周辺にサリンを噴霧
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1994.1.30
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1994.3毒ガス・ソマン約10gを製造
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1994.3.11麻原、国家に対する戦闘宣言
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1994.3.26麻原、毒ガス・ソマン、サリン、VX等に言及
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1994.3.27麻原、五仏の法則(結果のためには手段を選ばない、真理のためなら他人の財産を奪っても良い等)を説く
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1994.3.28旅館経営者拉致監禁事件
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1994.5.9
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1994.6毒ガス・イペリット約50gを製造
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1994.6.26
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1994.6.27
松本サリン事件で使用されたサリン噴霧車(1995.2.28)
(提供:竹内精一氏) -
1994.7.10頃
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1994.9上旬毒ガス・VX約20gを製造
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1994.12.2
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1994.12.12
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1994.12下旬〜1995.1.1
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1995.1.1読売新聞が、オウム真理教の上九施設の土壌からサリン生成時の残留物質が検出された旨報道
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1995.1.4
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1995.2.28〜3.4
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1995.3.15地下鉄霞ケ関駅構内異臭事件
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1995.3.19東京総本部火炎びん投てき事件
宗教評論家宅爆発物取締罰則違反事件 -
1995.3.20
(提供:東京地下鉄株式会社) -
(提供:竹内精一氏) -
1995.3.30化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律が成立
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1995.4.18ロシア・オスタンキノ地区裁判所、オウム真理教の活動禁止を決定
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1995.4.19サリン等による人身被害の防止に関する法律が成立
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1995.4.23幹部構成員・村井秀夫刺殺事件(翌24日死亡)
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1995.5.5新宿駅青酸ガス事件
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1995.5.16麻原逮捕
東京都庁爆発物取締罰則違反事件 -
1995.7.4新宿駅・茅場町駅青酸ガス事件
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1995.10.7上祐史浩、国土利用計画法違反事件に係る有印私文書偽造等の容疑で逮捕
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1995.10.30東京地裁、宗教法人法に基づくオウム真理教の解散命令を決定
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1995.12.20公安調査庁、破防法に基づく弁明手続の開始を官報公示
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1995.12.21「宗教法人オウム真理教」解散登記
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1996.3.28東京地裁、オウム真理教の破産を宣告
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1996.4.24麻原初公判(東京地裁)
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1996.7.11公安調査庁、破防法に基づくオウム真理教の解散指定処分を公安審査委員会に請求
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1996.10富士山総本部閉鎖
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1996.11上九施設閉鎖
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1997.1.31公安審査委員会、オウム真理教に対する解散指定処分請求を棄却
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1998.4.17オウム真理教に係る破産手続における国の債権に関する特例に関する法律が成立
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1999.4.12オウム真理教対策関係市町村連絡会発足
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1999.12.3無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(団体規制法)が成立
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1999.12.27団体規制法施行
公安調査庁、観察処分を請求 -
2000.1.28公安審査委員会、団体規制法に基づくオウム真理教に対する観察処分を決定
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2004.2.27東京地裁、麻原彰晃に死刑判決
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2006.9.15最高裁、麻原の特別抗告棄却、死刑判決が確定
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2008.6.11オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律が成立
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2018.1.25最高裁、地下鉄サリン事件など5事件で殺人の罪等に問われ、上告を棄却された元幹部構成員の異議申立てを退ける決定。無期懲役とした一、二審判決が26日までに確定し、オウム真理教による一連の事件の刑事裁判が全て終結
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2018.7.6法務省、死刑確定者・麻原彰晃(松本智津夫)ら7人※の死刑を執行※他の6人は、土谷正実、遠藤誠一、井上嘉浩、新實智光、中川智正、早川紀代秀
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2018.7.26法務省、死刑確定者6人※の死刑を執行※6人は、林泰男、端本悟、廣瀬健一、豊田亨、横山真人、岡﨑一明(氏名はいずれも事件当時のもの)