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タントラ・ヴァジラヤーナ
殺人を肯定する麻原独自の教義麻原が、タントラ(密教の教え)とヴァジラヤーナ(ヒンドゥー教の教え)を組み合わせた独自のもので、最終目標(「絶対自由・絶対幸福・絶対歓喜の世界」)に至るための最短最速の教えとされる。その実践のためには、麻原と全く同じものの考え方、同じものの見方ができるようになることが求められ、「マハームドラー」の修行(麻原の指示に抵抗感なく従うこと)として、構成員に殺人等の非合法活動が指示された。
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ポア(ポワ)
麻原が殺人を指示する際に使用した言葉ポア(ポワ)とは、チベット密教において、「いつ死が訪れても動ずることなく、確実に心(意識)を身体からぬきだして、より高い状態へと移し変える身体技法」(『虹の階悌 チベット密教の瞑想修行』(平河出版社、1981年7月10日発行))とされる。麻原は、この教義を転用し、ある人物が、これ以上悪業を積み、地獄に落ちてしまわないよう、より高い世界へ生まれ変わらせるとして、ポア(ポワ)という言葉を殺害を指示する時に使用した。
(提供:公益財団法人国際宗教研究所宗教情報リサーチセンター・井上順孝氏) -
五仏の法則
非合法活動を正当化した麻原独自の解釈麻原が、仏教の中心的な存在である「五仏」が持つ本来の意味合いを曲解した法則。「アモーガシッディの法則」は結果のためには手段を選ばないとする法則、「アクショーブヤの法則」は悪業を積む者は早く命を絶つべきとする法則、などと説き、構成員に課した殺人等の非合法活動を正当化するために利用した。
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1万1,400人
国内の最盛期の構成員数(地下鉄サリン事件当時)麻原は、1985年10月頃、オカルト雑誌に自己が蓮華座を組んで空中に浮いているように見える写真と空中浮揚に至るまでの修行法を掲載させ、1986年3月頃には、『超能力「秘密の開発法」』と題する書籍を出版し、その中で「だれでもこの方法で修行すれば超能力者になれる。既に私の指導を受けている人たちはこの方法で着実に力を付けている」などと説いた。これらにより、麻原の説く内容を信じ、超能力を身につけたい、あるいは悟り、解脱の境地に達したいと考え、オウム真理教の前身である「オウム神仙の会」へ入会する者が次第に増えていった。また、麻原の説法等を掲載した機関誌紙において、終末思想やフリーメーソンなどに関する陰謀論を取り入れた特異な主義・主張を展開し、こうした陰謀論や終末論に興味を抱く読者を引きつけた。
こうして、種々の布教活動を通じて、超能力や死後の世界、解脱、悟り等に関心を寄せ、あるいは、現代社会に不安や不満を持ち、麻原の説く人類救済計画に惹かれる若者を勧誘・入信させ、地下鉄サリン事件を引き起こした1995年3月頃の国内の構成員は、出家した構成員約1,400人、在家の構成員約1万人の計約1万1,400人となった。麻原が「空中浮揚」したとする写真を表紙とした自著「超能力「秘密の開発法」すべてが思いのままになる!増補版」(大和出版、1987年10月25日発行) -
35か所
最盛期の国内における拠点施設の設置数(地下鉄サリン事件当時)団体は、「日本シャンバラ化計画」(真理を背景とした理想郷(シャンバラ)を日本全国に築き、日本を世界救済の拠点にする、との計画)に基づき、順次、全国各地に本支部・道場等の拠点施設を確保し、その数は35に及んだ。また、こうした団体施設の拡大は、国内にとどまらず、1987年11月、アメリカ・ニューヨークに支部を開設したのを始め、ドイツ・ボンなど4か国にも支部が開設された。
工事中の第一上九(提供:竹内精一氏) -
5段階
基本的な位階の数団体は、1987年4月に位階制度を創設し、当初、出家した構成員を「大師」と「サマナ」に分類していたところ、出家した構成員の増加に伴い、1988年11月に「師」を加えたり、1990年に「大師」を「正大師」と「正悟師」に分類したりした。地下鉄サリン事件当時には、最終解脱者とされる麻原を頂点に、上から「正大師」、「正悟師」、「師」、「師補など」、「サマナ長・サマナ・サマナ見習」の5段階に大別されることになった。こうした麻原を頂点とする上命下服の組織構造により、構成員の統制を行った。
オウム真理教の位階制度 -
3万人
修行中の構成員(提供:公益財団法人国際宗教研究所宗教情報リサーチセンター・井上順孝氏) 人類救済計画のために目標にしていた成就者(幹部構成員)の数麻原は、1987年7月16日、世田谷道場において、「オウムの救済活動とは、まずは真解脱者を3万人出すことだ。そして、3万人が世界に散ったならば、そのエネルギーによって、例えば核兵器を持つことが無意味になる。そして真理は一つになるはずだ。そうなったら核戦争が起きることはない」などと、核戦争の可能性について不安をあおりながら、オウムによる人類救済を説き、出家した構成員の増員に取り組んだ。
団体の出家制度は、麻原に生涯にわたって心身及び自己の全財産を委ね、肉親、友人、知人等との直接及び間接の接触など現世における一切の関わりを断つことであるとされ、団体への出家手続の際には、「出家中は団体に迷惑を掛けない。親族とは絶縁する。損害を与えた場合には一切の責任を取る。全ての遺産、財産は教団に寄贈する。葬儀等は麻原が執り行う。事故等で意識不明になったときはその処置を麻原に任す。慰謝料、損害賠償も全て麻原に任す」という趣旨の誓約書、遺言書等を見本を見て書くように指導された。
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30万回
グルへの帰依を誓う「帰依マントラ(真言)」を唱える回数の目標団体は、マントラ(真言)を「神々の発するヴァイブレーション(声などの震動)を自分自身が発することによって神々と合一する特殊なヴァイブレーションの音」として、構成員にマントラの唱和を義務づけている。出家・在家の別、構成員の位階によって、唱和の時間、回数が異なっているほか、マントラについては、「帰依マントラ」、「苦の詞章」、「大乗の発願」、「ザンゲの詞章」など、少なくとも十数種類があり、そのうち、グルへの帰依を誓う代表的な「帰依マントラ」は、30万回唱和するよう指導されている。
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600時間
グルに対する信と帰依を培うための立位礼拝を行う時間の目標立位礼拝は、「オウムグルとシヴァ大神に帰依し奉ります。わたくし●●(氏名)を、解脱へとお導きください」と唱えながら、蓮華の花を象った手印を頭頂部から臀部(でんぶ)にかけて順番に降ろしていき五体投地(両手、両膝、額の五体を地に付ける)することを繰り返す修行で、団体は600時間を目標に実施するよう指導している。
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100万円
PSIを受けるための修行器具(通称ヘッドギア)の値段パーフェクト・サーヴェーション・イニシエーション(PSI)は、麻原と同じ瞑想状態を作るために、1993年12月頃に開発されたもので、構成員の頭に被らせるヘッドギアの電極を通じて麻原の脳波を電流化したとされるものを構成員の頭部に流すイニシエーション(秘儀伝授)。構成員は、同イニシエーションを日常的に受けるため、頭部に修行器具(通称ヘッドギア)を装着しており、同修行器具の値段が100万円である。なお、開発当時には、100万円でリースされ、1,000万円で販売されていた。
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20社
団体が当時運営していた収益事業の数団体は、麻原を始め幹部構成員を役員に就任させるなどして、「株式会社オウム」など20の収益事業を営み、多額の事業収益を獲得した。 このうち、とりわけ「株式会社マハーポーシャ」は、パソコンショップ、飲食店及びディスカウントショップを経営するなど、団体が武装化を推進するための重要な資金源となっていた。
団体が運営していた飲食店(1階)とPCショップ(2階)(京都市) 団体が運営していた弁当屋のチラシ(提供:滝本太郎弁護士) -
25人
衆議院総選挙に出馬した構成員数団体は、1989年8月16日、自治大臣及び東京都選挙管理委員会に対し、政治団体「真理党」の設立に係る書類を提出し、これを選挙母体として、1990年2月18日執行の第39回衆議院議員総選挙に、麻原以下幹部構成員25人を首都圏の18選挙区から立候補させた。選挙結果は、東京都第4区から出馬した麻原ですら1,783票という惨敗であったことから、麻原は、得票計算で不正が行われたなどと弁解した。
その後、麻原は、同年4月頃、幹部構成員らに対して、「今回の選挙はテストケースであった。現代人は生きながらにして悪業を積むから、全世界にボツリヌス菌をまいてポアする」などと述べ、反権力志向を強めるとともに、武装化を推進させていくことになった。(提供 朝日新聞社) 麻原を始めとする立候補した主な幹部構成員の得票数等麻原を始めとする立候補した主な幹部構成員の得票数等 ※図はタッチして横移動できます。 -
24省庁
省庁制導入の際の省庁数麻原は、将来における国家の組織運営を想定し、1994年6月頃、我が国の行政機関を模倣した省庁制の導入を決定し、団体内に24の省庁を設置した。そして、自らを「神聖法皇」と称して、高位階の構成員を各省庁の大臣・次官に任命した上で、麻原を頂点とするピラミッド型の階層組織を確立した。同年6月26日深夜から同月27日未明にかけて開催された省庁制の発足式には、各省庁の大臣・次官に任命された約100人の構成員が出席し、麻原の前で決意表明などをした。
オウム真理教の組織図オウム真理教が導入した省庁制(1994年6月頃) ※図はタッチして横移動できます。 -
1,000丁
麻原が製造を指示した自動小銃の数麻原は、ロシア製自動小銃「AK-74」を模倣した自動小銃1,000丁を製造するよう指示した。1994年6月下旬頃から1995年3月21日頃までの間、山梨県西八代郡上九一色村所在の第11サティアン及び山梨県南巨摩郡富沢町所在の団体施設において、自動小銃1丁を完成させたものの、同月22日、各施設が捜査機関による捜索を受けるなどしたため、製造は中止された。
(提供 朝日新聞社) -
70トン
麻原が製造を指示したサリンの量麻原は、70トンのサリンを東京に散布して首都を壊滅させ、国家権力を打倒して日本にオウム国家を建設し、自らその王となってこれを支配することをもくろみ、1993年8月末から9月初め頃、構成員に対して、サリン70トンの製造能力を有するサリンプラントを建設するよう指示した。なお、松本サリン事件では、サリン噴霧車に設置された3個のタンクにサリンを約4リットルずつ合計約12リットルのサリンが使用され、地下鉄サリン事件では、約5リットルないし6リットルのサリン混合液が使用された。
第7サティアン内部のサリンプラント(提供:竹内精一氏) -
1994年6月27日
松本サリン事件麻原の指示を受けた幹部構成員らが、長野県松本市北深志所在の駐車場において、サリン噴霧車に設置した加熱式噴霧装置を作動させてサリンを加熱し気化させた上、大型送風扇を用いてこれを周辺に散布した。そして、8人をサリン中毒で殺害し、約140人※にサリン中毒症の傷害を負わせた。
※オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律に基づく給付金支給に当たり、2010年3月までに認定された数
松本サリン事件で使用されたサリン噴霧車(提供:竹内精一氏) -
1995年3月20日
地下鉄サリン事件麻原の指示を受けた幹部構成員らが、サリンを散布して不特定多数の乗客らを殺害する目的で、東京都千代田区の営団地下鉄霞ケ関駅に向かう日比谷線、千代田線及び丸ノ内線の各車両内において、先端をとがらせた傘でサリン入りビニール袋を突き刺し、サリンを流出気化させて散布し、乗客ら13人をサリン中毒により殺害し、5,800人以上※にサリン中毒症の傷害を負わせた。なお、2020年3月、25年にわたる闘病生活の末、サリン後遺症により更に1人が逝去した。
※オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律に基づく給付金支給に当たり、2010年3月までに認定された数
(提供:東京消防庁) -
13件
麻原が有罪判決を受けた事件数検察庁は、麻原を17の事件で起訴したが、裁判の迅速化のため、薬事法違反事件、LSD製造事件、メスカリン製造事件及び覚醒剤製造事件の4件は起訴を取り消し、計13件について審理された。そして、2004年2月27日、東京地裁は、「本件罪質、犯行の回数・規模、その動機・目的、経緯、態様、結果の重大性、社会に与えた影響、被害感情等からすると、本件一連の犯行の淵源であり首謀者である被告人(麻原)の刑事責任は極めて重大であり、被告人のために酌むべき上記の事情(弱視など)その他一切の事情をできる限り考慮し、かつ、極刑の選択に当たっては最大限慎重な態度で臨むべきであることを考慮しても、被告人に対しては死刑をもって臨む以外に途はない」として、死刑判決を下した。
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約10億4,100万円
破産法に基づく破産宣告の決定における団体資産破産法に基づく破産宣告の決定(1996年3月28日、東京地裁による破産宣告。同年5月確定)により、団体の財産は、東京地裁が選任した破産管財人により管理され、同時に全国の施設が破産管財人の手により閉鎖された。その後、破産管財人による手続きの下、団体資産総額約10億4,100万円、一連の事件被害者からの損害賠償請求等の負債総額51億9,900万円が確定した。
破産管財人が管理する第7サティアン内部のサリンプラント(提供:竹内精一氏) -
13人
団体による一連の凶悪事件に関与して死刑執行された人数団体による一連の凶悪事件に関与し、死刑判決が確定した幹部構成員は麻原を始め13人。法務省は、2018年7月6日に松本智津夫(麻原彰晃)、土谷正実、遠藤誠一、井上嘉浩、新實智光、中川智正、早川紀代秀の7人、同月26日に林泰男、端本悟、廣瀬健一、豊田亨、横山真人、岡﨑一明の6人に対する死刑を執行した。
※氏名はいずれも事件当時のもの。