• アジ研(UNAFEI)による国際貢献−フィリピンにおけるGGセミナーを例として−

UNAFEIロゴ
UNAFEIロゴ

アジ研ってなんですか。

アジ研は,国連と日本政府の協定によって設置された刑事司法分野の様々な問題を取り扱う国際研修・研究機関です。正式名称は『国連アジア極東犯罪防止研修所』といい,海外では,その英語表記の略称であるUNAFEI(ユナフェイ)という名前で親しまれています。国連の「犯罪防止刑事司法プログラム」に協力する機関をプログラム・ネットワーク機関(PNI)と呼んでいますが,昭和37年設立のアジ研は,世界各地のPNIの中で最も長い歴史と実績を有しています。


アジ研の施設(東京都府中市)
アジ研の施設(東京都府中市)

アジ研の教官とスタッフは,すべて日本政府の職員で,裁判官,検察官,矯正職員,保護観察官などから選ばれています。また,アジ研は,国際会議場,図書室,セミナー室,宿泊施設(30室)等の設備を備えており,アジア・太平洋地域をはじめ,アフリカ,中南米等世界各国から来日した裁判官,検察官,警察官,矯正・保護職員などの実務家に対し,研修・セミナーを行っています。


アジ研の研修・セミナーについて教えてください。

アジ研は,東京都府中市の本部施設において,毎年4回,多数の国から参加者を得て国際研修・セミナーを実施しています。また,中国や中央アジアなど特定の国又は地域からの参加者を対象とする国別・地域別研修も実施しています。数週間にわたる研修期間中,参加者はアジ研に滞在し,文字どおり同じ釜の飯を食べながら課題に取り組み,共に学びます。

さらに,アジ研の教官やスタッフが海外に出張し,現地で研修やセミナーを実施することもあります。

これらの研修やセミナーでは,犯罪者の適切な処遇,汚職対策,国際組織犯罪対策等といった国連の重要施策を踏まえて,毎回,その時々にふさわしい重要なトピックを取り上げるとともに,教官や外部講師による講義,研修参加者による発表,討論,更には刑務所等の見学などのプログラムを組み合わせて,成果が上がるように工夫しています。

アジ研の研修・セミナーには,これまで130の国と地域から4,200人以上が参加しており(平成22年3月31日現在。日本人参加者を含みます。),アジ研卒業生の中には,帰国後,法務大臣や検事総長などの指導的な地位に就いた方々も少なくありません。これらの研修・セミナーの積み重ねを通じて培われた卒業生のネットワークは,アジ研にとって最大の財産であるだけでなく,刑事司法分野における国際協力関係の構築に大いに役立っています。


GGセミナーについて教えてください。

「GGセミナー」は,東南アジア諸国の「法の支配」と「良い統治」の確立に向けた取組を支援し,これらを強化するとともに,刑事司法分野の人材育成に貢献することを目的として,平成19年度から毎年1回,アジ研が海外で開催しているものです。「良い統治」のことを英語でグッド・ガバナンス(Good Governance)と言いますが,本会合は,そこから取ってGGセミナーと呼ばれるようになりました。

第1回及び第2回はバンコク(タイ)で,また,第3回は,フィリピン司法省及び国連薬物・犯罪事務所(UNODC)東アジア・太平洋地域センターとの共催により,平成21年12月9日から11日にかけ,マニラ(フィリピン)において開催しました。

第3回GGセミナーでは,東南アジア7カ国(フィリピン,カンボジア,インドネシア,ラオス,マレーシア,ミャンマー,タイ)の刑事司法実務家23名,米国司法省及び世界銀行から招へいした客員専門家2名の出席を得て,「汚職による犯罪収益の凍結・没収・回復のための方策(マネー・ローンダリングの防止を含む)」というテーマで議論を行いました。これは,平成15年に採択された国連腐敗防止条約に盛り込まれている基本原則の一つである「財産回復」に焦点を当て,汚職等の犯人が獲得した財産を没収し,それを被害国に返還することを積極的に押し進めていこうとするものでした。

この点で,今回の開催地であるフィリピンは,マルコス元大統領一族が在任中に不正に蓄財し海外に隠匿した巨額の資産を,国庫に取り戻した実績を有しています。そのため,フィリピンからは,複数の関係機関から経験豊富な幹部多数の参加があり,本セミナーにおける発表・討論は大変内容の濃いものとなりました。

最終日には,討論の結果を「勧告」の形にとりまとめ,本セミナーは盛況のうちに閉幕しました。「財産回復」のように,本格的に議論されるようになってからまだ比較的日が浅く,また,複雑な法律問題をも含むテーマについては,国際的な議論の場を設けて各国の経験や解決策について意見交換し,知見を共有していくことが大切であり(このことは,今回採択された「勧告」の中でも指摘されています。),GGセミナーは,そのような意見交換と知見共有の場として重要な役割を果たしていると参加者からも評価されています。なお,本セミナーの開会式及び閉会式には,フィリピンのデヴァナデラ司法大臣が出席し,汚職との戦いの重要性,またそのための知識と経験の共有の必要性について,熱のこもったスピーチを披露されたことを付け加えておきます。

第3回GGセミナーの詳細は,アジ研のホームページに掲載されていますので,是非ご覧ください(http://www.unafei.or.jp/activities/seminar2.htm)。セミナーの内容をまとめた報告書(英語版)も近日中に出版予定です。

また,次回GGセミナーは,本年12月,再びフィリピン(マニラ)において開催する予定です。


フィリピン司法大臣を囲んでGGセミナー参加者による記念撮影
フィリピン司法大臣を囲んで
GGセミナー参加者による記念撮影
GGセミナーの開催風景
GGセミナーの開催風景