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トップページ > 法務省の概要 > 各組織の説明 > 内部部局 > 入国管理局 > 第3次出入国管理基本計画

第3次出入国管理基本計画

I はじめに
II 外国人の入国・在留をめぐる顕著な状況
 1 外国人の入国,在留及び不法滞在者の全般的な状況
  (1) 外国人の入国の状況
  (2) 外国人の在留の状況
  (3) 不法滞在者の状況
 2 在留資格別の状況
  (1) 就労を目的とする外国人
  (2) 学ぶことを目的とする外国人
  (3) 身分又は地位に基づいて入国・在留する外国人
  (4) 永住者
III 出入国管理行政の主要な課題と今後の方針
 1 我が国が必要とする外国人の円滑な受入れ
  (1) 専門的,技術的分野における外国人労働者の受入れの推進
   ア 専門的,技術的分野における外国人労働者の受入れの基本的な対応
   イ 高度人材の受入れ促進
    (ア) 在留期間の伸長等
    (イ) 永住許可要件の緩和と明確化・透明化
  (2) 人口減少時代への対応
  (3) 観光等による国際交流の拡大
   ア 観光立国への貢献
   イ ワーキングホリデーの活用や拡大のための連携等
  (4) 留学生,就学生の適正な受入れ
  (5) 研修・技能実習制度の適正化
   ア 制度の趣旨にのっとった運用の適正化
   イ 制度の見直し
  (6) 長期にわたり我が国社会に在留する外国人への対応
  (7) 外国人の円滑な受入れのためのその他の課題
 2 強力な水際対策の推進及び不法滞在者の大幅な縮減を通じた我が国の治安を回復するための取組
  (1) 水際対策の推進
   ア 厳格な上陸審査等の実施
   イ バイオメトリクスを活用した出入国審査の導入
   ウ その他の新たな手法の導入
  (2) 厳格な在留審査
  (3) 綿密な情報分析と関係機関と連携した強力な摘発
  (4) 収容施設の活用と早期送還の実施
  (5) 効率的な退去強制手続及び違反抑止のための制度の見直し
  (6) 法違反者の状況に配慮した取扱い
   ア 我が国社会とのつながりを踏まえた対応
   イ 人身取引等の被害者への配慮
 3 その他の主要な課題
  (1) 出入国管理体制の整備
  (2) 国際協力の更なる推進
  (3) 新たな難民認定制度の適正な運用
  (4) 外国人登録制度の適切な運用


 はじめに
 平成12年3月の第2次出入国管理基本計画策定後の出入国管理行政を取り巻く状況の変化を見ると,外国人旅行者の訪日促進を通じた観光立国実現への取組,高度人材を始めとする専門的,技術的分野における外国人労働者の一層の受入れなど我が国が歓迎すべき外国人の受入れ促進が求められており,また,我が国の生産年齢人口は既に減少を始め,加えて,平成18(2006)年をピークにして,総人口も減少すると見込まれており,この人口減少時代における出入国管理行政の在り方を示す時期に来ている。
 その一方で,依然として高水準で推移する不法滞在者が社会面・治安面で問題化しており,平成20年までの目標である不法滞在者の半減に向けて,これまでにない強力な対策を講ずることが喫緊の課題となっている。また,平成13年9月に発生した米国同時多発テロ事件を契機として,テロリスト等の国際間の移動を水際で確実に阻止することが国の内外において一層重要な課題となっている。
 こうした状況の変化に対して,出入国管理行政の施策の基本となるべき事項を内外に示し,的確に対応していくため,第2次出入国管理基本計画の策定から5年となる今,第3次出入国管理基本計画を策定することとした。
 本計画は,当面5年の期間を想定して策定したものであるが,出入国管理行政を取り巻く今後の情勢の変化に対応して,5年を経過する以前においても必要に応じて見直していくこととする。



II  外国人の入国・在留をめぐる顕著な状況
 1  外国人の入国,在留及び不法滞在者の全般的な状況
  (1 ) 外国人の入国の状況
 出入国管理に関する統計を取り始めた昭和25年にはわずか約1万8,000人であった外国人入国者数は,53年に100万人を突破した後も増加基調を維持し,平成16年には,これまでの過去最高の人数を約100万人も上回る約676万人に達しており(図1),政府の訪日観光客拡大のための施策の推進等により,今後とも外国人入国者数は増加基調を維持するものと見込まれる。他方,入国・出国手続における偽変造文書発見件数は,15年に急増した影響で16年には減少しているが,全体としては増加傾向にあり,第2次出入国管理基本計画が策定された12年と比較し,16年の偽変造文書発見件数は605件増加して2,688件に達した(図2)。我が国が厳格な水際対策を講じているにもかかわらず,今後とも,周辺諸国との経済格差を背景として,偽変造文書を行使するなどして我が国への入国を企図する外国人は少なくないと考えられ,密航者を我が国に送り込むことをビジネスとする国内外の密航ブローカーの関与もあって,その手口の悪質・巧妙化が進むことが懸念される。

図1 外国人入国者数の推移



図2 偽変造文書発見件数の推移


  (2 ) 外国人の在留の状況
 戦後間もなくから昭和30年代までは,外国人登録者数は50万人代後半から60万人代半ばで推移し,その90%近くをいわゆる在日韓国・朝鮮人を中心とする特別永住者が占めていた。その後,特別永住者数は減少しているが,様々な目的を持って新たに来日した外国人が増加し,また,これらの外国人の中には我が国において中・長期的に生活を送る外国人も増加していることから,我が国に在留する外国人の数は年々増加し,平成15年末現在の外国人登録者数は約192万人に達し過去最高となった。また,我が国の総人口に占める割合も1.5%で同じく過去最高となった(図3)。同年の外国人登録者数の内訳を見ると,特別永住者は24.9%にとどまり,新たに来日した外国人の占める割合が増加している。今後とも,同様の傾向が継続し,我が国に在留する外国人は増加していくものと見込まれる。

図3 外国人登録者数の推移と我が国の総人口に占める割合の推移


  (3 ) 不法滞在者の状況
 入国管理局の電算統計により推計される不法残留者数は,平成5年5月1日現在の約30万人をピークに減少し,17年1月1日現在で約21万人となっている(図4)。また,我が国には密航船等により不法入国し潜伏している外国人が約3万人いると考えられ,これを合わせると我が国における不法滞在者数は約24万人と推計されている。
 これまでの積極的な摘発などの不法滞在者対策や我が国経済の低迷などにより,不法残留者数は年々減少し,平成17年1月1日現在では前年同期比で1万人以上減少しているが,近年その減少率は低下傾向にある。不法残留者数の減少率の低下の要因は,我が国と周辺諸国との経済的な格差を背景として,依然として不法就労を企図する外国人の流入圧力が高く,また不法に滞在することとなった後も長期にわたって我が国に滞在し,帰国を望まない傾向が強いことが考えられる。不法滞在者を雇用する側に視点を移すと,厳しい経済競争の中で,安価な労働力として不法就労者を雇用する事業主や,多額の不当な利益を得ることを目的とする不法就労者の斡旋ブローカーの存在が窺われる。また,一か所で就労又は居住する不法滞在者数の減少(小口化)及び地方拡散化の傾向も引き続き見られ,効率的な摘発が困難になってきている面もある。
 入国管理局が退去強制手続を執った入管法違反者数は,平成16年には5万5,351人となっており,近年の特徴として,正規の在留資格を有しながら,その在留資格では認められていない就労活動を行う資格外活動により退去強制手続を執った外国人の数が増加している。

図4 国籍(出身地)別不法残留者数の推移


 2  在留資格別の状況
  (1 ) 就労を目的とする外国人
 就労を目的とする在留資格(「外交」,「公用」を除く。)による新規入国者数は平成16年に15万8,877人,外国人登録者数は15年末現在18万5,556人で,いずれも近年一貫して増加している(図5,6)。
 このうち,いわゆる外国人社員に該当する「技術」,「人文知識・国際業務」及び「企業内転勤」の在留資格による新規入国者数は,近年増減を繰り返しているが,外国人登録者数についてはほぼ一貫して増加している。これは,これらの在留資格で在留している外国人の我が国での在留の長期化・定着化がある程度進んでいることや,「留学」等からこれらの在留資格に変更を許可される外国人が毎年相当数に上ること等によるものと考えられる。
 「興行」の在留資格による新規入国者数は平成16年に13万4,879人,外国人登録者数は15年末現在6万4,642人となっており,共に増加している。16年の新規入国者数を国籍(出身地)別に見ると,フィリピンが8万2,741人で全体の61.3%を占め,次いで中国が8,277人,アメリカが6,704人などとなっている。同様に15年末現在の外国人登録者数を国籍(出身地)別に見ると,フィリピンが5万539人で全体の78.2%を占め,次いで中国が3,848人,ルーマニアが2,597人などとなっている。他方,在留資格別に見た不法残留者数において「興行」の在留資格を有していた外国人は,17年1月1日現在で1万1,319人となっているほか,「興行」の在留資格を有していた不法残留者数に占めるフィリピンの割合は87.2%に上っている。

図5 就労を目的とする在留資格(外交,公用を除く)による新規入国者数の推移



図6 就労を目的とする在留資格(外交,公用を除く)による外国人登録者数の推移


  (2 ) 学ぶことを目的とする外国人
 「留学」,「就学」の在留資格による新規入国者数は近年それぞれ一貫して増加していたが,平成16年には減少に転じ,「留学」は2万1,958人,「就学」は1万5,027人となっている。これを国籍(出身地)別に見ると,中国が最も多く,それぞれ8,133人(37.0%),5,705人(38.0%)となっている。15年末現在の外国人登録者数は,「留学」12万5,597人,「就学」5万473人となり,過去最高を更新した。これを国籍(出身地)別に見ると,中国が最も多く,それぞれ8万7,091人(69.3%),3万8,873人(77.0%)となっている(図7,8)。
 他方,真の目的が不法就労であったり,十分な資金を持たないために結果として就労活動に従事するような留学生等が増加し,「留学」の在留資格を有していた不法残留者数は近年増加に転じており,在留資格別に見た不法残留者数において「留学」の在留資格を有していた外国人は,17年1月1日現在で8,173人となっているほか,「留学」の在留資格を有していた不法残留者数に占める中国の割合は86.1%に上っている。「就学」の在留資格を有していた不法残留者数は近年減少しているものの,在留資格別に見た不法残留者数において「就学」の在留資格を有していた外国人は,17年1月1日現在で8,506人となっているほか,「就学」の在留資格を有していた不法残留者数に占める中国の割合は83.7%に上っている。
 「研修」の在留資格による新規入国者数及び外国人登録者数は近年一貫して増加しており,新規入国者数は平成16年に7万5,359人,外国人登録者数は15年末現在4万4,464人といずれも過去最高を記録している(図9)。また,技能実習への移行者数も年々増加し,16年には2万6,488人となっている(図10)。16年の新規入国者数を国籍(出身地)別に見ると,中国が4万8,729人で全体の64.7%を占め,次いでインドネシアが5,204人,ベトナムが3,835人などとなっている。同様に15年末現在の外国人登録者数を国籍(出身地)別に見ると,中国が3万763人で全体の69.2%を占め,次いでインドネシアが4,234人,ベトナムが3,528人などとなっている。アジア地域全体の一層の経済発展が見込まれる中で,研修生・技能実習生は増加していくことが見込まれる。他方,在留資格別に見た不法滞在者数において「研修」の在留資格を有していた外国人は,17年1月1日現在で3,648人となっているほか,近年その数は増加傾向にあり,研修修了後に帰国しない等の外国人が増加している。

図7 「留学」の在留資格による国籍(出身地)別新規入国者数及び外国人登録者数の推移



図8 「就学」の在留資格による国籍(出身地)別新規入国者数及び外国人登録者数の推移



図9 「研修」の在留資格による国籍(出身地)別新規入国者数と外国人登録者数の推移



図10 技能実習への移行者数


  (3 ) 身分又は地位に基づいて入国・在留する外国人
 「日本人の配偶者等」の在留資格による新規入国者数は平成16年に2万3,083人,外国人登録者数は15年末現在27万1,719人となっており,ともに近年増減を繰り返している。「日本人の配偶者等」の在留資格により入国・在留する外国人は,日本人の配偶者のほか,日本人の子なども含まれるところ,日本人と外国人との国際結婚が毎年一定数あることが外国人登録者数の増加の要因の一つになっている一方で,南米諸国に移住した日本人の子である日系二世の世代の高齢化が新規入国者数の減少要因の一つに,また,我が国に長期間滞在して「永住者」の在留資格に変更するケースや帰化するケースもあることが外国人登録者数の減少要因の一つになっていると考えられる。
 なお,「日本人の配偶者等」については,就労活動に制限がないため,偽装結婚により入国や在留を図る事例が後を絶たない状況にある。
 「定住者」の在留資格による新規入国者数は近年増減を繰り返しているが,在留者数は増加傾向が続いて平成15年末現在24万5,147人となっている。「定住者」や「日本人の配偶者等」の在留資格で在留する日系人については,我が国社会の国際化や多様化に資する存在であるが,不安定な就労環境にあることが多いとの指摘や,社会保険への未加入,子どもの不就学といった問題も指摘されている。



  (4 ) 永住者
 「永住者」の在留資格による外国人登録者数は,平成15年末現在,前年に比べ約20%増の26万7,011人となっている。その数は,我が国に長期にわたり在留する外国人の増加に伴って近年大幅に増加しており,今後とも,「永住者」への変更を希望する外国人の数は同様の傾向が続くものと見込まれる。


III  出入国管理行政の主要な課題と今後の方針
 1  我が国が必要とする外国人の円滑な受入れ
 我が国は現在,専門的,技術的分野の外国人労働者は積極的に受け入れるという方針を採っているが,これら我が国が歓迎すべき外国人の受入れを一層積極的に進めるとともに,その中でも世界で通用する専門的な知識や技術等を有する高度人材を始めとした我が国が特に必要とする外国人については,我が国の国際競争力を強化していく観点からも極めて重要であり,更に円滑な受入れを図ることが求められている。
 また,その際には,外国人が住みやすい環境作りを進めていく必要があり,外国人に対する社会保障制度の在り方に関する検討など他行政の施策と連携して,外国人が安心して暮らしやすい日本を実現することにより,外国人の円滑な受入れを推進することが可能となると考えられる。


  (1 ) 専門的,技術的分野における外国人労働者の受入れの推進
   ア  専門的,技術的分野における外国人労働者の受入れの基本的な対応
 専門的,技術的分野の外国人労働者については,専門知識,技術等を有し,我が国の経済社会の活性化に資することから,これまでも積極的な受入れを図っているが,現行の在留資格や上陸許可基準に該当しないものでも,専門的,技術的分野と評価できるものについては,経済,社会の変化に応じ,産業及び国民生活に与える影響等を勘案しつつ,在留資格や上陸許可基準の整備を行い,積極的な受入れを進めていく。
 例えば,国内法制との整合性に留意しつつ,国際的なビジネス活動の活発化の中で必要とされる長期出張者など新たな形態の在留活動に対応する在留資格を検討していく。また,情報処理技術に関する資格・試験の相互認証を通じた受入れを今後とも進めていくとともに,他の分野においても,例えば,相互認証を含め,資格・試験等を活用することを通じて専門性,技術性を確保しつつ,今後我が国の国際競争力を維持するためにも必要となる高い付加価値を生み出す外国人労働者を適切に受け入れるため,在留資格要件の緩和等の見直しを行う。
 また,我が国の看護師国家資格を有する外国人看護師については,我が国での滞在は研修目的で4年間までとされている現行の就労期間制限を緩和して受入れの拡大を図っていく。我が国の国家資格を有する外国人医師については,就労場所の制限や,我が国での滞在は研修目的で6年までとされている就労期間制限の緩和を図っていく。外国政府との間で,一定の数の相手国の医師又は歯科医師を相互に受け入れ合う旨を文書により確認し,英語による国家試験に合格した後我が国において診療対象を外国人に限定する等の条件の下で診療行為を行う外国人医師・歯科医師については,その受入れが外国人の住みやすい環境を整備することにもつながると考えられることから,今後の協定の締結状況等も踏まえつつ,上陸許可基準の整備を行う。
 なお,各国との間で進められているEPA(経済連携協定)締結交渉において,「人の移動」に係る事項も主要な論点となっており,専門的,技術的分野と認められるものについては,その円滑な受入れを積極的に図ることとし,必要に応じて不法就労等の問題を防止するための方策も含め,その受入れの枠組みについて関係府省と連携して検討していく。



   イ  高度人材の受入れ促進
 経済のグローバル化や産業の高度化に伴い,世界で通用する専門的な知識や技術等を有する優秀な外国人の国際的な人材獲得競争は激しくなっている。そのような高度人材が実際に我が国に入国し,定着するか否かは,個々の企業の雇用条件などの我が国の経済的な魅力や生活環境等による影響が大きいが,そうした高度人材は我が国の経済社会にとって多大なる貢献が期待できることから,出入国管理行政としてもその獲得・定着化のための方策を講ずる必要性が増している。そこで,現在も積極的な受入れを図っている専門的,技術的分野の外国人のうち,例えば,各国がその専門的な知識や技術の獲得を争うような,より高度な知識や技術を有する外国人など,高度人材といえる範囲について検討した上で,以下のような措置を順次実施していく。
   (ア )在留期間の伸長等
 現在,一度の許可で与えられる在留期間は,「外交」,「公用」及び「永住者」を除き最長3年とされ,行っている活動を継続している場合には回数の制限なく更新は可能であるが,経済,文化等様々な面で我が国に貢献している高度人材に対しては,1回の許可でより長期間の在留期間を決定することとし,安定的に我が国で活動しやすい方策を構築する必要性が指摘されている。
 一方で,不法滞在者のみならず,正規の在留資格を有しながら本来の目的とは異なる活動を行う偽装滞在者の存在が大きな問題となっていることから,雇用機関を限定するなど,問題を発生させないための制度を構築する必要がある。この際には,平成17年度中に実施することとされている構造改革特別区域制度における外国人研究者受入れ促進事業の全国展開と並行して,雇用機関等に一定の責任・義務を課すことについても検討する。
 その上で,在留期間を伸長しても不法就労等の問題を発生させない仕組みを確立することを前提に,高度人材の在留期間の伸長を図っていく。また,併せて高度人材に含まれない専門的,技術的分野の在留資格に係る在留期間の伸長についても検討していく。



   (イ )永住許可要件の緩和と明確化・透明化
 我が国が歓迎すべき外国人の中でも特に優秀な人材である高度人材については,我が国への入国,定着,永住を促進する施策を採ることが社会全体にとって有益と考えられる。そこで,我が国が高度人材の受入れを歓迎している姿勢を外国人のみならず社会に示すためにも,永住許可要件を明確化した上で公表し,高度人材の定着化を促進していくとともに,高度人材に対する永住許可要件の緩和について,上記(ア)の高度人材の在留期間の伸長と併せて検討していくこととし,その際には,在留期間の更新に係る負担の軽減についても検討していく。


  (2 ) 人口減少時代への対応
 我が国の総人口は,国立社会保障・人口問題研究所の推計(中位推計)によれば,平成18(2006)年に1億2,774万人でピークに達した後,以後長期の人口減少過程に入り,平成62(2050)年には約1億60万人になると予測されている。また,生産年齢人口は既に平成7(1995)年の8,717万人をピークに減少に転じており,平成62(2050)年には5,389万人にまで減少すると予測されている。これを単純に外国人の受入れだけで補完しようとすれば,例えば生産年齢人口のピークを維持するためにはピーク時以降毎年約65万人の外国人の受入れが必要になると試算されているが,単に量的に外国人労働者の受入れで補おうとすることは適切ではない。
 少子・高齢化に伴う人口減少社会への対応は,少子化対策,女性・高齢者の労働力率向上対策など様々な他の分野の施策と併せて検討されるべきものであるが,出入国管理行政としても,人口減少時代における外国人労働者受入れの在り方を検討すべき時期に来ていると考えられる。
 生産年齢人口が大幅に減少していく中においては,まず,専門的,技術的分野における外国人労働者の受入れを一層積極的に推進していくことが重要であり,専門的,技術的と評価できるものについては,経済,社会の状況の変化に応じ,在留資格や上陸許可基準の見直しを行っていく。
 さらに,そのような生産年齢人口の減少の中で,我が国経済の活力及び国民生活の水準を維持する必要性,国民の意識及び我が国の経済社会の状況等を勘案しつつ,現在では専門的,技術的分野に該当するとは評価されていない分野における外国人労働者の受入れについて着実に検討していく。その際には,新たに受入れを検討すべき産業分野や日本語能力などの受入れ要件を検討するだけではなく,その受入れが我が国の産業及び国民生活に与える正負両面の影響を十分勘案する必要があり,その中には例えば国内の治安に与える影響,国内労働市場に与える影響,産業の発展・構造転換に与える影響,社会的コスト等多様な観点が含まれる。
 なお,高齢化が進行する中で必要とされる介護労働者については,EPA(経済連携協定)に基づく受入れの状況を見極め,また,この分野が日本人の雇用創出分野と位置付けられていることも踏まえつつ,その受入れの可否,受け入れる場合の方策について検討していく。
 いずれにしても,人口減少,少子・高齢化への対応は,単一の行政分野だけで解決できる問題ではなく,技術革新のための取組など産業分野を含めた様々な分野の施策の連携が不可欠であり,その中で,出入国管理行政としても様々な要望を考慮しつつ検討を進めていくこととする。



  (3 ) 観光等による国際交流の拡大
   ア  観光立国への貢献
 我が国は,観光の分野において,海外への旅行者数が世界第11位を占める一方で,我が国を訪れる外国人旅行者数は世界第33位にとどまっており,大きな不均衡が生じている状態にある。
 そこで,現在,我が国を訪れる外国人旅行者を2010年までに倍増させることを目標に,政府として観光立国の推進に取り組んでいる。
 観光立国を実現させるため,平成15年4月に,有識者で構成された観光立国懇談会において「住んでよし,訪れてよしの国づくり」を副題とする報告書が取りまとめられ,これを受けて,同年7月には,全閣僚を構成員とする観光立国関係閣僚会議において,「観光立国行動計画」を策定し,具体的な方策を示している。また,平成16年11月には,学識経験者で構成された「観光立国推進戦略会議」において,観光立国実現のための施策を効果的総合的に実施するための55の提言が取りまとめられた。出入国管理行政においても,不法滞在等の問題に留意しつつ,訪日外国人旅行者の円滑な出入国手続の実施を通じて,観光立国の実現に貢献していく。
 そこで,訪日観光客を始めとした外国人入国者の円滑な上陸審査の実現のため,セカンダリ審査(2次的審査)(※1)の導入,プレクリアランス(事前確認)(※2)の実施等により,メリハリのきいた厳格な審査を確保した上で,大多数の善良な外国人の上陸審査における待ち時間の短縮を目指していく。


※1  セカンダリ審査(2次的審査)とは,上陸審査ブースでは明らかに上陸条件に適合する外国人のみ上陸許可し,入国目的等に疑義がある外国人等は別途の場所におけるセカンダリ審査(2次的審査)へまわし,上陸条件の適合性について改めて慎重な審査を実施して,上陸審査の円滑・迅速化と厳格化を同時に達成するもの。
※2  プレクリアランス(事前確認)とは,外国の空港に入国審査官を派遣して現地で事前チェックを行い,上陸拒否事由に該当する外国人については日本への渡航を事前に取りやめさせ,また本邦において行う活動が虚偽のものでないことについて現地の空港で確認することにより,入国する空港又は海港での審査の簡素化を図り,待ち時間の短縮及び不法滞在者の発生を抑制するもの。


   イ  ワーキングホリデーの活用や拡大のための連携等
 ワーキングホリデー制度は,現在,オーストラリア,ニュージーランド,カナダ,韓国,フランス,ドイツ及び英国との間で実施されているが,我が国と諸外国との青少年交流を活発化させ,相手国の文化等に対する相互理解を深めるためにも,不法滞在等の問題に留意しつつ,その円滑な受入れを行っていくとともに,外務省等と連携して,その対象国の拡大に貢献していく。
 このほか,我が国で開催される国際的な博覧会等の開催に際して,関係者や入場者の円滑な受入れを行っていく。


  (4 ) 留学生,就学生の適正な受入れ
 留学生,就学生は,我が国と諸外国との相互理解を一層増進させ,友好関係を深化させる役割を担うことが期待されていることから,「未来からの大使」とも言われている。我が国に留学,就学しようとする外国人は,我が国に興味を持って,留学先,就学先に我が国を選び,我が国の文化に触れながら我が国で学んだという意味で,将来,我が国のよき理解者となり得る人材と考えられる。また,そのような外国人が専門的な知識や技術を習得し,日本国内や世界各国で活躍することは,経済,文化の両面から我が国の発展を支える基礎となると考えられることから,留学生,就学生の受入れを,今後とも積極的に進めていく必要がある。
 しかしながら,我が国が留学生政策として昭和58年に策定した「留学生受入れ10万人計画」は平成15年に達成された一方で,真の入国目的は我が国での就労であるにもかかわらず,留学生,就学生を偽装して入国・在留を図るケースや,入国後,経済的事情等のため不法就労や犯罪に走るケースも少なからずあることから,今後は,質的な面での向上が求められている。
 今後,真に我が国での勉学を目的とし,将来の我が国の理解者として各界で活躍する人材を留学生,就学生として受け入れるためには,大学等の教育機関における教育内容の充実が図られるとともに,適切な入学者選抜の実施や在籍管理が行われることが不可欠である。また,留学生,就学生が学習意欲を高め,安心して勉学に専念できるよう,奨学金制度の充実,宿舎の確保などその環境の整備充実や,大学教育の質の向上が図られる必要がある。
 出入国管理行政とこれらの施策との連携は不可欠であり,例えば,日本留学試験,日本語能力試験の結果等の活用や,不法残留等の状況に応じたメリハリのある審査などを通じ,真に我が国での勉学を目的とし,能力を有し,勉学を継続できる環境の整っている留学生,就学生の受入れを促進し,留学生,就学生を偽装する等の外国人に厳格に対処することで適正な受入れを確保するとともに,優秀な学生が大学等を卒業後,就労資格への変更を希望する場合の手続の円滑化など,質の高い留学生,就学生の受入れに貢献していく。



  (5 ) 研修・技能実習制度の適正化
 平成16年の在留資格「研修」による新規入国者数は7万人を超え,技能実習への移行者数も2万人を超えるなど,研修・技能実習制度は定着している。
 一方で,研修生・技能実習生の失踪,不法残留といった問題や,研修手当・賃金が全額支払われないなどといった問題も発生している。
 このような問題に適切に対処し,研修生・技能実習生が我が国で技術等を確実に修得し,本国でいかすという制度本来の目的を達成するため,制度の趣旨にのっとった運用の適正化を図るとともに,制度自体の見直しも併せて行っていく。また,研修・技能実習を修了して帰国した外国人が,我が国で得た能力を十分に発揮するための必要な取組について,関係機関と連携を図っていく。
   ア  制度の趣旨にのっとった運用の適正化
 研修・技能実習制度は,受入人数も年々増加し,製造業を中心に産業界で広く普及しつつある制度である。しかしながら,研修生・技能実習生を単なる低賃金労働者として扱うなど,学習である「研修」と雇用関係の下での技術等の修得である「技能実習」というそれぞれの制度の趣旨が受入れ団体・企業,研修生・技能実習生本人及び外国の送出機関に十分に理解されていないケースがある。そこで,監査担当者に対する積極的な指導の実施を始め,制度の趣旨の周知・徹底を図るとともに,必要に応じて労働行政とも連携しながら,実態調査の強化など厳格な審査を行い,本人に責のない研修生・技能実習生の保護に配慮しつつ,不正行為を行った機関は3年間の受入れ停止とするなど,制度の趣旨にのっとった運用の適正化を図っていく。
 その際,現行制度下において,開発途上国等への技術移転による国際貢献に成功している事例を分析し紹介するなどして,受入れ機関が改善に取り組む方向性を示していく。



   イ  制度の見直し
 研修・技能実習制度を適正かつ円滑に推進し一層充実させていくためには,上記のような運用の適正化だけでなく,関係府省とも連携しつつ,制度自体の見直しも併せて行う必要がある。具体的には,第2次出入国管理基本計画においても検討の方向性を示していた技能実習に係る在留資格の創設のほか,実務研修中における法的保護の在り方等の制度の見直しについて,適正かつ円滑な技術移転を推進するという観点に十分配慮しつつ,検討していく。また,問題の少ない企業単独型研修については企業活動の変化等に応じた基準の緩和を,問題の多く発生している団体監理型研修については,その状況に応じた適正化を図るため,受入れ団体の監理責任を強化するなど,基準の厳格化を検討していく。技能実習の対象職種については,国際貢献に資する観点から,幅広く対象職種を見直していくとともに,関係府省と協力し,これらの要望に円滑かつ迅速に対応できる方法を引き続き検討していく。これらの検討の際には,研修生・技能実習生本人,研修生等の送出国及び受入国である我が国にとって望ましい透明かつ適正な制度を確立し,技能・技術の移転を推進していくという観点が含まれる。


  (6 ) 長期にわたり我が国社会に在留する外国人への対応
 長期にわたり我が国に在留する外国人は,観光等の一時的な滞在者と異なり,地域社会との関わりを持つ住民であり,こうした生活者としての外国人への対応は,その増加に伴って一層重要となってきている。これらの外国人のうち,我が国に永住しようとする外国人に対しては,永住許可要件の明確化・透明化を図っていく。
 また,外国人が住みやすい環境作りを進めていくためには,日系人が多く在留する地域で見られるような生活環境の問題等に適切に対処する必要があることから,労働,教育,福祉に係る支援施策等様々な分野の施策の連携が不可欠であり,このため,地方公共団体等の取組なども参考に,国全体としての方策を検討していく必要がある。その際には,外国人が我が国で様々な活動を行っていく上で,日本語によるコミュニケーション能力が重要であることから,国内外の外国人に対する日本語教育・普及施策を担う関係府省との連携を深めていくとともに,今後の受入れの在り方の検討を含め,出入国管理行政としても役割を果たしていく。我が国に外国人が住みやすくするためには,例えば,外国人医師の受入れによる母国語での医療提供の機会を提供することを通じて,外国人が安心して暮らしやすい日本を実現していくことなどが考えられる。
 さらに,外国人と関わる機関は幅広く,必ずしも日本語や我が国の行政組織に詳しくない外国人にとっては,行政サービスを受ける場合に,相談窓口が不明であることなども考えられることから,ホームページの機能の拡充や,関係行政機関及び外国人に対する支援活動を行う民間団体等と協力し,例えば,地域単位で情報交換,情報提供等を行う連携体制の構築といった取組への参画や,各地方入国管理局の窓口に置かれた外国人在留総合インフォメーションセンターにおいて,他行政に関する相談も受け付け,然るべき行政機関を紹介するなど,外国人の生活を支援するための方策の可能性についても検討していく。



  (7 ) 外国人の円滑な受入れのためのその他の課題
 出入国管理に関しては,国際間の人的交流の円滑化のため,これまでも累次の規制緩和策を講じてきたところではあるが,今後とも,不法滞在等の問題に留意しつつ可能な部分の規制緩和を進めていく。例えば,乗員上陸許可書のオンラインによる交付,申請手続の一層のIT化の推進を含めた手続の簡素化・迅速化などを検討していく。また,各種手続の利便性,透明性を向上させるため,現行の上陸許可基準の解説の公表等の広報に努めていく。その際,必要に応じて外国語で行うこととする。


 2  強力な水際対策の推進及び不法滞在者の大幅な縮減を通じた我が国の治安を回復するための取組
 我が国における不法滞在者数は,現在,約24万人と推計されているが,近年,外国人犯罪の深刻化が進み,その態様も,侵入強盗等の凶悪なものが増加しているほか,暴力団と連携して犯罪を敢行している例も見られるなど,不法滞在者の存在が外国人犯罪の温床となっているとも指摘されている。
 このような状況に対処するため,平成15年12月の犯罪対策閣僚会議において決定された「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」においても,今後5年間で不法滞在者を半減させ,国民が安心して暮らすことができるようにするとともに,平穏かつ適法に滞在している多くの外国人に対する無用の警戒感を払拭することが必要とされている。
 出入国管理行政としては,我が国が必要とする外国人の受入れを一層積極的に進めていくためにも,社会が外国人の受入れに抵抗感を持つこととなる不法滞在者を減少させ,外国人を受け入れやすい環境を作っていく必要があり,警察を始めとした関係機関との連携を従来以上に密にしつつ,不法滞在者の半減に向けた取組を強力に推進していく。
 また,テロリストを入国させないための対策の強化が重要な課題となっており,平成16年12月の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部において決定された「テロの未然防止に関する行動計画」も踏まえ,テロの未然防止を図るための一層強力な水際対策を推進していく。


  (1 ) 水際対策の推進
 水際対策は,単に我が国での不法滞在,不法就労を目的とする外国人だけでなく,テロリストや犯罪を目的とする外国人などの入国を水際で阻止するためにも必要であり,国際空港・港湾に設置された空港・港湾危機管理(担当)官等の関係機関とも連携しつつ,積極的に推進していく。
   ア  厳格な上陸審査等の実施
 不法滞在者を大幅に縮減するためには,不法滞在を目的とする外国人を我が国に来させないこと,入らせないことが必要である。このため,不法残留となった直前の時点での在留資格のうち70%を占める「短期滞在」のほか,「興行」,「就学」,「留学」,「研修」等不法残留者の発生が多い在留資格については,受入れ機関,出身国等を分析して特に厳格な上陸審査を実施するとともに,必要に応じて上陸許可要件を見直していく。さらに,在留資格認定証明書交付申請に係る審査において,実態調査を積極的に行う等厳格な審査を行っていく。
 また,不法滞在を目的とする外国人を来日させないためには,外務省の査証審査業務との連携も不可欠である。



   イ  バイオメトリクスを活用した出入国審査の導入
 テロリスト,過去に我が国から退去強制された外国人及び犯罪を犯した外国人を水際で確実に発見し排除するためには,従来から行っている偽変造文書対策を更に強化するとともに,バイオメトリクス(生体情報認証技術)の出入国審査への活用が有効と考えられる。
 そこで,「テロの未然防止に関する行動計画」(平成16年12月10日国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部決定)に基づき,上陸審査時に外国人の顔画像及び指紋情報の取得を行うため,実施に当たっての諸留意点を整理した上,諸外国の動向等を踏まえつつ,法的整備を行っていくこととするなど,必要な準備を進めていく。また,査証申請時における申請者の指紋採取については,外務省において在外公館の体制や資機材の整備状況,諸外国の動向等を踏まえ,順次検討の上実施することとされており,実施される場合における上陸審査との連携について検討していく。
 また,日本人の出帰国審査においては,当面は,希望者についてバイオメトリクス(生体情報認証技術)を活用することにより,自動化ゲートの導入を図り,更に外国人への拡大についても検討していく。



   ウ  その他の新たな手法の導入
 外国を出発した航空機が我が国に到着する前に,航空会社が乗員・乗客の氏名等の情報を送信することにより,入管,税関,警察の保有する要注意人物リスト等との照合を自動的に行う事前旅客情報システム(APIS)を平成17年1月から導入しており,この活用等により,厳格な上陸審査を推進していくとともに,当面は航空会社の任意の参加により開始された同システムの運用状況等を踏まえつつ,義務化に向けた検討を行っていく。
 さらに,1(3)アでも記載したとおり,セカンダリ審査(2次的審査)の導入や,プレクリアランス(事前確認)の実施等によりメリハリのきいた厳格な審査を確保し,また,外国の空港に派遣されたリエゾンオフィサー(連絡渉外官)と呼ばれる我が国の偽変造文書鑑識技術の専門職員が偽変造旅券等を見分けて航空会社職員が航空機への搭乗そのものを阻止したり,航空会社等に対して我が国に入る航空機等に搭乗しようとする外国人の旅券等の確認義務を課したりするなどの方策の導入を図っていく。加えて,ICPO(国際刑事警察機構)において構築が進められている紛失・盗難旅券に関する情報のリアルタイムな共有を可能にするデータベースの情報を入国審査の際に活用するための必要な準備を行っていくほか,関係府省の協議により認定されたテロリストの入国を阻止する等のための法的整備を行っていくなど,水際対策の実効性を高めていく。


  (2 ) 厳格な在留審査
 現在,不法滞在者だけでなく,正規の在留資格を有しながら,真の入国・在留目的を偽装して我が国に滞在する外国人をめぐる問題も大きく取り上げられてきていることから,「留学」,「就学」,「興行」及び「日本人の配偶者等」等,目的を偽装して我が国に入国・在留する外国人の多い在留資格に重点を置き,実態調査を積極的に実施し,その結果を踏まえた厳格な在留審査を行っていくとともに,在留資格取消制度を積極的に活用していく。
 また,厚生労働行政とも引き続き連携を図り,技能実習生や不法就労と判明した外国人に係る賃金不払い,社会保険料の不払い等悪質な企業等の情報も入国事前審査や在留審査に活用していくなどして,我が国が受け入れるべき外国人が活動しやすい環境を作っていく。



  (3 ) 綿密な情報分析と関係機関と連携した強力な摘発
 不法滞在者の半減のためには,既に我が国に不法滞在している外国人の退去強制を強力に実施していく必要がある。このため,不法滞在者に関する情報の収集及び収集した情報の綿密な分析を行い,その上で全国の主要な繁華街等不法滞在者が集中する地域での摘発を強化するとともに,警察等関係機関との合同摘発の恒常化を図り,入国目的を偽るなどして我が国に不法に滞在する外国人が長期に不法就労することが困難な環境を作り,我が国での不法滞在は割に合わないという認識を浸透させていく。
 また,不法滞在者の数を減らすための摘発と同時に,これらの不法滞在を助長する環境を改善するため,警察等と連携して不法就労助長罪による悪質な雇用主やブローカー等の摘発を積極的に推進していくとともに,不法就労あっせんブローカーや偽造旅券,偽造外国人登録証明書等の作成・販売ブローカーなど,不法滞在者の我が国における滞在を容易にする者の摘発も強化していく。



  (4 ) 収容施設の活用と早期送還の実施
 不法滞在者を半減させるためには,摘発を大幅に強化する等して我が国から退去強制する外国人を相当数増加させる必要がある。そのためには,十分な収容能力の確保と迅速な送還が不可欠である。そこで,収容施設の整備を引き続き行い,収容能力を強化していく。また,送還を迅速かつ確実に行うため,関係各国への働き掛けを強化して旅券等不法滞在者の帰国用渡航文書の発給の円滑化・迅速化を図っていくほか,航空会社に対する協力要請を強化していく。さらに,空港支局においては,円滑な送還を実現するため,送還基地としての機能を強化していく。



  (5 ) 効率的な退去強制手続及び違反抑止のための制度の見直し
 限られた体制で不法滞在者対策を推進していくためには,効果的・効率的に退去強制手続を進めるための制度の見直しも必要である。
 そのような意味においても,退去強制事由の追加や罰則の見直しだけでなく,出国命令制度の創設の意義は大きく,同制度の活用により既に我が国に潜在している不法滞在者の自主的な出頭を促していく。不法滞在者の摘発においては,警察との恒常的な摘発を強力に推進するとともに,入管法第65条を活用するなどして,刑事手続から早期に退去強制手続へ移行させることによって効率的な退去強制手続を進めるとともに,いわゆるリピーター等の悪質な不法滞在者に対しては,警察等に関係罰則の厳正な適用を要請する。
 また,本邦での在留を希望して出頭する不法滞在者については,そのほとんどは違反事実を争うものではないにもかかわらず,現行法の規定では違反調査の後,違反審査,口頭審理及び法務大臣の裁決までのいわゆる三審制の手続を踏むことが求められており,行政側,出頭した不法滞在者側の双方にとって大きな負担となっていることから,違反事実を争わず在留特別許可を求める案件については,手続を簡素化する措置を検討していく。
 さらに,在留実態に問題がなく,単に失念により在留期間を過ぎて不法残留状態になってしまった外国人について,現行法では在留期間更新等の申請を受理することができないため,退去強制手続を執った上で在留特別許可を与えるしか正規在留者に戻す方法がないところ,これが行政側,結果として不法滞在となった外国人の双方にとって大きな負担となっていることから,不法残留期間が短く,在留実態に問題がない案件については,上記の三審制の見直しと併せて,何らかの救済措置を検討していく。
 他方,迅速な退去強制を強力に推進するため,送還費用の本人負担の法令上の原則化に加え,関係国や航空会社等との協力の強化を通じた帰国用旅行文書の速やかな発給や送還便の確保等による送還促進の枠組みの構築なども検討していく。
 このほか,不法滞在を助長する環境を改善し,違反を抑止するため,ブローカーや雇用主の摘発を強化するだけでなく,関係機関とも連携して,雇用主等に対し外国人の身分事項,在留資格の確認を要請し,必要に応じてその制度化も検討していく。



  (6 ) 法違反者の状況に配慮した取扱い
   ア  我が国社会とのつながりを踏まえた対応
 不法滞在者の大幅な縮減は出入国管理行政に課せられた喫緊の課題であるが,一方で,法違反者であっても,日本人との身分関係を有するなど人道的な観点から配慮を要する外国人も存在する。
 我が国は,新たな不法滞在者の流入及び不法滞在の長期化を誘発するいわゆるアムネスティ政策は採っていないが,従来から,我が国社会とのつながりが深く,退去強制することが人道的な観点から問題が大きい場合には,在留を特別に許可してきている。今後とも,不法滞在者に及ぼす影響等に十分配慮しつつ,日本人,永住者等と身分関係を有するなど,我が国社会とのつながりが十分に密接と認められる不法滞在者に対しては,人道的な観点を十分に考慮し,適切に対応していく。
 また,在留特別許可の許否の判断は,法務大臣の広範な裁量によるものであり,個々の事案ごとに諸事情を総合的に考慮して決定するものであることから,明確な基準を策定することは困難であるが,在留特別許可に係る透明性を高めるため,既に公表している在留特別許可の事例をより充実させ,さらに,他の不法滞在者に及ぼす影響等に十分配慮しつつ,在留を特別に許可する際のガイドラインについて,その策定の適否も含めて,今後検討していく。



   イ  人身取引等の被害者への配慮
 人身取引は,重大な人権侵害である。不法滞在となった原因が人身取引によるものであった場合は,これまでも,退去強制手続に当たる職員は人権,心情に配慮した適切な対応を行ってきたほか,被害者である不法滞在者が引き続き本邦での在留を希望する場合には,法違反となった経緯,在留を希望する理由,在留状況等を総合的に考慮して,在留特別許可の可否について決定してきたところである。今後は,その保護を一層充実し,確実なものとしていくため,人身取引の結果として売春に従事させられるなどしていた外国人に対する上陸拒否事由や退去強制事由の見直し等を行っていく。また,「興行」の在留資格については,予定されていた興行活動を行わず風俗営業店等においてホステス等として不法就労している外国人が相当数存在し,中には客との同伴や売春を強制されるなど,近年国際的な問題となっている人身取引の被害に遭っている外国人も見られることから,こうした状況の適正化を図り,「興行」が人身取引に悪用されないための見直しを行っていく。さらに,被害者の水際における発見のための対策も強化していく。人身取引問題への対応に当たっては,内外の関係機関との連携を強化していく。
 配偶者からの暴力も重大な人権侵害であり,「日本人の配偶者等」の在留資格を有する外国人が配偶者からの暴力により別居又は離婚した場合であっても,引き続き在留を希望する場合には,在留状況,生活能力等を総合的に勘案して以後の在留の可否を判断する取扱いを継続していく。併せて,配偶者からの暴力を受けたことに伴い,在留期間内に所要の申請を行うことができないなどの事情で不法滞在に至った場合についても,その状況等を総合的に考慮して在留特別許可の判断を行っていく。


 3  その他の主要な課題
  (1 ) 出入国管理体制の整備
 今後,本計画に記載した事項を着実に実施し,我が国が歓迎すべき外国人の受入れを一層積極的かつ円滑に進めるとともに,不法就労等を企図する外国人を確実に排除するためのチェック体制の強化を図ることを通じて国内外の要請に応え,我が国の一層の発展に貢献していくためにも,出入国管理体制の整備を継続的に進めていく。
 この際には,出入国管理に関する情報を一元的に集約,分析し,上陸審査,在留審査,不法滞在者の摘発などあらゆる分野でそれらの情報をいかしていくことにより,円滑化と厳格化を両立させる情報活用を図っていく。



  (2 ) 国際協力の更なる推進
 出入国管理は,テロ対策や不法入国対策など国際間の協力が不可欠な分野である。このため,諸外国の出入国管理当局を始めとして,外国関係機関との協力関係を更に発展させていく必要があり,我が国としても,リエゾンオフィサー(連絡渉外官)の派遣や,各種国際会議への積極的な参加のほか,出入国管理セミナー等の場を通じて国際協力を推進していく。
 また,最近の国際テロに係る状況も踏まえ,テロリスト等の入国を水際で確実に阻止するための諸外国の関係機関との情報交換を積極的に行っていく。さらに,外国の入国管理当局との情報交換のための法的整備を行っていく。



  (3 ) 新たな難民認定制度の適正な運用
 難民認定制度については,難民審査参与員制度の新設等を内容とする制度の見直しが行われた。今後,新たな制度を円滑かつ適正に運用し,難民を偽装する外国人を排除しつつ,真の難民を確実に庇護して国際社会における責任を果たしていく。
 また,難民認定申請を迅速・適切に処理していくためには,難民調査に係る体制の整備や調査技術の向上等のための研修の充実に加えて,情報,とりわけ出身国情報の蓄積が不可欠であり,関係機関との積極的な情報交換に努めるとともに蓄積した情報を調査に活用していく。



  (4 ) 外国人登録制度の適切な運用
 外国人登録法が目的とする在留外国人の公正な管理に資すること,すなわち出入国管理行政を始め労働,教育,福祉その他各般の行政において在留外国人の居住関係及び身分関係に関する正確な資料・情報を提供することが適切に実現されることが重要であり,在留外国人の増加に伴い,生活支援等のためのきめ細やかな情報提供等が求められているなど,取り巻く国内外の諸情勢の変化等を踏まえ,より実態に即した外国人登録が進むよう制度の適切な運用を推進していく。例えば,近年発展著しいIT技術を活用した外国人登録事務のオンライン化について検討するなど,個々の外国人のプライバシーに十分配慮した上で,外国人登録事務の簡素・合理化を図りながら,同時に,正確な資料・情報の提供を更に迅速かつ適切に実施するための方策を検討していく。
 また,不法滞在者対策として,外国人登録証明書の偽変造対策を推進するほか,交付された外国人登録証明書を合法滞在を装うために悪用する不法滞在者も一部に見られることから,不法滞在者に対して交付される外国人登録証明書に表示されている「在留の資格なし」の意味に関する一般への周知を図っていく。

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