フロントページ > 国際テロリズム要覧 (Web版) > 最近の国際テロ情勢 > コラム

コラム

「在アルジェリア邦人に対するテロ事件」首謀者が新組織「アル・ムラービトゥーン」を結成した旨発表

8月22日付けヌアクショット通信によると,1月16日に発生した「在アルジェリア邦人に対するテロ事件」の首謀者とされるモフタル・ベルモフタルは,自身の率いる「覆面旅団」及び関連組織「西アフリカ統一聖戦運動」(MUJAO)(注1)の解散並びに新組織「アル・ムラービトゥーン」(注2)の結成を発表した。

 

同報道によると,ベルモフタル及びMUJAO指導者は,いずれも,新組織の指導部に入ることを辞退し,別の人物を指導者に任命した旨主張しているとされるが,新組織の指導者は不明である。

「覆面旅団」は,長らく「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」(AQIM)の傘下組織として活動し,2012年6月には,他のAQIM傘下組織及びイスラム系武装勢力とともに,マリ北部地域の制圧に参加した。しかし,かねてよりAQIM指導部からの自立志向を有し,統制を強めようとするAQIM指導部との軋轢が続いていたところ,2012年後半,ベルモフタルとともにAQIMから離脱した。

2012年12月5日,イスラム過激派系のウェブサイトに掲載されたベルモフタルとされる者の声明によると,同人は,「アルカイダ」指導者アイマン・アル・ザワヒリへの忠誠を表明し,もはやAQIMの指導下にはないことを示唆するとともに,「覆面旅団」の精鋭を選抜して,「血判部隊」を結成したことを明らかにした。翌月発生した「在アルジェリア邦人に対するテロ事件」の実行グループは,同「部隊」のメンバーであるとされる

一方,MUJAOは,モーリタニア人及びマリ人を中心とする過激組織で,元々AQIM傘下で活動していたメンバーが,2011年頃に同組織を離脱して結成したとみられている。ただし,「覆面旅団」とは,最近では合同でテロ活動を行うなど,緊密な関係にあった。

同報道によると,新組織「アル・ムラービトゥーン」について,ベルモフタルは,「ナイル川から大西洋に至る,北アフリカの全てのムスリムを含む組織」であると主張している。また,「アル・ムラービトゥーン」の「組織指導部」も,フランスのマリへの軍事介入を「十字軍の侵攻」と非難した上で,「あらゆる場所のフランス権益を標的とすること」を呼び掛けている。

こうした主張には,新組織をAQIMに代わる“アルカイダのフランチャイズ”として位置付けるとともに,欧米に対する「グローバル・ジハード」をけん引する姿勢を示す狙いがあるとみられる。

ベルモフタルが「アル・ムラービトゥーン」指導者に就かなかったため,同組織における同人の役割は明らかでない(注3)。しかし,今回の組織改編がベルモフタルの意向に沿って進められたとみられることから,同人が同組織内で引き続き,指導力・影響力を発揮していく可能性は高いとみられる。このため,今後も,同人が欧米権益等を狙ったテロを首謀することが警戒される。

なお,上記報道の約2週間後には,既に解散したとされる「覆面旅団」の作成によるプロパガンダビデオがインターネット上に掲載されている。また,同ビデオは,新組織結成前の映像とみられるとはいえ,新組織の指導部に就いていないと称するベルモフタルが演説,訓練,別れの挨拶等を行う場面をふんだんに採り入れるなど,“強い指導者”としてのベルモフタルを前面に押し出している。このため,各組織の実態等には,依然不明な点が残る。



このページの先頭へ

ADOBE READER

PDF形式のファイルをご覧いただくには、アドビシステムズ社から無償配布されているAdobe Readerプラグインが必要です。