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TOP 読み物 上川陽子前法務大臣インタビュー ~法務省に対する熱いメッセージ~
法務省 上川陽子前法務大臣
2021年9月14日(火)、上川陽子法務大臣(当時)にインタビューを行い、法務省に対するイメージや今後の法務省に期待することなどをお話いただきました。
インタビューは、法務省赤れんが棟(法務省旧本館)において実施し、ドイツのネオ・バロック様式の建物のバルコニー等で写真撮影も実施しました。
ーー 従前、法務省に対してお持ちになっていた印象は?
ーー はじめは、法務省といえば、刑事司法関係のイメージが強い印象でした。しかし実際、法務省に来てみると、とても幅広く、国民一人一人の生活に関係の深い仕事をしていることがわかりました。民事・刑事の基本法制だけでなく、罪を犯した人の立ち直り支援や人権擁護のための活動など、本当に様々な仕事をしているんですね。こうした法務省の仕事は、人々の安全・安心のため、国民の権利を守るための基盤となる重要な仕事だと思っています。
ーー それから、法務省には、「国内官庁」つまり、専ら日本国内の事柄を扱う官庁のイメージがありました。ただもう今は、国内の事柄、国外の事柄と、単純に二分化できないんですね。デジタル化も進み、人やモノ・企業の動きが急速にボーダーレスになり、海外の事情と国内の事情はスピード感を持って相互に緊密に影響し合うようになりました。例えば、紛争解決など、国内にとどまらず、国境を越える部分について、法務省の案件であるという問題意識、さらには、日本国内と外国国内との間をスムースに結ぶにはどうしたらいいかという問題意識が必要になってきます。特に法制度整備支援などを考えたら分かりやすいと思いますが、自分たちの持っている知見や制度の移行(transfer)は第一段階、次には、日本との親和性(マッチング)、標準化のプロセスになります。国内とつながる形で海外があり、海外を取り込んだ形で国内があるという発想で、国際的なルール作りに積極的に参画していくことが必要なのだと思います。これからの時代、世界のルール作りと国内のルールは異なる次元のものではなく、同じフィールドのものであり、つながっているものだからです。法務省には、これらをトータルでカバーする国際的な視点が必要だと思います
ーー 法務省の良いところと問題点を教えてください。
ーー 良いところはですね、とにかく真面目で手堅いところ!
他方で、その手堅さが足を引っ張って、大きく一歩飛躍するのに時間がかかってしまうところが問題だと思います。コツコツと積み上げていくことも大切です。それに加えて、もっと視野を広げて、ダイナミックに物事を考えられるような人材の育成・獲得を意識しないと、これからの新しい時代に乗り遅れてしまうと思います。
そもそも、法務省は、歴史的にいろいろな組織が集まってできていて、それぞれの部局の独立性が強い。採用も人事も局ごとに行われる縦割り組織になってしまっているんです。職員も、「法務省」に所属しているというより、それぞれの出身部局への帰属意識が強くて、法務省としてのアイデンティティよりも部局のアイデンティティの方が強い。たとえば、法務省の局部課から検察庁に異動になったり、官房から部局に異動になったりすると、検察に「戻る」、○○局に「帰る」と言ったりするぐらい。異動しても、法務省の職員であることは変わらないのに、なんだか変ですよね。それぞれに歴史的な設立経緯やそれによる役割の違いがあるのだとは思いますが、それは時代と共に変わってくるはずで、それぞれ独立してやっていると、重複している部分や見落とされてしまう部分が出てきてしまうと思います。
部局がそれぞれ仕事をすることも大事にしながら、それをより良くしていくために、組織に横串をさして、法務省全体で人材やシステム、情報などを相互に共有し、効率的・効果的に仕事をしていくのが、これからの時代には必要だと思います。法務省全体を俯瞰して、法務省の他の部局の経験でも、自らに生かす視点を持つ。こういった「法務省」に所属している自覚といいますか、「法務省員」としての当事者意識を持つことが大事だと思います。
ーー これからの法務省に期待することを教えてください。
ーー 法務省の皆さん、特に若手の皆さんには、自らの素朴な問題意識を持ち続けてほしいです。どの官庁、企業でも同じだと思うのですが、ずっと法務省で働いていると、はじめは変だなと思っていたところも見えなくなってきて、組織に順応してしまうんですよね。それでも、最初に感じたもやもやとした違和感や疑問は、その後の仕事や成長の過程で、ふと気づくこと、蘇ってハッとすることがあるはずです。それを、組織という長いものに巻かれて、気づかなかったことにしてしまう、自分の問題意識を封じ込めてしまう、そうなると、新しいものは生まれません。常に、新鮮な感覚でアンテナを張っておいて、「おかしいな」と思ったときには、それを飲み込まずに立ち止まって声を上げ、掘り下げてみてほしいんです。そして、周りの人もその声や指摘に耳を傾ける。そうした声を上げられる人がいて、それに耳を傾ける周りの環境があってこそ、改革や改善が生まれるのだと思います。
ーー 今回の企画の主催である「ほうむSHOW編集局」は、若手職員の自由な発想や日々の気づきを大事にし、発信することにより、法務省職員がそういった問題意識を、改めて認識するきっかけになってほしいと思っています。国民の皆様の目に、法務省はどのように映っているのか。客観的に見つめ直し、改善につなげていく、オール法務省の横串プロジェクトのモデルケースとすることができたらと期待しています。
コラム
I: インタビューお疲れ様でした。マグマのように熱い大臣のお言葉と想いがほとばしっていましたね。ありがたいことです。
T: 後で録音を聞いたら、ずっと私がすごい勢いでペンを走らせていた音が入っていました・・・このお話は一言も漏らさず書かなきゃと思って・・・全ては書ききれませんでしたけど・・・
O: 大臣、途中から英語炸裂で、Capacity Buildingとか発音が余りにも流ちょうで、聞いていて分からない単語もありました(笑)。
I: 長いものに巻かれがちだった最近の自分を反省しました。歳を取ったかなと(笑)。
O: 大臣の鉄板ワードである“横串”が随所に出てきて、通常業務でもほうむSHOWの活動でも意識していきたいと改めて感じました。
T: 熱い想いに感動しました。これからもほうむSHOWの活動を頑張りたいと思いました。
全員: 大臣、お忙しいところインタビューに応じていただき、ありがとうございました!!