公訴時効の改正について
Q1 今回,殺人罪などの時効が廃止されたと聞きましたが,どのような経緯だったのですか。
A 今年の4月27日,「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」により,殺人罪などの公訴時効が廃止されました。
公訴時効とは,犯罪が行われたとしても,法律の定める期間が経過すれば,犯人を処罰することができなくなるものです。例えば,殺人罪の公訴時効期間は,これまでは25年とされていましたので,たとえ凶悪な殺人犯であっても,25年間逃げ切れば,処罰されることはありませんでした。
しかし,殺人事件などの遺族の方々からは,「自分の家族が殺されたのに,一定の期間が経過したからといって犯人が無罪放免になるのは,とても納得できない。殺人罪などについては公訴時効を見直してもらいたい。」という声が高まりました。
そこで,法務省では,公訴時効の趣旨や法律を見直すとした場合の理論的問題,外国の制度や国民の意識の動向など,様々な調査を行い,法制審議会での調査・審議を経て,殺人罪など一定の犯罪について,公訴時効を廃止したり,公訴時効期間を延長する法案を国会に提出し,このほど成立したものです。
Q2 公訴時効は,どのような内容に改正されたのですか。
A これまでの公訴時効期間は,犯罪の法定刑の重さに応じて定められていました。その内容は下の表の左欄にあるとおりですが,今回の法改正により,「人を死亡させた罪」については,特別の定めをしました。その内容は表の右欄のとおりです。
例えば,殺人罪(既遂)や強盗殺人罪など,「人を死亡させた罪」のうち,法定刑の上限が死刑であるものについては,公訴時効は廃止されました。これにより,犯罪行為の時からどれだけ時間が経過しても,犯人を処罰することができるようになりました。
また,「人を死亡させた罪」のうち,
@ 法定刑の上限が無期の懲役・禁錮であるものについては,公訴時効期間が30年に,
A 法定刑の上限が20年の懲役・禁錮であるものについては,公訴時効期間が20年に,
B 法定刑の上限が懲役・禁錮で,@及びA以外のものについては,公訴時効期間が10年に,
それぞれ延長されました。これにより,従来であれば犯人の処罰を諦めなければならなかった時期を過ぎても,犯人を処罰することができるようになりました。
法定刑 | 改正前 | 改正後 | |
---|---|---|---|
1 | 「人を死亡させた罪」のうち,法定刑の上限が死刑である犯罪(例:殺人罪) | 25年 | 公訴時効なし |
2 | 「人を死亡させた罪」のうち,法定刑の上限が無期の懲役・禁錮である犯罪(例:強姦致死罪) | 15年 | 30年 |
3 | 「人を死亡させた罪」のうち,法定刑の上限が20年の懲役・禁錮である犯罪(例:傷害致死罪) | 10年 | 20年 |
4 | 「人を死亡させた罪」のうち,法定刑の上限が懲役・禁錮で,上の2・3以外の犯罪(例:自動車運転過失致死罪) | 5年又は3年 | 10年 |
Q3 今回の公訴時効の改正は,過去の犯罪にも適用されるのですか。
A 今回の改正法は,今年の4月27日から施行されていますが,Q2の表に掲げた犯罪が改正法の施行前に犯されたものであっても,その施行の際公訴時効が完成していないのであれば,改正後の公訴時効に関する規定が適用されます。
「更生保護フェスタ2010 with 谷村新司」の開催について
本年は,“社会を明るくする運動”〜犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカラ〜が60回目を迎えることを記念して,更生保護の日である7月1日「更生保護フェスタ2010 with 谷村新司」を開催しました。

1.「更生保護フェスタ2010 with 谷村新司」について(終了しました)
平成22年7月1日(木) 街頭広報活動及びトーク&ライブの開催
(街頭広報活動)
- ・場所 数寄屋橋公園(中央区銀座四丁目)
- ・時間 午後0時〜0時25分(販売は午前11時30分〜午後1時)
- ・内容 谷村新司さんや法務大臣などによる広報資材配布(黄色い羽根等)とともに,アナウンス等による広報を行い,来賓による広報活動にあわせ,少年院出院者が作成した農作物,受刑者が所内で作成した作業品等の展示・販売を行いました。
(トーク&ライブ)
- ・場所 有楽町朝日ホール
- ・時間 午後3時〜午後5時
- ・内容 トーク&ライブ形式で,谷村新司さんが,ゲストと犯罪や非行からの立ち直りについてのお話を交えながら,ピアノとアコースティックギターによる弾き語りを行いました。今回は,谷村新司さんによる新曲“社会を明るくする運動”応援ソング「咲きほこる花のように」の披露も行いました。
2.“社会を明るくする運動”〜犯罪や非行を防止し,立ち直りを支える地域のチカラ〜って何?
すべての国民が,犯罪や非行の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深め,それぞれの立場において力を合わせ,犯罪や非行のない地域社会を築こうとする全国的な運動で,今年で60回目を迎えます。
3.“社会を明るくする運動”の始まり
昭和24年7月1日,戦後の荒廃した中にあって,かねてから街にあふれた子供たちの将来を危惧していた東京・銀座の商店街の有志が,犯罪者予防更生法の思想に共鳴し,保護少年のためのサマースクールの開設資金の造成などを目的に,自発的に同年7月13日から1週間にわたって「犯罪者予防更生法実施記念フェアー(銀座フェアー)」を開催しました。
この銀座フェアーが刺激となり,その翌年の昭和25年7月1日から10日まで,「矯正保護キャンペーン」が全国的に実施されました。
「銀座フェアー」と「矯正保護キャンペーン」を通じて,犯罪の防止と犯罪をした人たちの立ち直りには,一般市民の理解と協力が不可欠であるという認識を深めた法務府(現在の法務省)は,昭和26年7月,この啓発活動を将来とも継続して一層発展させる必要があるとして,“社会を明るくする運動”と名付け,国民運動として世に広げることにしました。
4.新たな取組
運動の趣旨を広く国民に理解いただき,地域に根ざした国民運動として一層の推進を図るため,今回から,「犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ」という副題をつけるとともに,中央推進委員会委員長に法務大臣が就任することとなりました。
5.第60回の行動目標等
刑務所出所者の出所後の再犯率は依然として高く,また,高齢犯罪者,無職者等社会復帰上困難を抱える者や適当な帰住先がないために満期出所となる者も増加しており,就労・定住等社会復帰のための受入れ基盤の整備が大きな課題になっています。そこで,第60回は,次の行動目標・重点事項に沿って運動を展開します。
■行動目標
○犯罪や非行をした人たちの立ち直りを支えよう
○犯罪や非行に陥らないよう地域社会で支えよう
○これらの点について、地域社会の理解が得られるよう協力しよう
■重点事項
○立ち直りを支える取組についての理解促進
○犯罪や非行をした人たちの就労支援
6.更生保護への御理解,御協力を
犯罪をした人や非行のある少年たちが,罪を償い,非行を改め,社会の一員として立ち直るためには,行政機関による働き掛けだけではなく,立ち直りの場である地域社会の皆様から,更生保護に対する御理解とお力添えを頂くことが不可欠です。
更生保護並びに更生保護ボランティアに対する御理解,御協力をよろしくお願いします。
更生保護の詳細等については,ホームページを御覧ください。