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第1節 就労の確保等

3 新たな協力雇用主の開拓・確保

(1)企業等に対する働き掛けの強化【施策番号7】

 法務省は、コレワーク(【施策番号5イ】参照)において、企業等に対し刑務所出所者等の雇用に関する働き掛けを積極的に実施している。2019年度(令和元年度)は、刑務所出所者等の雇用に興味がある企業等に対して、刑務所出所者等の雇用に関する制度等について説明する雇用支援セミナー(写真2-7-1参照)や、同セミナーと矯正施設の見学をセットにしたスタディツアー等を開催するなど、431件の広報活動を実施した。

写真2-7-1 雇用支援セミナーの様子
写真2-7-1 雇用支援セミナーの様子

 保護観察所において、各都道府県の就労支援事業者機構※9や更生保護関係者、矯正施設、労働局、ハローワーク、地方公共団体、商工会議所等経済・産業団体その他関係機関・団体等と連携して、新たな協力雇用主の開拓・確保に努めている。

 2018年度(平成30年度)には、法務大臣が経済三団体(一般社団法人日本経済団体連合会、日本商工会議所及び公益社団法人経済同友会)のトップと直接面会し、協力雇用主の現状や、法務省が取り組んでいる協力雇用主に対する支援制度について説明した上で、企業における刑務所出所者等の雇用の促進について、経済界の理解と協力を依頼しており、こうした経緯も踏まえつつ、引き続き、2019年度においても、法務省幹部が経済界に対し、刑務所出所者等の就労施策について理解を求め、協力関係の構築に努めている。

 加えて、更生保護就労支援事業(【施策番号5ウ】参照)を実施している21庁の保護観察所においては、「雇用基盤整備」として、民間の就労支援事業所が持つ企業等ネットワークを活用しながら、協力雇用主募集のパンフレット(資2-7-1参照)の配布、事業所への個別訪問、説明会の開催等を通じて協力雇用主に係る広報活動を積極的に行い、多くの企業等に保護観察対象者等の雇用について理解と協力を求めた(2019年度まで)。

資2-7-1 協力雇用主募集のパンフレット
資2-7-1 協力雇用主募集のパンフレット

 これらの取組により、2015年(平成27年)4月現在、1万4,488社であった協力雇用主の数は、2019年10月現在、2万3,316社に増加している(【指標番号6】参照)。

 なお、保護観察所において協力雇用主を登録する手続は、警察庁及び厚生労働省と協議した上で2018年8月に作成した「協力雇用主登録等要領」に基づいて適切に運用している。

(2)各種事業者団体に対する広報・啓発【施策番号8】

 農林水産省は、協力雇用主の拡大に向け、2014年度(平成26年度)から農林漁業の関係団体等に対して、協力雇用主制度の周知・登録要請等を行っている。2016年度(平成28年度)からは、新規雇用に関する補助事業の説明会等において、個別の事業者に対しても協力雇用主制度の周知・登録要請等を行っている。

 厚生労働省は、協力雇用主募集のパンフレットをハローワークで配布するなど協力雇用主拡大に向けた広報活動を実施している。

(3)多様な業種の協力雇用主の確保【施策番号9】

 法務省は、協力雇用主に関する積極的な広報啓発活動の実施やハローワークに求人登録をした事業者に対する働き掛け等を通じて、多様な業種の協力雇用主の開拓に向けた取組を行っている。また、2018年(平成30年)から2020年(令和2年)までの間、毎年1月から3月までの3か月を就労支援強化月間と定め、経済団体や業界団体に対して、協力雇用主の確保等に関する要請や経営者が参加するセミナーにおける協力雇用主制度の説明を行った。

 保護観察所において、ハローワーク、就労支援事業者機構等の関係機関・団体等と連携し、協力雇用主の少ない業種を含め多様な業種の協力雇用主の確保に努めている。その中でも、2019年度(令和元年度)は、更生保護就労支援事業(【施策番号5ウ】参照)を実施している21庁の保護観察所において、民間の就労支援事業所の企業ネットワークを生かした多様な業種の協力雇用主の開拓を行った。

 さらに、法務省及び農林水産省は、2017年度(平成29年度)から、随時意見交換を行うとともに、茨城就業支援センター(資2-9-1参照)で農業訓練を終えた保護観察対象者を雇用した農業法人のヒアリングを行うなど、農業分野における協力雇用主の確保に向けた取組の強化を図っている。

資2-9-1 茨城就業支援センターの概要
資2-9-1 茨城就業支援センターの概要

 これらの取組により、2019年10月1日時点で実際に刑務所出所者等を雇用している協力雇用主の数は1,556社にまで増加し、「宣言:犯罪に戻らない・戻さない~立ち直りをみんなで支える明るい社会へ~」(2014年(平成26年)12月16日犯罪対策閣僚会議決定)において設定した数値目標(2020年までに、犯罪や非行をした者の事情を理解した上で雇用している企業の数を現在の3倍(約1,500社)にする)を達成した。

  1. ※9 就労支援事業者機構
    犯罪をした人等の就労の確保は、一部の善意の篤志家だけでなく、経済界全体の協力と支援により成し遂げられるべきとの趣旨に基づいて設立され、事業者の立場から安全安心な社会づくりに貢献する活動を行う法人。認定特定非営利活動法人全国就労支援事業者機構(全国機構)と50の都道府県就労支援事業者機構(都道府県機構)がある。
    全国機構は、中央の経済諸団体(日本経済団体連合会、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会)や大手企業関係者が発起人となり設立され、都道府県機構等に対する助成や協議会の開催等全国的なネットワークでの事業推進を図っており、都道府県機構は、協力雇用主等を会員に持ち、保護観察所等の関係機関や保護司等の民間ボランティアと連携し、具体的な就労支援の取組を行っている。