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第1節 特性に応じた効果的な指導の実施等

2 性犯罪者・性非行少年に対する指導等

(1)性犯罪者等に対する専門的処遇【施策番号68】

 法務省は、刑事施設において、特別改善指導(【施策番号12】参照)として、認知行動療法に基づくグループワークによる性犯罪再犯防止指導(資5-68-1参照)を実施し、性犯罪につながる自己の問題性を認識させるとともに、再犯に至らないための具体的な対処方法を考えさせたり、習得させたりするなどしており、2019年度(令和元年度)の受講開始人員は563人であった。

資5-68-1 性犯罪再犯防止指導の概要
資5-68-1 性犯罪再犯防止指導の概要

 同指導は、海外で効果が実証されているプログラムを参考に外部専門家の助言等を踏まえて策定したものであるが、その後、知的能力に制約がある者を対象とした「調整プログラム※4」や、刑期が短いこと等により受講期間を十分確保できない者を対象とした「集中プログラム※5」 を開発し、指導の充実を図っている。さらに、受刑者が性犯罪に及ぶ要因は多様かつ複雑であることから、グループワーク指導担当者が効果的な指導を行うことができるよう、集合研修の充実化、指導担当者による事例検討会の定期的な開催、外部の専門家による指導担当者への助言等による指導者育成を行っている。同指導については、2019年度に効果検証の結果を公表しており、プログラム受講群の方が、非受講群よりも再犯率が10.7ポイント低いことが示され、一定の再犯抑止効果が認められた。

 少年院において、強制性交等、強制わいせつや痴漢といった性犯罪を始め、例えば、下着の窃盗等、性的な動機により非行をした在院者に対し、特定生活指導として性非行防止指導を実施しており、2019年は、165人が修了した。また、男子少年院2庁において、特に重点的かつ集中的な指導を実施しており、2019年度は、19人が同指導を修了した。さらに、2017年(平成29年)には、新たに知的能力に制約のある対象者向けの指導プログラムを策定し、性非行防止指導体制の整備を図った。これらの指導の結果は、少年院仮退院後の継続的な指導の実施に向け、保護観察所に引き継いでいる。

 保護観察所において、自己の性的欲求を満たすことを目的とした犯罪行為を繰り返すなどの問題傾向を有する保護観察対象者に対して、性犯罪者処遇プログラム(資5-68-2参照)を実施し、その問題性を改善するための処遇の適切な実施を図っている。

資5-68-2 性犯罪者処遇プログラムの概要
資5-68-2 性犯罪者処遇プログラムの概要

 同プログラムは、刑事施設における性犯罪再犯防止指導と同様に、認知行動療法に基づき、海外のプログラムを参考に外部専門家の助言等を踏まえて策定されている。2019年度に実施した効果検証の結果においては、プログラム受講群の方が非受講群よりも性犯罪の再犯率が11.1ポイント低く、一定の再犯抑止効果が示唆された。

 なお、法務省は、2019年度に、性犯罪者等に対する専門的処遇の一層の充実を図るため、法律、心理学、医学等の有識者を構成員とする検討会を開催した。同検討会は、2020年度(令和2年度)の上半期までに、合計4回の開催を予定しており、刑事施設及び保護観察所における現行プログラムの課題と更なる充実化の方向性や、刑事施設収容中から出所後までの一貫性のある効果的な指導について検討を行っている。

(2)子供を対象とする暴力的性犯罪をした者の再犯防止【施策番号69】

 警察は、13歳未満の子供に対して強制わいせつ等の暴力的性犯罪をした刑事施設出所者について、法務省から情報提供を受け、各都道府県警察において、当該出所者と連絡を取り、同意を得て面談を行うなど、再犯防止に向けた措置を講じている。

  1. ※4 調整プログラム
    知的能力に制約がある者を対象としたプログラムであり、イラスト等の視覚情報やSST等の補助科目を効果的に取り入れるなどして実施する。
  2. ※5 集中プログラム
    刑期が短いこと等の理由で通常の実施期間を確保できない者を対象としたプログラムであり、通常のプログラムの内容を凝縮し、短期間で実施する。