
第3節 犯罪や非行からの離脱の要因
2 衣食住の確保と仕事・学業の安定
事例1では、前科等の事情に理解のある協力雇用主の下に就職したことで、就労中心の規則正しい生活を続けていることが語られている。事例2では、支援者によって物理的な「居場所」だけでなく、精神的な「居場所」が作られたことで、将来への不安が軽減され、落ち着いた生活を送っていることが語られている。事例3では、前回の刑務所出所後にNPO法人が運営する自立支援のための住居に帰住し、同住宅の退居後も衣食住が確保された生活を送りながら、当該NPO法人での活動の中で生きる意味や価値を見いだしていることがうかがえる。
各事例は、衣食住の確保と日常生活の安定が、離脱の要因の一つであることを示唆しており、この点については、令和5年版白書の事例と共通している。一方で、事例2では、出所するたびに更生保護施設に帰住しながらも、再犯に至ったことが語られており、衣食住が確保された環境を整えることだけでは、必ずしも離脱を果たすことができるわけではないと考えられる。