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第1節 学校等と連携した修学支援の実施等

3 学校や地域社会において再び学ぶための支援

(1)矯正施設からの進学・復学の支援【施策番号64】

 法務省は、2018年度(平成30年度)から、少年鑑別所在所者が希望した場合には「修学支援ハンドブック」(資4-64-1参照)を配付し、自分の将来について考え、学ぶ意欲を持つことができるよう配意している。また、少年院では、少年院出院後に中学校等への復学が見込まれる者や高等学校等への復学・進学を希望している者等を修学支援対象者として選定し、重点的に修学に向けた支援を行っている。特に、修学支援対象者等については、修学支援ハンドブック等を活用して、出院後の学びについて動機付けを図っているほか、少年院内で実施した修学に向けた支援に関する情報を保護観察所等と共有することで、出院後も本人の状況等に応じた学びが継続できるよう配意している。さらに、民間の事業者に対して、少年院在院者が希望する修学に関する情報の収集と提供を委託する修学支援情報提供等請負業務(修学支援デスク)を開始し、修学支援対象者に対し進学等のための情報を提供しており、2020年度(令和2年度)は延べ254人が利用した。加えて、2021年度(令和3年度)から在院者が高等学校教育についての学びを継続するための方策として、少年院在院中から通信制高校に入学し、インターネット等を活用した学習を可能にするとともに、少年院の矯正教育で高等学校学習指導要領に準じて行うものを通信制高校での単位として認定するなどの措置を講じることを一部モデル施設(北海少年院、多摩少年院、浪速少年院、交野女子学院、和泉学園、広島少年院、貴船原少女苑及び四国少年院)において実施することとしている。

 法務省及び文部科学省は、2019年(令和元年)6月に、矯正施設における復学手続等の円滑化を図るため相互の事例を取りまとめ、矯正施設・保護観察所及び学校関係者に対して周知した(【施策番号61】参照)。併せて、文部科学省は、学校関係者に対して、出院後の復学を円滑に行う観点から、学齢児童生徒が少年院及び少年鑑別所に入・出院(所)した際の保護者の就学義務や当該児童生徒の学籍、指導要録の取扱い等に関し、少年院における矯正教育や少年鑑別所における学習等の援助に係る日数について、学校は一定の要件下で指導要録上出席扱いにできることとするなど、これまでの運用を変更し、適切な対応を行うよう各都道府県教育委員会等へ依頼した。

 また、矯正施設・保護観察所の職員と学校関係者との相互理解を深めるため、学校関係者に対し、矯正施設・保護観察所の職員を講師とした研修を積極的に実施するよう依頼した。さらに、矯正施設・保護観察所等から、障害のある児童生徒の教育についての専門的な知見を有する特別支援学校等の教員等の講師派遣依頼があった場合には、積極的に協力するよう依頼した。

資4-64-1 修学支援ハンドブック
資4-64-1 修学支援ハンドブック

(2)高等学校中退者等に対する地域社会における支援【施策番号65】

 法務省は、保護観察対象者に対し、保護司やBBS会等の民間ボランティアと連携し、例えばBBSによる「ともだち活動」の中で学習支援を行ったり、保護司が学習相談や進路に関する助言を行ったりしている。また、対象少年に対して地方公共団体における学習相談・学習支援の取組の利用を促すことで、地域における居場所の確保に努め、対象少年の状況に応じた学びが継続されるように支援を行っている。なお、類型別処遇(【施策番号83】参照)における「就学」類型に該当する高等学校中退者等の保護観察対象者に対しては、類型ごとの処遇の指針である「類型別処遇ガイドライン」を踏まえ、就学意欲の喚起や就学に向けた学校等の関係機関との連携、学習支援等の処遇を実施している。

 文部科学省は、2017年度(平成29年度)から、学力格差の解消及び高校中退者等の進学・就労に資するよう、高校中退者等を対象に、高等学校卒業程度の学力を身に付けさせるための学習相談及び学習支援のモデルとなる取組について実践研究を行うとともに、2020年度(令和2年度)からその研究成果の全国展開を図るための事業を実施しており、2020年度においては、5つの地方公共団体(群馬県、愛知県、高知県、北海道札幌市及び島根県益田町)において同事業を実施した(資4-65-1参照)。

資4-65-1 学びを通じたステップアップ支援促進事業等の概要
資4-65-1 学びを通じたステップアップ支援促進事業等の概要