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第1節 満期釈放者の現状

2 満期釈放となる背景

(1)満期釈放者における仮釈放の申出の有無

図4 満期釈放者における仮釈放の申出の有無の構成比
図4 満期釈放者における仮釈放の申出の有無の構成比

 仮釈放が認められるためには、原則として、刑事施設の長から地方更生保護委員会に対して仮釈放の申出がなされ(更生保護法第34条第1項)、同委員会により仮釈放を許す処分がなされる必要がある(同法第39条1項)。しかし、2020年の満期釈放者のうち87.1%の者については、刑事施設の長による仮釈放の申出がなされていない。

(2)仮釈放の申出がなされなかった理由

図5 仮釈放の申出がなされなかった理由の構成比
図5 仮釈放の申出がなされなかった理由の構成比

 刑事施設では、仮釈放の基準※4や各刑事施設が定める仮釈放の申出に関する運用方針に基づき、審査を行って、同申出をするか否かを判断しているところ、2020年に、刑事施設において審査を行った者(1万8,987人)のうち、37.1%(7,044人)については結論として同申出を行わないこととされた。また、同申出をしないこととした理由(複数回答可)の内訳について見ると、62.5%(4,400人)が帰住予定地が定まっていないなどの住居調整不良、33.2%(2,342人)が懲罰を繰り返すなどの行状不良、7.7%(544人)が暴力団離脱意志なしとなっており、これらの事由が、仮釈放の申出がなされず、ひいては仮釈放されない背景にあるものと言える。

(3)満期釈放者の帰住先

図6 満期釈放者の帰住先の構成比
図6 満期釈放者の帰住先の構成比

 仮釈放の申出がなされなかった理由のうち「住居調整不良」に関連する指標として、満期釈放者の全体における出所時の帰住先を見ると、「帰住先が不明である者等」すなわち、帰住先を調整して特定の帰住先を把握することができなかった者(暴力団関係者の下への帰住や出入国在留管理庁への身柄引渡し等も含む)の比率は43.2%であった。

(4)満期釈放者の懲罰回数

図7 満期釈放者の懲罰回数
図7 満期釈放者の懲罰回数

 仮釈放の申出がなされなかった理由のうち「行状不良」に関連する指標として、満期釈放者の全体における懲罰回数を見ると、刑事施設への入所から出所までの間、1回の懲罰を受けた者の比率は17.1%であり、2~5回の懲罰を受けた者の比率は24.6%であり、6回以上の懲罰を受けた者の比率は、20.4%であった。

  1. ※4 仮釈放許可の基準(犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則(平成20年法務省令第28号)第28条)
    ①悔悟の情及び改善更生の意欲があるかどうか、②再び犯罪をするおそれがないかどうか、③保護観察に付することが改善更生のために相当であるかどうかを順に判断し、それらの基準を満たした者について、④社会の感情が仮釈放を許すことを是認するかどうかを最終的に確認して判断される。