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第1節 満期釈放者の現状

3 満期釈放者対策の充実強化に向けた特別調査

 法務省において、満期釈放者の刑事施設在所中の帰住先確保の状況や福祉的支援・就労支援などの社会復帰に向けた支援の実施状況のほか、保護観察所における更生緊急保護の措置状況を調査し、その結果を満期釈放者対策の充実強化に活用するため、2020年(令和2年)に特別調査を実施した。対象者は、「2020年5月及び6月に刑事施設から満期釈放された者※5」1,289人であり、刑事施設及び保護観察所において、対象者に関する資料の精査や対象者に対する聞き取りなどの方法によって実施した。

 本項では、特別調査の結果を一部紹介することにより、満期釈放者が必要とする支援やその支援の実情等を示すこととしたい。

(1)2020年5月から12月までの間に更生緊急保護を申し出た者

図8 更生緊急保護を申し出た者の構成比
図8 更生緊急保護を申し出た者の構成比

 特別調査の対象となった満期釈放者(以下、本項において「満期釈放者」という。)のうち、2020年5月から12月までの間に、更生緊急保護※6を申し出た者は、18.3%(236人)であり、満期釈放者の多くは保護観察所に対して出所後に具体的な支援を申し出ていないという現状にある。

(2)更生緊急保護において実施した支援の内容

図9 満期釈放者に対して実施した更生緊急保護の措置の内容(複数回答可)
図9 満期釈放者に対して実施した更生緊急保護の措置の内容(複数回答可)

 満期釈放者のうち、2020年5月から12月までの間に、更生緊急保護を申し出た者236人に対して保護観察所が行った具体的支援の内容は、旅費や食事の給与などの金品給貸与が延べ152人、更生保護施設等への入所が延べ135人、ハローワークへの連絡などの就労支援が延べ47人、生活保護等の申請窓口への連絡・相談などの生活相談が延べ31人であった。

(3)満期釈放者・更生緊急保護申出者における精神・身体上の配慮の必要の有無

図10(1) 満期釈放者における精神・身体上の配慮の必要がある者の割合
図10(1) 満期釈放者における精神・身体上の配慮の必要がある者の割合
図10(2) 更生緊急保護申出者における精神・身体上の配慮の必要がある者の割合
図10(2) 更生緊急保護申出者における精神・身体上の配慮の必要がある者の割合

 満期釈放者のうち、精神・身体上の配慮が必要とされた者※7は72.8%であり、更生緊急保護申出者のうち、精神・身体上の配慮が必要とされた者は71.2%であった。

  1. ※5 刑事施設から満期釈放された者
    出所事由が満期釈放である出所受刑者に加えて、出所事由が刑の一部執行猶予の実刑部分の刑期終了である出所受刑者(保護観察付き一部執行猶予の実刑部分の刑期終了を除く)を含む。
  2. ※6 更生緊急保護
    施策番号26】参照。
  3. ※7 精神・身体上の配慮が必要とされた者
    刑事施設において、次の①ないし④のいずれかの処遇指標に付された者を計上している。
    ①M(精神上の疾病又は障害のため、医療刑務所に収容される者)
    ②m(精神医療上の配慮が必要な者)
    ③P(身体上の疾病又は障害のため、医療刑務所に収容される者)
    ④p(身体医療上の配慮が必要な者)