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第3節 地方公共団体や民間協力者による取組

2 千葉県における「犯罪をした者等の社会復帰に関する包括的支援体制」の整備

CASE

(執筆者:千葉県)

 2004年(平成16年)から千葉県県独自の取組として設置している中核地域生活支援センター(以下「中核センター」という。)は、福祉的支援が必要な人に対し、対象者や課題の種別を限定しないアウトリーチ型の支援を行う相談支援機関であるとともに、本人の困りごとと社会資源をつなぐ寄り添い型のコーディネート機関です。

 一般に、地域生活を営む要支援者は、親戚・知人、福祉関係者、行政機関等、様々なチャネルを通じて必要な支援につながることができますが、矯正施設出所・出院者は、地域とのつながりが途切れた状態で社会に復帰するため、支援が必要であっても、本人と生活支援をつなぐチャネルが存在していません。このため、本人が矯正施設に在所・在院中から、その支援ニーズを代弁し、地域の支援機関とのコーディネートを行う中核センターのような機関が介入し、出所後、直ちに生活支援に移行できる「犯罪をした者等の社会復帰に関する包括的支援体制」の整備を地域再犯防止推進モデル事業(以下「モデル事業」という。)の柱と位置付けました。

 モデル事業の1年目は現状の調査と体制の設計、2年目は連携する司法関係機関を県内に限定して支援を実施し、3年目は連携する機関を東京矯正管区内(具体的には、同管区内の矯正施設)に拡げて支援を継続してきました。その結果、3年目には前橋刑務所、栃木刑務所、黒羽刑務所、府中刑務所、横浜刑務所、長野刑務所、水戸刑務所、川越少年刑務所の8刑務所から計17件の支援要請があり、モデル事業終了時点での処理状況は、支援介入11件、本人辞退3件、未処理3件となっています。また、支援介入した11件のうち10件はその後、地域支援へ移行することができました。

 なお、具体的な支援の流れは特1-3のとおりです。

特1-3 具体的な支援の流れ
特1-3 具体的な支援の流れ

① スクリーニング:矯正施設に在所・在院中で、出所後、地域の福祉関係機関の支援を受けることが望ましいと思われる者で、特別調整及び一般調整※14の対象とならなかった者を矯正施設職員が選定。

② 本人同意:矯正施設から県や支援関係機関へ個人情報が提供されることについて、要支援対象者から同意を得るとともに、本人からの支援要請及び本人情報を、矯正施設から県へ提供。

③ アセスメント:矯正施設職員(福祉専門官等)同席のもと、県職員や中核センター等の相談支援機関職員が、矯正施設内で支援対象者と面接し、本人意向の把握と支援方針の決定を本人とともに実施。

④ コーディネート:支援方針に基づき、中核センター等が本人の支援ニーズに応じて同行支援を行うなど、地域の支援関係機関や制度につなげるためのコーディネートや、地域の支援関係機関等による本人支援のためのネットワークの構築を行い、地域支援に移行。

 今後は、モデル事業で整備した体制をベースにした支援事業を継続して実施することにより、刑事手続終了後を含めた「地域における“息の長い”支援」の実現に取り組んでまいります。

  1. ※14 一般調整
    受刑者等のうち、釈放後の適当な住居があるものの、高齢又は障害等のため福祉サービス等を受けることが必要である者等に対し、釈放後、帰住予定地に居住しながら、福祉サービス等を受けられるよう、矯正施設、保護観察所、地域生活定着支援センター等の関係機関が連携して調整を行うもの。