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第3節 地方公共団体や民間協力者による取組

3 福井県更生保護センターにおける取組

CASE

(執筆者:福井県更生保護センター)

 福井県更生保護センター(以下「福井センター」という。)は、2019年(令和元年)8月、刑を終えて出所した人などの社会復帰を支援するため、県有財産である福井県職員会館ビル3階の一室(45.738m2)に開設されました。

 福井センターには、特1-4のとおり、県内の更生保護団体である福井県保護司会連合会、福井県更生保護事業協会、福井県就労支援事業者機構、福井県更生保護女性連盟及び福井県BBS連盟の5団体の事務局があって相互連携による活動拠点として機能しており、使用料は公共用として免除されています。職員は非常勤4名で、平日の日中に1~2名の職員が在勤するようにしています。

 また、5つの団体に県内の関係機関・団体13を加えた18団体により福井社会復帰支援ネットワーク協議会を組織し(特1-4)、保護観察期間を終了した後など、刑事司法の制度の枠組みからは外れたものの、なお支援が必要なケースについて、各地域の取組をつなぐネットワークをいかした総合相談や支援者支援を実施しています。

 具体的な取組を紹介します。

 1点目は刑期を終えて出所した人や保護観察期間を経過した人たちからの就労等の相談への対応であり、2020年度(令和2年度)の実績件数は31件でした。相談があった事例の一部を紹介します。

 知的障害のある50歳代男性が、窃盗罪で保護観察付執行猶予となりました。保護観察期間を経過した後もグループホームで生活し、仕事は福祉関係の就労継続支援A型事業所※15で働いていましたが、やがて保護観察期間を経過した気の緩みからか、あるいは相談相手の保護司がいないからか、グループホーム内で盗みをするようになりました。グループホームの職員から「何とか社会復帰してもらいたいとの気持ちで警察への被害届は出さないでいるが、今後の対応に苦慮している」旨の相談を、地域生活定着支援センターを通じて受けました。そこで、グループホーム、保護観察所、社会福祉協議会、地区保護司会等で協議し、本人の同意を得て、当時、この方の保護観察を担当した保護司を含む複数の企画調整保護司が更生保護サポートセンター※16において定期的に面接することとしました。やがて本人の行動は落ち着き、約1年経過後には一般企業に就職し、支援は終了しました。

 2点目は更生保護や再犯防止活動に関する相談への対応です(特1-5)。その広報・啓発として、ボランティアで犯罪をした人たちへの支援を行う「保護司」や犯罪をした人たちを雇用する「協力雇用主」等についての広報のほか、協力雇用主による講演会の開催なども行っています。なお、更生保護関係者等を通じて県内の関係機関・団体等の窓口にも特1-5のチラシを置くよう依頼し、周知を図っているところです。

 今後の課題として、現状では総合相談窓口の人件費に充てる予算がなく、非常勤職員が運営している状況であり、事務局の体制が脆弱であることが挙げられます。国からの協力や助言等も受けながら、相談支援を始めとする福井センターの業務を担う専門のコーディネーターを常勤で配置することができれば、より一層充実した支援が可能になると考えています。

特1-4 福井社会復帰支援ネットワーク協議会組織図
特1-4 福井社会復帰支援ネットワーク協議会組織図
特1-5 福井県更生保護センター 広報用チラシ
特1-5 福井県更生保護センター 広報用チラシ
  1. ※15 就労継続支援A型事業所
    施策番号22】参照。
  2. ※16 更生保護サポートセンター
    施策番号93】参照。地域における保護司会の活動拠点であり、保護司が利用できる面接室を備えるほか、地域の関係機関等との連携強化や保護司の処遇活動への支援等が行われている。