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第2節 京都コングレスにおける再犯防止

3 サイドイベント「女性犯罪者の再犯防止と社会復帰(Rehabilitation and Social Reintegration of Women Prisoners and Offenders)」

 アジ研は、タイ法務研究所(TIJ)と共催で、「女性犯罪者の再犯防止と社会復帰」をテーマにしたサイドイベントを実施しました。

(1)本サイドイベントの背景

 刑務所における改善更生や社会復帰のための処遇プログラムが、収容者の大半を占める男性受刑者を対象に作られてきたという歴史を背景に、2010年(平成22年)12月に国連総会で採択された「女性被拘禁者の処遇及び女性犯罪者の非拘禁措置に関する国連規則(以下、通称である「バンコク・ルールズ」という。)」では、女性犯罪者に対する処遇プログラムは、女性の置かれている状況や女性特有のニーズに配慮したものである必要があることが明確にされました。女性の犯罪が貧困や被暴力体験等の問題と関連していることは、多くの研究でも検証されており、改善更生や社会復帰のための処遇プログラムでは、女性犯罪者に対して社会復帰に必要な力を授け、更生する意欲を高めることが肝要とされています。

 バンコク・ルールズの策定を受け、世界各国において、女性犯罪者に適切なプログラムを提供するための努力がなされていますが、いまだ、バンコク・ルールズの理念が運用レベルで十分に実現できているとは言い難い現状にあります。本サイドイベントは、女性犯罪者の改善更生、社会復帰における特有のニーズについて理解を深めるとともに、世界各地における優れた実践や課題を共有する場として企画されました。

(2)本サイドイベントの内容

 被害体験やそれに伴うトラウマ、低水準の教育、経済的貧困等の女性犯罪者の犯罪に至る特有の要因、有効な社会復帰プログラムの在り方、改善更生の評価の在り方等に言及があったほか、アルバニア、チェコ及びタイにおける調査で、失業と社会的排除が、共通して再犯の主要因であったとする研究結果が報告されました。また、日本からは、女性専用の更生保護施設における窃盗や薬物問題を扱った処遇プログラム等について発表しました。さらに、アルゼンチン及びジョージアにおける取組も紹介され、政府関係機関と市民団体等を含むマルチステークホルダーが協力することの重要性等が示されました。

(3)今後の展望

 本サイドイベントの議論が、策定後10周年を迎えたバンコク・ルールズの更なる普及に寄与するとともに、再犯防止をテーマとした前記の1のワークショップにおける議論を補完するものとして、個々の犯罪者のニーズに応じた処遇の重要性、取り分け、女性を始めとした特定のニーズを有する者に対する配慮についての理解を深め、これにより、今後策定される再犯防止に関する国連準則においていかされることが期待されます。

特2-10 本サイドイベントの様子
特2-10 本サイドイベントの様子