法制度整備支援の海外現場から 「成長を続けるカンボジアから」

1 カンボジアの今

カンボジアと聞くと,地雷や貧困といった,長く続いた内戦に由来するネガティブなイメージを一番に思い浮かべる方が多いのではないかと想像します。もちろん,内戦の傷跡が今のカンボジアに残っていることは事実ですし,そうであるからこそ,法制度整備支援を含め,今もカンボジアは支援を必要としている訳ですが,そうした支援もあって,近年のカンボジアは,力強く,成長の道を歩んでいます。私は,2010年の4月にカンボジアの首都プノンペンに赴任しましたが,それから僅か2年足らずの間にも都市の風景は変わっており,私自身,カンボジアが急速な成長を遂げつつあることを実感しています。

(早朝から賑わうプノンペンの大通り)
(高層ビルを建設中のプノンペンの中心部)


2 カンボジアにおける,日本の法制度整備支援の現状

こちらの記事でも紹介されておりますように,現在,カンボジアでは,民法などの民事法の起草を支援する民事法起草支援プロジェクトと,裁判官・検察官養成校に対する民事法の教育改善を支援する法曹養成支援プロジェクトという二つのプロジェクトが活動しています。私は,このうち,法曹養成支援プロジェクトに関与しているので,今回は,そちらの活動の一端を紹介したいと思います。


3 法曹養成支援プロジェクト活動紹介

本プロジェクトでは,カンボジア人裁判官たちに民事法の講義を行うといった日々の活動とは別に,毎年1回,カンボジア人裁判官による模擬裁判を行っています。模擬裁判は,法律を実際の事案にきちんと適用するためのとても良い練習になるからです。基本的には,毎年,違う裁判官が研修を受けるのですが,平成23年に行われた研修でも,研修に参加した若手の裁判官たちが,新しい法律をきちんと使って模擬裁判を行っており,裁判官たちに,徐々に新しい法律に対する理解が深まっているのを実感しました。本プロジェクトは平成24年3月で終わりますが,このプロジェクトに関わったカンボジアの裁判官たちには,今後のカンボジアの司法界を担っていって欲しいと強く願っています。

(模擬裁判の様子)
(講義を受けるカンボジア人裁判官たち)

(カンボジア長期派遣専門家 岡本 陽平)

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新連載法務省に協力している民間ボランティアについて

〜保護司〜

保護司は,法務大臣により委嘱され,犯罪や非行をした人たちの立ち直りを地域で支えるボランティアであり,全国で約5万人います。

犯罪や非行をした人たちは,いずれは社会に戻ってきます。保護司は,それぞれの地域社会にあって,地域の事情等をよく理解しているという特性を生かし,専門家である保護観察官(国家公務員)と協力して,彼らが罪を償い,地域社会で立ち直るために必要な支援等を行っています。保護司が,犯罪や非行をした人たちに対し,一人の人間として尊重し,真剣に話し合うなど,温かく,また正面から向き合うことで,多くの人たちが立ち直ってきました。

では,実際に保護司はどのような活動をしているのでしょうか。例えば,次のような活動に従事しています。


1 刑務所や少年院から出て「保護観察」を受けることになった人たちに対して,約束事(遵守事項)を守るように指導するとともに,生活上の助言を与えたり,様々な相談にのることで,彼らが地域社会の中で立ち直ることができるように支援しています。

2 刑務所や少年院にいる人たちが施設を出た後にスムーズに社会復帰できるように,帰住先や就職先の確保・調整を行っています。

3 犯罪や非行を未然に防ぐために,地域社会で,講演会,シンポジウム,非行防止教室,非行相談,街頭補導活動などの啓発活動を行っています。

4 地方公共団体や学校を始めとする,保護司活動に必要な関係者や協力者とのネットワーク作りを行っています。


保護司に委嘱されている方々は,現に仕事をしている人,家庭の主婦,会社を定年退職した人など様々ですが,それぞれの経験を生かして活動を行っています。なお,保護司になるためには,保護司活動をする熱意と時間的な余裕があること,健康であることなどいくつかの条件があります。


保護司について詳しくお知りになりたい方は,最寄りの保護観察所までお問い合わせください。


保護司の面接風景
保護司の面接風景:保護観察対象者を自宅にあげての面接。対象者から信頼を得てこそ,立ち直りが進むという。


保護司の犯罪予防活動
保護司の犯罪予防活動:地域のお祭りの見回りや声掛け。活動は地域に根差して行われている。

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