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出入国管理基本計画(第2次)

平成十二年三月二十四日
法務省告示第百十九号
目 次
I はじめに-社会の変化と出入国管理
II 外国人の入国・在留をめぐる顕著な状況
  1 入国・在留外国人の総体的な増加と主な在留資格をめぐる動向
    (1)就労を目的とする外国人の入国・在留の推移
    (2)研修生,技能実習生の着実な増加と研修制度,技能実習制度の定着
    (3)留学生,就学生の受入れ状況と受入れの適正化への取組
    (4)日系人の入国の増加と我が国社会とつながりの深い外国人の増加
  2 入管法違反者の推移と諸問題
    (1)入管法違反者の推移
    (2)入管法違反事件の特徴
    (3)不法滞在者が社会に惹起している諸問題
III 出入国管理行政の主要な課題と今後の方針
  1 国際化と社会のニーズに応える外国人受入れの円滑な実現
    (1)我が国社会が必要とする外国人労働者の円滑な受入れ
    (2)研修制度及び技能実習制度の適正かつ円滑な推進と一層の充実
    (3)学術・文化・青少年交流の推進と留学生,就学生の積極的な受入れ
    (4)長期にわたり我が国社会に在留する外国人の定着の円滑化
  2 不法滞在者への現実的かつ効果的な対応
    (1)強力かつ効果的な不法滞在者対策の実施
    (2)不法滞在者と我が国社会のつながりに配慮した取扱い
  3 その他の主要な課題
    (1)規制緩和と体制の整備による人的交流の円滑化
    (2)国際協力の更なる推進
    (3)難民認定制度の適切な運用

I  はじめに-社会の変化と出入国管理
   今日,我が国においては,外国人の入国・在留者が数的に増大してきただけでなく,様々な分野で外国人と日本人との関係が密接なものとなり,外国人の我が国社会に与える影響が大きくなってきている。
 このため,一人一人の外国人に対して入国・在留を認めるか否かという判断をする手続を行っているだけでは,円滑かつ適正な出入国管理行政を実現することが困難となり,より総合的・計画的な施策の立案と実施が必要になってきた。加えて,外国人に対する社会の意識・関心が高まり,その数的増加と活動範囲の拡大に伴い,今後,我が国社会において日本人は外国人とどのように共存していくのかについて将来像を示すことが,出入国管理行政に求められるようになってきている。
 そうした要請に応えるため,平成元年の出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)の改正において,法務大臣は,「出入国管理基本計画」を定めることを規定し,我が国に入国・在留する外国人の状況を明らかにした上で,出入国管理行政の指針その他必要な施策を定めることとなった(入管法第61条の9)。この基本計画は,我が国の出入国管理の基本方針を確立するとともに,これを内外に明示し,それに沿った行政を遂行することを通じて,行政の透明性を高めることを目的とするものである。
 平成4年に策定された出入国管理基本計画(以下「第1次出入国管理基本計画」という。)では,「円滑な外国人の受入れ」と「好ましくない外国人の排除」の両施策を通じて,出入国管理行政は我が国社会の健全な発展と国際協調の進展に貢献するべきものとの考え方に立ち,「円滑な人的交流の促進」や「不法就労外国人問題への対応」を主たる課題とした。これらは出入国管理行政の言わば使命そのものであり,今次計画においても,その基本的方向性は第1次出入国管理基本計画と変わることはない。ただし,具体的施策やその中でも重点を置くべき課題等については,今日の社会の要請を反映し,見直しを行っていく必要がある。
 そこで,今日の社会の状況を考えると,まず,国際化の進展とともに,通信・運輸手段の発達と経済システムの自由化の進行によるグローバリゼーションが顕著な現象となっており,国民生活の繁栄と安定を,国際社会に向けて一層開かれた社会の中で求めることが指向されている。このため,円滑な人的交流が行われるような環境づくりを行うことはもとより,特に我が国経済における産業構造と企業行動の変化に対応した柔軟な人材活用のニーズに応え得るような,円滑かつ適正な出入国管理を行っていく必要がある。
 さらに,我が国社会は少子・高齢化の時代を迎えており,特に2000年代から予測されている人口の減少,それに伴う労働力の減少に対して我が国としてはどのように対応すべきか,また,どのような対応が可能か,という課題がある。我が国社会に大きな変化を及ぼすことが予想される人口減少時代の到来に当たって,我が国は,まず,そのことを社会の成熟過程として受容し,国内における労働力確保等のための施策を進めるとともに,一人当たりの,そして,社会全体の生産性を向上させることにより対応する必要がある。それでもなお,減少した人口あるいは労働力等を外部から補充することにより豊かさを維持してはどうかという考え方も社会の中にはある。
 しかし,我が国社会がこれまでたどってきた歴史から見れば,また,日本人の社会文化的な発想や感受性を考慮すれば,急激に多数の外国人の移入を受け入れることは現実的ではなく,どのような分野に外国人を迎えたいかという受入れの範囲,どのような経験や背景を有する外国人とであれば円滑に共生していくことができるであろうかという条件,そして受け入れた外国人にどのような社会生活環境を提供していけるかという処遇の問題などを徐々に緻密に調整しつつ,社会に摩擦をもたらさないような形での受入れを図っていくことにより,経済社会の活力の保持,そして社会生活の有形・無形の豊かさの向上を目指す必要がある。そのためには,本格的な人口減少時代の到来の前に,そうした時代のあるべき姿を展望した上での我が国としての対応の在り方を検討・準備しておく必要があり,今次計画においては,その点を確認する。
 一方,国際社会のグローバリゼーションの進展は,同時に,社会の各般における安全確保のための一層強力な仕組みを要請する。実際,我が国社会の国際化と外国人の受入れの円滑化は,あくまで我が国社会の安全と秩序が維持された上で推進されるべきものである。しかし,我が国社会には,依然として,把握されているだけで約27万人,密航者等を含めると更に大きな数字となる不法滞在者の存在があり,また,近時,「人の密輸」などに関与する国際犯罪組織の暗躍を背景とした事案の組織化・巧妙化が認められる上,来日外国人による犯罪は深刻さを深めるなど,我が国社会の安全上大きな問題となっており,今次計画においては,これらの問題に対するこれまでより一層強力でかつ効果的な取組の在り方についても示すこととする。
 こうした施策を通じて,これからの出入国管理行政は,社会の安全と秩序を維持しながら,人権尊重の理念の下で,社会のニーズに応える外国人の受入れを推進することにより,社会のあるべき姿の実現に貢献し,また日本人と外国人が心地よく共生する社会の実現を目指していくものである。
 なお,近時の国内外の諸情勢は急速な変化を遂げている面もあり,加えて様々な不確定要素もあるが,本計画は,当面5年の期間を想定して策定したものである。

II  外国人の入国・在留をめぐる顕著な状況
   外国人の入国・在留をめぐっては,様々な点で変化や傾向が認められるが,特に近年社会の関心を集めている事象,社会に大きな影響を与えている事象に関する状況は次のとおりである。

   入国・在留外国人の総体的な増加と主な在留資格をめぐる動向
     戦後の我が国の復興,国際交流の活発化,国際航空路線の整備・発展等に伴って,昭和25年にはわずか約1万8千人であった外国人入国者数は,同53年には100万人,同59年には200万人,そして平成2年には300万人を突破するなど,ほぼ一貫して増加の途をたどってきた(図1)

     近年の動きとしては,急激な円高,阪神・淡路大震災やサリン事件等が起こった平成7年に入国者数が減少したが,同8年には再び増加傾向を示して400万人を突破,同9年には466万9,514人となり,過去最高を記録した。同10年には再び入国者数はやや減少したものの依然450万人を超えており,このようにほぼ継続的に外国人入国者数が増加していることは,今日のグローバリゼーションの進展を象徴するひとつの事象である。
 ちなみに,平成10年中の日本人の出国者数は1,580万6,218人であり,全体的な日本人と外国人の「出入り」としては,日本人の大幅な「出超」となっている。
 外国人入国者のうち,観光客などの短期滞在者が例年9割以上を占めている。それ以外の言わば「我が国で生活する」中・長期滞在外国人の入国は,近年概ね20万人台で推移している。これら主として「我が国で生活している」外国人がどれだけの数に上るかということを外国人登録者数で見ると(外国人登録者には,一部,不法滞在者や観光客も含まれる。),平成10年末には151万2,116人で過去最高となり,外国人登録制度が発足した昭和22年の63万9,358人の約2.4倍に達している。この数は,平成10年の我が国総人口約1億2,648万人(総務庁統計局「日本統計月報」推計人口)の約1.2パーセントに当たっている(図2)

     次に,外国人登録者数について在留資格等別内訳を見ると,いわゆる在日韓国・朝鮮人を主とする特別永住者が53万3,396人と最も多く,全体の約35パーセントを占めている。この特別永住者に相当する外国人の割合は,戦後間もなくから昭和30年代までは9割近くであったものが,その後様々な目的を持って新たに来日した外国人(いわゆるニュー・カマー)の増加に伴って,全体の約4割以下に減少したものであり,我が国社会における在留外国人をめぐる状況の変遷を如実に表しており,我が国社会の中に,ニュー・カマーの隣人が着実に増加していることが明らかである。
 ちなみに,あくまで各国の事情が様々であることを理解した上で,総人口に対する外国人在留者の割合を諸外国と比較すると,例えばスイスでは約19パーセント,ドイツでは約9パーセント,英国では約4パーセント(いずれも1997年の数値),米国では約5パーセント(1990年の数値)となっており,我が国における外国人比率は,先進国の中では決して高いものではない(表1)

    (1)  就労を目的とする外国人の入国・在留の推移
       こうして我が国に入国・在留する外国人の中で,いわゆる「外国人労働者」の推移を見るには,いくつかの観点がある。
 現行の出入国管理は,入国・在留する外国人の行う活動や身分・地位に応じて分類された「在留資格」を基本とした制度となっている。平成10年における就労を目的とする在留資格(入管法別表1の1及び2の在留資格,ただし「外交」及び「公用」は除く。)による新規入国者数は10万1,891人であり,新規入国者数全体に占める割合は約3パーセントである。また,同10年末の就労目的の在留資格の外国人登録者数は11万8,996人であり,外国人登録者総数に占める割合は約8パーセントとなっている(図3)

       ところで,これらの在留資格に含まれない,日系人を主とする「日本人の配偶者等」や「定住者」などの在留活動に制限のない在留資格を持つ外国人,観光しながら働くことのできるワーキング・ホリデー制度の利用者や資格外活動の許可を受けた留学生等も就労が認められているので,実際に「働くことのできる外国人」の割合は,より大きなものとなる。
 さらに,後述するように,現在国内に少なくとも約27万人滞在している不法残留者及びその数には含まれないが不法入国又は不法上陸し引き続き不法に在留している外国人の多くが,不法就労者であると考えられることから,実際に「働いている外国人」の数は更に大きなものとなり,これらを総じて「外国人労働者」と見ることもできる。
 この「働くことのできる外国人」及び「働いている外国人」については,その数の正確な把握は困難であるが,試みに「働くことのできる」在留資格で在留する外国人の動向を概観すると,近年の我が国経済の低迷等にもかかわらず,概ね増加基調で推移している。
 中でも,いわゆる外国人社員の在留資格である「技術」,「人文知識・国際業務」,「企業内転勤」に関しては,平成9年から入国・在留者数が増加しており,数年来,我が国の社会に外国人社員が着実に増加してきていることを裏付けている。ちなみに外国人社員を国籍(出身地)別に見ると,入国者数では,いずれも米国が多いものの,中国,インドについて在留者数の増加が顕著であり,在本邦企業のニーズの一端がうかがわれる。その他の在留資格も含めてこれら就労を目的とする在留資格を有する外国人に関しては,一時発生的な事情による増減はあるものの,ほぼ一貫して在留者数が増加しており,技術・技能・知識を有する外国人の受入れを図るという現政策下で設定された現行の受入れの枠組みが活用されていることがうかがえる。
    (2)  研修生,技能実習生の着実な増加と研修制度,技能実習制度の定着
       外国人を我が国に受け入れて技術研修を行うというニーズが発生したのは,我が国の経済が国際化し,多くの企業が海外に進出するようになった昭和40年代ころからである。すなわち,海外進出した日系企業が,現地法人や取引関係にある企業の社員を我が国に呼び,関連する技術等を我が国の中で効果的に修得させた後,その社員が現地の会社に戻り,修得した技術等を活かして活躍することを期待して行ったものが始まりである。
 その後,産業界における受入れ要請に加え,一企業のためのみならずより幅広い国際貢献の見地から,開発途上国の人材育成に資するものとして,同制度の拡充・発展が推進されることとなり,平成2年6月施行の改正入管法及び出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(以下「基準省令」という。)の中で,「研修」の在留資格及びその基準がより明確に整備された。
 さらに,平成5年に,研修により一定水準以上の技術等を修得した外国人について,研修を受けた機関(企業等)と同じ機関と雇用契約を結び,研修終了後,研修で修得した技術等をより実践的に修得することができるようにする技能実習制度が創設され,同9年4月には,その滞在期間の延長が行われるなど,同制度の拡充が図られ今日に至っている。
 平成10年における在留資格「研修」の新規入国者数は4万9,797人であり,同6年までは減少傾向にあったものの以後増加に転じており,企業の研修生受入れ拡大気運がうかがわれる(図4)

       これらの新規入国者を研修生の出身地域別に見ると,アジアが全体の約9割を占めており,国籍(出身地)別では,中国が2万2,372人で約47パーセントと最も多く,以下,インドネシア,フィリピン,タイ,ヴィエトナムの順となっており,こうした国々と日本企業のつながりが深いという様相の一端がうかがえる。
 一方,技能実習生の数も,平成5年の技能実習制度発足以来年々増加し,同10年には前年の2倍以上の1万3,066人が研修から技能実習に移行するなど,同制度が着実に我が国社会に定着していることがうかがわれる(図5)

    (3)  留学生,就学生の受入れ状況と受入れの適正化への取組
       外国人留学生の受入れは,特に,昭和58年に「留学生受入れ10万人計画」が策定されて以来,政府の基本方針として積極的に推進されてきたものである。 出入国管理行政上も,平成2年施行の改正入管法において,大学,短期大学や専門学校(専修学校専門課程)などで学ぶ学生のための「留学」と,高等学校や各種学校などで学ぶ学生のための「就学」の在留資格が整備され,それぞれに受入れの基準を明確にするなど,秩序ある留学生,就学生の受入れを通じて,積極的な学術・文化上の国際交流が図られるよう取り組んできたところである。
 平成10年における「留学」の新規入国者数は1万3,478人,「就学」の新規入国者数は1万4,540人となっている(図6,図7)。これを国籍(出身地)別に見ると,留学生については,中国が4,522人で全体の約34パーセントを占めており,以下,韓国,米国の順となっている。また,就学生については,中国が6,518人で全体の約45パーセントを占めており,以下,韓国,台湾の順となっている。

       近年の推移を見ると,留学生の新規入国者数は,平成4年に初めて1万人を突破した後,各年とも約1万人で推移しているが,就学生の新規入国者数は,同4年の2万7,367人から同5年の1万8,127人まで一挙に1万人近く減少し,その後も減少を続けたが,同9年に増加に転じ,同10年には1万4,540人となった。この就学生の新規入国者数の急激な減少は,就労を目的とした日本語学校就学生が急増したという問題に適正に対処するため,入国審査等を厳格に行ったことが大きな原因であり,同9年以降の増加は,日本語学校の運営の適正化が図られつつあること等の表れでもある。
 なお,在留資格「就学」については,平成9年までの外国人登録者数は減少したが,これは,上述のように学生を偽装して不法就労していた不法残留者で外国人登録者数に計上されていたものが退去強制されたことによるものと考えられ,その新規入国者数は同9年から増加しており,さらに同10年の外国人登録者数も増加に転じた。
 ところで,これら留学生の中で,大学等を卒業した後我が国において企業等に就職することを選択する学生も増加しており,就職に伴い「技術」あるいは「人文知識・国際業務」等の在留資格への変更申請が許可された数は,平成6年以降毎年2,500人前後で推移している。この現象は,経済活動の国際化の進展の中で,我が国社会の慣習や日本人の考え方などをも周知し,かつ海外につながりを有する外国人の活躍への企業の期待が背景としてあるものと考えられる。
    (4)  日系人の入国の増加と我が国社会とつながりの深い外国人の増加
       近年,入国の増加が大きな社会現象となってきたいわゆる日系人は,大部分が「日本人の配偶者等」あるいは「定住者」の在留資格で入国・在留している。これらの在留資格は,いずれも「我が国社会とのつながり」,特に「我が国社会との血のつながり」を考慮した外国人の受入れの枠組みであり,特に「定住者」の在留資格は,平成2年施行の改正入管法において,新たに整備されたものであった。しかし,これらの在留資格については,入管法上活動の制限がないことから,必ずしも定住・永住を企図せずに当面の就労を目的とした南米出身の日系人が家族を伴って多数来日するようになったことが,この現象の背景にある。
 「日本人の配偶者等」の新規入国者数は近年ほぼ一貫して増加しており,この傾向は,日系人の入国の増加と併せて我が国社会における国際結婚の増加を裏付けているものと考えられる。ただし,平成10年には前年に比べて約22パーセント減少し,2万4,572人となっており,今後の動向が注目される。なお,実際には,我が国に入国後に日本人と結婚し,在留資格を「日本人の配偶者等」に変更するケースも相当数に上り,同10年末における「日本人の配偶者等」の在留資格の外国人登録者数は26万4,844人で,外国人登録者総数の約17.5パーセントを占めている。
 一方,平成10年における「定住者」の新規入国者数は2万1,501人であり,これを国籍(出身地)別に見ると,ブラジルが1万2,543人で全体の約58パーセントを占めており,これに中国,ペルー,フィリピンと続いている。この総数は,同7年までは緩やかな増加傾向にあったが,同8年には前年比約1.9倍の1万2,773人,同9年には前年比約2.6倍の3万3,353人と著しい増加を示した後,同10年には一転して約38パーセント減の2万1,501人となった。同8年からの増加は,ブラジル人について,同8年9月,在サンパウロ総領事館で申請した場合,現地限りで日系人に係る査証が発給されることとなったことなどが一時的な要因として考えられる。
 平成10年末における「定住者」の在留資格の外国人登録者数は21万1,275人となっており,継続して増加傾向を示している。これを国籍(出身地)別に見ると,ブラジルが11万5,536人で全体の約55パーセントを占めており,これに中国,ペルーが続いている(図8)

       また,「永住者」の在留資格を有している外国人は,平成10年末で9万3,364人と同5年末の2倍にも増加しており,いわゆる在日韓国・朝鮮人の特別永住者とは別に,ニュー・カマーの外国人が我が国に定着して永住許可を取得する場合が,近年着実に増加していることを示している。
 このように,「日本人の配偶者等」あるいは「定住者」の在留資格で在留する外国人特に日系人の中には,定住・永住の意図のない外国人も多数滞在していると思われるが,傾向として「我が国社会とのつながり」の深い外国人が増加しており,その定住・永住化が進んできていることが認められる。

   入管法違反者の推移と諸問題
     入国管理局の電算統計に基づく推計では,平成11年7月1日現在,我が国に潜在中の不法残留者は26万8,421人であり,前回調査時の同11年1月1日現在の27万1,048人に比べて2,627人(約1%)減少し,過去最高であった同5年5月1日現在の29万8,646人に比べると3万225人(約10.1%)減少している。これは,近年の我が国の経済の低迷に加えて入国管理局が関係機関の協力を得て行ってきた不法就労者対策が一定の効果を上げるとともに,これらの対策が我が国での不法就労を目的として観光客等を装って入国・在留を企図する外国人の流入等に歯止めをかけたものと見られる。その一方で,我が国で不法就労するため,船舶を使用して集団密航したりする事例が後を絶たない。これら不法残留者を始めとする入管法違反者をめぐる状況と諸問題は次のとおりである。
    (1)  入管法違反者の推移
       平成11年7月1日現在の不法残留者について国籍(出身地)別に見ると,韓国が6万3,848人で最も多く,全体の約24パーセントを占めており,以下,フィリピン,中国,タイ,ペルーの順となっており,過去最高であった同5年5月1日現在時に最も多かったタイやマレイシアの減少と韓国の増加が近年の特徴である(図9)

       また,入国時の在留資格が「短期滞在」であった者は,20万388人で,約75パーセントすなわち4人に3人は観光客等を装った入国を遂げている。この在留資格「短期滞在」で入国した不法残留者の割合を平成4年からの推移で見ると,同4年5月1日現在は約84パーセントであったのが,その後はほぼ一貫して減少しており,近年「興行」等「短期滞在」以外の在留資格を有する正規滞在者を装い不法就労を企図して入国する外国人が増加傾向にある。
 さらに,寄港地上陸許可や乗員上陸許可等の特例上陸許可は,一時的な上陸を目的とする外国人に対して簡易な手続で上陸を認める制度であるが,同許可を取得後不法残留するなど,それらの特例措置を悪用した違反事件も発生している。加えて,正規の在留資格を持って在留する者が違法に資格外活動をしている場合もあり,「短期滞在」で出入国を繰り返し,不法就労に従事している外国人も多数に及ぶものと推察される。
 近年の新たな動きとして,平成8年末以降,中国等近隣諸国からの船舶による集団密航等不法入国事案の急増が挙げられる。このように,我が国に不法入国する外国人は,正規の入国手続を経ていないため,その実態を把握することは困難であるが,入国管理局が退去強制手続を執った不法入国者数だけを見ても,昭和60年代には年平均約500人と比較的少数に止まっていたところ,その後は増加傾向を示し,平成10年には7,472人と激増するに至っている上(図10),その不法滞在期間は長期化する傾向にある。これは,的確な入国審査の実施や査証免除措置の一時停止等の施策を講じた結果,不法就労を目的とする外国人が正規の上陸手続を経て我が国に上陸することが困難となり,我が国で不法就労するため,船舶を使用して集団密航したり,海外の犯罪組織が作成した精巧な偽変造旅券を入手し,これを使用して我が国に入国する事例が増加したことなどによると思われる。特に集団密航事案に関連して,世界的にも問題化している事象として,不法入国を意図する者を外国に送り込むことをビジネスとしている国際犯罪組織の暗躍があり,本国側と相手国側とで連絡を密にしつつ,その手数料の確実な回収が組織的に行われ,密航に使用する船舶に巧妙な隠し部屋を設けたり,洋上で不法入国者を漁船に乗り換えさせるなど,その手口も悪質・巧妙化している。
 また,航空機を利用した外国人の不法入国・上陸事案等も多く発生しており,これらの事案においても,旅券等の偽変造ブローカーが関与していることが少なくない。

       これらの密航ブローカーに対しては,平成9年の入管法改正で集団密航に係る罪が新設され,取締りの厳格化が図られ,一定の効果は認められたものの,依然として不法入国者の流入は続いている。
    (2)  入管法違反事件の特徴
       不法就労期間の長期化並びに不法就労の小口化及び地方拡散化
         退去強制された入管法違反者の8割以上は不法就労に従事しており,その就労期間の長期化が進行している。これは,不法就労者の地方拡散及び一か所で稼働する不法就労者の数が減少(小口化)していることや,我が国に入国・在留する外国人や不法滞在者が増加してきたことに伴い,我が国社会における外国人の存在の特殊性が希薄となり,情報提供量が減少したことなど摘発を取り巻く環境が変化して取締りが効率的に行えなくなったこと,上陸審査の厳格化により新たな入国が困難となったこと,不況による収入の低下等により短期間に目標金額を稼ぐことが困難になり,できるだけ長期間我が国での不法就労を継続しようとする者が増えたこと等が原因と考えられる。
       組織的ブローカーが関与する悪質・巧妙化事案の増加
         入国管理局では,これまで上陸審査を厳格化し,摘発を積極的に推進して不法残留者の着実な減少に向けて取り組んできたところ,一方では,蛇頭と呼ばれる中国人の密航を斡旋するブローカーなど国際犯罪組織の関与する不法入国等事案,旅券・外国人登録証明書等の偽変造ブローカーが関与した各種偽装事案あるいは組織的な偽装日系人事案などが増加するとともに,その手口が悪質・巧妙化している。
    (3)  不法滞在者が社会に惹起している諸問題
       不法滞在者は,そのほとんどが不法就労活動に従事しているため,我が国の出入国管理行政の中心をなす在留資格制度の根幹を揺るがしかねない事態が生じている上,今日の厳しい雇用情勢の中で,職業分野によっては,不法就労者が日本人労働者と競合し,日本人労働者の雇用機会を侵害している場合もある。低廉な賃金で雇用できる不法就労者の雇用主は,合法的労働者を雇用した場合に比べて経済競争上有利であり,不法就労者の存在は公正な経済競争を阻害しているとの弊害も指摘されている。
 来日外国人犯罪の検挙(刑法犯,特別法犯)件数は,増加傾向にあり,我が国の治安面に及ぼす悪影響は増大し,看過できない状況となっているが,これら検挙された来日外国人に占める不法入国者や不法残留者などの割合は約6割にも及び,さらに,これら不法滞在者が,地縁・血縁を中心にグループ化して組織的かつ悪質な犯罪を敢行する事件も発生し,事態は深刻化しており,地域住民とのあつれきが生じている面もある。
 なお,不法就労者の就職斡旋ブローカーが多額の不当な利益を取得し,それら外国人が搾取されたり,雇用主の非協力等が原因で,労災補償の受給がなされなかったり必要な医療が受けられなかったという外国人本人の人権上の問題も発生している。
 さらに,不法滞在者による未払い医療費問題は,人権上の問題に加えて,雇用主,医療機関,地方公共団体等の間で深刻な問題となっている。

III  出入国管理行政の主要な課題と今後の方針
   上記Ⅱで述べた近年の我が国における外国人の入国及び在留の状況の下で,出入国管理行政を担う入国管理局は,国内外の社会の動きを見極めながら,効率的かつ効果的な施策を講じ,円滑・適正な行政運営に努めてきた。
 出入国管理行政の基本は,その使命である(1)外国人の円滑な受入れ,(2)好ましくない外国人の排除,の双方を適切に実現していくことであるが,今後は,21世紀初頭に向けての社会の動きを展望し,時代の要請と内外の具体的なニーズをこれまで以上に的確に把握した上で行政を展開していくことが必要になっている。
 その際,特に重点を置いて検討し適切に実現すべき課題として,(1)国内外の新たな社会の動きの中で,社会のニーズに応えるよう外国人の円滑な受入れを図っていくこと,(2)社会の安全の一層の確保を目指し,不法滞在者問題に対して,現実的かつ効果的な対応を行っていくこと,(3)手続の合理化をも含め一層の規制緩和を図るとともに,国際的な協調体制を整備していくことが挙げられる。さらに,これら行政の遂行に当たって外国人の人権に十分な配慮を行うべきことを確認する必要がある。
 それぞれの課題について,出入国管理行政が目指すべき方向性と具体的施策は,次のとおりである。

   国際化と社会のニーズに応える外国人受入れの円滑な実現
     国際化の進展とともに,グローバリゼーションの時代を迎え,我が国は,より開かれた経済社会を指向しつつ国民生活の安定と繁栄を達成していくべき状況にある。
 このような時代にあって,産業構造や企業行動の変化の動きや社会の様々な分野や領域における交流を通じた国際的な相互理解の重要性を踏まえて,これまでよりも更に積極的に,社会のニーズに応じた,あるいは今後の我が国の国際的な発展に寄与する,外国人の円滑な受入れを行っていく必要が一層高まっていくと見られる。
 ただしこのことは,短絡的に,移民の受入れや広範囲にわたりかつ飛躍的多数の外国人の受入れを標榜するものではなく,受入れ環境その他内外の状況を十分に見極めつつ,当面は,現行の諸制度を積極的に活用しつつ,社会に摩擦や動揺をもたらさない円滑な方法で,社会のニーズ等に応える外国人の受入れを図っていく必要がある。
 なお,中長期的には,今後の社会のあるべき姿についての議論を継続し,そのあるべき姿を実現するために必要な外国人の受入れの範囲や受け入れた外国人に提供すべき処遇の問題などについて,社会のコンセンサスを形成していくことが必要である。
 今後,我が国が外国人の受入れを円滑に実現していく上で取り組むべき主な課題は次のとおりである。
    (1)  我が国社会が必要とする外国人労働者の円滑な受入れ
       これまでの状況
         第1次出入国管理基本計画の下では,就労目的の外国人の受入れについては,時代の要請や我が国の社会の変化に応じて上陸の許可基準を適宜見直すこととし,一方,いわゆる単純労働者の受入れに関しては,慎重に検討していくとの方針に沿って外国人の受入れを図ってきたところ,概ね安定した制度の運用が図られていると認められるが,この間いくつかの必要な見直しを行った。
 その主なものは,「企業内転勤」の最長滞在期間制限の5年の撤廃,「技能」の対象分野の整理,「興行」の在留資格の運用の適正化を図るための見直しなどであった。特に「企業内転勤」の最長滞在期間の制限の撤廃については,自国のビジネスマンの一層の活躍を望む外国政府からの要請もあり,規制緩和推進計画の一環として見直しを行ったものである。
 さらに,経済のグローバル化による外国との競争の激化や国内における産業構造の高度化により,より高度な専門性を有する人材を確実に確保したいという社会のニーズは高まり,また,経済活動上の規制緩和推進の流れにより,企業行動がより多様性を求めるようになり,一層柔軟な人的資源の活用が望まれるようにもなっている。APECにおけるビジネス関係者や技術者の移動の円滑化を図る国際的な動きも活発化している。いずれにしても,今後は,一層,物,金融,情報知識そして人や企業がグローバルな規模で移動するような時代になりつつある。
       今後の方針
         以上のような状況において,出入国管理行政には,我が国社会の安全と秩序を維持しつつ,上述のようなニーズを満たす外国人の一層円滑な受入れの枠組みを構築することが要請されている。例えば,「投資・経営」の在留資格に関する基準や長期の出張等の形態の商用活動について内外の企業から要望が出されている。
 そこで,労働市場を含む社会秩序の維持,公平性の確保のための管理・調整を行いつつ,経済社会のニーズを踏まえた出入国管理政策を展開していく必要がある。すなわち,国際ビジネスに従事する者の国際移動の円滑化など専門的,技術的分野の外国人労働者の受入れに関しては,その推進に関して内外の気運の高まりが認められる分野を中心として,国内における受入れのための条件及び環境を確保しつつ,受入れの拡大について積極的に検討していくこととする。特に今日,情報通信分野の発展は,その他の産業分野の発展にも大きく寄与するものであり,積極的な人材の確保や交流に,出入国管理行政としても貢献していく。
 こうしたことを通じて,我が国社会に高度な技術や技能を有する人材を確保するのみならず,経済活動の多様化による文化面をも含めての社会の活性化,外国との交流の活発化による選択可能性の拡大,さらにはアジア・太平洋地域の技術者交流の支援を通じての国際協力の促進等をも実現することが可能となる。
 具体的には,技術者や技能者の一層積極的な受入れを図っていくために,必要経験年数や受入れ職種等,要請される在留資格に係る基準の見直しを図っていく。また,現行の在留資格に当てはまらない形態での就労に関して一定のニーズが認められ,その受入れを認めることが適当であると判断される場合には,外国人の技術者や技能者が日本人の労働市場や社会生活に悪影響を与えることなく,かつ,それらの外国人がより機動的な活躍をなし得るよう在留資格などの整備を検討していく。
 さらに中長期的には,今後の人口減少に伴い労働力不足の問題が生ずることが懸念されることから,今日でも,例えば,社会の高齢化に伴い一層必要となる介護労働の分野などにおいて,外国人労働者の受入れを検討してはどうかとの意見がある。
 これらに関しては,専門的,技術的分野と評価し得る人材については,これまでどおり積極的にその受入れを図っていくこととし,社会のニーズを見極めた上,労働力を提供する外国人の入国・在留が我が国社会に問題を生じさせないよう,また適切な技術や技能が確保された上でこれらの労働が適正な対価で提供されるよう,さらに諸外国側における技術者や技能者等の必要性などについて配慮しつつ,その受入れの是非を検討していく。そして,現行の在留資格に該当する職種等を見直したり,場合によっては,我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案しつつ,的確かつ機動的に外国人の入国者数を調節できるような受入れの在り方について検討していくことになる。
    (2)  研修制度及び技能実習制度の適正かつ円滑な推進と一層の充実
       これまでの状況
         第1次出入国管理基本計画の下では,平成5年,研修により一定水準以上の技術等を修得した者を対象とする技能実習制度を創設した。これは,研修終了後,研修で修得した技術等に更に磨きをかけ,より高い技術等を本国に持ち帰ることを可能とするために,研修を受けた企業等と同一の企業等において雇用関係の下で更なる技術等の修得を行うものである。学習である「研修」と雇用関係の下での技術等の修得である「技能実習」の双方によって効果的な技術移転を図るというのがそのねらいであり,研修生の受入れを通じての技術移転と人づくりをより効果的に行うことによる国際貢献という趣旨から,社会の各方面で待望された制度であった。
 技能実習制度創設当初,同制度による滞在期間は,研修期間と合わせて2年以内とされていた。しかし,開発途上国等の関係者から,期待される一定水準以上の技術等を修得するためには「2年以内」は必ずしも十分な期間ではないとの声が寄せられるなど,各方面の要望を踏まえ,それまでは研修と合わせて2年以内の滞在期間で到達可能な技能レベルとして,技能検定基礎1級相当の評価制度が整備されている職種を本制度の対象としていたところ,より高度な技能レベルである技能検定3級相当の評価制度が整備されている職種を対象に,研修と合わせた滞在期間を2年以内から3年以内へと延長することとし,平成9年4月から実施した。研修から技能実習への移行は,検定・資格試験等を実施している公益法人等の評価制度を踏まえた仕組みによる評価に基づき財団法人国際研修協力機構がその評価を行い,在留資格は「研修」から「特定活動」に変更される。
 また,技能実習制度の対象となる技術等についても,研修生送り出し国のニーズも考慮しながら,公的な評価制度を整備することにより,制度発足時の17職種から,平成12年2月現在55職種にまで拡充してきており,これまでに3万人近くの研修生が技能実習に移行し技術等の修得を行ってきた。しかし,このように制度が定着・発展を見る一方で,研修・技能実習生の失踪,逃亡事件の発生やメンタルヘルス上の問題の発生等の諸問題が顕在化している面もある。こうした問題の背景としては,まず,学習である「研修」と雇用関係の下での技術等の修得である「技能実習」というそれぞれの制度の趣旨が,受入れ団体・企業,研修生,技能実習生本人及び外国の送出機関に十分に理解されていないことが挙げられる。
 そうした事態に対処するために,平成11年2月に「研修生及び技能実習生の入国・在留管理に関する指針」を作成し,制度利用の適正化を図るための関係者の指導,啓発に努めている。
 一方,技能実習制度について,徐々に対象職種が拡大されつつあるとはいうものの,現在技能実習移行可能職種が55職種に限られていることから,技能実習により更に高度な技術等の修得を希望する研修生及び受入れ機関の要望に十分応えられないとの問題も指摘されている。
       今後の方針
         外国人の受入れによる国際貢献や国際協力への寄与はこれまでも出入国管理行政の基本方針としてきたところであるが,今後は,それらの施策をより実効性あるものにするため,国内的に,研修生,技能実習生を受入れやすい環境を整え,その貢献や寄与をより効果的に実現する必要がある。
 研修制度及び技能実習制度は,上述のとおり各方面の期待を担って創設され,これまで運営されてきたものであるが,国際貢献としての技術等の移転の効果をより一層上げるため,制度の一層の充実が期待されている。また,受入れ機関側にとっても,例えば研修生の育成が国際ビジネスの展開や企業活動の活性化を図ることにつながっていることから,これらの制度に対する期待が高まっている。このように各方面に評価され,定着しつつある研修制度及び技能実習制度の一層の充実を計画的に図っていくこととする。
 そのために,まず,これまでの同制度運用の中で顕在化してきた諸問題の解消,改善を図るため,引き続き,失踪者を出したりすることのないよう受入れ機関に対して上記「指針」に沿った指導を行うなど,適正かつ円滑な制度の運用を徹底していくことと併せて,制度をよりよくしていくための見直しを行う必要がある。
 具体的には,まず研修と技能実習の実施に関し,適正な管理を確保した上で現行の手続等をより簡素・合理化し円滑化を図っていく。
 そして,研修制度及び技能実習制度は,研修によって基礎的な技術等をしっかり身につけた後,技能実習を効果的に行うに足りる技術等を修得したと評価される研修生については,技能実習に移行した上で,受入れ企業等との雇用関係の下で更に高度かつ実践的な技術等を修得する制度である,という趣旨の一層の徹底を図る必要がある。そのためには,まず基礎的な技術等を修得するために充実した研修が行われるような環境を整備するとともに,研修と技能実習が最も効果的に行われ,高度な技能修得が可能となるよう,両制度の今後の在り方について,関係省庁と連携して検討する必要がある。
 また,技能実習の対象職種については,これまで徐々に拡大されてきたところではあるが,今日でも,例えば農業,水産加工業あるいはホテル業など,対象職種の更なる拡大を要望する声があり,今後,関係省庁と協力し,技能実習により更に高度な技術等の修得を希望する研修生及び受入れ機関等の要望に,円滑かつ迅速に対応できるような方法について検討していく。
 このような制度の見直しを行っていくことと併せて,既に技能実習が定着を見つつあることから,独立した在留資格の創設を含め必要な法改正等を関係省庁と協議をして検討し,これら制度の法的な基盤を整備していくとともに,不法残留者の発生及び不法就労を防止するため,受入れ機関への指導や送出機関との連携を強化する。
 その際,政府の直接的なイニシアティブと併せて,技能実習制度の運営に当たって中核的な役割を担っている財団法人国際研修協力機構が,一層充実した機能を果たすことができるような体制づくりを行う。
 こうした施策の実現を通じて,今日まで定着・発展してきた研修制度及び技能実習制度が,国内外の一層の理解を得た上で,研修,技能実習それぞれのニーズに応じた役割を果たすことができるようなものとすることを目指していく。
    (3)  学術・文化・青少年交流の推進と留学生,就学生の積極的な受入れ
       これまでの状況
         第1次出入国管理基本計画の下では,日本語を学ぶ就学生などが,確実に在留資格の本来の趣旨に従った在留活動を行うよう,基準省令の見直しを含め検討を行うとの方針に従い,平成6年には「我が国における日本語就学生の在留状況と今後の受入れ方針」を策定し,問題のある教育施設に対しては厳格に対処すること,日本語を修得するための意思と基礎能力について慎重な審査を行うことなどを内容とした就学生の適正な受入れのための取組を行った。
 そもそも留学生,就学生については,国際的な学術交流や青少年交流の推進の強い要請があり,適正な在留管理を図りつつも,基本的にはその受入れ拡大を図っていく必要があり,そうした社会の要請に応えるため,近年次のような措置を執ってきた。
 まず,「就学」の在留資格に対応する在留期間を,就学生をめぐる問題の沈静化,さらに申請者負担の軽減等の観点から,それまでの「6月」から平成9年4月以降原則「1年」とする取扱いとした。
 また,留学生のうち,専修学校の専門課程を修了した外国人の我が国での就職は原則として認めていなかったが,平成7年1月から一定の要件を満たす専修学校の修了者に対し「専門士」の称号が付与されることとなり,専修学校の職業的実務教育機関としての位置づけが明確かつ強固になったことなどを踏まえ,就職のための在留資格変更を許可する途を開いた。
 一方,専修学校等から大学等への進学についても,専修学校等での修得内容と大学等での専攻内容との間に関連性がある場合に限り認めるとの取扱いを改め,その関連性を問うことなく,勉学継続のための在留期間更新を許可することを可能とした。
 さらに,平成11年に行った在留期間の見直しにおいて,「留学」の在留資格に「2年」の期間を新設し,留学生の利便を図ることとした。
       今後の方針
         学術・文化・青少年交流は,いずれも国際社会における相互理解,協調意識の醸成に役立つものであり,また,各種青少年交流も双方の次の時代の国際交流を担う人材の交流であり,今後とも先見的にその推進を図るべきである。外国の青少年に我が国の理解者を得ることは,今後の我が国の国際的な発展の大きな力となるものでもある。
 その観点から,将来我が国及び母国において活躍することが期待される留学生,就学生の受入れを一層積極的に図っていくことが望ましい。「留学生を受け入れる」という姿勢から更に進んで,世界の様々な国や地域から,優れた「留学生を魅きつける」方策を考えていく必要がある。
 具体的には,留学生,就学生,さらに研究者の受入れ促進のための諸施策を他の行政分野を担当する機関とも協力の上で実施していくことに加え,スポーツ,イベント,ワーキング・ホリデー制度等を通じた交流を支援する。
 その一環として,日韓共同開催となる2002年ワールドカップサッカー大会を始めとする様々な国際競技大会の成功に向けて,円滑な人的往来の支援と,問題となるような人物の入国の的確な阻止を通じて,出入国管理行政として貢献する。
 留学生の受入れに関しては,「知的国際貢献」として捉えられているものでもあり,その多くがいずれ留学生となる就学生も含めて,我が国に関心を有し勉学意欲に溢れる外国人の学生が,我が国で満足のいく勉学ができるような受入れの在り方の改善と教育環境の整備等を通じて,その積極的な受入れを関係省庁とも協力して行っていく。
 その一環として,学生の利便を図ることとその在留の適正化の双方に資するよう,学生と直接に接する教育機関によって,留学生,就学生の適正な在留の把握や指導がなされるよう検討していく。
 さらには,我が国での勉学が一層魅力的なものとなるよう,留学生の就職等,学業修了後の進路選択における配慮等についても,出入国管理行政の面で支援を行っていく。すなわち,留学生の就職のための在留資格変更について,今後とも相当と認められる事案については積極的にこれを認めていく。これは,留学生が我が国の社会習慣等を既に熟知している外国人であることから,学業修了後我が国において研究者あるいはビジネスマン等として円滑に社会生活を送り産業界等で活躍することが期待できるためである。
 また,外国人学生が我が国の企業等で就業体験を行うインターンシップ・プログラムについてもその積極的な活用を支援し,外国人学生の我が国のビジネス文化等を体験・理解する機会を提供していく。
    (4)  長期にわたり我が国社会に在留する外国人の定着の円滑化
       これまでの状況
         今日我が国に入国・在留する外国人の中で,我が国の社会と深いつながりを有し,「永住者」や「日本人の配偶者等」あるいは「定住者」の在留資格を持ち,あるいは他の在留資格であっても長期にわたって我が国社会の一員として滞在する外国人も増えており,それらの外国人が我が国において安定した生活を送ることができるように配慮することの重要性が増してきている。
 そのような配慮から執った措置としては,外国人の親が日本人の実子を一人で監護・養育しながら子供とともに我が国に在留することを希望するケースに関して,平成8年7月から,一定の要件のもとに原則として「定住者」の在留資格で在留を認める取扱いとしたことが挙げられる。
 また,平成11年10月から実施した在留期間の見直しにおいても,外国人の在留の一層の安定化の観点から,27種類の在留資格のうち21種類について,在留期間を例えば現行の「1年」から「3年」にするなど,長期化のための改正を行った。
 そして,外国人は,永住許可によって外国人としては最も安定した法的地位を得ることになるが,この許可についても,現在は従前に比して相当程度緩和された取扱いを行っている。
       今後の方針
         今後の我が国社会が特に,上記(1),(3)のように,外国人を必要な人材として迎え入れることになるとすれば,安定した地位と整備された生活環境,そして定着化の支援を行っていくことにより,日本人と外国人が円滑に共存・共生していく社会づくりに努めていく必要がある。
 そのために,我が国社会の不可欠な一員となる外国人がより安定した地位を持って我が国に滞在できるよう,「永住者」あるいは「定住者」の在留資格の運用について検討していく。
 さらに,今後は,居住者そして社会の構成員としての外国人に対して,個々の行政分野の断片的な関与ではない総合的な外国人行政を構築していく必要がある。
 例えば,平成2年から今日に至るまでその来日が続いている南米諸国の日系2世・3世が,これまで教育現場や地域コミュニティ等社会の各般に及ぼした影響には大きなものがあり,今後は更に定住者の受入れ範囲と受入れ後の各種行政の諸施策との総合的調整の在り方を政府全体として検討する必要がある。
 外国人への行政サービスの提供という観点から見れば,日本社会の構成員,居住者たる外国人に対しては,本来,人権の保護が行われ,日本人と同じ居住(生活)支援がなされるべきであり,居住者としてあらゆる分野が関係することになる。この際,関係省庁とともに,特に居住者と最も密接なかかわりを有している地方公共団体あるいはNGO等との協力関係を構築することが必要である。その上で,試みに,外国人の入国・在留手続を案内する入国管理局の窓口において,他行政に関する相談をも受け付け,然るべき行政機関に通報するという協力体制の構築についても検討していく。

   不法滞在者への現実的かつ効果的な対応
     出入国管理行政の一つの重要な役割は,外国人の適正な入国・在留を確保することによって,我が国社会の安全と秩序を維持することである。特に,今後,上記1のように,外国人の一層円滑な受入れを指向していくとすれば,なおのこと,現在の不法入国・不法残留者の状況を改善して,受入れの体制を整えておく必要がある。また,不法滞在者の多くは不法就労に従事しており,不法就労者を放置しておくことは,これらの人々を不法就労させる事業主が我が国労働関係法規等を遵守しないことにより,人権上の問題を生じさせることともなるのである。
 したがって,出入国管理行政においては,この問題に従前にも増して強力に取り組んでいくと同時に,現実的な解決策を執っていくことが必要と考えられる。その主要な課題及び具体策は次のとおりである。
    (1)  強力かつ効果的な不法滞在者対策の実施
       これまでの状況
         第1次出入国管理基本計画の下では,不法就労を行おうとする外国人の入国の防止及び不法就労外国人の定着化を防止し,その着実な減少を図っていくよう努めることを基本方針とし,これに沿って,次のような諸施策を講じた。
 平成5年以降,偽変造文書鑑識技術の向上等厳格な上陸審査,摘発体制の強化,実態調査の充実,収容施設の拡充,護送送還体制の整備及び内外の関係機関との協力体制の確立等に努めてきた。これらの施策は,単に個別に実施するのみならず,不法就労を意図する外国人を「来る気にさせない→来させない→入れない→在留させない→退去強制する」という総合的な対策として,また,刑事司法との連携をも図りながら展開してきたものである。
 特に,摘発体制の強化は,具体的には機動的な摘発チームの増強,複雑・悪質な事案の徹底糾明を専門的に行うチームの設置,さらには全国の入国警備官を動員しての首都圏等における大規模な集中摘発の実施等をその内容とするものである。
 加えて,平成元年の入管法の改正における大きな柱であった雇用主,ブローカー等を取り締まる不法就労助長罪の新設に続き,同8年末以来の船舶による密航事案の続発に即応して,同9年の同法改正において集団密航に係る罪等を新設,さらに同11年には不法入国・不法上陸した後引き続き不法に在留する者に厳格に対処するための不法在留罪の新設及び退去強制された後再び入国ができるようになるまでの上陸拒否期間を1年から5年に伸長することなどを内容とする入管法改正を行うなど,不法滞在者に厳格に対処するための法的措置が重ねて採られてきたところである。
       今後の方針
         我が国における出入国管理の秩序は,在留資格制度を基本として維持されているのであり,在留資格を有することなく我が国に事実上在留している外国人についてはこれを厳正に排除し,入管法違反者の減少を図ることを最大の目標としなければならない。
 不法残留者数は近年漸減傾向にあるが,依然としてその数は高水準にあるばかりか,不法就労期間も長期化傾向にあり,さらに,今日的な現象として,我が国での不法就労を目的として船舶により集団密航するなどし,その後我が国に不法在留している不法入国者は激増しており,その不法在留行為は,適正な出入国管理の実施を妨げているのみならず,我が国の社会,経済,治安等に悪影響を及ぼしている。こうした諸情勢にかんがみ,上述のとおり今般の法改正により不法在留罪を新設するとともに,外国人の出入国記録及び外国人登録に関して捜査機関等からの照会に24時間リアルタイムで対応する体制を構築しつつある。これらの効果をも見ながら,引き続き,積極的な摘発活動を行っていくことはもとより,厳格な入国審査,在留状況の的確な把握,積極的な啓発活動などが有機的に連動した総合的な不法就労対策を展開していく。
 加えて,今後は,限られた人員でより効果的な取締りを実現することを目指し,効率的な退去強制手続のための制度の検討,ハイテクを利用した情報管理とその情報の駆使,国際的犯罪組織の関与する事案に対処するため国内の捜査機関等との協力を強化することはもちろん,国際的協力の枠組みの構築とその推進等,工夫を凝らした行政を行っていくことを基本方針とする。
 なお,これら一連の退去強制手続の遂行に当たっては,厳正・公平を基本としながら,外国人の人権に十分配慮したきめ細かな処遇・対応を行うよう,環境の整備と併せて職員の意識の一層の高揚に努めていく。
        (ア)  情報管理と技術革新
           情報管理の分野に関しては,これまで以上に効果的に入国前から帰国後に至るまでの総合的な対策を展開できるよう,現在より更に迅速に外国人の出入国情報を取得・管理し,正確な実態を把握することが必要である。今日,先端技術を駆使して各種情報を瞬時に収集把握し,有効に活用することは,あらゆる行政にとって必要なことであり,日本社会の安全と秩序を守る役割を担っている出入国管理行政にとっては特に重要なことである。しかし,現状においては,その情報の把握がリアルタイムには行われていない面もあることから,今後,機械読取りが可能な旅券や査証の活用を含め,ハード及びソフト面についての所要の体制整備を行っていく。
 また,技術革新に負う分野として,偽変造文書鑑識技術の向上を図っていく必要がある。特に,偽造する側の技術が急速に向上し高度化している今日,高度な技術部門の拡充や諸外国との情報交換を実効性あるものにし,併せて,現場の入国審査官や入国警備官の鑑識技術のレベルを総じて向上させるための研修やマニュアルを充実させていく。
        (イ)  摘発の強化
           摘発の分野に関しては,入管法違反者がこれまでになく小口・拡散化し,長期化から定着化しつつあることが認められるほか,広域化,悪質・巧妙化して中には組織化する事案も認められる。こうした事態に対応するためにも,専門的知識・技術・機動力を備えた広域的摘発活動を展開し,法秩序を乱すブローカー組織が関与する悪質事案や全国に共通する複雑困難な事案のほか長期不法滞在者を重点的かつ積極的に摘発する。そのためにも,悪質事犯に関し全国的規模で情報を一元化するとともに,不法滞在者及びそれらの者に関与するブローカー等に関する情報を収集して効果的に活用していくための体制を整える。
 入管法違反者の減少を図っていくためには,外国人の在留状況を的確に把握し,積極的な摘発を推進して我が国から排除していくとともに,予防的側面も強化・充実させ,違法な雇用を未然に防止していくことが肝要であり,違反防止に当たる職員を配置するなどして,事業主等に対する地域の事情に応じた啓発活動を行っていく。
        (ウ)  収容施設の活用と早期送還
           円滑な退去強制業務の遂行には収容施設の整備及び効率的活用が不可欠であり,東京入国管理局等の収容場を拡充するとともに,3か所の入国管理センターを有効かつ効率的に活用し,入管法違反者縮減のためのバックアップ体制を整備していく。加えて,積極的な摘発を推進していくためには,収容施設の確保とともに,迅速な送還が望まれるところ,在日外国公館との連携を一層強化し,帰国のための旅券等の早期取得に努める。
        (エ)  内外の関係機関等との協力体制の確立
           国内的には,警察庁,労働省,海上保安庁等関係機関との連携を強化し,さらに地域ネットワークの活用,インターネットを利用した情報の提供を受けるなど,新たな情報受理体制を構築し,効果的な入管法違反防止措置を採ることとする。特に関係機関との協力に関しては,相互に情報提供を密接にする仕組みを作り,必要に応じて共同行動を執ることにより,一層効果的な摘発・協力体制を構築し,不法在留罪,集団密航に係る罪,不法就労助長罪等罰則の厳正な適用のため,出入国管理行政として協力していく。
 また,国外的には,国内関係機関と歩調を合わせながら,関係諸国の出入国管理当局など関連機関に積極的な働きかけを行い,相互協力体制の構築に努めるとともに情報交換や共同の取組を推進する。
    (2)  不法滞在者と我が国社会のつながりに配慮した取扱い
       第1次出入国管理基本計画でも確認したとおり,我が国は,不法滞在者に対して,いくつかの諸外国が試みたようなアムネスティ政策を採っていない。これは,不法滞在者を一定の要件のもとに一律に合法化するものであり,あくまでも法秩序維持の例外措置であると考えられる。「一度限り」との条件で実施したとしても,次回を期待する不法滞在者の流入及び不法滞在の長期化を誘発することから,不法滞在の問題の効果的な解決策とはならず,かえって事態を悪化させる大きな危険性を有しているからである。
 そこで,我が国では,不法滞在者については,入管法に定める退去強制手続にのっとり,法務大臣が在留を特別に許可すべき事情があると認めた場合に個別にその在留を特別に許可することとしている。
 在留特別許可を受けた外国人の多くは,日本人等との密接な身分関係を有し,また実態として,様々な面で,我が国に将来にわたる生活の基盤を築いているような人である。より具体的な例としては,日本人と婚姻し,その婚姻の実態がある場合で,入管法以外の法令に違反していない外国人が挙げられる。
 法務大臣は,この在留特別許可の判断に当たっては,個々の事案ごとに在留を希望する理由,その外国人の家族状況,生活状況,素行その他の事情を,その外国人に対する人道的な配慮の必要性と他の不法滞在者に及ぼす影響とを含めて総合的に考慮し,基本的に,その外国人と我が国社会のつながりが深く,その外国人を退去強制することが,人道的な観点等から問題が大きいと認められる場合に在留を特別に許可している。
 今後も,不法残留者を含む不法滞在者については原則として上記(1)の方針をもって早急に排除するよう強力に取り組む一方,個別事案において,日本人,永住者又は特別永住者との身分関係を有するなど,我が国社会とのつながりが十分に密接と認められる不法滞在者に対しては,これまで行ってきたように人道的な観点を十分に考慮し,適切に対応していくこととする。

   その他の主要な課題
    (1)  規制緩和と体制の整備による人的交流の円滑化
       これまでの状況
         第1次出入国管理基本計画の下では,我が国が国際協調・国際交流の増進のために寄与することの重要性にかんがみ,円滑な人的交流の促進の要請に引き続き積極的に対応することを目指した。加えて,社会システム全般にわたる規制緩和推進の気運の中で,政府全体に対して規制緩和の要請が強まり,出入国管理行政に関しても具体的な措置が求められるようになった。
 このような要請に応えるため,平成6年の関西国際空港開港に当たっての審査体制の整備,地方空港の国際化に対応した審査体制の整備,業務を迅速かつ的確に処理するための審査方式の見直し,さらには提出書類の簡素化,申請取次制度の拡充,査証免除・数次査証の対象拡大などを行い,同10年には,台湾護照を入管法上有効な旅券とする入管法改正等制度の改善を実現してきた。また,同11年に行った入管法改正において,再入国の許可に関し,その有効期間を,1年を超えない範囲内から3年を超えない範囲内に伸長することとした。さらに同11年10月から,在留期間の見直し措置が施行され,大幅な規制の緩和となった。
 しかし,そうした取組の一方で,次々と地方空港に国際便が就航する状況の中で適正な出入国管理を行うこと,あるいは全国各地に居住する在留外国人に十分な行政サービスを提供すること等のためには,一層の体制整備の必要性も認められる。
       今後の方針
         以上の状況を踏まえ,今後とも我が国社会の安全と秩序を維持しつつ,円滑な人的交流を推進していくための諸施策を実施していくが,その際,規制緩和,情報公開,行政コスト削減等行政全体を取り巻く各種の要請に対し,出入国管理行政も真摯に対応していくことが必要である。
 具体策としては,平成11年に行った再入国許可の有効期間の伸長,在留期間の延長のような制度上の規制緩和措置の可能性について,継続的に検討していく。加えて,機械読取旅券の活用を始め諸業務の電算化の推進も不可欠な取組である。
 また,大きな事業として,平成17年に予定されている中部国際空港の円滑な開港に貢献していくとともに,現在も進行している地方空港の国際化に対応できるよう所要の審査体制の整備を図っていく。さらに,効率的かつ健全な行政体制を整備するための出張所の統廃合と機能強化を継続的に推進していく。
 既に我が国に在留している外国人の在留手続に関しては,これまで問題のある案件とない案件を区分けすることによってメリハリのある審査を実施してきているところ,今後その区分けを一層適切に行っていくことによって,問題のある案件については徹底的な審査の実現を目指しつつ,全体としてはより公正でスムーズな審査を可能とするように努める。あわせて,審査方針等についてはできる限り公開し周知に努めることを通じて,行政の一層の透明化を図っていく。
 手続の簡素・合理化の要請に対しては,手続を熟知した関係者が外国人本人に代わって諸申請を行う申請取次制度や,入管行政に精通した団体等が事前に申請のための書類を点検する事前点検制度の効果的な活用を推進するとともに,郵送・電子申請の可能性についても検討していく。具体的な例として,航空機や船舶の乗組員に対する上陸手続について,合理化の方策等を検討する。
 行政サービスの向上のためには,上述の審査方針等を始め,関連情報を提供する積極的な広報活動が肝要であるところ,これまで取り組んできた相談窓口の充実に加え,インターネット等各種メディアを通じての情報提供サービスを充実させ,同時に,広く国民及び外国人の出入国管理行政に対する意見を聴く公聴活動にも力を入れていく。
 以上のような規制緩和,審査体制の整備による手続の迅速化は,外国人の滞在の安定化に資し,人権状況の向上にもつながることとなる。このような諸手続に際しても,外国人の人権への配慮につき職員の意識の一層の高揚に努めていく。
    (2)  国際協力の更なる推進
       これまでの状況
         第1次出入国管理基本計画の下では,不法就労対策の一環として,国際的な経済環境の変化によって影響を受ける海外の余剰労働力の状況や海外のブローカー組織の動向に関する情報を始めとする不法就労に関する国際的な人の移動に関する情報の交換について,引き続き諸外国の出入国管理行政機関との間で,その活発化を図る等国際協力を積極的に推進することとした。
 この方針に沿って,特に国境を越えた人の移動に関して問題を有する国の政府に対して,問題の解決あるいは改善のための具体的な申入れを行っているほか,国際組織犯罪につき共通の問題を抱える諸国の出入国管理行政機関の情報交換・意見交換の場を提供するため,「出入国管理セミナー」等の国際フォーラムを主催してきた。あわせて,アジア太平洋地域各国の出入国管理行政のレベルが総じて向上することが,同域内の適正な人的交流の実現に資するとの考えから,旅券等偽変造文書鑑識技術や出入国管理情報の電算処理について,我が国が有する技術の開発途上国への移転を目的としたセミナーも開催してきた。
       今後の方針
         今日の国際交流の活発化・複雑化を反映して,各国の出入国管理行政当局間の国際協力が,共通あるいは関連する諸問題の解決に有意義であるという認識が高まっており,全世界的(国連,G8等)あるいはアジア・太平洋地域等の枠組みの中で,出入国管理行政の協力関係の構築が推進されている。特に,近年増加している集団密航,不法移民ブローカー,女性・児童の売買・取引等国際的犯罪組織の関与する事案に対し,人権保護の観点からも有効に対処するための国際的協力の枠組みの策定(国際組織犯罪条約及び関連議定書の作成等)は,喫緊の課題となっている。
 そこで,我が国としても,関係諸国の出入国管理当局との情報交換や共同作戦の遂行,技術移転の取組等,可能な限りの国際協力を推進していくことと併せて,関係各国との緊密な連絡体制を構築するため,引き続き「出入国管理セミナー」等の機会を充実させていくとともに,今後は,入管行政の国際ネットワークの構築のために主体的な役割を果たしていく方策を模索していく。
 このような取組により,我が国が国際社会そして特にアジア・太平洋地域において期待されている役割を引き続き果たしていくことが必要である。
    (3)  難民認定制度の適切な運用
       これまでの状況
         我が国は,難民に対する国際的保護の提供を我が国が国際社会で果たすべき重要な責務と認識し,難民条約(昭和56年条約第21号)及び議定書(昭和57年条約第1号)に加入するとともに,必要な体制を整えてきたところであるが,近年,国際情勢が刻々と変化する中で,地域紛争や各国国内情勢の不安定化等に伴い,我が国への難民認定申請数は増加傾向を示しており,また,難民認定制度に対する社会の関心も高まってきている。
 難民認定は,難民条約等にのっとり,同条約等における難民の定義に基づいてその認定を行うものである。制度発足以来平成10年末までに1,703人の申請があり,それらのうち227人を認定に,1,090人を不認定としている。
 また,難民と認定しない場合であっても,本国の状況等により帰国が困難である等の特殊な事情がある場合には,不認定処分後にも在留を認めるなど,柔軟な対応をしており,平成10年末までの処分に関して,このような配慮に基づき在留を認められた者は合計156人に上っている。
       今後の方針
         今後とも流動的な国際情勢の下で,庇護を求める人々の流入は予想し得ることから,我が国において難民認定申請がなされた場合,その手続を迅速・適切に行うことができるよう,情報の蓄積や調査技術の向上に努める。真に難民としての保護を必要とする者の地位を早期に安定化し,かつ,難民認定制度の濫用への誘因を排除するためにも,迅速な案件の処理を図ることが必要である。
 さらに,難民認定がなされなかった申請者で,本国の状況等により帰国が困難である等の特殊な事情がある者に対しては,引き続き諸事情を精査した上で,在留について適切な対応を行っていく。
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