5 難民不認定処分関係訴訟事例
| 別紙5 |
| 【高等裁判所確定事例】 アフガニスタン人男性Xは,本邦に不法入国後,「アフガニスタンにおいてイスラム教シーア派ハザラ人はそのことのみをもってタリバンによる迫害を受けるおそれがあり,人種及び宗教を理由とする迫害のおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する。」などと申し立て,難民認定申請を行ったが,難民条約上の難民とは認められないとして不認定処分がなされた。これに対し,Xは当該不認定処分に対する異議申出を行ったが,当該不認定処分に誤りがない旨の裁決がなされた。 Xは,難民の認定をしない処分は違法であるとして,東京地方裁判所に難民の認定をしない処分の無効確認訴訟を提起した。 東京地方裁判所は,Xの主張を認容し,Xに対して行った難民の認定をしない処分が無効である旨の判決を言い渡したが,東京高等裁判所は,原判決を取り消した上,Xの請求を棄却した。その判示内容の要旨は以下のとおりである。 |
| ○ | 各種報告書等によれば,タリバンによって行われたハザラ人の虐殺行為は反タリバン勢力の攻撃に対する報復という側面があったこと,タリバンも公式には組織的かつ日常的にはハザラ人を迫害することを肯定していたものでないことが認められるのであって,アフガニスタンにおいて,一般にイスラム教シーア派ハザラ人が,そのことのみを理由にタリバンによる迫害を受けるおそれがあるものと認めることはできない。 |
| ○ | Xはタリバンがマザリシャリフに侵攻した約1週間後タリバン兵に連行され約1週間監禁されたが逃走し,逃走してから約1か月後パキスタンに出国した旨供述するものの,控訴人ら訴訟代理人からマザリシャリフにいたとする供述の矛盾につき尋問されると,アフガニスタンから出国したのはタリバンの侵攻から数日後であると供述を訂正するなど,Xがタリバンによる迫害を受けたとする供述には疑問の点が多くそれを直に信用することはできないと言わざる得ない。 |
| 【地方裁判所確定事例】 トルコ人男性Yは,本邦入国後,「トルコのクルド人であるという人種ないし特定の社会的集団の構成員であることを理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する。」などと申し立て,難民認定申請を行ったが,難民条約上の難民とは認められないとして不認定処分がなされた。これに対し,Yは当該不認定処分に対する異議申出を行ったが,当該不認定処分に誤りがない旨の裁決がなされた。 Yは,難民の認定をしない処分は違法であるとして,東京地方裁判所に難民の認定をしない処分の取消請求訴訟を提起した。 東京地方裁判所はYの請求を棄却したが,その判示内容の要旨は以下のとおりである。 |
| ○ | トルコにおいては,クルド人であることにより,政治や経済に参加することが法的に禁じられておらず,議員や政府高官や専門職に就いている者もおり,トルコでは,基本的人権の保障のための憲法の改正が繰り返されていること等から,本件難民不認定処分当時には,一般に,クルド人であることのみによって,逮捕,拘束,拷問,暴行,殺害等の迫害を受けることはなかったと認めることができる。 |
| ○ | Y自身が自発的にトルコ政府に対し国籍国としての保護を求め,トルコ政府がYに対して旅券発給という国民に対する保護を与えたのであるから,Yが,出国当時において迫害を受けるような状況にあったとは認められない。 |
| 【地方裁判所確定事例】 ミャンマー人男性Zは,本邦に不法入国後,「ミャンマーにおいて少数民族であるA民族に属し,A民族の自治独立やミャンマーの民主化を求める政治的意見を有しており,B団体の反政府活動や各種の民主化運動に参加していたことから,特定の社会的集団の構成員であることや政治的意見を理由とする迫害のおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する。」などと申し立て,難民認定申請を行ったが,当該申請については,法61条の2第2項所定の申請期間を経過してなされたものであり,かつ,同項ただし書の規定を適用すべきものとは認められないとして不認定処分がなされた。これに対し,Zは当該不認定処分に対する異議申出を行ったが,当該不認定処分に誤りがない旨の裁決がなされた。 Zは,難民の認定をしない処分,法49条の裁決及び退去強制令書発付処分は違法であるとして,東京地方裁判所に難民の認定をしない処分取消請求訴訟及び退去強制令書発付処分等取消請求訴訟を提起した。 東京地方裁判所は,法61条の2第2項所定の申請期間を徒過した本件難民認定申請に対する本件難民不認定処分は適法であるものの,難民条約上の難民に該当することを考慮せずに行われた退去強制令書発付処分は違法であるとして同処分を取り消した。その判示内容の要旨は以下のとおりである。 |
| ○ | ZはミャンマーにおいてB団体の反政府活動に参加し,国内移動制限に違反する活動を繰り返した後に不正出国をした者であり,本邦上陸後も,ミャンマーにおける少数民族の抵抗運動の延長線上に位置づけることができる民主化運動に従事した者であって,その事実がミャンマー政府に把握されている蓋然性は大きく,そのようなZが,A民族をはじめとする少数民族に対する本国政府ないし国軍の迫害に反対する政治的意見を理由として,その身体を拘束され,劣悪な環境における服役を強いられるなどして,生命・身体の危険にさらされるおそれがあることは十分に考え得るところである。 |