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2 難民不認定処分関係訴訟事例

別紙2

【最高裁判所確定事例】
 ミャンマー人男性Aは,本邦入国後,「ミャンマーにおいて少数民族であるA民族に属し,特定の政党に所属して民主化運動に積極的に携わり,デモに主導的に参加するなど,人種,政治的意見及び特定の社会的集団の構成員であることを理由とする迫害のおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する。」などと申し立て,難民認定申請を行ったが,難民条約上の難民とは認められないとして不認定処分がなされた。
 これに対し,Aは当該処分に対する異議申出を行わず,難民の認定をしない処分は違法であるとして,東京地方裁判所に難民の認定をしない処分の取消請求訴訟を提起した。
 東京地方裁判所は,Aの主張を認容し,Aに対して行った難民の認定をしない処分を取り消す旨の判決を言い渡したが,東京高等裁判所は,原判決を取り消した上,Aの請求を棄却した。その判示内容の要旨は以下のとおりである。
 出身国情報は,海外においても広く入手され得る情報に基づくものであって,被控訴人の供述の信憑性やその評価を決定的に裏付けるほどのことではなく,被控訴人の供述内容にはミャンマーにおける客観的情勢等との不一致がないといえるだけのことであって,それ以上に被控訴人の供述の信憑性やその評価を高めるものとは認め難い。
 被控訴人の難民性については,それに沿う被控訴人の供述があるのみであって,これを裏付けるに足りる客観的な証拠はないといわざるを得ない。したがって,被控訴人は,難民条約1条又は難民議定書1条の規定による難民に該当しない,すなわち,被控訴人自身が主観的にミャンマー政府から迫害を受ける恐れがあるという恐怖を如何に抱いているとしても,迫害の恐怖を抱くような客観的な事情は存在していないと認定するのが相当である。
 Aはこの控訴審判決を不服として,最高裁判所に対し,上告及び上告受理申立てを行ったが,最高裁判所は控訴審の判断を維持した(上告棄却及び上告不受理決定)。

【高等裁判所確定事例】
 ミャンマー人男性Bは,本邦入国後,「ミャンマーにおいて反政府活動に参加し,NLDに参加したことによって取調べを受けていること,本邦においても反政府活動を率先して行い,Bが参加したデモが報道されたことなどから,本国政府に把握されている危険性が高く,政治的意見を理由とする迫害のおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する。」などと申し立て,難民認定申請を行ったが,難民条約上の難民とは認められないとして不認定処分がなされた。これに対し,Bは当該不認定処分に対する異議申出を行ったが,当該不認定処分に誤りがない旨の裁決がなされた。
 Bは,難民の認定をしない処分は違法であるとして,東京地方裁判所に難民の認定をしない処分の取消請求訴訟を提起した。
 東京地方裁判所は,原告の主張及び証拠を採用し,本邦入国する前及び本邦における活動を理由に,原告が帰国した場合,身柄を拘束され,不当な処遇を受けたり,不当な処罰を受ける可能性があることは否定し難いとして原告の難民性を認め,Bに対して行った難民の認定をしない処分を取り消す旨の判決を言い渡した。その後の国側の控訴に対し,東京高等裁判所は控訴を棄却し原判決を支持した。その判示内容の要旨は以下のとおりである。
 被控訴人が賄賂を用いて旅券を入手したことをしばらく措くとしても,ミャンマー政府においても,国内の反政府活動家を迫害することは人道的見地から国際的非難を浴びることになろうから,そうした避難をできるだけ避けるためにも,政府にとって好ましからざる人物が自らミャンマー国外に出国することをむしろ歓迎し,たとえ出国者が反政府運動の中心人物でない場合にはあえて出国を阻止しなかった可能性も十分にあると考えられるのであるから,反政府運動の中心人物としては特に注目され警戒されていなかった被控訴人がミャンマー政府から正規に旅券の発給を受けて適法にミャンマーを出国したからといって,そのことと被控訴人がNLDに所属する反政府活動家であって政府にとって好ましからざる人物であったこととの間に直ちに矛盾があるものとはいえないというべきであり,この点の供述等が不自然・不合理なものとして前後の被控訴人の供述等の信憑性が失われるものではないというべきである。
 たとえ被控訴人がミャンマー政府から反政府運動の中心人物として特に注目され警戒されるほどの積極的な反政府活動家ではなかったとしても,少なくとも被控訴人はNLDに所属する反政府活動家として政府にとって好ましからざる人物として忌避の対象となる存在であったことは否定できず,平成11年5月24日の本件処分時において,被控訴人は「特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ものであったというべきである。
 被控訴人がその出国当時において我が国で就労して得た金銭をミャンマーの家族に送りたいとの気持ちを有しており現にその後送金をしているとしても,そのことと被控訴人が難民であることとが直ちに矛盾するものではないというべきである。

【高等裁判所確定事例】
 アフガニスタン人男性Cは,本邦に不法入国後,「イスラム教シーア派に属するハザラ人で,反タリバン勢力であるハラカット・イスラミの元司令官及び中央委員会のメンバーであるため,アフガニスタンにおいて,タリバン勢力から迫害を受けており,難民条約上の難民に該当する。」などと申し立て,難民認定申請を行ったが,難民条約上の難民とは認められないとして不認定処分がなされた。これに対し,Cは当該不認定処分に対する異議申出を行ったが,当該不認定処分に誤りがない旨の裁決がなされた。
 Cは,難民の認定をしない処分,法49条の裁決及び退去強制令書発付処分は違法であるとして,東京地方裁判所に難民の認定をしない処分取消請求訴訟及び退去強制令書発付処分無効確認請求訴訟を提起した。
 東京地方裁判所は,Cの主張を認容し,Cに対して行った退去強制令書発付処分は無効であり,難民の認定をしない処分を取消す旨の判決を言渡したが,東京高等裁判所は,原判決を取り消した上,Cの請求を棄却した。その判示内容の要旨は以下のとおりである。
 各種報告書の記載によれば,国際機関等が,シーア派ハザラ人であることのみを理由に暴行や殺害等の迫害がなされたという事実はなく,タリバンも公式には組織的かつ日常的にハザラ人を迫害することを肯定していたものではないことが認められるのであって,むしろ,タリバンによって行われたハザラ人の虐殺行為は,宗教的又は民族的特性に帰因するものというよりも,反タリバン勢力の攻撃に対する報復として,反タリバン勢力に対する協力者,あるいは反タリバンとみなされた者を対象としてされた側面があるというべきであり,アフガニスタンにおいて,一般にシーア派ハザラ人がそのことのみを理由にタリバンによる迫害を受けるおそれがあるものと認めることは困難であるといわざるを得ない。
 Cの主張するように,難民認定における信ぴょう性判断は,難民問題の特殊性や証拠収集の困難性,申請者の心的ストレスによる記憶の変容等の心理的要因,言語的障害等の文化的要因等にかんがみ,慎重に検討する必要があり,証拠の一部が信ぴょう性に欠けるとしても,これをもって,供述全体の信ぴょう性を否定するのは相当ではなく,その他の証拠の検討,供述全体の自然性,合理性や一貫性という点を総合的に評価したうえで慎重な検討がされなければならないのは当然であるが,Cの供述のうち,難民該当性の核心的部分に関する証拠が偽造文書又は内容虚偽の文書であることにかんがみれば,その供述自体に合理性や一貫性があったとしても,難民該当性に係るCの供述の信用性が否定されるのは当然である。
 Cの難民認定申請は,Cが査証の発給を受けることが極めて困難と考え,自らがUAEで営む事業を維持し,今後の本邦における中古車部品貿易業を継続するため,難民を偽装し本邦での在留資格を得ることを目的としたものであることが強く疑われるものであり,被控訴人には,中古車部品貿易業を継続するために本邦に不法入国する十分な動機があるといえる。

【高等裁判所係属中事例】
 トルコ人男性Dは,本邦入国後,「人民民主主義者党(HADEP)を支援するクルド人であり,クルド民族の権利を擁護する強固な政治的意思を有し,また,クルド労働者党(PKK)を支援したことによって,トルコ当局から,身柄拘束・拷問を受けたことがあるため,帰国すると迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する。」などと申し立て,難民認定申請を行ったが,難民条約上の難民とは認められないとして不認定処分がなされた。これに対し,Dは,当該不認定処分に対する異議申出を行ったが,当該不認定処分に誤りがない旨の裁決がなされた。
 Dは,難民の認定をしない処分の取消し及び収容時に精神的苦痛を被ったことに対する損害賠償を求めて,東京地方裁判所に難民の認定をしない処分取消請求訴訟を提起した。
 東京地方裁判所は,Dの請求を棄却したが,その判示内容の要旨は以下のとおりである。
 本件難民不認定処分当時(平成13年4月),クルド人であることによる差別は残っていたとしても,クルド人であることのみによって直ちに難民条約にいう迫害を受けることとなるわけではないというべきである。
 トルコには,PKKという非合法政治組織が存在する。PKKは,昭和53年に設立され,目的をクルド民族の解放とし,マルクス・レーニン主義を理念としている。PKKは,トルコ政府と厳しく敵対しており,地方においても,政府側の公務員や教師,村民を殺害するなどして,過激な武装闘争を展開し,1980年代に,その勢力範囲を拡大していった。
 PKKは,アメリカ合衆国国防省によって海外テロリスト組織と認定されている団体であって,PKKのテロリストが,非戦闘員を殺害した事例が国際的に報告されている。PKKは,アムネスティ・インターナショナルからも,無差別又は恣意的な殺人を行ってきたと非難されている。
 原告は,PKKのメンバーではないものの,トルコにいた時からPKKのゲリラに食料援助や資金援助を行ったことがあること,来日後も,PKKの支援につながる行動を行い,現在も,PKKを支持する意思を明らかにしている者であることが認められる。このように,原告は,PKKの支援者である疑いが強く,少なくとも,PKKに共鳴する者であるといわざるを得ない。
 そうすると,トルコ政府が,PKKの支援者である疑いがあるとして,原告の所在等を確認し,テロの発生,拡大を未然に防止しようとすることは,国家の責務を果たす適法な行為であると評価することが十分可能である。
 原告が,過去に,あるいは今後トルコに帰国した場合に,PKKとの関係につき取調べを受けたり,あるいは,起訴,裁判を受けることがあったとしても,それは,テロ組織との関連性を疑われてもやむを得ない原告特有の事情に基づくものということができるのであるから,政治的意見を理由とする迫害と評価することはできない。
 もちろん,上記取調べ等の際に暴行や拷問がされたり,不当に重い刑罰が科せられてはならないことは当然であり,トルコでは,過去においては,このような点に問題があったこと,原告も,憲兵等によってPKK関係者と疑われた者たちに対する暴行や村の破壊等を見聞きしてきたことは,既に判示したとおりである。
 しかし,前記認定事実のとおりのトルコにおける近時の人権状況の改善に照らすと,原告のように,ゲリラ組織に参加している者ではない,いわば心情的な支援者にすぎない者に対して,本件難民不認定処分当時,警察官等による暴行,拷問のおそれがあったとは認めることはできない。

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